説明

カートン

【課題】カートン内の容積の減少を抑えつつ、カートンの側面部の剛性を向上させることができるカートンを提供する。
【解決手段】カートン1は、底部材10、壁体20、支柱30、上部材40および足部50によって構成されている。底部材10は、収納対象物が載置される載置部11の縁部に起立した状態で下側片部12が形成されている。壁体20は、強化段ボールをコ字状に形成して構成されている。支柱30は、下側片部12に連結される連結部31の両側に壁体20の厚さに相当する段差を介して張り出した張出部32が形成されている。上部材40は、壁体20上に配置される天板部41の縁部に下垂した上側片部42が形成されている。壁体20は、支柱30が底部材10の下側片部12および上部材40の上側片部42にそれぞれ連結されることにより、同下側片部12および同上側片部42と支柱30の張出部32とによって挟まれた状態で支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品、例えば、自動車のエンジン、トランスミッションおよびこれらの部品などを輸送するために、これらの物品を収納対象物として収納するカートンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品、例えば、自動車のエンジン、トランスミッションおよびこれらの部品などを輸送する際においては、輸送対象となる物品をカートン内に収納した状態で行われている。このような物品の輸送に用いられるカートンは、繰り返し使用するため、または使用後の廃棄の利便性を考慮して組立ておよび分解が容易にできるように構成されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、方形状の底皿部の縁部上に固定材により互いに連結した複数の側面部を配置するとともに、これらの固定材および側面部上に蓋部を被せた構成のカートンが開示されている。この場合、各側面部は、断面形状がH字状に形成された固定材の凹部に挿し込まれて互いに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−58680号公報
【0005】
しかしながら、このような従来のカートンにおいては、複数の側面部を互いに連結する固定材の断面形状がH字状に形成されているため厚さが厚くなり、カートン内の容積が減少するという問題がある。また、固定材に対して底皿部および蓋部が固定されていないため、固定材および側面部の安定性が乏しいとともに、カートンの外側から加えられる押圧力によって固定材および側面部が容易にカートンの内側に変位または変形して収納物を損傷することがあるという問題がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、カートン内の容積の減少を抑えつつ、カートンの側面部の剛性を向上させることができるカートンを提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明の特徴は、収納対象物が載置される載置部の縁部に起立した状態の下側片部を有する底部材と、剛性を有する素材で構成され、底部材の縁部における同縁部の全周を少なくとも2等分する位置にそれぞれ起立した状態で設けられる支柱と、前記支柱間における底部材の縁部上に起立するとともに同縁部に沿った形状で下側片部の内側に設けられる壁体と、支柱の上端部に連結され、壁体の上端部上に配置される天板部の縁部に壁体の外側に下垂した状態の上側片部を有する上部材とを備え、支柱は、下側片部の内側に連結される連結部と壁体の厚さに対応する段差を介して連結部の両側に張り出した張出部とを備えることにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る発明の特徴によれば、カートンの側面部を構成する壁体は、底部材の縁部上における底部材の縁部に設けられた下側片部および上部材の縁部に設けられた上側片部と底部材の縁部に設けられた支柱の張出部との間に設けられる。この場合、支柱は、連結部の両側に張出部が張り出した断面形状がハット状(縁付帽子)に形成されており、その厚さは、主として、支柱を構成する素材の厚さに壁体の厚さを加えたものとなる。すなわち、本発明に係るカートンにおいては、底部材の下側片部および上部材の上側片部と支柱の張出部とによって壁体を挟んで支持しているため、支柱の厚さを従来技術に係る固定材に比べて薄くすることができる。これにより、カートン内の容積の減少を抑えることができる。この場合、カートン内の容積の減少を抑えることができることは、従来と同じ容積のカートンであればカートンにおける構成のコンパクト化および軽量化を図ることができることを意味する。また、支柱は、壁体を底部材の下側片部と上部材の上側片部とで挟んで支持するために、これらの底部材および上部材にそれぞれ連結されている。これにより、支柱および壁体からなるカートンの側面部は、カートンの外側から加えられる押圧力に対する剛性が向上する。なお、この場合、従来技術に係る固定材は、断面形状がH字状に形成されていることから、この固定材を底皿部や蓋部に固定することは実質的に困難である。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記カートンにおいて、底部材は、方形状に形成されており、支柱は、底部材の縁部における同縁部の全周を2等分する位置にそれぞれ設けられており、壁体は、断面形状がコ字状に折り曲げられて前記2つの支柱間に配置されていることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、カートンは、2つずつの支柱および壁体によって構成されている。これにより、カートンとして必要な強度を維持しつつ、カートンの構成を簡単にすることができ、カートンの組立ておよび分解を容易にすることができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記カートンにおいて、互いに対向する側に配置された支柱の下方における底部材の各裏面部に、前記対向する支柱と直交する方向に沿って裏面部から突出した形状の足部を備えることにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、互いに対向する側に配置された各支柱の下方における底部材の各裏面部に、これらの支柱の対向方向に直交する方向に沿って裏面部から突出した形状の足部が設けられている。すなわち、カートンの裏面部の下方にフォークリフトの爪を挿入可能な隙間を形成するための足部が、底部材における支柱の下方に設けられている。これにより、カートンに上下方向からの圧縮荷重が加わった場合においても、足部が底部材を支持することによって底部材の変形を抑えることができる。すなわち、フォークリフトの爪を挿入するための隙間が形成されたカートンにおいて、上下方向からの圧縮荷重に対する強度を向上させることができる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、記載した前記カートンにおいて、底部材の縁部に沿って形成された下側片部に、同底部材の縁部に沿って屈曲した屈曲部を形成したことにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、下側片部に底部材の縁部に沿って屈曲部が形成されている。この場合、屈曲部は、下側片部の一部を底部材の縁部に沿って連続的または断続的に凸状または凹状に形成したものである。これにより、下側片部を含む底部材の撓み変形に対する強度を向上させることができる。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記カートンにおいて、底部材、支柱および上部材は、それぞれ金属で構成されており、壁体は、段ボールで構成されていることにある。
【0016】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、カートンにおける底部材、支柱および上部材が、それぞれ金属で構成されているとともに、同カートンにおける壁体が、段ボールで構成されている。この場合、金属とは、鋼などの重金属、アルミニウムなどの軽金属またはこれらの合金である。また、段ボールとは、波状に成形した紙の片面または両面に厚紙を貼り合わせた板紙である。これにより、カートンの強度を維持しつつカートンを軽量化することができ、カートンの取り扱い性および経済性をそれぞれ向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るカートンの全体構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示したカートンの分解斜視図である。
【図3】図1に示したカートンを構成する支柱の全体構成を示す外観斜視図である。
【図4】図1に示したカートンから壁体の図示を省略した外観斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るカートンの全体構成を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(カートン1の構成)
以下、本発明に係るカートンの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るカートン1の全体構成を示す外観斜視図である。また、図2は、カートン1を構成する各部品を示す分解斜視図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このカートン1は、図示しない収納対象物、例えば、自動車のエンジン、トランスミッションおよびこれらの部品などを保管または輸送するに際して、これらの物品が一時的に収納される物品収納用のケースである。
【0019】
カートン1は、底部材10を備えている。底部材10は、カートン1内に収納される収納対象物(図示せず)が載置されて同収納対象物を支持する平板状の部品であり、方形板状の鋼材によって構成されている。この底部材10は、主として、収納対象物が載置される平板状の載置部11と、同載置部11の縁部が起立した下側片部12とによって構成されている。これらのうち、下側片部12は、詳しくは後述する壁体20の下端部を支持する部分であり、載置部11の4辺の各縁部を図示上方に折り曲げてそれぞれ成形されている。
【0020】
これら4つの下側片部12のうち、底部材10の長辺に沿って形成される2つの下側片部12は、底部材10の短辺に沿って形成される2つの下側片部12の高さよりも高く形成されるとともに、下側片部12の中央部に円弧状の屈曲部12aが長手方向に沿ってそれぞれ形成されている。これにより、底部材10における長辺の図示上下方向への撓み変形が抑えられ、底部材10、延いてはカートン1の耐荷重性能を向上させることができる。一方、4つの下側片部12のうち底部材10の短辺に沿って形成される2つの下側片部12には、その略中央部に支柱30を底部材10に連結するための貫通孔12bがそれぞれ形成されている。この底部材10は、本実施形態においては、SPCC(冷間圧延鋼板)材を板金加工することにより1080mm×670mmの長方形状に成形されている。
【0021】
壁体20は、カートン1の側面部の大部分を構成する平板状の部品であり、強化段ボール製の板状体を折り曲げて構成されている。本実施形態においては、壁体20は、強化段ボール製の板状体を断面形状がコ字に折り曲げて成形されている。ここで、強化段ボールとは、段ボールを多層構造(通常は、2〜3層)に積層することにより強度を向上させたものである。また、段ボールとは、波状に成形した中心紙の片面または両面に厚紙を貼り合わせた板紙である。本実施形態においては、厚さが約10mmの強化段ボールを用いている。
【0022】
この壁体20は、底部材10の載置部11の縁部における下側片部12の内側において、同底部材10の短辺中央部に設けられる支柱30を挟んで互いに対向して設けられている。すなわち、本実施形態におけるカートン1の側面部は、底部材10の載置部11の縁部に沿って配置された互いに対向する2つの壁体20によって構成されている。なお、図1において壁体20の中央部に示されている円形の印(縦スジが円図形によって囲まれた図形)は、強化段ボールを構成する中心紙の配置方向を示している。
【0023】
支柱30は、壁体20を支持するとともにカートン1の側面部の一部を構成する鋼製の長尺平板状の部品であり、底部材10の縁部における同縁部の全周を2等分する位置にそれぞれ起立した状態で設けられている。本実施形態においては、支柱30は、底部材10の短辺中央部にそれぞれ起立した状態で設けられている。この支柱30は、図3に示すように、前記底部材10における下側片部12の内側面に連結される平板状の連結部31と、壁体20の厚さに対応する段差を介して連結部31の両側に張り出した平板状の張出部32とによって構成されている。すなわち、支柱30は、断面形状が略ハット(縁付帽子)状に形成されている。この支柱30における連結部31の上端部および下端部には、支柱30を後述する上部材40および底部材10にそれぞれ連結にするための取付ボルト33,43が貫通する貫通孔31a,31bがそれぞれ形成されている。この貫通孔31a,31bが開口する連結部31の内側面には、前記取付ボルト33,43と噛合う図示しないナットがそれぞれ固着されている。
【0024】
そして、この支柱30は、底部材10の下側片部12の内側面に連結部31を当てた状態で取付ボルト33(図2では図示せず)によって互いに連結されている。これにより、底部材10の下側片部12の内側と支柱30の張出部32との間に連結部31と張出部32との段差に相当する隙間、すなわち、壁体20の厚さに対応する隙間が形成される。これにより、壁体20の下端部は、底部材10の下側片部12の内側と支柱30の張出部32とによって挟まれた状態で支持される。
【0025】
したがって、支柱30における連結部31と張出部32との段差は、底部材10の下側片部12の内側と支柱30の張出部32との間に壁体20を配置可能な段差量に設定される。本実施形態における連結部31と張出部32との段差は、壁体20の厚さ(10mm)より若干広い約10.4mmに設定されている。また、本実施形態においては、支柱30は、SPHC(熱間圧延鋼板)材を板金加工することにより710mm×110mm(連結部30の幅30mm)×12mmに成形されている。
【0026】
上部材40は、前記2つの支柱30に連結されて支柱30の変位を規制するとともに壁体20の上端部を保護する方形枠状の部品であり、板状の鋼材によって構成されている。この上部材40は、壁体20の上端部上に配置される平板状の天板部41と、同天板部41の縁部が壁体20の外側に下垂した上側片部42とによって構成されている。これらのうち、上側片部42は、壁体20の上端部側面に配置されて前記支柱30における張出部32と共に壁体20を支持する部分であり、壁体20の外側において天板部41の4辺の各縁部を図示下方に折り曲げてそれぞれ成形されている。本実施形態において上側片部42は、天板部41の縁部から40mm下垂して(換言すれば、40mmの幅で)形成されている。また、これら4辺に形成された4つの上側片部42のうち、上部材40の短辺に沿って形成された2つの上側片部42には、その略中央部に支柱30を上部材40に連結するための貫通孔42aがそれぞれ形成されている。
【0027】
この上部材40は、上側片部42の内側面に支柱30の連結部31を当てた状態で取付ボルト43(図2では図示せず)によって互いに連結されている。これにより、上部材40の上側片部42の内側と支柱30の張出部32との間に連結部31と張出部32との段差に相当する隙間、すなわち、壁体20の厚さに対応する隙間が形成される。これにより、壁体20の上端部は、上部材40の上側片部42の内側と支柱30の張出部32とによって挟まれた状態で支持される。この上部材40は、本実施形態においては、SPHC(熱間圧延鋼板)製の板材を板金加工および溶接加工することにより成形されている。
【0028】
底部材10における載置部11の裏面部には、足部50が設けられている。足部50は、底部材10(すなわち、カートン1)の下方に、フォークリフトの爪を挿入可能な隙間を形成するための鋼材からなる方形筒状の部品である。この足部50は、底部材10の裏面部における長辺の両端部において底部材10の短辺に沿って裏面部から突出してそれぞれ設けられている。換言すれば、足部50は、互いに対向する側に配置された支柱30の下方における底部材10の各裏面部に、前記対向する支柱30と直交する方向に沿って裏面部から突出して設けられている。この足部50は、本実施形態においては、足部50は、SPCC(冷間圧延鋼板)材を板金加工により方形筒状に成形された後、底部材10の裏面部に溶接加工により固着されて底部材10と一体的に形成されている。
【0029】
(カートン1の作動)
次に、上記のように構成したカートン1の作動について説明する。まず、作業者は、収納対象物(図示せず)をカートン1内に収納する作業場所に、1つの底部材10に対して2つの壁体20、2つの支柱30および1つの上部材40をそれぞれ用意する。この場合、底部材10の裏面部には、足部50が一体的に設けられている。また、壁体20には、カートン1の内側となる面に、壁体20の折り曲げ作業を容易かつ正確にするための折目が所定の折り曲げ位置に予め施されている。
【0030】
次に、作業者は、2つの壁体20の各両端部を前記折目に沿ってそれぞれ直角方向に折り曲げることにより底部材10の縁部に沿ったコ字形状に成形した後、一方の壁体20を底部材10における載置部11の縁部であって下側片部12の内側に載置する。次いで、作業者は、底部材10における短辺側の下側片部12の中央部内側に支柱30を起立した状態でそれぞれ配置するとともに、取付ボルト33によって支柱30を下側片部12に仮止めする。この場合、支柱30における連結部31が張出部32から突出した形状であるため、連結部31の内側面(カートン1の内側に向く面)から突出する取付ボルト33の先端部が張出部32の内側面(カートン1の内側に向く面)よりも突出することはない。
【0031】
次に、作業者は、支柱30および1つの壁体20が配置された底部材10の載置部11上に収納対象物を載置する。この場合、前記したように、支柱30の内側面から取付ボルト33の先端部が突出しないため、収納対象物を損傷することなく載置部11上に載置することができる。底部材10の載置部11上に収納対象物を載置した場合には、作業者は、他方の壁体20を既に配置されている一方の壁体20に対向する位置に一方の壁体20と同様に配置する。すなわち、作業者は、他方の壁体20の両端部を底部材10の下側片部12と支柱30の張出部32との間の隙間に挿し込んで他方の壁体20を載置部11の縁部であって下側片部12の内側に載置する。これにより、底部材10の載置部11上に載置された収納対象物は、各2つずつの壁体20と支柱30とによって周囲を囲まれた状態となる。
【0032】
次に、作業者は、上部材40を底部材10の載置部11上に配置された壁体20および支柱30の上端部上に載置して同上側片部42を取付ボルト43にて支柱30に仮止めする。この場合、作業者は、上部材40における上側片部42を壁体20および支柱30の外側に位置するように壁体20および支柱30の上端部上に配置する。そして、作業者は、取付ボルト33および取付ボルト43を均等に締め付けながら底部材10の下側片部12に支柱30の下端部を強固に連結するとともに、同支柱30の上端部を上部材40の上側片部42に強固に連結する。
【0033】
これにより、収納対象物が収納された状態で底部材10、壁体20、支柱30および上部材40が一体的に組み付けられてカートン1が完成する。なお、図4は、完成したカートン1において壁体20の図示を省略した外観斜視図である。この場合、壁体20は、底部材10の下側片部12と支柱30の張出部32との間、および上部材40の上側片部42と支柱30の張出部32との間に位置してこれらに挟まれた状態で支持される。これにより、カートン1の壁体20および支柱30に対して外側から押圧力が加えられた場合であっても、壁体20および支柱30の内側への変位や変形が抑えられるため、カートン1内に収納されている収納対象物の損傷が防止される。すなわち、カートン1の側面部の剛性が向上する。なお、この場合、支柱30の内側面から取付ボルト33および取付ボルト43の各先端部が突出しないため、支柱30の変形に関わらず取付ボルト33および取付ボルト43の各先端部による収納対象物の損傷が防止される。
【0034】
また、カートン1は、壁体20を支柱30と底部材10および上部材40とによって挟む構成であるため、支柱30の厚さを従来技術に比べて薄くすることができる。具体的には、支柱30の厚さは、支柱30を構成するSPHC材の板厚に連結部31と張出部32との段差を加えたものとなる。この場合、従来技術における固定材(支柱30に相当)は、側面部(壁体20に相当)を2枚の板材によって挟む構成となっていため、支柱30の厚さに比べて厚くなる。このため、本発明に係るカートン1における支柱30によれば、カートン1内の容積の減少を抑えることができる。この場合、カートン1内の容積の減少を抑えることができることは、従来と同じ容積のカートン1であればカートン1の構成のコンパクト化および軽量化を図ることができることを意味する。また、さらに、壁体20の外側面は、支柱30の張出部32の内側面と面一となっている。これにより、カートン1の外側面における美観が向上する。
【0035】
なお、カートン1を組み付ける順序およびカートン1内に収納対象物を収納するタイミングは、上記順序およびタイミングに限定されるものではない。例えば、底部材10の載置部11上に収納対象物を載置した後に壁体20および支柱30を組付けるようにしてもよいし、カートン1を完全に組み付けた後に収納対象物をカートン1内に収納するようにしてもよい。
【0036】
収納対象物が収納されたカートン1は、輸送のためフォークリフト(図示せず)などによって輸送車や輸送用コンテナ内に移される。この場合、カートン1の裏面部には、足部50が設けられているため、カートン1が配置されている床面とカートン1の裏面部との間に隙間が形成される。したがって、作業者は、フォークリフトの爪をカートン1が配置されている床面とカートン1の裏面部との間に形成される隙間内に挿入することによりカートン1を持ち上げて容易に移動させることができる。
【0037】
また、このカートン1は、カートン1の上に他のカートン1を積み上げることもできる。この場合、下側のカートン1の上部材40が受ける上側のカートン1からの荷重は、主として支柱30を介して底部材10に加えられる。しかし、支柱30が設けられた底部材10の下方には足部50が設けられているため、底部材10における支柱30が設けられた辺部分(本実施形態においては短辺部分)の撓み変形が抑えられる。また、上部材40が壁体20の上端部上に設けられているため、下側のカートン1の上部材40が受ける上側のカートン1からの荷重の一部は、下側のカートン1の壁体20を介して底部材10に加えられる。これにより、上側のカートン1からの荷重の総てが支柱30に集中することが防止されて支柱30が連結される底部材10の局所的な変形を抑えることができる。また、上側のカートン1からの荷重の総てが支柱30に集中することが防止されるため、支柱30を小型化することができ、結果として、カートン1の軽量化を図ることができる。
【0038】
一方、カートン1内に収納された収納対象物をカートン1内から取り出す場合には、作業者は、収納対象物を収納する手順とは逆の手順によって収納対象物の取り出しを行なう。すなわち、作業者は、取付ボルト43を緩めて上部材40を支柱30から取り外した後、取付ボルト33を緩めて支柱30を底部材10から取り外す。これにより、壁体20が底部材10から容易に取り除くことができる状態となる。したがって、作業者は、壁体20を底部材10上から取り除いた後、底部材10上の収納対象物を取り出すことができる。
【0039】
収納対象物を取り除いた後の底部材10、壁体20、支柱30および上部材40は、そのまま廃棄してもよいし、再度組み立ててカートン1として使用しても良い。すなわち、カートン1は、壁体20が、底部材10、支柱30および上部材40に対して固定的に取り付けられるものではなく、単に、支柱30と底部材10および上部材40とによって挟まれて支持される構成であるため、組立ておよび分解が容易かつ迅速に行なえるとともに各部品の廃棄が容易である。また、壁体20の損傷が少ないためカートン1の側面部材として繰り返しの使用に適している。
【0040】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、カートン1の各部の寸法、具体的には、底部材10、壁体20、支柱30、上部材40および足部50の各寸法は、カートン1内に収納させる収納対象物、カートン1の使用環境およびカートン1に求められる仕様などに応じて適宜決定されるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。
【0042】
また、上記実施形態においては、底部材10における下側片部12および上部材40における上側片部42は、それぞれ載置部11および天板部41の各縁部に沿って連続的に形成した。しかし、下側片部12および上側片部42は、支柱30の張出部32とともに壁体20を挟んで支持できれば、必ずしも連続的に形成する必要はない。すなわち、下側片部12および上側片部42を載置部11および天板部41の各縁部に沿って断続的に設けるように構成することもできる。これによれば、底部材10および上部材40の重量を軽くすることができるため、結果としてカートン1の総重量を軽量化することができる。
【0043】
また、上記実施形態においては、底部材10の縁部における同縁部の全周を2等分する2つの位置にそれぞれ支柱30を配置した。これにより、支柱30間に配置される壁体20の数を2つとすることができ、カートン1を構成する部品点数を少なくしてカートン1の組立ておよび分解の作業性を向上させることができる。しかし、底部材10の縁部に設けられる支柱30の数やその配置位置は、底部材10の縁部における同縁部の全周を少なくとも2等分する位置であれば、上記実施形態に限定されるものではない。この場合、支柱30を底部材10の縁部における同縁部の全周を等分する位置に配置、換言すれば、同縁部に沿って均等に配置することによりカートン1の剛性を確保しつつカートン1を安定的に形成することができる。したがって、例えば、図4に示すように、支柱30を底部材10の短辺中央部に加えて長辺中央部にもそれぞれ設けることもできる。この場合、壁体20は、4つのL字形状の壁体20が4つの支柱30間にそれぞれ配置される。これにより、上記実施形態におけるカートン1に比べて剛性および安定性が向上する。なお、支柱30は、底部材10の縁部に均等(例えば、2等分、3等分、4等分)に配置されるものであるため、2つ以上で構成される必要がある。なお、図4においては、上記実施形態と同様の構成部分に同じ符号を付している。
【0044】
また、上記実施形態においては、底部材10における載置部11の形状は、長方形状に形成されている。しかし、底部材10の形状は、カートン1内に収納される収納対象物の形状などによって適宜決定されるものであり、当然、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、底部材10における載置部11の形状を正方形、三角形、五角形以上の多角形または楕円を含む円形に形成してもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0045】
また、上記実施形態においては、上部材40は、方形枠状に形成されている。しかし、上部材40は、支柱30の上端部に連結され、壁体20の上端部上に配置される天板部41の縁部に壁体の外側に下垂した状態の上側片部42を有する形状であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、カートン1の上面を完全に覆う蓋状に形成することもできる。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0046】
また、上記実施形態においては、底部材10の裏面部に足部50を設けた。しかし、足部50は、カートン1をフォークリフトによって持ち上げ可能とするために設けたものであり、必須の部品ではない。すなわち、カートン1をフォークリフトによって持ち上げる必要がない場合には、足部50を設けない構成のカートン1であってもよい。これによっても、足部50による効果を除いて、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0047】
また、上記実施形態においては、底部材10の下側片部12に底部材10の縁部に沿って円弧状の屈曲部12aを設けた。しかし、屈曲部12aの形状は、下側片部12の一部を底部材10の縁部に沿って連続的(例えば、図5参照)または断続的に凸状または凹状に形成したものであれば、上記実施形態に限定されるものではない。また、下側片部12を含む底部材10の撓み変形に対する強度が十分確保されていれば、必ずしも必要なものでもない。すなわち、屈曲部12aを設けることなく下側片部12を形成してもよい。これによっても、屈曲部12aによる効果を除いて、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0048】
また、上記実施形態においては、底部材10、支柱30、上部材40および足部50は、それぞれ金属で構成されており、壁体20は、強化段ボールで構成されている。しかし、底部材10、壁体20、支柱30、上部材40および足部50を構成する各素材は、カートン1内に収納させる収納対象物、カートン1の使用環境およびカートン1に求められる仕様などに応じて適宜決定されるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。ただし、底部材10、支柱30および足部50は、カートン自身およびカートン1内に収納される収納対象物やカートン1上に加えられる荷重を支える部品であるため、少なくとも壁体20と同等以上の剛性を有する素材で構成される必要がある。底部材10、支柱30、上部材40および足部50を構成する素材としては、金属の他に木材や樹脂材が考えられる。また、壁体20を構成する素材としては、強化段ボールの他に、通常の段ボールや厚紙などの紙材、木材、樹脂材または金属が考えられる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0049】
1…カートン、10…底部材、11…載置部、12…下側片部、12a…屈曲部、12b…貫通孔、20…壁体、30…支柱、31…連結部、31a…貫通孔、32…張出部、33…取付ボルト、40…上部材、41…天板部、42…上側片部、42a…貫通孔、43…取付ボルト、50…足部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納対象物が載置される載置部の縁部に起立した状態の下側片部を有する底部材と、
剛性を有する素材で構成され、前記底部材の前記縁部における同縁部の全周を少なくとも2等分する位置にそれぞれ起立した状態で設けられる支柱と、
前記支柱間における前記底部材の縁部上に起立するとともに同縁部に沿った形状で前記下側片部の内側に設けられる壁体と、
前記支柱の上端部に連結され、前記壁体の上端部上に配置される天板部の縁部に前記壁体の外側に下垂した状態の上側片部を有する上部材とを備え、
前記支柱は、前記下側片部の内側に連結される連結部と前記壁体の厚さに対応する段差を介して前記連結部の両側に張り出した張出部とを備えることを特徴とするカートン。
【請求項2】
請求項1に記載したカートンにおいて、
前記底部材は、方形状に形成されており、
前記支柱は、前記底部材の前記縁部における同縁部の全周を2等分する位置にそれぞれ設けられており、
前記壁体は、断面形状がコ字状に折り曲げられて前記2つの支柱間に配置されていることを特徴とするカートン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したカートンにおいて、
互いに対向する側に配置された前記支柱の下方における前記底部材の各裏面部に、前記対向する支柱と直交する方向に沿って前記裏面部から突出した形状の足部を備えることを特徴とするカートン。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したカートンにおいて、
前記底部材の縁部に沿って形成された前記下側片部に、同底部材の縁部に沿って屈曲した屈曲部を形成したことを特徴とするカートン。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したカートンにおいて、
前記底部材、支柱および上部材は、それぞれ金属で構成されており、
前記壁体は、段ボールで構成されていることを特徴とするカートン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−46395(P2011−46395A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195147(P2009−195147)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(591285756)静岡王子コンテナー株式会社 (3)
【出願人】(000110332)王子インターパック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】