カーボンナノチューブベースの性質制御材料
レーダー吸収複合材料は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含む。前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収する。前記CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成する。この複合材料の製造方法は、マトリクス材内でCNT浸出繊維材料の配向が制御された状態で、前記マトリクス材の一部に前記CNT浸出繊維材料を配置すること及び前記マトリクス材を硬化させることを含む。前記複合材料は、ステルス用途に使用される輸送容器又はミサイルの構成部品として適応されるパネルに形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に関する記載)
本出願は、2009年4月28日に出願された米国仮出願第61/173,435号及び2009年4月24日に出願された米国仮出願第61/172,503号の利益を主張し、これらの出願の全ての内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概してレーダー吸収体に関する。
【背景技術】
【0003】
低観測性(low observable)技術又はステルス技術は、航空機、船舶、潜水艦及びミサイルに使用され、これらを、例えば、レーダー、赤外線、ソナー及び他の探知方法に対して目立たないように又は観測し難いようにする。レーダー域内の電磁周波数を吸収する様々なレーダー吸収体(RAM)は、このような低観測性用途のために開発されてきた。しかしながら、現在用いられているRAMには、いくつかの欠点がある。例えば、多くのRAMは、低観測性構造物の表面と一体ではない。むしろ、RAMは、低観測性構造物の表面にコーティング又は塗装として適用されるため、前記構造物を重くし、損耗、欠損(chipping)及び故障させる傾向がある。このようなRAMの例として、カルボニル鉄又はフェライトにより被覆された微小球を含有する鉄球塗装が含まれる。その上、これらのコーティングは、前記構造物又はその表面と一体ではないため、前記構造物の表面への結合形成が必要となる。
【0004】
RAMの他の例として、炭素を含浸した発泡ウレタンがある。このようなRAMは、極めて薄い層中に使用される。このようなRAMは、元来非構造的であり、構造物に重量及び体積を加えるが、構造的な支持は与えない。この種のRAMは、しばしば長いピラミッド状に切り分けられる。低周波減衰のため、ピラミッド状構造の基底部から頂部までの距離は、大抵24インチであるが、一方高周波パネルは3〜4インチであってもよい。
【0005】
他のRAMは、低観測性構造物の表面に結合されたドープポリマータイルの形態をとる。例えば、カーボンブラック又は鉄微粒子を添加されたネオプレン(登録商標)を含むこのようなタイルは、特に、極高温もしくは極低温又は高高度等の厳しい動作環境においては剥離しやすい。結局、多くのRAMは、約2GHzの長波長レーダー帯域においては、十分な性能を発揮しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題の1つ以上に取り組んだ新たなRAMを開発することは有益であろう。本発明は、この要求を満たすとともに、関連する効果を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含むレーダー吸収複合材料に関する。前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60メガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができる。CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成する。
【0008】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含むレーダー吸収複合材料の製造方法に関する。前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60メガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができる。CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成する。前記方法は、マトリクス材内でCNT浸出繊維材料の配向が制御された状態で、マトリクス材の一部にCNT浸出繊維材料を配置すること及び前記マトリクス材を硬化させることを含む。前記CNT浸出繊維材料の制御された配向は、前記材料上に浸出されたCNTの相対配向を制御する。
【0009】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含んだ複合材料を含むパネルに関する。前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60メガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができる。CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成する。前記パネルは、ステルス用途のための輸送容器又はミサイルの構成部品として接触面に適応することができる。
【0010】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、パネル形態の上記複合材料を含む輸送容器に関する。前記繊維材料に浸出されたCNTは、前記複合材料内で配向を制御されている。
【0011】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、パネル形態の上記複合材料を含む発射体(projectile)に関する。前記繊維材料に浸出されたCNTは、前記複合材料内で配向を制御されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】連続CVD処理によりAS4炭素繊維上に成長した多層CNT(MWNT)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像。
【図2】連続CVD処理によりAS4炭素繊維上に成長した二層CNT(DWNT)のTEM画像。
【図3】CNT形成ナノ粒子触媒が機械的に炭素繊維材料表面に浸出された部分のバリア・コーティング(barrier coating)内部から成長したCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)画像。
【図4】炭素繊維材料上で目標とする長さである約40ミクロンの20%以内まで成長したCNTの長さ分布の一貫性を明示するSEM画像。
【図5】CNT成長におけるバリア・コーティングの効果を明示するSEM画像。バリア・コーティングが適用された部分では高密度かつ良好な配列のCNTが成長し、バリア・コーティングが存在しない部分ではCNTは成長しなかった。
【図6】繊維全域における約10%以内のCNT密度の均一性を明示する炭素繊維上のCNTの低倍率SEM画像。
【図7】カーボンナノチューブ(CNT)浸出繊維材料を有するレーダー吸収複合材料の断面図。
【図8】パネル等の部材上のレーダー吸収体コーティングとして使用するために適応されたカーボンナノチューブ浸出繊維トウ(tow)。
【図9】複合材料のレーダー吸収特性を向上させるために複合材料に適用されたカーボンナノチューブ浸出繊維トウコーティング。
【図10】カーボンナノチューブ浸出繊維用のコーティングシステムの概略図。
【図11】本発明の実施形態によるCNT浸出繊維材料を製造するための処理。
【図12】レーダー吸収のための熱伝導性及び電気伝導性の向上を目的とした連続処理において、どのように炭素繊維材料にCNTが浸出されるかを示す。
【図13】CNT浸出繊維材料を含む二層構造を有する、例となるRAMパネルの断面図。
【図14】CNT浸出繊維材料を含む多層構造を有する、例となるRAMパネルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1つには、RAMである複合材料を目的とする。本明細書で開示されるレーダー吸収複合材料は、マトリクス材の一部に配置されたCNT浸出繊維材料を有する。CNTは、その高アスペクト比、高伝導性による望ましい電磁吸収特性を有し、繊維材料に浸出された際には、特定の表面被覆密度を調整できる。複合材料全体のCNTは、レーダーを吸収し、吸収したエネルギーを例えば熱として消散させることができる。
【0014】
本発明のレーダー吸収複合材料は、低観測性表面の吸収特性を向上させることができる。ある実施形態において、CNT浸出繊維は、誘電性(レーダー照射に対して透明)があり、その上、導電性のある(レーダーを大幅に反射する)複合材料に対し、高い性質制御を提供し、結果として軽量で高強度の複合材料を使用することができる。このような複合材料のいくつかは、元来が性質制御能力に欠くため、用途があらかじめ制限されていてもよい。
【0015】
本発明のレーダー吸収複合材料は、可視領域及び様々なレーダー帯域を含む、電磁スペクトルの異なる部分に亘ってほとんど黒体である吸収性表面を提供することができる。繊維に浸出されたCNTは、レーダー吸収構造を形成するために、様々な層に特定のCNT密度の調整された配置を可能にする。すなわち、レーダー吸収能力は、前記材料の深さの全域で様々なCNT密度を提供することにより実現される。繊維材料は複合材料の全体に亘り、異なる深さに適切なCNT密度を提供する配列にCNTを形成する足場であり、これにより、一部の層での内部反射及び他の層でのレーダー吸収によるエネルギー消散のための効果的なパーコレーション経路(percolation pathway)を提供する。さらに他の層は、内部反射と吸収したレーダーエネルギーを消散させるパーコレーション経路との組合せを提供することができる。浸出されたCNTは、均一な長さ、密度及び連続CNT浸出処理に基づく繊維材料上の制御された配向を有するように調整することができる。そして、このようにして得られたCNT浸出繊維は、レーダー吸収を最大化するように複合材料構造内に配置される。
【0016】
特に、複合材料表面の近傍において、比較的低いCNT密度は、空気と同等の誘電率又は空気と同等の屈折率を有し、レーダー反射率が実質的に最小化された黒体様(black body-like)構造の材料を形成することができる。すなわち、反射を抑制するために、物体の屈折率を空気の屈折率に近づけることができる。反射率を最小化するための解は、フレネルの法則:R=(n−n0)2/(n+n0)2より明らかである。ここで、Rは反射率、nは物体の屈折率、そしてn0は空気の屈折率である。繊維材料上のCNT密度は、本明細書で以下に開示される連続処理中に調節することができ、CNT浸出繊維材料は、複合材料構造中のCNT浸出繊維の層における屈折率nが、空気の屈折率n0に近似するようにCNTの密度を調節することができる。
【0017】
レーダー吸収をCNTに依存することにより、複合材料に、導電性又は絶縁性の繊維材料又はマトリクスを使用することができる。その上、レーダー吸収複合材料は、低観測性の構造物全体又は表面の一部として一体化することができる。ある実施形態において、構造物全体は、例えば、損耗や欠損等のRAM被覆に関連した問題を未然に防いだRAMとして機能することができる。意義深いことに、本発明のRAMは、ウレタン型発泡体とは異なり構造的であり、したがって、発泡体同等物(foam counterpart)に比べて、実質的な重量の軽減を実現することができる。ある実施形態において、CNT浸出繊維材料をコーティングとして使用することができ、これにより使用された繊維材料が伸張されたために生じる欠損/損耗を避けることができる。
【0018】
上記レーダー吸収体用のCNT浸出繊維を製造するための製造処理は、本明細書において、以下にさらに記載される。前記処理は、大規模連続処理に適している。前記処理において、CNTは、炭素、ガラス、セラミック又はトウ(tow)もしくはロービング(roving)等の巻取り可能な寸法の類似した繊維材料上に直接成長する。CNT成長は、100ナノメートルから約500ミクロまでの間で調節可能な長さで深い森(dense forest)が配置される性質があり、前記長さは以下に記載した様々な要素により制御されている。この森は、CNTが繊維材料のそれぞれのフィラメント(filament)の表面に対して垂直に、つまり半径方向に被覆するように配向することができる。ある実施形態において、繊維材料の軸に対して平行な配向を与えるように、CNTをさらに処理することができる。結果として得られたCNT浸出繊維材料を、製品として巻取る又は低観測性構造物に使用するレーダー吸収複合材料の製造のための織物製品(fabric goods)に紡ぐことができる。意義深いことに、前記連続処理により、様々なCNT密度を有するCNT浸出部分の製造が可能になる。以下でさらに説明するように、これは、組み立てられた場合、レーダー吸収能力全体に貢献する多層構造の製造を容易に可能にする。
【0019】
本明細書において、「レーダー吸収複合材料」という用語は、少なくともマトリクス材に配置されたCNT浸出繊維材料を有するいずれかの複合材料をいう。本発明のレーダー吸収複合材料は、CNT、繊維材料及びマトリクス材の3つの構成要素を有し、CNTが浸出される繊維材料によりCNTがまとめられている階層構造を形成する。前記CNT浸出繊維材料は、CNT浸出繊維材料が配置されるマトリクス材により順々にまとめられる。層の深さに応じて特定の密度に配置されたCNTは、探知用途において、レーダー反射の抑制又はレーダー発信源もしくは探知対象から反射されたEMに関する電磁波(EM)放射を吸収することができる。吸収されたレーダーは、熱又は電気信号に変換することができる。
【0020】
本明細書において、「レーダー」という用語は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでに分布した一般的なレーダー周波数帯域をいう。本発明のレーダー吸収複合材料は、例えば、以下にさらに記載するように、L帯域からK帯域において特に効果的である。
【0021】
本明細書において、「レーダー吸収能力」という用語は、本発明のレーダー吸収複合材料が、あらゆるレーダー帯域の電磁波放射を吸収する能力をいう。
【0022】
本明細書において、「繊維材料」という用語は、基本的な構造成分としての繊維を有するあらゆる材料をいう。この用語は、繊維、フィラメント、ヤーン(yarn)、トウ、トウ、テープ(tape)、織物素材(woven)、不織布製品(non-woven fabric)、プライ(ply)、マット(mat)及び3D織物構造等を包含する。
【0023】
本明細書において、「巻取り可能な寸法」という用語は、スプール(spool)又はマンドレル(mandrel)に収納可能な、長さが限定されない少なくとも1つの寸法を有する繊維材料について言及する。「巻取り可能な寸法」の繊維材料は、本明細書で記載のCNT浸出のためのバッチ処理又は連続処理のいずれか一方の使用を示唆する少なくとも1つの寸法を有する。市販のガラス、炭素、セラミック及び類似の製品として「巻取り可能な寸法」の繊維材料を得ることができる。市販の巻取り可能な寸法の炭素繊維材料として、800tex(1tex=1g/1000m)又は620yard/lbのAS4という12K炭素繊維トウ(Grafil, Inc., Sacrament, CA)が例示される。特に、市販の炭素繊維トウは、より大きなスプールが特注品を要求してもよいが、例えば、5,10,20,50及び100lb(大きな重量を有するスプール用、通常は3k/12Kトウ)のスプールにおいて得ることができる。本発明の処理は、5〜20lbのスプールで容易に行われるが、より大きなスプールを使用することもできる。その上、例えば、100lb以上の極めて大きなスプールを、2本の50lbのスプール等の扱いやすい寸法に分割する前処理を組み込むことができる。
【0024】
本明細書において、「カーボンナノチューブ(CNT)」という用語は、単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube, SWNT)、二層カーボンナノチューブ(double-walled carbon nanotube, DWNT)及び多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube, MWNT)を含むフラーレン群からなるいくつかの円筒形状の炭素同素体のいずれかをいう。CNTは、フラーレンのような構造により閉塞されるか、又は両端が開口していてもよい。CNTには、他の物質を封入するものが含まれる。
【0025】
本明細書において、「長さが均一」という場合、反応器において成長するCNTの長さについて言及するものである。「均一な長さ」は、約1ミクロンから約500ミクロンの様々なCNT長さに関して、CNTが全長の±約20%以下の許容誤差を伴う長さを有することを意味する。例えば、1〜4ミクロン等の極めて短い長さでは、この誤差は、CNTの全長の±約20%から±約1ミクロンまでの範囲、すなわち、CNTの全長の約20%よりも若干大きくなる。(レーダー吸収)性質制御において、CNTの前記長さは、レーダー吸収の調節のために使用することができ、また目標としたレーダー帯域の吸収を最大化するために最適化することができる。
【0026】
本明細書において、「分布が均一」とは、繊維材料におけるCNTの密度が不変であることをいう。「均一な分布」は、繊維材料におけるCNTの密度が、CNTにより被覆される繊維の表面積の割合として定義される被覆率において±約10%の許容誤差となることを意味する。これは、直径8nmの5層CNTでは、1平方マイクロメートル当たり±1500CNT/μm2に相当する。この形状ではCNTの内部空間を充填可能と仮定している。
【0027】
本明細書において、「浸出される」という用語は、結合されることを意味し、「浸出」という用語は結合処理を意味する。このような結合には、直接共有結合、イオン結合、π−π相互作用又はファンデルワールス力の介在による物理吸着などが含まれる。例えば、ある実施形態において、CNTは、炭素繊維材料に直接結合される。結合は、例えば、CNTが、バリア・コーティング又はCNTと炭素繊維材料との間にはさまれて配置された遷移金属ナノ粒子を介して繊維材料へ浸出される等、間接的でもよい。本明細書で開示されるCNT浸出繊維材料において、カーボンナノチューブは、上記のように、直接的又は間接的に繊維材料に「浸出」されることができる。CNTを繊維材料に浸出させる具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0028】
本明細書において、「遷移金属」という用語は、周期表のdブロックにおけるいずれかの元素又はその合金をいう。また、「遷移金属」という用語には、卑遷移金属元素の塩形態(例えば、酸化物、炭化物、窒化物等)も含まれる。
【0029】
本明細書において、「ナノ粒子」もしくはNPという用語又はその文法的な同等物は、NPは球形である必要はないが、粒径が、等価な球形における約0.1から約100μmの間の大きさの粒子をいう。遷移金属NPは、特に、繊維材料上におけるCNTを成長させる触媒として機能する。
【0030】
本明細書において、「サイジング剤(sizing agent)」、「繊維サイジング剤(fiber sizing agent)」又は単に「サイジング(sizing)」とは、炭素繊維の品質を保護し、複合材料中の炭素繊維とマトリクス材との間の界面相互作用を向上させ、炭素繊維の特定の物理的性質を変更又は高めるためのコーティングとして、繊維の製造において使用される材料を総称するものである。ある実施形態では、繊維材料に浸出されるCNTが、サイジング剤として作用する。
【0031】
本明細書において、「マトリクス材」という用語は、サイジング剤を適用したCNT浸出繊維材料を、ランダム配向を含む特定の配向性でまとめる役割を果たすバルク材をいう。CNT浸出繊維材料の物理的又は化学的性質の一部がマトリクス材に与えられることにより、前記マトリクス材はCNT浸出繊維材料の存在からの利益を享受することができる。レーダー吸収用途において、繊維材料と接近したマトリクス材は、制御されたCNT密度及び制御されたCNT配向を提供する。この制御を前記マトリクス材単独と遊離したCNTとを単純に混合することにより行うのは極めて困難である。CNT浸出繊維材料に沿った密度の優れた制御は、レーダー反射率を抑制する層及び吸収したレーダーエネルギーを消散させるためのパーコレーション経路を提供する層を形成する手段を提供する。本発明のRAMは、一般に、その表面の低層部分(low ply layer)において、高いCNT密度を有する。
【0032】
本明細書において、「材料滞留時間」という用語は、本明細書に記載されるCNT浸出処理の間にCNT成長状態にさらされる巻取り可能な寸法の繊維材料に沿ったそれぞれの位置で、CNTが成長する時間をいう。この定義は、多層CNTの成長チャンバーを用いる場合の材料滞留時間を含む。
【0033】
本明細書において、「ラインスピード(linespeed)」という用語は、本明細書に記載されるCNT浸出処理において、巻取り可能な寸法の繊維材料を送り込むことができる速度をいい、ラインスピードは、CNTの(1つの又は複数の)チャンバー長を材料滞留時間で除して算出される速度である。
【0034】
ある実施形態において、本発明は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含むレーダー吸収複合材料を提供する。前記複合材料は、約0.1MHzから約60GHzまでの周波数のレーダーを吸収することができる。前記CNT繊維材料を複合材料中に堆積させてレーダー反射率を抑制する、すなわち入射したレーダーを透過する第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成することができる。前記第1層は、4分の1波長の法則(quarter wavelength rule)を使用して、内部反射を最適化する厚さにすることができる。前記第2層は、少なくとも2つの仕組みにより、エネルギーの消散を促進することができる。1つには、衝突したレーダーを吸収し、エネルギーを電気又は熱エネルギーに変換する。前記衝突したレーダーはまた、内部反射する第1層へ反射され、その結果、レーダーエネルギーは熱として消散される。
【0035】
ある実施形態において、本発明の複合材料は、第1層と第2層との間にさらなる複数の層を有することができる。これらの中間層は、第1層から第2層までのCNT浸出繊維材料における増加するCNT密度の段階的な勾配として提供される。他の実施形態において、これらの中間層は、第1層から第2層までのCNT浸出繊維材料におけるCNT密度の増加の連続的な勾配として提供される。
【0036】
ある実施形態において、第1層及び第2層は、別個のCNT浸出繊維材料とすることができる。2つの連続した繊維材料の長さは別々である。これにより、繊維材料の潜在的構成が多様化する。例えば、ある実施形態において、第1層はCNT浸出ガラス繊維材料を含むことができ、一方他の実施形態においては、第2層はCNT浸出炭素繊維材料を含むことができる。複合材料構造の最内層は、それ自体が伝導性特性を有する繊維材料の使用がもたらす利益を享受できる。これは、吸収されたレーダーエネルギーの消散を促進することができる。
【0037】
当業者は、性質制御のためのレーダー吸収に関する用途において、物体の表面でのレーダー反射を避けながら、レーダーを吸収又は透過する材料を製造することが望ましいことを理解するだろう。機構的な観点からすると、レーダー吸収用途によって、CNT繊維材料の存在及び低CNT密度におけるレーダー反射を最小化する能力によりもたらされる吸収特性からの利益は大きい。
【0038】
レーダー吸収複合材料は、「連続的」又は「巻取り可能」な長さの、トウ、ロービング又は織物等の繊維材料に浸出されたCNTによって通常は構成されたCNT浸出繊維材料を含む。レーダー吸収能力は、例えば、CNTの長さ、CNTの密度及びCNTの配向に応じて変化する。CNT浸出繊維材料を形成する処理は、特定の吸収能力を備えたレーダー吸収複合材料の構造を可能とする。繊維材料上におけるCNTの長さ及び配向は、本明細書で以下に記載されるCNT成長処理中に制御される。複合材料中のCNTの相対配向は、CNT浸出繊維を配向させる複合材料製造処理により順々に制御される。
【0039】
本発明のレーダー吸収複合材料は、1つ以上のレーダー帯域を吸収するように構成することができる。ある実施形態においては、異なるレーダー周波数帯域の吸収を最大化するために、単一の巻取り可能な長さの異なる部分に沿って、異なる長さと配向を有するCNTを有する単一の巻取り可能な長さのCNT浸出繊維が提供される。あるいは、これと同様の効果のために、CNTの長さ又は配向が異なる巻取り可能な長さの複数の繊維材料を、複合材料中に配置することができる。どちらの方法も、複合材料中に異なるレーダー吸収特性を有する層を提供する。CNTの複数配向によってもまた、レーダー吸収複合材料は、複合材料に異なる入射角で衝突した複数のレーダー源からの電磁波放射を吸収することが可能となる。
【0040】
複合材料の第2層又は最内層中にCNTを密に充填することにより、吸収されたレーダー電磁波放射のエネルギーを効果的に消散するためのパーコレーション経路が提供される。理論に拘束されるものではないが、これは、図7〜9に例示した、CNT同士の点接触又はCNT同士の相互嵌合の結果である。ある実施形態において、CNT中の吸収されたレーダーエネルギーは、例えば、レーダー発信源に応じた又は探知用途における反射された電磁波内のレーダー吸収を最大化するために、コンピュータシステムに統合可能な電気信号に変換してレーダー吸収複合材料を組み込んだパネル等の部品の配向を調節することができる。また、第2層又は最内層は、レーダーを内側で反射し、エネルギーを熱として消散させることができる。
【0041】
ある実施形態において、レーダー吸収複合材料は、製品と一体の部分又はステルス用途に使用される構造物として提供される。ある実施形態において、レーダー吸収体は、複合材料構造物全体の一部として提供される。例えば、複合材料構造物は、レーダーを吸収するためのCNT浸出繊維材料を組み込んだ表面「外板(skin)」を有することができる。他の実施形態において、レーダー吸収複合材料は、既存の他の複合材料又は他の製品の表面に、例えば、コーティングマトリクスに混合された短繊維等のコーティングとして適用することができる。このような実施形態において、前記コーティングは、従来のコーティングで生じるおそれのある欠損等の防止を促進する長い繊維材料を採用する。さらに、コーティングとして用いられた場合、レーダー透過保護膜は、レーダー吸収複合材料をさらに保護するために使用することができる。また、「コーティング」として使用された場合、より強い結合を得るために、CNT浸出繊維複合材料のマトリクスを構造物全体のバルクマトリクスと密接に適合又は一致させることができる。
【0042】
レーダー吸収複合材料のCNT浸出繊維材料は、実質的に均一な長さのCNTを提供することができる。これにより、広い領域に亘って安定した吸収能力を備えた複合材料製品が提供される。CNT浸出繊維材料の製造のための本明細書に記載する連続処理において、CNT成長チャンバー内での繊維材料の滞留時間は、CNT成長を制御し、最終的にCNTの長さを制御するために調節することができる。これにより、成長したCNTの特定の性質を制御する手段が提供される。また、CNTの長さは、炭素原料並びに搬送ガスの流量及び反応温度の調節により、制御することができる。CNTの性質は、例えば、CNTを用意するために使用する触媒の大きさを制御することにより、さらに制御することができる。例えば、SWNTを得るために、特に、1nmの遷移金属ナノ粒子触媒を使用することができる。主にMWNTを用意するために、さらに大きな触媒を使用することができる。
【0043】
さらに、用いられるCNT成長処理は、前もって作られたCNTを溶媒中に浮遊又は分散して、手で繊維材料に適用する処理中に生じえるCNTの束化又は凝集を避けつつ、CNT浸出繊維材料に繊維材料に均一に分布したCNTを提供するのに有用である。このように凝集したCNTは、繊維材料への付着力が弱く、CNTの特有に性質は、現れたとしても、その現れ方は弱い。ある実施形態において、被覆率、すなわち被覆された繊維の表面領域のパーセントで表される最大分布密度は、直径約8nmで5層のCNTの場合、約55%にまでなる。この被覆率は、CNTの内部空間が「充填可能な」空間であるとして計算される。表面に分散した触媒を変化させ、ガス組成及び処理速度を制御することにより、様々な分布/密度の値を達成することができる。一般的に与えられるパラメータにおいて、繊維表面に亘って約10%以内の被覆率を達成することができる。高密度で短いCNTは、機械的性質を向上させるのに有用であり、一方、低密度の長いCNTは、熱的及び電気的性質並びにレーダー吸収の向上に有用である、とはいえ、高密度はそれでもなお望ましい。長いCNTが成長した場合、低密度が生じることがある。これは、低い触媒微粒子収率(catalyst particle yield)を引き起こす高温及び急成長の結果の可能性がある。
【0044】
繊維材料への浸出に有用なCNTは、単層CNT、二層CNT、多層CNT及びこれらの混合物を含む。使用される適切なCNTは、レーダー吸収複合材料の最終用途によって決まる。レーダー吸収に加えて、熱伝導又は電気伝導用途のためにCNTを使用することができる。ある実施形態において、浸出されたカーボンナノチューブは、単層ナノチューブである。ある実施形態において、浸出されたカーボンナノチューブは、多層ナノチューブである。ある実施形態において、浸出されたカーボンナノチューブは、単層及び多層ナノチューブの混合物である。単層及び多層ナノチューブの特性には、いくつかの繊維の最終用途において、ナノチューブのタイプのいずれか一方の合成に影響するいくつかの相違がある。例えば、単層ナノチューブは、半導体又は金属的であるが、多層ナノチューブは金属的である。したがって、吸収されたレーダーを、例えば、コンピュータシステムに統合することができる電気信号に変換する場合、CNTの種類を制御することが望ましい。
【0045】
CNTは、機械的強度、低・中電気抵抗率及び高い熱伝導性等の特有の性質を、CNT浸出繊維材料に付与する。例えば、ある実施形態において、カーボンナノチューブ浸出炭素繊維材料の電気抵抗率は、繊維母材(parent fiber material)の電気抵抗率より低い。さらに一般に、結果として得られたCNT浸出繊維が示すこれらの特性の程度は、カーボンナノチューブによる炭素繊維の被覆率の程度及び密度の関数となる。また、これらの特性は、CNT浸出繊維が組み込まれたレーダー吸収複合材料全体へ伝えることができる。直径8nmで5層のMWNTの場合、繊維の0〜55%の範囲であれば繊維表面領域はいくらでも被覆される(CNTの内部空間を充填可能とみなして計算している)。この数値は、より小さな直径のCNTの場合はより小さく、より大きな直径のCNTの場合はより大きい。表面領域の55%の被覆率は、約15000CNT/ミクロン2に相当する。さらに、CNTの性質は、CNTの長さに依存した方法で、炭素繊維材料に与えることができる。浸出されたCNTの長さは、約1ミクロンから約500ミクロンまでの範囲で変化させることができ、1ミクロン,2ミクロン,3ミクロン,4ミクロン,5ミクロン,6ミクロン,7ミクロン,8ミクロン,9ミクロン,10ミクロン,15ミクロン,20ミクロン,25ミクロン,30ミクロン,35ミクロン,40ミクロン,45ミクロン,50ミクロン,60ミクロン,70ミクロン,80ミクロン,90ミクロン,100ミクロン,150ミクロン,200ミクロン,250ミクロン,300ミクロン,350ミクロン,400ミクロン,450ミクロン,500ミクロン及びこれらの間の全ての値を含む。また、CNTは、例えば、約100ナノメートルを含む、1ミクロンより短い長さとすることもできる。また、CNTは、例えば、510ミクロン,520ミクロン,550ミクロン,600ミクロン,700ミクロン及びこれらの間の全ての値を含む、500ミクロンより長い長さとすることもできる。レーダー吸収用途に関して、CNTの長さは、約5から約250ミクロンの間で変化させることができる。
【0046】
本発明のレーダー吸収複合材料には、約100ナノメートルから約10ミクロンまでの長さのCNTを組み込むことができる。このようなCNTの長さは、せん断強度(shear strength)の向上に有用となりえる。また、CNTは、約5から約70ミクロンまでの長さとすることができる。このようなCNTの長さは、CNTが繊維方向に配列された場合、抗張力(tensile strength)の向上に有用となりえる。また、CNTは、約10ミクロンから約100ミクロンまでの長さとすることができる。このようなCNTの長さは、電気/熱伝導性及び機械的性質の向上に有用となりえる。また、本発明で使用される処理は、約100ミクロンから約500ミクロンまでの長さを有するCNTを提供することができるが、これは電気的及び熱的性質を向上させるのに有用となりえる。上記の長さのCNTを有する複数の材料からなる複合材料は、レーダー吸収に有用である。
【0047】
このようにして、CNT浸出繊維材料は、多機能となり、レーダー吸収複合材料全体の他の多くの性質を強化することができる。ある実施形態において、巻取り可能な長さのCNT浸出繊維材料を含む複合材料は、CNTの長さが異なる様々な均一な領域を有することができる。例えば、せん断強度性能を向上させるための均一な短いCNTを備えたCNT浸出炭素繊維材料である第1部分と、レーダー吸収性能を向上させるための均一な長いCNTを備えた巻取り可能な長さの前記材料である第2部分と、を有するのが望ましいことがある。例えば、CNT浸出繊維材料において、レーダー吸収複合材料の少なくとも一部に上記の短いCNTを提供することによって、機械的強化が得られる。複合材料は、レーダー吸収のためにレーダー吸収複合材料の表面に長いCNTを、そして機械的強化のために前記表面の下方に配置された短いCNTを有する外板の形態をとることができる。CNTの長さの制御は、炭素原料と、様々なラインスピード及び成長温度と一体となった不活性ガスの流量と、を調整することにより容易に行われる。これによって、同一の巻取り可能な長さの繊維材料の異なる部分でCNTの長さを変えること、又は複合材料構造の適切な部分に異なるスプールを用いることが可能となる。
【0048】
本発明のレーダー吸収複合材料は、CNT浸出繊維材料とともに複合材料を形成するマトリクス材を含む。このようなマトリクス材として、例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フェノールホルムアルデヒド及びビスマレイミドが含まれる。本発明において有用なマトリクス材として、周知のマトリクス材のいずれもが含まれる(Mel M. Schwartz, Composite Materials Handbook(2d ed. 1992)参照)。さらに、マトリクス材として、熱硬化性及び熱可塑性の樹脂(ポリマー)の両方、金属、セラミック及びセメントが含まれる。
【0049】
マトリクス材として有用な熱硬化性樹脂には、フタル酸/マレイン酸型のポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール樹脂、シアン酸塩、ビスマレイミド及びナディック末端封止ポリイミド(nadic end-capped polyimide, PMR-15等)が含まれる。熱可塑性樹脂として、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレン酸化物、ポリ硫化物、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート及び液晶ポリエステルが含まれる。
【0050】
マトリクス材として有用な金属には、アルミニウム6061,2024及び713アルミニウムブレーズ(aluminum braze)等のアルミニウム合金が含まれる。マトリクス材として有用なセラミックには、リチウムアルミノケイ酸塩等のカーボンセラミック、酸化アルミニウム及びムライト等の酸化物、窒化ケイ素等の窒化物及び炭化ケイ素等の炭化物が含まれる。マトリクス材として有用なセメントには、炭化物ベースのセメント(炭化タングステン、炭化クロム及び炭化チタン)、耐火セメント(タングステントリア(tungsten-thoria)及び炭酸バリウム−ニッケル(barium-carbonate-nickel))、クロム−アルミナ、ニッケル−マグネシア、及び鉄−炭化ジルコニウムが含まれる。上記のマトリクス材はいずれも単独で又は組み合わせて用いることができる。セラミック又は金属マトリクス複合材料は、性質制御材料からの利益を享受するスラストベクトル表面(thrust vectoring surface)等の高温用途で使用することができる。
【0051】
ある実施形態において、レーダー吸収複合材料は、多数の遷移金属ナノ粒子をさらに含むことができる。この遷移金属ナノ粒子は、ある実施形態において、潜在的な触媒としてCNT成長処理から存在することができる。理論に拘束されるものではないが、CNT形成触媒としての役割を果たす遷移金属NPは、CNT成長核構造(CNT growth seed structure)を形成することにより、CNT成長に触媒作用を及ぼすことができる。CNT形成触媒は、繊維材料の基部に留まることができ、存在する場合にはバリア・コーティングにより固定され(下記参照)、繊維材料の表面に浸出される。このような場合において、遷移金属ナノ粒子触媒により初期に形成された前記核構造は、当該技術分野でしばしば観測されるように、CNT成長の先端に沿って触媒を移動させることなく、非触媒核CNT成長(non-catalyzed seeded CNT growth)を継続させるのに十分である。このような場合、NPは、繊維材料へのCNTの付着点としての役割を果たす。また、バリア・コーティングの存在により、CNT浸出のためのさらなる間接的な結合モチーフがもたらされる。例えば、CNT形成触媒は、上記の通り、バリア・コーティング内に固定することができるが、繊維材料とは表面接触していない。このような場合、CNT形成触媒と繊維材料との間にバリア・コーティングが配置されたスタック構造が生じる。いずれの場合も、形成されたCNTは繊維材料に浸出される。ある実施形態において、いくつかのバリア・コーティングは、CNT成長触媒を成長中のナノチューブの先端に追随させる。このような場合、CNTは繊維材料に直接結合するか、又は随意にバリア・コーティングへの結合が生じる。カーボンナノチューブと繊維材料との間に形成された実際の結合モチーフの性質に関わらず、浸出されたCNTは強固なため、CNT浸出繊維材料がカーボンナノチューブの性質又は特性を示すことができる。
【0052】
バリア・コーティングが存在しない場合、潜在的なCNT成長粒子は、カーボンナノチューブの基部、ナノチューブの頂部、この間のどこか及びこれらの複数の箇所に現れることがある。さらに、繊維材料へのCNTの浸出は、介在する遷移金属ナノ粒子を介した直接的又は間接的なものであってもよい。ある実施形態において、潜在的なCNT成長触媒は、鉄ナノ粒子を含む。これらは、例えば、ゼロ価鉄、鉄(II)、鉄(III)及びこれらの混合物等の様々な酸化状態であってもよい。CNT成長以来の潜在的な鉄ベースのナノ粒子の存在は、複合材料全体のレーダー吸収特性をさらに補助することができる。
【0053】
ある実施形態において、成長後のCNT浸出繊維を、鉄、フェライト又は鉄ベースのナノ粒子溶液に通過させることができる。CNTは、性質制御をさらに補助する大量の鉄ナノ粒子を吸収することができる。したがって、この追加的な処理ステップは、鉄球塗装と類似した仕組みによりレーダー吸収を向上させる補助的な鉄ナノ粒子を提供する。
【0054】
本発明のレーダー吸収複合材料は、レーダー周波数帯域の全てのスペクトルに亘って、レーダーを吸収することができる。ある実施形態において、前記複合材料は、高周波数レーダーを吸収することができる。高周波数(FH)レーダー帯域は、約3から約30MHz(10〜100m)までの周波数を有する。このレーダー帯域は、沿岸レーダー(coastal radar)及び水平線越え(over-the-horizon, OTH)レーダー用途に有効である。ある実施形態において、複合材料は、P帯域のレーダーを吸収することができる。これは、約300MHz未満のレーダー周波数を含む。ある実施形態において、複合材料は、超高周波数(very high frequency, VHF)帯域のレーダーを吸収することができる。VHFレーダー帯域は、約30から約330MHzまでの周波数を含む。VHF帯域は、地中探知用途を含む超長距離用途に有用である。ある実施形態において、複合材料は極超高周波数(ultra high frequency, UHF)帯域のレーダーを吸収することができる。UHF帯域は、約300から約1000MHzまでの周波数を含む。UHF帯域の用途は、弾道ミサイル早期警戒システム、地中探知及び森林貫通用途等の超長距離用途を含む。ある実施形態において、複合材料は、ロング(L)帯域のレーダーを吸収することができる。L帯域は、約1から約2GHzまでの周波数を含む。L帯域は、例えば、航空管制及び監視を含む長距離用途に有用である。ある実施形態において、複合材料はショート(S)帯域のレーダーを吸収することができる。S帯域は、約2から約4GHzの範囲の周波数を含む。S帯域は、ターミナル航空管制、長距離の気象レーダー及び航海用レーダー等の用途に有用である。ある実施形態において、複合材料は、約4から約8GHzまでの周波数を有するC帯域のレーダーを吸収することができる。C帯域は、衛星トランスポンダー及び気象利用に使用されている。ある実施形態において、複合材料は、約8から約12GHzまでの周波数を有するX帯域のレーダーを吸収することができる。X帯域は、ミサイル誘導、航海用レーダー、気象、中分解能マッピング(medium-resolution mapping)及び地上監視等の用途に有用である。ある実施形態において、複合材料は、約12から約18GHzまでの周波数を含むK帯域のレーダーを吸収することができる。K帯域は、気象学者による測雲(detecting cloud)及び警察によるK帯域レーダーガンを用いたスピード違反探知のために使用されている。ある実施形態において、複合材料は、約24から約40GHzまでの周波数を含むKa帯域のレーダーを吸収することができる。Ka帯域は、信号機においてカメラを動作させる等のレーダー式速度違反取締装置(photo radar)に使用することができる。
【0055】
ある実施形態において、複合材料は、約40から約300GHzまでの広い範囲のミリメートル(mm)帯域のレーダーを吸収する。mm帯域は、軍事通信に使用される約40から約60GHzまでのQ帯域、大気中の酸素により大幅に吸収される約50から約75GHzまでのV帯域、約60から約90GHzまでのE帯域、実験用自律走行車(experimental autonomous vehicle)、高分解能気象観測(high-resolution meteorological observation)及び画像化(imaging)のための視覚センサーとして使用される約75から約110GHzまでのW帯域並びに壁透過レーダー(through-the-wall radar)及び画像化システム(imaging system)に使用される約1.6から約10.5GHzまでのUWB帯域を含む。
【0056】
ある実施形態において、複合材料は、レーダー吸収複合材料の約1重量%から約5重量%までのCNTを含む。ある実施形態において、CNT充填量をレーダー吸収複合材料の約1重量%から約20重量%までとすることができる。ある実施形態において、レーダー吸収複合材料中のCNT充填量は、レーダー吸収複合材料の1重量%,2重量%,3重量%,4重量%,5重量%,6重量%,7重量%,8重量%,9重量%,10重量%,11重量%,12重量%,13重量%,14重量%,15重量%,16重量%,17重量%,18重量%,19重量%及び20重量%とすることができ、これらの値の間のいずれの値も含む。また、レーダー吸収複合材料中のCNT充填量は、例えば、約0.001%から約1%までの範囲を含む、1%より小さい値とすることもできる。また、レーダー吸収複合材料中のCNT充填量を、例えば、25%、30%、40%等から最大で約60%までとこれらの間の全ての値を含む、20%より大きい値とすることもできる。
【0057】
ある実施形態において、レーダー吸収複合材料は、カーボンナノチューブ(CNT)浸出炭素繊維材料を含む。また、CNT浸出炭素繊維材料は、巻取り可能な寸法の炭素繊維材料、炭素繊維材料の周囲に沿って配置されたバリア・コーティング及び炭素繊維材料に浸出されたカーボンナノチューブ(CNT)を含む。炭素繊維材料へのCNTの浸出は、炭素繊維材料への個別のCNTの直接的結合又は遷移金属NP、バリア・コーティングもしくはその両方を介した間接的結合の結合モチーフを含む。
【0058】
本発明のCNT浸出炭素繊維材料はバリア・コーティングを含むことができる。バリア・コーティングは、例えば、アルコキシシラン、メチルシロキサン、アルモキサン(alumoxane)、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子を含む。CNT形成触媒を、未硬化バリア・コーティング材料に添加し、それからまとめて炭素繊維材料に適用することができる。他の実施形態において、CNT形成触媒を付着させる前に、バリア・コーティング材料を炭素繊維材料に適用することができる。バリア・コーティング材料の厚さは十分に薄くして、これにより炭素原料へのCNT形成触媒の暴露後もCVD成長が可能となる。ある実施形態において、前記厚さは、CNT形成触媒の有効径より薄いか略等しい。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、約10nmから約100nmまでである。また、バリア・コーティングを、1nm,2nm,3nm,4nm,5nm,6nm,7nm,8nm,9nm,10nm及びこれらの間のいずれの値も含む10nmより小さい値とすることができる。
【0059】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、炭素繊維材料とCNTとの間の中間層の役割を果たすことができ、炭素繊維材料へのCNTの機械的に浸出を提供することができる。このような機械的浸出は、炭素繊維材料にCNTの特性をまだ与えている間にでも、炭素繊維材料がCNTを形成するための基盤(platform)として機能する強固な体制を提供する。その上、バリア・コーティングを含むことの利益は、炭素繊維材料を、蒸気にさらすことによる化学損傷又はCNT成長を促進するために用いられる温度で炭素繊維材料を加熱することによる熱損傷からの直接的な保護を含む。
【0060】
炭素繊維材料上にCNTが成長する時、上昇した温度又は反応チャンバー内に存在し得る残留した酸素もしくは蒸気は、炭素繊維材料を損傷することがある。その上、炭素繊維材料は、CNT形成触媒との反応によっても損傷されることがある。すなわち、炭素繊維材料は、CNT合成のために用いられる反応温度で、触媒に対する炭素原料として機能することがある。このような過剰炭素は、炭素原料ガスの制御導入を妨げ、触媒に炭素を過剰に充填することで触媒の汚染につながることさえある。本発明で採用されたバリア・コーティングは、炭素繊維材料上のCNT合成を促進するように設計される。理論に拘束されるものではないが、前記コーティングは、熱分解に対する熱障壁を提供することができ、高温環境に炭素繊維材料がさらされるのを妨げる物理的障壁となり得る。これに代えて又はこれに加えて、前記コーティングは、CNT形成触媒と炭素繊維材料との間の表面領域接触を最小化し又はCNT成長温度におけるCNT形成触媒への炭素繊維材料の暴露を軽減することができる。
【0061】
繊維を形成するために使用される前駆体に基づき、炭素繊維は3種類に分類され、本発明においては、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)及びピッチ(Pitch)のいずれの繊維も使用することができる。セルロース系材料であるレーヨン前駆体の炭素繊維は、約20%と比較的低い炭素含有量を有し、繊維は低い強度及び剛性を有する傾向がある。ポリアクリロニトリル(PAN)前駆体は、約55%の炭素含有量の炭素繊維を提供する。通常、PAN前駆体に基づく炭素繊維は、表面欠陥が最小であるため、他の炭素繊維前駆体に基づく炭素繊維より高い抗張力を有する。
【0062】
また、石油アスファルト、コールタール及びポリ塩化ビニルに基づくピッチ前駆体は、炭素繊維を製造するために使用できる。ピッチは、比較的低コストで炭素収率(carbon yield)が高いが、不均一性の問題が生じることがある。
【0063】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料はガラス繊維材料を含む。CNT浸出ガラス繊維材料は、上記のバリア・コーティングを付加的に用いることはできるが、バリア・コーティングを組み込む必要はない。ガラス繊維材料に使用されるガラスの種類は、例えば、E−ガラス、A−ガラス、E−CR−ガラス、C−ガラス、D−ガラス、R−ガラス及びS−ガラスを含むいずれの種類であってもよい。E−ガラスは、アルカリ酸を1重量%未満有するアルミノホウケイ酸塩ガラスを含み、主にガラス強化プラスチックに使用される。A−ガラスは、酸化ホウ素をほとんど又は全く含まないアルカリライム(alkali-lime)ガラスを含む。E−CR−ガラスは、アルカリ酸を1重量%未満有するアルミノライムケイ酸塩(alumino-lime silicate)を含み、高い耐酸性を有する。C−ガラスは、高い酸化ホウ素含有量を有するアルカリライムガラスを含み、例えばガラスステープル繊維(glass staple fiber)に使用される。D−ガラスは、ホウケイ酸ガラスを含み、高い誘電体含有量を有する。R−ガラスは、MgO及びCaOを持たないアルミノケイ酸塩ガラスを含み、高い機械的強度を有する。S−ガラスは、CaOを含まずMgOを豊富に含むアルミノケイ酸塩ガラスを含み、高い抗張力を有する。3種類のガラスのうちの1つ以上は、上記のガラス繊維材料に加工することができる。特定の実施形態において、ガラスはE−ガラスである。他の実施形態において、ガラスはS−ガラスである。
【0064】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料はセラミック繊維材料を含む。セラミック繊維材料が使用された場合、ガラスと同様に、バリア・コーティングの使用は任意的なものである。セラミック繊維材料に使用されるセラミックの種類は、例えば、アルミナ及びジルコニア等の酸化物と、炭化ホウ素、炭化ケイ素及び炭化タングステン等の炭化物と、窒化ホウ素及び窒化ケイ素等の窒化物と、を含むいずれの種類であってもよい。他のセラミック繊維材料として、例えば、ホウ化物及びケイ化物を含む。また、セラミック繊維は、玄武岩繊維材料(basalt fiber material)を含んでもよい。セラミック繊維材料は、他の種類の繊維との複合材料であってもよい。また、織物様(fabric-like)セラミック繊維材料に、例えば、ガラス繊維を組み込むことは一般的に行われる。
【0065】
CNT浸出繊維材料は、フィラメント、ヤーン、トウ、テープ、繊維ブレイド(fiber-braid)、織物製品(woven fabric)、不織布マット(non-woven fabric mat)、繊維プライ(fiber ply)及び他の3D織物構造を含んでもよい。フィラメントは、約1ミクロンから約100ミクロンまでの範囲の直径を有する高アスペクトの繊維を含む。繊維トウは、概してフィラメントを密にまとめた束であり、一般に、ヤーンを形成するために互いにより合わされる。
【0066】
ヤーンは、より合わされたフィラメントの密にまとめられた束を含む。ヤーンに含まれるそれぞれのフィラメントの直径は、比較的均一である。ヤーンは、1000リニアメートル(linear meter)あたりのグラム重量として表される「テックス(tex)」又は10,000ヤードあたりのポンド重量として表される「デニール(denier)」で示される様々な重量を有する。この値は、使用されている正確な繊維材料によって決まるが、一般的なテックスの範囲は、約200テックスから約2000テックスまでである。
【0067】
トウは、より合わされていないフィラメントのゆるくまとめられた束を含む。ヤーンのように、トウに含まれるフィラメントの直径は一般的に均一である。また、トウは、様々な重量を有し、テックスの範囲は通常200テックスから2000テックスである。しばしば、トウに含まれる数千本のフィラメントの本数によって、例えば、12Kトウ、24Kトウ及び48Kトウ等と特徴付けられる。また、この値は、使用されている繊維材料の種類に応じて変化する。
【0068】
テープは、波状にまとめられた材料又は不織布の扁平トウである。テープの幅は様々であり、一般にリボンのような両面構造(two-sided structure)である。本発明の処理は、テープの片面又は両面でのCNT浸出に対応する。CNT浸出テープは、平らな基板表面上の「カーペット」又は「森」のようであってもよい。また、本発明の処理は、テープのスプールを機能化(functionalize)するために連続モードで行うことができる。
【0069】
繊維ブレイドは、炭素繊維の稠密なロープ様(rope-like)構造を示す。このような構造は、例えば、ヤーンにより形成することができる。編み上げ構造(braided structure)は、中空部分(hollow portion)を含んでもよく、又は他のコア材料の周りに形成されてもよい。
【0070】
ある実施形態において、主要な繊維材料構造の多くは、織物又はシート状構造にまとめられる。これには、例えば、上記のテープに加えて、織物製品、不織繊維マット(non-woven fiber mat)及び繊維プライが含まれる。このような高い秩序構造は、親繊維に浸出されたCNTを有する元のトウ、ヤーン又はフィラメント等から形成することができる。あるいは、このような構造は、本明細書に記載されるCNT浸出処理のための基板としての役割を果たすことができる。
【0071】
図1〜6は、本明細書に記載された処理により形成された炭素繊維材料上に形成されたCNTのTEM及びSEM画像を示す。これらの材料を形成するための手順は、以下の実施例I〜IIIにさらに詳細に記載される。これらの図及び手順は、炭素繊維材料の処理を例示するが、当業者は、ガラス又はセラミック等の他の繊維材料を、これらの処理から大幅に逸脱することなく採用することができることを理解するだろう。図1及び図2は、それぞれ、連続処理においてAS4炭素繊維上に形成された多層及び二層カーボンナノチューブのTEM画像を示す。図3は、炭素繊維材料表面にCNT形成ナノ粒子触媒が機械的に浸出された後に、バリア・コーティングの内側から成長したCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図4は、炭素繊維材料上に目標長約40ミクロンの20%以内まで成長したCNTの長分布の一貫性を明示するSEM画像を示す。図5は、CNT成長に対するバリア・コーティングの効果を明示するSEM画像を示す。バリア・コーティングが施された部分では高密度かつ良好な配列のCNTが成長し、バリア・コーティングが存在しない部分ではCNTは成長しなかった。図6は、繊維全域における約10%以内のCNT密度の均一性を明示する炭素繊維上のCNTの低倍率SEM画像を示す。
【0072】
図7には、本発明のある実施形態による、複合材料100の概略断面図が図示されている。複合材料100は、例えば、望ましいレーダー吸収特性を有する航空機部品等の組立構造に適している。複合材料100は、マトリクス140中に存在し得るトウ又はロービング等の多数の繊維又はフィラメント110を含む。繊維110は、カーボンナノチューブ120を浸出される。例示的な実施形態において、繊維110は、ガラス(例えば、E−ガラス、S−ガラス、D−ガラス)繊維であってもよい。他の実施形態において、繊維110は、炭素(グラファイト)繊維であってもよい。また、ポリアミド(芳香族ポリアミド、アラミド)(例えば、ケブラー29及びケブラー49)、金属繊維(例えば、鉄、アルミニウム、モリブデン、タンタラム、チタン、銅及びタングステン)、炭化タングステン、セラミック繊維、金属的セラミック繊維(例えば、ケイ酸アルミニウム)、セルロース繊維、ポリエステル、石英及び炭化ケイ素等の他の繊維が使用されてもよい。本明細書に記載される炭素繊維に関するCNT合成処理は、全ての種類の繊維上でのCNT合成に用いることができる。ある実施形態において、触媒粒子と金属繊維との合金化等の望ましくない化学反応を避けるため、触媒粒子を適用する前に、金属繊維を適切なバリア・コーティングで被覆することができる。このように、金属繊維材料を採用する場合、前記処理は、炭素繊維材料に使用される処理と並行させることができる。また同様に、熱に敏感なアラミド繊維は、CNT成長の間に採用される一般的な温度から繊維材料を保護するために、バリア・コーティングを用いることができる。
【0073】
例示的な実施形態において、カーボンナノチューブ120は、繊維110の外面から略垂直に成長し、これによって、それぞれの繊維110の半径方向に被覆してもよい。カーボンナノチューブ120は、繊維110上にその場成長してもよい。例えば、ガラス繊維110は、約500℃から750℃の所定温度に維持された成長チャンバーに送り込まれてもよい。炭素含有供給ガスは、成長チャンバー内に導入され、ここで触媒ナノ粒子存在下で炭素ラジカルが解離し、ガラス繊維上でのカーボンナノチューブの形成を開始する。
【0074】
図13は、本発明による例示的なRAMパネル1300を示す。RAMパネル1300は、CNT浸出繊維ベースレーダー吸収体の断面図を示す。第1層1310は、入射EM波(レーダー)と接触し、空気と同様の誘電率を有する。ある実施形態において、第1層1310は、ガラス繊維複合材料とすることができる。第1層1310の厚さは、CNT浸出繊維材料が多く充填された第2層1320の屈折率が与えられる4分の1波長の法則が活用可能な大きさに調整される。対象とする特定のEM波長及び結果として得られる望ましい屈折率に応じて、この構造においては、1%〜60%のCNT量を目標とすることができる。高CNT含有量は、高誘電率、すなわち入射したEM波をよく反射するであろう、より伝導性の高い材料を提供する。この反射された波は、適切な大きさに形成された第1層1310により内部反射され、熱として消散される。
【0075】
図14は、他の例示的なRAMパネル1400を示す。RAMパネル1400は、多層CNT浸出繊維ベースレーダー吸収体の断面図を示す。このような実施形態では、それぞれの連続した層に様々な量のCNTを用いることによって、1つのパネル構造を使用して内部反射及び多重波の消散を誘導する。RAMパネル1400は、入射EM波に暴露される第1層1410、中間層1420及び第2層1430を有する。中間層1420は、第1層から第2層に向けてCNT含有量が増加する複合した中間層として存在することができるということは、当業者には明らかであろう。この形態が連続して、第1層1410は、空気と同様の誘電率を有することにより波長透過が可能となる。結果として、この材料は、複合材料構造の0〜1重量%という低い%のCNTを有する。第1層1410は、EM波の入射波長及び中間層1420の屈折率に応じた全内部反射を得るために、その厚さを4分の1波長理論の利益を享受できる大きさに調整される。中間層は、複合材料中の0.1〜5重量%のCNTから構成され、第2層1430の屈折特性又は対象とする波長を使用した全ての連続中間層に応じて、同様にその大きさを調整される。第2層1430は、1〜60%と最も高い重量%のCNTから構成され、第1層及び中間層と同様に大きさを調整される。第2層1430は、最も反射率の高い表面を提供するために、略最大限にCNTを充填されている。
【0076】
ある実施形態において、CNTは、繊維に沿って連続密度勾配で、繊維材料に浸出される。このような実施形態は、図14に示したものと類似している。連続勾配RAM構造は、結果として得られる巻構造(wound structure)が、目標とされる特定の深さにおいて、対象とする全スペクトルに亘ってより均一にEM波を吸収及び内部反射するのに適した常に変化するCNTの量を含むように、CNTの量が連続的に変化した繊維材料を使用する。連続変化構造により、特定のピークを目標にしたRAMの代わりに、広いスペクトルに亘って高効率なレーダー吸収体の製造が可能となる。これは、図14に記載された層配置により可能とされる。
【0077】
一構成において、複合材料100を形成するために、CNT浸出繊維110は樹脂槽(resin bath)に送られる。他の構成において、織物(fabric)はCNT浸出繊維110から織られ、織物は樹脂槽に順々に送られる。樹脂槽は、CNT浸出繊維110及びマトリクス140を含んで構成される複合材料100の製造のための全ての樹脂を含むことができる。一構成において、マトリクス140はエポキシ樹脂マトリクスの形態をとってもよい。他の構成においてマトリクス140は、汎用ポリエステル(オルトフタル酸ポリエステル等)、改良ポリエステル(イソフタル酸ポリエステル等)、フェノール樹脂、ビスマルイミド(BMI)樹脂、ポリウレタン及びビニルエステルのいずれか1つであってもよい。マトリクス140はまた、航空宇宙又は軍事用途等の高動作温度における性能が要求される用途に有用な非樹脂マトリクス(例えば、セラミックマトリクス)の形態をとることもできる。当然のことながら、マトリクス140はまた、金属マトリクスの形態をとることができる。
【0078】
樹脂マトリクスを使って含浸CNT浸出繊維110又はこれの織物を作るための真空補助樹脂浸出法(vacuum assisted resin infusion method)や樹脂押出法(resin extrusion method)等の周知の複合材料製造方法が適用されてもよい。例えば、CNT浸出繊維110又はこの織物は、型にはめられてもよく、樹脂はそこで浸出されてもよい。他の構成において、CNT浸出繊維110又はこの織物は、型に入れられ、その後、真空にされた型から樹脂が引き抜かれてもよい。他の構成において、CNT浸出繊維110は、巻付けにより0/90配向に織られてもよい。これは、例えば、垂直方向等の第1方向にCNT浸出繊維100の第1層又はパネルを巻付け、そして水平方向等の第1方向に対して約90°の第2方向にCNT浸出繊維110の第2層又はパネルを巻つけることにより行われる。この0/90配向により、複合材料100にさらなる構造的強度を加えられる。
【0079】
カーボンナノチューブ120を浸出された繊維110は、複合材料100を形成するために熱硬化性プラスチックマトリクス(例えば、エポキシ樹脂マトリクス)に組み込むことができる。マトリクスに繊維を組み込む方法は、当該技術において周知である。一構成において、CNT浸出繊維110は、高圧硬化法(high pressure curing method)を使用してマトリクス140に組み込むことができる。複合材料のCNT充填は、所定の複合材料中のカーボンナノチューブの重量パーセントを示す。CNTベース複合材料を製造するための当該技術分野において周知な処理は、遊離(すなわち巻取り可能な長さの繊維に結合されていない)カーボンナノチューブを初期の複合材料の樹脂/マトリクスに直接混合することを含む。このような処理の結果得られる複合材料は、非常に高い粘度増加等の要因により、完成した複合材料におけるカーボンナノチューブの重量パーセントが最大で約5重量パーセントに制限されることがある。一方、複合材料100は、上記の通り、25重量%を上回るCNT充填を有してもよい。CNT浸出繊維110を使用して、60重量パーセントにまで達したCNT充填を有する複合材料が実証されている。材料のレーダー吸収特性は、1つには、その電気伝導性によって決まる。複合材料100全体の電気伝導性は、1つには、複合材料100のCNT充填の関数である。
【0080】
CNT浸出繊維が組み込まれた上記複合材料100は、例えば、宇宙航空や潜水艦のための電磁特性又はレーダー吸収特性を備えた部品の形成に適切である。複合材料100は、赤外線(約700nmから約15センチメートル)、可視光(約400nmから約700ナノメートル)及び紫外線(約10nmから約400nm)放射を含むレーダースペクトルの電磁波放射を効率的に吸収することが実証されている。
【0081】
例えば、重量及び強度特性が望ましい複合材料構造の場合、その比較的不十分な性質制御又はレーダー吸収特性のために、宇宙航空部品の形成にはしばしば適さない。例えば、炭素繊維複合材料は、一般にレーダー波を反射するため、比較的不十分な性質制御となる。一方、ガラス繊維材料は、一般にレーダー波を透過させる。しかしながら、これは一般に本質的には誘電体であり、不十分な電気及び熱伝導性を有する。炭素繊維複合材料及びガラス繊維複合材料をCNTへ組み込むことで、複合材料のレーダー波吸収性は効果的に向上する。ガラス繊維複合材料の場合、組み込まれたCNTはまた、結果として得られる複合材料の熱及び電気伝導性をも向上させる。したがって、CNT浸出繊維110を有する複合材料100は、複合材料に付随する低い重量強度比(weight to strength ratio)等の望ましい特性は維持したまま、性質制御特性を向上させる。レーダー吸収体としての複合材料の有効性は、複合材料におけるカーボンナノチューブの重量パーセントを調整することにより調整することができる。理論に制限されないが、組み込まれたCNTは、鉄球塗装中に使用される鉄ナノ粒子と同様の方法でレーダー波を吸収することができる。
【0082】
図8に関して、CNT浸出繊維材料200の断面図が概略図示されている。繊維材料200は、付加的にマトリクスを含むことができる。マトリクス材の有無に関わらず、CNT浸出繊維材料200は、先に形成された複合材料の表面に適用し、これによって複合材料のレーダー吸収又は性質制御を大幅に向上させることができる。ある実施形態において、先に形成された複合材料はそのままだと低い性質制御を示す。しかしながら、その表面に配置されたCNT浸出繊維材料は、十分なレーダー吸収度を付与し、良好な性質制御を提供することができる。CNT浸出繊維材料200は、先に形成された複合材料の周りに巻付けられるか紡がれる。ある実施形態において、複合材料にマトリクス材を配置するCNT浸出繊維材料200にはマトリクス材が予め存在しなかったところに、マトリクス材は配置される。その上、このようにして加えられたマトリクス材料は、予め形成された材料と同一又は同様の強い結合を促進する特性を示すことができる。
【0083】
CNT浸出繊維材料200は、トウ又はロービング等の繊維材料210中に多数の繊維を含む。カーボンナノチューブ120は繊維材料210に浸出される。近接したカーボンナノチューブ120間でのファンデルワールス力は、CNT120間の相互作用を大幅に向上させる。これにより、ある実施形態において、フィラメント同士を結合又は付着させることができるカーボンナノチューブ120のCNT「相互嵌合」がもたらされる。例示的な実施形態において、CNT浸出繊維材料200を強固にするために繊維材料210に圧力をかけることにより、カーボンナノチューブ120の相互嵌合がさらに生じてもよい。このフィラメント同士の結合は、樹脂マトリクスが無い状態で、繊維トウ、テープ及び模様(weave)の形成を促進することができる。フィラメント同士の結合は、従来の繊維トウ複合材料に用いられているようなフィラメント樹脂結合と比べてせん断力及び抗張力も向上させることができる。このようなCNT浸出繊維トウから形成された複合繊維材料は、高い層間せん断強度(interlaminar shear strength)、抗張力及び軸外強度(out-of-axis strength)にともなう良好な性質制御又はレーダー吸収特性を示す。ある実施形態において、CNTは有用なレーダー吸収特性を供給するために完全に相互嵌合する必要はない。例えば、パーコレーション経路は、CNT間の一点での接触により形成することができる。
【0084】
一構成において、CNT浸出繊維材料200は、従来の複合材料に良好な性質制御を提供するために、ガラス繊維複合材料パネル又は炭素繊維複合材料パネル等の従来の複合材料の表面にコーティングとして適用することができる。一構成おいて、CNT浸出材料200は、複合材料構造のレーダー吸収又は性質制御特性を向上させるために複合材料構造の周りに巻つけられてもよい。樹脂マトリクス等のマトリクスのコーティングは、外部環境からCNT浸出複合材料繊維200を保護するために複合材料の表面に適用されたCNT浸出繊維材料200の1つ以上の層又はこれからなる織物製品に適用することができる。多層CNT浸出繊維材料は、レーダー吸収を変化させる複数のCNT配向、長さ及び密度を提供するように配置して、異なる波長帯域のレーダーを吸収し、異なる角度から構造全体に衝突するレーダー源からのレーダーを吸収することができる。
【0085】
図9には、複合材料350の上面355上に配置された浸出されたCNTを有する繊維材料210のコーティング層が概略記載されている。複合材料350は、例えば、従来の複合ガラス又はガラス強化プラスチックの形態をとってもよい。他の構成において、複合材料350は、炭素繊維複合材料構造又は炭素繊維強化プラスチック構造の形態をとってもよい。複合材料350は、そのままでは良好なレーダー吸収又は性質制御特性が要求される用途への使用には、通常は適さない。しかしながら、複合材料350の表面355上に、浸出されたCNTを有する繊維材料210のコーティング又は層230を適用することにより、合成物(複合材料350及びCNT浸出繊維の合成物)は、大幅に向上したレーダー吸収及び性質制御特性を示す。例示的な実施形態において、繊維210は、樹脂マトリクス等のマトリクスにカーボンナノチューブ220が浸出された繊維トウであってもよい。さらに他の例示的な実施形態において、繊維210は、複合材料350の上面355に適用可能な織物の形態に織られてもよい。
【0086】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料200は、織物の形態に織られてもよい。一構成において、繊維のコーティングの厚さは、CNT浸出繊維の単層として約20ナノメートル(nm)から、CNT浸出繊維の多層として約12.5mmまでの範囲とすることができる。図示された実施形態は、単純化の目的で繊維の単層を示すが、当然のことながら、複合材料350上のコーティングを形成するために繊維の多層を使用することができる。
【0087】
CNT浸出繊維材料200を使用する利点は、当該複合材料が有する重量強度比率並びに他の望ましい機械的及び構造的特性等の利点を維持しながら、低観測性用途のために、近いレーダー吸収又は性質制御の特性を持つ従来の複合材料とともに使用することができることである。
【0088】
CNT浸出繊維材料200の層又はコーティングは、複合材料構造のレーダー吸収又は性質制御特性を向上させるために、航空機の翼構造の先端部等の複合材料構造の表面に配置することができる。このような、従来の複合材料へのCNT浸出繊維材料200の層又はコーティングを使用することにより、例えば、航空機の翼構造及び他の部品の形成のために従来の複合材料を使用すること並びに低観測特性を備えたままで、同時に航空機の重量を大幅に軽減することが容易になる。
【0089】
図10には、例示的な実施形態による、コーティングシステム400が図示されている。システム400は、上流繊維源からのCNT浸出繊維110を受け取る。例示的な実施形態において、CNT浸出繊維は、カーボンナノチューブ120が繊維材料上に浸出される成長チャンバーから直接コーティングシステム400に誘導される。CNT浸出繊維110は、CNT浸出繊維110をさらに処理するために浴槽410に収められている化学溶液420に浸される。CNT浸出繊維110は、2つのガイドローラー440,450により導かれる。浴槽ローラー430は、CNT浸出繊維110を溶液420中に浸す。例示的な実施形態において、溶液420は、鉄ベースナノ粒子溶液である。一構成において、溶液420は、200のヘキサン溶媒に対して1の体積の鉄ベース溶質を含む。CNT浸出繊維110上のカーボンナノチューブ120は、鉄ナノ粒子を吸収し、これにより、CNT浸出繊維110及びこれから形成された複合材料のレーダー吸収又は性質制御特性がさらに向上する。当然のことながら、CNT浸出繊維110から形成された幅広の織物は、鉄ベースナノ粒子を組み込むために同様の処理をされてもよい。
【0090】
ある実施形態において、レーダー吸収複合材料は、制御された方法で繊維材料に浸出されたCNTを含むことができる。例えば、CNTは、繊維材料のそれぞれの繊維要素の周りに、半径方向に高密度に成長してもよい。他の実施形態において、CNTは、さらに後成長(post growth)処理を施して繊維軸に沿って直線状に配列させることができる。CNT浸出複合材料コーティングを製造するために、1〜15ミクロンの従来の繊維を、合成のための表面として使用することができる。様々な表面改質技術及び付加的なコーティングは、繊維を保護又は繊維と触媒との接触面を改良するために使用することができる。触媒被覆は、スプレー、浸漬及び気相処理をいくらでも用いて施される。触媒の層が堆積すると、大気圧成長システムにおけるCVDベース成長処理の間に、触媒還元及びCNT成長が同時に連続的に生じる。CNTの1つの層が成長した後、半径方向(成長したまま)のCNTを繊維の方向に配列するために、本特許出願で言及された方法に限られないさらなる技術が用いられなければならない。概略記載される3つの技術及びこれらの組み合わせを、この配列を行うために使用することができる。3つの技術は以下に記載される。
【0091】
電気機械的技術−成長処理中に、繊維に平行に並んだ電場又は磁場を使用し、適用した力場によりCNTが配列するように誘導することができる。
【0092】
機械的技術−押出(extrusion)、引抜(pultrusion)、ガス圧補助ダイス(gas pressure aided dies)、従来のダイス及びマンドレルを含む様々な機械的技術は、繊維の方向へせん断力を加えて、配列を誘導するために使用することができる。
【0093】
化学的技術−溶媒、界面活性剤及びマイクロエマルション(micro-emulsion)を含む化学物質は、シージング効果(sheathing effect)により、これらの化学物質から引き出された材料として認められた繊維の方向へ配列を誘導するために使用することができる。
【0094】
さらに、CNTは繊維軸に対して明確な配向性を有することができるため、これにより、CNTは、全ての複合材料構造全体においても同様に、制御された配向性を有することができる。これは、上記の巻取り又は形成処理のいずれにおいても又は硬化等のための樹脂マトリクス中のCNT浸出繊維材料の配向を制御することにより達成できる。
【0095】
したがって、ある実施形態において、本発明は、1)マトリクス材の一部にマトリクス材内で配向を制御されたCNT浸出繊維材料を配置すること及び2)CNT浸出繊維材料の制御された配向が、そこに浸出されたCNTの相対配向を制御するマトリクス材を硬化することを含む、レーダー吸収複合材料の製造方法を提供する。
【0096】
繊維は、湿式巻付け(wet winding)、後に真空補助樹脂浸出(vacuum assisted resin infusion)が続く乾式巻付け及びプリプレグ(織物又は繊維上に形成された粘着性構造の樹脂)を介して複合材料中に組み込むことができる。それぞれの場合において、繊維とマトリクスとが構造中に組み合わされると、マトリクスは硬化される。硬化は、大気圧、低気圧又は高気圧下で行われる。
【0097】
ある実施形態において、本発明は、本発明のレーダー吸収複合材料を含むパネルを提供する。ある実施形態において、パネルは、ステルス用途に使用する輸送容器又は発射体の構造用部品として製造することができる。輸送容器は、複合材料内で配向を制御されたCNTを有するCNT浸出繊維材料を備えるパネルを含むことができる。任意で、パネルは、レーダー吸収を最大化するために、レーダー発信源からの入射角に対して角度を調整する機構を搭載することができる。例えば、吸収されたレーダー信号のエネルギーは、レーダー吸収を最大化するために、パネルの配向を変化させるコンピュータシステムに統合される電気信号に変換して使用することができる。これは、予め入射方向がわからない複数のレーダー源からの探知に対して最適化する手段を提供する。ある実施形態において、輸送容器は、例えば、ボート、飛行機及び地上車の形態を取ることができる。
【0098】
ある実施形態において、レーダー吸収体はまた、探知されていないステルス用途に加えて、反射されたレーダー信号を効果的に捕捉する必要がある探知用途において、レーダーを吸収するために使用することができる。本発明のレーダー吸収複合材料は、より効率的に反射したレーダー信号を受信するために、探知システムに統合することができる。
【0099】
ある実施形態において、本発明のレーダー吸収体は、発射体システムに統合することができる。これは、上記のパネルタイプシステム又はコーティングを使用して行うことができる。このような用途において、繊維材料上に浸出されたCNTは、複合材料及びパネル又はコーティング内において、制御された配向を有する。パネルが使用された場合、パネルはさらに、レーダー吸収を最大化するために、レーダー発信源からのレーダーの入射角度に対する角度を調整する機構を搭載することができる。このように、レーダー探知を回避することができる発射体を作成することができる。
【0100】
上で簡単に記載したように、本発明は、CNT浸出繊維材料を作るための連続CNT浸出処理に依存する。前記処理は、(a)巻取り可能な寸法の繊維材料の表面にカーボンナノチューブ形成触媒を堆積させること及び(b)炭素繊維材料上にカーボンナノチューブを直接合成し、これによりカーボンナノチューブ浸出繊維材料を形成することを含む。さらなるステップは、使用される繊維材料の種類に応じて用いることができる。例えば、炭素繊維材料を使用する場合、バリア・コーティングを組み込むステップを処理に追加することができる。
【0101】
9フィートのシステムにおいて、処理のラインスピードは、約1.5ft/分から約108ft/分までとすることができる。本明細書に記載された処理により達成される前記ラインスピードにより、短い生産時間で商業的数量のCNT浸出繊維材料の形成が可能となる。例えば、36ft/分のラインスピードの場合、CNT浸出繊維(繊維に5重量%を上回るCNTを浸出)の量は、5つの別々のトウ(20lb/tow)を同時に処理するために設計されたシステムにおいて、一日あたり100ポンドを越えることができる。システムは、成長区間を繰り返すことにより、同時に又はより高速で、より多くのトウを製造するように設計することができる。さらに、当該技術分野で周知のように、CNT形成のステップの中には、連続運転モードを妨げる、極めて遅い速度を有するものがある。例えば、当該技術分野で周知の一般的な処理において、CNT形成触媒還元ステップは、実行に1〜12時間を要することがある。CNT成長自体もまた、時間のかかるものであり、例えば、CNT成長に数十分を要し、その結果、本発明において実現された速いラインスピードを妨げることもある。本明細書で記載される処理は、このような律速(rate limiting)ステップを克服する。
【0102】
本発明のCNT浸出炭素繊維材料形成処理は、前もって形成されたカーボンナノチューブの懸濁液を繊維材料に適用しようとする際に生じるCNTのもつれ(entanglement)を避けることができる。すなわち、予め形成されたCNTは、炭素繊維材料に浸出されないので、CNTはまとまったりもつれたりする傾向がある。結果として、炭素繊維材料に弱く付着したCNTの不均一な分散が生じる。しかしながら、本発明の処理は、必要に応じて、成長密度を低下させることにより、炭素繊維材料の表面に、非常に均一なもつれあったCNTマットを提供することができる。低密度に成長したCNTは、最初に炭素繊維材料中に浸出される。このような実施形態において、繊維は、垂直配列を誘導するのに十分な密度に成長せず、結果として炭素繊維材料表面のもつれ合ったマットが得られる。一方、予め形成されたCNTを手で適用する場合、炭素繊維材料上におけるCNTマットの均一な分散及び密度は保証されない。
【0103】
図11は、本発明の実施形態による、CNT浸出炭素繊維材料を形成するための処理700のフローチャートを表す。当業者は、炭素繊維材料上でのCNT浸出を例示するこの処理は、例えば、ガラス又はセラミック繊維等の他のCNT浸出繊維材料を提供するために変更することができることを理解するだろう。このような条件の変更のなかには、例えば、ガラス及びセラミックにおいて任意な、バリア・コーティングを適用するステップの削除が含まれるものもある。
【0104】
処理700は、少なくとも以下の工程を含む。
【0105】
701:炭素繊維材料の機能化。
【0106】
702:機能化した炭素繊維材料へのバリア・コーティング及びCNT形成触媒の適用。
【0107】
704:カーボンナノチューブ合成に十分な温度への炭素繊維材料の加熱。
【0108】
706:触媒を含んだ炭素繊維上でのCVD媒介CNT成長の促進。
【0109】
ステップ701において、炭素繊維材料は、繊維表面の湿潤化を促進し、バリア・コーティングの付着を強化するために機能化される。
【0110】
炭素繊維材料にカーボンナノチューブを浸出させるために、例えば、カーボンナノチューブは、バリア・コーティングにより被覆された炭素繊維材料上に合成される。一実施形態において、これは、まず炭素繊維材料に沿ってバリア・コーティングを被覆し、そして工程702により、バリア・コーティング上にナノチューブ形成触媒を堆積させることにより行われる。ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒堆積の前に、部分的に硬化することができる。これにより、触媒を受け入れ、CNT形成触媒と炭素繊維材料との間の表面接触を含むバリア・コーティングへの触媒の埋め込みが可能となる表面を提供することができる。このような実施形態において、バリア・コーティングは、触媒を埋め込んだ後、完全に硬化させることができる。ある実施形態において、バリア・コーティングは、CNT形成触媒の堆積と同時に、炭素繊維材料に沿って被覆される。CNT形成触媒及びバリア・コーティングが所定位置につくと、バリア・コーティングを完全に硬化させることができる。
【0111】
ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒堆積の前に完全に硬化することができる。このような実施形態において、完全に硬化されて、バリア・コーティングされた炭素繊維材料は、触媒を受け入れる表面を形成するためにプラズマにより処理することができる。例えば、硬化したバリア・コーティングを有し、プラズマ処理された炭素繊維材料により、CNT形成触媒を堆積することができる粗面が提供される。したがって、バリア表面の粗面化のためのプラズマ処理は、触媒堆積を容易にする。粗さは、一般にナノメートルスケールである。プラズマ処理において、ナノメートル単位の深さ及び直径の穴又は窪みが形成される。このような表面改質は、これに限定されないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素及び水素を含む様々な種類のガスの1つ以上のプラズマを使用して行うことができる。ある実施形態において、プラズマによる粗面化はまた、炭素繊維材料自体に直接行うこともできる。これは、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの付着を容易にする。
【0112】
図11とともに以下にさらに記載するように、触媒は、遷移金属ナノ粒子を含んで構成されたCNT形成触媒を含む溶液として作成される。合成されたナノチューブの直径は、上記の金属粒子の粒径と関連がある。ある実施形態において、工業用のCNT形成遷移金属ナノ粒子触媒の分散系が市販されており、希釈せずに使用され、他の実施形態においては、工業用の触媒の分散系は希釈することができる。こうした溶液を希釈するか否かは、上記の成長したCNTの望ましい密度及び長さによって決めることができる。
【0113】
図11の実施形態に関して、化学蒸着(chemical vapor deposition, CVD)に基づき、高温で生じるカーボンナノチューブ合成が示される。具体的な温度は、選択された触媒によって決まるが、一般には約500から1000℃の範囲である。したがって、工程704は、カーボンナノチューブ合成を補助するために、バリア・コーティングされた炭素繊維材料を上記の範囲の温度まで加熱することを含む。
【0114】
工程706において、触媒を含んだ炭素繊維材料上のCVD促進ナノチューブ成長が次に行われる。CVD処理は、例えば、アセチレン、エチレン又はエタノール等の炭素含有原料ガスにより促進することができる。CNT合成処理は一般に、主要な搬送ガスとして不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)を使用する。炭素原料は、全混合物の約0%から約15%までの範囲で提供される。CVD成長のための実質的な不活性環境は、成長チャンバーから蒸気及び酸素を除去することにより準備される。
【0115】
CNT合成処理において、CNTは、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒の部分で成長する。プラズマを生み出す強い電場は、ナノチューブ成長に作用させるために任意に用いることができる。すなわち、前記成長は、電場の方向に従う傾向がある。プラズマスプレー(plasma spray)及び電場の配置を適切に調整することにより、垂直配列(すなわち、炭素繊維材料に対して垂直な)CNTを合成することができる。ある条件においては、プラズマが存在しない場合であっても、密集したナノチューブは、垂直方向の成長を維持し、カーペット又は森のような密なCNTの配列を生じる。なお、バリア・コーティングの存在は、CNT成長の方向性にも影響を与えることができる。
【0116】
炭素繊維材料上への触媒の堆積工程はまた、溶液のスプレー若しくは浸漬被覆又は例えばプラズマ処理を介した気相堆積により行うことができる。技術の選択は、バリア・コーティングが適用される方法に合わせることができる。したがって、ある実施形態において、溶媒中の触媒の溶液を形成した後、触媒は、前記溶液をバリア・コーティングされた炭素繊維材料にスプレー、浸漬被覆又はスプレーと浸漬被覆との組み合わせにより、適用することができる。単独で又は組み合わせて使用されたいずれかの技術は、CNT形成触媒により十分に均一に被覆された炭素繊維材料を提供するために、1回、2回、3回、4回という具合に何回でも使用することができる。浸漬被覆が用いられた場合、例えば、炭素繊維材料を、第1滞留時間の間、第1浸漬槽(dip bath)に収容することができる。第2浸漬槽を採用した場合、炭素繊維材料を、第2滞留時間の間、第2浸漬槽に収容することができる。例えば、炭素繊維材料は、浸漬構造及びラインスピードに応じて、約3分から約90分の間CNT形成触媒の溶液にさらすことができる。スプレー又は浸漬被覆処理を採用した場合、触媒の表面密度が約5%未満の炭素繊維材料は、ほとんどが単原子層であるCNT形成触媒ナノ粒子により約80%にまで被覆される。ある実施形態において、炭素繊維材料上へのCNT形成触媒の被覆処理は、単分子層しか形成しない。例えば、大量のCNT形成触媒上のCNT成長は、炭素繊維材料へのCNTの浸出度(degree of infusion)を損なうことがある。他の実施形態において、遷移金属触媒は、蒸発技術、電解析出技術及びプラズマ原料ガスへの有機金属、金属塩又は気相での輸送を促進する他の組成として遷移金属触媒を付加する等の当業者に周知の他の処理を使用して、炭素繊維上に堆積させることができる。
【0117】
本発明の処理は連続するように設計されているため、巻取り可能な炭素繊維材料は、浸漬被覆槽が空間的に分離した一連の槽中で浸漬被覆することができる。初期の炭素繊維が新たに生じている連続処理において、CNT形成触媒の浸漬槽又はスプレーは、炭素繊維材料にバリア・コーティングを適用して硬化又は部分的に硬化した後の、最初のステップとすることができる。バリア・コーティング及びCNT形成触媒の適用は、新たに形成された炭素繊維材料のために、サイジング剤の適用のかわりに行うことができる。他の実施形態において、CNT形成触媒は、バリア・コーティング後に、他のサイジング剤の存在下で新たに形成された炭素繊維に適用することができる。このようなCNT形成触媒及び他のサイジング剤の同時適用により、炭素繊維材料のバリア・コーティングと表面接触したCNT形成触媒がさらに提供されて、CNT浸出を確実にする。
【0118】
使用される触媒液は、上記のdブロック遷移金属のいずれの遷移金属ナノ粒子とすることもできる。加えて、前記ナノ粒子は、dブロック金属の合金と非合金との元素形態又は塩形態の混合物及びその混合物を含むことができる。このような塩形態は、これに限定されないが、酸化物、炭化物及び窒化物を含む。限定されない例としての遷移金属NPとして、Ni,Fe,Co,Mo,Cu,Pt,Au及びAg並びにこれらの塩及びこれらの混合物が含まれる。ある実施形態において、このようなCNT形成触媒は、バリア・コーティング堆積と同時に、炭素繊維材料に直接CNT形成触媒を適用又は浸出することにより、炭素繊維上に堆積する。これらの遷移金属触媒の多くは、例えば、Ferrotec Corporation(Bedford, NH)を含む様々なサプライヤーから容易に市販で入手することができる。
【0119】
炭素繊維材料にCNT形成触媒を適用する溶液に使用される触媒は、CNT形成触媒を均一に分散することができる一般的ないずれの溶媒に含まれてもよい。このような溶媒は、これに制限されないが、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(TFT)、シクロヘキサン又はCNT形成触媒ナノ粒子の適切な分散系を形成するよう制御された極性を有する他の溶媒を含むことができる。CNT形成触媒の濃度は、触媒対溶媒が約1:1から1:10000の範囲とすることができる。この濃度は、バリア・コーティング及びCNT形成触媒が同時に適用された場合にも使用することができる。
【0120】
ある実施形態において、CNT形成触媒の堆積後、カーボンナノチューブの合成するために、炭素繊維材料の加熱により、温度を約500℃から1000℃の範囲とすることができる。これらの温度での加熱は、CNT成長のための炭素原料の導入より前に又は実質的に同時に行うことができる。
【0121】
ある実施形態において、本発明は、炭素繊維材料からのサイジング剤の除去、炭素繊維材料一面へのバリア・コーティングの適用、炭素繊維材料へのCNT形成触媒の適用、少なくとも500℃への炭素繊維材料の加熱及び炭素繊維材料上でのカーボンナノチューブの合成を含む処理を提供する。ある実施形態において、CNT浸出処理の工程は、炭素繊維材料からのサイジング剤の除去、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの適用、炭素繊維へのCNT形成触媒の適用、繊維のCNT合成温度への加熱及び触媒含有炭素繊維材料でのCVD促進CNT成長(CVD-promoted CNT growth)を含む。このように、工業用炭素繊維材料が用いられる場合には、CNT浸出炭素繊維を構成するための処理は、炭素繊維材料にバリア・コーティング及び触媒を堆積させる前に炭素繊維材料からサイジング剤を除去する別々のステップを含むことができる。
【0122】
カーボンナノチューブを合成するステップは、本明細書に参照により組み込まれた同時係属中の米国特許出願公開第2004/0245088号明細書に開示された技術を含む、多くのカーボンナノチューブ形成技術を含むことができる。本発明の繊維に成長したCNTは、これに限定されないが、微小共振動(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD技術(thermal or plasma-enhanced CVD technique)、レーザーアブレーション(laser ablation)、アーク放電及び高圧一酸化炭素(HiPCO)を含む周知の技術により達成される。特に、CVDの間、CNT形成触媒が堆積したバリア・コーティング炭素繊維材料を直接使用することができる。ある実施形態において、いずれの従来のサイジング剤も、CNT合成の前に除去することができる。ある実施形態において、アセチレンガスは、イオン化されてCNT合成のための低温炭素プラズマ(cold carbon plasma)の噴流を作り出す。前記プラズマは、触媒担持炭素繊維材料に誘導される。このように、ある実施形態において、炭素繊維上でのCNTの合成には、(a)炭素プラズマの形成及び(b)炭素繊維材料に堆積した触媒への炭素プラズマの誘導が含まれる。成長したCNTの直径は、上記の通り、CNT形成触媒の粒径により決定される。ある実施形態において、サイジングされた繊維基質は、CNT合成を促進するために約550から約800℃まで加熱される。CNTの成長を開始させるために、アルゴン、ヘリウム又は窒素等の処理ガス及びアセチレン、エチレン、エタノール又はメタン等の炭素含有ガスの2種類のガスが反応器に流入される。CNTは、CNT形成触媒の部分で成長する。
【0123】
ある実施形態において、CVD成長は、プラズマ助長される。プラズマは、成長処理の間に電場を与えることにより生じさせることができる。このような状況下で成長したCNTは、電場の方向に従う。したがって、反応器の配置を調整することにより、垂直配列されたカーボンナノチューブを、円筒状の繊維の周りに半径方向に成長させることができる。ある実施形態においては、繊維の周りにおける半径方向の成長にはプラズマは必要ない。テープ、マット、織物、プライ等の幅広の炭素繊維材料の場合、触媒は、その片面又は両面に配置され、CNTも同様に、片面又は両面に成長させることができる。
【0124】
上記の通り、CNT合成は、機能化された巻取り可能な炭素繊維材料のための連続処理を提供するのに十分な速度で行われる。このような連続合成を行う様々な装置構成が以下に例示される。
【0125】
ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は、「全プラズマ(all plasma)」処理で構成することができる。全プラズマ処理は、上記のプラズマによる炭素繊維材料の粗面化と一体となることによって、繊維表面の湿潤特性を向上させ、より適合したバリア・コーティングを提供し、酸素、窒素、アルゴン−水素又はヘリウムベースプラズマ等の特定の反応ガス種を使用した炭素繊維材料の機能化による機械的嵌合及び化学的付着を介してコーティング付着を向上させることができる。
【0126】
バリア・コーティングされた炭素繊維材料は、CNT浸出最終生成物を形成するための多くのプラズマ媒介ステップを経る。ある実施形態において、全プラズマ処理は、バリア・コーティングが硬化された後に、裏面の改質を含んでもよい。これは、炭素繊維材料上のバリア・コーティングの表面を「粗面化(roughing)」して触媒堆積を促進するためのプラズマ処理である。上記のように、表面改質は、これに限定されないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素及び窒素を含む様々なガスの種類の1つ以上のプラズマを使用して行うことができる。
【0127】
表面改質の後、バリア・コーティングされた炭素繊維材料に触媒適用に移る。これは、繊維上へCNT形成触媒を堆積させるためのプラズマ処理である。CNT形成触媒は、上記の通り、通常は遷移金属である。遷移金属触媒は、磁性流体(ferrofluid)、有機金属、金属塩又は気相での輸送を促進する他の組成の形態の前駆体としてプラズマ原料ガスに加えることができる。触媒は、必要とされる真空でも不活性環境でもない室温の周囲環境で適用することができる。ある実施形態において、炭素繊維材料は、触媒適用の前に冷却される。
【0128】
全プラズマ処理を継続すると、カーボンナノチューブ合成がCNT成長反応器内で生じるが、この場合、炭素プラズマが触媒担持繊維上にスプレーされるプラズマ助長化学蒸着を用いて行うことができる。カーボンナノチューブ成長は高温(触媒に応じて、一般に、約500から1000℃)で生じるため、触媒担持繊維は、炭素プラズマに暴露される前に加熱される。浸出処理のために、炭素繊維材料は、軟化するまで随意に加熱することができる。加熱の後、炭素繊維材料は、炭素プラズマを受ける準備ができる。炭素プラズマは、例えば、アセチレン、エチレン、エタノール等の炭素含有ガスを、ガスをイオン化することができる電場を通過させることで生じさせる。この低温炭素プラズマは、スプレーノズルを介して、炭素繊維材料へと誘導される。炭素繊維材料は、プラズマを受けるために、スプレーノズルから約1センチメートル以内等に近接する。ある実施形態において、加熱器は、炭素繊維材料の高い温度を維持するために、炭素繊維材料上方のプラズマ噴霧器(plasma sprayer)に配置することができる。
【0129】
カーボンナノチューブ合成のための他の構成は、カーボンナノチューブが直接炭素繊維材料上で合成及び成長するための特別な長方形反応器(rectangular reactor)を含む。前記反応器は、カーボンナノチューブ担持材料を製造するための連続直列処理で用いるために設計されている。ある実施形態において、CNTは、化学蒸着(CVD)処理を介して、反応器の複数の区画(zone)において、大気圧及び約550℃から約800℃までの範囲の高温で成長する。合成が大気圧で生じるという事実は、繊維上にCNTを合成するための連続処理ラインへの反応器の組み込みを容易にする一要因になっている。区画(zone)反応器等を使用する直列連続処理による他の利点は、従来の一般的な構成の方法及び装置においては数分(又はそれ以上)してから生じるCNT成長が数秒以内に生じることである。
【0130】
様々な実施形態によるCNT合成反応器は、以下の特徴を含む。
【0131】
長方形合成反応器:当該技術分野において周知の一般的なCNT合成反応器の横断面は円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒形反応器がしばしば利用される)、利便性(円筒形反応器では、流動力学のモデル化が容易であり、加熱システムは円形チューブを容易に受け入れる(クオーツ(quartz)等))及び製造の容易さを含む様々な理由がある。従来の円筒形状から離れて、本発明は、長方形の横断面を有するCNT合成反応器を提供する。円筒形状から脱却する理由は以下の通りである。
1.反応器により処理することができる炭素繊維材料の多くは、平らなテープ又はシート様(sheet like)形状等のように比較的平面的であり、円形の横断面は、反応器の体積の利用において非効率的である。この非効率さによって、円筒形CNT合成反応器には、例えば次のような欠点が生じる。
a)十分なシステムパージの維持(反応器の増大した体積は、同水準のガスパージを維持するために大量のガス流量を必要とするが、この結果、システムは開放環境におけるCNTの大量生成には非効率となる)。
b)炭素原料流量の増加(不活性ガス流量の増加により、上記a)のように、大量のガス流量が必要となる)。
12K炭素繊維トウの体積は、長方形横断面を有する合成反応器の全体積の2000分の1であることを考慮されたい。同等の円筒形成長反応器(すなわち、長方形横断面反応器と同一の平面的な炭素繊維材料を収容する幅の円筒形反応器)において、炭素繊維材料の体積は、チャンバーの体積の17500分の1である。CVD等のガスデポジション(gas deposition)処理は、一般に圧力又は温度だけに制御されるが、体積はデポジション効率に対して重大な影響を持っている。長方形反応器にはまだ余分な体積が存在する。円筒形反応器は前記体積の約8倍の体積を有する。この余分な体積は、望ましくない反応を促進するが、しかし、この競合する反応が生じる大きな機会により、円筒形反応器チャンバー内では、望ましい反応が事実上緩やかに進む。このようなCNT成長の鈍化は、連続処理の開発においては問題である。長方形反応器構成の利益の1つは、高さの低い長方形チャンバーを使用することで、反応器体積を減少させ、これによって、反応器体積の比率を良くし、反応効率を向上させることである。本発明のある実施形態において、長方形合成反応器の全体積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全体積の約3000倍である。他の実施形態において、長方形合成反応器の全体積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全体積の約4000倍である。さらに他の実施形態において、長方形合成反応器の全体積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全体積の約10000倍未満である。加えて、円筒形反応器を使用する場合、長方形横断面を有する反応器と同じ流量パーセントを提供するためには、より多くの炭素原料ガスが必要となる点は注目に値する。ある実施形態において、合成反応器は、長方形ではないが比較的それに近く、円形横断面を有する反応器に対して同様の反応器体積の低下を提供する多角形形状により説明される横断面を有することが理解されるだろう。
c)問題のある温度分布。比較的小口径の反応器が使用された場合、チャンバー中央部から壁面までの温度勾配はわずかとなる。しかし、商業スケールの製品に使用される等、サイズが大きくなるにつれて、温度勾配は大きくなる。このような温度勾配は、炭素繊維材料基質に亘った製品品質の変化を生じさせる(すなわち、製品品質が半径方向の位置に応じて変化する)。この問題は、長方形横断面を有する反応器を使用した場合、実質的には避けられる。特に、平面的な基質が使用された場合、反応器の高さを、基質の大きさの上昇にしたがって、一定に維持することができる。反応器の頂部と底部との間での温度勾配は、基本的にごくわずかであり、結果として、熱問題及び製品品質のばらつきを避けられる。
2.ガス導入:当該技術分野においては、管状炉(tubular furnace)が通常は使用されるため、一般的なCNT合成反応器は、ガスを一端から導き入れ、そして反応器を通して他端へと引き出す。本明細書において開示されるある実施形態において、ガスは、反応器の側面又は頂部及び底部を通して対称的に、反応器の中央部又は目標となる成長領域内へと導入される。これは、システムのCNT成長が最も盛んな部分に、流入した原料ガスが連続的に補給されるため、CNT成長率全体を向上させる。この一定のガス供給は、長方形CNT反応器により高い成長率を示すために重要な側面である。
【0132】
(区画化)
チャンバーは、長方形合成反応器の両端に従属する比較的低温のパージ領域を提供する。出願人は、高温のガスが外部環境(すなわち、反応器外部)と混合した場合、炭素繊維材料の劣化が進行するということを発見した。前記低温のパージ領域は、内部システムと外部環境との間の緩衝材(buffer)を提供する。当該技術分野で周知の一般的なCNT合成反応器構成の場合、基質を慎重に(そしてゆっくりと)冷却することが必要となってくる。本発明の長方形CNT成長反応器に存在する低温のパージ領域は、連続直列処理にもとめられる短時間での冷却を実現する。
【0133】
(非接触、高温壁、金属反応器)
ある実施形態において、高温壁反応器は、金属製であり、特にステンレス鋼が採用される。金属、特にステンレス鋼は、炭素の堆積(すなわち、煤及び副産物)による影響を受けやすいため、これは直感に反するかもしれない。それ故、ほとんどのCNT反応器構成は、石英反応器を使用する。なぜなら、石英は、炭素が堆積しにくく、清掃が容易であり、サンプルの観察を容易にするからである。しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上の大量の煤及び炭素堆積は、より着実で、速く、効率的で、そのうえ安定したCNT成長を生じさせることに気がついた。理論に拘束されるものではないが、大気作動に関して、反応器内で生じるCVD処理は、拡散律速(diffusion limited)である。すなわち、触媒は、「供給過多(overfed)」であり、(反応器が不完全真空化で作動した場合に比べて)その相対的に高い分圧のため、反応器システム内では過剰な炭素が供給される。結果として、開放システム−特にクリーン(clean)開放システム−において、過剰な炭素が触媒粒子に付着し、そのCNT合成能力を低下させることがある。ある実施形態において、長方形反応器は、反応器が「汚れた」、すなわち金属反応器の壁面に煤が堆積した場合に、意図的に稼働させる。反応器の壁面に炭素が単原子層として堆積すると、炭素は炭素自体に堆積しやすくなる。この機構によりいくらかの炭素が「引き込まれ」、残った炭素原料は、ラジカルの形態で、触媒を侵さない速度にて触媒と反応する。システムが連続処理のために開放されていた場合、「クリーン」な状態で稼働する既存のシステムは、低い成長速度で極めて低い産出量のCNTを生成するだろう。
【0134】
上記のように、CNT合成を「汚れた(dirty)」状態で行うことは一般に有益であるが、ガスマニホールド及び吸気口等の装置の特定部分において煤により障害物が形成された場合、CNT成長に悪影響を及ぼす。この問題を解決するために、CNT成長反応器チャンバーのある領域は、シリカ、アルミナ又はMgO等の抑制コーティングにより煤から保護することができる。実際に、装置のこれらの部分は、煤抑制コーティングで浸漬被覆することができる。インバール(INVAR)は、高温におけるコーティングの適切な付着を確保できるだけのCTE(熱膨張率)を有しているため、インバール(R)等の金属は、これらのコーティングとともに使用して、重要な領域において大量の煤が蓄積するのを防ぐ。
【0135】
(触媒還元及びCNT合成の組み合わせ)
本明細書において開示されるCNT合成反応器において、触媒還元及びCNT成長はいずれも反応器内で生じる。還元ステップが別工程として行われた場合、連続処理での使用のために十分適時にステップを完了させることができないため、これは重要なことである。当該技術分野において周知の典型的な処理の場合、還元処理を行うには一般に1〜12時間かかる。両方の工程は、本発明に係る反応器内で生じるが、これは少なくとも一部には、炭素原料ガスが、円筒形反応器を使用する当該技術分野では一般的な端部ではなく、反応機の中央部に導入されるという事実によるものである。繊維が加熱領域に入ると還元処理が行われる。ここまでの間に、ガスには壁面と反応し、触媒との反応及び(水素ラジカル相互作用を介した)酸化還元の反省の前に冷却される時間を有することになる。これが、還元が行われる遷移領域である。システムの最も温度の高い等温領域において、CNT成長が生じ、反応器の中央部付近のガス吸気口近くで成長速度は最高となる。
【0136】
ある実施形態において、炭素トウ等の緩やかにまとめられた炭素繊維が使用された場合、連続処理は、トウのストランド(strand)又はフィラメントを広げる(spread)ステップを含むことができる。トウは巻取られてはいないため、例えば、真空ベース繊維拡張システム(vacuum-based fiber spreading system)を使用して、トウを広げることができる。比較的堅いサイジングされた炭素繊維を使用する場合、トウを「軟化」し、繊維拡張を容易にするために、付加的な加熱を行うことができる。個別のフィラメントを含んで構成された広げられた繊維は、フィラメントの全表面領域を暴露するのに十分大きく広げることができるので、その後の処理ステップにおいてトウをより効率的に反応させることができる。このような拡張は、3Kトウに対して約4インチから約6インチまで行うことができる。広げられた炭素トウは、上記のプラズマシステムからなる表面処理ステップを経ることができる。バリア・コーティングを適用し粗面化した後、広げられた繊維を、CNT形成触媒浸漬槽を通すことができる。結果として、表面に半径方向に触媒粒子が分布した炭素トウの繊維が得られる。トウの触媒含有繊維は、秒速数ミクロンの速度でCNTを合成するために、循環(flow through)大気圧CVD又はPE−CVDが使用される上記の長方形チャンバー等の適切なCNT成長チャンバーに入れられる。半径方向に配列されたCNTを付着させたトウの繊維は、CNT成長反応器を出る。
【0137】
ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は、さらに他の加工処理、ある実施形態においてはCNTを機能化するために使用されるプラズマ処理、を経てもよい。CNTのさらなる機能化は、特定の樹脂への付着を促進するために使用することができる。したがって、ある実施形態において、本発明は、機能化されたCNTを有するCNT浸出炭素繊維材料を提供する。
【0138】
巻取り可能な炭素繊維材料の連続処理の一部として、CNT浸出炭素繊維材料は、さらにサイジング剤浸漬槽を通過させて、これにより、最終製品に有益な追加のサイジング剤を適用することができる。最終的に、湿式巻付けが望ましい場合、CNT浸出炭素繊維材料は、樹脂槽を通過し、マンドレル又はスプールに巻取ることができる。結果として得られた炭素繊維材料/樹脂の組み合わせは、炭素繊維材料にCNTを閉じ込め、加工を容易にし、複合製作を可能にする。ある実施形態において、CNT浸出は、改善されたフィラメント・ワインディング(filament winding)を提供するために使用される。したがって、炭素トウ等の炭素繊維上に形成されたCNTは、樹脂を含浸したCNT浸出炭素繊維トウを製造するために、樹脂槽を通過する。樹脂を含浸した後、炭素トウは、搬送ヘッドにより回転マンドレル(rotating mandrel)の表面に配置される。そして、前記トウは、周知の方法により正確な幾何パターンで、マンドレルに巻付けられる。
【0139】
上記の巻付け処理は、パイプ、管又はオス型を介して特長的に製造される他の形態を提供する。しかし、本明細書で開示される巻付け処理により形成された前記形態は、従来のフィラメント巻付け処理を介して製造されたものとは異なる。特に、本明細書で開示された処理においては、CNT浸出トウを含む複合材料から形態が作られる。それゆえ、前記形態は、CNT浸出トウによる強度強化からの利益を享受するだろう。
【0140】
ある実施形態において、巻付け可能な炭素繊維材料上にCNTを浸出するための連続処理は、約0.5ft/分から約36ft/分までのラインスピードで行うことができる。CNT成長チャンバーの長さが3フィートであり、成長温度が750℃の実施形態において、処理は、例えば、約100ナノメートルから約10ミクロンまでの長さのCNTを生成するために、約6ft/分から約36ft/分までのラインスピードで行うことができる。前記処理はまた、例えば、約10ミクロンから約100ミクロンまでの長さのCNTを生成するために、約1ft/分から約6ft/分までのラインスピードで行うことができる。前記処理はまた、例えば、約100ミクロンから約200ミクロンまでの長さのCNTを生成するために、約0.5ft/分から約1ft/分までのラインスピードで行うことができる。CNTの長さはラインスピード及び成長温度のみに束縛されるものではなく、炭素原料及び不活性搬送ガスの流量もまたCNTの長さに影響する。例えば、速いラインスピード(6ft/分から36ft/分まで)で不活性ガス及び1%未満の炭素原料からなる流量は、1ミクロンから約5ミクロンの長さのCNTを生じさせる。速いラインスピード(6ft/分から36ft/分まで)で不活性ガス及び1%を上回る炭素原料からなる流量は、5ミクロンから約10ミクロンまでの長さのCNTを生じさせる。
【0141】
ある実施形態において、1つ以上の炭素材料は、同時に処理することができる。例えば、複数のテープトウ、フィラメント及びストランド等は、並列して処理することができる。したがって、先に形成された炭素繊維材料のスプールはいくつでも、並列して処理し、処理の終わりで改めて巻付けることができる。並列して処理することができる巻付けられた炭素繊維材料の数は、1,2,3,4,5,6,7及びCNT成長反応器チャンバーの幅に適応できる全ての数を含む。さらに、複数の炭素繊維材料が処理される場合、回収スプールの数は、処理開始時におけるスプールの数より少なくすることができる。このような実施形態において、炭素ストランド又はトウ等は、これらの炭素繊維材料を、織物製品等のより高秩序の炭素繊維材料に組み合わせるためのさらなる処理に送ることができる。連続処理はまた、例えば、CNT浸出短繊維マットの形成を容易にする後処理チョッパー(post processing chopper)を組み込むことができる。
【0142】
繊維材料へCNTを浸出するための本発明の処理により、CNTの均一な長さの制御及び連続処理において、巻取り可能な繊維材料を高率でCNTにより機能化することが可能となる。5から300秒までの材料滞留時間の場合、長さ3フィートのシステムのための連続処理の速度は、どこでも約0.5ft/分から36ft/分まで及びそれ以上とすることができる。前記速度は、さらに以下に説明される様々なパラメータに応じて選択される。
【0143】
ある実施形態において、約5から約30秒までの材料滞留時間により、約100ナノメートルから約10ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。ある実施形態において、約30から約180秒までの材料滞留時間により、約10ミクロンから約100ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。さらに他の実施形態において、約180から約300秒までの材料滞留時間により、約100ミクロンから約500ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。当業者は、これらの範囲が概算であり、CNTの長さはまた、反応温度によって、並びに搬送ガス及び炭素原料の濃度及び流量によって調節することができることを理解するだろう。
【0144】
(実施例)
この例は、炭素繊維材料が、複合材料構造中での性質制御能力を促進するために、連続処理においてどのようにCNTを浸出されるかを示す。
【0145】
本実施例において、繊維上へのCNTの最大充填が目標とされている。800テックスの34−700の12K炭素繊維トウ(Grafil Inc., Sacrament, CA)は、炭素繊維基質として組み入れられている。この炭素繊維トウのそれぞれのフィラメントは、およそ7μmの直径を有する。
【0146】
図12は、本発明の例示的な実施形態によるCNT浸出繊維製造のためシステム800を示す。システム800は、図示されたように関連する、炭素繊維材料繰り出し及び伸張手段(tensioner)工程805と、サイジング剤除去及び繊維拡張手段(spreader)工程810と、プラズマ処理工程815と、バリア・コーティング適用工程820と、空気乾燥工程825と、触媒適用工程830と、溶媒の蒸発分離工程835と、CNT浸出工程840と、繊維束化手段(bundler)工程845と、炭素繊維材料取り込みボビン850とを含む。
【0147】
繰り出し及び伸張工程805は、繰り出しボビン806及び伸張手段807を含む。繰り出しボビンは、炭素繊維材料860を処理へ導き、繊維は、伸張手段807により伸張される。例えば、炭素繊維は、2ft/分のラインスピードで処理される。
【0148】
繊維材料860は、サイジング剤除去加熱器865及び繊維拡張手段870を含むサイジング剤除去及び繊維拡張工程810へ導かれる。この工程において、繊維860上の全てのサイジング剤は除去される。主として、除去は繊維のサイジング剤を燃焼させることにより行われる。例えば、赤外線加熱器、マッフル炉及び他の非接触加熱処理を含む様々な加熱手段はいずれもこの目的のために使用することができる。サイジング剤除去はまた、化学的に行うこともできる。繊維拡張手段は、繊維の個々の要素を分離する。平坦で均一な直径のバー(bar)の上方及び下方に、不均一な直径のバーの上方及び下方に、半径方向に広がった溝とニーディングローラー(kneading roller)とを備えたバーの上方に、又は振動バー(vibratory bar)の上方に、繊維を引っ張る等の様々な技術及び装置を、繊維の拡張のために使用することができる。繊維の拡張は、より広い繊維表面領域が暴露されることにより、プラズマ適用、バリア・コーティング適用及び触媒適用等の下流工程の効率を向上させる。
【0149】
繊維のデサイジング(desizing)及び拡張を同時に徐々に行うことを可能にする繊維拡張手段870の至る所に複数のサイジング剤除去加熱器865を配置することができる。繰り出し及び伸張工程805並びにサイジング剤除去及び繊維拡張手段工程810は、繊維工業においてごく普通に用いられる。当業者は、これらの設計及び使用に精通しているだろう。
【0150】
サイジング剤を燃焼するための温度及び時間は、(1)サイジング剤及び(2)炭素繊維材料860の商業的供給源/特性の関数として変化する。炭素繊維材料上の従来のサイジング剤は、約650℃で除去することができる。この温度で、サイジング剤を確実に完全燃焼させるためには15分を要することがある。この燃焼温度を越える温度上昇によって、燃焼時間を削減することができるが、特定商品のサイジング剤において最低の燃焼温度を決定するために熱重量分析(thermogravimetric analysis)が使用される。
【0151】
サイジング剤除去に要する時間によっては、サイジング剤除去加熱器は必ずしも厳密な意味でのCNT浸出処理に含まれなくてもよく、除去は別々に(例えば、並列して)行うことができる。このような方法で、サイジング剤を含まない(sizing-free)炭素繊維材料の在庫は蓄積され、繊維除去加熱器を含まないCNT浸出繊維製造ラインで使用するために巻取ることができる。そして、サイジング剤を含まない繊維は、繰り出し及び伸張工程805に巻取られる。この製造ラインは、サイジング剤除去を含む製造ラインより速い速度で稼働させることができる。
【0152】
サイジング剤を除去された繊維880は、プラズマ処理工程815に導入される。例えば、大気圧プラズマ処理は、流れに沿って、広げられた炭素繊維材料から1mmの距離から使用される。ガス状原料は、100%のヘリウムから構成される。
【0153】
プラズマ助長繊維885は、バリア・コーティング工程820に導入される。本実施形態においては、シロキサンベースバリア・コーティング溶液が、浸漬被覆構成に採用される。前記溶液は、体積比40対1の希釈率でイソプロピルアルコールに希釈された「T−11スピンオンガラスAccuglass(登録商標)(Honeywell International Inc., Morristown, NJ)」である。結果として得られる炭素繊維材料上のバリア・コーティングの厚さは、およそ40nmである。バリア・コーティングは、周囲環境の室温で適用することができる。
【0154】
バリア・コーティングされた炭素繊維890は、ナノスケールのバリア・コーティングの部分硬化のための空気乾燥工程825に導入される。空気乾燥工程は、炭素繊維スプレッド全体に加熱された気流を送る。採用される温度は、100℃から約500℃の範囲である。
【0155】
空気乾燥の後、バリア・コーティングされた炭素繊維890は、触媒適用工程830に導入される。本実施例において、酸化鉄ベースCNT形成触媒溶液が、浸漬被覆構成に採用される。前記溶液は、体積比200対1の希釈率でヘキサンに希釈された「EFH−1(Ferrotec Corporation, Bedford, NH)」である。性質制御特性のために設定されたCNT浸出繊維の処理ラインスピードで、繊維は浸漬槽に10秒間滞留する。触媒は、真空下でも不活性雰囲気下でもなく、周囲環境の室温で適用することができる。触媒被覆の単原子層が、炭素繊維材料上に形成される。希釈される前の「EFH−1」は、3〜15%の体積濃度のナノ粒子を含む。酸化鉄ナノ粒子の組成は、Fe2O3及びFe3O4であり、およそ8nmの粒径を有する。
【0156】
触媒含有炭素繊維材料895は、溶媒の蒸発分離工程835に導入される。溶媒蒸発分離工程は、炭素繊維スプレッドの全体に気流を送る。本実施例において、触媒含有炭素繊維材料上に残された全てのヘキサンを蒸発分離するために、室温の空気を使用することができる。
【0157】
溶媒の蒸発分離の後、触媒含有繊維895は、最終的にCNT浸出工程840に送られる。本実施例において、12インチの成長領域を有する長方形反応器は、大気圧でのCVD成長を採用するために使用される。全ガス流の97.6%は不活性ガス(窒素)であり、残りの2.4%は炭素原料(アセチレン)である。前記成長領域は、750℃に保たれる。上記長方形反応器において、750℃は、比較的高い成長温度であり、これによって最高の成長率が可能となる。触媒含有繊維は、本実施例において、CNT成長環境に30秒間暴露され、結果として、炭素繊維表面に長さ60ミクロンでおよそ4%体積パーセントのCNTが浸出される。
【0158】
CNT浸出の後、CNT浸出繊維897は、繊維束化工程845において、改めて束ねられる。この工程は、繊維のストランドのそれぞれをまとめ、これによって、工程810において行われた拡張工程を事実上無効にする。
【0159】
束ねられたCNT浸出繊維897は、保管のために、取り込み繊維ボビン850の周りに巻き取られる。このようにして、CNT浸出繊維897は、高い性質制御特性を必要とする様々な用途に使用可能となる。この場合、この材料は、乾式巻付けされ、図13に示すようにRAMパネルの背面層(back layer)として機能するように樹脂が浸出される。上記処理により結果として生じるパネル層は、複合材料構造中に2〜4重量%のCNTを有する。
【0160】
上記工程の中には、環境分離のために、不活性雰囲気下又は真空下で行うことが可能なものもある点は注目に値する。例えば、炭素繊維材料のサイジング剤が燃焼している場合、ガス放出(off-gassing)を封じ、蒸気による損傷を妨げるために、繊維を環境的に分離することができる。便宜上、システム800において、環境分離は、製造ラインの最初に行われる炭素繊維材料繰り出し及び伸張並びに製造ラインの最後に行われる繊維の取り込みを除く、全ての工程に提供することができる。
【0161】
当然のことながら、上記実施形態は、単に本発明を説明するためのものであり、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記実施形態の多くのバリエーションを考え出すことができる。例えば、本明細書において、本発明の実施形態の詳細な説明及び理解を提供するために、多くの具体的な詳細が提供されている。しかしながら、当業者は、本発明がこれら詳細の1つ以上を備えずに又は他の処理、材料及び構成要素等を備えて実施することができることを認識するであろう。
【0162】
さらに、場合によっては、周知の構造、材料又は工程は、実施形態の態様が不明瞭になるのを避けるため、詳細に示されず、記載されていない。当然のことながら、図示された様々な実施形態は、説明のためのものであり、必ずしもこの縮尺でなくてもよい。本明細書を通じて、「一実施形態」、「実施形態」又は「ある実施形態」とは、実施形態と関連して記載された特定の外観、構造、材料又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれるが、全ての実施形態に含まれる必要はない、ということを意味する。結果として、本明細書を通じて様々な箇所に使用された「一実施形態において」、「実施形態において」又は「ある実施形態において」という言い回しは、全てが同一の実施形態について言及している必要はない。さらに、特定の外観、構造、材料又は特性は、1つ以上の実施形態に適切な方法で組み合わせることができる。それゆえ、そのようなバリエーションは、特許請求の範囲及びその均等の範囲に含まれることを意味する。
【技術分野】
【0001】
(関連出願に関する記載)
本出願は、2009年4月28日に出願された米国仮出願第61/173,435号及び2009年4月24日に出願された米国仮出願第61/172,503号の利益を主張し、これらの出願の全ての内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概してレーダー吸収体に関する。
【背景技術】
【0003】
低観測性(low observable)技術又はステルス技術は、航空機、船舶、潜水艦及びミサイルに使用され、これらを、例えば、レーダー、赤外線、ソナー及び他の探知方法に対して目立たないように又は観測し難いようにする。レーダー域内の電磁周波数を吸収する様々なレーダー吸収体(RAM)は、このような低観測性用途のために開発されてきた。しかしながら、現在用いられているRAMには、いくつかの欠点がある。例えば、多くのRAMは、低観測性構造物の表面と一体ではない。むしろ、RAMは、低観測性構造物の表面にコーティング又は塗装として適用されるため、前記構造物を重くし、損耗、欠損(chipping)及び故障させる傾向がある。このようなRAMの例として、カルボニル鉄又はフェライトにより被覆された微小球を含有する鉄球塗装が含まれる。その上、これらのコーティングは、前記構造物又はその表面と一体ではないため、前記構造物の表面への結合形成が必要となる。
【0004】
RAMの他の例として、炭素を含浸した発泡ウレタンがある。このようなRAMは、極めて薄い層中に使用される。このようなRAMは、元来非構造的であり、構造物に重量及び体積を加えるが、構造的な支持は与えない。この種のRAMは、しばしば長いピラミッド状に切り分けられる。低周波減衰のため、ピラミッド状構造の基底部から頂部までの距離は、大抵24インチであるが、一方高周波パネルは3〜4インチであってもよい。
【0005】
他のRAMは、低観測性構造物の表面に結合されたドープポリマータイルの形態をとる。例えば、カーボンブラック又は鉄微粒子を添加されたネオプレン(登録商標)を含むこのようなタイルは、特に、極高温もしくは極低温又は高高度等の厳しい動作環境においては剥離しやすい。結局、多くのRAMは、約2GHzの長波長レーダー帯域においては、十分な性能を発揮しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題の1つ以上に取り組んだ新たなRAMを開発することは有益であろう。本発明は、この要求を満たすとともに、関連する効果を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含むレーダー吸収複合材料に関する。前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60メガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができる。CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成する。
【0008】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含むレーダー吸収複合材料の製造方法に関する。前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60メガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができる。CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成する。前記方法は、マトリクス材内でCNT浸出繊維材料の配向が制御された状態で、マトリクス材の一部にCNT浸出繊維材料を配置すること及び前記マトリクス材を硬化させることを含む。前記CNT浸出繊維材料の制御された配向は、前記材料上に浸出されたCNTの相対配向を制御する。
【0009】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含んだ複合材料を含むパネルに関する。前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60メガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができる。CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成する。前記パネルは、ステルス用途のための輸送容器又はミサイルの構成部品として接触面に適応することができる。
【0010】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、パネル形態の上記複合材料を含む輸送容器に関する。前記繊維材料に浸出されたCNTは、前記複合材料内で配向を制御されている。
【0011】
ある態様において、本明細書で開示される実施形態は、パネル形態の上記複合材料を含む発射体(projectile)に関する。前記繊維材料に浸出されたCNTは、前記複合材料内で配向を制御されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】連続CVD処理によりAS4炭素繊維上に成長した多層CNT(MWNT)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像。
【図2】連続CVD処理によりAS4炭素繊維上に成長した二層CNT(DWNT)のTEM画像。
【図3】CNT形成ナノ粒子触媒が機械的に炭素繊維材料表面に浸出された部分のバリア・コーティング(barrier coating)内部から成長したCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)画像。
【図4】炭素繊維材料上で目標とする長さである約40ミクロンの20%以内まで成長したCNTの長さ分布の一貫性を明示するSEM画像。
【図5】CNT成長におけるバリア・コーティングの効果を明示するSEM画像。バリア・コーティングが適用された部分では高密度かつ良好な配列のCNTが成長し、バリア・コーティングが存在しない部分ではCNTは成長しなかった。
【図6】繊維全域における約10%以内のCNT密度の均一性を明示する炭素繊維上のCNTの低倍率SEM画像。
【図7】カーボンナノチューブ(CNT)浸出繊維材料を有するレーダー吸収複合材料の断面図。
【図8】パネル等の部材上のレーダー吸収体コーティングとして使用するために適応されたカーボンナノチューブ浸出繊維トウ(tow)。
【図9】複合材料のレーダー吸収特性を向上させるために複合材料に適用されたカーボンナノチューブ浸出繊維トウコーティング。
【図10】カーボンナノチューブ浸出繊維用のコーティングシステムの概略図。
【図11】本発明の実施形態によるCNT浸出繊維材料を製造するための処理。
【図12】レーダー吸収のための熱伝導性及び電気伝導性の向上を目的とした連続処理において、どのように炭素繊維材料にCNTが浸出されるかを示す。
【図13】CNT浸出繊維材料を含む二層構造を有する、例となるRAMパネルの断面図。
【図14】CNT浸出繊維材料を含む多層構造を有する、例となるRAMパネルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1つには、RAMである複合材料を目的とする。本明細書で開示されるレーダー吸収複合材料は、マトリクス材の一部に配置されたCNT浸出繊維材料を有する。CNTは、その高アスペクト比、高伝導性による望ましい電磁吸収特性を有し、繊維材料に浸出された際には、特定の表面被覆密度を調整できる。複合材料全体のCNTは、レーダーを吸収し、吸収したエネルギーを例えば熱として消散させることができる。
【0014】
本発明のレーダー吸収複合材料は、低観測性表面の吸収特性を向上させることができる。ある実施形態において、CNT浸出繊維は、誘電性(レーダー照射に対して透明)があり、その上、導電性のある(レーダーを大幅に反射する)複合材料に対し、高い性質制御を提供し、結果として軽量で高強度の複合材料を使用することができる。このような複合材料のいくつかは、元来が性質制御能力に欠くため、用途があらかじめ制限されていてもよい。
【0015】
本発明のレーダー吸収複合材料は、可視領域及び様々なレーダー帯域を含む、電磁スペクトルの異なる部分に亘ってほとんど黒体である吸収性表面を提供することができる。繊維に浸出されたCNTは、レーダー吸収構造を形成するために、様々な層に特定のCNT密度の調整された配置を可能にする。すなわち、レーダー吸収能力は、前記材料の深さの全域で様々なCNT密度を提供することにより実現される。繊維材料は複合材料の全体に亘り、異なる深さに適切なCNT密度を提供する配列にCNTを形成する足場であり、これにより、一部の層での内部反射及び他の層でのレーダー吸収によるエネルギー消散のための効果的なパーコレーション経路(percolation pathway)を提供する。さらに他の層は、内部反射と吸収したレーダーエネルギーを消散させるパーコレーション経路との組合せを提供することができる。浸出されたCNTは、均一な長さ、密度及び連続CNT浸出処理に基づく繊維材料上の制御された配向を有するように調整することができる。そして、このようにして得られたCNT浸出繊維は、レーダー吸収を最大化するように複合材料構造内に配置される。
【0016】
特に、複合材料表面の近傍において、比較的低いCNT密度は、空気と同等の誘電率又は空気と同等の屈折率を有し、レーダー反射率が実質的に最小化された黒体様(black body-like)構造の材料を形成することができる。すなわち、反射を抑制するために、物体の屈折率を空気の屈折率に近づけることができる。反射率を最小化するための解は、フレネルの法則:R=(n−n0)2/(n+n0)2より明らかである。ここで、Rは反射率、nは物体の屈折率、そしてn0は空気の屈折率である。繊維材料上のCNT密度は、本明細書で以下に開示される連続処理中に調節することができ、CNT浸出繊維材料は、複合材料構造中のCNT浸出繊維の層における屈折率nが、空気の屈折率n0に近似するようにCNTの密度を調節することができる。
【0017】
レーダー吸収をCNTに依存することにより、複合材料に、導電性又は絶縁性の繊維材料又はマトリクスを使用することができる。その上、レーダー吸収複合材料は、低観測性の構造物全体又は表面の一部として一体化することができる。ある実施形態において、構造物全体は、例えば、損耗や欠損等のRAM被覆に関連した問題を未然に防いだRAMとして機能することができる。意義深いことに、本発明のRAMは、ウレタン型発泡体とは異なり構造的であり、したがって、発泡体同等物(foam counterpart)に比べて、実質的な重量の軽減を実現することができる。ある実施形態において、CNT浸出繊維材料をコーティングとして使用することができ、これにより使用された繊維材料が伸張されたために生じる欠損/損耗を避けることができる。
【0018】
上記レーダー吸収体用のCNT浸出繊維を製造するための製造処理は、本明細書において、以下にさらに記載される。前記処理は、大規模連続処理に適している。前記処理において、CNTは、炭素、ガラス、セラミック又はトウ(tow)もしくはロービング(roving)等の巻取り可能な寸法の類似した繊維材料上に直接成長する。CNT成長は、100ナノメートルから約500ミクロまでの間で調節可能な長さで深い森(dense forest)が配置される性質があり、前記長さは以下に記載した様々な要素により制御されている。この森は、CNTが繊維材料のそれぞれのフィラメント(filament)の表面に対して垂直に、つまり半径方向に被覆するように配向することができる。ある実施形態において、繊維材料の軸に対して平行な配向を与えるように、CNTをさらに処理することができる。結果として得られたCNT浸出繊維材料を、製品として巻取る又は低観測性構造物に使用するレーダー吸収複合材料の製造のための織物製品(fabric goods)に紡ぐことができる。意義深いことに、前記連続処理により、様々なCNT密度を有するCNT浸出部分の製造が可能になる。以下でさらに説明するように、これは、組み立てられた場合、レーダー吸収能力全体に貢献する多層構造の製造を容易に可能にする。
【0019】
本明細書において、「レーダー吸収複合材料」という用語は、少なくともマトリクス材に配置されたCNT浸出繊維材料を有するいずれかの複合材料をいう。本発明のレーダー吸収複合材料は、CNT、繊維材料及びマトリクス材の3つの構成要素を有し、CNTが浸出される繊維材料によりCNTがまとめられている階層構造を形成する。前記CNT浸出繊維材料は、CNT浸出繊維材料が配置されるマトリクス材により順々にまとめられる。層の深さに応じて特定の密度に配置されたCNTは、探知用途において、レーダー反射の抑制又はレーダー発信源もしくは探知対象から反射されたEMに関する電磁波(EM)放射を吸収することができる。吸収されたレーダーは、熱又は電気信号に変換することができる。
【0020】
本明細書において、「レーダー」という用語は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでに分布した一般的なレーダー周波数帯域をいう。本発明のレーダー吸収複合材料は、例えば、以下にさらに記載するように、L帯域からK帯域において特に効果的である。
【0021】
本明細書において、「レーダー吸収能力」という用語は、本発明のレーダー吸収複合材料が、あらゆるレーダー帯域の電磁波放射を吸収する能力をいう。
【0022】
本明細書において、「繊維材料」という用語は、基本的な構造成分としての繊維を有するあらゆる材料をいう。この用語は、繊維、フィラメント、ヤーン(yarn)、トウ、トウ、テープ(tape)、織物素材(woven)、不織布製品(non-woven fabric)、プライ(ply)、マット(mat)及び3D織物構造等を包含する。
【0023】
本明細書において、「巻取り可能な寸法」という用語は、スプール(spool)又はマンドレル(mandrel)に収納可能な、長さが限定されない少なくとも1つの寸法を有する繊維材料について言及する。「巻取り可能な寸法」の繊維材料は、本明細書で記載のCNT浸出のためのバッチ処理又は連続処理のいずれか一方の使用を示唆する少なくとも1つの寸法を有する。市販のガラス、炭素、セラミック及び類似の製品として「巻取り可能な寸法」の繊維材料を得ることができる。市販の巻取り可能な寸法の炭素繊維材料として、800tex(1tex=1g/1000m)又は620yard/lbのAS4という12K炭素繊維トウ(Grafil, Inc., Sacrament, CA)が例示される。特に、市販の炭素繊維トウは、より大きなスプールが特注品を要求してもよいが、例えば、5,10,20,50及び100lb(大きな重量を有するスプール用、通常は3k/12Kトウ)のスプールにおいて得ることができる。本発明の処理は、5〜20lbのスプールで容易に行われるが、より大きなスプールを使用することもできる。その上、例えば、100lb以上の極めて大きなスプールを、2本の50lbのスプール等の扱いやすい寸法に分割する前処理を組み込むことができる。
【0024】
本明細書において、「カーボンナノチューブ(CNT)」という用語は、単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube, SWNT)、二層カーボンナノチューブ(double-walled carbon nanotube, DWNT)及び多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube, MWNT)を含むフラーレン群からなるいくつかの円筒形状の炭素同素体のいずれかをいう。CNTは、フラーレンのような構造により閉塞されるか、又は両端が開口していてもよい。CNTには、他の物質を封入するものが含まれる。
【0025】
本明細書において、「長さが均一」という場合、反応器において成長するCNTの長さについて言及するものである。「均一な長さ」は、約1ミクロンから約500ミクロンの様々なCNT長さに関して、CNTが全長の±約20%以下の許容誤差を伴う長さを有することを意味する。例えば、1〜4ミクロン等の極めて短い長さでは、この誤差は、CNTの全長の±約20%から±約1ミクロンまでの範囲、すなわち、CNTの全長の約20%よりも若干大きくなる。(レーダー吸収)性質制御において、CNTの前記長さは、レーダー吸収の調節のために使用することができ、また目標としたレーダー帯域の吸収を最大化するために最適化することができる。
【0026】
本明細書において、「分布が均一」とは、繊維材料におけるCNTの密度が不変であることをいう。「均一な分布」は、繊維材料におけるCNTの密度が、CNTにより被覆される繊維の表面積の割合として定義される被覆率において±約10%の許容誤差となることを意味する。これは、直径8nmの5層CNTでは、1平方マイクロメートル当たり±1500CNT/μm2に相当する。この形状ではCNTの内部空間を充填可能と仮定している。
【0027】
本明細書において、「浸出される」という用語は、結合されることを意味し、「浸出」という用語は結合処理を意味する。このような結合には、直接共有結合、イオン結合、π−π相互作用又はファンデルワールス力の介在による物理吸着などが含まれる。例えば、ある実施形態において、CNTは、炭素繊維材料に直接結合される。結合は、例えば、CNTが、バリア・コーティング又はCNTと炭素繊維材料との間にはさまれて配置された遷移金属ナノ粒子を介して繊維材料へ浸出される等、間接的でもよい。本明細書で開示されるCNT浸出繊維材料において、カーボンナノチューブは、上記のように、直接的又は間接的に繊維材料に「浸出」されることができる。CNTを繊維材料に浸出させる具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0028】
本明細書において、「遷移金属」という用語は、周期表のdブロックにおけるいずれかの元素又はその合金をいう。また、「遷移金属」という用語には、卑遷移金属元素の塩形態(例えば、酸化物、炭化物、窒化物等)も含まれる。
【0029】
本明細書において、「ナノ粒子」もしくはNPという用語又はその文法的な同等物は、NPは球形である必要はないが、粒径が、等価な球形における約0.1から約100μmの間の大きさの粒子をいう。遷移金属NPは、特に、繊維材料上におけるCNTを成長させる触媒として機能する。
【0030】
本明細書において、「サイジング剤(sizing agent)」、「繊維サイジング剤(fiber sizing agent)」又は単に「サイジング(sizing)」とは、炭素繊維の品質を保護し、複合材料中の炭素繊維とマトリクス材との間の界面相互作用を向上させ、炭素繊維の特定の物理的性質を変更又は高めるためのコーティングとして、繊維の製造において使用される材料を総称するものである。ある実施形態では、繊維材料に浸出されるCNTが、サイジング剤として作用する。
【0031】
本明細書において、「マトリクス材」という用語は、サイジング剤を適用したCNT浸出繊維材料を、ランダム配向を含む特定の配向性でまとめる役割を果たすバルク材をいう。CNT浸出繊維材料の物理的又は化学的性質の一部がマトリクス材に与えられることにより、前記マトリクス材はCNT浸出繊維材料の存在からの利益を享受することができる。レーダー吸収用途において、繊維材料と接近したマトリクス材は、制御されたCNT密度及び制御されたCNT配向を提供する。この制御を前記マトリクス材単独と遊離したCNTとを単純に混合することにより行うのは極めて困難である。CNT浸出繊維材料に沿った密度の優れた制御は、レーダー反射率を抑制する層及び吸収したレーダーエネルギーを消散させるためのパーコレーション経路を提供する層を形成する手段を提供する。本発明のRAMは、一般に、その表面の低層部分(low ply layer)において、高いCNT密度を有する。
【0032】
本明細書において、「材料滞留時間」という用語は、本明細書に記載されるCNT浸出処理の間にCNT成長状態にさらされる巻取り可能な寸法の繊維材料に沿ったそれぞれの位置で、CNTが成長する時間をいう。この定義は、多層CNTの成長チャンバーを用いる場合の材料滞留時間を含む。
【0033】
本明細書において、「ラインスピード(linespeed)」という用語は、本明細書に記載されるCNT浸出処理において、巻取り可能な寸法の繊維材料を送り込むことができる速度をいい、ラインスピードは、CNTの(1つの又は複数の)チャンバー長を材料滞留時間で除して算出される速度である。
【0034】
ある実施形態において、本発明は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含むレーダー吸収複合材料を提供する。前記複合材料は、約0.1MHzから約60GHzまでの周波数のレーダーを吸収することができる。前記CNT繊維材料を複合材料中に堆積させてレーダー反射率を抑制する、すなわち入射したレーダーを透過する第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成することができる。前記第1層は、4分の1波長の法則(quarter wavelength rule)を使用して、内部反射を最適化する厚さにすることができる。前記第2層は、少なくとも2つの仕組みにより、エネルギーの消散を促進することができる。1つには、衝突したレーダーを吸収し、エネルギーを電気又は熱エネルギーに変換する。前記衝突したレーダーはまた、内部反射する第1層へ反射され、その結果、レーダーエネルギーは熱として消散される。
【0035】
ある実施形態において、本発明の複合材料は、第1層と第2層との間にさらなる複数の層を有することができる。これらの中間層は、第1層から第2層までのCNT浸出繊維材料における増加するCNT密度の段階的な勾配として提供される。他の実施形態において、これらの中間層は、第1層から第2層までのCNT浸出繊維材料におけるCNT密度の増加の連続的な勾配として提供される。
【0036】
ある実施形態において、第1層及び第2層は、別個のCNT浸出繊維材料とすることができる。2つの連続した繊維材料の長さは別々である。これにより、繊維材料の潜在的構成が多様化する。例えば、ある実施形態において、第1層はCNT浸出ガラス繊維材料を含むことができ、一方他の実施形態においては、第2層はCNT浸出炭素繊維材料を含むことができる。複合材料構造の最内層は、それ自体が伝導性特性を有する繊維材料の使用がもたらす利益を享受できる。これは、吸収されたレーダーエネルギーの消散を促進することができる。
【0037】
当業者は、性質制御のためのレーダー吸収に関する用途において、物体の表面でのレーダー反射を避けながら、レーダーを吸収又は透過する材料を製造することが望ましいことを理解するだろう。機構的な観点からすると、レーダー吸収用途によって、CNT繊維材料の存在及び低CNT密度におけるレーダー反射を最小化する能力によりもたらされる吸収特性からの利益は大きい。
【0038】
レーダー吸収複合材料は、「連続的」又は「巻取り可能」な長さの、トウ、ロービング又は織物等の繊維材料に浸出されたCNTによって通常は構成されたCNT浸出繊維材料を含む。レーダー吸収能力は、例えば、CNTの長さ、CNTの密度及びCNTの配向に応じて変化する。CNT浸出繊維材料を形成する処理は、特定の吸収能力を備えたレーダー吸収複合材料の構造を可能とする。繊維材料上におけるCNTの長さ及び配向は、本明細書で以下に記載されるCNT成長処理中に制御される。複合材料中のCNTの相対配向は、CNT浸出繊維を配向させる複合材料製造処理により順々に制御される。
【0039】
本発明のレーダー吸収複合材料は、1つ以上のレーダー帯域を吸収するように構成することができる。ある実施形態においては、異なるレーダー周波数帯域の吸収を最大化するために、単一の巻取り可能な長さの異なる部分に沿って、異なる長さと配向を有するCNTを有する単一の巻取り可能な長さのCNT浸出繊維が提供される。あるいは、これと同様の効果のために、CNTの長さ又は配向が異なる巻取り可能な長さの複数の繊維材料を、複合材料中に配置することができる。どちらの方法も、複合材料中に異なるレーダー吸収特性を有する層を提供する。CNTの複数配向によってもまた、レーダー吸収複合材料は、複合材料に異なる入射角で衝突した複数のレーダー源からの電磁波放射を吸収することが可能となる。
【0040】
複合材料の第2層又は最内層中にCNTを密に充填することにより、吸収されたレーダー電磁波放射のエネルギーを効果的に消散するためのパーコレーション経路が提供される。理論に拘束されるものではないが、これは、図7〜9に例示した、CNT同士の点接触又はCNT同士の相互嵌合の結果である。ある実施形態において、CNT中の吸収されたレーダーエネルギーは、例えば、レーダー発信源に応じた又は探知用途における反射された電磁波内のレーダー吸収を最大化するために、コンピュータシステムに統合可能な電気信号に変換してレーダー吸収複合材料を組み込んだパネル等の部品の配向を調節することができる。また、第2層又は最内層は、レーダーを内側で反射し、エネルギーを熱として消散させることができる。
【0041】
ある実施形態において、レーダー吸収複合材料は、製品と一体の部分又はステルス用途に使用される構造物として提供される。ある実施形態において、レーダー吸収体は、複合材料構造物全体の一部として提供される。例えば、複合材料構造物は、レーダーを吸収するためのCNT浸出繊維材料を組み込んだ表面「外板(skin)」を有することができる。他の実施形態において、レーダー吸収複合材料は、既存の他の複合材料又は他の製品の表面に、例えば、コーティングマトリクスに混合された短繊維等のコーティングとして適用することができる。このような実施形態において、前記コーティングは、従来のコーティングで生じるおそれのある欠損等の防止を促進する長い繊維材料を採用する。さらに、コーティングとして用いられた場合、レーダー透過保護膜は、レーダー吸収複合材料をさらに保護するために使用することができる。また、「コーティング」として使用された場合、より強い結合を得るために、CNT浸出繊維複合材料のマトリクスを構造物全体のバルクマトリクスと密接に適合又は一致させることができる。
【0042】
レーダー吸収複合材料のCNT浸出繊維材料は、実質的に均一な長さのCNTを提供することができる。これにより、広い領域に亘って安定した吸収能力を備えた複合材料製品が提供される。CNT浸出繊維材料の製造のための本明細書に記載する連続処理において、CNT成長チャンバー内での繊維材料の滞留時間は、CNT成長を制御し、最終的にCNTの長さを制御するために調節することができる。これにより、成長したCNTの特定の性質を制御する手段が提供される。また、CNTの長さは、炭素原料並びに搬送ガスの流量及び反応温度の調節により、制御することができる。CNTの性質は、例えば、CNTを用意するために使用する触媒の大きさを制御することにより、さらに制御することができる。例えば、SWNTを得るために、特に、1nmの遷移金属ナノ粒子触媒を使用することができる。主にMWNTを用意するために、さらに大きな触媒を使用することができる。
【0043】
さらに、用いられるCNT成長処理は、前もって作られたCNTを溶媒中に浮遊又は分散して、手で繊維材料に適用する処理中に生じえるCNTの束化又は凝集を避けつつ、CNT浸出繊維材料に繊維材料に均一に分布したCNTを提供するのに有用である。このように凝集したCNTは、繊維材料への付着力が弱く、CNTの特有に性質は、現れたとしても、その現れ方は弱い。ある実施形態において、被覆率、すなわち被覆された繊維の表面領域のパーセントで表される最大分布密度は、直径約8nmで5層のCNTの場合、約55%にまでなる。この被覆率は、CNTの内部空間が「充填可能な」空間であるとして計算される。表面に分散した触媒を変化させ、ガス組成及び処理速度を制御することにより、様々な分布/密度の値を達成することができる。一般的に与えられるパラメータにおいて、繊維表面に亘って約10%以内の被覆率を達成することができる。高密度で短いCNTは、機械的性質を向上させるのに有用であり、一方、低密度の長いCNTは、熱的及び電気的性質並びにレーダー吸収の向上に有用である、とはいえ、高密度はそれでもなお望ましい。長いCNTが成長した場合、低密度が生じることがある。これは、低い触媒微粒子収率(catalyst particle yield)を引き起こす高温及び急成長の結果の可能性がある。
【0044】
繊維材料への浸出に有用なCNTは、単層CNT、二層CNT、多層CNT及びこれらの混合物を含む。使用される適切なCNTは、レーダー吸収複合材料の最終用途によって決まる。レーダー吸収に加えて、熱伝導又は電気伝導用途のためにCNTを使用することができる。ある実施形態において、浸出されたカーボンナノチューブは、単層ナノチューブである。ある実施形態において、浸出されたカーボンナノチューブは、多層ナノチューブである。ある実施形態において、浸出されたカーボンナノチューブは、単層及び多層ナノチューブの混合物である。単層及び多層ナノチューブの特性には、いくつかの繊維の最終用途において、ナノチューブのタイプのいずれか一方の合成に影響するいくつかの相違がある。例えば、単層ナノチューブは、半導体又は金属的であるが、多層ナノチューブは金属的である。したがって、吸収されたレーダーを、例えば、コンピュータシステムに統合することができる電気信号に変換する場合、CNTの種類を制御することが望ましい。
【0045】
CNTは、機械的強度、低・中電気抵抗率及び高い熱伝導性等の特有の性質を、CNT浸出繊維材料に付与する。例えば、ある実施形態において、カーボンナノチューブ浸出炭素繊維材料の電気抵抗率は、繊維母材(parent fiber material)の電気抵抗率より低い。さらに一般に、結果として得られたCNT浸出繊維が示すこれらの特性の程度は、カーボンナノチューブによる炭素繊維の被覆率の程度及び密度の関数となる。また、これらの特性は、CNT浸出繊維が組み込まれたレーダー吸収複合材料全体へ伝えることができる。直径8nmで5層のMWNTの場合、繊維の0〜55%の範囲であれば繊維表面領域はいくらでも被覆される(CNTの内部空間を充填可能とみなして計算している)。この数値は、より小さな直径のCNTの場合はより小さく、より大きな直径のCNTの場合はより大きい。表面領域の55%の被覆率は、約15000CNT/ミクロン2に相当する。さらに、CNTの性質は、CNTの長さに依存した方法で、炭素繊維材料に与えることができる。浸出されたCNTの長さは、約1ミクロンから約500ミクロンまでの範囲で変化させることができ、1ミクロン,2ミクロン,3ミクロン,4ミクロン,5ミクロン,6ミクロン,7ミクロン,8ミクロン,9ミクロン,10ミクロン,15ミクロン,20ミクロン,25ミクロン,30ミクロン,35ミクロン,40ミクロン,45ミクロン,50ミクロン,60ミクロン,70ミクロン,80ミクロン,90ミクロン,100ミクロン,150ミクロン,200ミクロン,250ミクロン,300ミクロン,350ミクロン,400ミクロン,450ミクロン,500ミクロン及びこれらの間の全ての値を含む。また、CNTは、例えば、約100ナノメートルを含む、1ミクロンより短い長さとすることもできる。また、CNTは、例えば、510ミクロン,520ミクロン,550ミクロン,600ミクロン,700ミクロン及びこれらの間の全ての値を含む、500ミクロンより長い長さとすることもできる。レーダー吸収用途に関して、CNTの長さは、約5から約250ミクロンの間で変化させることができる。
【0046】
本発明のレーダー吸収複合材料には、約100ナノメートルから約10ミクロンまでの長さのCNTを組み込むことができる。このようなCNTの長さは、せん断強度(shear strength)の向上に有用となりえる。また、CNTは、約5から約70ミクロンまでの長さとすることができる。このようなCNTの長さは、CNTが繊維方向に配列された場合、抗張力(tensile strength)の向上に有用となりえる。また、CNTは、約10ミクロンから約100ミクロンまでの長さとすることができる。このようなCNTの長さは、電気/熱伝導性及び機械的性質の向上に有用となりえる。また、本発明で使用される処理は、約100ミクロンから約500ミクロンまでの長さを有するCNTを提供することができるが、これは電気的及び熱的性質を向上させるのに有用となりえる。上記の長さのCNTを有する複数の材料からなる複合材料は、レーダー吸収に有用である。
【0047】
このようにして、CNT浸出繊維材料は、多機能となり、レーダー吸収複合材料全体の他の多くの性質を強化することができる。ある実施形態において、巻取り可能な長さのCNT浸出繊維材料を含む複合材料は、CNTの長さが異なる様々な均一な領域を有することができる。例えば、せん断強度性能を向上させるための均一な短いCNTを備えたCNT浸出炭素繊維材料である第1部分と、レーダー吸収性能を向上させるための均一な長いCNTを備えた巻取り可能な長さの前記材料である第2部分と、を有するのが望ましいことがある。例えば、CNT浸出繊維材料において、レーダー吸収複合材料の少なくとも一部に上記の短いCNTを提供することによって、機械的強化が得られる。複合材料は、レーダー吸収のためにレーダー吸収複合材料の表面に長いCNTを、そして機械的強化のために前記表面の下方に配置された短いCNTを有する外板の形態をとることができる。CNTの長さの制御は、炭素原料と、様々なラインスピード及び成長温度と一体となった不活性ガスの流量と、を調整することにより容易に行われる。これによって、同一の巻取り可能な長さの繊維材料の異なる部分でCNTの長さを変えること、又は複合材料構造の適切な部分に異なるスプールを用いることが可能となる。
【0048】
本発明のレーダー吸収複合材料は、CNT浸出繊維材料とともに複合材料を形成するマトリクス材を含む。このようなマトリクス材として、例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フェノールホルムアルデヒド及びビスマレイミドが含まれる。本発明において有用なマトリクス材として、周知のマトリクス材のいずれもが含まれる(Mel M. Schwartz, Composite Materials Handbook(2d ed. 1992)参照)。さらに、マトリクス材として、熱硬化性及び熱可塑性の樹脂(ポリマー)の両方、金属、セラミック及びセメントが含まれる。
【0049】
マトリクス材として有用な熱硬化性樹脂には、フタル酸/マレイン酸型のポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール樹脂、シアン酸塩、ビスマレイミド及びナディック末端封止ポリイミド(nadic end-capped polyimide, PMR-15等)が含まれる。熱可塑性樹脂として、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレン酸化物、ポリ硫化物、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート及び液晶ポリエステルが含まれる。
【0050】
マトリクス材として有用な金属には、アルミニウム6061,2024及び713アルミニウムブレーズ(aluminum braze)等のアルミニウム合金が含まれる。マトリクス材として有用なセラミックには、リチウムアルミノケイ酸塩等のカーボンセラミック、酸化アルミニウム及びムライト等の酸化物、窒化ケイ素等の窒化物及び炭化ケイ素等の炭化物が含まれる。マトリクス材として有用なセメントには、炭化物ベースのセメント(炭化タングステン、炭化クロム及び炭化チタン)、耐火セメント(タングステントリア(tungsten-thoria)及び炭酸バリウム−ニッケル(barium-carbonate-nickel))、クロム−アルミナ、ニッケル−マグネシア、及び鉄−炭化ジルコニウムが含まれる。上記のマトリクス材はいずれも単独で又は組み合わせて用いることができる。セラミック又は金属マトリクス複合材料は、性質制御材料からの利益を享受するスラストベクトル表面(thrust vectoring surface)等の高温用途で使用することができる。
【0051】
ある実施形態において、レーダー吸収複合材料は、多数の遷移金属ナノ粒子をさらに含むことができる。この遷移金属ナノ粒子は、ある実施形態において、潜在的な触媒としてCNT成長処理から存在することができる。理論に拘束されるものではないが、CNT形成触媒としての役割を果たす遷移金属NPは、CNT成長核構造(CNT growth seed structure)を形成することにより、CNT成長に触媒作用を及ぼすことができる。CNT形成触媒は、繊維材料の基部に留まることができ、存在する場合にはバリア・コーティングにより固定され(下記参照)、繊維材料の表面に浸出される。このような場合において、遷移金属ナノ粒子触媒により初期に形成された前記核構造は、当該技術分野でしばしば観測されるように、CNT成長の先端に沿って触媒を移動させることなく、非触媒核CNT成長(non-catalyzed seeded CNT growth)を継続させるのに十分である。このような場合、NPは、繊維材料へのCNTの付着点としての役割を果たす。また、バリア・コーティングの存在により、CNT浸出のためのさらなる間接的な結合モチーフがもたらされる。例えば、CNT形成触媒は、上記の通り、バリア・コーティング内に固定することができるが、繊維材料とは表面接触していない。このような場合、CNT形成触媒と繊維材料との間にバリア・コーティングが配置されたスタック構造が生じる。いずれの場合も、形成されたCNTは繊維材料に浸出される。ある実施形態において、いくつかのバリア・コーティングは、CNT成長触媒を成長中のナノチューブの先端に追随させる。このような場合、CNTは繊維材料に直接結合するか、又は随意にバリア・コーティングへの結合が生じる。カーボンナノチューブと繊維材料との間に形成された実際の結合モチーフの性質に関わらず、浸出されたCNTは強固なため、CNT浸出繊維材料がカーボンナノチューブの性質又は特性を示すことができる。
【0052】
バリア・コーティングが存在しない場合、潜在的なCNT成長粒子は、カーボンナノチューブの基部、ナノチューブの頂部、この間のどこか及びこれらの複数の箇所に現れることがある。さらに、繊維材料へのCNTの浸出は、介在する遷移金属ナノ粒子を介した直接的又は間接的なものであってもよい。ある実施形態において、潜在的なCNT成長触媒は、鉄ナノ粒子を含む。これらは、例えば、ゼロ価鉄、鉄(II)、鉄(III)及びこれらの混合物等の様々な酸化状態であってもよい。CNT成長以来の潜在的な鉄ベースのナノ粒子の存在は、複合材料全体のレーダー吸収特性をさらに補助することができる。
【0053】
ある実施形態において、成長後のCNT浸出繊維を、鉄、フェライト又は鉄ベースのナノ粒子溶液に通過させることができる。CNTは、性質制御をさらに補助する大量の鉄ナノ粒子を吸収することができる。したがって、この追加的な処理ステップは、鉄球塗装と類似した仕組みによりレーダー吸収を向上させる補助的な鉄ナノ粒子を提供する。
【0054】
本発明のレーダー吸収複合材料は、レーダー周波数帯域の全てのスペクトルに亘って、レーダーを吸収することができる。ある実施形態において、前記複合材料は、高周波数レーダーを吸収することができる。高周波数(FH)レーダー帯域は、約3から約30MHz(10〜100m)までの周波数を有する。このレーダー帯域は、沿岸レーダー(coastal radar)及び水平線越え(over-the-horizon, OTH)レーダー用途に有効である。ある実施形態において、複合材料は、P帯域のレーダーを吸収することができる。これは、約300MHz未満のレーダー周波数を含む。ある実施形態において、複合材料は、超高周波数(very high frequency, VHF)帯域のレーダーを吸収することができる。VHFレーダー帯域は、約30から約330MHzまでの周波数を含む。VHF帯域は、地中探知用途を含む超長距離用途に有用である。ある実施形態において、複合材料は極超高周波数(ultra high frequency, UHF)帯域のレーダーを吸収することができる。UHF帯域は、約300から約1000MHzまでの周波数を含む。UHF帯域の用途は、弾道ミサイル早期警戒システム、地中探知及び森林貫通用途等の超長距離用途を含む。ある実施形態において、複合材料は、ロング(L)帯域のレーダーを吸収することができる。L帯域は、約1から約2GHzまでの周波数を含む。L帯域は、例えば、航空管制及び監視を含む長距離用途に有用である。ある実施形態において、複合材料はショート(S)帯域のレーダーを吸収することができる。S帯域は、約2から約4GHzの範囲の周波数を含む。S帯域は、ターミナル航空管制、長距離の気象レーダー及び航海用レーダー等の用途に有用である。ある実施形態において、複合材料は、約4から約8GHzまでの周波数を有するC帯域のレーダーを吸収することができる。C帯域は、衛星トランスポンダー及び気象利用に使用されている。ある実施形態において、複合材料は、約8から約12GHzまでの周波数を有するX帯域のレーダーを吸収することができる。X帯域は、ミサイル誘導、航海用レーダー、気象、中分解能マッピング(medium-resolution mapping)及び地上監視等の用途に有用である。ある実施形態において、複合材料は、約12から約18GHzまでの周波数を含むK帯域のレーダーを吸収することができる。K帯域は、気象学者による測雲(detecting cloud)及び警察によるK帯域レーダーガンを用いたスピード違反探知のために使用されている。ある実施形態において、複合材料は、約24から約40GHzまでの周波数を含むKa帯域のレーダーを吸収することができる。Ka帯域は、信号機においてカメラを動作させる等のレーダー式速度違反取締装置(photo radar)に使用することができる。
【0055】
ある実施形態において、複合材料は、約40から約300GHzまでの広い範囲のミリメートル(mm)帯域のレーダーを吸収する。mm帯域は、軍事通信に使用される約40から約60GHzまでのQ帯域、大気中の酸素により大幅に吸収される約50から約75GHzまでのV帯域、約60から約90GHzまでのE帯域、実験用自律走行車(experimental autonomous vehicle)、高分解能気象観測(high-resolution meteorological observation)及び画像化(imaging)のための視覚センサーとして使用される約75から約110GHzまでのW帯域並びに壁透過レーダー(through-the-wall radar)及び画像化システム(imaging system)に使用される約1.6から約10.5GHzまでのUWB帯域を含む。
【0056】
ある実施形態において、複合材料は、レーダー吸収複合材料の約1重量%から約5重量%までのCNTを含む。ある実施形態において、CNT充填量をレーダー吸収複合材料の約1重量%から約20重量%までとすることができる。ある実施形態において、レーダー吸収複合材料中のCNT充填量は、レーダー吸収複合材料の1重量%,2重量%,3重量%,4重量%,5重量%,6重量%,7重量%,8重量%,9重量%,10重量%,11重量%,12重量%,13重量%,14重量%,15重量%,16重量%,17重量%,18重量%,19重量%及び20重量%とすることができ、これらの値の間のいずれの値も含む。また、レーダー吸収複合材料中のCNT充填量は、例えば、約0.001%から約1%までの範囲を含む、1%より小さい値とすることもできる。また、レーダー吸収複合材料中のCNT充填量を、例えば、25%、30%、40%等から最大で約60%までとこれらの間の全ての値を含む、20%より大きい値とすることもできる。
【0057】
ある実施形態において、レーダー吸収複合材料は、カーボンナノチューブ(CNT)浸出炭素繊維材料を含む。また、CNT浸出炭素繊維材料は、巻取り可能な寸法の炭素繊維材料、炭素繊維材料の周囲に沿って配置されたバリア・コーティング及び炭素繊維材料に浸出されたカーボンナノチューブ(CNT)を含む。炭素繊維材料へのCNTの浸出は、炭素繊維材料への個別のCNTの直接的結合又は遷移金属NP、バリア・コーティングもしくはその両方を介した間接的結合の結合モチーフを含む。
【0058】
本発明のCNT浸出炭素繊維材料はバリア・コーティングを含むことができる。バリア・コーティングは、例えば、アルコキシシラン、メチルシロキサン、アルモキサン(alumoxane)、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子を含む。CNT形成触媒を、未硬化バリア・コーティング材料に添加し、それからまとめて炭素繊維材料に適用することができる。他の実施形態において、CNT形成触媒を付着させる前に、バリア・コーティング材料を炭素繊維材料に適用することができる。バリア・コーティング材料の厚さは十分に薄くして、これにより炭素原料へのCNT形成触媒の暴露後もCVD成長が可能となる。ある実施形態において、前記厚さは、CNT形成触媒の有効径より薄いか略等しい。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、約10nmから約100nmまでである。また、バリア・コーティングを、1nm,2nm,3nm,4nm,5nm,6nm,7nm,8nm,9nm,10nm及びこれらの間のいずれの値も含む10nmより小さい値とすることができる。
【0059】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、炭素繊維材料とCNTとの間の中間層の役割を果たすことができ、炭素繊維材料へのCNTの機械的に浸出を提供することができる。このような機械的浸出は、炭素繊維材料にCNTの特性をまだ与えている間にでも、炭素繊維材料がCNTを形成するための基盤(platform)として機能する強固な体制を提供する。その上、バリア・コーティングを含むことの利益は、炭素繊維材料を、蒸気にさらすことによる化学損傷又はCNT成長を促進するために用いられる温度で炭素繊維材料を加熱することによる熱損傷からの直接的な保護を含む。
【0060】
炭素繊維材料上にCNTが成長する時、上昇した温度又は反応チャンバー内に存在し得る残留した酸素もしくは蒸気は、炭素繊維材料を損傷することがある。その上、炭素繊維材料は、CNT形成触媒との反応によっても損傷されることがある。すなわち、炭素繊維材料は、CNT合成のために用いられる反応温度で、触媒に対する炭素原料として機能することがある。このような過剰炭素は、炭素原料ガスの制御導入を妨げ、触媒に炭素を過剰に充填することで触媒の汚染につながることさえある。本発明で採用されたバリア・コーティングは、炭素繊維材料上のCNT合成を促進するように設計される。理論に拘束されるものではないが、前記コーティングは、熱分解に対する熱障壁を提供することができ、高温環境に炭素繊維材料がさらされるのを妨げる物理的障壁となり得る。これに代えて又はこれに加えて、前記コーティングは、CNT形成触媒と炭素繊維材料との間の表面領域接触を最小化し又はCNT成長温度におけるCNT形成触媒への炭素繊維材料の暴露を軽減することができる。
【0061】
繊維を形成するために使用される前駆体に基づき、炭素繊維は3種類に分類され、本発明においては、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)及びピッチ(Pitch)のいずれの繊維も使用することができる。セルロース系材料であるレーヨン前駆体の炭素繊維は、約20%と比較的低い炭素含有量を有し、繊維は低い強度及び剛性を有する傾向がある。ポリアクリロニトリル(PAN)前駆体は、約55%の炭素含有量の炭素繊維を提供する。通常、PAN前駆体に基づく炭素繊維は、表面欠陥が最小であるため、他の炭素繊維前駆体に基づく炭素繊維より高い抗張力を有する。
【0062】
また、石油アスファルト、コールタール及びポリ塩化ビニルに基づくピッチ前駆体は、炭素繊維を製造するために使用できる。ピッチは、比較的低コストで炭素収率(carbon yield)が高いが、不均一性の問題が生じることがある。
【0063】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料はガラス繊維材料を含む。CNT浸出ガラス繊維材料は、上記のバリア・コーティングを付加的に用いることはできるが、バリア・コーティングを組み込む必要はない。ガラス繊維材料に使用されるガラスの種類は、例えば、E−ガラス、A−ガラス、E−CR−ガラス、C−ガラス、D−ガラス、R−ガラス及びS−ガラスを含むいずれの種類であってもよい。E−ガラスは、アルカリ酸を1重量%未満有するアルミノホウケイ酸塩ガラスを含み、主にガラス強化プラスチックに使用される。A−ガラスは、酸化ホウ素をほとんど又は全く含まないアルカリライム(alkali-lime)ガラスを含む。E−CR−ガラスは、アルカリ酸を1重量%未満有するアルミノライムケイ酸塩(alumino-lime silicate)を含み、高い耐酸性を有する。C−ガラスは、高い酸化ホウ素含有量を有するアルカリライムガラスを含み、例えばガラスステープル繊維(glass staple fiber)に使用される。D−ガラスは、ホウケイ酸ガラスを含み、高い誘電体含有量を有する。R−ガラスは、MgO及びCaOを持たないアルミノケイ酸塩ガラスを含み、高い機械的強度を有する。S−ガラスは、CaOを含まずMgOを豊富に含むアルミノケイ酸塩ガラスを含み、高い抗張力を有する。3種類のガラスのうちの1つ以上は、上記のガラス繊維材料に加工することができる。特定の実施形態において、ガラスはE−ガラスである。他の実施形態において、ガラスはS−ガラスである。
【0064】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料はセラミック繊維材料を含む。セラミック繊維材料が使用された場合、ガラスと同様に、バリア・コーティングの使用は任意的なものである。セラミック繊維材料に使用されるセラミックの種類は、例えば、アルミナ及びジルコニア等の酸化物と、炭化ホウ素、炭化ケイ素及び炭化タングステン等の炭化物と、窒化ホウ素及び窒化ケイ素等の窒化物と、を含むいずれの種類であってもよい。他のセラミック繊維材料として、例えば、ホウ化物及びケイ化物を含む。また、セラミック繊維は、玄武岩繊維材料(basalt fiber material)を含んでもよい。セラミック繊維材料は、他の種類の繊維との複合材料であってもよい。また、織物様(fabric-like)セラミック繊維材料に、例えば、ガラス繊維を組み込むことは一般的に行われる。
【0065】
CNT浸出繊維材料は、フィラメント、ヤーン、トウ、テープ、繊維ブレイド(fiber-braid)、織物製品(woven fabric)、不織布マット(non-woven fabric mat)、繊維プライ(fiber ply)及び他の3D織物構造を含んでもよい。フィラメントは、約1ミクロンから約100ミクロンまでの範囲の直径を有する高アスペクトの繊維を含む。繊維トウは、概してフィラメントを密にまとめた束であり、一般に、ヤーンを形成するために互いにより合わされる。
【0066】
ヤーンは、より合わされたフィラメントの密にまとめられた束を含む。ヤーンに含まれるそれぞれのフィラメントの直径は、比較的均一である。ヤーンは、1000リニアメートル(linear meter)あたりのグラム重量として表される「テックス(tex)」又は10,000ヤードあたりのポンド重量として表される「デニール(denier)」で示される様々な重量を有する。この値は、使用されている正確な繊維材料によって決まるが、一般的なテックスの範囲は、約200テックスから約2000テックスまでである。
【0067】
トウは、より合わされていないフィラメントのゆるくまとめられた束を含む。ヤーンのように、トウに含まれるフィラメントの直径は一般的に均一である。また、トウは、様々な重量を有し、テックスの範囲は通常200テックスから2000テックスである。しばしば、トウに含まれる数千本のフィラメントの本数によって、例えば、12Kトウ、24Kトウ及び48Kトウ等と特徴付けられる。また、この値は、使用されている繊維材料の種類に応じて変化する。
【0068】
テープは、波状にまとめられた材料又は不織布の扁平トウである。テープの幅は様々であり、一般にリボンのような両面構造(two-sided structure)である。本発明の処理は、テープの片面又は両面でのCNT浸出に対応する。CNT浸出テープは、平らな基板表面上の「カーペット」又は「森」のようであってもよい。また、本発明の処理は、テープのスプールを機能化(functionalize)するために連続モードで行うことができる。
【0069】
繊維ブレイドは、炭素繊維の稠密なロープ様(rope-like)構造を示す。このような構造は、例えば、ヤーンにより形成することができる。編み上げ構造(braided structure)は、中空部分(hollow portion)を含んでもよく、又は他のコア材料の周りに形成されてもよい。
【0070】
ある実施形態において、主要な繊維材料構造の多くは、織物又はシート状構造にまとめられる。これには、例えば、上記のテープに加えて、織物製品、不織繊維マット(non-woven fiber mat)及び繊維プライが含まれる。このような高い秩序構造は、親繊維に浸出されたCNTを有する元のトウ、ヤーン又はフィラメント等から形成することができる。あるいは、このような構造は、本明細書に記載されるCNT浸出処理のための基板としての役割を果たすことができる。
【0071】
図1〜6は、本明細書に記載された処理により形成された炭素繊維材料上に形成されたCNTのTEM及びSEM画像を示す。これらの材料を形成するための手順は、以下の実施例I〜IIIにさらに詳細に記載される。これらの図及び手順は、炭素繊維材料の処理を例示するが、当業者は、ガラス又はセラミック等の他の繊維材料を、これらの処理から大幅に逸脱することなく採用することができることを理解するだろう。図1及び図2は、それぞれ、連続処理においてAS4炭素繊維上に形成された多層及び二層カーボンナノチューブのTEM画像を示す。図3は、炭素繊維材料表面にCNT形成ナノ粒子触媒が機械的に浸出された後に、バリア・コーティングの内側から成長したCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図4は、炭素繊維材料上に目標長約40ミクロンの20%以内まで成長したCNTの長分布の一貫性を明示するSEM画像を示す。図5は、CNT成長に対するバリア・コーティングの効果を明示するSEM画像を示す。バリア・コーティングが施された部分では高密度かつ良好な配列のCNTが成長し、バリア・コーティングが存在しない部分ではCNTは成長しなかった。図6は、繊維全域における約10%以内のCNT密度の均一性を明示する炭素繊維上のCNTの低倍率SEM画像を示す。
【0072】
図7には、本発明のある実施形態による、複合材料100の概略断面図が図示されている。複合材料100は、例えば、望ましいレーダー吸収特性を有する航空機部品等の組立構造に適している。複合材料100は、マトリクス140中に存在し得るトウ又はロービング等の多数の繊維又はフィラメント110を含む。繊維110は、カーボンナノチューブ120を浸出される。例示的な実施形態において、繊維110は、ガラス(例えば、E−ガラス、S−ガラス、D−ガラス)繊維であってもよい。他の実施形態において、繊維110は、炭素(グラファイト)繊維であってもよい。また、ポリアミド(芳香族ポリアミド、アラミド)(例えば、ケブラー29及びケブラー49)、金属繊維(例えば、鉄、アルミニウム、モリブデン、タンタラム、チタン、銅及びタングステン)、炭化タングステン、セラミック繊維、金属的セラミック繊維(例えば、ケイ酸アルミニウム)、セルロース繊維、ポリエステル、石英及び炭化ケイ素等の他の繊維が使用されてもよい。本明細書に記載される炭素繊維に関するCNT合成処理は、全ての種類の繊維上でのCNT合成に用いることができる。ある実施形態において、触媒粒子と金属繊維との合金化等の望ましくない化学反応を避けるため、触媒粒子を適用する前に、金属繊維を適切なバリア・コーティングで被覆することができる。このように、金属繊維材料を採用する場合、前記処理は、炭素繊維材料に使用される処理と並行させることができる。また同様に、熱に敏感なアラミド繊維は、CNT成長の間に採用される一般的な温度から繊維材料を保護するために、バリア・コーティングを用いることができる。
【0073】
例示的な実施形態において、カーボンナノチューブ120は、繊維110の外面から略垂直に成長し、これによって、それぞれの繊維110の半径方向に被覆してもよい。カーボンナノチューブ120は、繊維110上にその場成長してもよい。例えば、ガラス繊維110は、約500℃から750℃の所定温度に維持された成長チャンバーに送り込まれてもよい。炭素含有供給ガスは、成長チャンバー内に導入され、ここで触媒ナノ粒子存在下で炭素ラジカルが解離し、ガラス繊維上でのカーボンナノチューブの形成を開始する。
【0074】
図13は、本発明による例示的なRAMパネル1300を示す。RAMパネル1300は、CNT浸出繊維ベースレーダー吸収体の断面図を示す。第1層1310は、入射EM波(レーダー)と接触し、空気と同様の誘電率を有する。ある実施形態において、第1層1310は、ガラス繊維複合材料とすることができる。第1層1310の厚さは、CNT浸出繊維材料が多く充填された第2層1320の屈折率が与えられる4分の1波長の法則が活用可能な大きさに調整される。対象とする特定のEM波長及び結果として得られる望ましい屈折率に応じて、この構造においては、1%〜60%のCNT量を目標とすることができる。高CNT含有量は、高誘電率、すなわち入射したEM波をよく反射するであろう、より伝導性の高い材料を提供する。この反射された波は、適切な大きさに形成された第1層1310により内部反射され、熱として消散される。
【0075】
図14は、他の例示的なRAMパネル1400を示す。RAMパネル1400は、多層CNT浸出繊維ベースレーダー吸収体の断面図を示す。このような実施形態では、それぞれの連続した層に様々な量のCNTを用いることによって、1つのパネル構造を使用して内部反射及び多重波の消散を誘導する。RAMパネル1400は、入射EM波に暴露される第1層1410、中間層1420及び第2層1430を有する。中間層1420は、第1層から第2層に向けてCNT含有量が増加する複合した中間層として存在することができるということは、当業者には明らかであろう。この形態が連続して、第1層1410は、空気と同様の誘電率を有することにより波長透過が可能となる。結果として、この材料は、複合材料構造の0〜1重量%という低い%のCNTを有する。第1層1410は、EM波の入射波長及び中間層1420の屈折率に応じた全内部反射を得るために、その厚さを4分の1波長理論の利益を享受できる大きさに調整される。中間層は、複合材料中の0.1〜5重量%のCNTから構成され、第2層1430の屈折特性又は対象とする波長を使用した全ての連続中間層に応じて、同様にその大きさを調整される。第2層1430は、1〜60%と最も高い重量%のCNTから構成され、第1層及び中間層と同様に大きさを調整される。第2層1430は、最も反射率の高い表面を提供するために、略最大限にCNTを充填されている。
【0076】
ある実施形態において、CNTは、繊維に沿って連続密度勾配で、繊維材料に浸出される。このような実施形態は、図14に示したものと類似している。連続勾配RAM構造は、結果として得られる巻構造(wound structure)が、目標とされる特定の深さにおいて、対象とする全スペクトルに亘ってより均一にEM波を吸収及び内部反射するのに適した常に変化するCNTの量を含むように、CNTの量が連続的に変化した繊維材料を使用する。連続変化構造により、特定のピークを目標にしたRAMの代わりに、広いスペクトルに亘って高効率なレーダー吸収体の製造が可能となる。これは、図14に記載された層配置により可能とされる。
【0077】
一構成において、複合材料100を形成するために、CNT浸出繊維110は樹脂槽(resin bath)に送られる。他の構成において、織物(fabric)はCNT浸出繊維110から織られ、織物は樹脂槽に順々に送られる。樹脂槽は、CNT浸出繊維110及びマトリクス140を含んで構成される複合材料100の製造のための全ての樹脂を含むことができる。一構成において、マトリクス140はエポキシ樹脂マトリクスの形態をとってもよい。他の構成においてマトリクス140は、汎用ポリエステル(オルトフタル酸ポリエステル等)、改良ポリエステル(イソフタル酸ポリエステル等)、フェノール樹脂、ビスマルイミド(BMI)樹脂、ポリウレタン及びビニルエステルのいずれか1つであってもよい。マトリクス140はまた、航空宇宙又は軍事用途等の高動作温度における性能が要求される用途に有用な非樹脂マトリクス(例えば、セラミックマトリクス)の形態をとることもできる。当然のことながら、マトリクス140はまた、金属マトリクスの形態をとることができる。
【0078】
樹脂マトリクスを使って含浸CNT浸出繊維110又はこれの織物を作るための真空補助樹脂浸出法(vacuum assisted resin infusion method)や樹脂押出法(resin extrusion method)等の周知の複合材料製造方法が適用されてもよい。例えば、CNT浸出繊維110又はこの織物は、型にはめられてもよく、樹脂はそこで浸出されてもよい。他の構成において、CNT浸出繊維110又はこの織物は、型に入れられ、その後、真空にされた型から樹脂が引き抜かれてもよい。他の構成において、CNT浸出繊維110は、巻付けにより0/90配向に織られてもよい。これは、例えば、垂直方向等の第1方向にCNT浸出繊維100の第1層又はパネルを巻付け、そして水平方向等の第1方向に対して約90°の第2方向にCNT浸出繊維110の第2層又はパネルを巻つけることにより行われる。この0/90配向により、複合材料100にさらなる構造的強度を加えられる。
【0079】
カーボンナノチューブ120を浸出された繊維110は、複合材料100を形成するために熱硬化性プラスチックマトリクス(例えば、エポキシ樹脂マトリクス)に組み込むことができる。マトリクスに繊維を組み込む方法は、当該技術において周知である。一構成において、CNT浸出繊維110は、高圧硬化法(high pressure curing method)を使用してマトリクス140に組み込むことができる。複合材料のCNT充填は、所定の複合材料中のカーボンナノチューブの重量パーセントを示す。CNTベース複合材料を製造するための当該技術分野において周知な処理は、遊離(すなわち巻取り可能な長さの繊維に結合されていない)カーボンナノチューブを初期の複合材料の樹脂/マトリクスに直接混合することを含む。このような処理の結果得られる複合材料は、非常に高い粘度増加等の要因により、完成した複合材料におけるカーボンナノチューブの重量パーセントが最大で約5重量パーセントに制限されることがある。一方、複合材料100は、上記の通り、25重量%を上回るCNT充填を有してもよい。CNT浸出繊維110を使用して、60重量パーセントにまで達したCNT充填を有する複合材料が実証されている。材料のレーダー吸収特性は、1つには、その電気伝導性によって決まる。複合材料100全体の電気伝導性は、1つには、複合材料100のCNT充填の関数である。
【0080】
CNT浸出繊維が組み込まれた上記複合材料100は、例えば、宇宙航空や潜水艦のための電磁特性又はレーダー吸収特性を備えた部品の形成に適切である。複合材料100は、赤外線(約700nmから約15センチメートル)、可視光(約400nmから約700ナノメートル)及び紫外線(約10nmから約400nm)放射を含むレーダースペクトルの電磁波放射を効率的に吸収することが実証されている。
【0081】
例えば、重量及び強度特性が望ましい複合材料構造の場合、その比較的不十分な性質制御又はレーダー吸収特性のために、宇宙航空部品の形成にはしばしば適さない。例えば、炭素繊維複合材料は、一般にレーダー波を反射するため、比較的不十分な性質制御となる。一方、ガラス繊維材料は、一般にレーダー波を透過させる。しかしながら、これは一般に本質的には誘電体であり、不十分な電気及び熱伝導性を有する。炭素繊維複合材料及びガラス繊維複合材料をCNTへ組み込むことで、複合材料のレーダー波吸収性は効果的に向上する。ガラス繊維複合材料の場合、組み込まれたCNTはまた、結果として得られる複合材料の熱及び電気伝導性をも向上させる。したがって、CNT浸出繊維110を有する複合材料100は、複合材料に付随する低い重量強度比(weight to strength ratio)等の望ましい特性は維持したまま、性質制御特性を向上させる。レーダー吸収体としての複合材料の有効性は、複合材料におけるカーボンナノチューブの重量パーセントを調整することにより調整することができる。理論に制限されないが、組み込まれたCNTは、鉄球塗装中に使用される鉄ナノ粒子と同様の方法でレーダー波を吸収することができる。
【0082】
図8に関して、CNT浸出繊維材料200の断面図が概略図示されている。繊維材料200は、付加的にマトリクスを含むことができる。マトリクス材の有無に関わらず、CNT浸出繊維材料200は、先に形成された複合材料の表面に適用し、これによって複合材料のレーダー吸収又は性質制御を大幅に向上させることができる。ある実施形態において、先に形成された複合材料はそのままだと低い性質制御を示す。しかしながら、その表面に配置されたCNT浸出繊維材料は、十分なレーダー吸収度を付与し、良好な性質制御を提供することができる。CNT浸出繊維材料200は、先に形成された複合材料の周りに巻付けられるか紡がれる。ある実施形態において、複合材料にマトリクス材を配置するCNT浸出繊維材料200にはマトリクス材が予め存在しなかったところに、マトリクス材は配置される。その上、このようにして加えられたマトリクス材料は、予め形成された材料と同一又は同様の強い結合を促進する特性を示すことができる。
【0083】
CNT浸出繊維材料200は、トウ又はロービング等の繊維材料210中に多数の繊維を含む。カーボンナノチューブ120は繊維材料210に浸出される。近接したカーボンナノチューブ120間でのファンデルワールス力は、CNT120間の相互作用を大幅に向上させる。これにより、ある実施形態において、フィラメント同士を結合又は付着させることができるカーボンナノチューブ120のCNT「相互嵌合」がもたらされる。例示的な実施形態において、CNT浸出繊維材料200を強固にするために繊維材料210に圧力をかけることにより、カーボンナノチューブ120の相互嵌合がさらに生じてもよい。このフィラメント同士の結合は、樹脂マトリクスが無い状態で、繊維トウ、テープ及び模様(weave)の形成を促進することができる。フィラメント同士の結合は、従来の繊維トウ複合材料に用いられているようなフィラメント樹脂結合と比べてせん断力及び抗張力も向上させることができる。このようなCNT浸出繊維トウから形成された複合繊維材料は、高い層間せん断強度(interlaminar shear strength)、抗張力及び軸外強度(out-of-axis strength)にともなう良好な性質制御又はレーダー吸収特性を示す。ある実施形態において、CNTは有用なレーダー吸収特性を供給するために完全に相互嵌合する必要はない。例えば、パーコレーション経路は、CNT間の一点での接触により形成することができる。
【0084】
一構成において、CNT浸出繊維材料200は、従来の複合材料に良好な性質制御を提供するために、ガラス繊維複合材料パネル又は炭素繊維複合材料パネル等の従来の複合材料の表面にコーティングとして適用することができる。一構成おいて、CNT浸出材料200は、複合材料構造のレーダー吸収又は性質制御特性を向上させるために複合材料構造の周りに巻つけられてもよい。樹脂マトリクス等のマトリクスのコーティングは、外部環境からCNT浸出複合材料繊維200を保護するために複合材料の表面に適用されたCNT浸出繊維材料200の1つ以上の層又はこれからなる織物製品に適用することができる。多層CNT浸出繊維材料は、レーダー吸収を変化させる複数のCNT配向、長さ及び密度を提供するように配置して、異なる波長帯域のレーダーを吸収し、異なる角度から構造全体に衝突するレーダー源からのレーダーを吸収することができる。
【0085】
図9には、複合材料350の上面355上に配置された浸出されたCNTを有する繊維材料210のコーティング層が概略記載されている。複合材料350は、例えば、従来の複合ガラス又はガラス強化プラスチックの形態をとってもよい。他の構成において、複合材料350は、炭素繊維複合材料構造又は炭素繊維強化プラスチック構造の形態をとってもよい。複合材料350は、そのままでは良好なレーダー吸収又は性質制御特性が要求される用途への使用には、通常は適さない。しかしながら、複合材料350の表面355上に、浸出されたCNTを有する繊維材料210のコーティング又は層230を適用することにより、合成物(複合材料350及びCNT浸出繊維の合成物)は、大幅に向上したレーダー吸収及び性質制御特性を示す。例示的な実施形態において、繊維210は、樹脂マトリクス等のマトリクスにカーボンナノチューブ220が浸出された繊維トウであってもよい。さらに他の例示的な実施形態において、繊維210は、複合材料350の上面355に適用可能な織物の形態に織られてもよい。
【0086】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料200は、織物の形態に織られてもよい。一構成において、繊維のコーティングの厚さは、CNT浸出繊維の単層として約20ナノメートル(nm)から、CNT浸出繊維の多層として約12.5mmまでの範囲とすることができる。図示された実施形態は、単純化の目的で繊維の単層を示すが、当然のことながら、複合材料350上のコーティングを形成するために繊維の多層を使用することができる。
【0087】
CNT浸出繊維材料200を使用する利点は、当該複合材料が有する重量強度比率並びに他の望ましい機械的及び構造的特性等の利点を維持しながら、低観測性用途のために、近いレーダー吸収又は性質制御の特性を持つ従来の複合材料とともに使用することができることである。
【0088】
CNT浸出繊維材料200の層又はコーティングは、複合材料構造のレーダー吸収又は性質制御特性を向上させるために、航空機の翼構造の先端部等の複合材料構造の表面に配置することができる。このような、従来の複合材料へのCNT浸出繊維材料200の層又はコーティングを使用することにより、例えば、航空機の翼構造及び他の部品の形成のために従来の複合材料を使用すること並びに低観測特性を備えたままで、同時に航空機の重量を大幅に軽減することが容易になる。
【0089】
図10には、例示的な実施形態による、コーティングシステム400が図示されている。システム400は、上流繊維源からのCNT浸出繊維110を受け取る。例示的な実施形態において、CNT浸出繊維は、カーボンナノチューブ120が繊維材料上に浸出される成長チャンバーから直接コーティングシステム400に誘導される。CNT浸出繊維110は、CNT浸出繊維110をさらに処理するために浴槽410に収められている化学溶液420に浸される。CNT浸出繊維110は、2つのガイドローラー440,450により導かれる。浴槽ローラー430は、CNT浸出繊維110を溶液420中に浸す。例示的な実施形態において、溶液420は、鉄ベースナノ粒子溶液である。一構成において、溶液420は、200のヘキサン溶媒に対して1の体積の鉄ベース溶質を含む。CNT浸出繊維110上のカーボンナノチューブ120は、鉄ナノ粒子を吸収し、これにより、CNT浸出繊維110及びこれから形成された複合材料のレーダー吸収又は性質制御特性がさらに向上する。当然のことながら、CNT浸出繊維110から形成された幅広の織物は、鉄ベースナノ粒子を組み込むために同様の処理をされてもよい。
【0090】
ある実施形態において、レーダー吸収複合材料は、制御された方法で繊維材料に浸出されたCNTを含むことができる。例えば、CNTは、繊維材料のそれぞれの繊維要素の周りに、半径方向に高密度に成長してもよい。他の実施形態において、CNTは、さらに後成長(post growth)処理を施して繊維軸に沿って直線状に配列させることができる。CNT浸出複合材料コーティングを製造するために、1〜15ミクロンの従来の繊維を、合成のための表面として使用することができる。様々な表面改質技術及び付加的なコーティングは、繊維を保護又は繊維と触媒との接触面を改良するために使用することができる。触媒被覆は、スプレー、浸漬及び気相処理をいくらでも用いて施される。触媒の層が堆積すると、大気圧成長システムにおけるCVDベース成長処理の間に、触媒還元及びCNT成長が同時に連続的に生じる。CNTの1つの層が成長した後、半径方向(成長したまま)のCNTを繊維の方向に配列するために、本特許出願で言及された方法に限られないさらなる技術が用いられなければならない。概略記載される3つの技術及びこれらの組み合わせを、この配列を行うために使用することができる。3つの技術は以下に記載される。
【0091】
電気機械的技術−成長処理中に、繊維に平行に並んだ電場又は磁場を使用し、適用した力場によりCNTが配列するように誘導することができる。
【0092】
機械的技術−押出(extrusion)、引抜(pultrusion)、ガス圧補助ダイス(gas pressure aided dies)、従来のダイス及びマンドレルを含む様々な機械的技術は、繊維の方向へせん断力を加えて、配列を誘導するために使用することができる。
【0093】
化学的技術−溶媒、界面活性剤及びマイクロエマルション(micro-emulsion)を含む化学物質は、シージング効果(sheathing effect)により、これらの化学物質から引き出された材料として認められた繊維の方向へ配列を誘導するために使用することができる。
【0094】
さらに、CNTは繊維軸に対して明確な配向性を有することができるため、これにより、CNTは、全ての複合材料構造全体においても同様に、制御された配向性を有することができる。これは、上記の巻取り又は形成処理のいずれにおいても又は硬化等のための樹脂マトリクス中のCNT浸出繊維材料の配向を制御することにより達成できる。
【0095】
したがって、ある実施形態において、本発明は、1)マトリクス材の一部にマトリクス材内で配向を制御されたCNT浸出繊維材料を配置すること及び2)CNT浸出繊維材料の制御された配向が、そこに浸出されたCNTの相対配向を制御するマトリクス材を硬化することを含む、レーダー吸収複合材料の製造方法を提供する。
【0096】
繊維は、湿式巻付け(wet winding)、後に真空補助樹脂浸出(vacuum assisted resin infusion)が続く乾式巻付け及びプリプレグ(織物又は繊維上に形成された粘着性構造の樹脂)を介して複合材料中に組み込むことができる。それぞれの場合において、繊維とマトリクスとが構造中に組み合わされると、マトリクスは硬化される。硬化は、大気圧、低気圧又は高気圧下で行われる。
【0097】
ある実施形態において、本発明は、本発明のレーダー吸収複合材料を含むパネルを提供する。ある実施形態において、パネルは、ステルス用途に使用する輸送容器又は発射体の構造用部品として製造することができる。輸送容器は、複合材料内で配向を制御されたCNTを有するCNT浸出繊維材料を備えるパネルを含むことができる。任意で、パネルは、レーダー吸収を最大化するために、レーダー発信源からの入射角に対して角度を調整する機構を搭載することができる。例えば、吸収されたレーダー信号のエネルギーは、レーダー吸収を最大化するために、パネルの配向を変化させるコンピュータシステムに統合される電気信号に変換して使用することができる。これは、予め入射方向がわからない複数のレーダー源からの探知に対して最適化する手段を提供する。ある実施形態において、輸送容器は、例えば、ボート、飛行機及び地上車の形態を取ることができる。
【0098】
ある実施形態において、レーダー吸収体はまた、探知されていないステルス用途に加えて、反射されたレーダー信号を効果的に捕捉する必要がある探知用途において、レーダーを吸収するために使用することができる。本発明のレーダー吸収複合材料は、より効率的に反射したレーダー信号を受信するために、探知システムに統合することができる。
【0099】
ある実施形態において、本発明のレーダー吸収体は、発射体システムに統合することができる。これは、上記のパネルタイプシステム又はコーティングを使用して行うことができる。このような用途において、繊維材料上に浸出されたCNTは、複合材料及びパネル又はコーティング内において、制御された配向を有する。パネルが使用された場合、パネルはさらに、レーダー吸収を最大化するために、レーダー発信源からのレーダーの入射角度に対する角度を調整する機構を搭載することができる。このように、レーダー探知を回避することができる発射体を作成することができる。
【0100】
上で簡単に記載したように、本発明は、CNT浸出繊維材料を作るための連続CNT浸出処理に依存する。前記処理は、(a)巻取り可能な寸法の繊維材料の表面にカーボンナノチューブ形成触媒を堆積させること及び(b)炭素繊維材料上にカーボンナノチューブを直接合成し、これによりカーボンナノチューブ浸出繊維材料を形成することを含む。さらなるステップは、使用される繊維材料の種類に応じて用いることができる。例えば、炭素繊維材料を使用する場合、バリア・コーティングを組み込むステップを処理に追加することができる。
【0101】
9フィートのシステムにおいて、処理のラインスピードは、約1.5ft/分から約108ft/分までとすることができる。本明細書に記載された処理により達成される前記ラインスピードにより、短い生産時間で商業的数量のCNT浸出繊維材料の形成が可能となる。例えば、36ft/分のラインスピードの場合、CNT浸出繊維(繊維に5重量%を上回るCNTを浸出)の量は、5つの別々のトウ(20lb/tow)を同時に処理するために設計されたシステムにおいて、一日あたり100ポンドを越えることができる。システムは、成長区間を繰り返すことにより、同時に又はより高速で、より多くのトウを製造するように設計することができる。さらに、当該技術分野で周知のように、CNT形成のステップの中には、連続運転モードを妨げる、極めて遅い速度を有するものがある。例えば、当該技術分野で周知の一般的な処理において、CNT形成触媒還元ステップは、実行に1〜12時間を要することがある。CNT成長自体もまた、時間のかかるものであり、例えば、CNT成長に数十分を要し、その結果、本発明において実現された速いラインスピードを妨げることもある。本明細書で記載される処理は、このような律速(rate limiting)ステップを克服する。
【0102】
本発明のCNT浸出炭素繊維材料形成処理は、前もって形成されたカーボンナノチューブの懸濁液を繊維材料に適用しようとする際に生じるCNTのもつれ(entanglement)を避けることができる。すなわち、予め形成されたCNTは、炭素繊維材料に浸出されないので、CNTはまとまったりもつれたりする傾向がある。結果として、炭素繊維材料に弱く付着したCNTの不均一な分散が生じる。しかしながら、本発明の処理は、必要に応じて、成長密度を低下させることにより、炭素繊維材料の表面に、非常に均一なもつれあったCNTマットを提供することができる。低密度に成長したCNTは、最初に炭素繊維材料中に浸出される。このような実施形態において、繊維は、垂直配列を誘導するのに十分な密度に成長せず、結果として炭素繊維材料表面のもつれ合ったマットが得られる。一方、予め形成されたCNTを手で適用する場合、炭素繊維材料上におけるCNTマットの均一な分散及び密度は保証されない。
【0103】
図11は、本発明の実施形態による、CNT浸出炭素繊維材料を形成するための処理700のフローチャートを表す。当業者は、炭素繊維材料上でのCNT浸出を例示するこの処理は、例えば、ガラス又はセラミック繊維等の他のCNT浸出繊維材料を提供するために変更することができることを理解するだろう。このような条件の変更のなかには、例えば、ガラス及びセラミックにおいて任意な、バリア・コーティングを適用するステップの削除が含まれるものもある。
【0104】
処理700は、少なくとも以下の工程を含む。
【0105】
701:炭素繊維材料の機能化。
【0106】
702:機能化した炭素繊維材料へのバリア・コーティング及びCNT形成触媒の適用。
【0107】
704:カーボンナノチューブ合成に十分な温度への炭素繊維材料の加熱。
【0108】
706:触媒を含んだ炭素繊維上でのCVD媒介CNT成長の促進。
【0109】
ステップ701において、炭素繊維材料は、繊維表面の湿潤化を促進し、バリア・コーティングの付着を強化するために機能化される。
【0110】
炭素繊維材料にカーボンナノチューブを浸出させるために、例えば、カーボンナノチューブは、バリア・コーティングにより被覆された炭素繊維材料上に合成される。一実施形態において、これは、まず炭素繊維材料に沿ってバリア・コーティングを被覆し、そして工程702により、バリア・コーティング上にナノチューブ形成触媒を堆積させることにより行われる。ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒堆積の前に、部分的に硬化することができる。これにより、触媒を受け入れ、CNT形成触媒と炭素繊維材料との間の表面接触を含むバリア・コーティングへの触媒の埋め込みが可能となる表面を提供することができる。このような実施形態において、バリア・コーティングは、触媒を埋め込んだ後、完全に硬化させることができる。ある実施形態において、バリア・コーティングは、CNT形成触媒の堆積と同時に、炭素繊維材料に沿って被覆される。CNT形成触媒及びバリア・コーティングが所定位置につくと、バリア・コーティングを完全に硬化させることができる。
【0111】
ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒堆積の前に完全に硬化することができる。このような実施形態において、完全に硬化されて、バリア・コーティングされた炭素繊維材料は、触媒を受け入れる表面を形成するためにプラズマにより処理することができる。例えば、硬化したバリア・コーティングを有し、プラズマ処理された炭素繊維材料により、CNT形成触媒を堆積することができる粗面が提供される。したがって、バリア表面の粗面化のためのプラズマ処理は、触媒堆積を容易にする。粗さは、一般にナノメートルスケールである。プラズマ処理において、ナノメートル単位の深さ及び直径の穴又は窪みが形成される。このような表面改質は、これに限定されないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素及び水素を含む様々な種類のガスの1つ以上のプラズマを使用して行うことができる。ある実施形態において、プラズマによる粗面化はまた、炭素繊維材料自体に直接行うこともできる。これは、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの付着を容易にする。
【0112】
図11とともに以下にさらに記載するように、触媒は、遷移金属ナノ粒子を含んで構成されたCNT形成触媒を含む溶液として作成される。合成されたナノチューブの直径は、上記の金属粒子の粒径と関連がある。ある実施形態において、工業用のCNT形成遷移金属ナノ粒子触媒の分散系が市販されており、希釈せずに使用され、他の実施形態においては、工業用の触媒の分散系は希釈することができる。こうした溶液を希釈するか否かは、上記の成長したCNTの望ましい密度及び長さによって決めることができる。
【0113】
図11の実施形態に関して、化学蒸着(chemical vapor deposition, CVD)に基づき、高温で生じるカーボンナノチューブ合成が示される。具体的な温度は、選択された触媒によって決まるが、一般には約500から1000℃の範囲である。したがって、工程704は、カーボンナノチューブ合成を補助するために、バリア・コーティングされた炭素繊維材料を上記の範囲の温度まで加熱することを含む。
【0114】
工程706において、触媒を含んだ炭素繊維材料上のCVD促進ナノチューブ成長が次に行われる。CVD処理は、例えば、アセチレン、エチレン又はエタノール等の炭素含有原料ガスにより促進することができる。CNT合成処理は一般に、主要な搬送ガスとして不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)を使用する。炭素原料は、全混合物の約0%から約15%までの範囲で提供される。CVD成長のための実質的な不活性環境は、成長チャンバーから蒸気及び酸素を除去することにより準備される。
【0115】
CNT合成処理において、CNTは、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒の部分で成長する。プラズマを生み出す強い電場は、ナノチューブ成長に作用させるために任意に用いることができる。すなわち、前記成長は、電場の方向に従う傾向がある。プラズマスプレー(plasma spray)及び電場の配置を適切に調整することにより、垂直配列(すなわち、炭素繊維材料に対して垂直な)CNTを合成することができる。ある条件においては、プラズマが存在しない場合であっても、密集したナノチューブは、垂直方向の成長を維持し、カーペット又は森のような密なCNTの配列を生じる。なお、バリア・コーティングの存在は、CNT成長の方向性にも影響を与えることができる。
【0116】
炭素繊維材料上への触媒の堆積工程はまた、溶液のスプレー若しくは浸漬被覆又は例えばプラズマ処理を介した気相堆積により行うことができる。技術の選択は、バリア・コーティングが適用される方法に合わせることができる。したがって、ある実施形態において、溶媒中の触媒の溶液を形成した後、触媒は、前記溶液をバリア・コーティングされた炭素繊維材料にスプレー、浸漬被覆又はスプレーと浸漬被覆との組み合わせにより、適用することができる。単独で又は組み合わせて使用されたいずれかの技術は、CNT形成触媒により十分に均一に被覆された炭素繊維材料を提供するために、1回、2回、3回、4回という具合に何回でも使用することができる。浸漬被覆が用いられた場合、例えば、炭素繊維材料を、第1滞留時間の間、第1浸漬槽(dip bath)に収容することができる。第2浸漬槽を採用した場合、炭素繊維材料を、第2滞留時間の間、第2浸漬槽に収容することができる。例えば、炭素繊維材料は、浸漬構造及びラインスピードに応じて、約3分から約90分の間CNT形成触媒の溶液にさらすことができる。スプレー又は浸漬被覆処理を採用した場合、触媒の表面密度が約5%未満の炭素繊維材料は、ほとんどが単原子層であるCNT形成触媒ナノ粒子により約80%にまで被覆される。ある実施形態において、炭素繊維材料上へのCNT形成触媒の被覆処理は、単分子層しか形成しない。例えば、大量のCNT形成触媒上のCNT成長は、炭素繊維材料へのCNTの浸出度(degree of infusion)を損なうことがある。他の実施形態において、遷移金属触媒は、蒸発技術、電解析出技術及びプラズマ原料ガスへの有機金属、金属塩又は気相での輸送を促進する他の組成として遷移金属触媒を付加する等の当業者に周知の他の処理を使用して、炭素繊維上に堆積させることができる。
【0117】
本発明の処理は連続するように設計されているため、巻取り可能な炭素繊維材料は、浸漬被覆槽が空間的に分離した一連の槽中で浸漬被覆することができる。初期の炭素繊維が新たに生じている連続処理において、CNT形成触媒の浸漬槽又はスプレーは、炭素繊維材料にバリア・コーティングを適用して硬化又は部分的に硬化した後の、最初のステップとすることができる。バリア・コーティング及びCNT形成触媒の適用は、新たに形成された炭素繊維材料のために、サイジング剤の適用のかわりに行うことができる。他の実施形態において、CNT形成触媒は、バリア・コーティング後に、他のサイジング剤の存在下で新たに形成された炭素繊維に適用することができる。このようなCNT形成触媒及び他のサイジング剤の同時適用により、炭素繊維材料のバリア・コーティングと表面接触したCNT形成触媒がさらに提供されて、CNT浸出を確実にする。
【0118】
使用される触媒液は、上記のdブロック遷移金属のいずれの遷移金属ナノ粒子とすることもできる。加えて、前記ナノ粒子は、dブロック金属の合金と非合金との元素形態又は塩形態の混合物及びその混合物を含むことができる。このような塩形態は、これに限定されないが、酸化物、炭化物及び窒化物を含む。限定されない例としての遷移金属NPとして、Ni,Fe,Co,Mo,Cu,Pt,Au及びAg並びにこれらの塩及びこれらの混合物が含まれる。ある実施形態において、このようなCNT形成触媒は、バリア・コーティング堆積と同時に、炭素繊維材料に直接CNT形成触媒を適用又は浸出することにより、炭素繊維上に堆積する。これらの遷移金属触媒の多くは、例えば、Ferrotec Corporation(Bedford, NH)を含む様々なサプライヤーから容易に市販で入手することができる。
【0119】
炭素繊維材料にCNT形成触媒を適用する溶液に使用される触媒は、CNT形成触媒を均一に分散することができる一般的ないずれの溶媒に含まれてもよい。このような溶媒は、これに制限されないが、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(TFT)、シクロヘキサン又はCNT形成触媒ナノ粒子の適切な分散系を形成するよう制御された極性を有する他の溶媒を含むことができる。CNT形成触媒の濃度は、触媒対溶媒が約1:1から1:10000の範囲とすることができる。この濃度は、バリア・コーティング及びCNT形成触媒が同時に適用された場合にも使用することができる。
【0120】
ある実施形態において、CNT形成触媒の堆積後、カーボンナノチューブの合成するために、炭素繊維材料の加熱により、温度を約500℃から1000℃の範囲とすることができる。これらの温度での加熱は、CNT成長のための炭素原料の導入より前に又は実質的に同時に行うことができる。
【0121】
ある実施形態において、本発明は、炭素繊維材料からのサイジング剤の除去、炭素繊維材料一面へのバリア・コーティングの適用、炭素繊維材料へのCNT形成触媒の適用、少なくとも500℃への炭素繊維材料の加熱及び炭素繊維材料上でのカーボンナノチューブの合成を含む処理を提供する。ある実施形態において、CNT浸出処理の工程は、炭素繊維材料からのサイジング剤の除去、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの適用、炭素繊維へのCNT形成触媒の適用、繊維のCNT合成温度への加熱及び触媒含有炭素繊維材料でのCVD促進CNT成長(CVD-promoted CNT growth)を含む。このように、工業用炭素繊維材料が用いられる場合には、CNT浸出炭素繊維を構成するための処理は、炭素繊維材料にバリア・コーティング及び触媒を堆積させる前に炭素繊維材料からサイジング剤を除去する別々のステップを含むことができる。
【0122】
カーボンナノチューブを合成するステップは、本明細書に参照により組み込まれた同時係属中の米国特許出願公開第2004/0245088号明細書に開示された技術を含む、多くのカーボンナノチューブ形成技術を含むことができる。本発明の繊維に成長したCNTは、これに限定されないが、微小共振動(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD技術(thermal or plasma-enhanced CVD technique)、レーザーアブレーション(laser ablation)、アーク放電及び高圧一酸化炭素(HiPCO)を含む周知の技術により達成される。特に、CVDの間、CNT形成触媒が堆積したバリア・コーティング炭素繊維材料を直接使用することができる。ある実施形態において、いずれの従来のサイジング剤も、CNT合成の前に除去することができる。ある実施形態において、アセチレンガスは、イオン化されてCNT合成のための低温炭素プラズマ(cold carbon plasma)の噴流を作り出す。前記プラズマは、触媒担持炭素繊維材料に誘導される。このように、ある実施形態において、炭素繊維上でのCNTの合成には、(a)炭素プラズマの形成及び(b)炭素繊維材料に堆積した触媒への炭素プラズマの誘導が含まれる。成長したCNTの直径は、上記の通り、CNT形成触媒の粒径により決定される。ある実施形態において、サイジングされた繊維基質は、CNT合成を促進するために約550から約800℃まで加熱される。CNTの成長を開始させるために、アルゴン、ヘリウム又は窒素等の処理ガス及びアセチレン、エチレン、エタノール又はメタン等の炭素含有ガスの2種類のガスが反応器に流入される。CNTは、CNT形成触媒の部分で成長する。
【0123】
ある実施形態において、CVD成長は、プラズマ助長される。プラズマは、成長処理の間に電場を与えることにより生じさせることができる。このような状況下で成長したCNTは、電場の方向に従う。したがって、反応器の配置を調整することにより、垂直配列されたカーボンナノチューブを、円筒状の繊維の周りに半径方向に成長させることができる。ある実施形態においては、繊維の周りにおける半径方向の成長にはプラズマは必要ない。テープ、マット、織物、プライ等の幅広の炭素繊維材料の場合、触媒は、その片面又は両面に配置され、CNTも同様に、片面又は両面に成長させることができる。
【0124】
上記の通り、CNT合成は、機能化された巻取り可能な炭素繊維材料のための連続処理を提供するのに十分な速度で行われる。このような連続合成を行う様々な装置構成が以下に例示される。
【0125】
ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は、「全プラズマ(all plasma)」処理で構成することができる。全プラズマ処理は、上記のプラズマによる炭素繊維材料の粗面化と一体となることによって、繊維表面の湿潤特性を向上させ、より適合したバリア・コーティングを提供し、酸素、窒素、アルゴン−水素又はヘリウムベースプラズマ等の特定の反応ガス種を使用した炭素繊維材料の機能化による機械的嵌合及び化学的付着を介してコーティング付着を向上させることができる。
【0126】
バリア・コーティングされた炭素繊維材料は、CNT浸出最終生成物を形成するための多くのプラズマ媒介ステップを経る。ある実施形態において、全プラズマ処理は、バリア・コーティングが硬化された後に、裏面の改質を含んでもよい。これは、炭素繊維材料上のバリア・コーティングの表面を「粗面化(roughing)」して触媒堆積を促進するためのプラズマ処理である。上記のように、表面改質は、これに限定されないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素及び窒素を含む様々なガスの種類の1つ以上のプラズマを使用して行うことができる。
【0127】
表面改質の後、バリア・コーティングされた炭素繊維材料に触媒適用に移る。これは、繊維上へCNT形成触媒を堆積させるためのプラズマ処理である。CNT形成触媒は、上記の通り、通常は遷移金属である。遷移金属触媒は、磁性流体(ferrofluid)、有機金属、金属塩又は気相での輸送を促進する他の組成の形態の前駆体としてプラズマ原料ガスに加えることができる。触媒は、必要とされる真空でも不活性環境でもない室温の周囲環境で適用することができる。ある実施形態において、炭素繊維材料は、触媒適用の前に冷却される。
【0128】
全プラズマ処理を継続すると、カーボンナノチューブ合成がCNT成長反応器内で生じるが、この場合、炭素プラズマが触媒担持繊維上にスプレーされるプラズマ助長化学蒸着を用いて行うことができる。カーボンナノチューブ成長は高温(触媒に応じて、一般に、約500から1000℃)で生じるため、触媒担持繊維は、炭素プラズマに暴露される前に加熱される。浸出処理のために、炭素繊維材料は、軟化するまで随意に加熱することができる。加熱の後、炭素繊維材料は、炭素プラズマを受ける準備ができる。炭素プラズマは、例えば、アセチレン、エチレン、エタノール等の炭素含有ガスを、ガスをイオン化することができる電場を通過させることで生じさせる。この低温炭素プラズマは、スプレーノズルを介して、炭素繊維材料へと誘導される。炭素繊維材料は、プラズマを受けるために、スプレーノズルから約1センチメートル以内等に近接する。ある実施形態において、加熱器は、炭素繊維材料の高い温度を維持するために、炭素繊維材料上方のプラズマ噴霧器(plasma sprayer)に配置することができる。
【0129】
カーボンナノチューブ合成のための他の構成は、カーボンナノチューブが直接炭素繊維材料上で合成及び成長するための特別な長方形反応器(rectangular reactor)を含む。前記反応器は、カーボンナノチューブ担持材料を製造するための連続直列処理で用いるために設計されている。ある実施形態において、CNTは、化学蒸着(CVD)処理を介して、反応器の複数の区画(zone)において、大気圧及び約550℃から約800℃までの範囲の高温で成長する。合成が大気圧で生じるという事実は、繊維上にCNTを合成するための連続処理ラインへの反応器の組み込みを容易にする一要因になっている。区画(zone)反応器等を使用する直列連続処理による他の利点は、従来の一般的な構成の方法及び装置においては数分(又はそれ以上)してから生じるCNT成長が数秒以内に生じることである。
【0130】
様々な実施形態によるCNT合成反応器は、以下の特徴を含む。
【0131】
長方形合成反応器:当該技術分野において周知の一般的なCNT合成反応器の横断面は円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒形反応器がしばしば利用される)、利便性(円筒形反応器では、流動力学のモデル化が容易であり、加熱システムは円形チューブを容易に受け入れる(クオーツ(quartz)等))及び製造の容易さを含む様々な理由がある。従来の円筒形状から離れて、本発明は、長方形の横断面を有するCNT合成反応器を提供する。円筒形状から脱却する理由は以下の通りである。
1.反応器により処理することができる炭素繊維材料の多くは、平らなテープ又はシート様(sheet like)形状等のように比較的平面的であり、円形の横断面は、反応器の体積の利用において非効率的である。この非効率さによって、円筒形CNT合成反応器には、例えば次のような欠点が生じる。
a)十分なシステムパージの維持(反応器の増大した体積は、同水準のガスパージを維持するために大量のガス流量を必要とするが、この結果、システムは開放環境におけるCNTの大量生成には非効率となる)。
b)炭素原料流量の増加(不活性ガス流量の増加により、上記a)のように、大量のガス流量が必要となる)。
12K炭素繊維トウの体積は、長方形横断面を有する合成反応器の全体積の2000分の1であることを考慮されたい。同等の円筒形成長反応器(すなわち、長方形横断面反応器と同一の平面的な炭素繊維材料を収容する幅の円筒形反応器)において、炭素繊維材料の体積は、チャンバーの体積の17500分の1である。CVD等のガスデポジション(gas deposition)処理は、一般に圧力又は温度だけに制御されるが、体積はデポジション効率に対して重大な影響を持っている。長方形反応器にはまだ余分な体積が存在する。円筒形反応器は前記体積の約8倍の体積を有する。この余分な体積は、望ましくない反応を促進するが、しかし、この競合する反応が生じる大きな機会により、円筒形反応器チャンバー内では、望ましい反応が事実上緩やかに進む。このようなCNT成長の鈍化は、連続処理の開発においては問題である。長方形反応器構成の利益の1つは、高さの低い長方形チャンバーを使用することで、反応器体積を減少させ、これによって、反応器体積の比率を良くし、反応効率を向上させることである。本発明のある実施形態において、長方形合成反応器の全体積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全体積の約3000倍である。他の実施形態において、長方形合成反応器の全体積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全体積の約4000倍である。さらに他の実施形態において、長方形合成反応器の全体積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全体積の約10000倍未満である。加えて、円筒形反応器を使用する場合、長方形横断面を有する反応器と同じ流量パーセントを提供するためには、より多くの炭素原料ガスが必要となる点は注目に値する。ある実施形態において、合成反応器は、長方形ではないが比較的それに近く、円形横断面を有する反応器に対して同様の反応器体積の低下を提供する多角形形状により説明される横断面を有することが理解されるだろう。
c)問題のある温度分布。比較的小口径の反応器が使用された場合、チャンバー中央部から壁面までの温度勾配はわずかとなる。しかし、商業スケールの製品に使用される等、サイズが大きくなるにつれて、温度勾配は大きくなる。このような温度勾配は、炭素繊維材料基質に亘った製品品質の変化を生じさせる(すなわち、製品品質が半径方向の位置に応じて変化する)。この問題は、長方形横断面を有する反応器を使用した場合、実質的には避けられる。特に、平面的な基質が使用された場合、反応器の高さを、基質の大きさの上昇にしたがって、一定に維持することができる。反応器の頂部と底部との間での温度勾配は、基本的にごくわずかであり、結果として、熱問題及び製品品質のばらつきを避けられる。
2.ガス導入:当該技術分野においては、管状炉(tubular furnace)が通常は使用されるため、一般的なCNT合成反応器は、ガスを一端から導き入れ、そして反応器を通して他端へと引き出す。本明細書において開示されるある実施形態において、ガスは、反応器の側面又は頂部及び底部を通して対称的に、反応器の中央部又は目標となる成長領域内へと導入される。これは、システムのCNT成長が最も盛んな部分に、流入した原料ガスが連続的に補給されるため、CNT成長率全体を向上させる。この一定のガス供給は、長方形CNT反応器により高い成長率を示すために重要な側面である。
【0132】
(区画化)
チャンバーは、長方形合成反応器の両端に従属する比較的低温のパージ領域を提供する。出願人は、高温のガスが外部環境(すなわち、反応器外部)と混合した場合、炭素繊維材料の劣化が進行するということを発見した。前記低温のパージ領域は、内部システムと外部環境との間の緩衝材(buffer)を提供する。当該技術分野で周知の一般的なCNT合成反応器構成の場合、基質を慎重に(そしてゆっくりと)冷却することが必要となってくる。本発明の長方形CNT成長反応器に存在する低温のパージ領域は、連続直列処理にもとめられる短時間での冷却を実現する。
【0133】
(非接触、高温壁、金属反応器)
ある実施形態において、高温壁反応器は、金属製であり、特にステンレス鋼が採用される。金属、特にステンレス鋼は、炭素の堆積(すなわち、煤及び副産物)による影響を受けやすいため、これは直感に反するかもしれない。それ故、ほとんどのCNT反応器構成は、石英反応器を使用する。なぜなら、石英は、炭素が堆積しにくく、清掃が容易であり、サンプルの観察を容易にするからである。しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上の大量の煤及び炭素堆積は、より着実で、速く、効率的で、そのうえ安定したCNT成長を生じさせることに気がついた。理論に拘束されるものではないが、大気作動に関して、反応器内で生じるCVD処理は、拡散律速(diffusion limited)である。すなわち、触媒は、「供給過多(overfed)」であり、(反応器が不完全真空化で作動した場合に比べて)その相対的に高い分圧のため、反応器システム内では過剰な炭素が供給される。結果として、開放システム−特にクリーン(clean)開放システム−において、過剰な炭素が触媒粒子に付着し、そのCNT合成能力を低下させることがある。ある実施形態において、長方形反応器は、反応器が「汚れた」、すなわち金属反応器の壁面に煤が堆積した場合に、意図的に稼働させる。反応器の壁面に炭素が単原子層として堆積すると、炭素は炭素自体に堆積しやすくなる。この機構によりいくらかの炭素が「引き込まれ」、残った炭素原料は、ラジカルの形態で、触媒を侵さない速度にて触媒と反応する。システムが連続処理のために開放されていた場合、「クリーン」な状態で稼働する既存のシステムは、低い成長速度で極めて低い産出量のCNTを生成するだろう。
【0134】
上記のように、CNT合成を「汚れた(dirty)」状態で行うことは一般に有益であるが、ガスマニホールド及び吸気口等の装置の特定部分において煤により障害物が形成された場合、CNT成長に悪影響を及ぼす。この問題を解決するために、CNT成長反応器チャンバーのある領域は、シリカ、アルミナ又はMgO等の抑制コーティングにより煤から保護することができる。実際に、装置のこれらの部分は、煤抑制コーティングで浸漬被覆することができる。インバール(INVAR)は、高温におけるコーティングの適切な付着を確保できるだけのCTE(熱膨張率)を有しているため、インバール(R)等の金属は、これらのコーティングとともに使用して、重要な領域において大量の煤が蓄積するのを防ぐ。
【0135】
(触媒還元及びCNT合成の組み合わせ)
本明細書において開示されるCNT合成反応器において、触媒還元及びCNT成長はいずれも反応器内で生じる。還元ステップが別工程として行われた場合、連続処理での使用のために十分適時にステップを完了させることができないため、これは重要なことである。当該技術分野において周知の典型的な処理の場合、還元処理を行うには一般に1〜12時間かかる。両方の工程は、本発明に係る反応器内で生じるが、これは少なくとも一部には、炭素原料ガスが、円筒形反応器を使用する当該技術分野では一般的な端部ではなく、反応機の中央部に導入されるという事実によるものである。繊維が加熱領域に入ると還元処理が行われる。ここまでの間に、ガスには壁面と反応し、触媒との反応及び(水素ラジカル相互作用を介した)酸化還元の反省の前に冷却される時間を有することになる。これが、還元が行われる遷移領域である。システムの最も温度の高い等温領域において、CNT成長が生じ、反応器の中央部付近のガス吸気口近くで成長速度は最高となる。
【0136】
ある実施形態において、炭素トウ等の緩やかにまとめられた炭素繊維が使用された場合、連続処理は、トウのストランド(strand)又はフィラメントを広げる(spread)ステップを含むことができる。トウは巻取られてはいないため、例えば、真空ベース繊維拡張システム(vacuum-based fiber spreading system)を使用して、トウを広げることができる。比較的堅いサイジングされた炭素繊維を使用する場合、トウを「軟化」し、繊維拡張を容易にするために、付加的な加熱を行うことができる。個別のフィラメントを含んで構成された広げられた繊維は、フィラメントの全表面領域を暴露するのに十分大きく広げることができるので、その後の処理ステップにおいてトウをより効率的に反応させることができる。このような拡張は、3Kトウに対して約4インチから約6インチまで行うことができる。広げられた炭素トウは、上記のプラズマシステムからなる表面処理ステップを経ることができる。バリア・コーティングを適用し粗面化した後、広げられた繊維を、CNT形成触媒浸漬槽を通すことができる。結果として、表面に半径方向に触媒粒子が分布した炭素トウの繊維が得られる。トウの触媒含有繊維は、秒速数ミクロンの速度でCNTを合成するために、循環(flow through)大気圧CVD又はPE−CVDが使用される上記の長方形チャンバー等の適切なCNT成長チャンバーに入れられる。半径方向に配列されたCNTを付着させたトウの繊維は、CNT成長反応器を出る。
【0137】
ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は、さらに他の加工処理、ある実施形態においてはCNTを機能化するために使用されるプラズマ処理、を経てもよい。CNTのさらなる機能化は、特定の樹脂への付着を促進するために使用することができる。したがって、ある実施形態において、本発明は、機能化されたCNTを有するCNT浸出炭素繊維材料を提供する。
【0138】
巻取り可能な炭素繊維材料の連続処理の一部として、CNT浸出炭素繊維材料は、さらにサイジング剤浸漬槽を通過させて、これにより、最終製品に有益な追加のサイジング剤を適用することができる。最終的に、湿式巻付けが望ましい場合、CNT浸出炭素繊維材料は、樹脂槽を通過し、マンドレル又はスプールに巻取ることができる。結果として得られた炭素繊維材料/樹脂の組み合わせは、炭素繊維材料にCNTを閉じ込め、加工を容易にし、複合製作を可能にする。ある実施形態において、CNT浸出は、改善されたフィラメント・ワインディング(filament winding)を提供するために使用される。したがって、炭素トウ等の炭素繊維上に形成されたCNTは、樹脂を含浸したCNT浸出炭素繊維トウを製造するために、樹脂槽を通過する。樹脂を含浸した後、炭素トウは、搬送ヘッドにより回転マンドレル(rotating mandrel)の表面に配置される。そして、前記トウは、周知の方法により正確な幾何パターンで、マンドレルに巻付けられる。
【0139】
上記の巻付け処理は、パイプ、管又はオス型を介して特長的に製造される他の形態を提供する。しかし、本明細書で開示される巻付け処理により形成された前記形態は、従来のフィラメント巻付け処理を介して製造されたものとは異なる。特に、本明細書で開示された処理においては、CNT浸出トウを含む複合材料から形態が作られる。それゆえ、前記形態は、CNT浸出トウによる強度強化からの利益を享受するだろう。
【0140】
ある実施形態において、巻付け可能な炭素繊維材料上にCNTを浸出するための連続処理は、約0.5ft/分から約36ft/分までのラインスピードで行うことができる。CNT成長チャンバーの長さが3フィートであり、成長温度が750℃の実施形態において、処理は、例えば、約100ナノメートルから約10ミクロンまでの長さのCNTを生成するために、約6ft/分から約36ft/分までのラインスピードで行うことができる。前記処理はまた、例えば、約10ミクロンから約100ミクロンまでの長さのCNTを生成するために、約1ft/分から約6ft/分までのラインスピードで行うことができる。前記処理はまた、例えば、約100ミクロンから約200ミクロンまでの長さのCNTを生成するために、約0.5ft/分から約1ft/分までのラインスピードで行うことができる。CNTの長さはラインスピード及び成長温度のみに束縛されるものではなく、炭素原料及び不活性搬送ガスの流量もまたCNTの長さに影響する。例えば、速いラインスピード(6ft/分から36ft/分まで)で不活性ガス及び1%未満の炭素原料からなる流量は、1ミクロンから約5ミクロンの長さのCNTを生じさせる。速いラインスピード(6ft/分から36ft/分まで)で不活性ガス及び1%を上回る炭素原料からなる流量は、5ミクロンから約10ミクロンまでの長さのCNTを生じさせる。
【0141】
ある実施形態において、1つ以上の炭素材料は、同時に処理することができる。例えば、複数のテープトウ、フィラメント及びストランド等は、並列して処理することができる。したがって、先に形成された炭素繊維材料のスプールはいくつでも、並列して処理し、処理の終わりで改めて巻付けることができる。並列して処理することができる巻付けられた炭素繊維材料の数は、1,2,3,4,5,6,7及びCNT成長反応器チャンバーの幅に適応できる全ての数を含む。さらに、複数の炭素繊維材料が処理される場合、回収スプールの数は、処理開始時におけるスプールの数より少なくすることができる。このような実施形態において、炭素ストランド又はトウ等は、これらの炭素繊維材料を、織物製品等のより高秩序の炭素繊維材料に組み合わせるためのさらなる処理に送ることができる。連続処理はまた、例えば、CNT浸出短繊維マットの形成を容易にする後処理チョッパー(post processing chopper)を組み込むことができる。
【0142】
繊維材料へCNTを浸出するための本発明の処理により、CNTの均一な長さの制御及び連続処理において、巻取り可能な繊維材料を高率でCNTにより機能化することが可能となる。5から300秒までの材料滞留時間の場合、長さ3フィートのシステムのための連続処理の速度は、どこでも約0.5ft/分から36ft/分まで及びそれ以上とすることができる。前記速度は、さらに以下に説明される様々なパラメータに応じて選択される。
【0143】
ある実施形態において、約5から約30秒までの材料滞留時間により、約100ナノメートルから約10ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。ある実施形態において、約30から約180秒までの材料滞留時間により、約10ミクロンから約100ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。さらに他の実施形態において、約180から約300秒までの材料滞留時間により、約100ミクロンから約500ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。当業者は、これらの範囲が概算であり、CNTの長さはまた、反応温度によって、並びに搬送ガス及び炭素原料の濃度及び流量によって調節することができることを理解するだろう。
【0144】
(実施例)
この例は、炭素繊維材料が、複合材料構造中での性質制御能力を促進するために、連続処理においてどのようにCNTを浸出されるかを示す。
【0145】
本実施例において、繊維上へのCNTの最大充填が目標とされている。800テックスの34−700の12K炭素繊維トウ(Grafil Inc., Sacrament, CA)は、炭素繊維基質として組み入れられている。この炭素繊維トウのそれぞれのフィラメントは、およそ7μmの直径を有する。
【0146】
図12は、本発明の例示的な実施形態によるCNT浸出繊維製造のためシステム800を示す。システム800は、図示されたように関連する、炭素繊維材料繰り出し及び伸張手段(tensioner)工程805と、サイジング剤除去及び繊維拡張手段(spreader)工程810と、プラズマ処理工程815と、バリア・コーティング適用工程820と、空気乾燥工程825と、触媒適用工程830と、溶媒の蒸発分離工程835と、CNT浸出工程840と、繊維束化手段(bundler)工程845と、炭素繊維材料取り込みボビン850とを含む。
【0147】
繰り出し及び伸張工程805は、繰り出しボビン806及び伸張手段807を含む。繰り出しボビンは、炭素繊維材料860を処理へ導き、繊維は、伸張手段807により伸張される。例えば、炭素繊維は、2ft/分のラインスピードで処理される。
【0148】
繊維材料860は、サイジング剤除去加熱器865及び繊維拡張手段870を含むサイジング剤除去及び繊維拡張工程810へ導かれる。この工程において、繊維860上の全てのサイジング剤は除去される。主として、除去は繊維のサイジング剤を燃焼させることにより行われる。例えば、赤外線加熱器、マッフル炉及び他の非接触加熱処理を含む様々な加熱手段はいずれもこの目的のために使用することができる。サイジング剤除去はまた、化学的に行うこともできる。繊維拡張手段は、繊維の個々の要素を分離する。平坦で均一な直径のバー(bar)の上方及び下方に、不均一な直径のバーの上方及び下方に、半径方向に広がった溝とニーディングローラー(kneading roller)とを備えたバーの上方に、又は振動バー(vibratory bar)の上方に、繊維を引っ張る等の様々な技術及び装置を、繊維の拡張のために使用することができる。繊維の拡張は、より広い繊維表面領域が暴露されることにより、プラズマ適用、バリア・コーティング適用及び触媒適用等の下流工程の効率を向上させる。
【0149】
繊維のデサイジング(desizing)及び拡張を同時に徐々に行うことを可能にする繊維拡張手段870の至る所に複数のサイジング剤除去加熱器865を配置することができる。繰り出し及び伸張工程805並びにサイジング剤除去及び繊維拡張手段工程810は、繊維工業においてごく普通に用いられる。当業者は、これらの設計及び使用に精通しているだろう。
【0150】
サイジング剤を燃焼するための温度及び時間は、(1)サイジング剤及び(2)炭素繊維材料860の商業的供給源/特性の関数として変化する。炭素繊維材料上の従来のサイジング剤は、約650℃で除去することができる。この温度で、サイジング剤を確実に完全燃焼させるためには15分を要することがある。この燃焼温度を越える温度上昇によって、燃焼時間を削減することができるが、特定商品のサイジング剤において最低の燃焼温度を決定するために熱重量分析(thermogravimetric analysis)が使用される。
【0151】
サイジング剤除去に要する時間によっては、サイジング剤除去加熱器は必ずしも厳密な意味でのCNT浸出処理に含まれなくてもよく、除去は別々に(例えば、並列して)行うことができる。このような方法で、サイジング剤を含まない(sizing-free)炭素繊維材料の在庫は蓄積され、繊維除去加熱器を含まないCNT浸出繊維製造ラインで使用するために巻取ることができる。そして、サイジング剤を含まない繊維は、繰り出し及び伸張工程805に巻取られる。この製造ラインは、サイジング剤除去を含む製造ラインより速い速度で稼働させることができる。
【0152】
サイジング剤を除去された繊維880は、プラズマ処理工程815に導入される。例えば、大気圧プラズマ処理は、流れに沿って、広げられた炭素繊維材料から1mmの距離から使用される。ガス状原料は、100%のヘリウムから構成される。
【0153】
プラズマ助長繊維885は、バリア・コーティング工程820に導入される。本実施形態においては、シロキサンベースバリア・コーティング溶液が、浸漬被覆構成に採用される。前記溶液は、体積比40対1の希釈率でイソプロピルアルコールに希釈された「T−11スピンオンガラスAccuglass(登録商標)(Honeywell International Inc., Morristown, NJ)」である。結果として得られる炭素繊維材料上のバリア・コーティングの厚さは、およそ40nmである。バリア・コーティングは、周囲環境の室温で適用することができる。
【0154】
バリア・コーティングされた炭素繊維890は、ナノスケールのバリア・コーティングの部分硬化のための空気乾燥工程825に導入される。空気乾燥工程は、炭素繊維スプレッド全体に加熱された気流を送る。採用される温度は、100℃から約500℃の範囲である。
【0155】
空気乾燥の後、バリア・コーティングされた炭素繊維890は、触媒適用工程830に導入される。本実施例において、酸化鉄ベースCNT形成触媒溶液が、浸漬被覆構成に採用される。前記溶液は、体積比200対1の希釈率でヘキサンに希釈された「EFH−1(Ferrotec Corporation, Bedford, NH)」である。性質制御特性のために設定されたCNT浸出繊維の処理ラインスピードで、繊維は浸漬槽に10秒間滞留する。触媒は、真空下でも不活性雰囲気下でもなく、周囲環境の室温で適用することができる。触媒被覆の単原子層が、炭素繊維材料上に形成される。希釈される前の「EFH−1」は、3〜15%の体積濃度のナノ粒子を含む。酸化鉄ナノ粒子の組成は、Fe2O3及びFe3O4であり、およそ8nmの粒径を有する。
【0156】
触媒含有炭素繊維材料895は、溶媒の蒸発分離工程835に導入される。溶媒蒸発分離工程は、炭素繊維スプレッドの全体に気流を送る。本実施例において、触媒含有炭素繊維材料上に残された全てのヘキサンを蒸発分離するために、室温の空気を使用することができる。
【0157】
溶媒の蒸発分離の後、触媒含有繊維895は、最終的にCNT浸出工程840に送られる。本実施例において、12インチの成長領域を有する長方形反応器は、大気圧でのCVD成長を採用するために使用される。全ガス流の97.6%は不活性ガス(窒素)であり、残りの2.4%は炭素原料(アセチレン)である。前記成長領域は、750℃に保たれる。上記長方形反応器において、750℃は、比較的高い成長温度であり、これによって最高の成長率が可能となる。触媒含有繊維は、本実施例において、CNT成長環境に30秒間暴露され、結果として、炭素繊維表面に長さ60ミクロンでおよそ4%体積パーセントのCNTが浸出される。
【0158】
CNT浸出の後、CNT浸出繊維897は、繊維束化工程845において、改めて束ねられる。この工程は、繊維のストランドのそれぞれをまとめ、これによって、工程810において行われた拡張工程を事実上無効にする。
【0159】
束ねられたCNT浸出繊維897は、保管のために、取り込み繊維ボビン850の周りに巻き取られる。このようにして、CNT浸出繊維897は、高い性質制御特性を必要とする様々な用途に使用可能となる。この場合、この材料は、乾式巻付けされ、図13に示すようにRAMパネルの背面層(back layer)として機能するように樹脂が浸出される。上記処理により結果として生じるパネル層は、複合材料構造中に2〜4重量%のCNTを有する。
【0160】
上記工程の中には、環境分離のために、不活性雰囲気下又は真空下で行うことが可能なものもある点は注目に値する。例えば、炭素繊維材料のサイジング剤が燃焼している場合、ガス放出(off-gassing)を封じ、蒸気による損傷を妨げるために、繊維を環境的に分離することができる。便宜上、システム800において、環境分離は、製造ラインの最初に行われる炭素繊維材料繰り出し及び伸張並びに製造ラインの最後に行われる繊維の取り込みを除く、全ての工程に提供することができる。
【0161】
当然のことながら、上記実施形態は、単に本発明を説明するためのものであり、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記実施形態の多くのバリエーションを考え出すことができる。例えば、本明細書において、本発明の実施形態の詳細な説明及び理解を提供するために、多くの具体的な詳細が提供されている。しかしながら、当業者は、本発明がこれら詳細の1つ以上を備えずに又は他の処理、材料及び構成要素等を備えて実施することができることを認識するであろう。
【0162】
さらに、場合によっては、周知の構造、材料又は工程は、実施形態の態様が不明瞭になるのを避けるため、詳細に示されず、記載されていない。当然のことながら、図示された様々な実施形態は、説明のためのものであり、必ずしもこの縮尺でなくてもよい。本明細書を通じて、「一実施形態」、「実施形態」又は「ある実施形態」とは、実施形態と関連して記載された特定の外観、構造、材料又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれるが、全ての実施形態に含まれる必要はない、ということを意味する。結果として、本明細書を通じて様々な箇所に使用された「一実施形態において」、「実施形態において」又は「ある実施形態において」という言い回しは、全てが同一の実施形態について言及している必要はない。さらに、特定の外観、構造、材料又は特性は、1つ以上の実施形態に適切な方法で組み合わせることができる。それゆえ、そのようなバリエーションは、特許請求の範囲及びその均等の範囲に含まれることを意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含んで構成されたレーダー吸収複合材料であって、
前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができ、
前記CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成するレーダー吸収複合材料。
【請求項2】
複数の遷移金属ナノ粒子をさらに含んで構成された請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、鉄を含んで構成される請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記第1層と前記第2層との間に複数の追加の層をさらに含んで構成された請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記複数の追加の層は、前記第1層から前記第2層に至るまで増加する、前記CNT浸出繊維上のCNT密度の段階的な勾配を含んで構成される請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記複数の追加の層は、前記第1層から前記第2層に至るまで増加する、前記CNT浸出繊維上のCNT密度の連続的な勾配を含んで構成される請求項4に記載の複合材料。
【請求項7】
前記第1層及び前記第2層は、別々のCNT浸出繊維材料を含んで構成される請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第1層は、CNT浸出ガラス繊維材料を含んで構成される請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記第2層は、CNT浸出炭素繊維材料を含んで構成される請求項7に記載の複合材料。
【請求項10】
前記CNTは、前記複合材料の約0.001重量%から約20重量%までの範囲で存在する請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記CNT浸出繊維材料は、ガラス、炭素及びセラミックから選択される繊維材料を含んで構成される請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
前記繊維材料に浸出されたCNTは、前記複合材料内において制御された配向を有する請求項1に記載の複合材料。
【請求項13】
レーダー吸収複合材料の製造方法であって、
前記複合材料は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含んで構成され、
前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができ、
前記CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収されたレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成し、
前記方法は、マトリクス材内でCNT浸出繊維材料の配向が制御された状態で、前記マトリクス材の一部に前記CNT浸出繊維材料を配置すること及び前記マトリクス材を硬化することを含んで構成され、
前記CNT浸出繊維材料の制御された配向は、そこに浸出されたCNTの相対配向を制御するレーダー吸収複合材料の製造方法。
【請求項14】
複合材料を含んで構成されるパネルであって、
前記複合材料は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含んで構成され、
前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができ、
前記CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成し、
前記パネルは、ステルス用途に使用される輸送容器又はミサイルの構成部品として適応されたパネル。
【請求項15】
前記繊維材料上に浸出された前記CNTは、前記複合材料内において制御された配向を有する請求項14に記載のパネルを含んで構成される輸送容器。
【請求項16】
前記輸送容器は、ボート、飛行機及び地上車から選択される請求項15に記載の輸送容器。
【請求項17】
前記繊維材料上に浸出された前記CNTは、前記複合材料内において制御された配向を有する請求項14に記載のパネルを含んで構成される発射体。
【請求項1】
マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含んで構成されたレーダー吸収複合材料であって、
前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができ、
前記CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成するレーダー吸収複合材料。
【請求項2】
複数の遷移金属ナノ粒子をさらに含んで構成された請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、鉄を含んで構成される請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記第1層と前記第2層との間に複数の追加の層をさらに含んで構成された請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記複数の追加の層は、前記第1層から前記第2層に至るまで増加する、前記CNT浸出繊維上のCNT密度の段階的な勾配を含んで構成される請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記複数の追加の層は、前記第1層から前記第2層に至るまで増加する、前記CNT浸出繊維上のCNT密度の連続的な勾配を含んで構成される請求項4に記載の複合材料。
【請求項7】
前記第1層及び前記第2層は、別々のCNT浸出繊維材料を含んで構成される請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第1層は、CNT浸出ガラス繊維材料を含んで構成される請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記第2層は、CNT浸出炭素繊維材料を含んで構成される請求項7に記載の複合材料。
【請求項10】
前記CNTは、前記複合材料の約0.001重量%から約20重量%までの範囲で存在する請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記CNT浸出繊維材料は、ガラス、炭素及びセラミックから選択される繊維材料を含んで構成される請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
前記繊維材料に浸出されたCNTは、前記複合材料内において制御された配向を有する請求項1に記載の複合材料。
【請求項13】
レーダー吸収複合材料の製造方法であって、
前記複合材料は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含んで構成され、
前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができ、
前記CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収されたレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成し、
前記方法は、マトリクス材内でCNT浸出繊維材料の配向が制御された状態で、前記マトリクス材の一部に前記CNT浸出繊維材料を配置すること及び前記マトリクス材を硬化することを含んで構成され、
前記CNT浸出繊維材料の制御された配向は、そこに浸出されたCNTの相対配向を制御するレーダー吸収複合材料の製造方法。
【請求項14】
複合材料を含んで構成されるパネルであって、
前記複合材料は、マトリクス材の少なくとも一部に配置されたCNT浸出繊維材料を含んで構成され、
前記複合材料は、約0.10メガヘルツから約60ギガヘルツまでの周波数帯域のレーダーを吸収することができ、
前記CNT浸出繊維材料は、レーダー反射率を低下させる第1層及び吸収したレーダーのエネルギーを消散させる第2層を形成し、
前記パネルは、ステルス用途に使用される輸送容器又はミサイルの構成部品として適応されたパネル。
【請求項15】
前記繊維材料上に浸出された前記CNTは、前記複合材料内において制御された配向を有する請求項14に記載のパネルを含んで構成される輸送容器。
【請求項16】
前記輸送容器は、ボート、飛行機及び地上車から選択される請求項15に記載の輸送容器。
【請求項17】
前記繊維材料上に浸出された前記CNTは、前記複合材料内において制御された配向を有する請求項14に記載のパネルを含んで構成される発射体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−524685(P2012−524685A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507455(P2012−507455)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/032318
【国際公開番号】WO2010/144183
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/032318
【国際公開番号】WO2010/144183
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】
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