説明

カーボンナノチューブを利用した電歪構造体及び電歪アクチュエータ

【課題】本発明は、電歪構造体及び電歪アクチュエータに関し、特にカーボンナノチューブを利用した電歪構造体及び電歪アクチュエータに関する。
【解決手段】本発明の電歪構造体は、熱膨張係数が異なる柔軟性の高分子構造体及び、該柔軟性の高分子構造体の一つの表面に設置されたカーボンナノチューブ膜状構造体を含む。少なくとも一部の前記カーボンナノチューブ膜状構造体が、前記柔軟性の高分子構造体の一つの表面から、前記柔軟性の高分子構造体に埋め込まれている。前記カーボンナノチューブ膜状構造体が、分子間力で相互に結合された複数のカーボンナノチューブからなる自立構造を有し、前記柔軟性の高分子構造体における前記カーボンナノチューブ膜状構造体が曲線状に形成されている。また、本発明は、電歪構造体を利用したアクチュエータを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電歪構造体(electrostrictive structures)及びアクチュエータに関し、特にカーボンナノチューブを利用した電歪構造体及び電歪アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電歪アクチュエータは、入力エネルギーを出力機械的エネルギーに変換するデバイスである。例えば、電歪アクチュエータは、静電アクチュエータ、電磁気アクチュエータ及び電熱アクチュエータの3種類に分類することができる。
【0003】
典型的な電熱アクチュエータは、熱膨張係数が異なる二つの金属層を含む二重層構造体である。前記電熱アクチュエータに電流を提供する場合に、前記二つの金属層の熱膨張係数が異なるので、該電熱アクチュエータは、湾曲することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7045108号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/015710号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0299031号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記電熱アクチュエータにおける前記二つの金属層は柔軟性が低いので、該電熱アクチュエータの熱応答速度が遅い。
【0006】
従って、本発明は、前記課題を解決するために、熱応答速度が速い電歪構造体及び電歪アクチュエータ提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電歪構造体は、柔軟性の高分子構造体及び、該柔軟性の高分子構造体の一つの表面に設置されたカーボンナノチューブ膜状構造体を含む。前記カーボンナノチューブ膜状構造体の少なくとも一部が、前記柔軟性の高分子構造体の中に埋め込まれる。前記カーボンナノチューブ膜状構造体が、前記柔軟性の高分子構造体の一つの表面から、該柔軟性の高分子構造体に埋め込まれている。前記カーボンナノチューブ膜状構造体が、分子間力で相互に結合された複数のカーボンナノチューブからなる自立構造を有する。前記柔軟性の高分子構造体における前記カーボンナノチューブ膜状構造体が曲線状に形成されている。
【0008】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体の熱膨張係数が、前記柔軟性の高分子構造体の熱膨張係数と異なる。
【0009】
また、本発明の電歪アクチュエータは、電歪構造体と、第一電極と、前記第一電極から所定の距離だけ離れた第二電極と、を含む。前記電歪構造体が、柔軟性の高分子構造体及びカーボンナノチューブ膜状構造体を含み、前記カーボンナノチューブ膜状構造体の少なくとも一部が、前記柔軟性の高分子構造体の中に埋め込まれる。前記カーボンナノチューブ膜状構造体が、分子間力で相互に結合された複数のカーボンナノチューブからなる自立構造を有し、前記柔軟性の高分子構造体における前記カーボンナノチューブ膜状構造体が曲線状に形成されている。前記第一電極及び前記第二電極が、前記電歪構造体に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電歪構造体及び該電歪構造体を利用した電歪アクチュエータには、次の優れた点がある。第一に、本発明の電歪構造体及び該電歪構造体を利用したアクチュエータは、柔軟性の高分子構造体及び該柔軟性の高分子構造体の一つの表面に設置された複数のカーボンナノチューブ膜状構造体を含む。前記カーボンナノチューブ膜状構造体は複数の隙間を有するので、前記柔軟性の高分子構造体の材料が前記隙間の中に浸漬することができる。これによって、前記柔軟性の高分子構造体と前記カーボンナノチューブ膜状構造体におけるカーボンナノチューブとが緊密に結合することができる。このような構造は、電歪構造体及び該電歪構造体を利用した電歪アクチュエータの使用寿命を延ばすことができる。第二に、前記カーボンナノチューブ膜状構造体は分子間力で結合されたカーボンナノチューブからなる。前記カーボンナノチューブは相互に電気伝導ネットワークを形成することができるので、前記カーボンナノチューブ膜状構造体が優れた電気伝導性を有する。従って、前記電歪構造体を利用した電歪アクチュエータは速い熱応答速度を有する。第三に、前記カーボンナノチューブ膜状構造体及び前記柔軟性の高分子構造体が異なる熱膨張係数を有し、前記電歪構造体が非対称構造を有するので、前記電歪構造体及び該電歪構造体を利用した電歪アクチュエータが加熱される場合に、該電歪構造体及び電歪アクチュエータは、所定の方向に沿って湾曲することができる。従って、前記電歪構造体及び該電歪構造体を利用した電歪アクチュエータは、精確に制御する必要がある素子に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る電歪構造体の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電歪構造体の図1に示すII−II線に沿って切断した断面図である。
【図3】図1中のカーボンナノチューブ膜状構造体を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る電歪構造体におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図5】図4中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図6】本発明の実施例1に係る電歪構造体における綿毛構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図7】本発明の実施例1に係る電歪構造体におけるプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】本発明の実施例2に係る電歪構造体におけるカーボンナノチューブ膜状構造体の構造を示す図である。
【図9】本発明の実施例3に係る電歪構造体の構造を示す図である。
【図10】本発明の実施例4に係る電歪アクチュエータの構造を示す図である。
【図11】本発明の実施例5に係る電歪アクチュエータの構造を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
(実施例1)
図1及び図2を参照すると、本実施例において、電歪構造体10を提供する。該電歪構造体10は、柔軟性の高分子構造体14及びカーボンナノチューブ膜状構造体12を含む。前記電歪構造体10及びカーボンナノチューブ膜状構造体12はシート状である。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の熱膨張係数は、前記柔軟性の高分子構造体の熱膨張係数と異なる。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の熱膨張係数は、前記柔軟性の高分子構造体14の熱膨張係数より小さいことが好ましい。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は、前記柔軟性の高分子構造体14の一つの表面に設置されている。該カーボンナノチューブ膜状構造体12の少なくとも一部は、前記該柔軟性の高分子構造体14の中に浸透されている。前記電歪構造体10の厚さは20μm〜5mmである。
【0014】
前記柔軟性の高分子構造体14は、厚さが20μm〜4mmのシートである。前記柔軟性の高分子構造体14の形状は限定されない。本実施例において、その形状は長方形である。前記柔軟性の高分子構造体14の材料は、シリコーンゴム、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリンなどの一種又は数種の混合物である。本実施例において、前記柔軟性の高分子構造体14はシリコーンゴムからなる。該柔軟性の高分子構造体14の形状は長方体であり、その厚さが0.7mm、その長さが60mm、その幅が30mmである。
【0015】
本実施例において、少なくとも一部の前記カーボンナノチューブ膜状構造体12が、前記柔軟性の高分子構造体14の一つの表面から、前記柔軟性の高分子構造体14の中に埋め込まれている。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12が複数の微孔を含むので、前記柔軟性の高分子構造体14における高分子材料が、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の微孔から前記カーボンナノチューブ膜状構造体12に浸透することができる。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12と前記柔軟性の高分子構造体14との結合方法は、前記柔軟性の高分子構造体14における高分子材料が完全に固化しない形態で、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12を前記柔軟性の高分子構造体14の表面に設置する第一ステップと、前記柔軟性の高分子構造体14における高分子材料が前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の微孔から前記カーボンナノチューブ膜状構造体32に浸透した後、前記柔軟性の高分子構造体14を固化させる第二ステップと、を含む。前記の結合方法により、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12と前記柔軟性の高分子構造体14とを緊密に結合させることができる。また、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は完全に前記柔軟性の高分子構造体14の表面に設置されることもできる。
【0016】
前記柔軟性の高分子構造体14と緊密に結合した前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は、前記柔軟性の高分子構造体14と基本的に平行し、前記柔軟性の高分子構造体14の厚さ方向の主平面からはずらされている。図1及び図2を参照すると、本実施例において、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の一つ表面と前記柔軟性の高分子構造体14の一つ表面は、同じ平面に設置されている。更に、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12と前記柔軟性の高分子構造体14の厚さ比が1:200〜1:5である。本実施例において、その厚さ比が1:25〜1:20である。
【0017】
図3を参照すると、本実施例において、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12が前記柔軟性の高分子構造体14の一つ表面に設置され、U形の外部輪郭を有する。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は第一部124、第二部126及び接続部125を含む。前記第一部124と前記第二部126が相互に所定の距離を置いて設置される。前記接続部125は前記第一部124の一端部及び前記第二部126の一端部を接続して、前記接続部125、前記第一部124及び前記第二部126がU形の構造を形成する。前記第一部124及び前記第二部126がそれぞれ一つの電極と接続される。前記接続部125によって、前記第一部124から前記第二部126への少なくとも一つの伝導パスが形成される。
【0018】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は、複数のカーボンナノチューブ122からなる自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブ膜状構造体12を独立して利用することができるという形態のことである。即ち、カーボンナノチューブ膜状構造体12を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12を懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12には、前記複数のカーボンナノチューブ122が均一に分散されている。前記複数のカーボンナノチューブ122は分子間力で接続されて、膜状の構造体に形成されている。
【0019】
本発明のカーボンナノチューブ膜状構造体12としては、以下の(一)〜(三)のものが挙げられる。
【0020】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は、図4に示す、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム143aを含む。このカーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(特許文献1と特許文献2を参照)から引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長軸方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブフィルム143aは自立構造を有するものである。図4及び図5を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長軸方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。
【0021】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体は、二枚以上の複数の積層された前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが0°を超える角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12に複数の微孔が形成される。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルムは、隙間なく並列されることもできる。
【0022】
(二)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は、図6に示す、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)である。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、100nm以上であり、100nm〜10cmであることが好ましい。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10μm以下になる。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ膜状構造体12は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の厚さは、0.5nm〜1mmである。
【0023】
(三)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム(図7を参照)を含む。このカーボンナノチューブフィルムは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)である。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0024】
単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0025】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの厚さは、0.5nm〜1mm(特許文献3を参照)である。
【0026】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は、前記一つのドローン構造カーボンナノチューブフィルム、綿毛構造カーボンナノチューブフィルム、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム又はそれらの混合物のいずれか一種からなることができる。所定の形状により、一つの前記カーボンナノチューブフィルム又は積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを切断することにより、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の第一部124、前記接続部125及び前記第二部126を形成する。
【0027】
図1、図2及び図3を参照すると、本実施列において、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12は、前記複数の積層されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。各々の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブ122が同じ方向に沿って配列されている。それぞれ前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の第一部124、前記第二部126は長い帯状であり、それらの長手方向が前記複数のカーボンナノチューブ122の配列された方向と平行する。
【0028】
前記第一部124及び前記第二部126を介して前記カーボンナノチューブ膜状構造体12に電圧を印加する場合、電流が該カーボンナノチューブ膜状構造体12に流れる。前記カーボンナノチューブ122により、電気エネルギーを熱エネルギーに変換させる。それにより、前記柔軟性の高分子構造体14を加熱させて、膨張させることができる。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の熱膨張係数は、前記柔軟性の高分子構造体14の熱膨張係数より小さいので、前記電歪複合構造体10は、熱膨張係数の小さい前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の側へ湾曲する。
【0029】
前記電歪複合構造体10に電圧を印加しない場合、該電歪複合構造体10の元の長さが34mm、その厚さが0.7mm、その幅が5mmである。前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の厚さが20mmである。前記第一部124及び前記第二部126が設置された前記電歪複合構造体10の第一側面130を固定する。前記接続部125と接続した前記電歪複合構造体10の第二側面132は、前記電歪複合構造体10の厚さ方向に沿って自由に移動することができる。前記電歪複合構造体10に40ボルトの電圧を2分間印加した後、前記電歪複合構造体10の前記第二側面132は、前記電歪複合構造体10の厚さ方向に向けて16mm移動する。
【0030】
前記接続部125の導電性を高めるために、前記電歪複合構造体10の前記第二側面132に導電強化層128を設置する。前記導電強化層128は前記接続部125の少なくとも一部を被覆する。前記導電強化層128は、例えば、金、プラチナ、パラジウム、銀、銅及び鉄などの良い導電性を有する金属からなることができる。前記導電強化層128は導電接着剤さあり、例えば、銀グルーである。
【0031】
(実施例2)
図8を参照すると、本実施例は実施例1と比べて、次の異なる点がある。本実施例の電歪構造体におけるカーボンナノチューブ膜状構造体70は、複数の第一部124及び複数の第二部126を有する。前記複数の第一部124と前記複数の第二部126とは、所定の距離を置いて間隔をあけて接続部125の同じ側に設置される。前記複数の第一部124及び前記複数の第二部126は前記接続部125から同じ方向に沿って延伸している。且つそれらの配列方向が前記接続部125と垂直である。前記複数の第一部124は正極と電気的に接続され、前記複数の第二部126は負極と電気的に接続される。
【0032】
(実施例3)
図9を参照すると、本実施例は実施例1と比べて、次の異なる点がある。本実施例の電歪構造体30はカーボンナノチューブ膜状構造体32を含む。前記カーボンナノチューブ膜状構造体32において、接続部125における複数のカーボンナノチューブ122は第一部124から第二部126への第一方向に沿って配列されている。前記第一部124及び第二部126における複数のカーボンナノチューブ122は第二方向に沿って配列されている。前記第二方向が前記第一方向と平行しない。図9に示すように、本実施例において、前記第二方向は前記第一方向と垂直である。前記カーボンナノチューブ膜状構造体32において、複数のカーボンナノチューブ122は、分子間力で端と端が接続されて、接続部125を介して前記第一部124から前記第二部126までの方向に沿って連続的に延伸している。
【0033】
本実施例において、前記カーボンナノチューブ膜状構造体32と前記柔軟性の高分子構造体14との結合方法は、前記柔軟性の高分子構造体14における高分子材料が完全に固化しない形態で、前記カーボンナノチューブ膜状構造体32を前記柔軟性の高分子構造体14の表面に設置する第一ステップと、前記柔軟性の高分子構造体14における高分子材料が、前記カーボンナノチューブ膜状構造体32の微孔から前記カーボンナノチューブ膜状構造体32に浸透した後、前記柔軟性の高分子構造体14を固化させる第二ステップと、を含む。
【0034】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体32は、一つの前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム又は積層された複数の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる場合、前記第一ステップにおいて、前記カーボンナノチューブ膜状構造体32の一部を前記柔軟性の高分子構造体14の一つ表面に設置して、前記第一部124を形成する第一サブステップと、前記カーボンナノチューブ膜状構造体32の他の部分を曲げて、その一部を前記柔軟性の高分子構造体14の前記表面に設置して、前記接続部125を形成する第二サブステップと、前記カーボンナノチューブ膜状構造体32における残りの部(前記柔軟性の高分子構造体14の前記表面に設置していない部分)を曲げて、前記柔軟性の高分子構造体14の前記表面に設置して、前記第二部126を形成する第三サブステップと、を含む。前記第一部124と前記接続部125とが成す角度、前記接続部125と前記第二部126とが成す角度は、別々に0°〜90°(0°を含まず)であり、90°であることが好ましい。勿論、前記カーボンナノチューブ膜状構造体32を数回湾曲させた後、前記柔軟性の高分子構造体14の表面に設置することができる。また、前記カーボンナノチューブ膜状構造体32の湾曲回数は、前記の例に制限されない。
【0035】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体32は複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる場合、前記第一ステップにおいて、前記複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを直接前記柔軟性の高分子構造体14の表面に設置する。
【0036】
(実施例4)
図10を参照すると、本実施例は、実施例1の電歪構造体10を利用した電歪アクチュエータ20を提供する。該電歪アクチュエータ20は、電歪構造体10と、第一電極22と、第二電極24と、を含む。前記第一電極22が前記第一部124と電気的に接続され、前記第二電極24は前記第二部126と電気的に接続される。本実施例において、前記第一電極22及び第二電極24は、銅シートである
【0037】
前記第一電極22及び第二電極24によって、前記電歪アクチュエータ20に電圧を印加する場合、電流が該カーボンナノチューブ膜状構造体12に流れる。前記カーボンナノチューブ122により、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、前記柔軟性の高分子構造体14を加熱すると、前記柔軟性の高分子構造体14は膨張できる。前記柔軟性の高分子構造体14の熱膨張係数は、前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の熱膨張係数より大きいので、前記電歪構造体10は、熱膨張係数が小さい前記カーボンナノチューブ膜状構造体12の側へ湾曲する。
【0038】
(実施例5)
図11を参照すると、本実施例は実施例4と比べて、次の異なる点がある。本実施例の電歪アクチュエータ60は断熱部80を備える。前記断熱部80は、電歪構造体10の第一電極22および第二電極24に接触した第一側面130に設置されている。接続部125と接続された前記電歪複合構造体10の第二側面132は、前記電歪複合構造体10の厚さ方向に沿って自由に移動することができる。前記電歪複合構造体10に電圧を印加した後、前記電歪複合構造体10の第二側面132は、前記電歪複合構造体10の厚さ方向に沿って移動又は矢印A方向に沿って回転することができる。
【0039】
本実施例において、前記断熱部80はクランプで、前記電歪複合構造体10の第一側面130をクランプする。前記断熱部80と前記柔軟性の高分子構造体14が一体として形成され、堅く固定されることができる。図11を参照すると、該断熱部80がスライドウェイ62に矢印B方向に沿って自由に滑動することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 電歪構造体
12 カーボンナノチューブ膜状構造体
122 カーボンナノチューブ
124 第一部
125 接続部
126 第二部
128 導電強化層
130 第一側面
132 第二側面
14 柔軟性の高分子構造体
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
20 電歪アクチュエータ
22 第一電極
24 第二電極
30 電歪構造体
62 スライドウェイ
70 カーボンナノチューブ膜状構造体
80 断熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性の高分子構造体及びカーボンナノチューブ膜状構造体を含み、
前記カーボンナノチューブ膜状構造体の少なくとも一部が、前記柔軟性の高分子構造体の中に埋め込まれ、
前記カーボンナノチューブ膜状構造体が、分子間力で相互に結合された複数のカーボンナノチューブからなる自立構造を有し、
前記柔軟性の高分子構造体における前記カーボンナノチューブ膜状構造体が曲線状に形成されていることを特徴とする電歪構造体。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体の熱膨張係数が、前記柔軟性の高分子構造体の熱膨張係数と異なることを特徴とする、請求項1に記載の電歪構造体。
【請求項3】
電歪構造体と、第一電極と、前記第一電極から所定の距離だけ離れた第二電極と、を含む電歪アクチュエータにおいて、
前記電歪構造体が、柔軟性の高分子構造体及びカーボンナノチューブ膜状構造体を含み、
前記カーボンナノチューブ膜状構造体の少なくとも一部が、前記柔軟性の高分子構造体の中に埋め込まれ、
前記カーボンナノチューブ膜状構造体が、分子間力で相互に結合された複数のカーボンナノチューブからなる自立構造を有し、
前記柔軟性の高分子構造体における前記カーボンナノチューブ膜状構造体が曲線状に形成され、
前記第一電極及び前記第二電極が、前記電歪構造体に電気的に接続されていることを特徴とする電歪アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−211888(P2011−211888A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293190(P2010−293190)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】