説明

カードリーダ

【課題】組立が容易で、かつ、記録品質、再生品質を確保することが可能となる搬送ローラを備えるカードリーダを提供すること。
【解決手段】カードリーダ用の搬送ローラ4は、搬送ローラ4の外周側を構成する略円筒状でゴム製の外周部材21と、外周部材21の内周面21aに当接する外周面22aを有し外周部材21の内周側で外周部材21を保持する保持部材22とを備えている。外周部材21の内周面21aには、径方向内側に向かって突出する複数の突起21bが形成され、保持部材22の外周面22aには、径方向内側に向かって窪むとともに突起21bが係合する複数の溝部22dが形成されている。突起21bの径方向の高さは、外周部材21の、突起21bが形成されていない部分の径方向の厚さの1/3.5以下となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを搬送する搬送ローラを備えるカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードに記録された磁気情報の再生やカードへの磁気情報の記録を行う磁気ヘッドを備えたカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のカードリーダは、カードリーダ内でカードを搬送するため、たとえば、図7に示すような搬送ローラ101を備えている。すなわち、特許文献1に記載のカードリーダは、たとえば、平滑な内周面102aを有する円筒状のゴム輪102と、ゴム輪102の内周面102aが当接する平滑な外周面103aを有しゴム輪102が固定される芯部材103とから構成される搬送ローラ101を備えている。この搬送ローラ101では、ゴム輪102と芯部材103との間に滑りが生じないように、一般的に、芯部材103にゴム輪102が接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−315080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図7に示す構成を有する搬送ローラ101では、ゴム輪102が接着で芯部材103に固定されているため、搬送ローラ101を組み立てる際に接着工程が必要となる。したがって、搬送ローラ101の組立が煩雑となり、製造コストが嵩む。また、ゴム輪102と芯部材103との間の接着力にばらつきが生じやすい。そのため、カードの搬送中にゴム輪102と芯部材103との間で滑りが生じて、カードリーダの記録品質、再生品質が低下するおそれが内在している。
【0005】
そこで、本発明の課題は、組立が容易で、かつ、記録品質、再生品質を確保することが可能となる搬送ローラを備えるカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本願発明者は種々の検討を行った。その結果、搬送ローラの外周側を構成するゴム製の外周部材と、この外周部材の内周側で外周部材を保持する保持部材とが所定の形状に形成されると、搬送ローラの組立が容易になるとともに、カードリーダの記録品質、再生品質を確保することが可能であることを知見するに至った。
【0007】
本発明は、かかる新たな知見に基づくものであり、駆動源からの駆動力で回転してカードを搬送する搬送ローラを備えるカードリーダにおいて、搬送ローラは、搬送ローラの外周側を構成する略円筒状でゴム製の外周部材と、外周部材の内周面に当接する外周面を有し外周部材の内周側で外周部材を保持する保持部材とを備え、外周部材の内周面には、径方向内側に向かって突出する複数の突起が形成され、保持部材の外周面には、径方向内側に向かって窪むとともに突起が係合する複数の溝部が形成され、突起の径方向の高さは、外周部材の、突起が形成されていない部分の径方向の厚さの1/3.5以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のカードリーダは、たとえば、カードに記録された磁気情報の再生および/またはカードへの磁気情報の記録を行う磁気ヘッドを備えている。
【0009】
本発明のカードリーダでは、搬送ローラの外周側を構成する外周部材の内周面に複数の突起が形成され、搬送ローラの内周側を構成する保持部材の外周面に突起が係合する複数の溝部が形成されている。そのため、突起と溝部とによって、外周部材と保持部材との間の滑りを防止することが可能になる。したがって、従来のような接着工程が不要となり、搬送ローラの組立が容易になる。
【0010】
一方、外周部材の内周面に複数の突起が形成されると、この突起の影響で、搬送されるカードの搬送速度が変動しやすくなり、カードリーダの記録品質、再生品質が低下するおそれがある。本発明の搬送ローラでは、外周部材の内周面に形成される突起の径方向の高さが、外周部材の、突起が形成されていない部分の径方向の厚さの1/3.5以下となっている。そのため、本発明のカードリーダでは、外周部材の内周面に複数の突起が形成される場合であっても、外周部材の内周面に突起が形成されていない搬送ローラを用いた場合のカードの速度変動量に近い程度まで、カードの速度変動量を抑制することができる。その結果、本発明のカードリーダでは、記録品質、再生品質を確保することが可能になる。
【0011】
本発明において、突起の径方向の高さは、外周部材の、突起が形成されていない部分の径方向の厚さの1/6以下であり、かつ、径方向内側に向かって突出する突起が形成されていない平滑な内周面を有する円筒状でゴム製の基準外周部材と、基準外周部材の内周面に当接するとともに径方向内側に向かって窪む溝部が形成されていない平滑な外周面を有し基準外周部材の内周側で基準外周部材を保持する基準保持部材とを備える基準搬送ローラの、JISK6253で規定されるデュロメータのタイプAで測定したときの径方向の硬度を基準硬度とした場合、搬送ローラの、デュロメータのタイプAで測定したときの径方向の硬度は、基準硬度と略同等であることが好ましい。このように構成すると、外周部材の内周面に複数の突起が形成される場合であっても、外周部材の内周面に突起が形成されていない基準搬送ローラを用いた場合のカードの速度変動量と同程度まで、カードの速度変動量を抑制することができる。
【0012】
本発明において、外周部材の円周方向における突起間の間隔は、外周部材の、突起が形成されていない部分の径方向の厚さよりも小さいことが好ましい。このように構成すると、突起と溝部とによって、外周部材と保持部材との間の滑りをより確実に防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、保持部材の軸方向における溝部の端部には、外周部材の軸方向の端部に当接する鍔部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、軸方向における保持部材と外周部材とのずれを防止することができる。
【0014】
本発明において、保持部材の円周方向で隣接する溝部の一方では、保持部材の軸方向の一端側に鍔部が形成され、隣接する溝部の他方では、保持部材の軸方向の他端側に鍔部が形成されていることが好ましい。このように形成すると、金型を用いて保持部材を製作する場合に、金型の構成を簡素化することができ、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のカードリーダでは、搬送ローラの組立が容易になるとともに、記録品質、再生品質を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの概略構成を側面から説明するための図である。
【図2】(A)は、図1に示す搬送ローラの斜視図であり、(B)は、(A)に示す搬送ローラの分解斜視図である。
【図3】図2に示すゴム輪の側面図である。
【図4】図3のE部の拡大図である。
【図5】図1に示すカードリーダでカードの速度変動を測定したときの条件および結果を示す一覧表である。
【図6】図1に示すカードリーダでの、表面の摩擦係数が低下したカードの搬送実験の結果を示す一覧表である。
【図7】(A)は、従来技術にかかる搬送ローラの斜視図であり、(B)は、(A)に示す搬送ローラの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の概略構成を側面から説明するための図である。
【0019】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録された情報の再生および/またはカード2への情報の記録を行うための装置である。このカードリーダ1は、図1に示すように、磁気情報の再生や記録を行うための磁気ヘッド3と、カードリーダ1内でカード2を搬送するためのカード搬送用の複数の搬送ローラ4と、搬送ローラ4に対向するとともに搬送ローラ4に向かって付勢された複数のパッドローラ5と、搬送ローラ4を駆動するためのローラ駆動機構6と、カード2が挿入、排出されるカード挿入排出部7とを備えている。また、カードリーダ1の内部には、カード2が搬送される搬送路8が形成されている。
【0020】
本形態のカード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード2の表面には、磁気情報が記録される磁気ストライプ(図示省略)が形成されている。なお、カード2の表面には、ICチップが固定されても良い。また、カード2には、通信用のアンテナが内蔵されても良いし、カード2の表面に、感熱方式によって印字が行われる印字部が形成されても良い。さらに、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0021】
図1に示すように、搬送ローラ4は、搬送路8の上側に配置されている。また、パッドローラ5は、搬送路8の下側に配置されている。このパッドローラ5は、搬送ローラ4に圧接されるように、図示を省略する付勢手段によって、上方向へ付勢されている。
【0022】
ローラ駆動機構6は、3個の搬送ローラ4の回転軸にそれぞれ固定される従動プーリ10と、中央に配置される搬送ローラ4の回転軸に従動プーリ10と平行に固定される従動大プーリ11と、搬送ローラ4を回転駆動するための駆動源としての駆動モータ12と、駆動モータ12の出力軸に固定された駆動プーリ13とを備えている。また、ローラ駆動機構6は、駆動プーリ13と従動大プーリ11との間に掛け渡されたタイミングベルト14と、従動プーリ10に掛け渡されたタイミングベルト15と、タイミングベルト15の張力を調整するための複数のテンションプーリ16とを備えている。
【0023】
(搬送ローラの構成)
図2(A)は、図1に示す搬送ローラ4の斜視図であり、図2(B)は、図2(A)に示す搬送ローラ4の分解斜視図である。図3は、図2に示すゴム輪21の側面図である。図4は、図3のE部の拡大図である。
【0024】
搬送ローラ4は、図2に示すように、搬送ローラ4の外周側を構成する略円筒状でゴム製のゴム輪21と、ゴム輪21の内周側でゴム輪21を保持する芯部材22とを備えている。本形態では、ゴム輪21は、搬送ローラ4の外周側を構成する外周部材であり、芯部材22は、外周部材としてのゴム輪21を保持する保持部材である。
【0025】
ゴム輪21の内周面21aには、図3等に示すように、径方向内側に向かって突出する略直方体状の複数の突起21bが形成されている。本形態では、内周面21aに等角度ピッチで12個の突起21bが形成されている。また、本形態では、それぞれの突起21bは、ゴム輪21の軸方向の全域にわたって形成されている。この突起21bの径方向の高さH(図4参照)は、ゴム輪21の、突起21bが形成されていない部分の径方向の厚さT(図4参照)の1/3.5以下となっている。
【0026】
たとえば、ゴム輪21の外径が20mm、幅(図3の紙面垂直方向の幅)が5mmである場合、高さHは0.5mm、厚さTは1.75mmまたは3.3mmとなっている。なお、この場合には、たとえば、突起21bの円周方向の幅W(図4参照)は1mm、間隔L(図4参照)は約2.5mmとなっている。
【0027】
芯部材22は、図2(B)に示すように、ゴム輪21の内周面21aに当接する外周面22aを有する大径部22bと、大径部22bよりも径の小さな小径部22cとを備える段付の略円筒状に形成されている。本形態の芯部材22はたとえば、樹脂で形成されている。なお、芯部材22はアルミ等の金属で形成されても良い。
【0028】
外周面22aには、径方向内側に向かって窪むとともに軸方向に延びる複数の溝部22dが形成されている。この溝部22dのそれぞれには、突起21bのそれぞれが係合する。そのため、外周面22aには、等角度ピッチで12個の溝部22dが形成されている。この溝部22dは、大径部22bの軸方向のほぼ全域にわたって形成されている。また、溝部22dの深さは、突起21bの高さHと同等あるいは突起21bの高さHよりもわずかに大きく形成され、溝部22dの幅は、突起21bの幅Wと同等あるいは突起21bの幅Wよりもわずかに大きく形成されている。
【0029】
芯部材22の軸方向における溝部22dの端部には、ゴム輪21の端部(軸方向の端部)に当接する鍔部22eが径方向外側に広がるように形成されている。具体的には、図2(B)に示すように、円周方向で互いに隣接する溝部22dの一方では、軸方向の一端側(たとえば紙面奥側)に鍔部22eが形成され、互いに隣接する溝部22dの他方では、軸方向の他端側(たとえば紙面手前側)に鍔部22eが形成されている。すなわち、軸方向から見たときに円周方向で隣接する鍔部22eは、軸方向の一端側と他端側とに交互に形成されている。
【0030】
ゴム輪21は、芯部材22の大径部22bに軽圧入されている。具体的には、内周面21aと外周面22aとが当接し、かつ、突起21bが溝部22dに係合するように、ゴム輪21が大径部22bに軽圧入されている。また、芯部材22は、搬送ローラ4の回転軸に固定されている。
【0031】
本形態では、JISK6253で規定されるデュロメータのタイプAで測定したときのゴム輪21単体の硬度は、約65度または約75度となっている。また、デュロメータのタイプAで測定したときの搬送ローラ4のゴム輪21部分の径方向の硬度は、約67度から76度となっている。
【0032】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ゴム輪21の内周面21aに複数の突起21bが形成され、芯部材22の外周面22aに突起21bに係合する複数の溝部22dが形成されている。そのため、突起21bと溝部22dとによって、ゴム輪21と芯部材22との間の滑りを防止することができる。したがって、本形態では、ゴム輪21と芯部材22とを接着するための接着工程が不要となり、搬送ローラ4の組立が容易になる。
【0033】
一方、ゴム輪21の内周面21aに突起21bが形成されると、この突起21bの影響で、搬送路8を搬送されるカード2の搬送速度が変動しやすくなり、カードリーダ1の記録品質、再生品質が低下するおそれがある。しかし、本形態では、突起21bの径方向の高さHが、ゴム輪21の厚さTの1/3.5以下となっている。そのため、図7に示すような、平滑な内周面102aを有するゴム製の基準外周部材としてのゴム輪102と、平滑な外周面103aを有し内周側でゴム輪102を保持する基準保持部材としての芯部材103とを備える基準搬送ローラとしての搬送ローラ101を用いたときのカード2の速度変動量に近い程度、あるいは、搬送ローラ101を用いたときのカード2の速度変動量と同程度まで、カード2の速度変動量を抑制することができる。
【0034】
この効果を実験結果に基づいて詳細に説明する。図5は、図1に示すカードリーダ1でカード2の速度変動を測定したときの条件および結果を示す一覧表である。
【0035】
ゴム輪の内周面の形状、ゴム輪の厚さ、ゴム輪の内周面に突起が形成されている場合には突起の高さ、および、デュロメータのタイプAで測定したときの搬送ローラの径方向の硬度を変数として、図5に示すように、搬送ローラの条件として5パターンの条件を設定した。ここで、条件1から3で設定される搬送ローラは本形態の搬送ローラ4であり、条件5で設定される搬送ローラは基準搬送ローラとしての搬送ローラ101と同様の搬送ローラである。また、条件4で設定される搬送ローラは、比較例の搬送ローラである。
【0036】
なお、いずれの条件においても搬送ローラの外径は20mmである。また、ゴム輪の内周面に突起が形成されている場合には、ゴム輪の内周面に等角度ピッチで12個の突起が略直方体状に形成されている。さらに、ゴム輪の内周面に突起が形成される条件1から4のうち、条件1から3では、突起の円周方向の幅は1mmであり、条件4では、突起の円周方向の幅は2mmである。また、デュロメータのタイプAで測定したときのゴム輪単体の硬度は、条件1では約75度であり、条件2から条件5では約65度である。
【0037】
実験の結果、条件5で設定される搬送ローラ101を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量(基準搬送速度に対するカード2の速度変動の割合)は4〜6%であった。また、条件1で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量も4〜6%であった。さらに、条件2で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量は5〜8%、条件3で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量は5〜7%であった。
【0038】
これに対して、ゴム輪の厚さ(突起が形成されていない部分の径方向の厚さ)が1.75mmで、かつ、突起の高さが1mmとなっており、突起の径方向の高さがゴム輪の厚さの1/3.5よりも大きい条件4で設定される搬送ローラを用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量は7〜14%であった。
【0039】
このように、突起21bの径方向の高さHが、ゴム輪21の厚さTの1/3.5以下となるように、搬送ローラ4の形状を設定することで、搬送ローラ101を用いたときのカード2の速度変動量に近い程度、あるいは、搬送ローラ101を用いたときのカード2の速度変動量と同程度まで、カード2の速度変動量を抑制することができる。すなわち、本形態では、ゴム輪21の内周面21aに複数の突起21bが形成される場合であっても、内周面102aが平滑なゴム輪102によって外周側が構成される搬送ローラ101を用いた場合のカード2の速度変動量に近い程度、あるいは、この場合のカード2の速度変動量と同程度まで、カード2の速度変動量を抑制することができる。その結果、本形態では、カードリーダ1の記録品質、再生品質を確保することができる。
【0040】
ここで、実験結果からわかるように、突起21bの高さHがゴム輪21の厚さTの1/6以下に設定され、かつ、図7に示すような搬送ローラ101の、デュロメータのタイプAで測定したときの径方向の硬度を基準硬度とした場合、この基準硬度と略同等となるように、デュロメータのタイプAで測定したときの搬送ローラ4の径方向の硬度が設定された条件1の搬送ローラ4を用いると、カード2の速度変動量をより効果的に抑制できる。
【0041】
すなわち、ゴム輪21の厚さTが1.75mmとなっており、突起21bの高さHがゴム輪21の厚さTの1/6よりも大きく、かつ、デュロメータのタイプAで測定したときの搬送ローラ4の径方向の硬度が条件5よりも若干低い条件2で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量は、条件5で設定される搬送ローラ101を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量よりも若干大きくなっている。また、ゴム輪21の厚さTが3.3mmであり、突起21bの高さHはゴム輪21の厚さの1/6以下となっているが、デュロメータのタイプAで測定したときの搬送ローラ4の径方向の硬度が条件5よりも低い条件3で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量は、条件5で設定される搬送ローラ101を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量よりも若干大きくなっている。
【0042】
これに対して、ゴム輪21の厚さTが3.3mmであり、突起21bの高さHがゴム輪21の厚さの1/6以下となっており、かつ、デュロメータのタイプAで測定したときの搬送ローラ4の径方向の硬度が条件5と略同等である条件1で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量は、条件5で設定される搬送ローラ101を用いたカードリーダ1でのカード2の速度変動量と同程度の4〜6%であった。
【0043】
このように、突起21bの径方向の高さHが、ゴム輪21の厚さTの1/6以下となるように搬送ローラ4を形成し、かつ、基準搬送ローラとしての搬送ローラ101の、デュロメータのタイプAで測定したときの径方向の硬度である基準硬度と略同等となるように、デュロメータのタイプAで測定したときの搬送ローラ4の径方向の硬度を設定することで、搬送ローラ101を用いたときのカード2の速度変動量と同程度まで、カード2の速度変動量を抑制することができる。その結果、従来と同程度の記録品質、再生品質をカードリーダ1は確保することができる。
【0044】
本形態では、たとえば、ゴム輪21の厚さTは1.75mmまたは3.3mmとなっており、また、突起21bの円周方向の間隔Lは約2.5mmとなっているが、間隔Lは、厚さTよりも小さくなっていることが好ましい。間隔Lが、厚さTよりも小さくなっていると、突起21bと溝部22dとによって、ゴム輪21と芯部材22との間の滑りをより確実に防止することが可能になる。すなわち、本願発明者の検討によれば、ゴム輪21の外径が20mm、幅が5mm、突起21bの高さHが0.5mm、ゴム輪21の厚さTが3.3mm、突起21bの幅Wが1mmとなっているときに、突起21b間の間隔Lを6mmにすると(すなわち、内周面21aに等角度ピッチで6個の突起21bを形成すると)、ゴム輪21と芯部材22との間で滑りが生じた。
【0045】
これに対して、ゴム輪21の外径が20mm、幅が5mm、突起21bの高さHが0.5mm、ゴム輪21の厚さTが3.3mm、突起21bの幅Wが1mmとなっているときに、突起21b間の間隔Lを2.5mmにすると(すなわち、内周面21aに等角度ピッチで12個の突起21bを形成すると)、ゴム輪21と芯部材22との間で滑りが生じなかった。以上から、突起21b間の間隔Lをゴム輪21の厚さTよりも小さくすることで、突起21bと溝部22dとによって、ゴム輪21と芯部材22との間の滑りをより確実に防止することが可能になる。
【0046】
本形態では、軸方向における溝部22dの端部に、ゴム輪21の軸方向の端部に当接する鍔部22eが形成されている。そのため、軸方向におけるゴム輪21と芯部材22とのずれを防止することができる。したがって、ゴム輪21と芯部材22とが接着されていなくても、磁気情報の再生品質、記録品質を確保することが可能になる。
【0047】
特に本形態では、軸方向から見たときに円周方向で隣接する鍔部22eは、軸方向の一端側と他端側とに交互に形成されている。そのため、金型を用いて芯部材22を製作する場合には、金型の構成を簡素化することができ、芯部材22の製造コストを低減することができる。
【0048】
なお、カード2の表面の摩擦係数が低下した場合には、上述の条件5で設定される搬送ローラ101を用いたカードリーダ1に比べ、上述の条件1で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1の方がカードリーダ1内で適切にカード2を搬送できる。以下、この効果を実験結果に基づいて説明する。図6は、図1に示すカードリーダ1での、表面の摩擦係数が低下したカード2の搬送実験の結果を示す一覧表である。
【0049】
実験では、表面の摩擦係数が低下したカード2を実験者がカード挿入排出部7からカードリーダ1内に挿入するとともに、挿入されたカード2がカードリーダ1内で搬送されてカード挿入排出部7から排出されるか否かの確認を100回、行った。また、この実験では、挿入されたカード2が10回連続で排出されなかった場合(すなわち、10回連続で、カードリーダ1内でカード2が詰まるカードジャムが発生した場合)に、実験結果をNGとして、実験を終了した。
【0050】
また、実験では、5回に1回、カードリーダ1内にカード2を挿入する前に、実験者がカード2を掴む指を水で濡らす、または、20回に1回、カードリーダ1内にカード2を挿入する前に、実験者がカード2を掴む指にハンドクリームを付ける、あるいは、10回に1回、カードリーダ1内にカード2を挿入する前に、実験者がカード2を掴む指にハンドクリームを付けることによって、カード2の表面の摩擦係数を低下させた。
【0051】
さらに、この実験では、カードリーダ1として、機種Xと機種Yとの2種類の機種を用いた。機種Xと機種Yとでは、カード2の短手幅方向(図1の紙面垂直方向)における磁気ヘッド3の幅のみが相違し、その他は、ほぼ同様に構成されている。具体的には、機種Xの磁気ヘッド3の幅は、機種Yの磁気ヘッド3の幅の約1/2となっている。なお、機種Xおよび機種Yでは、搬送ローラ4は、カード2の短手幅方向の略中心に配置されている。また、機種Xおよび機種Yでは、磁気ヘッド3に対向するように、パッドローラが配置されている。
【0052】
実験の結果、図6に示すように、上述の条件1で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1では、機種Xおよび機種Yのいずれにおいても、また、水およびハンドクリームのいずれを用いてカード2の表面の摩擦係数を低下させても、挿入されたカード2が10回連続で排出されないといった現象は発生しなかった。
【0053】
これに対して、上述の条件5で設定される搬送ローラ101を用いたカードリーダ1では、図6(A)に示すように、機種Xにおいて、ハンドクリームを用いてカード2の表面の摩擦係数を低下させた場合に、挿入されたカード2が10回連続で排出されないといった現象が発生した。また、上述の条件5で設定される搬送ローラ101を用いたカードリーダ1では、図6(B)に示すように、機種Yにおいて、10回に1回、カードリーダ1内にカード2を挿入する前に、実験者がカード2を掴む指にハンドクリームを付けた場合に、挿入されたカード2が10回連続で排出されないといった現象が発生した。
【0054】
以上のように、カード2の表面の摩擦係数が低下した場合には、条件5で設定される搬送ローラ101を用いたカードリーダ1に比べ、条件1で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1の方がカードリーダ1内で適切にカード2を搬送できる。なお、条件5で設定される搬送ローラ101のゴム輪102の厚さよりも、条件1で設定される搬送ローラ4のゴム輪21の厚さの方が厚く、カード2に接触しているときのゴム輪102の変形量よりもゴム輪21の変形量が大きくなるため、上述の条件1で設定される搬送ローラ4を用いたカードリーダ1の方がカードリーダ1内で適切にカード2を搬送できるものと推測される。
【0055】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0056】
上述した形態では、ゴム輪21の内周面21aに、等角度ピッチで12個の突起21bが形成されているが、内周面21aに形成される突起21bの数は、12個以外の複数であっても良い。また、突起21bは、等角度ピッチで形成されなくても良い。また、上述した形態で示したゴム輪21の外径および幅、突起21bの高さH、ゴム輪21の厚さT、突起21bの円周方向の幅W、突起21b間の間隔Lの各寸法は一例であり、上述した形態での寸法には限定されない。
【0057】
上述した形態では、軸方向から見たときに円周方向で隣接する鍔部22eは、軸方向の一端側と他端側とに交互に形成されている。この他にもたとえば、軸方向における溝部22dの両端側に鍔部22eが形成されても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 カードリーダ
2 カード
3 磁気ヘッド
4 搬送ローラ
12 駆動モータ(駆動源)
21 ゴム輪(外周部材)
21a 内周面
21b 突起
22 芯部材(保持部材)
22a 外周面
22d 溝部
22e 鍔部
H 高さ
L 間隔
T 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力で回転してカードを搬送する搬送ローラを備えるカードリーダにおいて、
前記搬送ローラは、前記搬送ローラの外周側を構成する略円筒状でゴム製の外周部材と、前記外周部材の内周面に当接する外周面を有し前記外周部材の内周側で前記外周部材を保持する保持部材とを備え、
前記外周部材の内周面には、径方向内側に向かって突出する複数の突起が形成され、前記保持部材の外周面には、径方向内側に向かって窪むとともに前記突起が係合する複数の溝部が形成され、
前記突起の径方向の高さは、前記外周部材の、前記突起が形成されていない部分の径方向の厚さの1/3.5以下であることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記突起の径方向の高さは、前記外周部材の、前記突起が形成されていない部分の径方向の厚さの1/6以下であり、かつ、
径方向内側に向かって突出する突起が形成されていない平滑な内周面を有する円筒状でゴム製の基準外周部材と、前記基準外周部材の内周面に当接するとともに径方向内側に向かって窪む溝部が形成されていない平滑な外周面を有し前記基準外周部材の内周側で前記基準外周部材を保持する基準保持部材とを備える基準搬送ローラの、JISK6253で規定されるデュロメータのタイプAで測定したときの径方向の硬度を基準硬度とした場合、
前記搬送ローラの、デュロメータのタイプAで測定したときの径方向の硬度は、前記基準硬度と略同等であることを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記カードに記録された磁気情報の再生および/または前記カードへの磁気情報の記録を行う磁気ヘッドを備えることを特徴とする請求項1または2記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記外周部材の円周方向における前記突起間の間隔は、前記外周部材の、前記突起が形成されていない部分の径方向の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記保持部材の軸方向における前記溝部の端部には、前記外周部材の軸方向の端部に当接する鍔部が形成されていることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のカードリーダ。
【請求項6】
前記保持部材の円周方向で隣接する前記溝部の一方では、前記保持部材の軸方向の一端側に前記鍔部が形成され、隣接する前記溝部の他方では、前記保持部材の軸方向の他端側に前記鍔部が形成されていることを特徴とする請求項5記載のカードリーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−230746(P2009−230746A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26848(P2009−26848)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】