説明

カード装着装置

【課題】スマートカードの着脱が容易で、かつ防水も可能にしたカード装着装置の提供を目的とする。
【解決手段】接触端子部11の周囲を囲むようにシール部材12を備え、スマートカード100を蓋体3に保持させて蓋体3を閉塞位置に位置させた時にシール部材12が端子101の周囲に密接する構成としたことにより、蓋体3と筐体1との間の空間に水分や埃などの異物が侵入したとしても、異物が接触端子11aあるいは端子101に付着することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主面に端子を有するカード状メモリ媒体を装着可能なカード装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコンなどの情報機器は、セキュリティ性を向上させるために、スマートカードと呼ばれるカード状メモリ媒体を着脱可能なスロットを備えているものがある。スマートカードは、国際規格ISO7816に基づき物理的特性や電気的特性が規格化されている。また、日本工業規格ではJISX6303に物理的特性や外部端子の位置・寸法などが規定されている。スマートカードは、例えば幅約95mm、奥行約54mm、厚さ約0.5〜1.0mmの大きさを有するカード状の本体にICチップ(集積回路)を内蔵し、少なくとも一方の主面にICチップに電気的に接続された端子を露出して配している。ICチップは、セキュリティ情報などの各種情報を記憶することができる機能を備えたものや、演算処理を実行することができる機能を備えたものがある。
【0003】
上記のようなスマートカードを着脱可能なカード装着装置は、情報機器に内蔵可能なタイプや、情報機器に備わる所定の通信端子に接続可能な外付けタイプのものがある。これらのカード装着装置にスマートカードを装着する際は、スマートカードをスライド式でカード装着装置の所定の開口部に挿入し、カード装着装置内のコネクタに押圧する構造が一般的である。
【0004】
カード装着装置においてスマートカードからのデータを授受するには、露出状態でカード装着装置に配置されている端子電極と、スマートカードに備えるICチップの端子とを電気的に接続させる必要がある。
【0005】
スマートカードを抜き差しする開口部に、直接剥き出し状態の端子電極を配置させるため、防水構造は採用し難い。すなわち、この構造では、スマートカード挿入用の開口部から水が浸入することになるので、機器の防水性を確保することができない。
【0006】
スマートカードリーダーに防水構造を持たせる提案が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された構成は、スマートカード全体を収納する収納部にスマートカードを収納した後、収納部の外周を囲むように備えたシール部材により、スマートカード及び収納部を外蓋で密着閉蓋するカードリーダを備えた携帯端末である。係る構成により、シール部材が収納部への水の進入を抑制できるため、カードリーダーの防水を計れる効果がある。
【特許文献1】特開平08−077312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1に開示されている構成では、収納部へスマートカードを装着する際、スマートカードの外周縁部とシール部材とを係合させる必要があるため、スマートカードの着脱作業が煩雑であるという問題がある。
【0008】
本発明は、スマートカードの着脱が容易で、かつ防水も可能にしたカード装着装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカード装着装置は、主面に端子を有するカード状メモリ媒体を装着可能なカード装着装置であって、筐体と、前記筐体に回動自在に支持され、前記筐体の主面に配された蓋体と、前記筐体の主面に対向する前記蓋体の内面に形成され、前記カード状メモリ媒体を保持可能な保持部と、前記筐体における前記蓋体と対向する主面に配され、前記カード状メモリ媒体の前記端子と接触可能な接触端子と、前記接触端子を配列した接触端子部と、前記接触端子部の周囲を囲む弾性部材とを備え、前記蓋体に対向する前記弾性部材の先端面は、前記蓋体が前記筐体の主面に近接する位置にある時、前記蓋体の内面に面状に当接する面当接可能な高さを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子の周囲のみにシール部材を配置し、蓋体を筐体の主面に近接対向する位置まで回動させることで接触端子を密閉できる構造としたので、スマートカードの着脱が容易であるとともに、接触端子の防水も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のカード装着装置は、上記構成を基本として以下のような態様をとることができる。すなわち、本発明のカード装着装置において、前記弾性部材は、前記カード状メモリ媒体が装着された前記蓋体が前記筐体の主面に近接する位置にある時、前記カード状メモリ媒体の主面に面当接する構成とすることができる。このような構成とすることにより、カード状メモリ媒体を本装置に装着した際に、接触端子部を密閉状態にすることができ、外部から蓋体と筐体とに挟まれた空間に水分などの異物が侵入したとしても、異物が接触端子に付着するのを防ぐことができる。
【0012】
本発明のカード装着装置において、前記弾性部材は、前記先端面が、前記接触端子の前記蓋体側端部よりも突出している構成とすることができる。
【0013】
本発明のカード装着装置において、前記蓋体は、前記接触端子部および前記弾性部材に重ならない位置に貫通孔が形成されている構成とすることができる。このような構成とすることにより、本装置の防水性を確保しながら、本装置に装着されたカード状メモリ媒体を容易に取り出すことができる構成を実現することができる。
【0014】
(実施の形態)
〔1.カード装着装置の構成〕
図1は、本実施の形態におけるカード装着装置の外観(前面側)を示す斜視図である。図2は、本実施の形態におけるカード装着装置の外観(背面側)を示す斜視図である。図3は、カード装着装置の蓋体が開いた状態を示す斜視図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、カード装着装置は、略直方体を成す筐体1内に、電気回路部品を内蔵して構成されている。図2に示すように、筐体1の背面1bには、パソコン50(図6参照して後述)などの各種情報処理装置に接続可能なコネクタ2を備えている。筐体1の右側面1d(カード装着装置を、前面1aを使用者側に対向させて内面1cを上方に向けた姿勢にした時に、使用者から見て向かって右側に位置する側面)には、ネジ5aを支持しているリブ4aが突出形成されている。筐体1の左側面1e(右側面1dの裏側の面)には、ネジ5bを支持しているリブ4bが突出形成されている。ネジ5a及び5bは、後述のパソコン50に形成されたネジ穴(不図示)に螺結させることができる。また、筐体1の上面1f(前面1a、背面1b、右側面1d及び左側面1eに隣接する一方の面)には、蓋体3、ロックレバー14を備えている。
【0016】
蓋体3は、主に、主平面が長方形である略板状の部材で形成されている。蓋体3の略板状の部材は、主平面の面積が少なくともスマートカード100(後述)の主平面の面積よりも大きく形成されている。また、蓋体3は、略板状の部材の一方の長辺部近傍が、支軸31を介して筐体1に支持されている。また、蓋体3は、支軸31の軸回りに矢印A及びBに示す方向へ回動自在に筐体1に支持されている。蓋体3は、少なくとも筐体1の内面1cを閉塞する閉塞位置と、内面1cを開放する開放位置との間を、回動可能である。図1及び図2は蓋体3が閉塞位置にある状態を示し、図3は蓋体3が開放位置にある状態を示している。なお、開放位置にある時、筐体1の上面1fからスマートカード100(後述)を挿入することができる位置まで開口部34は回動している。
【0017】
また、蓋体3は、主平面の略中央に長円形の開口部32が形成されている。開口部32は、カード装着装置内に収納されているスマートカード100(後述)の裏面100bの一部を露出させるものであり、使用者がスマートカード100(後述)をカード装着装置から抜き出す際に指などを挿入することができる部分である。なお、開口部32の形状は一例であり、楕円形や長方形など、少なくともカード装着装置内に収納されているスマートカード100(後述)を装置外部から指先などで接触可能な形状及び大きさであればよい。また、開口部32は、少なくとも接触端子部11及びシール部材12と重ならない位置に形成されており、これにより蓋体3を筐体1に近接させた閉塞位置では、シール部材12によって囲まれた空間(接触端子部11が配されている空間)に水分などの異物が侵入するのを防止している。また、開口部32は、使用者がスマートカード100(後述)をカード装着装置から抜き出す際に、スマートカード100(後述)をスムーズにスライド可能にする観点から、蓋体3の表面3aの略中央に形成することが好ましい。開口部32を蓋体3の表面3aの略中央に形成することにより、スマートカード100(後述)をカード保持部33(詳細は後述)に対して略平行に移動させることができ、スムーズにスライドさせることができる。
【0018】
また、蓋体3は、筐体1の内面1cに対向する裏面3bに、スマートカード100(後述)を保持可能な一対のカード保持部33(図3参照)を備えている。カード保持部33は、蓋体3の裏面における両端近傍において突出形成された、断面形状が略L字型の部材である。また、カード保持部33は、蓋体3の短辺に沿って形成されている。また、蓋体3は、一対のカード保持部33に挟まれた断面L字形状の部分に、スマートカード100(後述)を挿入可能な開口部34が形成されている。開口部34は、幅寸法が少なくともスマートカード100(後述)の長手方向の寸法よりも大きく形成されている。
【0019】
ロックレバー14は、矢印E及びFに示す方向へスライド可能に配されている。ロックレバー14は、図1及び図2に示す位置にある時、蓋体3に形成された爪部35(後述)に係合し、蓋体3を閉塞位置で位置決めしている。また、ロックレバー14が図3に示す位置にある時、蓋体3に形成された爪部35との係合が解除され、蓋体3を回動可能な状態となる。
【0020】
図4は、筐体1の内面1cの構成を明確に図示したものであり、蓋体3の図示を省略したカード装着装置の構成を示す。図4に示すように、内面1cには、接触端子部11、シール部材12、付勢部材13が配されている。
【0021】
接触端子部11は、複数(本実施の形態では、スマートカード100の端子101における接触領域の数と同数の8個)の接触端子11aを備えている。接触端子11aは、弾性を有する略板状の金属で形成されている。接触端子部11の周囲には、シール部材12が配されている。
【0022】
シール部材12は、接触端子部11の周囲を囲うように配され、内面1cに接着剤などで密着固定されている。本実施の形態では、シール部材12は、弾性を有する樹脂材料で形成されているが、少なくとも上面12aの法線方向に圧縮変形可能であれば樹脂に限らない。本実施の形態では、シール部材12は、繰り返して圧縮変形しても硬度の低下が少なく、温度変化及び繰り返し使用に対する硬度の変化が少ないシリコーンフォームで形成した。
【0023】
付勢部材13は、蓋体3を開放位置に付勢するための部材であり、本実施の形態では板バネで形成した。付勢部材13は、板バネに限らず、少なくとも蓋体3を開放位置に向かって付勢することができれば、コイルバネや弾性を有する樹脂などで形成してもよい。また、本実施の形態では、付勢部材13を開口部32に関し接触端子部11の反対側に備えた構成であるが、例えば開口部32とロックレバー14との間に備える等、付勢部材13の配置は適宜選択することができる。なお、付勢部材13を備えることは必須ではなく、使用者が手動で蓋体3を開放位置へ回動させる構成としてもよい。
【0024】
図5は、スマートカードをカード装着装置へ挿入する様子を示す斜視図である。スマートカード100は、国際規格ISO7816に基づき物理的特性や電気的特性が規定されているとともに、日本工業規格JISX6303に物理的特性や外部端子の位置・寸法などが規定されている。図5に示すスマートカード100は、これらの規格に準拠しており、例えば幅約95mm、奥行約54mm、厚さ約0.5〜1.0mmの大きさを有するカード状の本体にICチップ(集積回路)を内蔵して構成されている。また、スマートカード100の少なくとも一方の主面100aには、ICチップに電気的に接続された端子101が配されている。ICチップは、セキュリティ情報などの各種情報を記憶することができる機能を有するものや、演算処理を実行することができる機能を有するものがある。端子101の位置や寸法についても、JISX6303規格に規定されており、カード装着装置はこの規格に準拠したスマートカードに対応するために接触端子部11及び接触端子11aの位置や寸法が決められている。
【0025】
スマートカード100をカード装着装置へ挿入する際は、スマートカード100を、図5に示すように端子101が向かって右側に位置しかつ主面100aが内面1cに対向する姿勢にして、開口部34に挿入する。開口部34に挿入されたスマートカード100は、カード保持部33により位置規制されて、蓋体3に保持される。次に、蓋体3を矢印Bに示す方向へ回動させることで、蓋体3はスマートカード100を保持したまま、閉塞位置まで変位する。次に、蓋体3を閉塞位置まで変位させた状態で、ロックレバー14を図5に示す位置から矢印Fに示す方向へスライドさせることにより、蓋体3を閉塞位置で固定することができる。これにより、スマートカード100の装着動作が完了する。蓋体3を閉塞位置まで回動させることにより、接触端子部11における接触端子11aと端子101とが接触し、電気的に接続された状態になる。
【0026】
以下、パソコン50の構成について説明する。
【0027】
図6は、本実施の形態におけるカード装着装置を着脱可能な情報処理装置の一例であるパーソナルコンピューター(以下、パソコンと称する)の斜視図である。図7は、カード装着装置がパソコンに装着された状態を示す平面図である。本実施の形態のカード装着装置は、図6に示すパーソナルコンピューターなどの情報処理装置に着脱可能である。
【0028】
図6に示すように、パソコン50は、略直方体の筐体51内に、中央演算処理装置や記憶媒体などを内蔵している。また、パソコン50は、筐体51の主平面上に画像などの様々な情報を表示することができるディスプレイ52を備えている。また、筐体51においてディスプレイ52を備えている面には、使用者が様々な情報の入力を行うことができる操作部53を備えている。また、筐体51の側面51aには、カード装着装置のコネクタ2(図2参照)と電気的に接続可能なコネクタ(不図示)を備えている。また、側面51aには、ネジ5a及び5bを螺結可能なネジ穴(不図示)を備えている。
【0029】
図7に示すように、カード装着装置の背面1bとパソコン50の側面51aとを対向させ、コネクタ同士を接続するとともに、ネジ5a及び5bを筐体51の側面51aに備えるネジ穴(不図示)に螺結させることにより、カード装着装置をパソコン50に機械的に装着することができるとともに、コネクタ同士が電気的に接続された状態とすることができる。カード装着装置をパソコン50に電気的に接続することにより、パソコン50とカード装着装置との間で情報の交信を行うことができる。例えば、カード装着装置に、記憶領域を有するICチップが搭載されたスマートカード100(図5参照)を装着することにより、パソコン50を操作してスマートカード100のICチップから情報を読み出したり、ICチップに情報を書き込んだりすることができる。また、スマートカード100がセキュリティシステムにおける認証を行うためのカードである場合は、パソコン50がスマートカード100のICチップから認証情報を読み出し、パソコン50内において認証作業を実行することができる。
【0030】
〔2.スマートカード100の着脱動作〕
図8、図9、図10A、図11Aは、図1におけるZ−Z部の断面を示す。図10B、図11Bは、図1におけるY−Y部の断面を示す。
【0031】
まず、図8は、スマートカード100が未装着状態で、蓋体3が閉塞位置にある状態を示す。図8に示す状態では、蓋体3は、別途設けられたロック機構(不図示)により閉塞位置で固定されている。この時、蓋体3の裏面3bは、シール部材12における裏面3b側の上面12aに面状に当接する面当接している。よって、シール部材12によって囲まれた空間(接触端子11aが配された空間)は、密閉状態となり、仮に蓋体3と内面1cとの間の空間に外部から水分が侵入したとしても、シール部材12によって囲まれた空間へは水分は侵入せず、接触端子11aには水分は付着しない。
【0032】
なお、シール部材12は、図8に示す状態の時、蓋体3によって押圧されて僅かに圧縮変形している方が、より確実に接触端子部11が配された空間の密閉性を確保できる。また、本実施の形態では、シール部材12の上面12aが接触端子11aの蓋体3側端部よりも高いため、図8に示す状態では、蓋体3の裏面3bと接触端子部11の接触端子11aとの間には空隙があり、両者は接触していない。よって、接触端子11aが長時間に亘って圧縮変形した状態にならないため、接触端子11aの塑性変形による弾性力の低下を防ぐことができる。
【0033】
次に、ロックレバー14(図1等参照)を図1に示す位置から矢印Eに示す方向へスライドさせて図3に示す位置までスライドさせると、ロックレバー14に結合しているロック機構と爪部35とのロック状態が解除され、蓋体3は、付勢部材13(図4参照)による付勢力により、支軸31の軸回りに矢印Aに示す方向へ回動する。
【0034】
図9は、蓋体3が開放位置まで回動した状態を示す。蓋体3は、図9に示す開放位置では、爪部35が凹部15の上端に形成された規制部16に当接することで、矢印Aに示す方向への回動が規制され、位置決めされている。
【0035】
次に、開口部34にスマートカード100を矢印Cに示す方向へ挿入する。この時、スマートカード100は、蓋体3の裏面3bに形成された一対のカード保持部33(図10Bを参照して後述)にガイドされながら矢印Cに示す方向へ挿入することができる。
【0036】
図10A及び図10Bは、スマートカード100が蓋体3と内面1cとに挟まれた空間内に挿入された状態を示す。図10Cは、図10Aにおける接触端子部11近傍の要部断面図である。図10Bに示すように、スマートカード100は、蓋体3に形成されたカード保持部33によって長手方向の両端が支持されることによって、蓋体3に保持されている。また、スマートカード100が蓋体3内に挿入された状態では、図10Bに示すように付勢部材13の付勢部13aがスマートカード100の主面100aに当接して接圧を与えているため、スマートカード100はカード装着装置から抜ける方向(矢印Dに示す方向)へ容易に移動しない。したがって、蓋体3が開放位置にある時に、カード装着装置を開口部34が鉛直下向きになる姿勢にしたとしても、カード装着装置内に挿入されているスマートカード100が自重により落下することを防ぐことができる。次に、蓋体3を矢印Bに示す方向へ回動させる。
【0037】
図11A及び図11Bは、蓋体3が閉塞位置まで回動した状態を示す。図11Cは、図11Aにおける接触端子部11近傍の要部断面図である。図11A及び図11Bに示すように、蓋体3を閉塞位置まで回動させると、スマートカード100の主面100aがシール部材12の上面12aに当接してシール部材12を圧縮変形させ、スマートカード100の端子101が接触端子部11の接触端子11aに当接する。
【0038】
具体的には、図10Cに示すように、シール部材12にスマートカード100あるいは蓋体3が当接していない状態におけるシール部材12の高さ寸法をh11、内面1cに対する接触端子11aの高さ寸法をh12とし、図11Cに示すように蓋体3を閉塞位置に変位した状態における蓋体3の裏面3bと内面1cとの間隙をh21,内面1cとスマートカード100の主面100aとの間隙をh22とした時、
h22≦h12
の関係を有するため、蓋体3を閉塞位置に変位させることで、端子101における8個の接触領域がそれぞれ接触端子11aを弾性変形させながら各接触端子11aに接触する。また、
h22<h11
の関係を有することにより、蓋体3を閉塞位置に変位させることで、スマートカード100がシール部材12を圧縮変形させるため、接触端子部11が配された空間を確実に密閉状態にすることができる。また、
h21≦h11
の関係を有することにより、図8に示すようにスマートカード100がカード装着装置内に未挿入でかつ蓋体3を閉塞位置に変位させた状態において、シール部材12の上面12aが蓋体3の裏面3bに当接(h21=h11の時)あるいはシール部材12を圧縮変形(h21<h11の時)するため、接触端子部11及びその周辺を密閉することができる。
【0039】
また、図11Dに示すように、シール部材12は、接触端子部11の周囲を囲むように配されているため、スマートカード100を保持した蓋体3を閉塞位置に変位すると、スマートカード100の端子101の周囲に当接し、接触端子部11及び端子101を密閉状態にすることができる。
【0040】
以上により、カード装着装置に対するスマートカード100の装着動作が完了する。
【0041】
カード装着装置に装着されたスマートカード100を取り出す場合は、まず、ロックレバー14を図11Dに示す位置から矢印Eに示す方向へスライドさせ、図12に示す位置へ変位させる。これにより、蓋体3は、閉塞位置でロックされている状態が解除される。蓋体3は、付勢部材13により矢印Aに示す方向への付勢力が与えられて、図12に示す開放位置へ変位する。
【0042】
次に、使用者は、開口部32に指を挿入し、スマートカード100の裏面100bに指先を当接させる。そのまま指先を矢印Dに示す方向へ移動させて、指先とスマートカード100の裏面100bとの摩擦により、スマートカード100を矢印Dに示す方向へスライドさせる。
【0043】
スマートカード100の一部が開口部34を介して外部に突出する位置までスマートカード100をスライドさせた後、スマートカード100における開口部34から突出した部位を摘んで矢印Dに示す方向へ引くことで、スマートカード100をカード装着装置から抜き出すことができる。
【0044】
スマートカード100を抜き出した後は、筐体1と蓋体3との間に異物が侵入するのを防ぐために、速やかに蓋体3を閉塞位置へ変位させることが好ましい。
【0045】
〔3.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、接触端子部11の周囲を囲むようにシール部材12を備え、スマートカード100を蓋体3に保持させて蓋体3を閉塞位置に位置させた時にシール部材12が端子101の周囲に密接する構成としたことにより、蓋体3と筐体1との間の空間に水分や埃などの異物が侵入したとしても、異物が接触端子11aあるいは端子101に付着することを防ぐことができる。
【0046】
また、シール部材12を圧縮変形可能な材料で形成し、蓋体3を閉塞位置まで回動させた時にスマートカード100でシール部材12を押圧して圧縮変形させる構成としたことにより、接触端子部11が配された空間(シール部材12で囲まれた空間)の密閉性を向上させることができる。
【0047】
また、上述のh11、h12、h21及びh22の関係を維持できる範囲で、蓋体3の開放状態から閉塞状態への移行に連動して、接触端子11a(接触端子11aが接触端子部11と一体化されている構成の場合には接触端子部11)を蓋体3の方向に上昇する構成を採用すると、蓋体3が閉塞状態にある時のスマートカード100の端子101と接触端子11aとをより確実な電気的接続を実現することができる。
【0048】
また、蓋体3にスマートカード100を保持していない状態で、蓋体3を閉塞位置まで回動させた時に、蓋体3の裏面3bがシール部材12に当接、あるいは蓋体3の裏面3bがシール部材12を押圧して圧縮変形させる構成としたことにより、スマートカード100が未装着の状態であっても、接触端子部11が配された空間(シール部材12で囲まれた空間)を密閉することができ、接触端子11aに異物が付着することを軽減することができる。
【0049】
また、蓋体3は、開放位置にある時に、爪部35が規制部16に当接する構成としたことにより、開口量を最小限にとどめることができるので、蓋体3と筐体1との間の空間に水分や埃などの異物が侵入するのを極力抑えることができる。
【0050】
また、蓋体3を開放位置に向かって付勢する付勢部材13を備えたことにより、蓋体3を閉塞位置から開放位置へ変位させる際に、ロックレバー14を図1に示す位置から図3に示す位置へスライドさせることで蓋体3が開放位置へ変位されるため、蓋体3を開く際の手順が少なくてすむ。すなわち、付勢部材13を備えない場合は、ロックレバー14をスライドさせる操作と、蓋体3を閉塞位置から開放位置へ手動で回動させる操作が必要であるが、付勢部材13を備えることにより、ロックレバー14をスライドさせる操作のみで蓋体3を閉塞位置から開放位置へ変位させることができる。
【0051】
また、付勢部材13は、蓋体3に挿入されたスマートカード100の主面100aに圧接するため、スマートカード100の変位を抑えることができる。よって、カード装着装置を、蓋体3が開放位置にある状態でかつ開口部34が鉛直下向きになる姿勢にしたとしても、スマートカード100が装置から容易に脱落しない。したがって、落下によるスマートカード100の損傷や紛失などを防ぐことができる。
【0052】
また、シール部材12を接触端子部11の周囲を囲むように配したことにより、特許文献1に開示されたようなスマートカードの周囲を密閉する構成に比べて、シール部材12を小型化することができる。したがって、シール部材12を形成するための材料コストを削減することができる。
【0053】
また、シール部材12を接触端子部11の周囲のみに配したことにより、蓋体3に貫通孔で構成された開口部32を形成したとしても、接触端子部11の内部に水分などの異物が付着するのを防ぐことができる。開口部32を形成することができるので、容易にスマートカード100を取り出すことができる構成を搭載することができる。また、図11Dに示すように、開口部32を接触端子部11及びシール部材12に重ならない位置に形成したことにより、蓋体3を閉塞位置に変位させた状態で、開口部32を介して水分などの異物が筐体1と蓋体3との間の空間に侵入したとしても、水分などの異物が接触端子11aに付着することを防ぐことができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、スマートカード100を装着可能なカード装着装置としたが、装着可能な媒体はスマートカードに限らない。少なくとも、一主面に電気的な接触端子を備えた媒体であればよい。
【0055】
また、本実施の形態では、付勢部材13を備えたが、必ずしも備える必要はない。付勢部材13を備えない場合は、蓋体3のロック状態の解除後、使用者が手動で蓋体3を開放位置へ回動させることで、スマートカード100を着脱可能な状態にすることができる。
【0056】
また、本実施の形態では、スマートカード100を取り出しやすくするために、蓋体3の略中央に開口部32を備えたが、図13に示すように蓋体3の端部に切り欠き部32aを形成する構成とすることができる。図13に示す構成によれば、スマートカード100をカード装着装置から抜き出す際、蓋体3を開放位置へ回動させることで、スマートカード100の端部を掴める状態になる。使用者は、スマートカード100の端部を掴み、矢印Dに示す方向へスライドさせることで、スマートカード100をカード装着装置から抜き出すことができる。すなわち、本実施の形態の構成ではスマートカード100をスライドさせる操作と、スマートカード100をカード装着装置から抜き出す操作とを独立して行う必要があったが、図13に示す構成ではスライド操作と抜き出し操作とを一度に行うことができる。
【0057】
また、本実施の形態のカード装着装置は、図5に示すようにパソコン50に対して着脱可能なタイプ(いわゆる外付けタイプ)としたが、パソコン50などの情報処理装置に内蔵されるタイプにも適用できる。
【0058】
また、本発明のカード装着装置は、本実施の形態のようにモバイル型パソコンに着脱可能なカードリーダーに限らず、ETC車載器(ETC:Electronic Toll Collection System)、携帯電話端末に搭載されるSIMカードスロット(SIM:Subscriber Identity Module)に応用が可能である。特に、オートバイ用ETC車載器や携帯電話端末などのように、屋外使用が可能な機器に搭載することでその効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、主面に端子を備えたカード状メモリ媒体を着脱可能なカード装着装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態におけるカード装着装置の外観(前面側)を示す斜視図
【図2】本実施の形態におけるカード装着装置の外観(背面側)を示す斜視図
【図3】カード装着装置の蓋体が開いた状態を示す斜視図
【図4】筐体の構成を示す斜視図
【図5】スマートカード及びカード装着装置の斜視図
【図6】本実施の形態におけるカード装着装置を着脱可能な情報処理装置の一例であるパーソナルコンピューターの斜視図
【図7】カード装着装置がパーソナルコンピューターに装着された状態を示す平面図
【図8】スマートカードが未装着状態のカード装着装置の断面図
【図9】蓋体が開放位置にある時のカード装着装置の断面図
【図10A】スマートカードが挿入された状態のカード装着装置の断面図
【図10B】スマートカードが挿入された状態のカード装着装置の断面図
【図10C】カード装着装置の要部断面図
【図11A】蓋体が閉塞位置にある時のカード装着装置の断面図
【図11B】蓋体が閉塞位置にある時のカード装着装置の断面図
【図11C】カード装着装置の要部断面図
【図11D】蓋体が閉塞位置にある時のカード装着装置の平面図
【図12】スマートカードが挿入された状態のカード装着装置の斜視図
【図13】カード装着装置の変形例を示す斜視図
【符号の説明】
【0061】
1 筐体
3 蓋体
11 接触端子部
12 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に端子を有するカード状メモリ媒体を装着可能なカード装着装置であって、
筐体と、
前記筐体に回動自在に支持され、前記筐体の主面に配された蓋体と、
前記筐体の主面に対向する前記蓋体の内面に形成され、前記カード状メモリ媒体を保持可能な保持部と、
前記筐体における前記蓋体と対向する主面に配され、前記カード状メモリ媒体の前記端子と接触可能な接触端子と、
前記接触端子を配列した接触端子部と、
前記接触端子部の周囲を囲む弾性部材とを備え、
前記蓋体に対向する前記弾性部材の先端面は、前記蓋体が前記筐体の主面に近接する位置にある時、前記蓋体の内面に面状に当接する面当接可能な高さを有する、カード装着装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記カード状メモリ媒体が保持された前記蓋体が前記筐体の主面に近接する位置にある時、前記カード状メモリ媒体の主面に面当接可能な高さを有する、請求項1記載のカード装着装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記先端面が、前記接触端子の前記蓋体側端部よりも突出している、請求項1または2記載のカード装着装置。
【請求項4】
前記蓋体は、前記接触端子部および前記弾性部材に重ならない位置に貫通孔が形成されている、請求項1記載のカード装着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図11D】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−146200(P2010−146200A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321396(P2008−321396)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】