説明

カートリッジ収納ケース

【課題】互いに重ね合わされて使用されるカートリッジ収納ケース同士が強固に融着されており、強度が高く、高い気密性を有し、外部から強い衝撃が加わっても内部に収納されたカートリッジを確実に保護することができるカートリッジ収納ケースの提供。
【解決手段】複数の前記カートリッジを並置させてなるカートリッジ群を収納する少なくとも1つの区画室を有してなり、前記カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部が、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部と融着して融着部を形成可能なカートリッジ収納ケースである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジを収納するカートリッジ収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワンリール型の磁気記録テープカートリッジを集積包装する場合、図15に示すように、各カートリッジ101を1巻単位でケース103に収納し、該ケース103を複数個毎に段ボール箱105に詰めて緩衝性を保持していた。
しかし、このような集積包装の場合、カートリッジ101が段ボール箱105内に収納されるため、カートリッジ101の有無や種別等を確認するためには段ボール箱105を開封する必要があり、利便性に問題があった。また、段ボール箱が水濡れした場合、該段ボール箱が水を吸って壊れたり、内包されるカートリッジ101、更には磁気テープまで濡れてしまう状況もあった。
【0003】
このような課題を解決するものとして、例えば非特許文献1には、図16に示すように、水に濡れてもケース強度が低下しない、透明プラスチックで成形されたカートリッジを集積包装する収納ケース1が開示されている。
【0004】
しかし、前記非特許文献1に記載の収納ケース1は、その外周部にフランジ部11を備え、省スペースや衝撃吸収のため、フランジ部11が段ボール箱の内壁に殆ど接触した状態で収納されている。この状態で、例えば、段ボール箱を搬送した後に開封する際、収納ケース1を段ボール箱から取り出そうとしても、フランジ部11と段ボール箱の内壁との間には、殆ど手を入れる部位がないため、取り出し難い。更に、無理やり手を入れたりすると収納ケース1のエッジ部分で指を損傷する虞がある。
また、上記収納ケース1は、個々のカートリッジを収納するための収納空間3が複数の仕切り突起5で区画され、この区画された収納空間3にカートリッジを1巻単位で保管するものである。つまり、カートリッジ(不図示)が分散収納されていた。このため、実際の収納作業ではカートリッジを一つずつ収納しなければならず、カートリッジが大量にある場合には使い勝手が悪いという問題がある。
【0005】
【非特許文献1】UTO−Ultrium L−pack、[online]、TDK株式会社、[平成17年11月14日検索]、インターネット<URL:http://www.tdk.com/professional/lto/ltopack.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、互いに重ね合わされて使用されるカートリッジ収納ケース同士が強固に融着されており、強度が高く、高い気密性を有し、外部から強い衝撃が加わっても内部に収納されたカートリッジを確実に保護することができるカートリッジ収納ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジを収納するカートリッジ収納ケースであって、他のカートリッジ収納ケースと重ね合わされて使用され、前記カートリッジを内部に保持可能であり、
複数の前記カートリッジを並置させてなるカートリッジ群を収納する少なくとも1つの区画室を有してなり、
前記カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部が、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部と融着して融着部を形成可能であることを特徴とするカートリッジ収納ケースである。
該カートリッジ収納ケースにおいては、少なくとも1つの区画室により、複数のカートリッジを厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群が保持される。このため、従来のように、複数のカートリッジを個々に収納する必要がなく、厚み方向に重ねて保持した複数のカートリッジが纏めて区画室内に収納され、短時間で効率良く収納される。また、前記融着部によって前記カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部が、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部と融着される。即ち、前記カートリッジ収納ケースにおける外周縁部と、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部との接合面を構成する樹脂が溶融して一体となることにより強固に接着される。その結果、カートリッジ収納ケース同士が極めて強く接着され、高い気密性を有するので、例えばカートリッジ収納ケースを収納及び運搬する際に誤って落下させてしまった場合、蓋側のカートリッジ収納ケースが外れて内部に収納されているカートリッジが外に飛び出して破損することが防止される。また、区画室が密閉され、外部からのほこり、湿気、水、及び他の有害物質に対してカートリッジが保護される。
更に、従来のように、前記カートリッジ収納ケースの凸部(凸条)と、他のカートリッジ収納ケースの凹部(凹溝)とを係合させるだけのものでは、一度開封しても何度でもカートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースとを係合させることができるので、収納ケースを開封したのか否かを判別するのが困難であったが、前記融着部を形成し該融着部を切り離して開封するので融着部の有無から一度開封したことが容易に判別可能である。
<2> 融着部が、カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の全周と、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の全周とが融着して形成された前記<1>に記載のカートリッジ収納ケースである。
該カートリッジ収納ケースにおいては、カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の全周と、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の全周とが融着され、外周縁部の全周にわたって融着部が形成されているので、更に強度が高く、高い気密性が得られる。
<3> 融着部が、カートリッジ収納ケースの外周縁部と他のカートリッジ収納ケースの外周縁部との当接部を超音波融着して形成された前記<1>から<2>のいずれかに記載のカートリッジ収納ケースである。
該カートリッジ収納ケースにおいては、超音波融着により融着部が形成される。このため、接着剤や接着層が不要であり、短時間で、強度が高く、高い気密性を有するカートリッジ収納ケースが作製できる。
<4> カートリッジ収納ケースが、熱可塑性樹脂の一体成形品からなる前記<1>から<3>のいずれかに記載のカートリッジ収納ケースである。
該カートリッジ収納ケースにおいては、比較的入手の容易な熱可塑性樹脂を用いて、高精度にカートリッジ収納ケースを容易かつ安価に量産することができる。
<5> 熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリスチレン樹脂のいずれかを含む前記<4>に記載のカートリッジ収納ケースである。
該カートリッジ収納ケースにおいては、該カートリッジ収納ケースの材料としてポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリスチレン樹脂のいずれかを用いているので、材料の容易な入手が可能となると共に、容易かつ安価な真空成形が可能となる。
<6> 熱可塑性樹脂が、透光性を有する前記<4>から<5>のいずれかに記載のカートリッジ収納ケースである。
該カートリッジ収納ケースにおいては、カートリッジ収納ケースの材料として、透光性を有する熱可塑性樹脂を用いている。このため、各区画室内に収納されるカートリッジが外部より視認可能となり、各区画室内のカートリッジ収納状況が容易に把握することができる。
<7> 0.5〜2.0mmの厚みを有する熱可塑性樹脂のシートを延伸加工して形成した前記<4>から<6>のいずれかに記載のカートリッジ収納ケースである。
該カートリッジ収納ケースにおいては、厚みが0.5〜2.0mmの熱可塑性樹脂のシートを延伸加工して形成することで、複数のカートリッジ群を収納する区画室の最低構造強度が経済的に確保されるとともに、ケース全体の重量も最低強度を満足しつつ最小とすることができる。また、上記厚みで形成されることで、外力が加えられた際の適度な変形が可能となり、収納されたカートリッジに対する衝撃吸収作用を最適に確保することが可能となる。つまり、これより薄厚であれば、変形が容易となり過ぎ、衝撃吸収効果が低下する。また、これより厚くなれば、変形し難くなり、衝撃力が直接収納カートリッジに伝達されてしまうことになる。このように熱可塑性樹脂のシート厚みが上記厚みに設定されることで、最適な衝撃吸収部(クラッシャブルゾーン)の形成が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、カートリッジ収納ケースにおける外周縁部と他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部とが強固に融着されており、強度が高く、高い気密性を有し、外部から強い衝撃が加わってもカートリッジ収納ケース同士が外れることがなく、内部に収納されたカートリッジを確実に保護することができるカートリッジ収納ケースを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のカートリッジ収納ケースは、他のカートリッジ収納ケースと重ね合わされて使用され、前記カートリッジを内部に保持可能であり、少なくとも1つの区画室と、融着部とを有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0010】
前記カートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースは、一つの金型により成型した同一構造(1種類)であり、いずれか一方を蓋側ケースとし、他方を身側ケースとすることができ、前記蓋側ケースは上ケースと称し、前記身側ケースは下ケースと称することもある。
なお、本発明のカートリッジ収納ケースは、異なる金型から成形された異なる構造のカートリッジ収納ケースを組み合わせるものであってもよく、また、一つの金型により成形した同一構造のカートリッジ収納ケースに切削加工、又は貼り付け加工を施した異なる構造のカートリッジ収納ケースと組み合わせてもよい。
【0011】
前記カートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースは、両者を上下から重ね合わせて、内部に磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジを内部に収納することができる機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材料等について適宜選択することができる。
【0012】
前記カートリッジ収納ケースの形状としては、他のカートリッジ収納ケースと重ね合わされて使用することができ、前記カートリッジを内部に保持可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば区画室と、外周縁部(フランジ)と、融着部とを有し、更に必要に応じてその他の部分からなる平板状のケースなどが好ましい。
【0013】
前記カートリッジ収納ケースの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば1種単独で形成されていてもよいし、2種以上の部材で形成されていてもよい。
【0014】
前記カートリッジ収納ケースの大きさとしては、区画室の数、区画室の大きさ等に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジを収納する場合、1つの区画室が、複数個のカートリッジからなるカートリッジ群の体積と、略同一の収納容積を有する大きさに形成され、該区画室を2〜10つ有する大きさが好ましい。
前記カートリッジ収納ケースの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.5〜2.0mmが好ましい。前記厚みが0.5mm未満であると、変形が容易となり過ぎ、衝撃吸収効果が低下することがある。一方、前記厚みが2.0mmを超えると、変形し難くなり、衝撃力が直接収納されるカートリッジに伝達されてしまうことになる。
【0015】
前記カートリッジ収納ケースの材料としては、内部にカートリッジを収納する充分な強度を有し、成形性に優れたものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、プラスチック、紙、ゴムなどが挙げられる。これらの中でも、透光性を有し、成形性及び耐衝撃性に優れている点からプラスチックが特に好ましい。
前記金属としては、加工性のよいものが好ましく、例えば鉄、アルミニウム、黄銅、銅、ステンレススチールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記プラスチックとしては、充分な透光性を有し、成形性及び耐衝撃性に優れているものが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ナイロン、アルキッド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、材料の入手が容易であると共に、廃品となった後の回収、又は再利用が可能で、容易かつ安価な真空成形が可能である点からポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂が好ましく、耐衝撃性に優れている点からポリスチレン樹脂が特に好ましい。
なお、前記プラスチックを使用する場合には、前記プラスチックに各種の繊維(ガラス繊維、カーボン繊維等)、充填剤(炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カーボンナノチューブ、フラーレン等)などを配合することもできる。
【0017】
前記紙としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材パルプ、古紙パルプなどが用いられる。前記木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、NBSP、LBSP、GP、TMPなどが挙げられる。
前記古紙パルプの原料としては、財団法人古紙再生促進センターの古紙標準品質規格表に示されている、上白、罫白、クリーム白、カード、特白、中白、模造、色白、ケント、白アート、特上切、別上切、新聞、雑誌などが挙げられる。具体的には、情報関連用紙である非塗工コンピュータ用紙、感熱紙、感圧紙等のプリンタ用紙;PPC用紙等のOA古紙;アート紙、コート紙、微塗工紙、マット紙等の塗工紙;上質紙、色上質、ノート、便箋、包装紙、ファンシーペーパー、中質紙、新聞用紙、更紙、スーパー掛け紙、模造紙、純白ロール紙、ミルクカートン等の非塗工紙;化学パルプ紙、高歩留りパルプ含有紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ゴムとしては、例えば天然ゴム、合成ゴムなどが挙げられる。
【0018】
前記カートリッジ収納ケースの成形方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができ、材料としてプラスチックを用いた場合には、例えば、インフレーション成形、押出成形、射出成形、プレス成形、真空成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、カレンダー成形、スラッシュ成形、などが挙げられる。これらの中でも、真空成形が好ましく、具体的には、0.5〜2.0mmの厚みを有する熱可塑性樹脂のシートを延伸加工(真空成形)することが特に好ましい。
また、材料として紙を用いた場合には、例えば金型成型、注型成型、抜き型によりカットする方法などが挙げられる。
【0019】
−フランジ−
前記カートリッジ収納ケースの外周部(即ち少なくとも1つの区画室の外周部)には、その少なくとも一部にフランジが突設されている。該フランジは、カートリッジ収納ケースの長手方向の端部の位置であってもよく、カートリッジ収納ケースの短手方向(幅方向)の端部の位置であってもよく、カートリッジ収納ケースの全周に形成されていてもよい。前記フランジとしては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材料等について適宜選択することができる。前記フランジは、前記カートリッジ収納ケースが成型されるときに同時に成型される。
【0020】
−融着部−
前記融着部は、カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部が、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部と融着して形成される。
前記融着部は、特に制限はなく、目的に応じてその形状、大きさ、位置、形成方法等について適宜選択することができる。
前記融着部の形状及び大きさとしては、特に制限はなく、カートリッジ収納ケースの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
前記融着部の位置としては、カートリッジ収納ケースの外周縁部(即ち、フランジの外周縁部)の少なくとも一部であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の全周と、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の全周とを融着して形成されることが、カートリッジ収納ケース同士をより強固に融着でき、強度が高く、高い気密性を有し、外部から強い衝撃が加わってもカートリッジ収納ケース同士が外れることがなく、内部に収納されたカートリッジを保護することができる点から好ましい。
前記融着部の形成方法としては、カートリッジ収納ケースにおける外周縁部と他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部とを融着することができれば特に制限はなく、カートリッジ収納ケースの材料などに応じて適宜選択することができ、熱融着法、超音波融着法、レーザー溶着法、ヒートシール法、などが挙げられる。これらの中でも、接着剤や接着層が不要であり、短時間で、強度が高く、高い気密性を有するカートリッジ収納ケースを作製できる点から、超音波融着法が特に好ましい。
前記超音波融着法は、カートリッジ収納ケースの外周縁部と他のカートリッジ収納ケースの外周縁部との当接部に超音波振動を付与して融着する方法であり、好ましくは圧力をかけながら超音波振動を付与する方法である。具体的には、超音波融着機を用い、超音波発信印加時間、冷却保持時間、ホーン押し圧等の超音波融着条件を適宜調整することにより行うことができる。
【0021】
−把持部−
前記フランジは、少なくとも1つの把持部を有することが好ましい。該把持部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば孔部、切欠などが挙げられる。
前記孔部としては、フランジの中央部を角孔形状に切除した把持部であり、第1ケースと第2ケースとが係合された収納ケースは、いずれか一方の把持用孔部に手(指)を入れて、他方のフランジが下方となるようにして持ち運びすることが可能となっていると共に持ち上げることが可能になっている。また、カートリッジ収納ケースは、両手で両側の把持用孔部を掴んで、水平方向に持ち運ぶこともできる。
前記切欠としては、フランジの中央部から端縁まで切除した把持部であり、段ボール箱が開封されてから収納ケースを取り出すに際し、指等を挿入することで引き出しを容易にする機能を有する。また、両手で両側の切欠を掴んで引き出すこともできる。
【0022】
前記カートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースは、上記融着部と共に、相互に係合する凸部(凸条)と凹部(凹溝)とを備えていることが好ましい。
同一構造であるカートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースとが、上下から重ね合わされたときに、凸条が凹溝に入り込み、双方が係合する。これにより、区画室が密閉されて、耐水性を得ることができ、水に浮くことも可能である。また、ほこり、湿気、跳ねかけられた水、及び他の有害物質に対してカートリッジを保護することができる。つまり、1つのケースが、蓋としても、身としても使用されることとなる。このことから、1つの金型により成形した1種類のケースを用いて、凸条及び凹溝の係合により開閉が可能となる区画室を有するカートリッジ収納ケースが形成できる。
【0023】
−摘み片−
前記カートリッジ収納ケースの区画室の外周の少なくとも一部であるフランジには摘み片が延設されていることが好ましい。
前記摘み片としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材料等について適宜選択することができる。
前記摘み片の形状としては、指で摘み易い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、略円形、略半円形、略楕円形、略三角形、略四角形、などが挙げられる。
前記摘み片の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば1種単独で形成されていてもよいし、2種以上の部材で形成されていてもよい。
前記摘み片の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば前記カートリッジ収納ケースと同じ材料を用いることができ、前記摘み片はカートリッジ収納ケースが成型されるときに同時に成型される。
前記摘み片は、前記カートリッジ収納ケースの周縁の4つの隅部を傾斜辺で切除した面取り部に形成することが好ましく、カートリッジ収納ケースの外形の四辺を包絡した四角形領域の内側に形成されていることがより好ましい。このように摘み片を面取り部に延設すれば段ボール箱にカートリッジ収納ケースを収容する場合であっても、摘み片が収納の邪魔となることがない。
【0024】
<区画室>
前記複数の区画室は、複数のカートリッジを厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群を収納できるものであれば特に制限はなく、目的に応じてその数、形状、大きさ、材料などについて適宜選択することができる。
前記区画室の数としては、少なくとも1つであり、2つ以上が好ましく、2〜10つがより好ましく、2〜4つが更に好ましく、4つが特に好ましい。
前記区画室の形状及び大きさとしては、内部に収納するカートリッジの大きさ、カートリッジの数、カートリッジの種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジを収納する場合、1つの区画室が、複数のカートリッジからなるカートリッジ群の体積と、略同一の収納容積を有する大きさが好ましい。
前記カートリッジとしては、磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジが用いられるが、その他、矩形状の扁平体状であってもよい。前記カートリッジは複数個(2〜10つが好ましく、5つが特に好ましい)を厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群として前記区画室内に収納される。なお、前記カートリッジ及びカートリッジ群にはシュリンクパックを施しても構わない。
前記区画室の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば前記カートリッジ収納ケースと同じ材料を用いることができる。該区画室は前記カートリッジ収納ケースが成型されるときに同時に成型される。
前記区画室の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば1種単独で形成されていてもよいし、2種以上の部材で形成されていてもよい。
【0025】
前記区画室は、複数の前記カートリッジを厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群を保持する。
前記区画室は、立置したカートリッジにおける高さ方向の45〜55%(略半分)の部分が該区画室から外部に露出した状態で該カートリッジを収納可能であることが好ましい。これにより、区画室内に縦配置したカートリッジが身側(下)ケースから略半分突出しているので、身側(下)ケースからのカートリッジの取り出しが容易であり、切り欠きを設ける必要がない。
【0026】
−緩衝リブ−
前記区画室の外壁面には、第1緩衝リブ、第2緩衝リブ、及び第3緩衝リブを設けることが好ましい。
前記第1緩衝リブは、区画室内に収納されるカートリッジにおける厚み方向の区画室の外壁面に形成されていれば特に制限はなく、目的に応じてその数、形状、大きさ、材料などについて適宜選択することができる。前記第1緩衝リブの数は、該第1緩衝リブの大きさや区画室の大きさ等に応じて適宜選択することができ、例えば1〜5つが好ましく、2つがより好ましい。前記第1緩衝リブの形状は、例えば凸状、断面半円形状、断面半楕円形状などが好ましい。
前記第2緩衝リブは、前記カートリッジ収納ケースが成型されるときに同時に成型することができる。
【0027】
前記第2緩衝リブは、区画室内に収納されるカートリッジの厚み方向に垂直の区画室の外壁面に形成されていれば特に制限はなく、目的に応じてその数、形状、大きさ、材料などについて適宜選択することができる。前記第2緩衝リブの数は、該第2緩衝リブの大きさや区画室の大きさ等に応じて適宜選択することができ、例えば1〜5つが好ましく、2つがより好ましい。前記第2緩衝リブの形状は、凸状、断面半円形状、断面半楕円形状などが好ましい。
前記第2緩衝リブは、前記カートリッジ収納ケースが成型されるときに同時に成型することができる。
第1緩衝リブと第2緩衝リブとによって、カートリッジ収納ケースの外壁面とカートリッジとの間に空隙が形成されることとなり、その空間がクッション材となって耐衝撃性を高めるようになっている。
また、各区画室のコーナー部には、カートリッジの稜線部を包囲するような第3緩衝リブが形成されている。前記第3緩衝リブの形状は、凸状、断面円形状、断面半円形状、断面半楕円形状などが好ましい。第3緩衝リブは、第1緩衝リブと第2緩衝リブとの端部にそれぞれ配置されているために、カートリッジを収納した状態で、カートリッジ収納ケースを落下させた場合等の、カートリッジ稜線部の変形を効果的に阻止することができる。
【0028】
−仕切り部−
前記仕切り部は、複数の区画室を個々の空間に仕切ることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ等について適宜選択することができる。
前記仕切り部の形状としては、特に制限はなく、区画室の形状、区画室の大きさなどに応じて適宜選択することができ、例えば長板状、短板状などが挙げられる。
前記仕切り部の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば前記カートリッジ収納ケースと同じ材料を用いることができる。該仕切り部は、前記カートリッジ収納ケースが成型されるときに同時に成型することができる。
前記仕切り部の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば1種単独で形成されていてもよいし、2種以上の部材で形成されていてもよい。
【0029】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば各区画室外部底面部には、相互に遊嵌可能な大小の四角枠部が膨出されている。これにより、カートリッジ収納ケースが上下方向に積載されても、上側収納ケース下面の四角枠部が、下側収納ケース上面の四角枠部に嵌合して、相対的に横ずれ規制されて、段積み時の崩れ防止が図られるようになっている。
【0030】
また、カートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースとの最外周には、周縁を僅かに折り曲げた段曲げ部が形成されている。これにより、カートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースとを重ね合わさせた際に、段曲げ部が他方の周縁に被さり、防塵性、防水性が向上されるようになっている。
【0031】
また、カートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースとを重ね合わさせた状態でフランジに貫通孔を形成し、該貫通孔に結束部材を取り付けることができる。これにより、カートリッジをカートリッジ収納ケースに収納した状態で、カートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースとに互いに離反する方向に無理な力が加わっても、両者が分離することを防止できるようになっている。
【0032】
本発明のカートリッジ収納ケースにおいては、少なくとも1つの区画室により、複数のカートリッジを厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群が保持される。このため、従来のように、複数のカートリッジを個々に収納する必要がなく、厚み方向に重ねて保持した複数のカートリッジが纏めて区画室内に収納され、短時間で効率良く収納される。また、前記融着部によって前記カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部が、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部と融着される。即ち、前記カートリッジ収納ケースにおける外周縁部と、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部との接合面を構成する樹脂が溶融して一体となることにより接着される。その結果、カートリッジ収納ケース同士が極めて強く接着され、高い気密性を有するので、例えばカートリッジ収納ケースを収納する際や運搬する際に誤って落下させてしまった場合、蓋側のカートリッジ収納ケースが外れて内部に収納されているカートリッジが外に飛び出して破損することが防止される。また、区画室が密閉され、外部からのほこり、湿気、水、及び他の有害物質に対してカートリッジが保護される。
更に、従来のように、前記カートリッジ収納ケースの凸部(凸条)と、他のカートリッジ収納ケースの凹部(凹溝)とを係合させるだけのものでは、一度開封しても何度でもカートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースとを係合させることができるので、開封したことを判別するのが困難であったが、前記融着部を形成し該融着部を切り離して開封するので融着部の有無から一度開封したものであることが容易に判別できる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例について図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
なお、カートリッジ収納ケースと他のカートリッジ収納ケースは、同一構造を有しており、上下から重ね合わされた際にいずれか一方を蓋とし、他方を身とすることができるので、以下の実施例では、蓋側のケースを上ケースとし、身側のケースを下ケースとして説明した。
【0034】
図1は本発明のカートリッジ収納ケースの上ケース、下ケースの分離された分解斜視図、図2Aは図1に示した上ケースの平面視図、図2Bは図1の側面視図、図3は図2のA矢視図である。図4は、上ケースと下ケースとを重ね合わせた状態を示す概略断面図である。本発明の実施例に係るカートリッジ収納ケース(以下、単に「収納ケース」と称することもある)100は、例えば磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジ21を収納する場合に好適に用いることができる。
【0035】
カートリッジ21は、磁気テープ巻回リール(不図示)を、該磁気テープ巻回リールの軸線が厚み方向となる向きで内設している。この実施例では、カートリッジ21が平面視正方形の扁平体である場合を例に説明するが、カートリッジは、その他、矩形状の扁平体状であってもよい。
【0036】
図1に示す収納ケース100は、同一構造の上ケース23と、下ケース25とを上下から重ね合わされることにより、図4に示すように、内部に複数の区画室27が形成されるようになっている。本実施例では、4方に配設された区画室27を4つに仕切るように十字方向の仕切り部47が形成され、4つの区画室27が形成される。それぞれの区画室27には、複数のカートリッジ21を図1に示すように、厚み方向に5つ並置させてブロック状としたカートリッジ群29を保持可能としている。なお、カートリッジ21は、図1に示すように、強度の弱いテープ取り出し口を区画室27の中央側になるように、テープ取り出し口を上にする向きで配置することが好ましく、テープ取り出し口を区画室27毎で相互に向かい合わせる配置とすることがより好ましい。その場合には、テープ取り出し口が収納ケース100の中央側に向けられて、ケース外方からの衝撃からテープ取り出し口を保護することができる。
【0037】
本実施例では、1つの区画室27が、5つのカートリッジ21からなるカートリッジ群29の体積と、略同一の収納容積を形成している。したがって、各区画室27には、カートリッジ21を無造作に詰め込んでも、個々のカートリッジ21に対する仕切壁がないので、簡単に入れることができる。例えば、カートリッジ21の2〜3つは纏めて掴んで詰め込むことができ、一つ一つ掴んで挿入する従来品に比べて、収納の作業効率が格段に向上されている。
【0038】
上ケース23と下ケース25とが重ね合わされてなる収納ケース100は、図5中破線で示す外周縁部(区画室の周囲に突設されたフランジ31、フランジ32の外周縁部)が融着されて、融着部39が形成されている。これにより、収納ケースの強度が高くなり、高い気密性が得られ、カートリッジ収納ケースを収納及び運搬する際に誤って落下させてしまった場合、蓋側のカートリッジ収納ケースが外れて内部に収納されているカートリッジが外に飛び出して破損することが防止できる。また、区画室が密閉され、ほこり、湿気、水、及び他の有害物質に対してカートリッジを保護することができる。
本実施例では、図5に示すように、カートリッジ収納ケースの外周縁部の全周にわたって融着部39が形成されている。この融着部39は、上ケース23の外周縁部と下ケース25の外周縁部とが当接してなる当接部に超音波融着機(日本エマソン株式会社製、ブランソン2000)を用いて、下記の条件で超音波融着を行うことにより形成した。
−超音波融着条件−
・超音波発振印加時間:0.6秒間
・冷却保持時間:0.4秒間
・発振機周波数:20kHz
・ホーン押圧:0.5N/cm
【0039】
また、収納ケース100は、その外周縁部が融着されて、融着部39が形成されていると共に、更に上ケース及び下ケースが相互に係合する凸部(凸条)と凹部(凹溝)とを備えていることが好ましい。本実施例では、図6A、図6B、及び図7に示すように、4つの区画室27を包囲する周囲に、図6Aのケースセンター線45を対称に、上下に凸条41と凹溝43とが形成されている。即ち、上ケース23と、下ケース25とは、センター線45を挟み、一方にコ字状の凸条41が連続して形成され、他方にコ字状の凹溝43が連続して形成されている。
【0040】
同一構造である上ケース23と下ケース25とが、上下に組み合わされたときに、凸条41が凹溝43に入り込み、双方が係合する。これにより、区画室27が密閉されて、耐水性を得ることができ、水に浮くことも可能である。また、ほこり、湿気、水、及び他の有害物質に対してカートリッジ21を保護することができる。つまり、一つのケースが、蓋としても、身としても使用されることとなる。このことから一つの金型により成形した一種類のケースを用いて、凸条41、凹溝43により開閉が可能となる区画室27の形成される収納ケース100が構成されている。
【0041】
本実施例では、図1に示すように、複数のカートリッジ25が、区画室27内にブロック状に纏めて収納される分、フランジ部を含めた従来の図16に示す収納ケース1との同一の収納面積(規格により決定される種類のもの)で、複数のカートリッジが分散収納される場合に比べ、収納に寄与しない余剰面積が確保可能となる。収納ケース100では、この余剰面積部分が衝撃吸収部(所謂クラッシャブルゾーン)として、つまり、従来の図16に示す収納ケース1のフランジ部11に比較して本実施例のフランジ31のようにより広い面積として利用されている。
【0042】
図2Aに示すように、上ケース23、及び下ケース25の磁気テープ巻回リールの軸線方向両端側には、衝撃吸収部であるフランジ31,31が横方向に延設されている。また、それぞれのフランジ31,31には、中央部を角孔形状に切除した把持部である把持用孔部33,33が形成されている。つまり、上ケース23と下ケース25とが係合された収納ケース100は、いずれか一方の把持用孔部33に手(指)を入れて、他方のフランジ31が下方となるようにして持ち運びすることが可能となっていると共に持ち上げることが可能になっている。これとは異なり、収納ケース100は、両手で両側の把持用孔部33,33を掴んで、水平方向に持ち運んだり、片手で把持用孔部33を掴んで垂直方向に持ち上げることもできる。
【0043】
上記のように、一方の把持用孔部33を片手で掴み、他方のフランジ31が下方となるようにして収納ケース100を持ち運ぶ際、仮に収納ケース100が手から滑り落ちると、収納ケース100は、下方のフランジ31が床面に衝突する。この際、衝撃吸収部となるフランジ31は、収納ケース100及びカートリッジ群29の荷重により変形し、その変形によって衝撃エネルギーが吸収されて、収納されたカートリッジ21に対する衝撃が緩和されるようになっている。
【0044】
一般に、カートリッジ21は、リール軸方向に加わる衝撃に弱い。これは、巻きテープの端面にはテープ飛び出しが発生している場合があり、このテープ飛び出しによりテープ端がリールフランジに当たることで、テープが潰れたり折れ曲がる等すると、磁気テープの円滑な巻き取り繰り出しが阻害され、最悪の場合、読み書きができなくなってしまうためである。本実施例では、カートリッジ21のリール軸線方向に、衝撃吸収部となるフランジ31を配設することにより、衝撃に対して脆弱なリール軸線方向の耐衝撃性が向上さするようになっている。
【0045】
図8は、各区画室の外壁面に設けられる第1緩衝リブ35、第2緩衝リブ38、及び第3緩衝リブ37を表した収納ケースの要部外観図である。
収納ケース100の側面を構成する各区画室27の外壁面には、区画室27内に収納されるカートリッジ21における厚み方向に第1緩衝リブ35が形成されている。本実施例では、第1緩衝リブ35は、各区画室27にカートリッジ21の厚み方向に凸状に2個形成されている。また、カートリッジ21の厚み方向に垂直の収納ケース100の側面には第2緩衝リブ38が形成されている。本実施例では、第2緩衝リブ38においても、各区画室27に凸状に2つ形成される。これらは、上ケース及び下ケースが熱可塑性樹脂で成型されるときに同時に成型される。
【0046】
第1緩衝リブ35は、外部から物体が区画室27に衝突した場合に、カートリッジ21の厚み方向に衝撃が与えられると、自ら撓むことで、その衝撃を吸収することができる。また同様に、第2緩衝リブ38は、外部から物体が区画室27に衝突した場合に、カートリッジ21の短手方向(幅方向)の衝撃が与えられると、自ら撓むことで、その衝撃を吸収することができる。つまり、第1緩衝リブ35と第2緩衝リブ38とによって、ケース外壁面とカートリッジ21との間に空隙が形成されることとなり、その空間がクッション材となって耐衝撃性を高めるようになっている。
【0047】
加えて、各区画室27のコーナー部には、カートリッジ21の稜線部を包囲するような第3緩衝リブ37が形成されている。第3緩衝リブ37は、第1緩衝リブ35と第2緩衝リブ38との端部にそれぞれ配置されているために、カートリッジ21を収納した状態で、収納ケース100を落下させた場合等の、カートリッジ稜線部の変形を効果的に阻止することができる。
【0048】
図9は収納ケースのフランジの面取り部に突設された摘み片を表す要部拡大図、図10は係合された上ケース、下ケースのそれぞれの摘み片の相互位置関係を表す要部斜視図である。
カートリッジ群29を収納した収納ケース100は、外形状と略同一の内形状となった不図示の段ボール箱に収容されることがある。このため、該段ボール箱からの取り出し性を良好とするため、フランジ31の両側には略45度の傾斜辺となった面取り部49が形成されている。これにより、段ボール箱に収容された収納ケース100は、段ボール箱内壁面との間に、この面取り部49による三角穴が形成されて、手指の挿入による容易な取り出しが行えるようになっている。
【0049】
上ケース23及び下ケース25のそれぞれの外周縁部、即ち、フランジ31には摘み片51が延設されている。本実施例において、上ケース23及び下ケース25は、周縁に4つの隅部を有する四角形の外形状で形成されている。上ケース23及び下ケース25の少なくとも一つの隅部には、この隅部を傾斜辺で切除した面取り部49が形成されている。また、摘み片51が、上ケース23及び下ケース25の外形の四辺を包絡した四角形領域の内側に形成されている。摘み片51をこの面取り部49に延設すれば、摘み片51が四角形状のケース外形から突出せず、例えば、ケース外形状と同一の内形を有する段ボール箱にケースを収容する場合であっても、摘み片51が収納の邪魔となることがない。
【0050】
収納ケース100では、それぞれの外周縁部を融着させて一体となった上ケース23と下ケース25に対し、それぞれのケース周縁に設けられた摘み片51,51を摘むことで、離反方向の開放力を容易に作用させることができる。換言すると、摘み片51の無い場合には解除が困難となる大きな接着力で、ケース同士が融着できるようになる。
【0051】
本実施例では、4つの隅部に面取り部49が形成されている。また、本実施例において、摘み片51は、図2Aに示したセンター線45を挟む一対の面取り部49,49に設けられている。摘み片51,51は、面取り部49の傾斜辺中央から偏芯して配設される。即ち、図10に示すように、面取り部49の中央から片側に寄せられている。例えば、図2Aに示す上ケース23の場合、左上の面取り部49に延設された摘み片51は、傾斜辺中央から左斜め下に偏芯され、左下の面取り部49に延設された摘み片51は、傾斜辺中央から右斜め下に偏芯されている。
【0052】
同一金型で成形された同一構造の上ケース23と下ケース25とが図1に示すように、区画室27を形成して上下方向から重ねられると、摘み片51は、図10に示すように、互いが完全に重ならず、傾斜辺に沿ってずれた状態で配置されることとなる。これにより、双方の摘み片51を、上下逆方向から離反することにより、上ケース23と下ケース25との係合が解除され易くなっている。
【0053】
図11は、上ケース23及び下ケース25の凹部と凸部との形状を表す拡大断面図である。上記のように、凸条41と凹溝43とは、摘み片51が設けられることにより、摘み片51が設けられない場合に比べて高い係合力で係合する構造とすることができる。具体的には、凹溝43の開口幅W1を、凸条41の幅Wより若干小さく形成することが可能となる。また、凸条41は、突出先端幅Wが広く、基端幅W2が若干小さいテーパ状であってもよい。この場合、凹溝65を、溝底の幅W3が凸条41の突出先端幅Wと同等のテーパ溝とする。このような僅かなテーパ形状で凸条41及び凹溝43を形成することで、高いシール性を確保しつつ、高い係合力を付与することができる。
【0054】
また、上ケース23と下ケース25との最外周には、周縁を僅かに折り曲げた段曲げ部81が形成されている。この段曲げ部81は、上記の凸条41と凹溝43と同様に、センター線45を対称にいずれか一方に形成されている。これにより、上ケース23と下ケース25とを重ね合わさせた際に、段曲げ部81が他方の周縁に被さり、防塵性、防水性が向上されるようになっている。
【0055】
更に、各区画室27の外部底面部には、相互に遊嵌可能な大小の四角枠部53a,53bが膨出されている。これにより、収納ケース100が上下方向に積載されても、上側収納ケース100下面の四角枠部53a,53bが、下側収納ケース100上面の四角枠部53b,53aに嵌合して、相対的に横ずれ規制されて、段積み時の崩れ防止が図られるようになっている。
【0056】
上ケース23、下ケース25のそれぞれは、熱可塑性樹脂の一体成形品からなる。このため、比較的取り扱い性が容易な材料を用いて、カートリッジを確実に保護する堅牢性と、適宜な衝撃吸収性を備えた上ケース23、下ケース25が容易かつ安価に量産可能となっている。本実施例では、衝撃強さ8Jのポリスチレン樹脂を用いた。
【0057】
また、熱可塑性樹脂は、透光性を有するものであることが好ましい。これにより、上ケース23、下ケース25が係合され、区画室27が密閉状態となった場合においても、区画室27内に収納されるカートリッジ21が外部より視認可能となり、区画室27内のカートリッジ収納状況が容易に把握可能となる。
【0058】
また、厚みが0.5〜2.0mmの熱可塑性樹脂のシートを用いて、延伸加工により形成(真空成形)することで、複数のカートリッジ群を収納する区画室の最低構造強度が経済的に確保されるとともに、ケース全体の重量も最低強度を満足しつつ最小とすることができる。また、上記厚みで形成されることで、外力が加えられた際の適度な変形が可能となり、収納カートリッジに対する衝撃吸収作用を最適に確保することが可能となる。つまり、これより薄厚であれば、変形が容易となり過ぎ、衝撃吸収効果が低下する。また、これより厚くなれば、変形し難くなり、衝撃力が直接収納カートリッジに伝達されてしまうことになる。本実施例では、熱可塑性樹脂のシート厚みが上記厚み範囲に設定されることで、最適な衝撃吸収部(クラッシャブルゾーン)の形成が可能となる。
【0059】
したがって、上記のカートリッジ収納ケース100によれば、複数のカートリッジ21を厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群29を保持する少なくとも一つの区画室27を形成したので、複数のカートリッジ21をブロック状に纏めた分、同一の収納面積で複数のカートリッジ21を分散収納する場合に比べ、収納に寄与しない余剰面積を確保することができる。そして、この余剰面積部分を衝撃吸収部(所謂クラッシャブルゾーン)として利用することにより、ケース落下時等の衝撃を吸収し、収納されたカートリッジ21に対する耐衝撃性を向上させることができる。
【0060】
また、従来のように、複数のカートリッジを個々に収納する必要がないので、厚み方向に重ねて保持した複数のカートリッジ21を纏めて区画室27に納めることができ、短時間に効率の良い収納が可能となり、収納作業効率を大幅に向上させることができる。
【0061】
また、図12に示すように、上ケース23と下ケース25とを組み付け、外周縁部を融着することで、カートリッジ群29を収納した収納ケース100は、外部からカートリッジ21の厚み方向であるX方向又は反X方向の衝撃が区画室27に与えられると、上ケース23の第1緩衝リブ35と下ケース25の第1緩衝リブ35とがそれぞれ撓むことで、その方向の衝撃を吸収することができる。更に、外部からカートリッジ21の短手方向(幅方向)であるZ方向又は反Z方向の衝撃が区画室27に与えられると、上ケース23の第2緩衝リブ38と下ケース25の第2緩衝リブ38とがそれぞれ撓むことで、その方向の衝撃を吸収することができる。このとき、区画室27に対する衝撃がコーナー部分に与えられた場合は、上ケース23の第3緩衝リブ37と下ケース25の第3緩衝リブ37が撓むのに加えて、第1緩衝リブ35又は第2緩衝リブ38が撓むことで、衝撃の吸収を助長することができる。
【0062】
したがって、上記のカートリッジ収納ケース100によれば、第1緩衝リブ35と第2緩衝リブ38と第3緩衝リブ37とによって、外部から物体が区画室27に衝突した場合や、落下させてしまった場合等に、衝撃を吸収してカートリッジ収納ケース100の破損及びカートリッジ21への損傷を防止することでカートリッジ21の品質を保障することができる。また、複数のカートリッジ21を厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群29を保持する区画室27により、複数のカートリッジ21をブロック状に纏めた分、同一の収納面積で複数のカートリッジを分散収納する場合に比べ、収納に寄与しない余剰面積を確保することができる。そして、この余剰面積部分を衝撃吸収部(所謂クラッシャブルゾーン)として利用することにより、ケース落下時等の衝撃を吸収し、カートリッジ21に対する耐衝撃性を向上させることができる。また、従来のように、複数のカートリッジを個々に収納する必要がないので、厚み方向に重ねて保持した複数のカートリッジ21を纏めて区画室に納めることができ、短時間に効率の良い収納が可能となり、収納作業効率を大幅に向上させることができる。
【0063】
図13に示すように、カートリッジ群29を収納した収納ケース100は、外形状と略同一の内形状となった段ボール箱80に収容される。そして、段ボール箱80が開封されてから収納ケース100を取り出すに際し、フランジ31に形成されている把持用孔部33に指等を挿入することで容易に引き出しを行うことができる。また、段ボール箱80からの取り出し性を更に良好とするため、フランジ31の両側には略45度の傾斜辺となった面取り部49が形成されている。これにより、段ボール箱80に収容された収納ケース100は、段ボール箱内壁面との間に、この面取り部49による三角穴が形成されるために、手指の挿入による容易な取り出しを行えるようになっている。
【0064】
図14は、把持部の他の構成を示す収納ケースを引き出す際の一部破断斜視図である。
この場合、フランジ31には、該フランジ31の中央部から端縁まで切除した把持部である把持用切欠部61が形成されている。把持用切欠部61は、段ボール箱80が開封されてから収納ケース100を取り出すに際し、指等を挿入することで引き出しを容易にする機能をもつ。そして、この場合、両手で両側の把持用切欠部61,61を掴んで引き出すようにするのが好ましい。
【0065】
したがって、前記カートリッジ収納ケース100によれば、段ボール箱80から取り出す際に、把持部である把持用孔部33、把持用切欠部61によって容易に引き出しを行うことができる。また、複数のカートリッジを厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群29を保持する四つの区画室27を形成したので、複数のカートリッジ21をブロック状に纏めた分、図16に示す従来の収納ケース1のように同一の収納面積で複数のカートリッジ21を分散収納する場合に比べ、収納に寄与しない余剰面積を確保することができる。そして、この余剰面積部分をフランジとして衝撃吸収部(所謂クラッシャブルゾーン)に利用することにより、ケース落下時等の衝撃を吸収し、カートリッジ21に対する耐衝撃性を向上させることができる。また、従来のように、複数のカートリッジを個々に収納する必要がないので、厚み方向に重ねて保持した複数のカートリッジ21を纏めて区画室27に納めることができ、短時間に効率の良い収納が可能となり、収納作業効率を大幅に向上させることができる。
【0066】
以上、本発明のカートリッジ収納ケースの一実施例について詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更しても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のカートリッジ収納ケースは、互いに重ね合わされて使用されるカートリッジ収納ケース同士が強固に融着されており、強度が高く、高い気密性を有し、外部から強い衝撃が加わっても内部に収納されたカートリッジを確実に保護することができるので、例えばワンリール型の磁気記録テープカートリッジを集積包装する収納ケースとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明のカートリッジ収納ケースの上ケースと下ケースとが分離された状態を示す分解斜視図である。
【図2A】図2Aは、図1の下ケースの平面視図である。
【図2B】図2Bは、図1の下ケースの側面視図である。
【図3】図3は、図2Aの矢視図である。
【図4】図4は、本発明のカートリッジ収納ケースの上ケースと下ケースとが重ね合わされた状態を示す概略断面図である。
【図5】図5は、本発明のカートリッジ収納ケースの上ケースと下ケースとが重ね合わされた状態を示す概略平面図である。
【図6A】図6Aは、本発明の別のカートリッジ収納ケースの下ケースの平面視図である。
【図6B】図6Bは、図6Aの下ケースの側面視図である。
【図7】図7は、図6Aの矢視図である。
【図8】図8は、区画室の外壁面に設けられる第1〜第3緩衝リブを表した収納ケースの要部外観図である。
【図9】図9は、カートリッジ収納ケースのフランジの面取り部に突設された摘み片を表す要部拡大図である。
【図10】図10は、係合された上ケース、下ケースのそれぞれの摘み片の相互位置関係を表す要部斜視図である。
【図11】図11は、凹部と凸部との形状を表す拡大断面図である。
【図12】図12は、カートリッジ収納ケースの上ケースと下ケースとを重ね合わさせた状態を示す斜視図である。
【図13】図13は、カートリッジ収納ケースを引き出す際における一部破断斜視図である。
【図14】図14は、把持部の他の構成を示すカートリッジ収納ケースを引き出す際の一部破断斜視図である。
【図15】図15は、従来の段ボール箱収納方式を示す説明図である。
【図16】図16は、従来の収納ケースを表した斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1 収納ケース
3 収納空間
5 仕切り突起
7、9 最端部のケース部位
21 カートリッジ
23 上ケース
25 下ケース
27 区画室
29 カートリッジ群
31 フランジ
32 フランジ
35 第1緩衝リブ
37 第3緩衝リブ
38 第2緩衝リブ
39 融着部
41 凸条(凸部)
43 凹溝(凹部)
47 仕切り部
49 面取り部
51 摘み片
81 段曲げ部
100 カートリッジ収納ケース
101 カートリッジ
103 ケース
105 段ボール箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジを収納するカートリッジ収納ケースであって、他のカートリッジ収納ケースと重ね合わされて使用され、前記カートリッジを内部に保持可能であり、
複数の前記カートリッジを並置させてなるカートリッジ群を収納する少なくとも1つの区画室を有してなり、
前記カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部が、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の少なくとも一部と融着して融着部を形成可能であることを特徴とするカートリッジ収納ケース。
【請求項2】
融着部が、カートリッジ収納ケースにおける外周縁部の全周と、他のカートリッジ収納ケースにおける外周縁部の全周とが融着して形成された請求項1に記載のカートリッジ収納ケース。
【請求項3】
融着部が、カートリッジ収納ケースの外周縁部と他のカートリッジ収納ケースの外周縁部との当接部を超音波融着して形成された請求項1から2のいずれかに記載のカートリッジ収納ケース。
【請求項4】
カートリッジ収納ケースが、熱可塑性樹脂の一体成形品からなる請求項1から3のいずれかに記載のカートリッジ収納ケース。
【請求項5】
熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリスチレン樹脂のいずれかを含む請求項4に記載のカートリッジ収納ケース。
【請求項6】
熱可塑性樹脂が、透光性を有する請求項4から5のいずれかに記載のカートリッジ収納ケース。
【請求項7】
0.5〜2.0mmの厚みを有する熱可塑性樹脂のシートを延伸加工して形成した請求項4から6のいずれかに記載のカートリッジ収納ケース。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−100706(P2008−100706A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283462(P2006−283462)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】