説明

カーボンナノチューブの選択的官能化

本発明は、特定の型又は型の範囲のカーボンナノチューブを、その電子的特性に基づいてジアゾニウムの化学反応を使用して選択的に官能化する方法を指向する。本発明は、更にカーボンナノチューブを、選択的官能化及び電気泳動法により特定の型又は型の範囲の集団に分離する方法、そして更にこのような分離によって生成される新規な組成物を指向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にカーボンナノチューブに関する。更に具体的には、本発明は、カーボンナノチューブを、型によって選択的に官能化し、カーボンナノチューブを型によって分離し、そして型によって分離された官能化されたカーボンナノチューブの集団から新規な組成物を得る方法に関する。
【0002】
本発明は、Robert A.Welch Foundation,Grant No.C−0689;the National Aeronautics and Space Administration,Grant Nos.NASA−JSC−NCC−9−77 and NASA TiiMS NCC−01−0203;the National Science Foundation,Grant Nos.DMR−0073046 and EEC−0118007;及びthe Air Force Office of Scientific Research,Grant No.F−49620−01−1−0364からの援助によって行われた。
【0003】
本出願は、2003年7月29日に出願された米国特許仮出願60/490,755の優先権を主張する。
【背景技術】
【0004】
多数の同心的な殻を含んでなり、そして多層カーボンナノチューブ(MWNT)と呼ばれるカーボンナノチューブ(CNT)は、Iijimaによって1991年に発見された[Iilima,Nature 1991,354,56]。この発見に続いて、それ自体に丸められた単一のグラフェンを含んでなる単層カーボンナノチューブ(SWNT)が、遷移金属でドープされた炭素電極を使用したアーク放電法で合成された[Iijima,S.;Ichihashi,T.Nature 1993,363,603;及びBethune et al.Nature 1993,363,605]。これらのカーボンナノチューブ(特にSWNT)は、独特の機械的、電気的、熱的及び光学的特性を保有し、そしてこのような特性は、広い範囲の適用に対してこれらを魅力的にする。Baughman et al.,Science,2002,297,787−792を参照されたい。
【0005】
CNTの直径及びキラリティーは、整数“n”及び“m”によって記述され、ここで(n,m)は、概念的に丸められて、チューブを形成するグラフェンシートに沿ったベクトルである。qが整数である|n−m|=3qである場合、CNTは、半金属性である(ミリeVの桁のバンドギャップ)。n−m=0である場合、CNTは、真の金属性であり、そして“アームチェア”ナノチューブと呼ばれる。n−mの全ての他の組合せは、0.5〜1.5eVの範囲のバンドギャップを持つ半導体性CNTである。O’Connell et al.,Science,2002,297,593を参照されたい。CNT“型”は、本明細書中で使用される場合、(n,m)ベクトルによって記述されるこのような電子型を指す(即ち、金属性、半金属性、及び半導体性)。
【0006】
CNT、そして特にSWNTの広範囲な適用に対する主たる障害は、電子構造によるその操作である[Avouris,Acc.Chem.Res.2002,35,1026−1034]。全ての既知の調製方法は、半導体性、半金属性、及び金属性電子型の多分散系の材料に導く。M.S.Dresselhaus,G.Dresselhaus,P.C.Eklund,Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes,Academic Press,San Diego,1996;Bronikowski et al.,Journal of Vacuum Science & Technology 2001,19,1800−1805;R.Saito,G.Dresselhaus,M.S.Dresselhaus,Physical Properties of Carbon Nanotubes,Imperial College Press,London,1998を参照されたい。溶液相分散における最近の進歩[Satrano et al.,J.Nanosci.and Nanotech.,2003,3,81;O’Connell et al.,Science,2002,297,593−596]は、バンドギャップ蛍光を使用した分光学的同定[Bachilo et al.,Science,2002,298,2361]及びラマン分光分析[Strano,Nanoletters 2003,3,1091]に加えて、懸濁された混合物のような電気的に別個のナノチューブをモニターする能力を大幅に改良し、そして半導体性[Bachilo et al.,Science,2002,298,2361]、並びに金属性及び半金属性種[Strano,Nanoletters,2003,3,1091]の光学的特徴の決定的指定に導いている。
【0007】
CNTを化学的に官能化する技術は、これらの材料、特にロープ状の集合体に集合する傾向を持つSWNTを操作する能力を大幅に促進している[Thess et al.,Science,1996,273,483−487]。このようなCNTの化学的官能化は、一般的に二つの種類:チューブ末端官能化[Chen et al.,Science,1998,282,95−98]、及び側壁官能化[Tour et al.によるPCT出願公開WO02/060812]に分けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の観点から、その電子構造及び/又は特性に基づいて、CNT、そして特にSWNTを、選択的に官能化することが可能である方法を有することは、特に利益のあることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特定の型又は型の範囲のカーボンナノチューブを、その電子的特性に基づいて選択的に官能化する方法を指向する。本発明は、更にカーボンナノチューブを、選択的な化学的官能化及び電気泳動法の組合せによって特定の電子型又は型の範囲の集合に分離する方法、そしてこのような分離によって生成された新規な組成物も指向する。所望により、これらの単離された組成物を、熱的に脱官能化して、特定の電子型又は型の範囲の官能化されていない元のカーボンナノチューブの集団を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、まず、共有的化学的官能化がナノチューブの電子構造の差によって制御される、カーボンナノチューブの選択的反応経路を提供する。このような化学的経路は、別個の電子型のナノチューブの操作を、金属性ナノチューブの選択的官能化によって提供する。このような方法によるナノチューブの化学反応を制御することは、半導体性の金属性及び半金属性ナノチューブからの分離を、高い選択性及び規模変化の可能性:カーボンナノチューブ社会の長く探求してきた結果を伴って可能にする。
【0011】
一般的に、選択的に官能化されたカーボンナノチューブ、そして特に単層カーボンナノチューブを提供する本発明の方法は、溶媒に懸濁されたカーボンナノチューブの一つ又はそれより多いジアゾニウム種との反応を含む。このようなジアゾニウム種の金属性及び半金属性カーボンナノチューブに対する差別的反応性を利用することによって、各種の型のカーボンナノチューブの混合物に対する化学量論より少ない量のジアゾニウム種の添加は、金属性及び半金属性カーボンナノチューブのみが官能化されることとなる。このようなジアゾニウム種は、金属性及び半金属性カーボンナノチューブが各種の化学的分子で官能化されることを可能にする。
【0012】
一般的に、カーボンナノチューブを選択的に官能化する方法は、工程:a)カーボンナノチューブ材料の量を選択し;b)カーボンナノチューブ材料を溶媒中に懸濁し;そしてc)カーボンナノチューブ材料を、ナノチューブの電子的特性に基づいて選択的に官能化することが可能である化学反応材料を加えることを含んでなる。一般的に、化学反応材料は、化学量論より少ない量で加えられ、そして反応材料は、典型的にはジアゾニウム種である。
【0013】
一般的に、カーボンナノチューブをその電子のバンドギャップに基づいて分離するための方法は、工程:a)カーボンナノチューブを官能化して、フェノール分子を保有する選択的に官能化され界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの混合物を得て、ここにおいて混合物中のカーボンナノチューブの一部分は選択的に官能化され、そして混合物中のもう一つの一部分は、官能化されないままであり;b)選択的に官能化され界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの混合物中に存在するOH基(フェノール基上の)を、pHを増加することによって脱プロトンし;そしてc)官能化されたカーボンナノチューブを、官能化されていないカーボンナノチューブから電気泳動的に分離することを含んでなる。
【0014】
前記のものは、本発明の特徴をやや広く概説しており、以下の本発明の詳細な説明は、よりよく理解することができる。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明の更なる特徴及び利益は、本明細書中で以下に記載されるものである。
【0015】
本発明、及びその利益の更に完全な理解のために、付属する図面と共に使用される以下の説明に対していまや言及され、ここにおいて:
【0016】
図1は、反応スキームを描写し、図中(A)ジアゾニウム試薬は電子を引出し、これによってNガスを放出し、そしてナノチューブ表面への安定なC−C共有アリール結合を残し;(B)電子の移動の程度は、E近辺の電子密度が金属性及び半金属性ナノチューブに対する高い初期活性に導く状態の密度に依存し;そして(C)アーレンで官能化されたナノチューブは、いまや非局在化したラジカルカチオンとして存在し、これは、更に近隣のナノチューブから電子を受取るか、又はフッ化物又はジアゾニウム塩と反応することができる;
【0017】
図2は、(A)各種の量のテトラフルオロホウ酸4−クロロベンゼンジアゾニウム(mol/1000mol炭素で)の添加後の、ドデシル硫酸ナトリウムに懸濁されたカーボンナノチューブのUV−vis−NIRスペクトルを描写し、そして図中、(B)は、金属性領域の拡大図であり、図中、ピーク(a−f)は、側鎖基の濃度が増加するに伴って減少することが分かる;
【0018】
図3は、(A)532nmの励起におけるラマンスペクトルを描写し、1000の炭素原子当りに接続された0(i)から5.6(ii)、22.4(iii)基に増加された官能化に伴う“不規則”モードの成長を示し;図中、(B)は、接線モード(TM)×0.1の強度が、散乱事象の共鳴増強が、増加する反応に伴って喪失されるに伴い減少し;そして図中、不規則モード、Dは、鋭く増加し、次いで同じ増強の喪失のために減衰する;
【0019】
図4は、(A)出発溶液の532nmの励起における低波数ラマンスペクトルを描写し、図中、四つの金属性/半金属性ナノチューブ[(13,1)、(9,6)、(10,4)、及び(9,3)]及び一つの半導体(9,2)がナノチューブの直径に敏感なラジアルモードによってこの波長で探査され、図中、(B)1000の炭素当り5.6基を接続した後、官能化は、特に小さい直径の金属の減衰によって分かるようにこのモードを破壊し;そして金属中の選択的反応性は、これらの種の分離のためのきっかけを与える最初の証拠を与え;そして図中、(C)22.4の比の後、全ての金属モードは減衰し、図2Bと一致して一つの半導体のみが残る;
【0020】
図5は、金属性及び半導体性ナノチューブの両方の、反応前(実線)並びに回収及び熱分解後(点線)に633nmで探査したラマンスペクトルを描写し、ここにおいて化学反応の可逆性は、元のナノチューブの本質的電子的及び光学的特性を回復することができることを意味する;
【0021】
図6は、(A)フェノール基による金属性カーボンナノチューブの選択的官能化(ジアゾニウム種として添加)及びその上昇したpHにおける脱プロトン;(B)官能化されていない及びフェノールで官能化されたカーボンナノチューブの差別的移動を示す電気泳動法による記録;及び(C)適用した電場をスケールすることによって作られた、官能化されていない及びフェノールで官能化されたカーボンナノチューブ間の電気泳動の移動性の比較を描写する。
【発明を実施するための最良の課題】
【0022】
本発明は、カーボンナノチューブを、それによって、その正確な電子構造によって選択的な様式で、化学的に官能化することができる方法を指向する。本発明は、更にカーボンナノチューブを、選択的官能化及び電子泳動法の組合せによって、特定の電子型又は型の範囲の集合に分離する方法を、そして更にこのような分離によって生成された新規な組成物も指向する。所望により、これらの単離された組成物は、熱的に脱官能化して、官能化されていない均一型の元のカーボンナノチューブの集団を得ることができる。
【0023】
その電子的特性に基づくカーボンナノチューブの分離の問題は、1991年のその初期の合成の頃からである。問題は、CNTを製造する全ての現時点の方法は、変化する直径及びキラリティーの不均質な生成物を得て−そして各種の電子構造を有するという事実に起因する。SWNTをその電子的特性に基づいて分離する最近の報告があるが、この偉業を達成するための電子化学的選択性を使用した好結果な証明はない。事実、電子的選択性は、これまで明らかにされていない。
【0024】
理論によって束縛されることを意図するものではないが、本発明の選択的官能化の方法が、ある種の電子構造の他より選択的な反応に向けられるナノチューブ側壁における電荷移動安定性の利用を含むことが信じられる。このような方法は、本発明のいくつかの態様において、カーボンナノチューブを操作し、そしてその電子構造によって、特定の直径、キラリティー、及び電子的特性を有するカーボンナノチューブの集合を得る化学的手段によって分離するための基本を形成する。いくつかの又は他の態様において、特別に調製された範囲の直径、キラリティー、及び電子的特徴を有するカーボンナノチューブの集団が製造されている。
【0025】
本発明によるカーボンナノチューブ(CNT)は、制約されるものではないが、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、二層カーボンナノチューブ、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、管状フラーレン、黒鉛フィブリル、及びこれらの組合せを含む。このようなカーボンナノチューブは、各種の、そして長さ、直径、管壁の数、キラリティー(ヘリシティ)、等の範囲のものであることができ、そして制約されるものではないが、アーク放電[Ebbesen,Annu.Rev.Mater.Sci.1994,24,235−264]、レーザーオーブン[Thess et al.,Science 1996,273,483−487]、フレーム合成[Vander Wal et al.,Chem.Phys.Lett.2001,349178−184]、化学蒸着[米国特許第5,374,415号]を含むいずれもの既知の技術によって製造することができ、ここにおいて支持された[Hafner et al.,Chem.Phys.Lett.1998,296,195−202]又は支持されていない[Cheng et al.,Chem.Phys.Lett.1998,289,602−610;Nikolaev et al.,Chem.Phys.Lett.1999,313,91−97]金属触媒、及びこれらに組合せを更に使用することもできる。態様にもよるが、CNTは、一つ又はそれより多い加工工程にかけることができる。いくつかの態様において、CNTは精製される。例示的な精製技術は、制約されるものではないが、Chiang等[Chiang et al.,J.Phys.Chem.B 2001,105,1157−1161;Chiang et al.,J.Phys.Chem.B 2001,105,8297−8301]によるものを含む。いくつかの態様において、CNTは、切断法によって切断される。Liu et al.,Science 1998,280,1253−1256;Gu et al.,Nano Lett.2002,2(9),1009−1013;Haddon et al.,Materials Research Society Bulletin,2004,29,252−259を参照されたい。用語“カーボンナノチューブ”及び“ナノチューブ”は、本明細書中では互関的に使用されるものである。
【0026】
理論によって束縛されることを意図するものではないが、CNTの電子構造の多様性は、グラフェン平面のナノチューブを形成する円筒への概念的な巻き込みによる1−D系の電子的波数ベクトルの独特の量子化(quantinization)から起こる[M.S.Dresselhaus,G.Dresselhaus,P.C.Eklund,Science of Fullerrenes and Carbon nanotubes,Academic Press,San Diego,1996;R.Saito,G.Dresselhaus,M.S.Dresselhaus,Physical Properties of Carbon Nanotubes,Imperial College Press,London,1998]。この平面の二点を接続する六角形要素の単位のベクトルは、ナノチューブのキラリティーを、二つの整数:n及びmによって定義する。qが整数である|n−m|=3q又はゼロである場合、ナノチューブは、金属性又は半金属性であり、一方残りの種は、幾何依存性バンドギャップを持つ半導体性である[Reich et al.,Physical Review B,2000,62,4273−4276]。従来の研究では大部分使用されなかったが、カーボンナノチューブの幾何構造の微妙な差は、これらの種の溶液相反応性の速度の劇的な変化に導く。本出願人は、カーボンナノチューブと反応することが示されている[Bahr et al.,J.Mat.Chem.,2002,12,1952−1958;Dyke et al.,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,1156;Bahr et al.,J.Am.Chem.Soc.,2001,123,6536−6542]水溶性ジアゾニウム塩[Bravo−Diaz et al.,Langmuir,1998,14,5098]、及び界面活性剤で包まれたナノチューブ[Dyke et al.,Nano Lett.,2003,3,1215−1218]が、共有的アリール結合の形成においてナノチューブから電子を引出し(図1A)[Dyke et al.,Synthetic Lett.,2004,155−160]、そしてこれによって半導体チューブに対する金属性チューブとの微妙な化学選択的反応を明らかにすることができることを見出した。図1において、(A)ジアゾニウム試薬は、電子を引き出し、これによってNガスを放出し、そして安定なC−C共有アリール結合をナノチューブ表面に残し、;(B)電子移動の程度は、E近辺の電子密度が金属性及び半金属性ナノチューブに対する高い初期活性に導く状態の密度に依存し;そして(C)アーレンで官能化されたナノチューブは、いまや局在化したラジカルカチオンとして存在し、これは、更に近隣のナノチューブから電子を受取るか、又はフッ化物又はジアゾニウム塩と反応することができる。Dyke et al.,Synthetic Lett.,2004,155−160:Strano et al.,Science,2003,301,1519を参照されたい。
【0027】
先に記載した結合は、ナノチューブのフェルミ水準、E近辺のエネルギー、ΔEを伴う電子に対する極めて高い親和性を伴って形成する(図1B)。再び、理論に束縛されることを意図するものではないが、反応材料がナノチューブ表面で電荷移動複合体を形成し、ここで後者からの電子供与が遷移状態を安定化し、そして前向きの速度を加速することが示唆される。一旦ナノチューブの結合対称性が、この欠陥の形成によって破壊された場合、隣接する炭素は反応性を増加し(図1C)、そして初期の選択性は、全体のナノチューブが官能化されたように増幅される。
【0028】
カーボンナノチューブの化学は、ピラミッド化角度形式を使用して正しく記載される[S.Niyogi et al.,Acc.of Chem.Res.,2003,35,1105−1113]。ここで、化学的反応性及び速度論的選択性は、sp混成軌道化されたグラフェンシートの曲率に誘導された歪みによるs特性の程度に関連する。炭素当りの歪みエネルギーは、ナノチューブの直径に逆に関係するため、このモデルは、小さい直径のナノチューブが最も反応性であり、反応のエンタルピーが曲率が無限になるに従い減少することを予測する。この挙動が最も普通の場合であるが、その反応性を決定することにおけるナノチューブの電子構造に役割は−特に同様な直径のCNTの集団中の選択性を所望する場合、漸増的に重要となる(しばしばSWNT生成物の場合のように)。更に、このような構造が、キラルラッピング、化学ドーピング、荷電された吸着物、並びにナノチューブ直径に対して非常に敏感であるため、これらの各種の経路中に、簡単な直径依存に加えて相当な多様性が存在する。
選択的官能化
【0029】
一般的に、カーボンナノチューブを選択的に官能化するための方法は、工程:a)カーボンナノチューブ材料の量を選択し;b)カーボンナノチューブ材料を溶媒中に懸濁し;そしてc)ナノチューブの電子的特性に基づいてカーボンナノチューブ材料を選択的に官能化することが可能である化学反応物質を加えることを含んでなる。
【0030】
更に具体的には、いくつかの態様において、カーボンナノチューブを選択的に官能化するための方法は、工程:a)カーボンナノチューブ材料の量を選択し;b)カーボンナノチューブ材料を界面活性剤水溶液に加え、そして均質化して、界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブを含んでなる混合物を形成し;そしてc)適したジアゾニウム種を、金属性及び半金属性カーボンナノチューブと優先的に反応するが、しかし半導体性カーボンナノチューブとは反応しないために適した量で、混合物中に加えることを含んでなる。
【0031】
本発明による界面活性剤は、カーボンナノチューブの水中の分散を促進するいずれもの化学薬剤であることができる。界面活性剤は、制約されるものではないが、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、TRITON X−100、TRITON x−405、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)、及びこれらの組合せを含む。然しながら、有機溶媒中で有機的に包まれたCNTも、包まれた種が、個々のナノチューブが選択的官能化法のために接近可能であるように、単一のナノチューブ、又はその小さい束、即ち、ほぼ2〜3本のナノチューブであることを条件として、更に選択的カップリングにおけるこのジアゾニウム塩とのこの反応のための仲間であることができる。
【0032】
本発明のいくつかの態様において、界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの水性混合物を形成する方法は、均質化工程を含んでなる。本発明による均質化工程は、混合物を適当に均質化し、そして少なくともある程度のカーボンナノチューブを、ミセル様の集合体中にカプセル化するいずれもの方法であることができる。
【0033】
本発明のいくつかの態様において、界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの水性混合物を形成する方法は、更に超音波の援助を含んでなる。超音波の援助は、典型的には約200W〜約600Wの電力で操作される、超音波浴又は超音波ホーンソニケーターのいずれかによって与えられる。このような超音波の援助の時間は、典型的には約1分〜約20分の範囲である。
【0034】
本発明のいくつかの態様において、界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの混合物は、界面活性剤に懸濁されたナノチューブ材料を他の材料から分離するために、遠心分離される。このような態様において、他の材料は底部に重力によって沈下し、そして界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブはデカントされる。本発明のいくつかの態様において、遠心分離は超遠心分離によって与えられ、そして遠心分離は、一般的に約10,000rpm〜約90,000rpmの範囲の強度で、そして一般的に約1時間〜約6時間の範囲の時間で行われる。
【0035】
本発明のいくつかの態様において、アリールジアゾニウム塩がジアゾニウム種として使用される。適したアリールジアゾニウム塩は、制約されるものではないが、以下の式:
【化1】

を含み、ここで、Rは、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヒドロキシ、カルボン酸エステル、カルボン酸、チオカルボン酸塩、アミド、アルコキシ、ポリエーテル、ポリアルキル、ヒドロキシアルキル、及びこれらの組合せからなる群から選択される。“R”に対する変種は:a)非極性溶媒に対する溶解性のための脂肪族鎖又は基;b)複合体又は配合物への組込みのためのポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、等;c)電気的に伝導性の高分子置換基(即ち、ポリピロール又はポリ(フェニレンビニレン));d)水又はアルコールに対する溶解性を増加するためのポリエーテル鎖;e)水に対する溶解性を増加するためのカルボン酸又はカルボン酸塩アニオン;f)複合体を形成するためのポリマーを架橋することができる置換基;g)Rは、芳香族環の各種の位置(オルト、メタ、パラ)で置換されていることができ;h)多数の“R”基が存在し;そして存在する場合、金属表面又はナノ粒子に接続する脱離基としてのCl、Br、及びIの使用を含む。
【0036】
本発明のいくつかの態様において、アリールジアゾニウム塩は、これを界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの混合物に加え、そしてこれがナノチューブと反応することを可能にする前に、まず水又は他の溶媒中に可溶化される。このような態様において、化学量論より少ない量のアリールジアゾニウム塩が加えられ、これが金属性(バンドギャップが無い)及び半金属性(時に“偽ギャップ”と呼ばれる非常に小さいギャップを保有する“Mod.3”ナノチューブ(ここでn−m=3の倍数)、これは曲率誘導である)カーボンナノチューブと優先的に反応するが、しかし半導体カーボンナノチューブとは反応しないようにする。
【0037】
本発明のいくつかの態様において、ラマン、吸光、及び/又は蛍光分光法が反応中及び反応後に使用されて、反応が選択的−まず金属性及び半金属性ナノチューブの好ましい反応であることを示すために過程を分析するために使用される。
【0038】
本発明のいくつかの態様において、部分的反応(即ち、金属性及び半金属性ナノチューブの反応、しかし半導体性ナノチューブの反応ではない)の完結時に、脱安定化剤を加えて、ミセル集合体を不安定化し、そして濾過を可能にすることができる。いくつかの態様において、使用される脱安定化剤は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0039】
選択的反応性が、バンドギャップのサイズの関数であるため、ジアゾニウム種の連続した添加は、混合物中に存在する最小のバンドギャップの未反応のナノチューブと優先的に反応し続けるものである。これらが優先的に反応するために、反応は、次に大きいバンドギャップを持つナノチューブに移るものである。最終的には、十分なアリールジアゾニウム塩が加えられた場合、全てのナノチューブが反応するものである。
【0040】
然しながら、いくつかの態様において、反応選択性は、低い濃度でのみ観察され、官能基の表面被覆度は、選択された条件下で比較的小さいものであることを意味する。
【0041】
本発明のいくつかの態様において、ジアゾニウム種は、置換されたアニリン種を、亜硝酸アルキル(又は別の方法として酸の存在中の無機亜硝酸塩)と反応させることによってin situで生成される。本発明による置換されたアニリン種は、以下の一般式:
【化2】

を有し、ここでR(置換基、又は多置換の場合複数の置換基)は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、アリールアルキル、OH、カルボン酸エステル、カルボン酸、チオカルボン酸塩、アミド、アルコキシ、ポリエーテル、ポリアルキル、ヒドロキシアルキル、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0042】
本発明のいくつかの態様において、ジアゾニウム種は、ジアルキルトリアゼンを酸と反応させることによって、in situで生成される。一般的に、ジアゾニウム種、又はその合成的均等物を製造するいずれもの方法は機能するものである。
【0043】
いくつかの態様において、CNTを界面活性剤の援助で分散することに対する別の方法として、CNTは、発煙硫酸のような超酸媒体中に分散される。一般的に、CNT、特に個々の(結束されない)ナノチューブを分散し、そしてこれが先に記載したジアゾニウム種のいずれもと混和性であるいずれもの方法は、機能するものである。
カーボンナノチューブの分離
【0044】
本発明のいくつかの態様において、アリールジアゾニウム塩は、これらが、前記のジアゾニウム塩と部分的に反応した、界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの混合物のpHの変化に対して敏感である官能基を保有するように選択される。本発明のいくつかの態様において、ジアゾニウム塩は、以下の式:
【化3】

であり、ここでRは、OH(即ち、フェノール)基である。高いpH値(例えば、>10)において、OH基は脱プロトンされる。金属及び半金属が優先的に官能化される態様において、これらの種は、半導体性カーボンナノチューブから、ゲル又はキャピラリー電気泳動法のような電気泳動技術を使用して、これらの高いpH値で分離することができる。
【0045】
従って、反応の化学は、全ての金属性ナノチューブをフェノール分子によって選択的に官能化し、次いで電気泳動的手段によって分離して、特定の型のカーボンナノチューブを得て、そしてこれがロープ様の束に集まらないように行うことができる。分別された材料の回収後、金属性ナノチューブの熱処理は、官能基を追出し、そして得られた官能化されていないナノチューブは、その本来の特性を回復する。
【0046】
いくつかの又は他の態様において、型の混合物中の、その選択的官能化の結果としての異なった型のCNTの溶解度の変化は、その分離を容易にするために利用される。例えば、界面活性剤に懸濁されたCNTの分散物に、金属性及び半金属性CNTと優先的に反応して、これらの型のみを官能化する、化学量論より少ない量のジアゾニウム種を加えることができる。次いで試薬(例えば、DMF)を加えて、界面活性剤の懸濁液を不安定化することができ、この時点でCNTは懸濁液から凝集する。このCNT材料の濾過及び洗浄は、官能化された金属性及び半金属性CNT並びに官能化されていない半導体性CNTの固体の混合物を与える。この固体の生成物の、官能化する基が親和性を有する溶媒中の分散は、官能化された金属性及び半金属性CNTが懸濁され、一方官能化されていない半導体性CNTが懸濁されずに残ることを可能にする。分離は、遠心分離及びデカンテーション又は他の手段によって達成することができる。
【0047】
本発明の最も直接的な、そして明白な使用は、その電子構造に基づくカーボンナノチューブの分離のための経路としてのものである。本発明のいくつかの態様において、金属性ナノチューブ、又は小さいバンドギャップの半導体性ナノチューブを選択的に官能化することによって、残りの種は、官能化の結果として生じる溶解度の変化を使用することによって分離することができる。分子量の増加も、更にこの目的のために使用することができる。更に、官能化は、金属性及び半金属性CNTの伝導を選択的に破壊するために使用することができる。他の適用は、全ての電子型の出発混合物からの全て金属性のナノチューブからなる電子デバイスの製造を含む。ジアゾニウム反応は、高度に官能化された材料を生成するために使用することができる。
【0048】
単層カーボンナノチューブの官能化の他の方法が、ナノチューブの電子構造に対して選択的であることは示されていない。この発見は、ごく最近利用可能となったカーボンナノチューブに対する分光技術によって可能にされている。特に光吸収分光法及び蛍光検出は、反応の進行を追跡し、そしてナノチューブの電子構造への置換基添加の影響をモニターするために使用されている。更に、溶液中のカーボンナノチューブを均一に官能化するための他の方法は存在しない。従来、官能化されたナノチューブは、高度に官能化されたナノチューブ及び官能化されていないナノチューブからなっていた。この観察は、固体状態のナノチューブで起こる束になることに起因する。
【0049】
以下の実施例は、本発明の態様のいくつかを更に十分に例示するために提供される。以下の実施例中で開示される技術が、本発明の実施において十分に機能するように、本発明人によって発見された技術を表し、そして従ってその実行に対する例示的なモードを構成すると考えることができることは、当業者によって認識されるべきである。然しながら、当業者は、本発明の開示に照らして、多くの変更を開示された具体的な態様において行い、そして本発明の思想及び範囲から逸脱することなくなお同一又は同様な結果を得ることができることを認識するべきである。
【実施例】
【0050】
実施例1
この実施例は、本発明のいくつかの態様による界面活性剤に懸濁されたCNTのジアゾニウム種との選択的反応を例示する役目をする。
【0051】
ミセルで被覆された(界面活性剤に懸濁された)単層カーボンナノチューブを、原材料及び1%のドデシル硫酸ナトリウムの、水又は酸化ジューテリウム(DO)中の1時間の均質化、それに続く10分間の超音波処理によって生成する。次いで溶液を4時間遠心分離し、そしてデカントして、ミセルで被覆されたナノチューブを生成する。次いでpHを1.0NのNaOHで概略10に調節し、そして各種のジアゾニウム塩の一つを水溶液/懸濁液に加える。ジアゾニウム塩は、固体として直接デカントされた材料に加えることができ、又はジアゾニウム塩は、水又はDO中に溶解し、そして次いで希釈溶液として加えることができる。大過剰の塩が加えられた場合、選択性は観察されず、しかし全てのナノチューブが高度に官能化される。選択的官能化のために、塩の希釈溶液を、ジアゾニウム塩を水又はDO中に可溶化し(概略1.5M)、そしてこの溶液のアリコート(概略5μL)をナノチューブのデカントしたものに撹拌しながら加えることによって調製する。反応は、いくつかの分光技術によって、官能化の程度を決定するためにモニターすることができる。官能化が完結した時点で、反応混合物をある種の有機溶媒(例えば、アセトン、DMF)で希釈し、そして次いで凝集したナノチューブをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜上の濾過によって収集する。次いで収集した固体をアセトン及び水で洗浄して、未反応のジアゾニウム塩、ジアゾニウムの分解副産物、及びドデシル硫酸ナトリウムを除去する。次いでナノチューブ試料を膜から収集し、そして真空オーブン中で60℃で乾燥する。
【0052】
ここにおける説明は、制約することを意味しない。濃度及び反応時間、並びに製造することができる中間体を生成するための方法には変動がある。例えば、ジアゾニウム塩を、in situで、アニリン及び亜硝酸アルキル又はアニリン及び亜硝酸ナトリウム/酸から生成することができる。更に、今日まで最良に反応するジアゾニウム塩はアリールジアゾニウム塩であるが、然しながら、これは制約と解釈されるべきではない。アリール環の官能基又は置換基は、分離効果又は他の特性を向上するためのナノチューブの加数の親水性及び疎水性の特質を改良するために変化することができる。
実施例2
【0053】
この実施例は、選択的官能化を吸収分光法により如何に追跡することができるかを例示する役目をする。
【0054】
選択的官能化に対する証拠は、反応中及び反応後の溶液の紫外−可視−近赤外(UV−vis−NIR)吸収スペクトルで観察することができる。ナノチューブ表面の反応は、ナノチューブに、このスペクトルにおける顕著なそして鋭い吸収最大値を通常与える光励起過程を必然的に破壊する。図2は、このような最大値を長い波長(低エネルギーバンドギャップ)において有するナノチューブが、より低い濃度で、そのピークが減衰するように、不均衡に影響されることを示す。図2において、(A)は、テトラフルオロホウ酸4−クロロベンゼンジアゾニウムの各種の量(mol/1000mol炭素で)の添加後のドデシル硫酸ナトリウムに懸濁されたカーボンナノチューブのUV−vis−NIRスペクトルであり、そして図中、(B)は、金属性領域の拡大図であり、図中、10ナノチューブ炭素当り0.0、2.1、3.9、5.6、9.1、及び11.8の側鎖基にそれぞれ対応するピークa〜fが、側鎖基濃度の増加に伴って減少することが分かる。従って、より小さい直径のナノチューブは、より大きい試薬濃度まで影響されないままであることが分かる。
【0055】
注意深く制御された条件下で、先に記載したCNTの化学的挙動は、金属性及び半金属性ナノチューブの高度に選択的な官能化を得て、半導体の除外のために利用することができる。一つのこのような態様において、出入り口を持つキュベットを経由して150mL/分のドデシル硫酸ナトリウムに懸濁されたカーボンナノチューブを移動する再循環流反応器が使用された。この反応をin situでモニターするために、計量された量の塩化テトラフルオロホウ酸アリールジアゾニウムの添加後に、連続UV−vis−NIRスペクトルを発生させた。添加は、系が安定状態の条件に達した後、0.05mMの増分で行われた。図2A及び2Bは、安定状態後のテトラフルオロ硫酸4−クロロベンゼンジアゾニウムの連続添加後の水に懸濁させたナノチューブのUV−vis−NIR吸収スペクトルを示す。スペクトルは、金属性及び半金属性ナノチューブの概略440〜645nmのv1→c1、並びに半導体性ナノチューブのそれぞれ830〜1600nm及び600〜800nmの範囲のv1→c1及びv2→c2電子遷移をモニターしている。これらの分離した吸収の特徴は、それぞれの別個のナノチューブの価電子のモニターを可能にし;共有連結を形成するために種が反応したときに、電子は局在化し、そしてその最大値は減衰する。図2において、このように制御された添加下で、金属性の遷移のみが初期に減衰し、金属性ナノチューブの高度に優先的な官能化を示すことを知ることができる(図2Bにおいて、側鎖基の濃度の増加に伴いピークが減少していることに注意されたい)。これらの遷移が、半導体のv1→c1及びv2→c2遷移と比較してはるかに低いエネルギーである電子から起こることを考慮すれば、この選択性は顕著である。実際に、これらの金属性遷移の選択的減衰は、前例のないものであり、そしてこの過程は、可逆的電子吸引とは別個であるものとして[Strano et al.,Journal of Physical Chemistry B,2003,107,6979−6985]、又は先に報告されているような包括的な“ドーピング”過程[Itkis et al.,Nanoletters,2002,2,155−159]として定義される。
実施例3
【0056】
この実施例は、選択的官能化をラマン分光法により如何に分光法的に追跡することができるかを例示する役目をする。
【0057】
図3は、0.05mMの試薬を加えた後の同じ溶液の532nmの励起におけるラマンスペクトルを示す。図3Aは、レーザーと共鳴する個別のナノチューブ直径を代表するピークを通常保有する低ラマンシフト領域を示す。一つのみ(示したように基の最低波長の遷移)が可視である。図3は、“D−バンド”が増加し−官能化の特徴、しかし最大のバンドギャップのナノチューブ(更に示されている)が、なお蛍光を示し(乱されていない電子遷移)、官能化が存在しないことを示す。この全ては一定の全体のpH=10で起こる。
【0058】
更に具体的には、この反応の選択性は、化学的欠陥に対して非常に敏感であることが知られている半導体ナノチューブのバンドギャップ蛍光の保存によって確認される。図3において、(A)は、1000の炭素原子当り接続された0(i)から5.6(ii)、22.4基への官能化の増加に伴う“不規則”モードの成長を示す532nmの励起におけるラマンスペクトルであり;図中(B)接線モード(TM)×0.1の強度が、散乱事象の共鳴増強が増加する反応に伴って喪失されるために減少し;そして図中、不規則モード、Dは、鋭く増加し、次いで同じ増強の喪失のために減衰する。官能化は、図3Aの532nmの励起に示すようにラマンスペクトル中の1330cm−1(D−バンド)におけるフォノンモードの強度を増加する。その存在は、spC−spCナノチューブ−アリール結合の形成中の、ナノチューブのspCのspCへの転換を確認する。このモードは、増加する官能化に伴い鋭く増加し、次いで系がその電子共鳴を喪失するために、C−C接線モード(“TM−ピーク”)に伴い減少する(図3B)。これらの結果は、初めて多くの側壁の官能化の事象の、低い転換におけるこのフォノン強度との分光学的相関関係を可能にし、そしてナノチューブの側壁の化学反応の制御のために価値あるものとなるものである。ナノチューブの側壁への分子の添加は、ラジアルフォノンの破壊し、これは、特定の直径の種に対して別個の低周波数ラマン線を与え、これは、特定(n,m)のナノチューブが反応するために、それに応じてモードの減衰を起こす。図4は、安定状態後のそれぞれの反応物質の添加を伴う混合物の532nmにおける溶液相のラマンスペクトル、及びこれらの特徴の減衰の相対的速度が、キラルな半金属性種間の先例の無い反応性の差を明らかにすることを類似的に示す。ここで、ラマン分光法は、ナノチューブをほとんど同一の遷移エネルギーで探査し、そしてこれらの差は、最終的に半金属性及び金属性種を分離するために利用することができる電荷移動複合体の曲率依存性の安定化を明らかにする。図4において、(A)は、出発溶液の532nmの励起における低波数ラマンスペクトルであり、図中、四つの金属性ナノチューブ[(13,1)、(9,6)、(10,4)及び(9,3)]及び一つの半導体(9,2)がこの波長で、ナノチューブの直径に敏感なラジアルモードで探査され、図中(B)1000の炭素当り5.6基を接続した後、官能化は、特に小さい直径の金属の減衰によって分かるようにこのモードを破壊し、そして金属中の選択的反応性が、これらの種の分離のためのきっかけを与える最初の証拠を与え、そして図中(C)22.4の比の後、全ての金属モードは減衰し、図2Bと一致して一つの半導体のみを残こす。半金属性及び金属性種の全てのv1→c1遷移が減衰(図2)したときに、(9,2)半導体に先に指定した一つの低周波数ラマンモードのみが影響されずに残る[Strano et al.,Journal of Physical Chemistry B,2003,107,6979−6985]ことを注記する。これは、これらの特徴の、最近の分光学的指定の最初の独立の確認としての役目をする[Bachilo et al.,Science,2002,298,2361;M.S.Strano,Nanoletters,2003,3,1091]。
実施例4
【0059】
この実施例は、CNTを、選択的官能化によって如何に型によって分離することができるかを例示する役目をする。
【0060】
ナノチューブ分離のきっかけとしての選択的官能化は、殆んどのクロマトグラフィーに基づいた方法とは異なり、チューブ長さとは独立な操作を可能にすることにおいて独特である。選択性が殆んど完全であるため、この化学反応は、今日まで報告されているわずかな富化[Chattopadhyay et al.,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,3370−3375;Zheng et al.,Nature Materials,2003,2,338−342]とは対照的に、高い効率の分離のための基本を形成することができる。本出願人は、金属性ナノチューブの側壁を、炭素当り概略0.11側鎖基でフェノール化し、そして官能化された試料を電気泳動的手段を使用して分画した。10.2のpHより上で、これらのフェノール基は脱プロトンされ、ナノチューブ上の基当り正味負の電荷を残した(図6A)。この場合、非イオン性界面活性剤を使用して、官能化における静電電荷の変化を促進した。電気泳動移動性の変化、μは、キャピラリー電気泳動(CE)中に泳動速度を使用して反応時に測定した。この移動性は、キャピラリー中の電場強度、Eに対して正規化された観察された速度、vであり、そして:
μ=(v/E)=(q/f)
に等しく、式中qは、ナノチューブ上の正味の電荷であり、そしてfは、ナノチューブの長さと直径の比(L/D)に強く依存する水力学的抵抗係数である。官能化は、長さが影響されないためにfに影響せず、そしてチューブの直径は、側壁上の界面活性剤に吸着された層よりはるかに小さく広げられる。然しながら、移動性は、ナノチューブの表面の荷電された基に対して敏感である。TRITON X−405中の官能化されていないナノチューブは、適用された電場によって分画された場合、三つの別個の集団:加工からのカチオン性緩衝分子の吸着からのδ電荷を持つもの、中性であるもの、及びチューブの側面及び末端の表面の−OH及び−COOH基からのδ電荷を持つものを一貫して示す。これらの三つの群間の分割は、カチオン性吸着及びアニオン性官能化の均衡に依存する。図6Bは、官能化されていない及びフェノールで官能化された材料の、2分の移動時間の差を示すCEの記録を示す。酸化ジューテリウムは、負に荷電されたこの時点以降に移動した種に中性のマーカーを与える。適用された電場による移動速度の調整は、反応した及び未反応のナノチューブ間の電気泳動移動性(正の電極に向かう)の分布の比較を可能にする。図6Cにおいて、この比較は、官能化された材料が、全体の集団から、負の電荷による移動性のこの変化を利用することによって如何に抽出されるかを明らかにする。
実施例5
【0061】
この実施例は、選択的に官能化されたCNTを、如何にその官能化されていない元の状態に戻すことができるかを例示する役目をする。
【0062】
反応した材料の300℃における流動する不活性ガス雰囲気中の熱分解は、アリール分子を側壁から開裂し、そして芳香族、元のナノチューブの分光学的特徴を回復する[Bahr et al.,J.Mat.Chem.,2002,12,1952−1958]。図5は、回収及び熱分解の前(実線)及び後(点線)の633nmにおけるラマンスペクトルを比較する(図5)。この波長は、これがCO不均衡によって調製された試料に対して金属及び半導体の混合物を探査するため使用された[Strano,Nanoletters,2003,3,1091]。従って、ラジアルフォノンモードは、熱処理後、殆んど完全に回復される。同様に、吸収スペクトルの電子遷移は回復され、側鎖基の喪失及びナノチューブの本来の電子構造の回復を示す。化学反応の可逆性は、元のナノチューブの本質的な電子的及び光学的特性を回復することができることを意味する。従って、この選択的化学反応は、特定の電子構造の沈積した又は化学的に連結したナノチューブを分離するための可逆的経路として使用することができ、そして次いで本来の光学的及び電子的特質は回復される。
【0063】
要約として、ジアゾニウム試薬は、水溶液中に懸濁された単層カーボンナノチューブを高い選択性で官能化し、そして電子構造による操作を可能にすることを示す。例えば、金属性の種は、制御された条件(例えば、化学量論より少ない量)下で、半導体性ナノチューブの排除近辺まで反応させることができる。選択性は、電荷移動遷移状態優先結合の形成を安定化するフェルミ水準に近い電子の能力によって規定される。単層カーボンナノチューブを、その電子構造によって操作する手段としてのこの化学反応の使用は、フェノール分子の選択的接続及びその後の電気泳動手段を使用する分離によっれ明らかにされる。化学反応は、熱処理を使用して逆転することができ、これは、ナノチューブの元の電子構造を回復する。
【0064】
本明細書中で参照された全ての特許及び刊行物は、本明細書中に参考文献として援用される。先に記載した構造、機能、及び先に記載した態様の操作のあるものが、本発明を実行するために必要ではなく、そして単純に例示的な態様又は複数の態様の完全性のために記載中に含まれることは理解されるものである。更に、先に記載した参照された特許及び刊行物中に記述された特定の構造、機能、及び操作は、本発明と関連して実行することができるが、しかしこれらは、その実行に対して本質的ではないことは理解されるものである。従って本発明が、具体的に記載された以外の方法で、特許請求の範囲で定義される本発明の思想及び範囲から実際に逸脱することなく、実行することができることは理解されることである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、反応スキームを描写し、図中(A)ジアゾニウム試薬は電子を引出し、これによってNガスを放出し、そしてナノチューブ表面への安定なC−C共有アリール結合を残し;(B)電子の移動の程度は、E近辺の電子密度が金属性及び半金属性ナノチューブに対する高い初期活性に導く状態の密度に依存し;そして(C)アーレンで官能化されたナノチューブは、いまや非局在化したラジカルカチオンとして存在し、これは、更に近隣のナノチューブから電子を受取るか、又はフッ化物又はジアゾニウム塩と反応することができる;
【図2】図2は、(A)各種の量のテトラフルオロホウ酸4−クロロベンゼンジアゾニウム(mol/1000mol炭素で)の添加後の、ドデシル硫酸ナトリウムに懸濁されたカーボンナノチューブのUV−vis−NIRスペクトルを描写し、そして図中、(B)は、金属性領域の拡大図であり、図中、ピーク(a−f)は、側鎖基の濃度が増加するに伴って減少することが分かる;
【図3】図3は、(A)532nmの励起におけるラマンスペクトルを描写し、1000の炭素原子当りに接続された0(i)から5.6(ii)、22.4(iii)基に増加された官能化に伴う“不規則”モードの成長を示し;図中、(B)は、接線モード(TM)×0.1の強度が、散乱事象の共鳴増強が、増加する反応に伴って喪失されるに伴い減少し;そして図中、不規則モード、Dは、鋭く増加し、次いで同じ増強の喪失のために減衰する;
【図4】図4は、(A)出発溶液の532nmの励起における低波数ラマンスペクトルを描写し、図中、四つの金属性/半金属性ナノチューブ[(13,1)、(9,6)、(10,4)、及び(9,3)]及び一つの半導体(9,2)がナノチューブの直径に敏感なラジアルモードによってこの波長で探査され、図中、(B)1000の炭素当り5.6基を接続した後、官能化は、特に小さい直径の金属の減衰によって分かるようにこのモードを破壊し;そして金属中の選択的反応性は、これらの種の分離のためのきっかけを与える最初の証拠を与え;そして図中、(C)22.4の比の後、全ての金属モードは減衰し、図2Bと一致して一つの半導体のみが残る;
【図5】図5は、金属性及び半導体性ナノチューブの両方の、反応前(実線)並びに回収及び熱分解後(点線)に633nmで探査したラマンスペクトルを描写し、ここにおいて化学反応の可逆性は、元のナノチューブの本質的電子的及び光学的特性を回復することができることを意味する;
【図6】図6は、(A)フェノール基による金属性カーボンナノチューブの選択的官能化(ジアゾニウム種として添加)及びその上昇したpHにおける脱プロトン;(B)官能化されていない及びフェノールで官能化されたカーボンナノチューブの差別的移動を示す電気泳動法による記録;及び(C)適用した電場を調整することによって作られた、官能化されていない及びフェノールで官能化されたカーボンナノチューブ間の電気泳動の移動性の比較を描写する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数のカーボンナノチューブを溶媒中に懸濁し;そして
b)化学量論より少ない量の官能化種を、懸濁されたカーボンナノチューブと反応させ、カーボンナノチューブの一部分が官能化種と、前記一部分を含んでなるカーボンナノチューブの電子的特性に基づいて優先的に反応するようにすること;
を含んでなるカーボンナノチューブを選択的に官能化するための方法。
【請求項2】
a)複数のカーボンナノチューブを溶媒中に懸濁し;そして
b)化学量論より少ない量のジアゾニウム種を、懸濁されたカーボンナノチューブと反応させ、カーボンナノチューブの一部分がジアゾニウム種と、前記一部分を含んでなるカーボンナノチューブの電子的特性に基づいて優先的に反応するようにすること;
を含んでなるカーボンナノチューブを選択的に官能化するための方法。
【請求項3】
a)複数のカーボンナノチューブを界面活性剤水溶液に加え、そして均質化して、界面活性剤に懸濁したカーボンナノチューブの混合物を形成し;そして
b)化学量論より少ない量のジアゾニウム種を、界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブと反応させ、カーボンナノチューブの一部分が前記ジアゾニウム種と、一部分を含んでなるカーボンナノチューブの電子的特性に基づいて優先的に反応するようにすること;
を含んでなるカーボンナノチューブを選択的に官能化するための方法。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ二層カーボンナノチューブ、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、TRITON X−100、TRITON X−405、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ジアゾニウム種が、アリールジアゾニウム塩である、請求項2〜5又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アリールジアゾニウム塩が、以下の式:
【化1】

を含んでなり、そして式中、Rが、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、アリールアルキル、OH、カルボン酸エステル、カルボン酸、チオカルボン酸塩、アミド、アルコキシ、ポリエーテル、ポリアルキル、ヒドロキシアルキル、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ジアゾニウム種が、置換されたアニリン種を、亜硝酸アルキルと反応させることによってin situで発生させられる、請求項2〜5又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記置換されたアニリン種が、以下の一般式:
【化2】

を有し、式中、R(置換基、又は多置換の場合複数の置換基)が、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、アリールアルキル、OH、カルボン酸エステル、カルボン酸、チオカルボン酸塩、アミド、アルコキシ、ポリエーテル、ポリアルキル、ヒドロキシアルキル、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
RがOHである、請求項8又は10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
分離され、官能化されていないカーボンナノチューブを再生するための熱的な脱官能化の工程を更に含んでなる、請求項1〜10、又は11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
a)請求項1に記載の方法によってカーボンナノチューブを選択的に官能化し;そして
b)官能化されたカーボンナノチューブを官能化されていないカーボンナノチューブから分離すること;
を含んでなる、その電子のバンドギャップに基づいて、カーボンナノチューブを分離するための方法。
【請求項14】
a)請求項10に記載の方法によってカーボンナノチューブを官能化して、選択的に官能化された界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの混合物を得て、ここにおいて混合物中のカーボンナノチューブの一部分は、選択的に官能化されて、OH基を保有し、そしてここにおいて混合物中のカーボンナノチューブの一部分は、官能化されないままであり;
b)選択的に官能化された界面活性剤に懸濁されたカーボンナノチューブの混合物中に存在するOH基を、pHを増加することによって脱プロトンし;そして
c)官能化されたカーボンナノチューブを官能化されていないカーボンナノチューブから分離すること;
を含んでなる、その電子のバンドギャップに基づいて、カーボンナノチューブを分離するための方法。
【請求項15】
前記官能化されたカーボンナノチューブが、電気泳動法によって官能化されていないカーボンナノチューブから分離される、請求項13又は14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
金属性及び半金属性カーボンナノチューブが選択的に官能化され、そしてここにおいて半導体カーボンナノチューブが官能化されないままである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記脱プロトンの工程が、pHを10より高く上昇することを含む、請求項14〜15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記電気泳動的手段が、ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15〜16、又は17に記載の方法。
【請求項19】
更に、分離された官能化されていないカーボンナノチューブを再生するための熱的な脱官能化工程を含んでなる、請求項13〜17又は18に記載の方法。
【請求項20】
請求項13〜14又は15に記載の方法によって製造された特定の電子型の官能化されたカーボンナノチューブの組成物。
【請求項21】
前記特定の電子型が、金属性、半金属性、及び半導体性からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記選択的官能化が、ナノチューブの炭素当り、約0.01〜約0.2の官能基の範囲である官能化の程度で官能化されたカーボンナノチューブを得る、請求項20又は21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項19に記載の方法によって製造された特定の電子型のカーボンナノチューブの組成物。
【請求項24】
前記特定の電子型が、金属性、半金属性、及び半導体性からなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−500669(P2007−500669A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522065(P2006−522065)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/024507
【国際公開番号】WO2005/012172
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(501105635)ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ (26)
【出願人】(500106802)ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (15)
【Fターム(参考)】