説明

カーテンウォール

【課題】煩雑な作業を必要とせずにスパンドレル部の結露を防止できるカーテンウォールを提供する。
【解決手段】カーテンウォール1は、スパンドレル部15と窓部20とを備える。プレキャストコンクリートパネル11の枠体取付領域14と隣接する隣接領域12あるいは枠体取付領域14と隣接領域12との間には、目地部30が形成されている。プレキャストコンクリートパネル11には、ガラスパネル19と枠体17とプレキャストコンクリートパネル11とに囲まれてなる中空層16の空気を目地部30に通気する通気路31,33が形成されている。目地部30は通気路31,33の空気を室外に排出する排気構造35を有している。排気構造35よりも下側に、室外の空気を中空層16に導入可能な空気導入部18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現場においての施工が簡単で意匠性が高いカーテンウォールを、外装部に備える建物が増えている。カーテンウォールは、居住空間に対応する部分に配置される窓部と、窓部の上下であって、天井や床に対応する部分に配置される梁部(スパンドレル部)とを備えるカーテンウォールユニットを左右方向および上下方向にならべて配置したものである。
【0003】
カーテンウォールユニットの窓部は、ガラスパネルにより室内外が仕切られており、スパンドレル部には、意匠性が高いという点から、窓部と同様に室外側にガラスパネルが取り付けられることが多い。このようなガラスパネルを備えるスパンドレル部には、耐火構造とするために、室内側に、耐火性のパネルが取り付けられ、これにより、ガラスパネルと耐火性のパネルとの間には、密閉状の空間が形成される。
【0004】
このような構成のスパンドレル部においては、太陽光の照射により耐火パネルに含まれる水分が密閉状の空間に蒸発して空間内の湿度を上昇させ、この湿度の高い空気が外気温の低下などにより冷やされた際にガラスパネルに結露が生じることがある。ガラスパネルに結露が生じると、ガラスパネルを耐火性のパネルに取り付けている枠体(サッシ)の腐食などが懸念される。
【0005】
そこで、スパンドレル部のガラスパネルにおける結露を防止するために、耐火パネルの表面のうち密閉状の空間に面する側の面に塗膜を形成して水分の蒸発を防止する方法や、特許文献1に提案されているように密閉状の空間と室内空間とを連通させる通気路を設け、必要に応じて通気路を開閉する方法などが採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−267021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、耐火パネルの表面に塗膜を形成する方法では、室内外の温度差が大きい場合などに、湿度の高い空気が密閉状の空間に滞留することは防止できないため、湿度の高い空気の滞留により結露が発生することが懸念される。
【0008】
特許文献1に提案されている方法において、室内外の温度差が大きいときなどに、通気路を開いたままにしておくと、室内外の温度差に起因して、室内で高湿度となった空気が密閉状の空間に流れこみ、この流れ込んだ空気が冷やされることにより結露が発生することがある。そのため、特許文献1に提案されている方法をとる場合には、通気路の開閉という煩雑な作業が必要である。
【0009】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、煩雑な作業を必要とせずにスパンドレル部のガラスパネルの結露を防止できるカーテンウォールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するものとして、本発明は、ガラスパネルを内側に配置した枠体、および前記ガラスパネルとの間に間隔をあけて前記枠体を室外側の面に取り付けたプレキャストコンクリートパネルを有するスパンドレル部と、ガラスパネルを取り付けた窓部と、を備えるカーテンウォールであって、前記プレキャストコンクリートパネルの前記枠体を取り付けた枠体取付領域と隣接する隣接領域あるいは前記枠体取付領域と前記隣接領域との間には、目地部が形成され、前記プレキャストコンクリートパネルには、前記ガラスパネルと前記枠体と前記プレキャストコンクリートパネルとに囲まれてなる中空層の空気を前記目地部に通気する通気路が形成され、前記目地部は前記通気路の空気を室外に排出する排気構造を有し、前記排気構造よりも下側に、室外の空気を前記中空層に導入可能な空気導入部が設けられているところに特徴を有する。
【0011】
本発明において、空気導入部から中空層に導入された空気は、中空層を上方へ移動して、プレキャストコンクリートパネルに設けた通気路を通って、枠体取付領域と隣接する隣接領域あるいは枠体取付領域と隣接領域との間に形成された目地部の排気構造を介して建物外部に排気される。
【0012】
本発明においては、目地部が中空層内の空気が排出される排気構造を有しており、中空層内に空気を導入する空気導入部が、排気構造を有する目地部よりも下側に設けられているので、空気導入部と空気を排出する部分(排気構造の設けられている部分)との間に、高低差がある。
【0013】
したがって、本発明において、太陽光の照射等によりプレキャストコンクリートパネルに含まれる水分が蒸発したり、湿度の高い空気の流入等によりスパンドレル部の中空層内の空気の湿度が上昇したとしても、この湿度の高い空気は、中空層内に滞留せず、上方(排気構造を有する目地部のある方向)に円滑に移動して建物外部に排気される。その結果、本発明によれば、スパンドレル部のガラスパネルの結露を防止することができるのである。
【0014】
また、本発明によれば、目地部(排気構造)と空気導入部はともに室外側に配されており、暖房加湿による室内の湿度の影響を受けにくく、室内空気の流入がないので結露発生の問題が生じ難い。その結果、本発明によれば、室内外の温度差がある場合でも空気導入部や排気構造を開閉する必要はない。
【0015】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記空気導入部は前記枠体の下端部に設けられていてもよい。
このような構成とすると、中空層を取り囲む部材である枠体に空気導入部を設けるので、空気導入部と中空層との間に空気を導入するために別部材(通気パイプなど)が不要である。
【0016】
前記通気路には筒状の通気筒が取り付けられ、前記通気筒の上端は前記目地部の下端部よりも高い位置に配されていてもよい。このような構成とすると、雨水などが目地部を介して通気路内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0017】
前記目地部をオープンジョイントで構成してもよい。このような構成とすると、排気構造の面積が大きくなり換気量が多くなるため、結露防止効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、煩雑な作業を必要とせずにスパンドレル部のガラスパネルの結露を防止できるカーテンウォールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1のカーテンウォールの一部裏面図
【図2】図1のX−X線におけるカーテンウォールの一部断面図
【図3】カーテンウォールユニットの一部断面図
【図4】スパンドレル部における空気の流れを説明する一部断面図
【図5】実施形態2のカーテンウォールの一部断面図
【図6】実施形態3のカーテンウォールの一部裏面図
【図7】スパンドレル部における空気の流れを説明する一部断面図
【図8】図7のA−A線におけるカーテンウォールの一部断面図
【図9】他の実施形態(1)で説明するカーテンウォールの一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1〜図4によって説明する。以下の説明において上下方向は各図に基づくものとし、図2〜図4における左側は室外側、右側は室内側を意味する。なお、図1は、室内側からみたカーテンウォール1の一部を示す図である。
本実施形態のカーテンウォール1は、建物の外装部に取り付けられるものであり、図1に示すように、複数個のカーテンウォールユニット10を上下方向ならびに左右方向に並べて配置した状態で建物躯体2に取り付けられる。
【0021】
カーテンウォールユニット10は、図1および図2に示すように、建物躯体2の鉄骨3に設けたブラケット4に対してナットなどの取付金具5を螺合させることにより固定されており、プレキャストコンクリートパネル11(PC版11)と、ガラスパネル19を内側に配置した枠体17とを備える。枠体17としては、アルミなどの金属製のサッシなどを用いることができる。
【0022】
カーテンウォールユニット10の上端部において、PC版11には、図2に示すように、ひさし状に室外方向に突出した部分(ひさし部12という)が形成されている。PC版11のひさし部12のすぐ下からカーテンウォールユニット10の下端に至る領域には、ガラスパネル19,22が配置されている。
【0023】
PC版11にはひさし部12のすぐ下側に、図3に示すように、断面略C字状をなし、室外側の面にガラスパネル19を内側に配置した枠体17が取り付けられている部分13(C字部13という)が設けられている。PC版11のC字部13に取り付けられた枠体17およびガラスパネル19は、室内側からは見えないので、図1においては、C字部13の、枠体17およびガラスパネル19を取り付けた領域(枠体取付領域14)は点線で示されている。
【0024】
PC版11のC字部13の室外側の面13Aと、C字部13に取り付けられた枠体17の内側に配置したガラスパネル19との間には所定間隔があけられており、これにより、PC版11のC字部13の室外側の面13Aとガラスパネル19と枠体17とに囲まれた空間16(中空層16)が形成されている。PC版11のC字部13に取り付けられている枠体17の下端部には、室外の空気を中空層16に導入可能な空気導入孔18(空気導入部18)が設けられている。
【0025】
このPC版11のひさし部12とC字部13とを含む部分15は、建物の天井や床に対応する部分に配置される梁部15(スパンドレル部15)である。スパンドレル部15の下側に配置され、ガラスパネル22を内側に配置した枠体21が取り付けられている部分20は、居住空間に対応する部分に配置される窓部20である。本実施形態のカーテンウォール1においては、上下方向において窓部20とスパンドレル部15とが交互に配されている。
【0026】
さて、ひさし部12(PC版11の枠体取付領域14と隣接する隣接領域12)の下側面には、図3に示すように、スパンドレル部15をひさし部12とC字部13とに分断する目地部30が形成されている。詳しくは、目地部30は、PC版11の枠体取付領域14から室外方向に突出するひさし部12の突出端12Aに形成されている。目地部30には、後述する第1の通気路31から室外に連通して第1の通気路31に通気された空気を室外に排出する排気筒35が取り付けられている(排気構造35に相当)。目地部30において、排気筒35の周縁には、公知のシーリング材36が充填されている。
【0027】
また、ひさし部12には、目地部30の排気筒35から連なる略L字状の第1の通気路31が設けられている。詳しく説明すると、第1の通気路31は目地部30から上方に立ち上がったのち、室内側に向けて屈曲した屈曲部31Aを経てPC版11の室内側の面11Bに至る位置まで形成されている。
【0028】
第1の通気路31の屈曲部31Aよりも室内側の部分31Bでは、目地部30よりも高さが高くなっている。第1の通気路31の屈曲部31Aよりも室内側の部分31Bには、後述する第2の通気路33に取り付けた通気パイプ34の上端34Aが配されている。また、第1の通気路31の屈曲部31Aよりも室内側の部分31Bには、室外の空気が室内に流入するのを遮断し、かつ室内の空気が第1の通気路31に流入するのを遮断するパッキン32が取り付けられている。
【0029】
PC版11のC字部13の上端には、中空層16の上端から室内側に連なったのち、上方に屈曲されて第1の通気路31と連なる第2の通気路33が形成されている。第2の通気路33には塩化ビニル製の通気パイプ34(筒状の通気筒34)が取り付けられており、通気パイプ34の上端34Aは第1の通気路31内に突出するように配されている。つまり、通気パイプ34はその上端34Aが目地部30の下端部30Aよりも高い位置になるように配されており、これにより、雨水などが目地部30を介して第2の通気路33内に侵入するのを防止している。
【0030】
次に、本実施形態の作用について、空気の流れる方向を矢線で示した図4を参照しつつ説明する。
本実施形態において、スパンドレル部15の枠体17に設けた空気導入孔18から中空層16に導入された空気は、図4に示すように、上方に移動して、PC版11のC字部13に設けた第2の通気路33の通気パイプ34内を通り、第1の通気路31に入る。第1の通気路31にはパッキン32が取り付けられているので、第1の通気路31に移動した空気は、室内側には移動せずに室外側へ移動し、ひさし部12の突出端12Aに設けた目地部30の排気筒35を介して建物外部に排気される。
【0031】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、枠体17に中空層16内に空気を導入する空気導入孔18を形成し、空気導入孔18よりも上側に設けられた目地部30の排気筒35を介して中空層16内の空気が排出されるので、空気導入孔18と目地部30の排気筒35には高低差がある。また、枠体17に中空層16内に空気を導入する空気導入孔18を形成し、枠体17とは別部材であるPC版11に設けた目地部30を介して中空層16内の空気が排出されるので、同じ部材に空気導入孔18と排気構造35とを設けた場合よりも、圧力差が大きい。つまり、本実施形態によれば、スパンドレル部15の中空層16の空気が滞留せずに移動する。
【0032】
したがって、本実施形態において、太陽光の照射等によりPC版11に含まれる水分が蒸発したり、湿度の高い空気の流入等によりスパンドレル部15の中空層16内の空気の湿度が上昇したとしても、この湿度の高い空気は、中空層16に滞留せず、上方にある目地部30に円滑に移動して建物外部に排気される。その結果、本実施形態によれば、スパンドレル部15のガラスパネル19の結露を防止することができるのである。
【0033】
また、本実施形態によれば、目地部30(排気構造35)と空気導入孔18はともに室外側に配されており、暖房加湿による室内の湿度の影響を受けにくく、室内空気の流入がないので結露発生の問題が生じ難い。その結果、本実施形態によれば、室内外の温度差がある場合でも空気導入孔18や排気構造35を開閉する必要はない。
したがって、本実施形態によれば、煩雑な作業を必要とせずにスパンドレル部15のガラスパネル19の結露を防止できるカーテンウォール1を提供することができるのである。
【0034】
さらに、本実施形態においては、中空層16を取り囲む部材である枠体17に空気導入孔18を設けるので、空気導入孔18と中空層16との間に空気を導入するために別部材(パイプなど)が不要であり、空気導入孔18の設置が容易である。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、第2の通気路33には、その上端34Aが目地部30の下端部30Aよりも高い位置に配されるように、通気パイプ34が取り付けられているから、雨水などが目地部30を介して第2の通気路33内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0036】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図5によって説明する。
本実施形態のカーテンウォール71は、PC版81の室外側の面81Aにひさし部12がない点および目地部90をオープンジョイントで構成したという点で実施形態1と相違する。実施形態1と同様の構成には同じ符号を付し重複する説明は省略する。
カーテンウォールユニット80の上端において、PC版81には、C字状をなすC字部83が形成されている。このC字部83が形成されている部分は、スパンドレル部85に相当する部分である。
【0037】
PC版81のC字部83のうち、室内側にへこんだ凹み部分83Aが形成されている部分には、ガラスパネル89を内側に配置した枠体87が取り付けられており、これにより中空層86が形成されている。
【0038】
C字部83の枠体87が取り付けられた枠体取付領域84の上側の領域(隣接領域82)には、当該隣接領域82を上下の領域82A,82Bに分ける目地部90が形成されている。目地部90はオープンジョイントで構成されているので、等圧のために排気構造90が必然的に設置され、この排気構造90を利用して中空層86から移動した空気が排気される。
【0039】
目地部90から室内側に連なる第3の通気路91は、目地部90から上方に立ち上がったのち、室内側に向けて屈曲した屈曲部91Aを経てPC版81の室内側の面(図示せず)に至る位置まで形成されている。
【0040】
枠体取付領域84と隣接する隣接領域82A,82Bのうち目地部90よりも下側の領域82Bには、室内側に略真横に延びた後、上方に屈曲して第3の通気路91につらなる第4の通気路93が形成されている。第4の通気路93には、その上端部94Aが目地部90の下端部90Aよりも高い位置となるように筒状の通気パイプ94が取り付けられている。
【0041】
本実施形態の作用について、空気の流れる方向を矢線で示した図5を参照して説明する。
本実施形態において、C字部83の枠体87に設けた空気導入孔88(空気導入部88)から中空層86に導入された空気は、図5に示すように、上方に移動して、PC版81の第4の通気路93の通気パイプ94内を通り、第3の通気路91に入る。第3の通気路91にはパッキン32が取り付けられているので、第4の通気路93から第3の通気路91に移動した空気は、室内側には移動せずに室外側へ移動し、目地部90を介して建物外部に排気される。
【0042】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、空気導入孔88と排気構造を有する目地部90とは高低差がある。枠体87の下端部に設けた空気導入孔88から導入された空気が中空層86において暖められた場合に、暖められた空気が中空層86のに滞留せずに上方へ円滑に移動し排出されるから、スパンドレル部85のガラスパネル89結露を防止することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、目地部90(排気構造)と空気導入孔88はともに室外側に配されており、暖房加湿による室内の湿度の影響を受けにくく、室内空気の流入がないので結露発生の問題が生じ難い。その結果、本実施形態によれば、室内外の温度差がある場合でも空気導入孔88や目地部90(排気構造)を開閉する必要はない。
したがって、本実施形態によれば、煩雑な作業を必要とせずにスパンドレル部85のガラスパネル89の結露を防止できるカーテンウォール71を提供することができるのである。
【0044】
また、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、第4の通気路93に、上端部94Aの位置が目地部90の下端部90Aよりも高い位置となるように通気パイプ94が取り付けられているから、雨水などが目地部90を介して第4の通気路93内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0045】
さらに、本実施形態においては、中空層86を取り囲む部材である枠体87に空気導入孔88を設けるので、空気導入孔88と中空層86との間に空気を導入するために別部材(パイプなど)が不要であり、空気導入孔88の設置が容易である。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、目地部90をオープンジョイントで構成したから、排気構造の面積が大きくなり換気量が多くなるため、結露防止効果を高めることができる。
【0047】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図6〜図8によって説明する。
本実施形態のカーテンウォール100は、図6における左右方向に隣り合うカーテンウォールユニット110,110の間に形成された縦目地111に室外の空気を導入する空気導入部111Bを設けた点で実施形態2と相違する。上記実施形態2と同様の構成には同じ符号を付し重複する説明は省略する。
【0048】
空気導入部111Bが設けられている縦目地111は、図8に示すように、オープンジョイントで構成されているので、等圧のために空気導入部111Bが必然的に設置され、この空気導入部111Bを利用して室外の空気が導入される。縦目地111を構成するオープンジョイントは、PC版の室外面から室内方向に形成された第5の通気路111Aに取り付けられている。PC版81には第5の通気路111Aから中空層に連通する第6の通気路112が形成されており、第6の通気路112には通気パイプ113が取り付けられている。第5の通気路111Aには、第6の通気路112と交差するところよりも室内側にパッキン114が取り付けられている。
【0049】
本実施形態の作用について、空気の流れる方向を矢線で示した図7および図8を参照して説明する。
本実施形態において、縦目地111に設けた空気導入部111Bから導入された空気は、第5の通気路111Aを室内側へ移動する。第5の通気路111Aにはパッキン114が取り付けられているので、第5の通気路111Aを移動してきた空気はパッキン114よりも室内側へは移動せず、第6の通気路112に移動する(図8を参照)。
【0050】
第6の通気路112に移動した空気は、図7に示すように、第6の通気路112の通気パイプ113内を通り、スパンドレル部85の中空層86に入る。中空層86に入った空気は上方へ移動して、PC版81の第4の通気路93の通気パイプ94内を通り、第3の通気路91に入る。第3の通気路91にはパッキン32が取り付けられているので、第4の通気路93から第3の通気路91に移動した空気は、室内側には移動せずに室外側へ移動し、目地部90を介して建物外部に排気される。
【0051】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、空気導入部111Bと排気構造を有する目地部90とは高低差があり、スパンドレル部85の中空層86の空気が滞留せずに上方へ移動するから、スパンドレル部85のガラスパネル89の結露を防止することができる。
また、本実施形態によれば、目地部90(排気構造)と空気導入部111Bはともに室外側に配されており、暖房加湿による室内の湿度の影響を受けにくく、室内空気の流入がないので結露発生の問題が生じ難い。その結果、室内外の温度差がある場合でも空気導入部111Bや目地部90(排気構造)を開閉する必要はない。
したがって、本実施形態によっても、煩雑な作業を必要とせずにスパンドレル部85のガラスパネル89の結露を防止できるカーテンウォール100を提供することができるのである。
【0052】
また、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、第4の通気路93に、上端部94Aの位置が目地部90の下端部90Aよりも高い位置となるように通気パイプ94が取り付けられているから、雨水などが目地部90を介して第4の通気路93内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、目地部90をオープンジョイントで構成したから、排気構造の面積が大きくなり換気量が多くなるため、結露防止効果を高めることができる。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1〜3では、外側から、スパンドレル部に取り付けられた枠体の全体が見えるものを示したが、例えば、図9に示すように、枠体87Aの上部がPC版81内に収められている構成としてもよい。なお、図9に示すカーテンウォール120は、上述以外の構成は実施形態3のカーテンウォールとおおむね同様である。
(2)上記実施形態1では、隣接領域にひさし部を設けたPC版と、シーリング材を充てんした構成の目地部とを備えるものを示したが、目地部をオープンジョイントで構成したものとしてもよい。
(3)上記実施形態では、通気パイプを取り付けた通気路を備えるものを示したが、通気パイプが取り付けられていない通気路のみを備えるものであってもよい。
(4)上記実施形態では、カーテンウォールユニットの上端においてPC版が室外に露出した部分が形成されているものを示したが、上下方向の全域にわたって、ガラスパネルを内側に配置した枠体が取り付けられているカーテンウォールであってもよい。このような構成とすると、外観の美しい建物とすることができ、意匠上好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1,71,100,120…カーテンウォール
10,80,110…カーテンウォールユニット
11,81…プレキャストコンクリートパネル(PC版)
12,82…隣接領域
14,84…枠体取付領域
15,85…スパンドレル部
16,86…中空層
17,87…(スパンドレル部の)枠体
18,88…空気導入孔(空気導入部)
19,89…(スパンドレル部の)ガラスパネル
20…窓部
21…(窓部の)枠体
22…(窓部の)ガラスパネル
30…目地部
30A,90A…目地部の下端部
31…第1の通気路(通気路)
33…第2の通気路(通気路)
34,94…通気パイプ(通気筒)
34A,94A…通気パイプ(通気筒)の上端
35 排気筒(排気構造)
90…目地部(排気構造)
111…縦目地
111B…空気導入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスパネルを内側に配置した枠体、および前記ガラスパネルとの間に間隔をあけて前記枠体を室外側の面に取り付けたプレキャストコンクリートパネルを有するスパンドレル部と、ガラスパネルを取り付けた窓部と、を備えるカーテンウォールであって、
前記プレキャストコンクリートパネルの前記枠体を取り付けた枠体取付領域と隣接する隣接領域あるいは前記枠体取付領域と前記隣接領域との間には、目地部が形成され、
前記プレキャストコンクリートパネルには、前記ガラスパネルと前記枠体と前記プレキャストコンクリートパネルとに囲まれてなる中空層の空気を前記目地部に通気する通気路が形成され、
前記目地部は前記通気路の空気を室外に排出する排気構造を有し、
前記排気構造よりも下側に、室外の空気を前記中空層に導入可能な空気導入部が設けられていることを特徴とするカーテンウォール。
【請求項2】
前記空気導入部は前記枠体の下端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンウォール。
【請求項3】
前記通気路には筒状の通気筒が取り付けられ、前記通気筒の上端は前記目地部の下端部よりも高い位置に配されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカーテンウォール。
【請求項4】
前記目地部をオープンジョイントで構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のカーテンウォール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−7374(P2012−7374A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143842(P2010−143842)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000219598)東海コンクリート工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】