説明

カーボンナノチューブ分散水溶液

【課題】カーボンナノチューブ(CNT)が均一に水に分散したCNT分散水溶液を提供する。
【解決手段】CNT分散水溶液は、A)CNT、B)水、C)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤を含む。C)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤としては、式(1)で表される化合物が挙げられる。X−O-(AO)m−Y・・・・・(1)(式(1)中、Xはステロイド骨格を有する基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり10〜40、Yは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアシル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブ(以下「CNT」と略す)分散水溶液に関する。より詳しくは、CNTの凝集が起こり難く、均一かつ安定したCNT分散水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
CNTは、近年、飯島らにより発見された、炭素を原料とした直径0.5〜50nm、長さμmオーダーの筒状物質である。これまで、グラファイトやフラーレンなどの炭素を原料とした材料が知られているが、これらの材料よりもCNTは比重が低く、強度が高く、通電性に優れているので、CNTを使用したフラットパネルディスプレイ、電子デバイス、走査型顕微鏡、複合材料など多くの用途開発が進められている。
【0003】
しかしながら、CNTは、単独では水や有機溶媒、高分子材料に分散し難いという欠点を有している。これは、CNTの凝集力により、束状になってしまうのが大きな理由である。その為、CNTの有用な特性にもかかわらず、各分野への用途に対する大きな障壁となっている。このような理由から、CNTを水、有機溶媒、高分子材料に効率よく分散させるために、例えば特許文献1〜6に開示された方法が試されている。
【0004】
特許文献1には、CNTを溶媒に分散させる方法として、重縮合系の芳香族系界面活性剤等を分散剤として使用して、CNTを水に分散させる方法が開示されている。しかしながら、この方法では、CNTの水への分散が不十分であり、CNTの濃度が高くなるにつれ、分散しきれず、凝集したCNTが多く残ってしまう。また、金属塩であるアニオン系界面活性剤を使用しているので、絶縁性が要求される電子材料分野への適用が困難となってしまうなど、CNTの分散剤が使用できる分野が限られてしまう。
【0005】
特許文献2及び3には、ドデシル硫酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤を分散剤として使用して、CNTを分散させる方法が開示されている。しかしながら、これら分散剤も金属塩であるので、電子材料分野への適用が困難になるなど、CNTの分散液が使用できる分野が限られてしまう。
【0006】
特許文献4には、没食子酸メチルエステル誘導体等の両親媒性化合物を用いて、CNTの分散、可溶化を行なうことが記載されている。しかしながら、CNTを分散させる溶媒として、クロロホルムなどの毒性の高い溶媒を使用するので、安全性、除去設備の負担、環境負荷等の点で問題がある。
【0007】
特許文献5には、CNTの表面を酸で酸化して生成したカルボキシル基とアルキルアルコールとを反応させて、アルキルエステル化されたCNTを調製し、さらに架橋剤を用いて網目構造を持つCNT構造体を形成させ、この網目構造中にポリマーを充填、硬化させた複合体が開示されている。しかしながら、この方法ではCNTの表面を修飾するので、工程が煩雑であり、またCNT本来の特性を損なうおそれがあり、好ましくない。
【特許文献1】特開2005−263608号公報
【特許文献2】特開2003−238126号公報
【特許文献3】特開2005−95806号公報
【特許文献4】特開2006−265151号公報
【特許文献5】特開2005−133062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、CNTが均一に溶媒に分散したCNT分散水溶液を提供することを目的とする。より詳しくは、本発明は、CNTの凝集が起こり難く、均一に、かつ安定的にCNTが分散された水溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、水中でのCNTの凝集や低分散性という課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の界面活性剤を用いることによって、CNTが凝集し難く、均一に、かつ安定的に分散することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明に係るCNT分散水溶液は、A)CNT、B)水、C)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。C)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤としては、下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
【0011】
X−O-(AO)m−Y ・・・・・(1)
【0012】
(式(1)中、Xはステロイド骨格を有する基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり10〜40、Yは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアシル基を表す。)
【0013】
なお、特開2005−60380号公報の段落0022には、フラーレンを水可溶化させる非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテルが挙げられているが、これら非イオン性界面活性剤が他の非イオン性界面活性剤よりも特に優れていることを同公報は示唆していない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CNTが凝集し難く、均一に、かつ安定的に分散するので、フラットパネルディスプレイ、電子デバイス、走査型顕微鏡、複合材料など多くの用途展開をする上で、CNTの応用範囲が広がることを期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係るCNT分散水溶液は、A)CNT、B)水、C)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤を含む。まず、A)CNTについて説明する。
【0016】
A)カーボンナノチューブ(CNT)
本発明で使用するCNTは、グラフェンシートが円筒状に巻かれたもので、この円筒が単層のものでも複数の層からなるものでも構わない。またグラフェンシートがカップ状に積み重なったものでも構わない。すなわち本発明では、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、カップスタック型カーボンナノチューブを用いることができる。これらの中でも、多層カーボンナノチューブ(MWNT)を用いることが好ましい。
【0017】
CNTの大きさ等は、特に限定されないが、典型的には平均直径が数nm〜120nm、平均アスペクト比が5〜250であり、好ましくは平均直径が10〜80nm、平均アスペクト比が50〜150、より好ましくは平均直径が10〜50nm、平均アスペクト比が80〜120である。
【0018】
CNTの平均直径および平均アスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることができる。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)測定を行い、その画像からCNTの直径および長手方向の長さを測定することができる。
【0019】
CNTは、通常、化学気相成長法(CVD法)、レーザー蒸発法、アーク放電法などによって製造されるが、本発明で使用されるCNTは、その製造方法が限定されず、いずれの方法で得られたものでも良い。CNTは各メーカーにより製造されており、その種類、製造法、純度、直径、長さなどの異なるものが提供されている。これらのCNTはそのまま使用しても良いが、不純物として、触媒として使用した金属が含まれているので、用途に応じて精製工程を行っても良い。
【0020】
B)水
本発明ではCNTの分散溶媒として水が用いられる。使用する水の種類は、特に限定されるものではなく、用途に応じて、水道水、天然水、蒸留水、イオン交換水、純水などを使い分けることができる。本発明のCNT分散水溶液においては、分散溶媒として、水と相溶性のある溶媒をさらに含んでいても良い。水以外に使用される溶媒としては、水と相溶性のある溶媒であれば特に限定されるものではないが、具体例を挙げれば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(分子量200〜10,000)、グリセリンなどがある。水以外の溶媒を含む場合、溶媒中の水の比率は、望ましくは50質量%以上、特に望ましくは70質量%以上、さらに望ましくは90質量%以上である。溶媒中の水の比率が50質量%未満の場合、分散性が低下するおそれがある。
【0021】
C)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤
本発明に使用する非イオン性界面活性剤は、ステロイド骨格、例えばコレスタン、コラン、プレグナン、アンドロスタン、エストラン、これらの不飽和誘導体、オキソ誘導体、アルコール誘導体、ヘテロ環誘導体を分子内に有する化合物であり、典型的には、ステロールのA環の3位ヒドロキシ基から水素原子を除いた基(ステロール残基)を有する。ステロール残基としては、コレステロール又はフィトステロールのヒドロキシ基から水素原子を除いたコレステロール残基又はフィトステロール残基が挙げられる。本発明では、ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤を1種又は2種以上用いることができる。
【0022】
ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
X−O-(AO)m−Y ・・・・・(1)
【0024】
式(1)中、Xはステロイド骨格を有する基であり、例えばステロール残基である。具体的なステロール残基としては、コレステロール、フィトステロール(α−、β−、又はγ−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、スピナステロール、ブラシカステロールなど)、エストリオール、エストロン、アルドステロン、コルチコステロン、コルチゾン、コール酸、グリココール酸、シマリン、ルミステロール、コレスタノール(ジヒドロコレステロール)、β−シトスタノール(ジヒドロシトステロール)、スピナスタノール(ジヒドロスピナステロール)などのステロールのヒドロキシ基から水素原子を除いた基が挙げられる。好ましくはステロールのA環の3位ヒドロキシ基から水素原子を除いた基であり、さらに好ましくはコレステロール残基又はフィトステロール残基である。
【0025】
式(1)中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、具体例を挙げれば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基、オキシブチレン基等などである。好ましくは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基である。
【0026】
式(1)中、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり10〜40、好ましくは12〜30である。さらに好ましくは、14〜25である。なお、式(1)中のAOで表されるオキシアルキレン基は、炭素数が異なる2種以上のオキシアルキレン基(それぞれの炭素数は2〜4)が結合したものでも良く、例えばオキシエチレン基とオキシプロピレン基が結合したものでも良い。この場合、各オキシアルキレン基の平均付加モル数の総和が10〜40の範囲内であれば良い。
【0027】
式(1)中、Yは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は炭素数2〜4のアシル基(飽和及び不飽和)であり、具体的な例を挙げると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などである。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0028】
本発明のCNT分散水溶液において、A)CNTとB)水との量的関係は、A)CNTの配合量や種類などによって適宜定めることができる。例えば、A)CNT100質量部に対し、B)水を500〜1000000質量部用いることにより、A)CNTを十分に分散させる効果が得られる。好ましくは、A)CNT100質量部に対し、B)水が1000〜200000質量部であり、より好ましくは2000〜200000質量部である。A)CNT100質量部に対し、B)水が500質量部未満の場合、A)CNTが十分に分散しきれない場合があり、また使用するA)CNTの量に見合った導電性が得られないことがある。一方、B)水が1000000質量部よりも多いと、分散水溶液の導電性が充分には得られないことがある。
【0029】
本発明のCNT分散溶液において、A)CNTとC)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤(以下、単に「界面活性剤」ともいう。)との量的関係は、C)界面活性剤の配合量や種類等によって適宜定めることができる。例えば、A)CNT100質量部に対し、C)界面活性剤を0.1〜1000質量部用いることで、A)CNTを十分に分散させる効果が得られる。好ましくは、A)CNT100質量部に対し、C)界面活性剤が5〜500質量部であり、より好ましくは20〜200質量部である。A)CNT100質量部に対し、C)界面活性剤が0.1質量部未満の場合、A)CNTに対するC)界面活性剤の量が不十分である為、A)CNTが溶媒(水)中で充分に分散しきれない場合がある。また、1000質量部より多いと、添加した量に見合った分散効果が得られない場合がある。
【0030】
本発明のCNT分散水溶液の調製方法は、特に限定されるものではないが、通常、以下の工程で行われる。
【0031】
まず、B)水に対してC)界面活性剤を添加し、必要に応じて、加熱、撹拌により活性剤水溶液を調製する。次に、活性剤水溶液にA)CNTを添加し、分散させる。CNTを分散させる方法として、撹拌、ホモジナイズ、超音波照射などが挙げられるが、効率良く、均一な分散水溶液を得るためには超音波照射が好ましい。通常、超音波照射は、超音波照射器を用いて行う。まず、A)CNTを混合した活性剤水溶液に照射器のチップを入れ、出力20〜1000Wで10分間〜数時間の超音波照射を行う。超音波照射の際には、照射時の発熱により水溶液の温度が上昇し、分散が抑制されるおそれがあるので、所定の冷却方法を用いながら、液温が0〜50℃の範囲内で行うのが好ましい。
【0032】
超音波照射によって得られたCNT分散水溶液は、そのまま使用してもよいが、分散しきれずに凝集したCNTが残存する場合、それを取り除くために、通常、遠心操作が行われる。遠心の条件としては、特に限定されないが、回転数5000〜100000rpm、遠心時間10分間〜数時間が好ましい。
【0033】
以上の工程により調製されたCNT分散水溶液は、CNTが凝集せずに、活性剤水溶液中に均一に分散しているか否かを目視により判断することができるが、分光光度計によりCNT分散水溶液の吸光度を測定することによって、分散状態を判断するのが好ましい。ただし、CNTは種類に応じて、得られる吸収スペクトルが異なり、また固定波長での吸光度も異なる。水の吸収、及び界面活性剤の吸収に大きく影響を及ぼさない波長での測定を考慮して、観測する波長を400〜800nmの範囲内で測定するのが好ましい。また、CNTの添加量に応じて吸光度が異なるので、吸光度測定の際には、光路長が1〜20mmの範囲内で、使用する分光セルを選択するのが好ましい。
【0034】
本発明のCNT分散水溶液は、インクジェットプリント方式、スプレー方式や電着方式等の公知の塗布方式を用いることによって、例えばフラットパネルディスプレイ用の電界電子放出源材料、集積回路の微細配線用インク材料、セラミックス用導電性・熱伝導性材料等として好適に利用することができる。また、CNTを電気泳動等により分画するためのCNT分画用溶液としても利用することができる。
【0035】
本発明のCNT分散水溶液は、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤、粘度調整剤、キレート剤を含んでいても良い。
【実施例】
【0036】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらによって限定されるものではない。なお、AOはオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を表す。
【0037】
〔実施例1〕
イオン交換水100gに対し、C)非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンコレステロールエーテル(EO平均付加モル数15モル)0.1gを添加して、攪拌し、活性剤水溶液を調製した。活性剤水溶液100gに対し、CNT(MWNT、平均直径20nm、日機装株式会社製)を0.1g添加し、攪拌し、CNT混合液を調製した。次に、この混合液に対して、超音波分散機にて、150Wの出力で、約1時間超音波照射を行った。超音波照射による混合液の発熱を抑えるために、適宜、氷水で冷却することにより、液温を40℃以下に保持した。超音波照射後、得られたCNT分散水溶液を目視観察したところ、均一に黒濁していた。
【0038】
また、このCNT分散水溶液を、遠心分離機を用いて、10000rpm(9700g)、1時間遠心を行った。遠心終了後、得られた分散水溶液の上層部をデカンテーションで静かに採取した。採取した上層液の外観を目視観察したところ、上層液は均一に黒濁していた。こうして得られた上層液の500nmの吸光度を光路長2mmの石英セルで測定した。なお、CNTの入っていない水溶液をブランクとした。上層液の500nmの吸光度は0.803であった。結果を表1にまとめた。
【0039】
〔実施例2〜5〕
実施例1におけるポリオキシエチレンコレステロールエーテル(EO平均付加モル数15モル)を表1に記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、CNT分散水溶液を得、さらに遠心処理、上層液の採取を行なった。超音波照射後で、かつ遠心処理前のCNT分散水溶液の状態、遠心処理後の上層液の状態をそれぞれ目視観察し、その結果を表1にまとめた。
【0040】
〔比較例1〕
イオン交換水100gに対し、CNTを0.1g添加し、攪拌し、CNT混合液を調製した。さらに、実施例1と同様に、超音波照射、遠心処理、上層液の採取を行なった。その結果、超音波照射後の分散液、及び遠心処理後の上層液はいずれも透明であった。こうして得られた上層液の500nmの吸光度を光路長4mmの石英セルで測定した。なお、CNTの入っていないイオン交換水をブランクとした。上層液の500nmの吸光度は0.004であった。結果を表1にまとめた。
【0041】
〔比較例2〜6〕
実施例1におけるポリオキシエチレンコレステロールエーテル(EO平均付加モル数15モル)を表1に記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、CNT分散水溶液を得、さらに遠心処理、上層液の採取を行なった。超音波照射後で、かつ遠心処理前のCNT分散水溶液の状態、遠心処理後の上層液の状態をそれぞれ目視観察し、その結果を表1にまとめた。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1〜5及び比較例1〜6の吸光度測定に使用した機器、器具及び測定条件を以下に示す。
分光光度計:日本分光株式会社製、JASCO V−530
分光セル:光路長2mm(ただし、比較例1は4mm)、2面石英セル
【0044】
実施例1〜5及び比較例1〜6の分散水溶液調製に使用した機器、器具を以下に示す。
超音波照射機:日本精機製作所株式会社製、UH−150T
遠心分離器:日立工機株式会社製、himacCF15D2
遠心ロータ:日立工機株式会社製、RT15A6
【0045】
表1の結果が示すように、実施例1〜5のCNT分散水溶液は、超音波照射後及び上層液において黒濁し、CNTが均一に、かつ安定的に分散していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によって、CNTの凝集が起こりにくく、均一に、かつ安定的にCNTが水に分散された水溶液が提供される。これにより、CNTの特性を活かした電子デバイス、複合材料などへの利用が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)カーボンナノチューブ、B)水、C)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤を含むカーボンナノチューブ分散水溶液。
【請求項2】
C)ステロイド骨格を有する非イオン性界面活性剤が、
X−O-(AO)m−Y ・・・・・(1)
(式(1)中、Xはステロイド骨格を有する基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり10〜40、Yは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアシル基を表す。)
である請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散水溶液。
【請求項3】
式(1)中のXがコレステロール残基またはフィトステロール残基である請求項2に記載のカーボンナノチューブ分散水溶液。
【請求項4】
式(1)中のmが12〜30である請求項2又は3に記載のカーボンナノチューブ分散水溶液。