説明

カード作製方法

【課題】カード表面に強くこびりついた付着物や、カード端やカードに搭載するICチップの埋め込み部分端に生じたバリや、カードの表面に印刷時にインクの転写を阻害する物質等が付着していても、印刷不良とならないカード作製方法を提供する。
【解決手段】基板から複数個のブランクカードを切り出し、各ブランクカードの上面に凹部を形成した後、前記各ブランクカードの上面の前記凹部以外の面に熱転写印刷を行ってカードを作製するカード作製方法において、前記ブランクカードの上面に前記熱転写印刷する前に、前記切り出した際に前記ブランクカードの表面に生じたバリ及び前記凹部形成した際に前記凹部に生じたバリを平坦化するために、前記各ブランクカードを研磨材が塗布された研磨布により研磨を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランクカードに文字,画像,磁気情報などの所望の情報を記録するためのカード作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カード時代の到来と共に各種のカードが多用されており、例えば、カードの表面に顔写真などの画像を印刷したIDカード(カード型身分証明書)とか、メモリ付きICチップをカードに埋め込んだクレジットカードとか、ホログラム付きのバンクカードとか、薄い厚さの各種プリペイカードなどがある。
【0003】
特許文献1には、このようなカードを印刷する方法として、インクリボンに塗布された熱転写用インクを加熱して中間転写フィルムに文字や画像として転写して形成し、この中間転写フィルムに形成された文字や画像を再び加熱してカードやシート等の被印刷物の表面上に再転写して印刷する、いわゆる再転写方式の印刷方法が記載されている。
この再転写方式によるカード印刷方法に用いられる印刷装置101を図6に、カード寸法を図7に、印刷時に印刷不良を生じるカード表面状態を図8に示す。
【0004】
図6に示すように、印刷装置101は、カード収納部102と、カード103と、ピックアップローラ104と、一対のクリーニング用粘着ローラ105と、反転機構106と、搬送機構107と、インクリボン108と、インクリボンの供給リール109と、インクリボンの巻き取りリール110と、中間転写フィルム111と、中間転写フィルム111の供給リール112と、中間転写フィルム111の巻き取りリール113と、サーマルヘッド114と、ヒートローラ115と、フィルム剥離ローラ116と、排紙ローラ117と、から構成される。
【0005】
そして、カード収納部102は、印刷に用いる未記録のブランクカード(ホワイトカードとも称するカード103)を縦方向に複数枚収納する。
カード103は、画像や文字を印刷するためのブランクカードであり、磁気コードを記録する磁気媒体や、メモリ付きICチップや,セキュリティを高めるためのホログラム等が必要に応じて搭載されている。そして、図7に示すようなカード寸法を有する。図7(A)は、全面に印刷を行うブランクカードで約86mm×54mm×0.76mmの寸法からなり,図7(B)は図7(A)のブランクカードに約12mm×12mm×0.5mmのICチップの埋め込み部分3aを設定しここにICチップを埋め込んでICカードとしたものである。また、ICカードとは例えば、”JIS X6303”「外部端子付きICカードの物理的特性」で規定されている。
ピックアップローラ104は、カード収納部102端に取り付けられており,カード103に接触しながら一方向に回転してカードを上方向に一枚ずつ移動させ、次の一対のクリーニング用粘着ローラ105へ送る。
【0006】
一対のクリーニング用粘着ローラ105は、ローラ表面にゴミ,塵,埃等を吸収するゴム等からなる粘着面を有しており,ピックアップローラ104から送られてきたカード103の両面をこのクリーニング用粘着ローラ105の粘着面に密着させてカード103の表面に付着しているゴミ,塵,埃等を除去する。
反転機構106は、クリーニング用粘着ローラ105から上方向(垂直方向)に送られてきたカード103を一旦保持した後回転して水平方向にカード103の向きを変えてから、反転機構106に設置されている一対の送りローラを回転させて搬送機構107へ送る。
搬送機構107は、磁気コード記録部と搬送用ローラとを有し、反転機構106から送られてきたカード103の磁気コードを記録すると共にカード103を搬送用ローラの回転により一対のヒートローラ115へ送る。
【0007】
インクリボン108は、複数色の熱転写用インクが塗布されたフィルムからなり、複数色の熱転写用インクは、減色法による3原色としてY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)及びK(ブラック)が用いられる。
そして,このインクリボン108は、印刷に用いられる前には供給リール109に巻かれて保存されており、印刷時にはこのインクリボン108と中間転写フィルム111とを密着してサーマルヘッド114へ送り、サーマルヘッド114においてインクリボン108の熱転写用インクの塗布面と反対側の面から画像や文字に応じた加熱をすることによりインクリボン108の熱転写用インク側と密着された中間転写フィルム111に熱転写用インクを転写して画像や文字を印刷した後、巻き取りリール110に印刷後のインクリボン108が巻き取られる。
中間転写フィルム111は、熱転写用受容層(印刷面)と保護層(フィルム面)とが塗布されたフィルムからなり、熱転写用受容層側にインクリボン108に塗布された熱転写用インクを転写して画像や文字が印刷される。
そして、この中間転写フィルム111は、印刷前は供給リール112に巻いて保存されており、印刷後は巻き取りリール113に巻き取られる。
【0008】
サーマルヘッド114は、複数の発熱抵抗体からなり印刷する画像や文字に応じて発熱することによりインクリボン108に塗布された熱転写用インクを加熱して中間転写フィルム111の熱転写用受容層に転写して印刷する。
一対のヒートローラ115は、上部に加熱ヒータを内蔵し表面はゴム材料で形成されたローラと、下部にヒータを内蔵せずに表面はゴム材料で形成されたローラとからなるが、加熱時の熱均衡性を保つために下部にもヒータを内蔵してもよい。
そしてこの、一対のヒートローラ115は、搬送機構107から送られてきたカード103と印刷済みの中間転写フィルム111の熱転写用受容層とを密着させて上部のローラにより、中間転写フィルム111裏面(熱転写用受容層の反対側)から加熱・加圧しながら一対のヒートローラ115を回転させて一対のフィルム剥離ローラ116へ送る。
一対のフィルム剥離ローラ116は、カード103のみを挟持して回転して一対の排紙ローラ117へカード103を送り、中間転写フィルム111は巻き取りリール113に巻き取られることにより、ヒートローラ115で加熱されて密着したカード103と中間転写フィルム111は剥離される。この時カード103の印刷面には印刷された熱転写用受容層と保護層が転写される。剥離後はカード103の表面は保護層が一番上になるため熱転写用受容層に印刷された熱転写用インクが保護される。
一対の排紙ローラ117は、一対のフィルム剥離ローラ116から送られてきた印刷済みのカード103を排紙して外部に設置されたトレー等に収納される。
【0009】
次に動作について説明する。
まず,カード収納部102に収納されているカード103を1枚ピックアップローラ104の回転により一対のクリーニング用粘着ローラ105へ送り、カード103の両面を一対のクリーニング用粘着ローラ105の粘着面に密着させてカード103の表面に付着しているゴミ,塵,埃等をクリーニング用粘着ローラ105の表面の粘着面に吸着して除去する。
そして、反転機構106により、クリーニング用粘着ローラ105から垂直に送られてきたカード103の向きを水平に変えて搬送機構107に送り、カード103の磁気コードを記録し、ヒートローラ115へ送る。
【0010】
カード103がヒートローラ115へ送られる前に、インクリボン108の熱転写用インクと中間転写フィルム111の熱転写用受容層を密着させた後,サーマルヘッド114を印刷する画像に応じて発熱させることによりインクリボン108の熱転写用インクを中間転写フィルム111の熱転写用受容層に転写して印刷する。
そして、印刷された中間転写フィルム111の熱転写用受容層と搬送機構107から送られてきたカード103の印刷面とを密着させてヒートローラ115へ送り中間転写フィルム111の裏面(熱転写用受容層の反対側)から加熱する。
続いてヒートローラ115で加熱されて密着したカード103と中間転写フィルム111をフィルム剥離ローラ116で剥離するとカード103の印刷面には印刷された熱転写用受容層と保護層が転写されて残り、このカード103を排紙ローラ117により排紙して外部に設置されたトレー等に収納して印刷を終了する。
【0011】
このようにして、クリーニング用粘着ローラ105により、印刷前のカード103の表面に付着しているゴミ,塵,埃等を除去して、所定の印刷を行うことにより、欠陥のない印刷画像を得ていた。
【特許文献1】特開2000−187712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、カード103には、クリーニング用粘着ローラ105の表面の粘着層に吸着させることにより、簡単に除去できるゴミ,塵,埃等の他に、図8(A)に示すようなブランクカード作製時に板状のカード材料から金型を使用してカードを一枚ずつ打ち抜く際にカード端に生ずる凸状のバリや、図8(B)に示すようなブランクカードに搭載するICチップの埋め込み部分のカード材料を削除する際に生じる埋め込み部分端の凸状のバリや、或いは、図8(C)に示すようなカード表面に強くこびりついた付着物等や、図8(D)に示すような印刷時にインクの転写を阻害する物質、例えばシリコン等の流動的な油膜物質等を有している場合には、クリーニング用粘着ローラ105の粘着層への吸着では除去できず、そのままカード表面に残って印刷不良を起こしてしまうと言う問題点が有った。
【0013】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、印刷不良を生じさせないカード作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明における第1の発明は、基板から複数個のブランクカードを切り出し、各ブランクカードの上面に凹部を形成した後、前記各ブランクカードの上面の前記凹部以外の面に熱転写印刷を行ってカードを作製するカード作製方法において、前記ブランクカードの上面に前記熱転写印刷する前に、前記切り出した際に前記ブランクカードの表面に生じたバリ及び前記凹部形成した際に前記凹部に生じたバリを平坦化するために、前記各ブランクカードを研磨材が塗布された研磨布により研磨を行うことを特徴とするカード作製方法を提供する。
本発明における第2の発明は、基板から複数個のブランクカードを切り出し、各ブランクカードの上面に凹部を形成した後、前記各ブランクカードの上面の前記凹部以外の面に熱転写印刷を行ってカードを作製するカード作製方法において、前記ブランクカードの上面に前記熱転写印刷する前に、前記切り出した際に前記ブランクカードの表面に生じたバリ及び前記凹部形成した際に前記凹部に生じたバリを平坦化するために、前記各ブランクカードを第1の研磨材が塗布された研磨布により研磨を行った後、前記第1の研磨材よりも砥粒の小さい第2の研磨材が塗布された研磨布により研磨を行い、前記第1の研磨材は、♯500〜♯2000の砥粒材料であり、前記第2の研磨材は、♯4000〜♯6000の砥粒材料、もしくは、ケミカル研磨材であることを特徴とするカード作製方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板から複数個のブランクカードを切り出し、各ブランクカードの上面に凹部を形成した後、各ブランクカードの上面の前記凹部以外の面に熱転写印刷を行ってカードを作製するカード作製方法において、ブランクカードの上面に前記熱転写印刷する前に、切り出した際にブランクカードの表面に生じたバリ及び凹部形成した際に凹部に生じたバリを平坦化するために、各ブランクカードを研磨材が塗布された研磨布により研磨を行うことにより、ブランクカード作製時にカード端やカードに搭載するICチップの埋め込み部分端に生じた凸状のバリや、あるいはカード表面に強くこびりついた付着物や、カードの表面に付着している流動的な油膜物質等を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るICカ−ド作製方法の実施の形態について図1〜図5の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る印刷装置の構成図を示す図である。
図2は、本発明に係るブランクカード研磨機構の基本構成を示す図である。
図3は、本発明に係るブランクカード研磨機構の詳細を説明するための図であり、(A)は上面から見たカード研磨機構部分を示す図であり、(B)は正面から見た断面を示す図である。
図4は、ブランクカードへの印刷手順を示す図であり。(A)は中間転写フィルムの断面を示す図であり、(B)は(A)の中間転写フィルムのインク受容層にインクリボンに塗布された熱転写用インクを転写(印刷)した時の断面を示す図であり、(C)は中間転写フィルムのインク受容層に転写された熱転写用インクをブランクカード表面に再転写(印刷)した時の断面を示す図である。
図5は、インクリボンに塗布された熱転写用インクの色配列例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、本発明に係る印刷装置1は従来の印刷装置101にカード表面を研磨する研磨機構を付加した以外は同様であり、カード収納部2と、カード3と、ピックアップローラ4と、第1の供給リール5a、5bと、第1の走行ローラ6a,6bと、第1の巻き取りローラ7a,7bと、第1の研磨布8a、8bと、第2の供給リール9a、9bと、第2の走行ローラ10a,10bと、第2の巻き取りローラ11a,11bと、第2の研磨布12a、12bと、クリーニング用粘着ローラ13a,13bと、反転機構14と、搬送機構15と、インクリボン16と、インクリボンの供給リール17と、インクリボンの巻き取りリール18と、中間転写フィルム19と、中間転写フィルムの供給リール20と、中間転写フィルムの巻き取りリール21と、サーマルヘッド22と、ヒートローラ23と、フィルム剥離ローラ24と、排紙ローラ25と、より構成される。
【0018】
そして、カード収納部2は、印刷に用いる未記録のブランクカード(ホワイトカードとも称するカード3)を縦方向に複数枚収納する。
カード3は、画像や文字を印刷するためのブランクカードであり、磁気コードを記録する磁気媒体や、メモリ付きICチップや,セキュリティを高めるためのホログラム等が必要に応じて搭載されている。
ピックアップローラ4は、カード収納部2端に取り付けられており,カード3に接触しながら一方向に回転してカード3を上方向に一枚ずつ移動させ、次のカード表面を研磨する研磨機構の第1の走行ローラ6a、6b間へ送る。(カード表面を研磨する研磨機構は、第1の供給リール5a、5bと、第1の走行ローラ6a、6bと、第1の巻き取りローラ7a、7bと、第1の研磨布8a、8bと、第2の供給リール9a、9bと、第2の走行ローラ10a,10bと、第2の巻き取りローラ11a,11bと、第2の研磨布12a、12bと、から構成されている。)
【0019】
第1の供給リール5aには、研磨前のテープ状の第1の研磨布8aが巻かれており第1の走行ローラ6aを経由時にカード3の片面を研磨した後第1の巻き取りローラ7aに巻き取られている。
第1の供給リール5bには、研磨前のテープ状の第1の研磨布8bが巻かれており第1の走行ローラ6bを経由時にカード3の他の片面を研磨した後第1の巻き取りローラ7bに巻き取られている。
この、第1の供給リール5aと5b、第1の走行ローラ6aと6b、第1の巻き取りローラ7aと7b、第1の研磨布8aと8bは、それぞれ一対である。
そして、一対の第1の走行ローラ6a,6b間にピックアップローラ4の回転によりカード3が一枚送られてくると、一対の第1の走行ローラ6a,6bがゆっくりと回転してカード3を移動させて次の一対の第2の走行ローラ10a,10b間に送ることにより一対の第1の研磨布8a,8bによりカード3の両面が同時に研磨される。
次に第2の供給リール9aには、研磨前のテープ状の第2の研磨布12aが巻かれており第2の走行ローラ10aを経由時にカード3の片面を研磨した後第2の巻き取りローラ11aに巻き取られている。
第2の供給リール9bには、研磨前のテープ状の第2の研磨布12bが巻かれており第2の走行ローラ10bを経由時にカード3の他の片面を研磨した後第2の巻き取りローラ11bに巻き取られている。
この、第2の供給リール9aと9b、第2の走行ローラ10aと10b、第2の巻き取りローラ11aと11b、第2の研磨布12aと12bは、それぞれ一対である。
そして一対の第2の走行ローラ10a,10b間に一対の走行ローラ6a,6bの回転によりカード3が一枚送られてくると一対の第2の走行ローラ10a,10bがゆっくりと回転してカード3を移動させて次の一対のクリーニング用粘着ローラ13a,13b間に送ることにより一対の第2の研磨布12a,12bによりカード3の両面が同時に研磨される。
【0020】
一対のクリーニング用粘着ローラ13は、ローラ表面にゴミ,塵,埃等を吸着するゴム等からなる粘着面を有しており,一対の第2の走行ローラ10a,10bから送られてきたカード3の両面をこのクリーニング用粘着ローラ13a,13bの粘着面に密着させて回転することによりカード3の表面に付着しているゴミ,塵,埃等を吸着して除去する。
反転機構14は、クリーニング用粘着ローラ13a,13bを回転させることにより、上方向(垂直方向)に送られてきたカード3を一旦保持した後、回転して水平方向にカード3の向きを変えてから、反転機構14に設置されている一対の送りローラを回転させて搬送機構15へ送る。
搬送機構15は、磁気コード記録部と搬送用ローラとを有し、反転機構14から送られてきたカード3の磁気コードを記録すると共にカード3を搬送用ローラの回転により一対のヒートローラ23へ送る。
【0021】
インクリボン16は、複数色の熱転写用インクが塗布されたフィルムからなり、複数色の熱転写用インクは、減色法による3原色としてY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)及びK(ブラック)が用いられる。
そして,このインクリボン16は、印刷に用いられる前には供給リール17に巻かれて保存されており、印刷時にはこのインクリボン16と中間転写フィルム19とを密着してサーマルヘッド22へ送り、サーマルヘッド22においてインクリボン16の熱転写用インクの塗布面と反対側の面から画像や文字に応じた加熱をすることによりインクリボン16の熱転写用インク側と密着された中間転写フィルム19熱転写用インクを転写して画像や文字を印刷した後、巻き取りリール18に印刷後のインクリボン16が巻き取られる。
中間転写フィルム19は、熱転写用受容層(印刷面)と保護層(フィルム面)とが塗布されたフィルムからなり、熱転写用受容層側にインクリボン16に塗布された熱転写用インクを転写して画像や文字を印刷する。
そして、この中間転写フィルム19は、印刷前は供給リール20に巻いて保存されており、印刷後は巻き取りリール21に巻き取られる。
【0022】
サーマルヘッド22は、複数の発熱抵抗体からなり印刷する画像や文字に応じて発熱することによりインクリボン16に塗布された熱転写用インクを加熱して中間転写フィルム19の熱転写用受容層に転写して画像や文字を印刷する。
一対のヒートローラ23は、上部に加熱ヒータを内蔵し表面はゴム材料で形成されたローラと、下部にヒータを内蔵しないで表面はゴム材料で形成されたローラとからなるが、加熱時の熱均衡性を保つために下部にもヒータを内蔵してもよい。
そして、この一対のヒートローラ23は、搬送機構15から送られてきたカード3と印刷済みの中間転写フィルム19の熱転写用受容層とを密着させて上部のローラにより、中間転写フィルム19の裏面(熱転写用受容層の反対側)から加熱・加圧しながら一対のヒートローラ23を回転させて一対のフィルム剥離ローラ24へ送る。
一対のフィルム剥離ローラ24は、カード3のみを挟持して回転して一対の排紙ローラ25へカード3を送り、中間転写フィルム19は巻き取りリール21に巻き取られることにより、ヒートローラ23で加熱されて密着したカード3と中間転写フィルム19は剥離される。この時カード3の印刷面には印刷された熱転写用受容層と保護層が転写される。剥離後はカード3の表面は保護層が一番上になるため熱転写用受容層に印刷された熱転写用インクが保護される。
一対の排紙ローラ25は、一対のフィルム剥離ローラ24から送られてきた印刷済みのカード3を排紙して外部に設置されたトレー等に収納される。
【0023】
図2に示すように,カード表面を研磨する研磨機構の基本構成は、印刷に用いる未記録のブランクカードとしてのカード3を複数枚収納するカード収納部2と、印刷時にカード3をカード収納部2から一枚ずつカード収納部2の上方向に回転してピックアップローラ4と、カード3の研磨前のテープ状の第1の研磨布8a、8bが巻かれている第1の供給リール5a、5bと、第1の研磨布の供給リール5a,5bに巻かれている第1の研磨布8a、8bをカード収納部2から取り出されたカード3の表面に接触させてカード3の表面を研磨させながら走行させる第1の走行ローラ6a,6bと、カード3を研磨後の第1の研磨布8a、8bを巻き取る第1の巻き取りローラ7a,7bと、第1の研磨布8a、8bにより表面が研磨されたカード3の両面を粘着面に密着させてカード3の表面に密着しているゴミ,塵,埃等を除去するクリーニング用粘着ローラ13a,13bと、からなる。
【0024】
図4(A)に示すように、中間転写フィルム19は、6μm〜25μmの厚さのPETからなるベースフィルム19aと、加熱によりベースフィルム19aからインク受容層19dと保護層19cを剥離する1.0μm以下の厚さの剥離層19bと、1.5μm〜6μmの透明熱溶融性バインダーからなる保護層19cと,0.5μm〜5μmの厚さのインク受容層19dと、からなる。
図4(B)に示すように、中間転写フィルム19のインク受容層19dには、インクリボン16に塗布された熱転写用インク16aがサーマルヘッド22の加熱により転写(印刷)される。
図4(C)に示すように、印刷後のカード3は、カード3の表面に熱転写用インク12aを転写したインク受容層19dと、保護層19cが転写される。この場合、保護層19cがカード表面の一番上に形成される。
【0025】
図5に示すように,インクリボン16は、2.5μm〜8μmの厚さのPET上に、Y(イエロー)16y,M(マゼンタ)16m,C(シアン)16c及びK(ブラック)16kの4色のインクがそれぞれ0.5μm〜6μmの厚さで1フレーム分を形成し、それが複数フレーム分塗布されている。熱転写用インクには熱溶融性と熱昇華性があるが用途により選択して使用する。
【0026】
次に、動作について説明する。
まず,図1に示すように,カード収納部2に収納されているカード3をピックアップローラ4の回転により1枚を一対の第1の走行ローラ6a,6b間へ一対の第1の研磨布8a,8bと共に送る。そして、第1の研磨布8a,8bの研磨面とカード3の両面上に凸状となっているバリや付着物とを接触させてこれらを研磨し削除する。
【0027】
研磨布に要求される性能には、研磨力、仕上げ面、耐久力、強度、使いやすさ等があり、これらが同時にまたは別個に要求される。一般に研磨力がよくて仕上げ面の細かい研磨布が要求される傾向があるが、研磨力と仕上げ面の間には相関関係があり研磨力を向上させると仕上げ面は粗くなり、仕上げ面を良くすると研磨力が低下する。
このため,第1の研磨布8a,8bは、研磨力を向上させたものを用いて、カード表面に凸状となっているバリや付着物を研磨し、かつ、カード3表面を第1の研磨布8a,8bが直接接触しないようにしてカード3表面を研磨により傷つけないよう設定する。
【0028】
そして、一対の第1の研磨布8a,8bで研磨されたカード3を、一対の第1の走行ローラ6a,6bを回転させることにより第2の走行ローラ10a,10bへ第2の研磨布12a,12bと共に送る。そして、第2の研磨布12a,12bの研磨面とカード3の両方の表面とを接触させてカード3の両方の表面を研磨する。
【0029】
第2の研磨布12a,12bとしては仕上げ面の細かい研磨布を用い、カード3の表面を滑らかにして仕上げ面を良くするよう研磨するとともに油膜類も研磨布側に吸収して除去する。
【0030】
次に、第1及び第2の研磨布で表面が研磨されたカード3をクリーニング用粘着ローラ13a,13bに送り、カード3の両面をクリーニング用粘着ローラ13a,13bの粘着面に密着させて回転させることにより、カード3の表面に研磨後も残っているゴミ,塵,埃等をクリーニング用粘着ローラ13a,13bの粘着面の粘着層に吸着して除去する。
そして、反転機構14により、クリーニング用粘着ローラ13a,13bを回転させて垂直に送られてきたカード3を、一旦保持した後、向きを水平方向に変えて、搬送機構15へ送り、カード3の磁気コードを記録した後ヒートローラ23へ送る。
【0031】
次に、カード3がヒートローラ23へ送られる前に、インクリボン16の熱転写用インクと中間転写フィルム19の熱転写用受容層を密着させた後,サーマルヘッド22を印刷する画像や文字に応じて発熱させることによりインクリボン16の熱転写用インクを中間転写フィルム19の熱転写用受容層に転写して画像や文字を印刷する。
【0032】
そして、印刷された中間転写フィルム19の熱転写用受容層とカード3の印刷面とを密着させてヒートローラ23へ送り、中間転写フィルム19の裏面(熱転写用受容層の反対側)から加熱する。
ヒートローラ23で加熱されて密着したカード3と中間転写フィルム19を、フィルム剥離ローラ24でカード3のみを挟持して回転することにより中間転写フィルム19を剥離すると、カード3の印刷面には印刷された熱転写用受容層と保護層が転写されて残り、このカード3を排紙ローラ25の回転により排紙して外部に設置されたトレー等に収納して印刷を終了する。
【0033】
次に、図2,図3を用いて、カードの表面を研磨する研磨機構の基本構成による動作について詳細に説明する。
図2において、カード収納部2に収納されているカード3を一枚ピックアップローラ4の回転により、一対の第1の走行ローラ6a,6b間へ一対の第1の研磨布8a,8bと共に送る。そして、一対の第1の走行ローラ6a,6bをゆっくり一対のクリーニング用粘着ローラ13a,13b方向へカード3が移動するよう走行させる。この時、一対の第1の供給リール5a,5bと一対の第1の巻き取りローラ7a,7bとを一対の第1の研磨布8a,8bが前後方向に細かく往復移動するよう稼動して一対の第1の研磨布8a,8bの研磨面によりカード3の両面上に凸状となっているバリや付着物を研磨してこれらを除去する。
そして、研磨後のカード3を一対のクリーニング用粘着ローラ13a,13bへ送り,カード3表面に付着している研磨後のゴミ,塵,埃等を除去する。
【0034】
そして、図3に示すように、第1の研磨布の走行ローラ6(説明の簡略化のため一対の走行ローラ6a,6bを1つとした。以下同様とする。)とカード3との間には第1の研磨布8の厚さ+略10μmだけ隙間が開けられている。これは、第1の研磨布に研磨力を向上させたものを用いて、カード表面に凸状となっているバリや付着物を研磨し、かつ、カード3表面を第1の研磨布8が直接接触して傷つけないよう設定したものである。第1の研磨布には、10μm〜100μmのカード表面に凸状となっているバリや付着物を研磨するために、例えば、平織りの布シートを用い#500〜#2000の表面粗さの研磨材を塗布した研磨布を使用する。
【0035】
前述したように、カードの表面を研磨する研磨機構の基本構成による動作については、第1の研磨布8を用いてカード3の表面を傷つけないようにしてバリや付着物を研磨するものであるが,このままでは10μm以下のバリや付着物が残ってしまうので、第2の研磨布12を用いてカード3表面の10μm以下のバリや付着物を直接研磨する。
この第2の研磨布12を用いて、第1の研磨布8で研磨されたカード3をより滑らかに研磨する場合は、第1の研磨布8を用いた図2の基本構成による動作と同じ動作を第2の研磨布12を用いて行う。そして、図3に示される第1の研磨布8の走行ローラ6とカード3との間における第1の研磨布8の厚さ+略10μmの隙間は省き、第2の研磨布12とカード3が直接接触してカード3表面を研磨する。
そして、カード3表面を第2の研磨布12により出来るだけ滑らかに研磨するため、例えば、自動織機織りの布シートを用いた#4000〜#6000の表面粗さの研磨材を塗布した研磨布を使用する。あるいは、アルミナ,セシウム、酸化セリウム等のケミカル研磨材を用いてカード3の表面を研磨する。
【0036】
このように、第1の研磨布8を用いて、まずカード3表面に凸状となっているバリや付着物を粗く研磨し、次に第2の研磨布12を用いてカード3表面を滑らかに研磨することにより、印刷に最適なバリや付着物のない滑らかな表面状態のカード3を得ることが出来る。
尚,カード3の表面の状況(10μm以上のバリや付着物の無い場合)によっては、第1の研磨布8による研磨を省略し、第2の研磨布12による研磨のみとしてもよいのはもちろんである。
【0037】
以上述べてきたように、本発明のICカード作製方法によれば、ブランクカードであるカード3の表面に中間転写フィルム19を接触させて印刷を行う前に、カード3を第1の研磨材が塗布された研磨布8a,8bにより粗く研磨した後、第2の研磨材が塗布された研磨布12a,12bによりカード3の表面を滑らかに研磨することにより、カード3表面にこびりついて強く付着している付着物や、カード3作製時にカード端やカードに搭載するICチップの埋め込み部分端に生じた凸状のバリや、あるいはカードの表面に付着している印刷時にインクの転写を阻害するシリコンなどの流動的な油膜物質等を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る印刷装置の構成図を示す図である。
【図2】本発明に係るブランクカード研磨機構の基本構成を示す図である。
【図3】本発明に係るブランクカード研磨機構の詳細を説明するための図であり、(A)は上面から見たカード研磨機構部分を示す図であり、(B)は正面から見た断面を示す図である。
【図4】ブランクカードへの印刷手順を示す図であり。(A)は中間転写フィルムの断面を示す図であり、(B)は(A)の中間転写フィルムのインク受容層にインクリボンに塗布された熱転写用インクを転写(印刷)した時の断面を示す図であり、(C)は中間転写フィルムのインク受容層に転写された熱転写用インクをブランクカード表面に再転写(印刷)した時の断面を示す図である。
【図5】インクリボンに塗布された熱転写用インクの色配列例を示す図である。 この再転写方式によるカード印刷方法に用いられる印刷装置101を図6に、カード寸法を図7に、印刷時に印刷不良を生じるカード表面状態を図8に示す。
【図6】従来の再転写方式によるカード印刷方法に用いられる印刷装置を示す図である。
【図7】印刷に用いられるカードの寸法を示す図である。
【図8】印刷時に印刷不良を生じるカード表面状態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・印刷装置、2・・・カード収納部、3・・・カード(ブランクカード)、4・・・ピックアップローラ、5a,5b・・・第1の供給リール、6,6a,6b・・・第1の走行ローラ(一対のローラ)、7a,7b・・・第1の巻き取りローラ、8,8a,8b・・・第1の研磨布(第1の研磨材が塗布された研磨布)、9a,9b・・・第2の供給リール、10a,10b・・・第2の走行ローラ(一対のローラ)、11a,11b・・・第2の巻き取りローラ、12,12a,12b・・・第2の研磨布(第2の研磨材が塗布された研磨布)、13a,13b・・・クリーニング用粘着ローラ、14・・・反転機構、15・・・搬送機構、16・・・インクリボン、16a,16y,16m,16c,16k・・・熱転写インク、17・・・インクリボンの供給リール、18・・・インクリボンの巻き取りリール、19・・・中間転写フィルム(印刷用フィルム)、19a・・・ベースフィルム、19c・・・保護層、19d・・・インク受容層19d、20・・・中間転写フィルムの供給リール、21・・・中間転写フィルムの巻き取りリール、22・・・サーマルヘッド、23・・・ヒートローラ、24・・・フィルム剥離ローラ、25・・・排紙ローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板から複数個のブランクカードを切り出し、各ブランクカードの上面に凹部を形成した後、前記各ブランクカードの上面の前記凹部以外の面に熱転写印刷を行ってカードを作製するカード作製方法において、
前記ブランクカードの上面に前記熱転写印刷する前に、前記切り出した際に前記ブランクカードの表面に生じたバリ及び前記凹部形成した際に前記凹部に生じたバリを平坦化するために、前記各ブランクカードを研磨材が塗布された研磨布により研磨を行うことを特徴とするカード作製方法。
【請求項2】
基板から複数個のブランクカードを切り出し、各ブランクカードの上面に凹部を形成した後、前記各ブランクカードの上面の前記凹部以外の面に熱転写印刷を行ってカードを作製するカード作製方法において、
前記ブランクカードの上面に前記熱転写印刷する前に、前記切り出した際に前記ブランクカードの表面に生じたバリ及び前記凹部形成した際に前記凹部に生じたバリを平坦化するために、前記各ブランクカードを第1の研磨材が塗布された研磨布により研磨を行った後、前記第1の研磨材よりも砥粒の小さい第2の研磨材が塗布された研磨布により研磨を行い、前記第1の研磨材は、♯500〜♯2000の砥粒材料であり、前記第2の研磨材は、♯4000〜♯6000の砥粒材料、もしくは、ケミカル研磨材であることを特徴とするカード作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−83562(P2007−83562A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275351(P2005−275351)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】