説明

カーボンナノチューブ分散液およびカーボンナノチューブ塗膜

【課題】カーボンナノチューブを用い分散安定性に優れる分散液を提供する。また、この分散液を塗液として用いることで、ヘイズおよび表面電気抵抗に優れる塗膜を実現する。
【解決手段】特定の外径(10〜50nm)および結晶性(0.70〜1.50)を有するカーボンナノチューブ、塩基性官能基を有する化合物、分子量15000以下の化合物、およびケトン系溶剤を用いて分散液を作製する。また、この分散液を基材上に塗布することで、ヘイズおよび表面電気抵抗に優れたカーボンナノチューブ塗膜を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるカーボンナノチューブを含む分散液および塗膜に関し、特に分散安定性に優れるカーボンナノチューブ分散液およびその塗布形成物として得られる導電性を有するカーボンナノチューブ塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、炭素の六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層または多層のチューブ状になったフラーレンの一種であり、単層のものはシングルウォールナノチューブ(SWNT)、複層のものはマルチウォールナノチューブ(MWNT)と呼ばれる。
【0003】
このカーボンナノチューブの特徴の一つに電気抵抗の低いことがあげられ、その応用面で燃料電池、Liイオン二次電池の負極剤、フラットパネルディスプレイ用の電子放出源、あるいは透明導電材などが検討されている。例えば、特許文献1では、外径3.5nm未満のカーボンナノチューブを用い、透明性の良い導電性コーティングフィルムを得ることが提案されている。そこでは、カーボンの結晶層が1層のSWNTを用いることが好ましいとされている。
【0004】
ところで、カーボンナノチューブを形成しているカーボン結晶はグラファイトと同様に表面に官能基が少なく、分散剤などとの相互作用が小さいことから、均一で安定性の良好なカーボンナノチューブ分散液を得ることは難しい。そこで、CVD法(化学気相成長法)で作られたカーボンナノチューブを400〜600℃で熱処理、あるいは濃硝酸、濃硫酸などで酸処理し、アミノ基を含む高分子の溶液中に分散する(特許文献2)、プラズマ処理して表面に酸性官能基を設けたナノチューブを分散する(特許文献3)、あるいは、濃硝酸など酸化性を有する酸を用い酸性官能基で修飾されたカーボンナノチューブを塩基性極性溶剤に分散する(特許文献4)など、表面を化学修飾したカーボンナノチューブを用いて安定性の良い分散液を得ることが考えられてきた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−255985号公報
【特許文献2】特開2004−276232号公報
【特許文献3】特開2003−300716号公報
【特許文献4】特開2004−216516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、安定な分散液を得るために酸処理あるいはプラズマ処理などを行って表面を化学修飾したカーボンナノチューブを用いた場合、カーボンナノチューブの表面が汚染されるためか、あるいはカーボンナノチューブに欠陥が生じるためか、導電性が良好で透明性の高いカーボンナノチューブ塗膜を得ることは困難であった。
【0007】
本発明は、未処理のカーボンナノチューブと有機溶剤とを用いた系で分散安定性の良好な塗液(カーボンナノチューブ分散液)を提供し、さらにこれを塗布することにより得られる導電性塗膜(カーボンナノチューブ塗膜)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、カーボンナノチューブの分散特性に着目して検討を進めた結果、ナノチューブの直径、結晶性および種類が分散安定性に関連することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、カーボンナノチューブを溶剤に分散させてなるカーボンナノチューブ分散液において、直径10〜50nmのカーボンナノチューブと、塩基性官能基を含む化合物と、分子量15000以下の化合物と、ケトン系溶剤とを含有する構成としたものである。この場合のカーボンナノチューブとしては、結晶性が0.70〜1.50のカーボンナノチューブが好ましい。また、分子量15000以下の化合物としては、アクリル基、メタクリル基の少なくとも一方を含むアクリル系化合物が好ましい。ここで言う分子量とは重量平均分子量のことを意味する。
【0010】
本発明に係るカーボンナノチューブ塗膜は、上記カーボンナノチューブ分散液を基材(塗膜を形成しようとしているガラスやプラスチック等の部材)上に塗布することにより得られるもので、直径が10〜50nmの、好ましくはさらに加えて結晶性が0.70〜1.50のカーボンナノチューブを含む塗膜である。
【0011】
本発明において、特に、カーボンナノチューブにはグラフェンシートが複数層重なったMWNTタイプを用い、分散剤として塩基性官能基を含む化合物と、バインダとして分子量15000以下のアクリル系モノマーまたはオリゴマーを用い、溶剤にはケトン系有機溶剤を用いることが好ましい。ここで、ケトン系有機溶剤とは、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどのケトン類を溶剤組成中に単独もしくは複数種類を併せて50重量%以上含む有機溶剤系を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカーボンナノチューブ分散液を塗布することで、透明性が良好、すなわち全光線透過率が高く、ヘイズ値(以下、「ヘイズ」ともいう)が低く、また、表面電気抵抗が低い塗膜を得ることができる。塗膜中のカーボンナノチューブ含有量および塗膜厚みに全光線透過率、ヘイズおよび表面電気抵抗は依存するが、塗膜厚みを調整することで、全光線透過率は60%以上、ヘイズは2%以下、表面電気抵抗は105 Ω/□〜1011Ω/□の塗膜を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のカーボンナノチューブ分散液においては、直径が10nm以上かつ50nm以下、結晶性が0.70以上かつ1.50以下のカーボンナノチューブを用い、塩基性官能基を含む化合物、平均分子量15000以下のアクリル系モノマーまたはオリゴマーの少なくとも一方を用いる。このカーボンナノチューブ分散液を基材上に塗布することで、表面電気抵抗が103 Ω/□〜1011Ω/□の塗膜を得ることができる。この場合においてさらに、塗膜厚み、カーボンナノチューブの含有量を調整することで、波長380nm〜780nmの全光線透過率が60%以上、ヘイズが2%以下、表面電気抵抗が105 Ω/□〜1011Ω/□の範囲にあるカーボンナノチューブを含む塗膜を得ることができる。
【0014】
ここで、全光線透過率およびヘイズの測定は、分光光度計を用いて光源の補正、視感度の補正を行い評価できるが、本発明においては日本分光社製V−570分光光度計にILN−472型大型積分球装置およびヘイズ値計算プログラムを組み合わせて用いて行った。測定はレスポンスがQuick、バンド幅が2.0nm、近赤外が8.0nm、走査速度が400nm/minの条件で行い、計算は、視野が2度、光源がD65の条件で行った。また、表面電気抵抗は三菱油化社製LorestaまたはHirestaを用いて測定、評価した。
【0015】
カーボンナノチューブの直径はカーボンナノチューブまたは塗膜を電子顕微鏡(SEM)で観察して評価した。また、結晶性はラマンスペクトルを用いて評価した。本発明において結晶性はRENISHAW社製RAMASCOPEを用い、励起光源をArイオンレーザー(20mW)とし、スポット径〜20μm、対物レンズ50倍、フォーカス50%、ND100%,staticモード(center1500cm-1)、積算10秒×10回(n=4)の条件でラマンスペクトルを測定した。そして、グラファイト構造に起因すると考えられる1580cm-1ピーク(G)、崩れたグラファイトに起因すると考えられる1350cm-1ピーク(D)、C=C構造に起因すると考えられる1620cm-1ピークをカーブフィッティングし、GとDの面積比(G/D)を結晶性として評価した。
【0016】
本発明に係るカーボンナノチューブ塗膜は、カーボンナノチューブ分散液をガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの基材に塗布することにより得ることができる。前記カーボンナノチューブ分散液は、直径10nm以上、50nm以下のカーボンナノチューブと塩基性官能基を含む化合物とを有機溶剤中で混合、分散処理することで得られる。カーボンナノチューブの直径が10nm未満のものは分散性が劣り、また50nmを超えるものは分散安定性が劣る。カーボンナノチューブの直径は、SWNTの場合、いわゆる束構造(バンドル)を形成し、ナノチューブ1本の直径より太く観察される。本発明でいう直径は、バンドルでなく、本来の直径である。また、塩基性官能基を含む化合物には、分子量25000以下の塩基性官能基を含む高分子化合物などからなる分散剤を用いてもよい。このような分散剤の添加量は、カーボンナノチューブ100重量部(以下、「重量部」を単に「部」と略す)に対し、75部以上、1000部以下が好ましい。75部未満であると分散安定性が劣る。添加量が1000部を超えると、ヘイズが大きくなる傾向にある。使用可能な分散剤は、塩基性官能基を含むものが好ましく、例えば、アビシア社製ソルスパーズ24000SC、24000GR、32500、32550、32600、33000、34500、34750、35200、37500、39000など、BYKChemie社製Disperbyk109、180、187など、花王社製アミート105、302などがあげられる。このほか、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤なども好適に使用することができる。
【0017】
本発明で使用されるカーボンナノチューブは、結晶性が0.70以上、1.50以下のものが好ましい。結晶性が1.50より高いものを用いた場合、分散安定性が劣る。他方、0.70より小さいものを用いた場合、電気抵抗の値が高くなる。このようなカーボンナノチューブには、例えば、CNT社製C−Tube100、300などがあげられる。このようなカーボンナノチューブは熱CVD法で鉄などの金属触媒を用いて作製するなど、従来公知の方法で作製できる。
【0018】
本発明で使用されるバインダは、いわゆるオリゴマーあるいはモノマーが好ましい。これらを複数組み合わせて用いても良い。分子量は15000以下のものが好ましく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、などの放射線硬化モノマーが挙げられる。また、ジペンタエリスリトールをカプロラクトンで変性し(メタ)アクリレート化したもの、例えば、日本化薬社製DPCA−60、DPCA−90、DPCA−120なども用いてもよく、ビスフェノールAエポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレートを用いてもよい。また、放射線硬化性オリゴマーとしては、例えば根上工業社製アートレジンUN−3320HA、UN−3320HB、UN−3320HC、UN−3320HSなどがあげられる。このようなオリゴマー、モノマーは単独で、あるいは複数種組み合わせ用いてもよい。このようなバインダの添加量は、カーボンナノチューブ100部に対して100部以上、90000部以下が好ましい。バインダが100部より少ないと塗膜中のカーボンナノチューブ量が多いためかヘイズが大きくなる。また、90000部より多いと表面電気抵抗の低減効果が劣る。
【0019】
本発明で、バインダとして放射線硬化性のオリゴマーやモノマーを用いた場合、硬化のため、ガンマ線、電子線あるいは紫外線を好適に用いることができる。特に紫外線を用いることが簡便である。紫外線照射の光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプなどが使用される。照射エネルギー量は、100〜2000mJ/cm2 が好ましく、150〜1000mJ/cm2 がより好ましい。紫外線を用いる場合は、塗膜に紫外線硬化開始剤を含めることが必要であり、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4−ジエチルチオキサントン、o−ヘンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェン、ベンジル、2−クロロチオキサントン、ジイソプロピルチオザンソン、9,10−アントラキノン、ベンソイン、ベンソインメチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などを使用することが好ましい。このような紫外線硬化開始剤を含める場合、その添加量はバインダと分散剤の総量を100部とし、2部以上、20部以下が好ましい。2部より少ない場合は硬化性に劣り、20部より多い場合はヘイズが大きくなることがある。
【0020】
本発明における有機溶剤には、MEK、MIBK、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶剤などを単独でまたは複数混合して用いることが好ましい。なお、カーボンナノチューブ、分散剤、バインダなど固形分の濃度は、周知のように分散方法、塗布方法などに依存するので、一概に決めることはできない。しかしながら、おおよそ分散時にはカーボンナノチューブは10重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下が好ましい。10重量%より多い場合、粘度が高くなり分散しにくくなり、ヘイズが大きくなる傾向にある。
【0021】
本発明のカーボンナノチューブ分散液は、サンドグラインダーミルなどのビーズミル、超音波分散機、アトライターなど従来公知の方法で分散処理し、作製しても良い。特に、カーボンナノチューブを痛めずに分散処理するには、超音波分散機を用いることが好ましい。
【0022】
本発明のカーボンナノチューブ塗膜は、分散液を従来公知の方法にしたがい、たとえば、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、エアナイフコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法などの方法で、基材上に塗布したのち、放射線を照射し硬化させることにより形成できる。このカーボンナノチューブの塗膜厚は、0.01μm以上、100μm以下が好ましく、0.05μm以上、20μm以下がより好ましい。0.01μm未満では塗膜が傷つきやすく、100μmを超えると、シートに反りを生じやすくなるためである。基材には、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースなどセルロース系フィルム、ナイロンなどポリアミド系フィルム、またポリアミド−イミド系フィルム、などを用いても良い。
【実施例1】
【0023】
『組成物A1』
・カーボンナノチューブ (CNT社製 C−Tube100) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物 2.5部
(アビシア社製 ソルスパーズ37500 固形分40重量%)
・MEK 38.25部
・トルエン 19.13部
・シクロヘキサノン 19.13部
【0024】
上記組成物A1を混合かく拌した後、超音波処理し一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザー「UH−600型」を用いて行った。ついで、下記組成物B1を混合かく拌し、前記一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液1を得た。なお、実施例1の場合、上記一次分散液100部に対する下記組成物B1の添加量は、下記組成物B1の成分の合計量(401.88部)である(下記実施例2等においてもこれに準ずる)。
【0025】
『組成物B1』
・分子量15000以下の化合物(日本化薬社製 DPHA) 42.63部
・UV開始剤(チバ社製 イルガキュア907) 4.88部
・MEK 177.19部
・トルエン 88.59部
・シクロヘキサノン 88.59部
【実施例2】
【0026】
『組成物A2』
・カーボンナノチューブ(CNT社製 C−Tube100) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物 22.25部
(アビシア社製 ソルスパーズ37500 固形分40重量%)
・MEK 28.25部
・トルエン 14.13部
・シクロヘキサノン 14.13部
【0027】
上記組成物A2を混合かく拌した後、超音波処理して一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザーを用いて行った。ついで、下記組成物B2を混合かく拌し、前記一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液2を得た。
【0028】
『組成物B2』
・分子量15000以下の化合物(日本化薬社製 PE−3A) 383.40部
・UV開始剤(チバ社製 イルガキュア907) 20.77部
・MEK 6.35部
・トルエン 3.18部
・シクロヘキサノン 3.18部
【実施例3】
【0029】
『組成物A3』
・カーボンナノチューブ(三京化成社製 100G) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物 1.88部
(アビシア社製 ソルスパーズ32500 固形分40重量%)
・MEK 115.23部
・トルエン 57.61部
・シクロヘキサノン 57.61部
【0030】
上記組成物A3を混合かく拌した後、超音波処理して一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザーを用いて行った。ついで、下記組成物B3を混合かく拌し、前記一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液3を得た。
【0031】
『組成物B3』
・分子量15000以下の化合物 1.74部
(根上工業社製 UN−3320HA)
・UV開始剤(チバ社製 イルガキュア907) 0.36部
・MEK 56.33部
・トルエン 28.17部
・シクロヘキサノン 28.17部
【実施例4】
【0032】
『組成物A4』
・カーボンナノチューブ(CNT社製 C−Tube100) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物 1.5部
(アビシア社製 ソルスパーズ32500 固形分40重量%)
・MEK 105.42部
・トルエン 52.71部
・シクロヘキサノン 52.71部
【0033】
上記組成物A4を混合かく拌した後、超音波処理して一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザーを用いて行った。ついで、下記組成物B4を混合かく拌し、前記一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液4を得た。
【0034】
『組成物B4』
・分子量15000以下の化合物(日本化薬社製 DPHA) 16.17部
・UV開始剤(チバ社製 イルガキュア907) 1.83部
・MEK 34.96部
・トルエン 17.48部
・シクロヘキサノン 17.48部
【0035】
[比較例1]
『組成物A5』
・カーボンナノチューブ(NTP社製 L.SWNT) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物 10.5部
(アビシア社製 ソルスパーズ32500 固形分40重量%)
・MEK 109.25部
・トルエン 54.63部
・シクロヘキサノン 54.63部
【0036】
上記組成物を混合かく拌した後、超音波処理し一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザーを用いて行った。ついで、下記組成物B5を混合かく拌し、前記一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液5を得た。
【0037】
『組成物B5』
・分子量15000以下の化合物(日本化薬社製 DPHA) 10.70部
・UV開始剤(チバ社製 イルガキュア907) 1.70部
・MEK 52.50部
・トルエン 26.25部
・シクロヘキサノン 26.25部
【0038】
[比較例2]
『組成物A6』
・カーボンナノチューブ (CNI社製 XD Grade) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物 2.5部
(アビシア社製 ソルスパーズ32500 固形分40重量%)
・MEK 78.25部
・トルエン 39.13部
・シクロヘキサノン 39.13部
【0039】
上記組成物A6を混合かく拌した後、超音波処理し一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザーを用いて行った。ついで、下記組成物B6を混合かく拌し、前記一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液6を得た。
【0040】
『組成物B6』
・分子量15000以下の化合物(日本化薬社製 DPHA) 21.31部
・UV開始剤(チバ社製 イルガキュア907) 2.44部
・MEK 63.59部
・トルエン 31.80部
・シクロヘキサノン 31.80部
【0041】
《カーボンナノチューブ分散液についての評価》
上記の各実施例および比較例でそれぞれ得られたカーボンナノチューブ分散液30gを容量50ミリリットルのスクリュー管瓶に入れ、冷暗所で1日放置し、瓶底に沈降物が生じるか否かにより分散安定性を確認した。各実施例および比較例で使用したカーボンナノチューブの特性と瓶底の観察結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1で実施例1、2および3は、直径10〜50nmで、結晶性0.70〜1.50のカーボンナノチューブを用いたので、分散安定性が良好であった。実施例4は塩基性官能基を有する化合物の添加量がカーボンナノチューブに対し75%未満であったので分散安定性が劣った。比較例1および比較例2は直径が10nm未満あるいは結晶性が1.5より大きかったので分散安定性が著しく劣った。
【0044】
[参考例1]
前記分散液1を遠心分離処理(3000G/5分)を行い、ワイヤーバーを用いて厚み100μmのPETフィルムに塗布、90℃で乾燥後、紫外線を照射(200mJ/cm2 )し、塗膜1を得た。
【0045】
[参考例2]
前記分散液2を遠心分離処理(3000G/5分)を行い、ワイヤーバーを用いて厚み100μmのPETフィルムに塗布、90℃で乾燥後、紫外線を照射(200mJ/cm2 )し、塗膜2を得た。
【0046】
[参考例3]
前記分散液3を遠心分離処理(3000G/5分)を行い、ワイヤーバーを用いて厚み100μmのPETフィルムに塗布、90℃で乾燥後、紫外線を照射(200mJ/cm2 )し、塗膜3を得た。
【0047】
[参考例4]
『組成物A7』
・カーボンナノチューブ(CNT社製 C−Tube200) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物
(アビシア社製 ソルスパーズ37500 固形分40重量%) 1.88部
・MEK 38.25部
・トルエン 19.13部
・シクロヘキサノン 19.13部
【0048】
上記組成物A7を混合かく拌した後、超音波処理して一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザーを用いて行った。ついで、下記組成物B7を混合かく拌し、一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液7を得た。
【0049】
『組成物B7』
・分子量15000以下の化合物(日本化薬社製 DPHA) 36.78部
・UV開始剤(チバ社製 イルガキュア907) 10.73部
・MEK 177.19部
・トルエン 88.59部
・シクロヘキサノン 88.59部
【0050】
得られたカーボンナノチューブ分散液7を遠心分離処理(3000G/5分)し、ワイヤーバーを用いて厚み100μmのPETフィルムに塗布、90℃で乾燥後、紫外線を照射(200mJ/cm2 )し、塗膜4を得た。
【0051】
[参考例5]
『組成物A8』
・カーボンナノチューブ(CNT社製 C−Tube100) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物 10.5部
(アビシア社製 ソルスパーズ24000 固形分100重量%)
・MEK 40.25部
・トルエン 20.13部
・シクロヘキサノン 20.13部
【0052】
上記組成物A8を混合かく拌した後、超音波処理して一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザーを用いて行った。ついで、下記組成物B8を混合かく拌し、前記一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液8を得た。
【0053】
『組成物B8』
・分子量15000以下の化合物(日本化薬社製 TMPTA) 1020.16部
・UV開始剤(チバ社製 イルガキュア907) 54.29部
・MEK 33.89部
・トルエン 16.94部
・シクロヘキサノン 16.94部
【0054】
得られたカーボンナノチューブ分散液8を遠心分離処理(3000G/5分)し、ワイヤーバーを用いて厚み100μmのPETフィルムに塗布、90℃で乾燥後、紫外線を照射(200mJ/cm2 )し、塗膜3を得た。
【0055】
[参考例6]
『組成物A9』
・カーボンナノチューブ(CNT社製 C−Tube100) 1.0部
・塩基性官能基を含む化合物 2.50部
(アビシア社製 ソルスパーズ37500 固形分40重量%)
・MEK 38.25部
・トルエン 19.13部
・シクロヘキサノン 19.13部
【0056】
上記組成物A9を混合かく拌した後、超音波処理し一次分散液を得た。超音波処理は、SMT社製超音波ホモジナイザーを用いて行った。ついで、下記組成物B9を混合かく拌し、前記一次分散液の100部に添加し、カーボンナノチューブ分散液9を得た。
【0057】
『組成物B9』
・高分子化合物(積水化学工業社製 BL−S 分子量23000) 47.50部
・MEK 177.19部
・トルエン 88.59部
・シクロヘキサノン 88.59部
【0058】
得られたカーボンナノチューブ分散液9を遠心分離処理(3000G/5分)を行い、ワイヤーバーを用いて厚み100μmのPETフィルムに塗布、90℃で乾燥後、紫外線を照射(200mJ/cm2 )し、塗膜6を得た。
【0059】
《塗膜についての評価》
参考例1〜6で得られた各塗膜について、全光線透過率、ヘイズおよび表面電気抵抗をそれぞれ測定した。表2に、その結果を示す。
・全光線透過率およびヘイズ:日本分光社製V−570分光光度計
・表面電気抵抗:三菱油化社製Hiresta
【0060】
【表2】

【0061】
参考例1〜3に係る各塗膜は、本発明のカーボンナノチューブ分散液を塗布して得られたもので、表2からわかるようにヘイズおよび表面電気抵抗は相対的に低い。参考例4で用いたカーボンナノチューブは、実施例1で用いたカーボンナノチューブを酸化処理したものであり、直径は19nm、結晶性は1.52であった。また、UV開始剤の添加量が多いので、ヘイズおよび表面電気抵抗が高い。参考例5に係る塗膜は、分散剤の使用量が多く、またUVモノマーの使用量が多いので、ヘイズおよび表面電気抵抗が高い。参考例6に係る塗膜は、分子量が15000より大きい化合物を用いたので表面電気抵抗が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを溶剤に分散させてなるカーボンナノチューブ分散液であって、
直径10〜50nmのカーボンナノチューブと、塩基性官能基を含む化合物と、分子量15000以下の化合物と、ケトン系溶剤とを含有していることを特徴とするカーボンナノチューブ分散液。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの結晶性が0.70〜1.50であり、
前記塩基性官能基を含む化合物が分散剤であり、
前記分子量15000以下の化合物がアクリル基、メタクリル基の少なくとも一方を含む化合物である、請求項1記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項3】
カーボンナノチューブ100重量部に対し、前記塩基性官能基を含む化合物が75〜1000重量部、アクリル基、メタクリル基の少なくとも一方を含む化合物が100〜90000重量部それぞれ含まれている、請求項1または2記載のカーボンナノチューブ分散液。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液を基材上に塗布することにより形成されたカーボンナノチューブ塗膜。

【公開番号】特開2008−24568(P2008−24568A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201341(P2006−201341)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】