カーボン・ナノチューブ浸出電極材料を含む螺旋に巻き付けられた電気機器及びその生産方法並びに生産装置
【解決手段】基材に浸出されたカーボンナノチューブを含む電極を有する電気機器について説明する。前記電気機器は、少なくとも、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボンナノチューブを含む第1の電極材料と、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボンナノチューブを含む第2の電極材料と、を含む。前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料は、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。前記電気機器は、スーパーキャパシタとすることができ、これは少なくとも、第1の電極材料及び第2の電極材料と接触している電解質、及び第1の電極材料と第2の電極材料の間に配置された第1のセパレータ材料も含む。前記電気機器を作成する方法及び装置についても説明する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、エネルギー貯蔵に関し、特に、カーボン・ナノチューブを使用したエネルギー貯蔵に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2010年3月2日出願の米国仮特許出願第61/309,828号に対する優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究又は開発の記録)
該当なし
【背景技術】
【0004】
コンデンサは、電荷の蓄積及び貯蔵に使用される電気機器である。コンデンサは少なくとも2つの点でバッテリと区別される。第一に、コンデンサの電荷貯蔵は、バッテリの化学的分離ではなく、物理的電荷分離に基づいている。第二に、コンデンサの充電及び放電速度はバッテリ内で生じる化学反応よりはるかに迅速である。
【0005】
従来のコンデンサでは、電荷分離は、誘電体材料によって分離された2枚の導電板によって維持される。印加電位が存在する状態で、誘電体材料内で電界が増強され、導電板間に機械的力が発生する。導電板上に維持される電荷と導電板間の電位差との比率を、キャパシタンスと呼び、ファラド単位で測定する。
【0006】
従来のコンデンサの様々な改良品も開発されている。電解コンデンサは、導電板の一方としてイオン含有液を使用する。このような電解コンデンサは、通常、従来のコンデンサよりはるかに高いキャパシタンス値を示す。しかし、各導電板を分極電圧状態に維持するという要件によって、その有用性はある程度限定される。
【0007】
スーパーキャパシタは、電気二重層コンデンサ、電気化学二重層コンデンサ、スーパーコンデンサ、ウルトラコンデンサ、又は疑似コンデンサとも呼ばれ、さらに高いキャパシタンス値を示すことができる。スーパーキャパシタは、導電板の著しい物理的分離がないという点で、従来のコンデンサ及び電解コンデンサとは著しく異なる。代わりに、スーパーキャパシタは、導電板間に無視できるほどの薄い物理的バリア(<100μm)を組み込むことによって電荷分離を維持する。前記物理的バリアは、スーパーキャパシタが帯電状態にある場合に電荷の分離を効果的に維持する一方、急速な充放電を可能にするために電荷キャリアに対しては十分に透過性を有する。
【0008】
多くの従来のスーパーキャパシタは、現状では、その内部に分散する電解質から電荷キャリアを保持するために大きな表面積基材として、活性炭粒子を使用している。活性炭粒子は大きい表面積を有するが、わずかな電荷キャリアが、活性炭粒子の多孔質内部に浸透しその大きい表面積をうまく利用するには大きすぎる。図1は、活性炭粒子105を含有する例示的な従来のスーパーキャパシタ100の概略図を示す。スーパーキャパシタ100は、正極端子103及び負極端子104にそれぞれ接続された導電層101及び102を含む。導電層101及び102は、それぞれ、活性炭粒子105と、活性炭粒子105と混合した陽イオン106及び陰イオン107を含有する電解質と、を含む。陽イオン106及び陰イオン107は、活性炭粒子105の内部又は外部に存在することができる。導電層101及び102は、電解質の陽イオン106及び陰イオン107に対して透過性を有するセパレータ材料の層108によって、互いに物理的に隔離されている。図1に示すスーパーキャパシタ100は、放電状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カーボン・ナノチューブなどの特定の高性能材料が、その高い使用し易い(accessible)表面積により、スーパーキャパシタ中の活性炭粒子の代替品として提案されている。カーボン・ナノチューブは、これに関してその導電性によりさらに有利になり得る。カーボン・ナノチューブは、スーパーキャパシタの性能を改善するためにかなりの潜在能力を有するが、今日までの研究努力は、スーパーキャパシタの電解質媒体中に少量のカーボン・ナノチューブをランダムに分散させるほどの成功しかしていない。したがって、現在の製造技術は、僅かなカーボン・ナノチューブを含むスーパーキャパシタの生産にしか適用可能でなく、電気貯蔵容量が少ない。
【0010】
以上を鑑みて、大量のカーボン・ナノチューブを含むスーパーキャパシタは、電気貯蔵容量が増大するので、当技術分野において著しく有益である。このようなスーパーキャパシタを容易に準備する方法及び装置を提供することも、当技術分野において大いに有益である。同様の理由で、自身内にカーボン・ナノチューブを容易に組み込むことにより他の電気機器にも有利になり得る。本発明はこれらの要求を満足させ、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある実施形態では、本明細書で説明する電気機器は、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料と、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料と、を含む。第1の電極材料及び第2の電極材料は、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。
【0012】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料を提供するステップと、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を提供するステップと、前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるステップと、を含む。
【0013】
他の実施形態では、本明細書で説明する方法は、第1の繰り出しリール上に巻き取り可能な寸法の第1の基材及び第2の繰り出しリール上に巻き取り可能な寸法の第2の基材を提供するステップと、カーボン・ナノチューブを浸出するように、カーボン・ナノチューブ成長反応器を通して前記第1の基材及び前記第2の基材を搬送し、それにより、前記第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料、及び前記第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を形成するステップと、前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるステップとを含む。
【0014】
ある実施形態では、本明細書で説明する装置は、カーボン・ナノチューブ成長反応器と、前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流の第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリールと、カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流の第3の繰り出しリールと、巻き取りリールと、を含む。前記第1の繰り出しリール及び前記第2の繰り出しリールは、カーボン・ナノチューブ成長反応器を通して第1の基材及び第2の基材を連続的に搬送し、カーボン・ナノチューブを浸出するように、カーボン・ナノチューブ成長反応器に動作可能に連結される。前記第3の繰り出しリールは、カーボン・ナノチューブ成長反応器の出力に動作可能に結合されて、第1の基材、第2の基材、及び第1の基材と第2の基材との間に配置された第3の繰り出しリールの出力とを含む層状構造を形成するようになっている。前記巻き取りリールは、前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるように動作可能である。
【0015】
以上は、以下の詳細な説明をよりよく理解できるように、本開示の特徴をかなり広義に概略説明している。本開示の追加の特徴及び利点を以降で説明するが、これは特許請求の範囲の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】活性炭粒子を含む例示的な従来技術のスーパーキャパシタの概略図を示す。
【図2】螺旋の隣接する腕の間に実質的に一定の間隔があることを示す、例示的な2次元のアルキメデスの螺旋を示す。
【図3A】本発明の電気機器のある実施形態の例示的層状構造の概略図を示す。
【図3B】中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Aの層状構造を含む例示的な電気機器の概略図を示す。
【図3C】浸出したカーボン・ナノチューブを示す図3Aの層状構造の概略図を示す。
【図3D】絶縁体材料を含む本発明の電気機器のある実施形態の例示的な層状構造の概略図を示す。
【図3E】中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Dの層状構造を含む例示的な電気機器の概略図を示す。
【図3F】第2のセパレータ材料を含む本発明の電気機器のある実施形態の例示的な層状構造の概略図を示す。
【図3G】中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Fの層状構造を含む例示的な電気機器の概略図を示す。
【図3H】螺旋形態の最外表面が絶縁体材料で被覆された図3Gの電気機器の概略図を示す。
【図4A】第1の電極材料の縁部と第2の電極材料の縁部とが相互にずれている例示的な部分的に巻き付けられていない螺旋形態の概略図を示す。
【図4B】図4Aの螺旋形態が例示的なハウジング内に配置されている概略図を示す。
【図5】コインプレスのサンプルスーパーキャパシタ構造の概略図を示す。
【図6】本開示のスーパーキャパシタの例示的なサイクリックボルタモグラムを示す。
【図7】本明細書で説明する電気機器の特定の実施形態を準備するために用いられる例示的装置の概略図を示す。
【図8】絶縁体材料で螺旋形態を密封することなく電気的分離を達成する本発明の電気機器の別の実施形態を準備する例示的装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示及びその利点をよりよく理解するために、本開示の特定の実施形態について説明する添付図面と組み合わせて以下の説明を参照されたい。
【0018】
本開示は、部分的に、基材に浸出されたカーボン・ナノチューブから形成された電極材料(すなわち、カーボン・ナノチューブ浸出基材又はカーボン・ナノチューブ浸出基材材料)を有する層状構造を含む電気機器を説明し、層状構造は中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。本開示は、部分的に、このような電気機器を作成する方法も説明する。また、本開示は、部分的に、このような電気機器を作成する装置も説明する。
【0019】
上述したように、スーパーキャパシタは、通常、従来のコンデンサ又は電解コンデンサよりはるかに高いキャパシタンス値を示す。したがって、例えば、太陽エネルギー集積、水力発電エネルギー集積、及び風力発電エネルギー集積など、エネルギー貯蔵用途において多大な関心を得ている。スーパーキャパシタは、充放電サイクルが高速であるので、上記及びその他の目的に非常に適したものとなる。何故なら、スーパーキャパシタは、電力網の要求が低い場合は余分なエネルギーを容易に蓄え、電力網の要求が高い場合は貯蔵したエネルギーを迅速に放出できるからである。さらに、スーパーキャパシタは、数十万回も劣化せずに充放電することができ、それに関してバッテリより相当に優れたものになる。加えて、スーパーキャパシタの高速の充放電サイクル及びその充電/放電安定性により、例えばガソリンと電気のハイブリッド車など、多数の高速の充放電サイクルが望ましい用途に特に適したものになる。
【0020】
上記及び他の用途における関心の増大とともに、現在使用可能なものよりエネルギー貯蔵限度がさらに高いスーパーキャパシタが必要とされている。スーパーキャパシタのキャパシタンスは、電極の表面積(例えば導電板の面積)に比例する。活性炭粒子を含む従来のスーパーキャパシタでは、所与のサイズの電極に対して増加させることができる電極の有効表面積について、本質的な限界がある。すなわち、従来のスーパーキャパシタに使用される活性炭粒子は、漸近キャパシタンス値に到達する前までしか小さくすることができない。さらに、活性炭粒子中の細孔のサイズは限定されているので、有効表面積が減少し、比較的大きい電解質では問題になることがある。カーボン・ナノチューブは、活性炭よりも単位重量当たりの有効表面積をはるかに大きくすることができるので、これらの存在はスーパーキャパシタのキャパシタンスを大幅に増加させる潜在力を提供する。その有望性にもかかわらず、極めて高い有効表面積を確実に活用できる状態で、カーボン・ナノチューブをスーパーキャパシタ及び他の電気機器に配置することは、これまで困難であった。
【0021】
本開示の実施形態は、基材に浸出されたカーボン・ナノチューブから作成された電極材料を含むスーパーキャパシタ及び他の電気機器について説明する。連続繊維にカーボン・ナノチューブを浸出するための連続プロセスは、すべて2009年11月2日出願の本出願人の同時係属米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、及び第12/611,103号、及び2010年11月2日出願の第12/938,328号に記載されており、上記出願のそれぞれは、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。このようなカーボン・ナノチューブ浸出繊維の繊維材料は、通常、制限なく変更することができ、例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、及び有機繊維(例えばアラミド繊維)を挙げることができる。このようなカーボン・ナノチューブ浸出繊維は、市販の連続する個々の繊維又は連続繊維形態(例えば、繊維トウ、テープ、フィルム、織布及び不織布、マット、プライ及びリボン)から巻き取り可能な寸法で容易に準備することができる。カーボン・ナノチューブの長さ、直径、及び繊維材料上の被覆密度は、上記の方法を適用することにより容易に変更することができる。さらに、これらの方法は、カーボン・ナノチューブを浸出するために、例えばシート、箔及びフィルムなど、他の連続長で非繊維質の基材にも容易に適合させることができる。カーボン・ナノチューブ浸出繊維及びその生産方法に関するさらなる詳細は、以下でさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の実施形態では、基材又は基材材料に言及した場合、それはカーボン・ナノチューブが浸出される繊維質材料と非繊維質材料の両方を含むということが理解されるであろう。本明細書の特定の実施形態は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維について説明している本出願人の同時係属特許出願を参照することがあるが、上述の方法のルーチンの変更により、任意の同様の連続長基材(例えば、巻き取り可能な寸法の繊維質又は非繊維質基材)に、同様にカーボン・ナノチューブを浸出できることが理解されるであろう。
【0023】
その成長条件に応じて、連続繊維及び同様の基材に浸出されたカーボン・ナノチューブは、繊維材料又は基材の表面に実質的に垂直又は実質的に平行になるように配向されるであろう。本発明の実施形態では、カーボン・ナノチューブを実質的に垂直に配向することによって、さらに大きい有効電極表面積を実現することができる。これは、外面に完全に露出できるように、カーボン・ナノチューブが実質的に分離された状態で存在する場合に特に当てはまる。カーボン・ナノチューブ浸出繊維及び同様の基材を準備する上述の方法は、実質的に分離した状態で実質的に垂直のカーボン・ナノチューブ配向を達成するのに特に熟達しており、それにより、本発明の実施形態の電極材料として使用するために高い有効表面積を有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維及び同様の基材を提供する。しかし、本発明の開示の精神と範囲内にありながら、基材表面に対して実質的に平行な配向など、基材上のカーボン・ナノチューブの任意の配向が、本発明の実施形態で使用することができる。
【0024】
本発明のスーパーキャパシタの実施形態では、カーボン・ナノチューブが活性炭粒子に取って代わるだけでなく、カーボン・ナノチューブ自体が基本的に電極と区別不能となる。活性炭粒子を含む従来のスーパーキャパシタでは、活性炭粒子に接触している電極プレートがある(図1参照)。しかし、従来のスーパーキャパシタでは、活性炭粒子が電極プレートに浸出されない。本発明の実施形態では、カーボン・ナノチューブが基材に強力に浸出し、それによって、カーボン・ナノチューブ自体が電極から区別不能になる。この特徴は、スーパーキャパシタ及び他の電気機器の設計に新しいパラダイムを提示する。
【0025】
さらに、本発明の電気機器は、それぞれが基材及び浸出された複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料及び第2の電極材料を含んだ層状構造を有し、この層状構造は、電気機器内に螺旋形態(例えば、アルキメデスの螺旋又は同様の螺旋構造)で巻き付けられる。ある実施形態では、層状構造の螺旋形態は、アルキメデスの螺旋に見られるように螺旋の隣接するアーム間に実質的に一定の間隔があるように中心軸の周囲に巻き付けられる。図2は、例示的な2次元のアルキメデスの螺旋を示し、螺旋の隣接するアームの間の実質的に一定の間隔を示す。以降で説明するように、螺旋形態内にある電極材料の隣接する層間の実質的に一定の間隔は、例えば、絶縁体材料の層又はセパレータ材料の層のように介在する層によって提供することができる。
【0026】
本発明の実施形態の螺旋形態は、非常に大きい有効表面積を有する電極材料を、最小容積を有する電気機器にパック詰めすることを可能にすることも利点である。例えば、基材材料上のカーボン・ナノチューブの長さ、直径、及び被覆密度などの要因に応じて、活性炭粒子で従来達成可能であったものよりはるかに大きい有効表面積を有する電極材料を生産することができる。上述したように、これらのパラメータのすべては、カーボン・ナノチューブ浸出繊維生産用の上記の方法において容易に変更される。したがって、これらのパラメータを使用して、本発明の電気機器の電気特性を調整することができる。
【0027】
本明細書で使用する用語「螺旋形態(spiral configuration)」とは、中心軸の周囲に巻き付けられた非弦巻状(non-helical)の層状構造をいう。様々な実施形態で、本発明の電気機器の螺旋形態は、3次元に拡張したアルキメデスの螺旋のそれを近似することができる。中心軸の周囲の巻き付けは、時計回り又は反時計回りで実行することができる。
【0028】
本明細書で使用する用語「基材」又は「基材材料」とは、カーボン・ナノチューブを浸出することができる任意の材料をいい、用語「連続基材」とは、巻き取り可能な長さの基材をいう。
【0029】
本明細書で使用する用語「繊維」、「繊維材料」、又は「フィラメント(filament)」とは、等価的に、基本的構造形態として繊維質成分を有する基材をいう。本明細書で使用する用語「連続繊維」とは、個々のフィラメント、ヤーン、ロービング、トウ、テープ、リボン、織布及び不織布(例えば繊維シート)、プライ、マットなどの巻き取り可能な長さの繊維をいう。
【0030】
本明細書で使用する用語「巻き取り可能な長さ」又は「巻き取り可能な寸法」とは、等価的に、カーボン・ナノチューブの浸出前又は浸出後にスプール又はマンドレル上に巻き取っておくことが可能な、長さの限定されない、基材の有する少なくとも1つの寸法をいう。巻き取り可能な長さ又は巻き取り可能な寸法の基材は、基材へのカーボン・ナノチューブ浸出のためのバッチ処理又は連続処理のいずれかの使用を示唆する、少なくとも1つの寸法を有する。
【0031】
本明細書で使用する用語「浸出する」とは結合されることをいい、用語「浸出」とは結合処理をいう。したがって、用語「カーボン・ナノチューブ浸出基材」とは、自身に結合されたカーボン・ナノチューブを有する基材をいう。さらに、用語「カーボン・ナノチューブ浸出繊維」とは、自身に結合されたカーボン・ナノチューブを有する繊維材料をいう。基材又は繊維材料へのカーボン・ナノチューブの結合は、機械的連結、共有結合、イオン結合、π−π相互作用(πスタッキング相互作用)及び/又はファン・デル・ワールス力の介在による物理吸着などが含まれ得る。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは基材又は繊維材料に直接結合される。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの成長を仲介するために用いられるバリア・コーティング及び/又は触媒ナノ粒子を介して基材又は繊維材料に間接的に結合される。カーボン・ナノチューブを基材又は繊維材料に浸出させる具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0032】
本明細書で使用する用語「ナノ粒子」とは、球の等価直径が約0.1nmから約100nmの間の直径を有する粒子をいうが、ナノ粒子は必ずしも形状が球形である必要はない。本明細書で使用する用語「触媒ナノ粒子」とは、カーボン・ナノチューブの成長を仲介する触媒活性を保有するナノ粒子をいう。
【0033】
本明細書で使用する用語「遷移金属」とは、周期表のd‐ブロック(3族から12族)におけるあらゆる元素又はその合金をいう。また、用語「遷移金属塩」とは、あらゆる遷移金属化合物(例えば、遷移金属元素の酸化物、炭化物、窒化物など)をいう。カーボン・ナノチューブを合成するために適した触媒ナノ粒子を形成する例示的な遷移金属は、例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、Ag、並びにこれらの合金、塩及び混合物が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用する用語「サイジング剤」又は「サイジング」とは、繊維材料の製造において、繊維材料を完全な状態で保護するか、繊維材料とマトリックス材料との間の界面相互作用を向上させるか、及び/又は繊維材料の特定の物理的特性を変更及び/又は向上させるためのコーティングとして使用される材料をいう。
【0035】
本明細書で使用する用語「長さが均一」とは、約1μmから約500μmの範囲にあるカーボン・ナノチューブ長に関して、カーボン・ナノチューブが、カーボン・ナノチューブの全長の±約20%又はそれ未満の許容誤差を伴う長さを有する状態をいう。極めて短いカーボン・ナノチューブ長(例えば、1μm〜4μmなど)では、この誤差は、±約1μm、すなわち、カーボン・ナノチューブの全長の約20%よりも若干大きくなるであろう。
【0036】
本明細書で使用する用語「密度分布が均一」とは、基材又は繊維材料上のカーボン・ナノチューブの被覆密度が、カーボン・ナノチューブによって覆われる基材又は繊維材料表面積に対して約±10%の許容誤差を有する状態を指す。
【0037】
本明細書で使用する用語「連続プロセス」とは、実質的に中断しない状態で実行される多段階プロセスをいう。
【0038】
ある実施形態では、本明細書で説明する電気機器は、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料と、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料とを含む。前記第1の電極材料及び第2の電極材料は、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。電気機器の様々な実施形態が、図3A〜図3H、図4A及び図4Bに図示されており、それについては以下でさらに詳細に説明する。
【0039】
ある実施形態では、電気機器は、スーパーキャパシタを構成する。このような実施形態では、電気機器は、前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料と接触する電解質と、電解質のイオンに対して透過性であり、第1の電極材料と第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料と、をさらに含む。
【0040】
本発明の実施形態の基材に浸出されるカーボン・ナノチューブのタイプは、通常、無制限に変更することができる。様々な実施形態では、基材に浸出されたカーボン・ナノチューブは、例えば任意の数のフラーレン族の炭素の円筒形同素体であり、単層カーボン・ナノチューブ、二層カーボン・ナノチューブ、多層カーボン・ナノチューブ、及びその任意の組合せがある。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを、フラーレン状構造で閉塞することができる。言い換えると、カーボン・ナノチューブは、このような実施形態では閉鎖端を有する。しかし、他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、開放端のままである。ある実施形態では、閉塞されたカーボン・ナノチューブの端は、適切な酸化剤(例えばHNO3/H2SO4)で処理することによって開口できる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは他の物質(例えば金属ナノ粒子)を封入することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、繊維材料に浸出された後に共有結合的に機能化することができる。ある実施形態では、プラズマプロセスを使用して、カーボン・ナノチューブの機能化を促進することができる。
【0041】
カーボン・ナノチューブは、そのキラリティに応じて金属質、半金属質又は半導電性となり得る。カーボン・ナノチューブのキラリティを示すために確立された命名システムが当業者には認識されており、2つの指数(n,m)で識別され、ここで、n及びmは、管状構造に形成された場合の六方晶系のグラファイトの切断部及び巻き方を表す整数である。キラリティに加えて、カーボン・ナノチューブの直径は、その電気伝導性及び関連する熱伝導性の特性にも影響する。カーボン・ナノチューブを合成する際に、カーボン・ナノチューブの直径は、一定のサイズの触媒ナノ粒子を使用することによって制御することができる。通常、カーボン・ナノチューブの直径は、その構成に触媒作用を及ぼす触媒ナノ粒子の直径に近い。したがって、カーボン・ナノチューブの特性は、例えばこれらの合成に使用する触媒ナノ粒子のサイズを調節することによって制御することができる。非限定的な例として、約1nmの直径を有する触媒ナノ粒子を使用して、基材に単層カーボン・ナノチューブを浸出することができる。より大きい触媒ナノ粒子は、主に多層カーボン・ナノチューブを作成するために使用され、これらはナノチューブ層が複数あるため又は単層カーボン・ナノチューブと多層カーボン・ナノチューブの混合であるため、さらに大きい直径を有する。多層カーボン・ナノチューブは、通常、単層カーボン・ナノチューブより複雑な伝導性プロファイルを有する。何故なら、壁間反応が個々のナノチューブ層間に生じて電流を不均一に再配分することがあるからである。対照的に、単層カーボン・ナノチューブでは、異なる部分にまたがる電流に変化がない。
【0042】
一般的に、本発明の実施形態における基材に浸出されるカーボン・ナノチューブは、任意の長さとすることができる。本発明の実施形態では、比較的長いカーボン・ナノチューブの方が、より大きい有効表面積を有する電極材料を提供できるので、通常は有利である。様々な実施形態では、カーボン・ナノチューブは、約1μmから約100μmまでの間、又は約1μmから約500μmまでの間の範囲の長さを有することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、約100μmから約500μmまでの間の範囲の長さを有することができる。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、約1μmから約50μmまでの間、又は約10μmから約25μmまでの間の範囲の長さを有することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、実質的に均一な長さとすることができる。
【0043】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μmから約500μmの間であり、それは約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μm未満であり、それは例えば約0.5μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μmから約10μmの間であり、それは例えば約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。さらに他の実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約500μmより大きく、それは例えば約510μm、約520μm、約550μm、約600μm、約700μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。
【0044】
カーボン・ナノチューブの平均長さは、本発明の実施形態で基材に浸出されるカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージを決定する1つの要因になり得る。一般的に、前述した同時係属特許出願に記載されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維は、他の方法で得られる値よりはるかに高いカーボン・ナノチューブ担持パーセンテージを有する。例えば、カーボン・ナノチューブ浸出繊維は、重量で約1%から約30%又は約40%から約50%の範囲の浸出繊維を含有することができる。基材に浸出されるカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージは、本発明の実施形態ではこれに相当する範囲を上回って変更することができる。選択されたカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージは、本発明のスーパーキャパシタの実施形態における望ましいキャパシタンスによって規定することができる。さらに、浸出されたカーボン・ナノチューブは、予め形成したカーボン・ナノチューブを単純に付着させて得られるより、本発明の実施形態における基材に対してはるかに強力に結合される。
【0045】
基材上のカーボン・ナノチューブの被覆密度は、浸出されるカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージを決定する別の要因になる。ある実施形態では、基材に浸出されるカーボン・ナノチューブは、一般的に、密度分布が均一であり、これは基材に浸出されるカーボン・ナノチューブ密度の均一性と呼ばれる。先に定義したように、均一な密度分布に対する許容誤差は、カーボン・ナノチューブが浸出される基材表面積上で約±10%である。繊維材料の限定されない例として、この許容誤差は、8nmの直径及び5つの層を有するカーボン・ナノチューブで、約±1500カーボン・ナノチューブ/μm2に相当する。このような数字は、カーボン・ナノチューブ内の空間が充填可能であると仮定している。カーボン・ナノチューブ浸出繊維のある実施形態では、繊維材料のパーセント被覆率(すなわち、カーボン・ナノチューブで被覆される繊維材料表面積のパーセンテージ)として表現されるカーボン・ナノチューブの最大密度は、約55%という高い値にすることができるが、これもカーボン・ナノチューブが8nmの直径、5つの層、及び内部に充填可能な空間を有すると仮定している。55%の表面積被覆率は、参照した寸法を有するカーボン・ナノチューブで、約15,000カーボン・ナノチューブ/μm2に相当する。ある実施形態では、被覆密度は、最大で約15,000カーボン・ナノチューブ/μm2である。基材の表面への触媒ナノ粒子の配列、カーボン・ナノチューブ成長条件における基材の曝露時間、及び基材へのカーボン・ナノチューブの浸出に使用される実際の成長条件自体を変更することによって、広範囲にわたるカーボン・ナノチューブの密度分布を達成できることが当業者には認識される。
【0046】
ある実施形態では、基材上のカーボン・ナノチューブ被覆密度は、イオンサイズにおける変化を考慮して調節することができる。例えば、スーパーキャパシタの電解質が比較的大きいイオンを含有する場合は、基材上のカーボン・ナノチューブ被覆密度を低下させて、スーパーキャパシタの充放電サイクル中に満足できるイオン移動度及び電極接触を確実に行うことができる。
【0047】
本発明の実施形態によると、カーボン・ナノチューブ浸出基材は、電気機器の電極材料を形成する。カーボン・ナノチューブ浸出基材は、層状構造で存在し、これは、その後、電気機器の中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。さらに、電気機器がスーパーキャパシタである実施形態では、電解質のイオンが透過可能であるセパレータ材料を、層状構造内の電極材料間に配置して、その間の電荷を分離する。図3Aは、本発明の電気機器のある実施形態の例示的層状構造の概略図を示し、図3Bは、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Aの層状構造を含む例示的電気機器の概略図を示す。図3Cは、図3Aの層状構造の概略図を示し、浸出されたカーボン・ナノチューブ390を図示している。図3Aは、第1の電極材料301及び第2の電極材料302を含む層状構造300を示す。第1及び第2の電極材料301及び302は、カーボン・ナノチューブが浸出された基材から形成される。第1の電極材料301と第2の電極材料302との間には、第1のセパレータ材料303が配置される。図3Bは、層状構造300を中心軸311の周囲に螺旋形態310で巻き付けることを示す。図3Bは、反時計回りに巻き付けた螺旋形態310を示しているが、螺旋形態は、第1の電極材料301と第2の電極材料302との相対位置が逆転するように、同じように時計回りに巻き付けることができる。図3Bの概略図は、電気機器の中心軸に沿って見たものを示し、実際の電気機器の構造は、示された螺旋形態で巻き付けた内部構造を有するシリンダの構造に類似していることに留意されたい。図3Bは、螺旋形態310における第1の電極材料301と第2の電極材料302との隣接する層間に間隔を示しているが、その間に任意の望ましい間隔があってもよい。一般的に、単位体積当たり最大のキャパシタンスを生成するために、螺旋形態310における隣接する層間の間隔は、可能な限り小さく維持される。
【0048】
螺旋形態310における隣接する層間の短絡を防止するために、本発明の電気機器は、その間に電気的絶縁をさらに提供する。ある実施形態では、電気的絶縁は、隣接する層間に配置された絶縁体材料によって提供することができる。ある実施形態では、本発明の電気機器は、第1のセパレータ材料に隣接していない絶縁体材料をさらに含む。図3Dは、絶縁体材料を含む本発明の電気機器のある実施形態の例示的層状構造の概略図を示し、図3Eは、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Dの層状構造を含む例示的電気機器の概略図を示す。図3Dは、図3Aに関して上述したものと同様の層状構造320の概略図を示し、ここで、絶縁体材料304は、第2の電極材料302に隣接して配置される。図3Dは、層状構造320を、中心軸311の周囲に螺旋形態330で巻き付けることを示す。図3Bと同様に、図3Eの螺旋形態330は反時計回りに巻き付けて示されている。螺旋形態330は、時計回りに巻く前に層状構造320における第1の電極材料301に隣接して絶縁体材料304を配置するだけで、同様に時計回りに巻き付けることができる。この場合も、図3Eは示されているように螺旋形態330における隣接する層の間に多少の間隔を示している。すなわち、絶縁体材料304と第1の電極材料301は所望に応じて隔置することができる。しかし、他の実施形態では、絶縁体材料304と第1の電極材料301は、空間の最適使用を達成するために接触することができる。絶縁体材料304と第1の電極材料301が隔置される実施形態では、余分な電解質をその間の空間に充填することができる。ある実施形態では、所与のサイズのスーパーキャパシタに所望のキャパシタンスを提供するために、螺旋形態330の隣接する層間の間隔を必要に応じて変更することができる。
【0049】
別の実施形態では、第1の電極材料と第2の電極材料の間に配置された第2のセパレータ材料によって、電気的絶縁を提供することができる。ある実施形態では、本発明の電気機器は、第1のセパレータ材料に隣接していない第2のセパレータ材料をさらに含む。図3Fは、第2のセパレータ材料を含む本発明の電気機器のある実施形態の例示的層状構造の概略図を示し、図3Gは、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Fの層状構造を含む例示的電気機器の概略図を示す。図3Fは、図3Aに関して上述したものと同様の層状構造340の概略図を示し、ここで、第2の絶縁体材料305は、第2の電極材料302に隣接して配置される。図3Gは、層状構造340を中心軸311の周囲に螺旋形態350で巻き付けることを示す。この場合も、層状構造340の第1の電極材料301に隣接して第2の絶縁体材料305を配置することにより、螺旋形態350の巻きを反時計回りから時計回りに変化させることができる。さらに、上述したように本発明の実施形態では、第2のセパレータ材料305と第1の電極材料301との間に任意の所望の間隔を使用することができる。
【0050】
図3E及び図3Gに示す実施形態では、電解質(図示せず)を、螺旋形態330及び350を含む電気機器の第1の電極材料301及び第2の電極材料302に関連づけることができる。上述したように、第1の電極材料301及び第2の電極材料302の基材上に浸出されたカーボン・ナノチューブは、電解質と関連づけるために、大きい有効表面積を電極材料に与えることができる。
【0051】
ある実施形態では、本発明の電気機器は、螺旋形態の最外面上に絶縁体材料をさらに含むことができる。特に、第2のセパレータ材料を含む実施形態では、螺旋形態の最外面上の絶縁体材料を使用して、電気機器を周囲環境から電気的に分離することができる。さらに、電気機器の螺旋形態の最外面上の絶縁体材料は、電解質の閉じ込めを補助することができる。図3Hは、螺旋形態350の最外面が第2のセパレータ材料305上の絶縁体材料307で被覆された図3Gの電気機器の概略図を示す。図3Hでは、第1の電極材料301及び第2の電極材料302は、絶縁体材料307を通って延在し、電気機器の充電又は放電に使用される電極端子(図示せず)に接続することができる。ある実施形態では、本発明の電気機器は、第1の電極材料に接続された第1の電極端子、及び第2の電極材料に接続された第2の電極端子をさらに含むことができる。
【0052】
絶縁体材料が存在しない実施形態でも、本発明の電気機器の電気的分離は維持することができる。ある実施形態では、第1の電極材料及び第2の電極材料をずらせることによって、電気的分離を維持することができる。ある実施形態では、本発明の電気機器は、螺旋形態で巻き付ける前に相互にずらした第1の電極材料及び第2の電極材料の縁部を有することができる。図4Aは、部分的に巻かれていない例示的螺旋形態(図3Gと類似の)の概略図を示し、第1の電極材料の縁部と第2の電極材料の縁部とが相互にずれている。図4Aに示すように、螺旋形態400の第1の電極材料401及び第2の電極材料402の左右の縁部は、相互に距離Dだけずれている。第1のセパレータ材料403は、第1の電極材料401と第2の電極材料402の間の重なり領域に配置される。同様に、第2のセパレータ材料404は、これも重なり領域上に位置するように、第2の電極材料402上に位置する。ハウジング内に配置されると、この螺旋の方向によって、図4Bに示すように、2つの電極材料を相互に独立にアドレスすることができる。
【0053】
図4Bは、螺旋形態400を例示的ハウジング450内に配置した概略図を示す。第1の電極材料401と第2の電極材料402は相互に距離Dだけずれ、それぞれ第1の電極端子451及び第2の電極端子452によって電気的に独立してアドレスされるように配配向される。ある実施形態では、第1の電極材料401はアニオンで、第1の電極端子451は正に帯電し、第2の電極材料402はカチオンで、第2の電極端子452は負に帯電する。図4Bでは、第1の電極端子451と第2の電極端子452は、絶縁シール453によって相互に電気的に隔離される。任意の充填栓454が、電解質をハウジング450に追加するために備えられている。図示の状態では、図4Bは電解質を示していないが、ハウジング450中の電解質のレベルは、通常、第2の電極材料402が露出するレベル(例えば、螺旋形態400の頂部から距離D)より下である。
【0054】
上述したように、例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、及び有機繊維などの連続繊維は、カーボン・ナノチューブを首尾よく浸出できることが示されている。本発明の実施形態に使用するために、同様の非繊維質基材にカーボン・ナノチューブを浸出することができる。一般的に、本発明の実施形態には、カーボン・ナノチューブを首尾よく浸出できる任意のタイプの基材を使用することができる。カーボン・ナノチューブ浸出基材、特にカーボン・ナノチューブ浸出繊維、及びその生産方法に関する付加的な詳細は、後述する。
【0055】
本発明の実施形態のいくつかでは、第1の基材及び第2の基材は、複数の連続繊維とすることができる。基材が繊維材料である場合、通常は、繊維材料の形状を、制限なく変更することができる。様々な実施形態では、個々の連続繊維(すなわち個々のフィラメント)は約1μmから約100μmの間の範囲の直径を有する。この範囲の直径を有する連続長の繊維材料は、様々な商業的供給源から容易に入手することができる。ある実施形態では、本発明の実施形態で使用する連続繊維は、例えば炭素繊維及び/又は金属繊維である。
【0056】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、それが浸出される基材の表面に対して実質的に垂直である。カーボン・ナノチューブ浸出繊維は、浸出されたカーボン・ナノチューブが任意の所望の方向で存在するように、前述した方法により生産することができるが、実質的に垂直方向がカーボン・ナノチューブの表面積を最大化し、したがって、電極材料の表面積を最大化することが当業者には認識される。少なくともこの理由により、本発明の実施形態では、カーボン・ナノチューブの実質的に垂直方向が有利である。
【0057】
ある実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、カーボン・ナノチューブを浸出する前に導電性とすることができる。一般的に、基材は、本発明の実施形態の螺旋形態に巻き付けるのを容易にするように、十分に可撓性である。例示的な導電性基材は、例えば、炭素繊維、グラファイト、及び金属シート、フィルム、箔、又は金属繊維(例えばステンレス鋼、アルミニウム、銅など)が挙げられる。基材へのカーボン・ナノチューブ浸出は、それに導電性を付与するが、カーボン・ナノチューブの浸出前に基材が最初から導電性である場合は、通常、集電及び電荷蓄積特性の向上が観察される。ある実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、例えば金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維を織ったシート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、又は連続繊維のテープなどの形態である。別の実施形態では、基材は、カーボン・ナノチューブの浸出前は非伝導性とすることができる。
【0058】
本発明の実施形態の基材が連続繊維材料から形成されている場合、前記連続繊維は、通常、本発明の電気機器中に個々のフィラメントとして配置されるのではなく、比較的高規則の繊維形態で使用される。このような高規則の繊維形態は、構造が大きく変化し、以下にさらに詳細に考察する。ある実施形態では、連続繊維の繊維形態は、例えば、繊維トウ、繊維テープ、繊維リボン、繊維ロービング、ヤーン、繊維ブレード、織布又は不織布シート、繊維プライ、及び/又は繊維マットとすることができる。ある実施形態では、高規則の繊維形態の個々のフィラメントは、相互に実質的に平行である。ある実施形態では、個々のフィラメントの一部は、高次の繊維形態において相互に実質的に平行であり、個々のフィラメントの一部は、相互に実質的に垂直である。すなわち、個々のフィラメントは、このような実施形態において繊維プライを形成することができる。
【0059】
ロービングは、撚り合わせて細くした異物のない連続繊維からなる軟質ストランドを含む。
【0060】
繊維トウは、通常、連続繊維をコンパクトに結合した束であり、ある実施形態では、これが撚り合わされてヤーンとなる。ヤーンには、撚り合わされた繊維を密に結合した束が含まれるが、この場合、ヤーンにおける各繊維の直径は、比較的均一である。ヤーンには、「テックス(tex)」(1000リニアメーター当たりのグラム重量として示される)又は「デニール(denier)」(10,000ヤード当たりのポンド重量として示される)で表される様々な重量がある。ヤーンに関して、標準的なテックス範囲は、通常、約200テックスから約2000テックスの範囲である。
【0061】
繊維組物(fiber braids)は、連続繊維が高密度に詰め込まれたロープ状構造体である。このようなロープ状構造体は、例えば、ヤーンから組まれる。組上げ構造体は中空部分を含んでもよく、或いは、別のコア材料の周囲に組まれてもよい。
【0062】
繊維トウは、撚り合わされていない連続繊維を結合した束も含むことができる。したがって、繊維トウは、1回の作業で大量の実質的に平行な繊維を操作するために都合のよい形態である。ヤーンと同様に、繊維トウにおける個々の繊維の直径は、概して均一である。また、繊維トウも様々な重量を有し、テックス範囲は、通常、約200テックスから約2000テックスの間である。加えて、繊維トウは、例えば、12Kトウ、24Kトウ、48Kトウなどの繊維トウ内にある数千の繊維の数により、しばしば特徴付けられる。
【0063】
テープ及びリボンは、例えば、織物又は不織の扁平繊維トウとして組まれる連続繊維を含む。テープは、様々な幅を持ち、通常、リボン同様の両面構造体である。前述した同時係属特許出願で説明されているように、カーボン・ナノチューブは、テープの片側又は両側でテープに浸出することができる。さらに、種類、直径又は長さの異なるカーボン・ナノチューブを、テープの各側に成長させることができる。
【0064】
ある実施形態では、連続繊維は、織物又はシート状構造に組織化することができる。それには、上述したテープ以外に、例えば織布、不織布、不織繊維マット及び繊維プライが挙げられる。このような高規則構造は、元となる連続繊維、繊維トウ、ヤーンなどから組み立てることができる。
【0065】
本発明の実施形態に使用される絶縁体材料は、一般的に、制限なく変更することができる。電気機器の螺旋形態の内部の中で電極材料を電気的に隔離するのに使用される絶縁体材料は、一般的に、螺旋形態に巻き付けられほど十分に可撓性である柔軟な材料である。そのための例示的絶縁体材料は、例えば薄いプラスチックシート(例えば熱可塑性又は弾性重合体材料)が挙げられる。螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料は、同様に、例えばプラスチックの収縮包装などの薄いプラスチックシートから形成することができる。しかし、螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料は、螺旋構造の形成が完了した後に塗布することができる。したがって、本発明の電気機器内で螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料は、必ずしも可撓性である必要はなく、プラスチックに加えて例えば熱硬化性ポリマー(例えばエポキシ)、蝋、ガラス及びセラミックなどの材料を挙げることができる。電気機器の螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料が存在する場合、これは例えば収縮包装、浸漬被覆、及びゾル・ゲルプロセスどの様々な技術によって塗布することができる。
【0066】
本発明の実施形態のセパレータ材料は、帯電状態が得られる場合、電解質イオンの電荷分離を維持することが可能である十分に厚い任意の材料から形成することができる。一般的に、セパレータ材料は、多孔質で、電気機器の充電又は放電時に電極材料間の高いイオン移動度を可能にするが、電気機器が帯電状態に到達すると、電荷分離を維持することができる薄膜誘電材料である。したがって、セパレータ材料は、電解質の電荷キャリアに対して選択的に透過性である。ある実施形態では、セパレータ材料は、例えばポリエチレン不織布、ポロプロピレン不織布、ポリエステル不織布、及びポリアクリロニトリル不織布などのポリマー不織布とすることができる。他の実施形態では、セパレータ材料は、例えば多孔質ポリ(フッ化ビニリデン)‐ヘキサフルオロプロパン・コポリマーフィルム、多孔質セルロースフィルム、クラフト紙、レーヨン織布などの多孔質物質とすることができる。一般的に、バッテリに使用することができるセパレータ材料は、いずれも同様の目的で本発明の実施形態にも使用することができる。
【0067】
セパレータ材料の気孔率の程度は、スーパーキャパシタを充電又は放電している時には電解質イオンがセパレータ材料を横切って移動するためには十分であるが、スーパーキャパシタが帯電状態に到達した場合には、電荷分離を維持するために十分に不動である程度である。ある実施形態では、セパレータ材料の気孔率は、約90%より高い。ある実施形態では、セパレータ材料の気孔率は、約90%から約95%の範囲である。他の実施形態では、セパレータ材料の気孔率は、約90%から約40%の間、又は約87%から約50%の間、又は約85%から約65%の間の範囲である。
【0068】
気孔率に加えて、セパレータ材料の厚さが、セパレータ材料を横切るイオン移動性の程度を調整することができる。所与の気孔率に対して、セパレータ材料が厚い方が、薄い方のセパレータ材料より、電荷分離の程度は高くなり、イオン移動度は低くなる。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約100μm未満である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約100μmから約50μmの間の範囲である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約50μmから約25μmの間、又は約25μmから約10μmの間の範囲である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約10μm未満である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約10μmから約1μmの間の範囲である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約1μm未満である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約100nmから約1μmの間の範囲である。本発明の実施形態において第1のセパレータ材料と第2のセパレータ材料との両方が存在する場合、第2のセパレータ材料の厚さは、第1のセパレータ材料と同じ、又は異なるようにすることができる。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、電解質の体積と電圧スタンドオフ性能とのバランスを達成するように最適化することができる。
【0069】
一実施形態では、適切なセパレータ材料は、高い気孔率(例えば>90%)のポリプロピレン及び/又はポリエチレン電解質膜である。このような電解質膜は、ノースカロライナ州シャーロットのCelgard LLCから入手可能である。これらの電解質膜は、高い電圧スタンドオフ性能を示し、それにより、電極材料を隔離するためのフィルムをさらに薄く、軽量にすることができる。ある実施形態では、紙のセパレータ材料(例えばクラフト紙)も使用することができる。
【0070】
本発明の実施形態の電解質は、特に制限はない。ある実施形態では、電解質は、無機電解質である。他の実施形態では、電解質は、有機電解質である。当業者に認識されるように、水性電解質は、内部抵抗値が低いが、使用電圧範囲が約1Vに制限される。対照的に、有機電解質は、最大約2.5Vの使用電圧範囲を有するが、内部抵抗が高くなる。本発明の実施形態の他の構成要素と同様に、異なる最終用途及び電気特性(例えばキャパシタンス)を考慮するために、電解質のアイデンティティ(identity)及び濃度を変更することができる。
【0071】
例示的な水性電解質は、酸性水溶液(例えば硫酸、燐酸、塩酸など)、塩基性水溶液(例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)、及び中性溶液が挙げられる。中性電解質溶液は、一般的に、水性媒体中に塩を溶解させて形成する。中性電解質として使用するのに適切な例示的塩には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。当業者には追加の水性電解質が想像可能である。一般的に、水性電解質の濃度は、約0.1Mから約20Mの間、又は約1wt%から100wt%の間の範囲である。
【0072】
有機電解質は、有機溶媒に溶解した電解質種を含む。例示的な電解質種は、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(例えばハロゲン化テトラエチルアンモニウム又はテトラメチルアンモニウム及び水酸化物)と、第四ホスホニウム塩と、リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム又はカリウム、過塩素酸塩、ヘキサフルオロ燐酸、ビス(トリフルオロメタン)スルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド、又はトリス(トリフルオロメタン)スルホニルメチドとが挙げられる。一般的に、有機溶媒中の電解質種の濃度は、幾つかの実施形態では約0.1Mから約5Mの間、又は他の実施形態では約0.5Mから約3Mの間の範囲である。
【0073】
有機電解質に使用される有機溶媒は、一般的に、高い誘電率を有する非プロトン有機溶媒である。有機電解質に使用することができる例示的有機溶媒としては、炭酸アルキル(例えば炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルエチル、炭酸メチルブチル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチルプロピル、1,2−炭酸ブチレン、2,3−炭酸ブチレン、1,2−炭酸ペンテン、及び2,3−炭酸ペンテン)、ニトリル(例えばアセトニトリル、アクリロニトリル、プロピオンニトリル、ブチロニトリル及びベンゾニトリル)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、エチルメチルスルホキシド、及びベンジルメチルスルホキシド)、アミド(例えばホルムアミド、メチルホルムアミド、及びジメチルホルムアミド)、ピロリドン(例えばN−メチルピロリドン)、ラクトン(例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン、及びアセチル−γ−ブチロラクトン)、燐酸トリエステル、ニトロメタン、エーテル(例えば1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−メトキシエトキシエタン、1,2−又は1,3−ジメトキシプロパン、1,2−又は1,3−ジエトキシプロパン、1,2−又は1,3−エトキシメトキシプロパン、1,2−ジブトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及び他のアルキル、ジアルキル、アルコキシ又はジアルコキシテトラヒドロフラン、1,4−ジオクサン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、スルホラン、3−メチルスルホラン、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、及びテトラエチレングリコールジアルキルエーテル)、エステル(例えばプロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチルなどのプロピオン酸アルキル、マロン酸ジエチルなどのマロン酸ジアルキル、酢酸メチル及び酢酸エチルなどの酢酸アルキル、及び蟻酸メチル及び蟻酸エチルなどの蟻酸アルキル)、及び無水マレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。また、所望に応じて有機ゲルなどを使用することができる。
【0074】
ある実施形態では、電解質は、例えばベンジルジメチルプロピルアンモニウム四塩化アルミニウム、ベンジルジメチルアンモニウムイミド、重硫酸エチルメチルアンモニウム、1−ブチル−3−テトラフルオロホウ酸メチルイミダゾリウム、又はテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムなどのイオン液とすることができる。上述の有機溶媒のいずれも、任意選択でこのようなイオン液と組み合わせて使用することができる。
【0075】
本発明のスーパーキャパシタの実施形態のキャパシタンス値は、広範囲にわたって変えることができる。様々な実施形態では、キャパシタンスは、基材1グラム当たり約0.1ファラドから約50ファラドの間の範囲とすることができる。他の実施形態では、キャパシタンスは、基材1グラム当たり約1ファラドから約25ファラドの間の範囲とすることができる。スーパーキャパシタのサイズ及びロール状構造の層数に応じて、合計キャパシタンスは、数千から数万ファラドとすることができる。また、本発明のスーパーキャパシタは、単独で使用するか、直列に積層することができる。直列で使用する場合、合計キャパシタンスを、さらに増加させることができる。
【0076】
図5は、コインプレス(coin press)のサンプルスーパーキャパシタ構造の概略図を示す。このようなスーパーキャパシタ構造は、外部分700と内部分701を接続してスーパーキャパシタ702を形成することにより、本明細書で説明したスーパーキャパシタの試験用に容易に準備することができる。図6は、本開示のスーパーキャパシタの例示的なサイクリックボルタモグラムを示す。
【0077】
ある実施形態では、本明細書で説明する電気機器を準備するための装置を開示する。ある実施形態では、本明細書で説明する装置は、カーボン・ナノチューブ成長反応器、カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流にある第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリール、カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流にある第3の繰り出しリール、及び巻き取りリールを含む。第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリールは、カーボン・ナノチューブ成長反応器を通して第1の基材及び第2の基材を連続的に搬送して、カーボン・ナノチューブを浸出するように、動作状態でカーボン・ナノチューブ成長反応器に結合する。第3の繰り出しリールは、第1の基材、第2の基材、及び第1の基材と第2の基材の間に配置された第3の繰り出しリールの出力を含む層状構造を形成するように、動作状態でカーボン・ナノチューブ成長反応器の出力に結合する。巻き取りリールは、層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるように動作可能である。
【0078】
ある実施形態では、前記装置は、カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流にあって、動作状態でカーボン・ナノチューブ成長反応器の出力及び第3の繰り出しリールの出力に結合する第4の繰り出しリールをさらに含み、したがって、第1の基材、第2の基材、第3の繰り出しリールの出力、及び第4の繰り出しリールの出力を含む層状構造を形成する。このような実施形態では、第3の繰り出しリールの出力は、第1の基材と第2の基材の間に配置され、第2の基材は、層状構造の第3の繰り出しリールの出力と第4の繰り出しリールの出力との間に配置される。層状構造の場合、第1の基材及び第2の基材は、既にカーボン・ナノチューブ成長反応器を通って搬送され、カーボン・ナノチューブ成長状態に晒されているので、浸出されたカーボン・ナノチューブを有する。
【0079】
本発明の装置の実施形態には、様々な他の任意選択の要素も含めることができる。ある実施形態では、前記装置は、第3の繰り出しリールの下流に電解質塗布ステーションをさらに含む。ある実施形態では、前記装置は、カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流に触媒塗布ステーションをさらに含む。ある実施形態では、前記装置は、巻き取りリールの上流に密封ステーションをさらに含む。ある実施形態では、これらの任意選択の要素がすべて、本発明の装置内に存在する。他の実施形態では、任意選択の要素のうち1つ又は複数のみが存在する。さらに、様々な任意選択の要素を、第4の繰り出しリールが存在する様々な実施形態と組み合わせて含めることができる。上記及び他の要素に関するさらなる検討について、以下で説明する。
【0080】
図7は、本明細書で説明する電気機器の特定の実施形態を準備するのに使用される例示的装置500の概略図を示す。装置500は、自身上に巻き付けられた第1の連続基材503を含む第1の繰り出しリール501と、自身上に巻き付けられた第2の連続基材504を含む第2の繰り出しリール502と、を含む。図7に示す実施形態では、第1の連続基材503及び第2の連続基材504は、カーボン・ナノチューブを形成するように作用可能な触媒(例えば触媒ナノ粒子)を連続基材503及び504上に付着する触媒塗布ステーション510を通過する。任意選択で、触媒塗布ステーション510を省略することができ、連続基材503及び504は、第1の繰り出しリール501及び第2の繰り出しリール502に巻き付けられる場合、既に触媒ナノ粒子を付着させておくことができる。触媒塗布ステーション510を出た後、第1の連続基材503及び第2の連続基材504は、カーボン・ナノチューブを浸出するためにカーボン・ナノチューブ成長反応器520を通って搬送される。カーボン・ナノチューブ成長反応器のさらなる詳細について、以下でさらに説明する。
【0081】
前記装置500は、カーボン・ナノチューブ成長反応器520の下流に第3の繰り出しリール530をさらに含む。図7に示す実施形態では、第3の繰り出しリール530は、カーボン・ナノチューブ成長反応器の出力(例えば第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材521及び第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材522)と組み合わされて自身上に巻き付けられたセパレータ材料531を含む。第3の繰り出しリール530は、第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材521及び第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材522が、その間に配置されたセパレータ材料531とともに層状構造535を形成するように構成される。ある実施形態では、層状構造535は、任意選択の電解質塗布ステーション540内にある電解質容器内で形成することができる。別の実施形態では、電解質は、後のステージで層状構造535が形成された後に、螺旋形態に巻き付ける前、又は巻き付けた後に塗布することができる。
【0082】
層状構造535の形成後、これはその後、巻き取りリール550に巻き付けられて、前に述べた実施形態による電極材料の螺旋形態を有する電気機器を生成する。巻き取りリール550は、時計回り又は反時計回りに回転して、いずれかの方向に巻き付けられた螺旋形態を生成することができる。
【0083】
巻き取りリール550に到着する前に、層状構造535は、任意選択の密封ステーション545を通過することができる。密封ステーション545は、層状構造535を一緒にさらに圧縮するために、及び/又は、螺旋形態に巻き付けた場合に電極材料を電気的に隔離するように層状構造535上に絶縁体材料を塗布するために、使用される。例えば、密封ステーション545は、巻き取りリール550に到達する前に、層状構造535の第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材522上に絶縁体材料を塗布することができる。密封ステーション545内で、任意選択の圧着動作も実行することができる。
【0084】
上述したように、電気的絶縁は、絶縁体材料を伴わない他の手段によって維持することもできる、又は絶縁体材料と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の装置は、第1の電極材料の縁部と第2の電極材料の縁部とが電気機器内で相互にずれるように構成することができる。さらに、装置は、図8に示し以下で説明するように、別のセパレータ材料を電気機器に組み込む追加の繰り出しリールも含むことができる。
【0085】
図8は、絶縁体材料で螺旋形態を密封することなく電気的隔離を達成する本発明の電気機器の別の実施形態を準備する例示的装置600の概略図を示す。装置600は、自身上に巻き付けられた第1の連続基材603を含む第1の繰り出しリール601と、自身上に巻き付けられた第2の連続基材604を含む第2の繰り出しリール602と、任意選択の触媒塗布ステーション610と、カーボン・ナノチューブ成長反応器620と、自身上に巻き付けられた第1のセパレータ材料631を含む第3の繰り出しリール630と、任意選択の電解質塗布ステーション640と、巻き取りリール650とを含み、これらの要素は、図7に関して上述したものと同様である。これも図7と同様に、装置600は、カーボン・ナノチューブ成長反応器620から出力(例えば第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材621及び第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材622)を生成する。
【0086】
装置600は、自身上に巻き付けられた第2のセパレータ材料661を含む第4の繰り出しリール660をさらに含む。図8に示すように、第4の繰り出しリール660の第2のセパレータ材料661は、カーボン・ナノチューブ成長反応器620の出力(例えば第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材621及び第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材622)及び第3の繰り出しリール630の出力(例えば第1のセパレータ材料631)と組み合わされて、層状構造635を形成する。層状構造635では、第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材622が第1のセパレータ材料631と第2のセパレータ材料661との間に配置され、第1のセパレータ材料631が第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材621と第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材622との間に配置される。すなわち、装置600は、電極材料とセパレータ材料との交互の層を含む層状構造を生成するように構成される。
【0087】
図7に関して説明したように、層状構造635は、任意選択の電解質塗布ステーション640内の電解質容器内で形成することができる。別の実施形態では、電解質は、後のステージで層状構造635が形成された後に、巻き取りリール650上で螺旋形態に巻き付ける前、又は巻き付けた後に塗布することができる。
【0088】
装置600は、任意選択の圧着ステーション640も含むことができる。装置500の密封ステーション540とは異なり、圧着ステーション600内では層状構造635に絶縁体材料を付与する必要がない。何故なら、電解質材料が既に、相互に電気的に隔離されるように構成されているからである。ある実施形態では、圧着ステーション640を使用して、電極材料をセパレータ材料と一緒に圧着し、電気機器を螺旋形態に巻き付ける前にさらにコンパクトな層状構造の形態を生成することができる。
【0089】
ある実施形態では、現在、説明している電気機器を作成する方法を、本明細書で説明する。ある実施形態では、前記電気機器を作成する方法は、上述した装置又はその様々な変更を利用することができる。
【0090】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料を提供するステップと、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を提供するステップと、第1の電極材料及び第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、中心軸の周囲に螺旋形態に層状構造を巻き付けるステップと、を含む。
【0091】
ある実施形態では、第1の電極材料及び第2の電極材料は、層状構造を形成プロセス及び層状構造を巻き付けるプロセスと動作状態で結合される連続カーボン・ナノチューブ浸出プロセスにより提供される。
【0092】
ある実施形態又は他の実施形態では、本明細書で説明する方法は、巻き取り可能な寸法の第1の基材を第1の繰り出しリール上に、及び巻き取り可能な寸法の第2の基材を第2の繰り出しリール上に提供するステップと、カーボン・ナノチューブを浸出するように、カーボン・ナノチューブ成長反応器に通して第1の基材及び第2の基材を搬送するステップと、を含み、それにより、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料、及び第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を形成し、さらに、第1の電極材料及び第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、層状構造を中心軸の周囲で螺旋形態に巻き付けるステップと、を含む。ある実施形態では、これらの作業は、連続プロセスにて相互に動作状態に結合される。
【0093】
ある実施形態又は他の実施形態では、本発明方法は、触媒ナノ粒子を第1の基材及び第2の基材に塗布することをさらに含む。ある実施形態では、触媒ナノ粒子は、第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリール上に配置する前に、第1の基材及び第2の基材に塗布することができる。他の実施形態では、触媒ナノ粒子は、カーボン・ナノチューブ成長反応器に入る前に、連続プロセスで第1の基材及び第2の基材に塗布することができる。例えば、ある実施形態では、触媒ナノ粒子は、触媒ナノ粒子又はその前駆体の溶液又は懸濁液を含む触媒塗布ステーション内で第1の基材及び第2の基材に塗布することができる。
【0094】
本発明の方法のある実施形態では、層状構造は、第1の電極材料と第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料をさらに含み、前記セパレータ材料は、電解質のイオンに対して透過性である。前記セパレータ材料は、電気機器が帯電状態にある場合は電荷分離を維持することができ、電気機器が充電又は放電している場合は、電流の流れを可能にする。
【0095】
ある実施形態では、本発明の方法は、層状構造を電解質に晒すことをさらに含む。ある実施形態では、層状構造を電解質に曝露することは、層状構造を巻き付けて電気機器の螺旋形態を形成する前に実行される。例えば、ある実施形態では、層状構造を形成することは、電解質容器内で実行することができる。巻き付ける前に層状構造を電解質に晒す場合、本発明の方法は、巻き付ける前に層状構造を絶縁体材料で密封することをさらに含むことができる。層状構造を絶縁体材料で密封することにより、その中に保持された電解質をさらに効果的に閉じ込めることができる。別の実施形態では、層状構造を電解質に晒すことは、巻き付けた後に実行することができる。ある実施形態では、巻き付けによって得られた螺旋形態を電解質容器に浸漬することができる。他の実施形態では、螺旋形態は電解質容器に部分的に浸漬することができる。いずれの場合も、毛管作用が、適正な導電性が生じるための電極材料の十分な飽和を確実に行うために、螺旋形態の内部に確実に電解質を浸透するようにすることができる。
【0096】
ある実施形態では、層状構造は、絶縁体材料をさらに含むことができ、絶縁体材料は、第1のセパレータ材料と隣接していない。このような実施形態では、絶縁体材料は、電気機器の螺旋形態において隣接する電極層を電気的に隔離する。ある実施形態では、絶縁体材料は、層状構造の形成と同時に付与することができる。例えば、層状構造を形成するにつれ、又は層状構造が形成された直後に、絶縁体材料を層状構造の第2の電極材料上に配置することができる。非限定的実施形態では、絶縁体材料は、絶縁体材料を含む繰り出しリールから層状構造に付与することができる。他の実施形態では、層状構造の形成後に、別個の動作として絶縁体材料を層状構造に付与することができる。例えば、絶縁体材料の付与は、密封ステーションの中で実行することができ、任意選択で圧着動作と組み合わせることができる(図7参照)。ある実施形態では、本発明の方法は、図3Hに示すように、電気機器の螺旋形態の最外面上に絶縁体材料を付与することをさらに含む。
【0097】
別の実施形態では、電気的分離は、層状構造に絶縁体材料を付与せずに維持することができる。上述したように、第2のセパレータ材料を層状構造に付与することにより、電気的分離を達成することもできる。ある実施形態では、層状構造は、第1のセパレータ材料に隣接していない第2のセパレータ材料をさらに含む。すなわち、本発明の方法は、層状構造の第2の電極材料上に第2のセパレータ材料を配置することをさらに含む。このような実施形態では、螺旋形態の各電極材料は、第1又は第2のセパレータ材料のいずれかと隣接し、それにより、その間に電気的隔離を提供する。
【0098】
本発明の方法のある実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、巻き取り可能な寸法である。すなわち、第1の基材及び第2の基材は、本発明の実施形態により連続プロセスで電気機器に変換されるように操作可能である。ある実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、複数の連続繊維とすることができる。ある実施形態では、連続繊維は、導電性とすることができる。例えば、ある実施形態では、連続繊維は、炭素繊維及び/又は金属繊維とすることができる。本発明の方法のある実施形態では、第1の基材及び第2の基材の形態には、例えば金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維の織布シート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、及び/又は連続繊維のテープを含めることができる。
【0099】
本明細書で開示する実施形態は、同一出願人による同時係属の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、第12/611,103号及び第12/938,328号に記載された方法、又はその簡単な変更によって、容易に準備することができるカーボン・ナノチューブ浸出基材を利用でき、それぞれは、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。これらの同時係属特許出願で説明されたプロセスについて、以下で簡単に説明する。これら同時係属特許出願は、連続繊維材料へのカーボン・ナノチューブの浸出について説明しているが、そこで説明された方法は、任意のタイプのカーボン・ナノチューブ浸出基材を提供するように容易に適応させることができる。以下の簡単な説明は、連続繊維材料を対象としているが、説明される方法を型通りに変更する事によって、任意のタイプの連続基材を同様に準備できることを認識されたい。
【0100】
カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するために、カーボン・ナノチューブを繊維材料上で直接合成する。ある実施形態では、これは、最初にカーボン・ナノチューブ形成触媒(例えば触媒ナノ粒子)を繊維材料上に付着させることによって遂行される。この触媒付着の前に、幾つかの準備プロセスを実行することができる。
【0101】
ある実施形態では、繊維材料を必要に応じてプラズマで処理して、触媒を受け入れるための表面を作ることができる。例えば、プラズマ処理されたガラス繊維により、カーボン・ナノチューブ形成触媒が付着する粗面化されたガラス繊維表面がもたらされる。また、ある実施形態では、プラズマは、繊維表面を「浄化(clean)」する機能をも果たす。このように繊維表面を「粗面化(roughing)」するためのプラズマプロセスにより、触媒の付着は促進される。粗さ(roughness)は、通常、ナノメートルのスケールである。プラズマ処理プロセスにおいて、深さ及び直径がナノメートル単位のクレーター又は窪みが形成される。このような表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、窒素及び水素など、種々の異なる1以上のあらゆるガスのプラズマを用いても達成される。
【0102】
ある実施形態では、使用される繊維材料が、これに付随するサイジング剤を有する場合、そのようなサイジング剤を触媒の付着前に必要に応じて除去してもよい。必要に応じて、前記サイジング剤は触媒付着後に除去してもよい。ある実施形態では、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブの合成中又は予熱工程におけるカーボン・ナノチューブの合成直前に行われる。他の実施形態では、サイジング剤の中には、カーボン・ナノチューブ合成プロセスの全体にわたって残存できるものもある。
【0103】
カーボン・ナノチューブ形成触媒(すなわち、触媒ナノ粒子)の付着前、又はこれと同時に行われる更にもう1つの工程として、繊維材料上へのバリア・コーティングの塗布がある。バリア・コーティングは、例えば、炭素繊維、有機繊維、金属繊維など(例えば非繊維質基材)のような繊細な繊維材料健全性を保護するために考えられた材料である。このようなバリア・コーティングは、例えば、アルコキシシラン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子を挙げることができる。例えば、ある実施形態では、バリア・コーティングは、Accuglass(登録商標)T−11スピンオンガラス(Honeywell International Inc.、ニュージャージー州モリスタウン)である。1つの実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、未硬化のバリア・コーティング材に加えられて、その後、共に繊維材料に塗布されてもよい。他の実施形態では、バリア・コーティング材は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の付着前に繊維材料に加えられる。このような実施形態の場合、バリア・コーティングは、触媒の付着前に部分的に硬化してよい。バリア・コーティング材は、後続のCVDなどのカーボン・ナノチューブ成長プロセスのための炭素原料ガスにカーボン・ナノチューブ形成触媒を晒すことが十分に可能な薄さである。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効径未満か、それに実質的に等しい。カーボン・ナノチューブ形成触媒及びバリア・コーティングが適切に配置されたなら、バリア・コーティングを十分に硬化させることができる。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、触媒へのカーボン・ナノチューブ原料ガスのアクセスがまだ可能な限りは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効径よりも大きくてよい。このようなバリア・コーティングは、カーボン・ナノチューブ形成触媒に対する炭素原料ガスのアクセスが可能となる程度に十分多孔質であってよい。
【0104】
ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nmから約100nmの間の範囲である。他の実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、40nmなど、約10nmから約50nmの間の範囲である。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nm未満であり、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、及び約10nmを含み、その間のすべての範囲及び部分的な範囲を含む。
【0105】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、繊維材料とカーボン・ナノチューブの中間層として機能し、機械的に繊維材料へカーボン・ナノチューブを浸出する。バリア・コーティングを介したこのような機械的浸出は、カーボン・ナノチューブが成長するための頑強なシステムを提供し、ここでは繊維材料がカーボン・ナノチューブを組織化するための基盤として機能しながら、有益なカーボン・ナノチューブ特性を繊維材料に与えられるようにする。さらに、バリア・コーティングを含むことの利点は、水分に晒されることに起因した化学的損傷及び/又はカーボン・ナノチューブの成長を促進するために用いられる高温度での熱的損傷から、繊維材料を保護するという点にある。
【0106】
以下でさらに説明するように、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、遷移金属触媒ナノ粒子の形でカーボン・ナノチューブ形成触媒を含む液体溶液として準備することができる。合成されたカーボン・ナノチューブの直径は、上述したような遷移金属触媒ナノ粒子の大きさに関連する。
【0107】
カーボン・ナノチューブの合成は、高温で実行される化学蒸着(CVD)プロセス又は関連のカーボン・ナノチューブ成長プロセスに基づくものである。ある実施形態では、CVDをベースとした成長プロセスは、カーボン・ナノチューブ成長が、電界の方向に従うように、成長プロセス中に電界を提供することによってプラズマ助長することができる。他の例示的なカーボン・ナノチューブ成長プロセスは、例えば、マイクロキャビティ、レーザ・アブレーション、火炎合成、アーク放電、及び高圧一酸化炭素(HiPCO)合成が挙げられる。具体的な温度は触媒の選択によるが、通常は約500℃から約1000℃の範囲である。したがって、カーボン・ナノチューブの合成は、カーボン・ナノチューブの成長を支援するために、繊維材料を上述の範囲の温度に加熱することを含む。
【0108】
ある実施形態では、触媒を含む繊維材料上でCVDにより促進されるカーボン・ナノチューブ成長が実行される。CVDプロセスは、例えばアセチレン、エチレン及び/又はエタノールなどのカーボン含有原料ガスによって促進することができる。カーボン・ナノチューブ成長プロセスは、一般的に、1次キャリアガスとして不活性ガス(例えば窒素、アルゴン及び/又はヘリウム)を使用する。カーボン含有原料ガスは、通常、混合物全体の約0.1%から約15%の間の範囲で供給される。CVD成長のための実質的に不活性な環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去することによって準備することができる。
【0109】
カーボン・ナノチューブ成長プロセスにおいて、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの成長に作用する遷移金属触媒ナノ粒子のある場所で成長する。強プラズマ励起電界の存在を任意に用いて、カーボン・ナノチューブの成長に影響を与えることができる。すなわち、成長は、電界方向に従う傾向がある。プラズマ溶射及び電界の配置(geometry)を適切に調節することにより、垂直配列の(すなわち、繊維材料の表面に対して垂直な)カーボン・ナノチューブを合成できる。特定の条件下では、プラズマがない場合であっても、密集したカーボン・ナノチューブは成長方向を実質的に垂直に維持して、結果として、カーペット(carpet)又はフォレスト(forest)に似た高密度配列のカーボン・ナノチューブが生じる。
【0110】
触媒付着プロセスに戻って、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを成長させることを目的として、その上に触媒ナノ粒子の層(通常は単分子層以内)を設けるために付着される。繊維材料上に触媒ナノ粒子を付着させる操作は、例えば触媒ナノ粒子の溶液の溶射又はディップコーティングなどを含む幾つかの技術によって、又はプラズマプロセスによって起こる気相蒸着によって遂行することができる。したがって、ある実施形態では、溶媒に触媒を含んだ溶液を形成した後、その溶液で繊維材料をスプレー若しくは浸漬コーティングすることにより、又はスプレー及び浸漬コーティングを組み合わせることにより、触媒が塗布される。単独で或いは組み合わせて用いられるいずれかの手法は、1回、2回、3回、4回、或いは何回でも使用され、これにより、カーボン・ナノチューブの形成に作用する触媒ナノ粒子が十分均一にコーティングされた繊維材料を提供することができる。例えば、浸漬コーティングが使用される場合、繊維材料は、第1の浸漬槽において、第1の滞留時間、第1の浸漬槽内に置かれる。第2の浸漬槽を使用する場合、繊維材料は、第2の滞留時間、第2の浸漬槽内に置かれる。例えば、繊維材料は、浸漬の形態及びラインスピードに応じて約3秒〜約90秒の間、カーボン・ナノチューブ形成触媒の溶液に晒される。スプレー又は浸漬コーティングを用いることにより、約5%未満から約80%もの表面被覆率の触媒表面密度を有する繊維材料が得られる。より高い表面密度(例えば、約80%)の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子は実質的に単分子層である。ある実施形態において、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒をコーティングするプロセスにより単分子層だけが生成される。例えば、積み重ねたカーボン・ナノチューブ形成触媒上におけるカーボン・ナノチューブ成長は、カーボン・ナノチューブが繊維材料へ浸出する程度を低下させることがある。他の実施形態において、遷移金属触媒ナノ粒子は、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に既知の他のプロセス(例えば、遷移金属触媒を、有機金属、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成物として、プラズマ原料ガスへ添加することなど)を用いて繊維材料上に付着する。
【0111】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維を製造するプロセスは、連続的になるよう設計されているので、巻き取り可能な繊維材料は、一連の槽で浸漬コーティングを施すことが可能であり、この場合、浸漬コーティング槽は空間的に分離されている。例えば、炉から新たに形成されたガラス繊維など、新生繊維が新たに生成される連続プロセスにおいて、カーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬又は溶射は、新たに形成された繊維材料を十分に冷却した後の第1ステップとすることができる。ある実施形態において、新たに形成されたガラス繊維の冷却は、カーボン・ナノチューブ形成触媒粒子を分散させた冷却水の噴流で実施される。
【0112】
ある実施形態では、連続プロセスにおいて、繊維を生成してこれにカーボン・ナノチューブを浸出させる場合、サイジング剤を塗布する代わりに、カーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布することができる。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、他のサイジング剤の存在下で新たに形成された繊維材料に塗布される。このようなカーボン・ナノチューブ形成触媒及び他のサイジング剤の同時塗布により、繊維材料と表面接触したカーボン・ナノチューブ形成触媒を供給してカーボン・ナノチューブの浸出を確実にすることができる。また、別の実施形態では、繊維材料が十分に軟化した状態にある間、例えば、焼きなまし温度近傍又はそれ未満の状態にある間に、カーボン・ナノチューブ形成触媒を溶射又は浸漬コーティングにより新生繊維に塗布し、これにより、カーボン・ナノチューブ形成触媒が繊維材料の表面に僅かに埋め込まれる。例えば、高温のガラス繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着させる場合、ナノ粒子が溶融して結果的にカーボン・ナノチューブの特性(例えば、直径)が制御不能とならないように、カーボン・ナノチューブ形成触媒の融点を超えないように配慮する必要がある。
【0113】
繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、例えば、水分、酸化、摩耗、圧縮及び/又は他の環境状態などを含む状態から繊維材料を保護する働きをすることができる。この場合は、カーボン・ナノチューブ自体が、サイジング剤として作用することができる。このようなカーボン・ナノチューブベースのサイジング剤は、従来のサイジング剤の代わりに、又はそれに加えて繊維材料に塗布することができる。従来のサイジング剤が存在する場合、それは、繊維材料上のカーボン・ナノチューブの浸出及び成長前に、又はその後に塗布することができる。従来のサイジング剤は、タイプ及び機能が多種多様であり、例えば、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、シロキサン、アルコキシシラン、アミノシラン、シラン、シラノール、ポリビニルアルコール、デンプン、及びその混合物などが挙げられる。このような従来のサイジング剤は、カーボン・ナノチューブ自体を様々な状態から保護するために、又はカーボン・ナノチューブが与えられていない繊維材料にさらなる特性を伝えるために用いられる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブが成長する前に、従来のサイジング剤を繊維材料から除去することができる。選択的に、従来のサイジング剤を、カーボン・ナノチューブ又はカーボン・ナノチューブ成長状態との適合性がさらに高い別の従来のサイジング剤と交換することができる。
【0114】
カーボン・ナノチューブ形成触媒溶液は、任意のd‐ブロック遷移金属の遷移金属ナノ粒子溶液であってよい。さらに、ナノ粒子は、元素形態及び塩形態のd‐ブロック金属からなる合金と非合金の混合物、並びにこれらの混合物を含むことができる。このような塩形態としては、酸化物、炭化物、窒化物、酢酸塩、硝酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例示的遷移金属ナノ粒子としては、例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au及びAg、これらの塩及びこれらの混合物が挙げられる。多くのナノ粒子遷移金属触媒が、例えば、Ferrotec Corporation(ニューハンプシャー州ベッドフォード)などの様々な供給業者から市販されており容易に入手可能である。
【0115】
繊維材料にカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布するために使用される触媒溶液は、カーボン・ナノチューブ形成触媒が全域にわたって均一に分散可能な任意の一般的な溶媒でもよい。このような溶媒としては、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又は自身内にカーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子の適切な分散を生成するために極性が制御された任意の他の溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。触媒溶液中におけるカーボン・ナノチューブ形成触媒の濃度は、触媒対溶媒で、約1:1から約1:10,000の範囲とすることができる。
【0116】
ある実施形態では、繊維材料にカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布した後、繊維材料は、軟化温度まで任意に加熱される。この工程は、繊維材料の表面にカーボン・ナノチューブ形成触媒を埋め込むのに役立ち、これにより、種成長(seeded growth)を促して、先端の成長を防止することができ、触媒は、成長するカーボン・ナノチューブの先端縁に浮遊(float)する。ある実施形態では、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着した後、繊維材料の加熱は、約500℃から約1000℃の間の温度とすることができる。カーボン・ナノチューブの成長のためにも用いられるこのような温度への加熱により、繊維材料上にある既存のサイジング剤の除去が促進され、これにより、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を直接付着させることが可能となる。また、ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、加熱前にサイジング剤のコーティング表面上に配置することもできる。加熱工程は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料表面上に付着させたままサイジング物質を除去するために用いられる。この温度での加熱は、カーボン・ナノチューブ成長のための炭素原料ガスの導入前に、又はこれと実質的に同時に実行することができる。
【0117】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出させるプロセスは、繊維材料からサイジング剤を除去すること、サイジング剤除去後にカーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に塗布すること、繊維材料を少なくとも約500℃まで加熱すること、及び、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成することを含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの工程は、繊維材料からサイジング剤を除去すること、繊維材料に対してカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布すること、カーボン・ナノチューブの合成温度まで繊維材料を加熱すること、及び、触媒を含有する繊維材料上へ炭素プラズマを溶射することを含む。このように、市販のガラス繊維材料が使用される場合、カーボン・ナノチューブ浸出繊維を構成するためのプロセスは、繊維材料上に触媒を配置する前に、繊維材料からサイジング剤を除去する個別のステップを含む。なんらかの市販のサイジング物質が存在する場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒と繊維材料との面接触を防止して、繊維材料に対するカーボン・ナノチューブの浸出を抑制することができる。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブの成長条件下でサイジング剤を確実に除去する場合には、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブ形成触媒付着後であって、炭素含有原料ガスの供給直前又は供給中に行われる。
【0118】
カーボン・ナノチューブを合成する工程には、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD法、レーザ・アブレーション、アーク放電、火炎合成、及び高圧一酸化炭素法(HiPCO)といった、カーボン・ナノチューブを形成するための多数の技術が挙げられるが、これらには限定されない。CVD中、特に、カーボン・ナノチューブ形成触媒が付着したサイジング済み繊維材料を直接使用することができる。ある実施形態では、従来のいかなるサイジング剤もカーボン・ナノチューブの合成中に除去することができる。ある実施形態では、他のサイジング剤は除去されないが、サイジング剤を介した炭素原料ガスの拡散のため、繊維材料へのカーボン・ナノチューブの合成及び浸出を妨げることはない。ある実施形態では、アセチレンガスをイオン化して、カーボン・ナノチューブ合成のための低温炭素プラズマジェットを生成することができる。プラズマは触媒を含む繊維材料に向けられる。このように、ある実施形態では、繊維材料上におけるカーボン・ナノチューブの合成には、(a)炭素プラズマを形成すること、及び(b)繊維材料上に配置された触媒に炭素プラズマを向けること、が含まれる。成長するカーボン・ナノチューブの直径は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の大きさにより決定される。ある実施形態では、サイジングされた繊維材料は約550℃〜約800℃に加熱され、カーボン・ナノチューブの成長を促進する。カーボン・ナノチューブの成長を開始させるために、反応器には2つ以上のガス、すなわち、不活性キャリアガス(例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素)及び炭素含有原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール又はメタン)が供給される。カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ形成触媒のある場所で成長する。
【0119】
ある実施形態では、CVD成長プロセスはプラズマで助長される。プラズマは、成長プロセス中に電界を与えることにより生成される。この条件下で成長するカーボン・ナノチューブは電界方向に従う。したがって、反応器の配置を調節することにより、垂直配列のカーボン・ナノチューブを、繊維材料の表面に対して実質的に垂直に成長させることができる(すなわち、放射状成長)。ある実施形態では、繊維材料の周囲に放射状に成長させるために、プラズマは必要ではない。明確な面を有する、例えば、テープ、マット、織物、パイルなどのような繊維材料の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、繊維材料の片面又は両面に付着させることができる。それに応じて、このような条件下、カーボン・ナノチューブもまた、繊維材料の片面又は両面に成長させることができる。
【0120】
上述したように、カーボン・ナノチューブ合成は、巻き取り可能な繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させる連続プロセスを提供するのに十分な速度で行われる。以下に例示されるように、このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。
【0121】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、「オール・プラズマ(all plasma)」プロセスで準備することができる。このような実施形態では、繊維材料は、多くのプラズマ介在工程を通って、最終的なカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成する。第1のプラズマプロセスには、繊維表面の改質工程が含まれる。これは、前述のように、繊維材料の表面を「粗面化(roughing)」して触媒の付着を容易にするためのプラズマプロセスである。また前述のように、表面改質は、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素及び窒素を含むが、これらに限定されない種々の異なるガスの任意の1つ又は複数のプラズマを用いて達成される。
【0122】
表面改質後、繊維材料は触媒の塗布へと進む。本発明のオール・プラズマプロセスでは、このステップは、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着するためのプラズマプロセスである。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、前述のように、通常、遷移金属である。遷移金属触媒は、例えば、磁性流体、有機金属、金属塩、これらの混合物、又は気相輸送の促進に適した他のあらゆる組成物など、限定しない形態の前駆体としてプラズマ原料ガスに添加され得る。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とはせず、周囲環境の室温で塗布可能である。ある実施形態では、繊維材料は触媒の塗布前に冷却される。
【0123】
オール・プラズマプロセスを継続して行うと、カーボン・ナノチューブの合成は、カーボン・ナノチューブ成長反応器内で起こる。カーボン・ナノチューブの成長は、プラズマ助長化学蒸着を用いて実現されるが、この場合、炭素プラズマが触媒を含む繊維に溶射される。カーボン・ナノチューブの成長は、高温(触媒にもよるが、通常は約500℃〜約1000℃の範囲)で起こるので、触媒を含む繊維は、炭素プラズマに晒される前に加熱される。カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの場合、繊維材料は、軟化が始まるまで任意に加熱することができる。加熱後、繊維材料は、炭素プラズマを受けられる状態になっている。炭素プラズマは、例えば、炭素含有原料ガス、例えば、アセチレン、エチレン、エタノールなどを、ガスのイオン化が可能な電界中に通すことにより生成される。この低温炭素プラズマは、溶射ノズルにより繊維材料に向けられる。繊維材料は、プラズマを受けるために、例えば、溶射ノズルから約1センチメートル以内など、溶射ノズルに近接していてもよい。ある実施形態では、加熱器は、繊維材料の上側のプラズマ溶射装置に配置され、これにより繊維材料を高温に維持する。
【0124】
連続的なカーボン・ナノチューブ合成の別の構成は、カーボン・ナノチューブを繊維材料上に直接合成・成長させるための専用の矩形反応器を含む。その反応器は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を生成するための連続的なインラインプロセス用に設計することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、CVDプロセスにより、大気圧、かつ、約550℃から約800℃の範囲の高温で、マルチゾーン反応器(multi-zone reactor)内で成長する。カーボン・ナノチューブの合成が大気圧で起こるということは、繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させるための連続処理ラインに反応器を組み込むことを容易にする一因である。このようなゾーン反応器を用いた連続的なインライン処理に合致する別の利点は、カーボン・ナノチューブの成長が、当該技術分野で標準的な他の手法及び装置構成における数分(又はそれ以上)ではなく、数秒で起こるということである。
【0125】
様々な実施形態によるカーボン・ナノチューブ合成反応器は、以下の特徴を含む。
【0126】
(矩形構成の合成反応器)
当該技術分野で既知の標準的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は、横断面が円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒状の反応器がよく用いられる)及び利便性(流体力学は円筒状の反応器でモデル化すると容易になり、また、加熱器システムは円管チューブ(石英など)に容易に対応する)、並びに製造の容易性などの多くの理由がある。本開示は、従来の円筒形状に代えて、矩形横断面を有するカーボン・ナノチューブ合成反応器を提供する。変更の理由は以下の通りである。
【0127】
1)反応器容積の非効率的な使用。反応器により処理される多くの繊維材料は相対的に平面(例えば、平坦なテープ、シート状形態、或いは、開繊したトウ若しくはロービング(roving)など)であるので、円形横断面では反応器の容積の使用が非効率的である。この非効率的な結果、円筒状のカーボン・ナノチューブ合成反応器にはいくつかの欠点がある。例えば、a)十分なシステムパージの維持;反応器の容積が増大すれば、同レベルのガスパージを維持するためにガス流量の増大が必要となり、この結果、開放環境におけるカーボン・ナノチューブを大量生産するには非効率的である。b)炭素含有原料ガス流量の増大;前記a)のように、システムパージのための不活性ガス流を相対的に増大させると、炭素含有原料ガス流量を増大させる必要がある。例示的な12Kのガラス繊維ロービングが、矩形横断面を有する合成反応器の全容積に対して約2000分の1の容積であるとする。同等の円筒状反応器(すなわち、矩形横断面の反応器と同じ平坦化されたガラス繊維材料を収容できるだけの幅を有する円筒状の反応器)では、ガラス繊維材料の容積は、反応器の容積の約17,500分の1である。CVDなどのガス蒸着プロセス(gas deposition processes)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、容積は蒸着の効率に顕著な影響を与え得る。矩形反応器の場合、それでもなお余分な容積が存在し、この余剰容積は無用の反応を促進する。しかしながら、円筒状反応器は、無用な反応の促進が可能なその容積が約8倍もある。このように競合する反応が発生する機会がより大きいと、所望の反応が有効に生じるには、円筒状反応器では一層遅くなってしまう。このようなカーボン・ナノチューブ成長の速度低下は、連続的な成長プロセスの進行にとって問題となる。矩形反応器構成の別の利点は、矩形チャンバーの高さを更に低くすることで反応器の容積が低減され、これにより容積比が改善され反応が更に効率的になるという点である。本明細書に開示される実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して僅か約3000倍にしか過ぎないものがある。更なる実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して僅か約4000倍にしか過ぎないものもある。さらに別の実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して約10,000倍未満のものがある。加えて、円筒状反応器を使用した場合、矩形横断面を有する反応器と比較すると、同じ流量比を提供するためには、より大量の炭素含有原料ガスが必要である点に注目されたい。当然のことながら、他の実施形態の中には、矩形ではないがこれに比較的類似しており、かつ、円形横断面を有する反応器に対して、反応器の容積を同様に低減する多角形状で表される横断面を有する合成反応器がある。c)問題のある温度分布;相対的に小径の反応器を用いた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。しかし、例えば、工業規模の生産に用いられるような場合などには、サイズの増大に伴い、このような温度勾配は増加する。温度勾配は、繊維材料の全域で製品品質がばらつく(すなわち、製品品質が半径位置の関数として変化する)原因となる。この問題は、矩形横断面を有する反応器を用いた場合に殆ど回避される。特に、平面的な基材が用いられる場合、基材のサイズが大きくなったときに、反応器の高さを一定に維持することができる。反応器の頂部と底部間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。
【0128】
2)ガス導入。当該技術分野では、通常、管状炉が使用されているので、一般的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は、ガスを一端に導入し、それを反応器に通して他端から引き出している。本明細書に開示された実施形態の中には、ガスが、反応器の両側面又は反応器の頂面及び底面のいずれかを通して対称に、反応器の中心又は目標成長ゾーン内に導入されるものがある。これにより、流入する原料ガスがシステムの最も高温の部分、すなわち、カーボン・ナノチューブの成長が最も活発な場所に、連続的に補充されるので、全体的なカーボン・ナノチューブ成長速度が向上する。
【0129】
(ゾーン分け)
比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーは、矩形合成反応器の両端から延びる。出願人は、仮に高温ガスが外部環境(すなわち、矩形反応器の外部)と接触(mix)すると、繊維材料の劣化(degradation)が増加すると結論を下した。低温パージゾーンは、内部システムと外部環境との間の緩衝部となる。当該技術分野で既知のカーボン・ナノチューブ合成反応器の構成では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが求められる。本発明の矩形カーボン・ナノチューブ成長反応器の出口における低温パージゾーンは、連続的なインライン処理に必要とされるような短時間の冷却を実現する。
【0130】
(非接触式ホットウォール型金属製反応器)
ある実施形態では、金属製ホットウォール型(hot-walled)反応器(例えば、ステンレス鋼)が用いられる。金属、特にステンレス鋼が炭素の付着(すなわち、煤及び副生成物の形成)を受けやすいために、この種類の反応器の使用は、常識に反するようにも考えられる。したがって、大部分のカーボン・ナノチューブ合成反応器は、炭素の付着が殆どないため、また、石英は洗浄し易く、また試料の観察が容易であるため、石英から作られる。しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上における煤及び炭素付着物が増加することにより、より着実で、効率的、高速、かつ、安定的なカーボン・ナノチューブ成長がもたらされるということを発見した。理論に拘束されるものではないが、大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、反応器内で起こるCVDプロセスでは拡散が制限されることが示されている。すなわち、カーボン・ナノチューブ形成触媒が「過剰供給(overfed)」、つまり、過量の炭素が、(反応器が不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧により反応器システム内で得られる。結果として、開放システム(特に清浄なシステム)では、過量の炭素がカーボン・ナノチューブ形成触媒の粒子に付着して、カーボン・ナノチューブの合成能力を低下させる。ある実施形態では、反応器に「汚れが付いて(dirty)」いる、すなわち、金属反応器壁に煤が付着している状態の場合に、矩形反応器を意図的に運転する。炭素が反応器壁上に単分子層で付着すると、炭素は容易にその上に付着する。得られる炭素の中には、このメカニズムにより「回収される(withdrawn)」ものがあるので、ラジカルの形で残っている炭素原料が、カーボン・ナノチューブ形成触媒を被毒させない速度でこの触媒と反応する。既存のシステムは「清浄に(cleanly)」運転するが、これは連続処理のために開放状態であれば、減速した成長速度で、はるかに低い収率でしかカーボン・ナノチューブを生産できないことになる。
【0131】
通常は、前述のようにカーボン・ナノチューブの合成を「汚れた」状態で実施するのは有利であるが、それでも、装置の特定の部分(例えば、ガスマニフォールド及びガス入口)は、煤が閉塞状態を引き起こした場合、カーボン・ナノチューブの成長プロセスに悪影響を与える。この問題に対処するために、カーボン・ナノチューブ成長反応チャンバーのこのような部分を、例えば、シリカ、アルミナ又はMgOなどの煤抑制コーティングで保護してもよい。実際には、装置のこれらの部分は、これら煤抑制コーティングを、浸漬コーティングすることができる。INVAR(登録商標)は、高温におけるコーティングの適切な接着性を確実にする同様のCTE(熱膨張係数)を有し、重要なゾーンにおける煤の著しい堆積を防止するので、INVAR(商標名)などの金属が、これらのコーティング用に用いられる。
【0132】
(触媒還元及びカーボン・ナノチューブ合成の組合せ)
本明細書に開示されたカーボン・ナノチューブ合成反応器において、触媒還元及びカーボン・ナノチューブ成長のいずれもが反応器内で起こる。還元工程が個別の動作として実施されると、連続プロセスに用いるには十分タイムリーに行えなくなるため、このことは重要である。当該技術分野において既知の標準的なプロセスにおいて、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。本開示によれば、両方の動作は1つの反応器内で生じるが、これは、少なくとも1つには、炭素含有原料ガスを導入するのが、円筒状反応器を用いる当該技術分野では標準的となっている反応器の端部ではなく、中心部であることに起因する。還元プロセスは、繊維材料が加熱ゾーンに入ったときに行われる。この時点に至るまでに、ガスには、(水素ラジカルの相互作用を介して)触媒を還元する前に、反応器壁と反応して冷える時間があるということである。還元が起こるのはこの遷移領域である。システム内で最も高温の等温ゾーンでカーボン・ナノチューブの成長は起こり、反応器の中心近傍におけるガス入口の近位で最大の成長速度が生じる。
【0133】
ある実施形態では、例えば、トウ又はロービングなど(例えば、ガラスロービング)、緩くまとまった(loosely affiliated)繊維材料が使用される場合、連続プロセスには、トウ又はロービングのストランド(strand)又はフィラメントを広げる工程が含まれる。このように、トウ又はロービングは、広げられるときには、例えば、真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を用いて開繊される。例えば、サイジングされて比較的堅いガラス繊維ロービングを使用する場合、ロービングを「軟化」して繊維の開繊を容易にするために、更なる加熱を用いることができる。個々のフィラメントを含んで構成される開繊繊維(spread fiber)は、フィラメントの全表面積を晒させるよう十分分離して開繊され、こうして後続の処理工程でロービングがより効率的に反応できるようにする。例えば、開繊トウ又は開繊ロービングは、前述のようにプラズマシステムで構成される表面処理工程を経る。その後、粗面化された開繊繊維はカーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬槽を通過する。その結果、表面で放射状に分布した触媒粒子を有するガラスロービングの繊維となる。触媒を含んだロービングの繊維は、その後、前述のように、例えば、矩形チャンバーなどの適切なカーボン・ナノチューブ成長チャンバーに入るが、ここでは、大気圧CVD又はプラズマCVDプロセスを通る流れを用いて、毎秒数ミクロンの速度でカーボン・ナノチューブを合成する。ロービングの繊維は、こうして、そこに放射状に配列されたカーボン・ナノチューブを備えて、カーボン・ナノチューブ成長反応器を出る。
【0134】
本発明の様々な実施形態の働きに実質的に影響を及ぼさない変更も、本明細書で提供する本発明の定義に含まれることを理解されたい。したがって、以下の実施例は本発明を例示するものであり、それを限定するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、エネルギー貯蔵に関し、特に、カーボン・ナノチューブを使用したエネルギー貯蔵に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2010年3月2日出願の米国仮特許出願第61/309,828号に対する優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究又は開発の記録)
該当なし
【背景技術】
【0004】
コンデンサは、電荷の蓄積及び貯蔵に使用される電気機器である。コンデンサは少なくとも2つの点でバッテリと区別される。第一に、コンデンサの電荷貯蔵は、バッテリの化学的分離ではなく、物理的電荷分離に基づいている。第二に、コンデンサの充電及び放電速度はバッテリ内で生じる化学反応よりはるかに迅速である。
【0005】
従来のコンデンサでは、電荷分離は、誘電体材料によって分離された2枚の導電板によって維持される。印加電位が存在する状態で、誘電体材料内で電界が増強され、導電板間に機械的力が発生する。導電板上に維持される電荷と導電板間の電位差との比率を、キャパシタンスと呼び、ファラド単位で測定する。
【0006】
従来のコンデンサの様々な改良品も開発されている。電解コンデンサは、導電板の一方としてイオン含有液を使用する。このような電解コンデンサは、通常、従来のコンデンサよりはるかに高いキャパシタンス値を示す。しかし、各導電板を分極電圧状態に維持するという要件によって、その有用性はある程度限定される。
【0007】
スーパーキャパシタは、電気二重層コンデンサ、電気化学二重層コンデンサ、スーパーコンデンサ、ウルトラコンデンサ、又は疑似コンデンサとも呼ばれ、さらに高いキャパシタンス値を示すことができる。スーパーキャパシタは、導電板の著しい物理的分離がないという点で、従来のコンデンサ及び電解コンデンサとは著しく異なる。代わりに、スーパーキャパシタは、導電板間に無視できるほどの薄い物理的バリア(<100μm)を組み込むことによって電荷分離を維持する。前記物理的バリアは、スーパーキャパシタが帯電状態にある場合に電荷の分離を効果的に維持する一方、急速な充放電を可能にするために電荷キャリアに対しては十分に透過性を有する。
【0008】
多くの従来のスーパーキャパシタは、現状では、その内部に分散する電解質から電荷キャリアを保持するために大きな表面積基材として、活性炭粒子を使用している。活性炭粒子は大きい表面積を有するが、わずかな電荷キャリアが、活性炭粒子の多孔質内部に浸透しその大きい表面積をうまく利用するには大きすぎる。図1は、活性炭粒子105を含有する例示的な従来のスーパーキャパシタ100の概略図を示す。スーパーキャパシタ100は、正極端子103及び負極端子104にそれぞれ接続された導電層101及び102を含む。導電層101及び102は、それぞれ、活性炭粒子105と、活性炭粒子105と混合した陽イオン106及び陰イオン107を含有する電解質と、を含む。陽イオン106及び陰イオン107は、活性炭粒子105の内部又は外部に存在することができる。導電層101及び102は、電解質の陽イオン106及び陰イオン107に対して透過性を有するセパレータ材料の層108によって、互いに物理的に隔離されている。図1に示すスーパーキャパシタ100は、放電状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カーボン・ナノチューブなどの特定の高性能材料が、その高い使用し易い(accessible)表面積により、スーパーキャパシタ中の活性炭粒子の代替品として提案されている。カーボン・ナノチューブは、これに関してその導電性によりさらに有利になり得る。カーボン・ナノチューブは、スーパーキャパシタの性能を改善するためにかなりの潜在能力を有するが、今日までの研究努力は、スーパーキャパシタの電解質媒体中に少量のカーボン・ナノチューブをランダムに分散させるほどの成功しかしていない。したがって、現在の製造技術は、僅かなカーボン・ナノチューブを含むスーパーキャパシタの生産にしか適用可能でなく、電気貯蔵容量が少ない。
【0010】
以上を鑑みて、大量のカーボン・ナノチューブを含むスーパーキャパシタは、電気貯蔵容量が増大するので、当技術分野において著しく有益である。このようなスーパーキャパシタを容易に準備する方法及び装置を提供することも、当技術分野において大いに有益である。同様の理由で、自身内にカーボン・ナノチューブを容易に組み込むことにより他の電気機器にも有利になり得る。本発明はこれらの要求を満足させ、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある実施形態では、本明細書で説明する電気機器は、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料と、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料と、を含む。第1の電極材料及び第2の電極材料は、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。
【0012】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料を提供するステップと、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を提供するステップと、前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるステップと、を含む。
【0013】
他の実施形態では、本明細書で説明する方法は、第1の繰り出しリール上に巻き取り可能な寸法の第1の基材及び第2の繰り出しリール上に巻き取り可能な寸法の第2の基材を提供するステップと、カーボン・ナノチューブを浸出するように、カーボン・ナノチューブ成長反応器を通して前記第1の基材及び前記第2の基材を搬送し、それにより、前記第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料、及び前記第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を形成するステップと、前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるステップとを含む。
【0014】
ある実施形態では、本明細書で説明する装置は、カーボン・ナノチューブ成長反応器と、前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流の第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリールと、カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流の第3の繰り出しリールと、巻き取りリールと、を含む。前記第1の繰り出しリール及び前記第2の繰り出しリールは、カーボン・ナノチューブ成長反応器を通して第1の基材及び第2の基材を連続的に搬送し、カーボン・ナノチューブを浸出するように、カーボン・ナノチューブ成長反応器に動作可能に連結される。前記第3の繰り出しリールは、カーボン・ナノチューブ成長反応器の出力に動作可能に結合されて、第1の基材、第2の基材、及び第1の基材と第2の基材との間に配置された第3の繰り出しリールの出力とを含む層状構造を形成するようになっている。前記巻き取りリールは、前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるように動作可能である。
【0015】
以上は、以下の詳細な説明をよりよく理解できるように、本開示の特徴をかなり広義に概略説明している。本開示の追加の特徴及び利点を以降で説明するが、これは特許請求の範囲の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】活性炭粒子を含む例示的な従来技術のスーパーキャパシタの概略図を示す。
【図2】螺旋の隣接する腕の間に実質的に一定の間隔があることを示す、例示的な2次元のアルキメデスの螺旋を示す。
【図3A】本発明の電気機器のある実施形態の例示的層状構造の概略図を示す。
【図3B】中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Aの層状構造を含む例示的な電気機器の概略図を示す。
【図3C】浸出したカーボン・ナノチューブを示す図3Aの層状構造の概略図を示す。
【図3D】絶縁体材料を含む本発明の電気機器のある実施形態の例示的な層状構造の概略図を示す。
【図3E】中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Dの層状構造を含む例示的な電気機器の概略図を示す。
【図3F】第2のセパレータ材料を含む本発明の電気機器のある実施形態の例示的な層状構造の概略図を示す。
【図3G】中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Fの層状構造を含む例示的な電気機器の概略図を示す。
【図3H】螺旋形態の最外表面が絶縁体材料で被覆された図3Gの電気機器の概略図を示す。
【図4A】第1の電極材料の縁部と第2の電極材料の縁部とが相互にずれている例示的な部分的に巻き付けられていない螺旋形態の概略図を示す。
【図4B】図4Aの螺旋形態が例示的なハウジング内に配置されている概略図を示す。
【図5】コインプレスのサンプルスーパーキャパシタ構造の概略図を示す。
【図6】本開示のスーパーキャパシタの例示的なサイクリックボルタモグラムを示す。
【図7】本明細書で説明する電気機器の特定の実施形態を準備するために用いられる例示的装置の概略図を示す。
【図8】絶縁体材料で螺旋形態を密封することなく電気的分離を達成する本発明の電気機器の別の実施形態を準備する例示的装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示及びその利点をよりよく理解するために、本開示の特定の実施形態について説明する添付図面と組み合わせて以下の説明を参照されたい。
【0018】
本開示は、部分的に、基材に浸出されたカーボン・ナノチューブから形成された電極材料(すなわち、カーボン・ナノチューブ浸出基材又はカーボン・ナノチューブ浸出基材材料)を有する層状構造を含む電気機器を説明し、層状構造は中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。本開示は、部分的に、このような電気機器を作成する方法も説明する。また、本開示は、部分的に、このような電気機器を作成する装置も説明する。
【0019】
上述したように、スーパーキャパシタは、通常、従来のコンデンサ又は電解コンデンサよりはるかに高いキャパシタンス値を示す。したがって、例えば、太陽エネルギー集積、水力発電エネルギー集積、及び風力発電エネルギー集積など、エネルギー貯蔵用途において多大な関心を得ている。スーパーキャパシタは、充放電サイクルが高速であるので、上記及びその他の目的に非常に適したものとなる。何故なら、スーパーキャパシタは、電力網の要求が低い場合は余分なエネルギーを容易に蓄え、電力網の要求が高い場合は貯蔵したエネルギーを迅速に放出できるからである。さらに、スーパーキャパシタは、数十万回も劣化せずに充放電することができ、それに関してバッテリより相当に優れたものになる。加えて、スーパーキャパシタの高速の充放電サイクル及びその充電/放電安定性により、例えばガソリンと電気のハイブリッド車など、多数の高速の充放電サイクルが望ましい用途に特に適したものになる。
【0020】
上記及び他の用途における関心の増大とともに、現在使用可能なものよりエネルギー貯蔵限度がさらに高いスーパーキャパシタが必要とされている。スーパーキャパシタのキャパシタンスは、電極の表面積(例えば導電板の面積)に比例する。活性炭粒子を含む従来のスーパーキャパシタでは、所与のサイズの電極に対して増加させることができる電極の有効表面積について、本質的な限界がある。すなわち、従来のスーパーキャパシタに使用される活性炭粒子は、漸近キャパシタンス値に到達する前までしか小さくすることができない。さらに、活性炭粒子中の細孔のサイズは限定されているので、有効表面積が減少し、比較的大きい電解質では問題になることがある。カーボン・ナノチューブは、活性炭よりも単位重量当たりの有効表面積をはるかに大きくすることができるので、これらの存在はスーパーキャパシタのキャパシタンスを大幅に増加させる潜在力を提供する。その有望性にもかかわらず、極めて高い有効表面積を確実に活用できる状態で、カーボン・ナノチューブをスーパーキャパシタ及び他の電気機器に配置することは、これまで困難であった。
【0021】
本開示の実施形態は、基材に浸出されたカーボン・ナノチューブから作成された電極材料を含むスーパーキャパシタ及び他の電気機器について説明する。連続繊維にカーボン・ナノチューブを浸出するための連続プロセスは、すべて2009年11月2日出願の本出願人の同時係属米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、及び第12/611,103号、及び2010年11月2日出願の第12/938,328号に記載されており、上記出願のそれぞれは、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。このようなカーボン・ナノチューブ浸出繊維の繊維材料は、通常、制限なく変更することができ、例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、及び有機繊維(例えばアラミド繊維)を挙げることができる。このようなカーボン・ナノチューブ浸出繊維は、市販の連続する個々の繊維又は連続繊維形態(例えば、繊維トウ、テープ、フィルム、織布及び不織布、マット、プライ及びリボン)から巻き取り可能な寸法で容易に準備することができる。カーボン・ナノチューブの長さ、直径、及び繊維材料上の被覆密度は、上記の方法を適用することにより容易に変更することができる。さらに、これらの方法は、カーボン・ナノチューブを浸出するために、例えばシート、箔及びフィルムなど、他の連続長で非繊維質の基材にも容易に適合させることができる。カーボン・ナノチューブ浸出繊維及びその生産方法に関するさらなる詳細は、以下でさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の実施形態では、基材又は基材材料に言及した場合、それはカーボン・ナノチューブが浸出される繊維質材料と非繊維質材料の両方を含むということが理解されるであろう。本明細書の特定の実施形態は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維について説明している本出願人の同時係属特許出願を参照することがあるが、上述の方法のルーチンの変更により、任意の同様の連続長基材(例えば、巻き取り可能な寸法の繊維質又は非繊維質基材)に、同様にカーボン・ナノチューブを浸出できることが理解されるであろう。
【0023】
その成長条件に応じて、連続繊維及び同様の基材に浸出されたカーボン・ナノチューブは、繊維材料又は基材の表面に実質的に垂直又は実質的に平行になるように配向されるであろう。本発明の実施形態では、カーボン・ナノチューブを実質的に垂直に配向することによって、さらに大きい有効電極表面積を実現することができる。これは、外面に完全に露出できるように、カーボン・ナノチューブが実質的に分離された状態で存在する場合に特に当てはまる。カーボン・ナノチューブ浸出繊維及び同様の基材を準備する上述の方法は、実質的に分離した状態で実質的に垂直のカーボン・ナノチューブ配向を達成するのに特に熟達しており、それにより、本発明の実施形態の電極材料として使用するために高い有効表面積を有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維及び同様の基材を提供する。しかし、本発明の開示の精神と範囲内にありながら、基材表面に対して実質的に平行な配向など、基材上のカーボン・ナノチューブの任意の配向が、本発明の実施形態で使用することができる。
【0024】
本発明のスーパーキャパシタの実施形態では、カーボン・ナノチューブが活性炭粒子に取って代わるだけでなく、カーボン・ナノチューブ自体が基本的に電極と区別不能となる。活性炭粒子を含む従来のスーパーキャパシタでは、活性炭粒子に接触している電極プレートがある(図1参照)。しかし、従来のスーパーキャパシタでは、活性炭粒子が電極プレートに浸出されない。本発明の実施形態では、カーボン・ナノチューブが基材に強力に浸出し、それによって、カーボン・ナノチューブ自体が電極から区別不能になる。この特徴は、スーパーキャパシタ及び他の電気機器の設計に新しいパラダイムを提示する。
【0025】
さらに、本発明の電気機器は、それぞれが基材及び浸出された複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料及び第2の電極材料を含んだ層状構造を有し、この層状構造は、電気機器内に螺旋形態(例えば、アルキメデスの螺旋又は同様の螺旋構造)で巻き付けられる。ある実施形態では、層状構造の螺旋形態は、アルキメデスの螺旋に見られるように螺旋の隣接するアーム間に実質的に一定の間隔があるように中心軸の周囲に巻き付けられる。図2は、例示的な2次元のアルキメデスの螺旋を示し、螺旋の隣接するアームの間の実質的に一定の間隔を示す。以降で説明するように、螺旋形態内にある電極材料の隣接する層間の実質的に一定の間隔は、例えば、絶縁体材料の層又はセパレータ材料の層のように介在する層によって提供することができる。
【0026】
本発明の実施形態の螺旋形態は、非常に大きい有効表面積を有する電極材料を、最小容積を有する電気機器にパック詰めすることを可能にすることも利点である。例えば、基材材料上のカーボン・ナノチューブの長さ、直径、及び被覆密度などの要因に応じて、活性炭粒子で従来達成可能であったものよりはるかに大きい有効表面積を有する電極材料を生産することができる。上述したように、これらのパラメータのすべては、カーボン・ナノチューブ浸出繊維生産用の上記の方法において容易に変更される。したがって、これらのパラメータを使用して、本発明の電気機器の電気特性を調整することができる。
【0027】
本明細書で使用する用語「螺旋形態(spiral configuration)」とは、中心軸の周囲に巻き付けられた非弦巻状(non-helical)の層状構造をいう。様々な実施形態で、本発明の電気機器の螺旋形態は、3次元に拡張したアルキメデスの螺旋のそれを近似することができる。中心軸の周囲の巻き付けは、時計回り又は反時計回りで実行することができる。
【0028】
本明細書で使用する用語「基材」又は「基材材料」とは、カーボン・ナノチューブを浸出することができる任意の材料をいい、用語「連続基材」とは、巻き取り可能な長さの基材をいう。
【0029】
本明細書で使用する用語「繊維」、「繊維材料」、又は「フィラメント(filament)」とは、等価的に、基本的構造形態として繊維質成分を有する基材をいう。本明細書で使用する用語「連続繊維」とは、個々のフィラメント、ヤーン、ロービング、トウ、テープ、リボン、織布及び不織布(例えば繊維シート)、プライ、マットなどの巻き取り可能な長さの繊維をいう。
【0030】
本明細書で使用する用語「巻き取り可能な長さ」又は「巻き取り可能な寸法」とは、等価的に、カーボン・ナノチューブの浸出前又は浸出後にスプール又はマンドレル上に巻き取っておくことが可能な、長さの限定されない、基材の有する少なくとも1つの寸法をいう。巻き取り可能な長さ又は巻き取り可能な寸法の基材は、基材へのカーボン・ナノチューブ浸出のためのバッチ処理又は連続処理のいずれかの使用を示唆する、少なくとも1つの寸法を有する。
【0031】
本明細書で使用する用語「浸出する」とは結合されることをいい、用語「浸出」とは結合処理をいう。したがって、用語「カーボン・ナノチューブ浸出基材」とは、自身に結合されたカーボン・ナノチューブを有する基材をいう。さらに、用語「カーボン・ナノチューブ浸出繊維」とは、自身に結合されたカーボン・ナノチューブを有する繊維材料をいう。基材又は繊維材料へのカーボン・ナノチューブの結合は、機械的連結、共有結合、イオン結合、π−π相互作用(πスタッキング相互作用)及び/又はファン・デル・ワールス力の介在による物理吸着などが含まれ得る。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは基材又は繊維材料に直接結合される。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの成長を仲介するために用いられるバリア・コーティング及び/又は触媒ナノ粒子を介して基材又は繊維材料に間接的に結合される。カーボン・ナノチューブを基材又は繊維材料に浸出させる具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0032】
本明細書で使用する用語「ナノ粒子」とは、球の等価直径が約0.1nmから約100nmの間の直径を有する粒子をいうが、ナノ粒子は必ずしも形状が球形である必要はない。本明細書で使用する用語「触媒ナノ粒子」とは、カーボン・ナノチューブの成長を仲介する触媒活性を保有するナノ粒子をいう。
【0033】
本明細書で使用する用語「遷移金属」とは、周期表のd‐ブロック(3族から12族)におけるあらゆる元素又はその合金をいう。また、用語「遷移金属塩」とは、あらゆる遷移金属化合物(例えば、遷移金属元素の酸化物、炭化物、窒化物など)をいう。カーボン・ナノチューブを合成するために適した触媒ナノ粒子を形成する例示的な遷移金属は、例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、Ag、並びにこれらの合金、塩及び混合物が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用する用語「サイジング剤」又は「サイジング」とは、繊維材料の製造において、繊維材料を完全な状態で保護するか、繊維材料とマトリックス材料との間の界面相互作用を向上させるか、及び/又は繊維材料の特定の物理的特性を変更及び/又は向上させるためのコーティングとして使用される材料をいう。
【0035】
本明細書で使用する用語「長さが均一」とは、約1μmから約500μmの範囲にあるカーボン・ナノチューブ長に関して、カーボン・ナノチューブが、カーボン・ナノチューブの全長の±約20%又はそれ未満の許容誤差を伴う長さを有する状態をいう。極めて短いカーボン・ナノチューブ長(例えば、1μm〜4μmなど)では、この誤差は、±約1μm、すなわち、カーボン・ナノチューブの全長の約20%よりも若干大きくなるであろう。
【0036】
本明細書で使用する用語「密度分布が均一」とは、基材又は繊維材料上のカーボン・ナノチューブの被覆密度が、カーボン・ナノチューブによって覆われる基材又は繊維材料表面積に対して約±10%の許容誤差を有する状態を指す。
【0037】
本明細書で使用する用語「連続プロセス」とは、実質的に中断しない状態で実行される多段階プロセスをいう。
【0038】
ある実施形態では、本明細書で説明する電気機器は、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料と、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料とを含む。前記第1の電極材料及び第2の電極材料は、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。電気機器の様々な実施形態が、図3A〜図3H、図4A及び図4Bに図示されており、それについては以下でさらに詳細に説明する。
【0039】
ある実施形態では、電気機器は、スーパーキャパシタを構成する。このような実施形態では、電気機器は、前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料と接触する電解質と、電解質のイオンに対して透過性であり、第1の電極材料と第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料と、をさらに含む。
【0040】
本発明の実施形態の基材に浸出されるカーボン・ナノチューブのタイプは、通常、無制限に変更することができる。様々な実施形態では、基材に浸出されたカーボン・ナノチューブは、例えば任意の数のフラーレン族の炭素の円筒形同素体であり、単層カーボン・ナノチューブ、二層カーボン・ナノチューブ、多層カーボン・ナノチューブ、及びその任意の組合せがある。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを、フラーレン状構造で閉塞することができる。言い換えると、カーボン・ナノチューブは、このような実施形態では閉鎖端を有する。しかし、他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、開放端のままである。ある実施形態では、閉塞されたカーボン・ナノチューブの端は、適切な酸化剤(例えばHNO3/H2SO4)で処理することによって開口できる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは他の物質(例えば金属ナノ粒子)を封入することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、繊維材料に浸出された後に共有結合的に機能化することができる。ある実施形態では、プラズマプロセスを使用して、カーボン・ナノチューブの機能化を促進することができる。
【0041】
カーボン・ナノチューブは、そのキラリティに応じて金属質、半金属質又は半導電性となり得る。カーボン・ナノチューブのキラリティを示すために確立された命名システムが当業者には認識されており、2つの指数(n,m)で識別され、ここで、n及びmは、管状構造に形成された場合の六方晶系のグラファイトの切断部及び巻き方を表す整数である。キラリティに加えて、カーボン・ナノチューブの直径は、その電気伝導性及び関連する熱伝導性の特性にも影響する。カーボン・ナノチューブを合成する際に、カーボン・ナノチューブの直径は、一定のサイズの触媒ナノ粒子を使用することによって制御することができる。通常、カーボン・ナノチューブの直径は、その構成に触媒作用を及ぼす触媒ナノ粒子の直径に近い。したがって、カーボン・ナノチューブの特性は、例えばこれらの合成に使用する触媒ナノ粒子のサイズを調節することによって制御することができる。非限定的な例として、約1nmの直径を有する触媒ナノ粒子を使用して、基材に単層カーボン・ナノチューブを浸出することができる。より大きい触媒ナノ粒子は、主に多層カーボン・ナノチューブを作成するために使用され、これらはナノチューブ層が複数あるため又は単層カーボン・ナノチューブと多層カーボン・ナノチューブの混合であるため、さらに大きい直径を有する。多層カーボン・ナノチューブは、通常、単層カーボン・ナノチューブより複雑な伝導性プロファイルを有する。何故なら、壁間反応が個々のナノチューブ層間に生じて電流を不均一に再配分することがあるからである。対照的に、単層カーボン・ナノチューブでは、異なる部分にまたがる電流に変化がない。
【0042】
一般的に、本発明の実施形態における基材に浸出されるカーボン・ナノチューブは、任意の長さとすることができる。本発明の実施形態では、比較的長いカーボン・ナノチューブの方が、より大きい有効表面積を有する電極材料を提供できるので、通常は有利である。様々な実施形態では、カーボン・ナノチューブは、約1μmから約100μmまでの間、又は約1μmから約500μmまでの間の範囲の長さを有することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、約100μmから約500μmまでの間の範囲の長さを有することができる。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、約1μmから約50μmまでの間、又は約10μmから約25μmまでの間の範囲の長さを有することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、実質的に均一な長さとすることができる。
【0043】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μmから約500μmの間であり、それは約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μm未満であり、それは例えば約0.5μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約1μmから約10μmの間であり、それは例えば約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。さらに他の実施形態では、カーボン・ナノチューブの平均長さは、約500μmより大きく、それは例えば約510μm、約520μm、約550μm、約600μm、約700μm、及びその間のすべての値及びその間の部分的範囲を含む。
【0044】
カーボン・ナノチューブの平均長さは、本発明の実施形態で基材に浸出されるカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージを決定する1つの要因になり得る。一般的に、前述した同時係属特許出願に記載されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維は、他の方法で得られる値よりはるかに高いカーボン・ナノチューブ担持パーセンテージを有する。例えば、カーボン・ナノチューブ浸出繊維は、重量で約1%から約30%又は約40%から約50%の範囲の浸出繊維を含有することができる。基材に浸出されるカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージは、本発明の実施形態ではこれに相当する範囲を上回って変更することができる。選択されたカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージは、本発明のスーパーキャパシタの実施形態における望ましいキャパシタンスによって規定することができる。さらに、浸出されたカーボン・ナノチューブは、予め形成したカーボン・ナノチューブを単純に付着させて得られるより、本発明の実施形態における基材に対してはるかに強力に結合される。
【0045】
基材上のカーボン・ナノチューブの被覆密度は、浸出されるカーボン・ナノチューブの重量パーセンテージを決定する別の要因になる。ある実施形態では、基材に浸出されるカーボン・ナノチューブは、一般的に、密度分布が均一であり、これは基材に浸出されるカーボン・ナノチューブ密度の均一性と呼ばれる。先に定義したように、均一な密度分布に対する許容誤差は、カーボン・ナノチューブが浸出される基材表面積上で約±10%である。繊維材料の限定されない例として、この許容誤差は、8nmの直径及び5つの層を有するカーボン・ナノチューブで、約±1500カーボン・ナノチューブ/μm2に相当する。このような数字は、カーボン・ナノチューブ内の空間が充填可能であると仮定している。カーボン・ナノチューブ浸出繊維のある実施形態では、繊維材料のパーセント被覆率(すなわち、カーボン・ナノチューブで被覆される繊維材料表面積のパーセンテージ)として表現されるカーボン・ナノチューブの最大密度は、約55%という高い値にすることができるが、これもカーボン・ナノチューブが8nmの直径、5つの層、及び内部に充填可能な空間を有すると仮定している。55%の表面積被覆率は、参照した寸法を有するカーボン・ナノチューブで、約15,000カーボン・ナノチューブ/μm2に相当する。ある実施形態では、被覆密度は、最大で約15,000カーボン・ナノチューブ/μm2である。基材の表面への触媒ナノ粒子の配列、カーボン・ナノチューブ成長条件における基材の曝露時間、及び基材へのカーボン・ナノチューブの浸出に使用される実際の成長条件自体を変更することによって、広範囲にわたるカーボン・ナノチューブの密度分布を達成できることが当業者には認識される。
【0046】
ある実施形態では、基材上のカーボン・ナノチューブ被覆密度は、イオンサイズにおける変化を考慮して調節することができる。例えば、スーパーキャパシタの電解質が比較的大きいイオンを含有する場合は、基材上のカーボン・ナノチューブ被覆密度を低下させて、スーパーキャパシタの充放電サイクル中に満足できるイオン移動度及び電極接触を確実に行うことができる。
【0047】
本発明の実施形態によると、カーボン・ナノチューブ浸出基材は、電気機器の電極材料を形成する。カーボン・ナノチューブ浸出基材は、層状構造で存在し、これは、その後、電気機器の中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられる。さらに、電気機器がスーパーキャパシタである実施形態では、電解質のイオンが透過可能であるセパレータ材料を、層状構造内の電極材料間に配置して、その間の電荷を分離する。図3Aは、本発明の電気機器のある実施形態の例示的層状構造の概略図を示し、図3Bは、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Aの層状構造を含む例示的電気機器の概略図を示す。図3Cは、図3Aの層状構造の概略図を示し、浸出されたカーボン・ナノチューブ390を図示している。図3Aは、第1の電極材料301及び第2の電極材料302を含む層状構造300を示す。第1及び第2の電極材料301及び302は、カーボン・ナノチューブが浸出された基材から形成される。第1の電極材料301と第2の電極材料302との間には、第1のセパレータ材料303が配置される。図3Bは、層状構造300を中心軸311の周囲に螺旋形態310で巻き付けることを示す。図3Bは、反時計回りに巻き付けた螺旋形態310を示しているが、螺旋形態は、第1の電極材料301と第2の電極材料302との相対位置が逆転するように、同じように時計回りに巻き付けることができる。図3Bの概略図は、電気機器の中心軸に沿って見たものを示し、実際の電気機器の構造は、示された螺旋形態で巻き付けた内部構造を有するシリンダの構造に類似していることに留意されたい。図3Bは、螺旋形態310における第1の電極材料301と第2の電極材料302との隣接する層間に間隔を示しているが、その間に任意の望ましい間隔があってもよい。一般的に、単位体積当たり最大のキャパシタンスを生成するために、螺旋形態310における隣接する層間の間隔は、可能な限り小さく維持される。
【0048】
螺旋形態310における隣接する層間の短絡を防止するために、本発明の電気機器は、その間に電気的絶縁をさらに提供する。ある実施形態では、電気的絶縁は、隣接する層間に配置された絶縁体材料によって提供することができる。ある実施形態では、本発明の電気機器は、第1のセパレータ材料に隣接していない絶縁体材料をさらに含む。図3Dは、絶縁体材料を含む本発明の電気機器のある実施形態の例示的層状構造の概略図を示し、図3Eは、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Dの層状構造を含む例示的電気機器の概略図を示す。図3Dは、図3Aに関して上述したものと同様の層状構造320の概略図を示し、ここで、絶縁体材料304は、第2の電極材料302に隣接して配置される。図3Dは、層状構造320を、中心軸311の周囲に螺旋形態330で巻き付けることを示す。図3Bと同様に、図3Eの螺旋形態330は反時計回りに巻き付けて示されている。螺旋形態330は、時計回りに巻く前に層状構造320における第1の電極材料301に隣接して絶縁体材料304を配置するだけで、同様に時計回りに巻き付けることができる。この場合も、図3Eは示されているように螺旋形態330における隣接する層の間に多少の間隔を示している。すなわち、絶縁体材料304と第1の電極材料301は所望に応じて隔置することができる。しかし、他の実施形態では、絶縁体材料304と第1の電極材料301は、空間の最適使用を達成するために接触することができる。絶縁体材料304と第1の電極材料301が隔置される実施形態では、余分な電解質をその間の空間に充填することができる。ある実施形態では、所与のサイズのスーパーキャパシタに所望のキャパシタンスを提供するために、螺旋形態330の隣接する層間の間隔を必要に応じて変更することができる。
【0049】
別の実施形態では、第1の電極材料と第2の電極材料の間に配置された第2のセパレータ材料によって、電気的絶縁を提供することができる。ある実施形態では、本発明の電気機器は、第1のセパレータ材料に隣接していない第2のセパレータ材料をさらに含む。図3Fは、第2のセパレータ材料を含む本発明の電気機器のある実施形態の例示的層状構造の概略図を示し、図3Gは、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられた図3Fの層状構造を含む例示的電気機器の概略図を示す。図3Fは、図3Aに関して上述したものと同様の層状構造340の概略図を示し、ここで、第2の絶縁体材料305は、第2の電極材料302に隣接して配置される。図3Gは、層状構造340を中心軸311の周囲に螺旋形態350で巻き付けることを示す。この場合も、層状構造340の第1の電極材料301に隣接して第2の絶縁体材料305を配置することにより、螺旋形態350の巻きを反時計回りから時計回りに変化させることができる。さらに、上述したように本発明の実施形態では、第2のセパレータ材料305と第1の電極材料301との間に任意の所望の間隔を使用することができる。
【0050】
図3E及び図3Gに示す実施形態では、電解質(図示せず)を、螺旋形態330及び350を含む電気機器の第1の電極材料301及び第2の電極材料302に関連づけることができる。上述したように、第1の電極材料301及び第2の電極材料302の基材上に浸出されたカーボン・ナノチューブは、電解質と関連づけるために、大きい有効表面積を電極材料に与えることができる。
【0051】
ある実施形態では、本発明の電気機器は、螺旋形態の最外面上に絶縁体材料をさらに含むことができる。特に、第2のセパレータ材料を含む実施形態では、螺旋形態の最外面上の絶縁体材料を使用して、電気機器を周囲環境から電気的に分離することができる。さらに、電気機器の螺旋形態の最外面上の絶縁体材料は、電解質の閉じ込めを補助することができる。図3Hは、螺旋形態350の最外面が第2のセパレータ材料305上の絶縁体材料307で被覆された図3Gの電気機器の概略図を示す。図3Hでは、第1の電極材料301及び第2の電極材料302は、絶縁体材料307を通って延在し、電気機器の充電又は放電に使用される電極端子(図示せず)に接続することができる。ある実施形態では、本発明の電気機器は、第1の電極材料に接続された第1の電極端子、及び第2の電極材料に接続された第2の電極端子をさらに含むことができる。
【0052】
絶縁体材料が存在しない実施形態でも、本発明の電気機器の電気的分離は維持することができる。ある実施形態では、第1の電極材料及び第2の電極材料をずらせることによって、電気的分離を維持することができる。ある実施形態では、本発明の電気機器は、螺旋形態で巻き付ける前に相互にずらした第1の電極材料及び第2の電極材料の縁部を有することができる。図4Aは、部分的に巻かれていない例示的螺旋形態(図3Gと類似の)の概略図を示し、第1の電極材料の縁部と第2の電極材料の縁部とが相互にずれている。図4Aに示すように、螺旋形態400の第1の電極材料401及び第2の電極材料402の左右の縁部は、相互に距離Dだけずれている。第1のセパレータ材料403は、第1の電極材料401と第2の電極材料402の間の重なり領域に配置される。同様に、第2のセパレータ材料404は、これも重なり領域上に位置するように、第2の電極材料402上に位置する。ハウジング内に配置されると、この螺旋の方向によって、図4Bに示すように、2つの電極材料を相互に独立にアドレスすることができる。
【0053】
図4Bは、螺旋形態400を例示的ハウジング450内に配置した概略図を示す。第1の電極材料401と第2の電極材料402は相互に距離Dだけずれ、それぞれ第1の電極端子451及び第2の電極端子452によって電気的に独立してアドレスされるように配配向される。ある実施形態では、第1の電極材料401はアニオンで、第1の電極端子451は正に帯電し、第2の電極材料402はカチオンで、第2の電極端子452は負に帯電する。図4Bでは、第1の電極端子451と第2の電極端子452は、絶縁シール453によって相互に電気的に隔離される。任意の充填栓454が、電解質をハウジング450に追加するために備えられている。図示の状態では、図4Bは電解質を示していないが、ハウジング450中の電解質のレベルは、通常、第2の電極材料402が露出するレベル(例えば、螺旋形態400の頂部から距離D)より下である。
【0054】
上述したように、例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、及び有機繊維などの連続繊維は、カーボン・ナノチューブを首尾よく浸出できることが示されている。本発明の実施形態に使用するために、同様の非繊維質基材にカーボン・ナノチューブを浸出することができる。一般的に、本発明の実施形態には、カーボン・ナノチューブを首尾よく浸出できる任意のタイプの基材を使用することができる。カーボン・ナノチューブ浸出基材、特にカーボン・ナノチューブ浸出繊維、及びその生産方法に関する付加的な詳細は、後述する。
【0055】
本発明の実施形態のいくつかでは、第1の基材及び第2の基材は、複数の連続繊維とすることができる。基材が繊維材料である場合、通常は、繊維材料の形状を、制限なく変更することができる。様々な実施形態では、個々の連続繊維(すなわち個々のフィラメント)は約1μmから約100μmの間の範囲の直径を有する。この範囲の直径を有する連続長の繊維材料は、様々な商業的供給源から容易に入手することができる。ある実施形態では、本発明の実施形態で使用する連続繊維は、例えば炭素繊維及び/又は金属繊維である。
【0056】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、それが浸出される基材の表面に対して実質的に垂直である。カーボン・ナノチューブ浸出繊維は、浸出されたカーボン・ナノチューブが任意の所望の方向で存在するように、前述した方法により生産することができるが、実質的に垂直方向がカーボン・ナノチューブの表面積を最大化し、したがって、電極材料の表面積を最大化することが当業者には認識される。少なくともこの理由により、本発明の実施形態では、カーボン・ナノチューブの実質的に垂直方向が有利である。
【0057】
ある実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、カーボン・ナノチューブを浸出する前に導電性とすることができる。一般的に、基材は、本発明の実施形態の螺旋形態に巻き付けるのを容易にするように、十分に可撓性である。例示的な導電性基材は、例えば、炭素繊維、グラファイト、及び金属シート、フィルム、箔、又は金属繊維(例えばステンレス鋼、アルミニウム、銅など)が挙げられる。基材へのカーボン・ナノチューブ浸出は、それに導電性を付与するが、カーボン・ナノチューブの浸出前に基材が最初から導電性である場合は、通常、集電及び電荷蓄積特性の向上が観察される。ある実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、例えば金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維を織ったシート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、又は連続繊維のテープなどの形態である。別の実施形態では、基材は、カーボン・ナノチューブの浸出前は非伝導性とすることができる。
【0058】
本発明の実施形態の基材が連続繊維材料から形成されている場合、前記連続繊維は、通常、本発明の電気機器中に個々のフィラメントとして配置されるのではなく、比較的高規則の繊維形態で使用される。このような高規則の繊維形態は、構造が大きく変化し、以下にさらに詳細に考察する。ある実施形態では、連続繊維の繊維形態は、例えば、繊維トウ、繊維テープ、繊維リボン、繊維ロービング、ヤーン、繊維ブレード、織布又は不織布シート、繊維プライ、及び/又は繊維マットとすることができる。ある実施形態では、高規則の繊維形態の個々のフィラメントは、相互に実質的に平行である。ある実施形態では、個々のフィラメントの一部は、高次の繊維形態において相互に実質的に平行であり、個々のフィラメントの一部は、相互に実質的に垂直である。すなわち、個々のフィラメントは、このような実施形態において繊維プライを形成することができる。
【0059】
ロービングは、撚り合わせて細くした異物のない連続繊維からなる軟質ストランドを含む。
【0060】
繊維トウは、通常、連続繊維をコンパクトに結合した束であり、ある実施形態では、これが撚り合わされてヤーンとなる。ヤーンには、撚り合わされた繊維を密に結合した束が含まれるが、この場合、ヤーンにおける各繊維の直径は、比較的均一である。ヤーンには、「テックス(tex)」(1000リニアメーター当たりのグラム重量として示される)又は「デニール(denier)」(10,000ヤード当たりのポンド重量として示される)で表される様々な重量がある。ヤーンに関して、標準的なテックス範囲は、通常、約200テックスから約2000テックスの範囲である。
【0061】
繊維組物(fiber braids)は、連続繊維が高密度に詰め込まれたロープ状構造体である。このようなロープ状構造体は、例えば、ヤーンから組まれる。組上げ構造体は中空部分を含んでもよく、或いは、別のコア材料の周囲に組まれてもよい。
【0062】
繊維トウは、撚り合わされていない連続繊維を結合した束も含むことができる。したがって、繊維トウは、1回の作業で大量の実質的に平行な繊維を操作するために都合のよい形態である。ヤーンと同様に、繊維トウにおける個々の繊維の直径は、概して均一である。また、繊維トウも様々な重量を有し、テックス範囲は、通常、約200テックスから約2000テックスの間である。加えて、繊維トウは、例えば、12Kトウ、24Kトウ、48Kトウなどの繊維トウ内にある数千の繊維の数により、しばしば特徴付けられる。
【0063】
テープ及びリボンは、例えば、織物又は不織の扁平繊維トウとして組まれる連続繊維を含む。テープは、様々な幅を持ち、通常、リボン同様の両面構造体である。前述した同時係属特許出願で説明されているように、カーボン・ナノチューブは、テープの片側又は両側でテープに浸出することができる。さらに、種類、直径又は長さの異なるカーボン・ナノチューブを、テープの各側に成長させることができる。
【0064】
ある実施形態では、連続繊維は、織物又はシート状構造に組織化することができる。それには、上述したテープ以外に、例えば織布、不織布、不織繊維マット及び繊維プライが挙げられる。このような高規則構造は、元となる連続繊維、繊維トウ、ヤーンなどから組み立てることができる。
【0065】
本発明の実施形態に使用される絶縁体材料は、一般的に、制限なく変更することができる。電気機器の螺旋形態の内部の中で電極材料を電気的に隔離するのに使用される絶縁体材料は、一般的に、螺旋形態に巻き付けられほど十分に可撓性である柔軟な材料である。そのための例示的絶縁体材料は、例えば薄いプラスチックシート(例えば熱可塑性又は弾性重合体材料)が挙げられる。螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料は、同様に、例えばプラスチックの収縮包装などの薄いプラスチックシートから形成することができる。しかし、螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料は、螺旋構造の形成が完了した後に塗布することができる。したがって、本発明の電気機器内で螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料は、必ずしも可撓性である必要はなく、プラスチックに加えて例えば熱硬化性ポリマー(例えばエポキシ)、蝋、ガラス及びセラミックなどの材料を挙げることができる。電気機器の螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料が存在する場合、これは例えば収縮包装、浸漬被覆、及びゾル・ゲルプロセスどの様々な技術によって塗布することができる。
【0066】
本発明の実施形態のセパレータ材料は、帯電状態が得られる場合、電解質イオンの電荷分離を維持することが可能である十分に厚い任意の材料から形成することができる。一般的に、セパレータ材料は、多孔質で、電気機器の充電又は放電時に電極材料間の高いイオン移動度を可能にするが、電気機器が帯電状態に到達すると、電荷分離を維持することができる薄膜誘電材料である。したがって、セパレータ材料は、電解質の電荷キャリアに対して選択的に透過性である。ある実施形態では、セパレータ材料は、例えばポリエチレン不織布、ポロプロピレン不織布、ポリエステル不織布、及びポリアクリロニトリル不織布などのポリマー不織布とすることができる。他の実施形態では、セパレータ材料は、例えば多孔質ポリ(フッ化ビニリデン)‐ヘキサフルオロプロパン・コポリマーフィルム、多孔質セルロースフィルム、クラフト紙、レーヨン織布などの多孔質物質とすることができる。一般的に、バッテリに使用することができるセパレータ材料は、いずれも同様の目的で本発明の実施形態にも使用することができる。
【0067】
セパレータ材料の気孔率の程度は、スーパーキャパシタを充電又は放電している時には電解質イオンがセパレータ材料を横切って移動するためには十分であるが、スーパーキャパシタが帯電状態に到達した場合には、電荷分離を維持するために十分に不動である程度である。ある実施形態では、セパレータ材料の気孔率は、約90%より高い。ある実施形態では、セパレータ材料の気孔率は、約90%から約95%の範囲である。他の実施形態では、セパレータ材料の気孔率は、約90%から約40%の間、又は約87%から約50%の間、又は約85%から約65%の間の範囲である。
【0068】
気孔率に加えて、セパレータ材料の厚さが、セパレータ材料を横切るイオン移動性の程度を調整することができる。所与の気孔率に対して、セパレータ材料が厚い方が、薄い方のセパレータ材料より、電荷分離の程度は高くなり、イオン移動度は低くなる。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約100μm未満である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約100μmから約50μmの間の範囲である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約50μmから約25μmの間、又は約25μmから約10μmの間の範囲である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約10μm未満である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約10μmから約1μmの間の範囲である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約1μm未満である。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、約100nmから約1μmの間の範囲である。本発明の実施形態において第1のセパレータ材料と第2のセパレータ材料との両方が存在する場合、第2のセパレータ材料の厚さは、第1のセパレータ材料と同じ、又は異なるようにすることができる。ある実施形態では、セパレータ材料の厚さは、電解質の体積と電圧スタンドオフ性能とのバランスを達成するように最適化することができる。
【0069】
一実施形態では、適切なセパレータ材料は、高い気孔率(例えば>90%)のポリプロピレン及び/又はポリエチレン電解質膜である。このような電解質膜は、ノースカロライナ州シャーロットのCelgard LLCから入手可能である。これらの電解質膜は、高い電圧スタンドオフ性能を示し、それにより、電極材料を隔離するためのフィルムをさらに薄く、軽量にすることができる。ある実施形態では、紙のセパレータ材料(例えばクラフト紙)も使用することができる。
【0070】
本発明の実施形態の電解質は、特に制限はない。ある実施形態では、電解質は、無機電解質である。他の実施形態では、電解質は、有機電解質である。当業者に認識されるように、水性電解質は、内部抵抗値が低いが、使用電圧範囲が約1Vに制限される。対照的に、有機電解質は、最大約2.5Vの使用電圧範囲を有するが、内部抵抗が高くなる。本発明の実施形態の他の構成要素と同様に、異なる最終用途及び電気特性(例えばキャパシタンス)を考慮するために、電解質のアイデンティティ(identity)及び濃度を変更することができる。
【0071】
例示的な水性電解質は、酸性水溶液(例えば硫酸、燐酸、塩酸など)、塩基性水溶液(例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)、及び中性溶液が挙げられる。中性電解質溶液は、一般的に、水性媒体中に塩を溶解させて形成する。中性電解質として使用するのに適切な例示的塩には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。当業者には追加の水性電解質が想像可能である。一般的に、水性電解質の濃度は、約0.1Mから約20Mの間、又は約1wt%から100wt%の間の範囲である。
【0072】
有機電解質は、有機溶媒に溶解した電解質種を含む。例示的な電解質種は、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(例えばハロゲン化テトラエチルアンモニウム又はテトラメチルアンモニウム及び水酸化物)と、第四ホスホニウム塩と、リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム又はカリウム、過塩素酸塩、ヘキサフルオロ燐酸、ビス(トリフルオロメタン)スルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド、又はトリス(トリフルオロメタン)スルホニルメチドとが挙げられる。一般的に、有機溶媒中の電解質種の濃度は、幾つかの実施形態では約0.1Mから約5Mの間、又は他の実施形態では約0.5Mから約3Mの間の範囲である。
【0073】
有機電解質に使用される有機溶媒は、一般的に、高い誘電率を有する非プロトン有機溶媒である。有機電解質に使用することができる例示的有機溶媒としては、炭酸アルキル(例えば炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルエチル、炭酸メチルブチル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチルプロピル、1,2−炭酸ブチレン、2,3−炭酸ブチレン、1,2−炭酸ペンテン、及び2,3−炭酸ペンテン)、ニトリル(例えばアセトニトリル、アクリロニトリル、プロピオンニトリル、ブチロニトリル及びベンゾニトリル)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、エチルメチルスルホキシド、及びベンジルメチルスルホキシド)、アミド(例えばホルムアミド、メチルホルムアミド、及びジメチルホルムアミド)、ピロリドン(例えばN−メチルピロリドン)、ラクトン(例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン、及びアセチル−γ−ブチロラクトン)、燐酸トリエステル、ニトロメタン、エーテル(例えば1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−メトキシエトキシエタン、1,2−又は1,3−ジメトキシプロパン、1,2−又は1,3−ジエトキシプロパン、1,2−又は1,3−エトキシメトキシプロパン、1,2−ジブトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及び他のアルキル、ジアルキル、アルコキシ又はジアルコキシテトラヒドロフラン、1,4−ジオクサン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、スルホラン、3−メチルスルホラン、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、及びテトラエチレングリコールジアルキルエーテル)、エステル(例えばプロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチルなどのプロピオン酸アルキル、マロン酸ジエチルなどのマロン酸ジアルキル、酢酸メチル及び酢酸エチルなどの酢酸アルキル、及び蟻酸メチル及び蟻酸エチルなどの蟻酸アルキル)、及び無水マレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。また、所望に応じて有機ゲルなどを使用することができる。
【0074】
ある実施形態では、電解質は、例えばベンジルジメチルプロピルアンモニウム四塩化アルミニウム、ベンジルジメチルアンモニウムイミド、重硫酸エチルメチルアンモニウム、1−ブチル−3−テトラフルオロホウ酸メチルイミダゾリウム、又はテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムなどのイオン液とすることができる。上述の有機溶媒のいずれも、任意選択でこのようなイオン液と組み合わせて使用することができる。
【0075】
本発明のスーパーキャパシタの実施形態のキャパシタンス値は、広範囲にわたって変えることができる。様々な実施形態では、キャパシタンスは、基材1グラム当たり約0.1ファラドから約50ファラドの間の範囲とすることができる。他の実施形態では、キャパシタンスは、基材1グラム当たり約1ファラドから約25ファラドの間の範囲とすることができる。スーパーキャパシタのサイズ及びロール状構造の層数に応じて、合計キャパシタンスは、数千から数万ファラドとすることができる。また、本発明のスーパーキャパシタは、単独で使用するか、直列に積層することができる。直列で使用する場合、合計キャパシタンスを、さらに増加させることができる。
【0076】
図5は、コインプレス(coin press)のサンプルスーパーキャパシタ構造の概略図を示す。このようなスーパーキャパシタ構造は、外部分700と内部分701を接続してスーパーキャパシタ702を形成することにより、本明細書で説明したスーパーキャパシタの試験用に容易に準備することができる。図6は、本開示のスーパーキャパシタの例示的なサイクリックボルタモグラムを示す。
【0077】
ある実施形態では、本明細書で説明する電気機器を準備するための装置を開示する。ある実施形態では、本明細書で説明する装置は、カーボン・ナノチューブ成長反応器、カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流にある第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリール、カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流にある第3の繰り出しリール、及び巻き取りリールを含む。第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリールは、カーボン・ナノチューブ成長反応器を通して第1の基材及び第2の基材を連続的に搬送して、カーボン・ナノチューブを浸出するように、動作状態でカーボン・ナノチューブ成長反応器に結合する。第3の繰り出しリールは、第1の基材、第2の基材、及び第1の基材と第2の基材の間に配置された第3の繰り出しリールの出力を含む層状構造を形成するように、動作状態でカーボン・ナノチューブ成長反応器の出力に結合する。巻き取りリールは、層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるように動作可能である。
【0078】
ある実施形態では、前記装置は、カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流にあって、動作状態でカーボン・ナノチューブ成長反応器の出力及び第3の繰り出しリールの出力に結合する第4の繰り出しリールをさらに含み、したがって、第1の基材、第2の基材、第3の繰り出しリールの出力、及び第4の繰り出しリールの出力を含む層状構造を形成する。このような実施形態では、第3の繰り出しリールの出力は、第1の基材と第2の基材の間に配置され、第2の基材は、層状構造の第3の繰り出しリールの出力と第4の繰り出しリールの出力との間に配置される。層状構造の場合、第1の基材及び第2の基材は、既にカーボン・ナノチューブ成長反応器を通って搬送され、カーボン・ナノチューブ成長状態に晒されているので、浸出されたカーボン・ナノチューブを有する。
【0079】
本発明の装置の実施形態には、様々な他の任意選択の要素も含めることができる。ある実施形態では、前記装置は、第3の繰り出しリールの下流に電解質塗布ステーションをさらに含む。ある実施形態では、前記装置は、カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流に触媒塗布ステーションをさらに含む。ある実施形態では、前記装置は、巻き取りリールの上流に密封ステーションをさらに含む。ある実施形態では、これらの任意選択の要素がすべて、本発明の装置内に存在する。他の実施形態では、任意選択の要素のうち1つ又は複数のみが存在する。さらに、様々な任意選択の要素を、第4の繰り出しリールが存在する様々な実施形態と組み合わせて含めることができる。上記及び他の要素に関するさらなる検討について、以下で説明する。
【0080】
図7は、本明細書で説明する電気機器の特定の実施形態を準備するのに使用される例示的装置500の概略図を示す。装置500は、自身上に巻き付けられた第1の連続基材503を含む第1の繰り出しリール501と、自身上に巻き付けられた第2の連続基材504を含む第2の繰り出しリール502と、を含む。図7に示す実施形態では、第1の連続基材503及び第2の連続基材504は、カーボン・ナノチューブを形成するように作用可能な触媒(例えば触媒ナノ粒子)を連続基材503及び504上に付着する触媒塗布ステーション510を通過する。任意選択で、触媒塗布ステーション510を省略することができ、連続基材503及び504は、第1の繰り出しリール501及び第2の繰り出しリール502に巻き付けられる場合、既に触媒ナノ粒子を付着させておくことができる。触媒塗布ステーション510を出た後、第1の連続基材503及び第2の連続基材504は、カーボン・ナノチューブを浸出するためにカーボン・ナノチューブ成長反応器520を通って搬送される。カーボン・ナノチューブ成長反応器のさらなる詳細について、以下でさらに説明する。
【0081】
前記装置500は、カーボン・ナノチューブ成長反応器520の下流に第3の繰り出しリール530をさらに含む。図7に示す実施形態では、第3の繰り出しリール530は、カーボン・ナノチューブ成長反応器の出力(例えば第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材521及び第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材522)と組み合わされて自身上に巻き付けられたセパレータ材料531を含む。第3の繰り出しリール530は、第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材521及び第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材522が、その間に配置されたセパレータ材料531とともに層状構造535を形成するように構成される。ある実施形態では、層状構造535は、任意選択の電解質塗布ステーション540内にある電解質容器内で形成することができる。別の実施形態では、電解質は、後のステージで層状構造535が形成された後に、螺旋形態に巻き付ける前、又は巻き付けた後に塗布することができる。
【0082】
層状構造535の形成後、これはその後、巻き取りリール550に巻き付けられて、前に述べた実施形態による電極材料の螺旋形態を有する電気機器を生成する。巻き取りリール550は、時計回り又は反時計回りに回転して、いずれかの方向に巻き付けられた螺旋形態を生成することができる。
【0083】
巻き取りリール550に到着する前に、層状構造535は、任意選択の密封ステーション545を通過することができる。密封ステーション545は、層状構造535を一緒にさらに圧縮するために、及び/又は、螺旋形態に巻き付けた場合に電極材料を電気的に隔離するように層状構造535上に絶縁体材料を塗布するために、使用される。例えば、密封ステーション545は、巻き取りリール550に到達する前に、層状構造535の第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材522上に絶縁体材料を塗布することができる。密封ステーション545内で、任意選択の圧着動作も実行することができる。
【0084】
上述したように、電気的絶縁は、絶縁体材料を伴わない他の手段によって維持することもできる、又は絶縁体材料と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の装置は、第1の電極材料の縁部と第2の電極材料の縁部とが電気機器内で相互にずれるように構成することができる。さらに、装置は、図8に示し以下で説明するように、別のセパレータ材料を電気機器に組み込む追加の繰り出しリールも含むことができる。
【0085】
図8は、絶縁体材料で螺旋形態を密封することなく電気的隔離を達成する本発明の電気機器の別の実施形態を準備する例示的装置600の概略図を示す。装置600は、自身上に巻き付けられた第1の連続基材603を含む第1の繰り出しリール601と、自身上に巻き付けられた第2の連続基材604を含む第2の繰り出しリール602と、任意選択の触媒塗布ステーション610と、カーボン・ナノチューブ成長反応器620と、自身上に巻き付けられた第1のセパレータ材料631を含む第3の繰り出しリール630と、任意選択の電解質塗布ステーション640と、巻き取りリール650とを含み、これらの要素は、図7に関して上述したものと同様である。これも図7と同様に、装置600は、カーボン・ナノチューブ成長反応器620から出力(例えば第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材621及び第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材622)を生成する。
【0086】
装置600は、自身上に巻き付けられた第2のセパレータ材料661を含む第4の繰り出しリール660をさらに含む。図8に示すように、第4の繰り出しリール660の第2のセパレータ材料661は、カーボン・ナノチューブ成長反応器620の出力(例えば第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材621及び第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材622)及び第3の繰り出しリール630の出力(例えば第1のセパレータ材料631)と組み合わされて、層状構造635を形成する。層状構造635では、第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材622が第1のセパレータ材料631と第2のセパレータ材料661との間に配置され、第1のセパレータ材料631が第1のカーボン・ナノチューブ浸出基材621と第2のカーボン・ナノチューブ浸出基材622との間に配置される。すなわち、装置600は、電極材料とセパレータ材料との交互の層を含む層状構造を生成するように構成される。
【0087】
図7に関して説明したように、層状構造635は、任意選択の電解質塗布ステーション640内の電解質容器内で形成することができる。別の実施形態では、電解質は、後のステージで層状構造635が形成された後に、巻き取りリール650上で螺旋形態に巻き付ける前、又は巻き付けた後に塗布することができる。
【0088】
装置600は、任意選択の圧着ステーション640も含むことができる。装置500の密封ステーション540とは異なり、圧着ステーション600内では層状構造635に絶縁体材料を付与する必要がない。何故なら、電解質材料が既に、相互に電気的に隔離されるように構成されているからである。ある実施形態では、圧着ステーション640を使用して、電極材料をセパレータ材料と一緒に圧着し、電気機器を螺旋形態に巻き付ける前にさらにコンパクトな層状構造の形態を生成することができる。
【0089】
ある実施形態では、現在、説明している電気機器を作成する方法を、本明細書で説明する。ある実施形態では、前記電気機器を作成する方法は、上述した装置又はその様々な変更を利用することができる。
【0090】
ある実施形態では、本明細書で説明する方法は、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料を提供するステップと、第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を提供するステップと、第1の電極材料及び第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、中心軸の周囲に螺旋形態に層状構造を巻き付けるステップと、を含む。
【0091】
ある実施形態では、第1の電極材料及び第2の電極材料は、層状構造を形成プロセス及び層状構造を巻き付けるプロセスと動作状態で結合される連続カーボン・ナノチューブ浸出プロセスにより提供される。
【0092】
ある実施形態又は他の実施形態では、本明細書で説明する方法は、巻き取り可能な寸法の第1の基材を第1の繰り出しリール上に、及び巻き取り可能な寸法の第2の基材を第2の繰り出しリール上に提供するステップと、カーボン・ナノチューブを浸出するように、カーボン・ナノチューブ成長反応器に通して第1の基材及び第2の基材を搬送するステップと、を含み、それにより、第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料、及び第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を形成し、さらに、第1の電極材料及び第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、層状構造を中心軸の周囲で螺旋形態に巻き付けるステップと、を含む。ある実施形態では、これらの作業は、連続プロセスにて相互に動作状態に結合される。
【0093】
ある実施形態又は他の実施形態では、本発明方法は、触媒ナノ粒子を第1の基材及び第2の基材に塗布することをさらに含む。ある実施形態では、触媒ナノ粒子は、第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリール上に配置する前に、第1の基材及び第2の基材に塗布することができる。他の実施形態では、触媒ナノ粒子は、カーボン・ナノチューブ成長反応器に入る前に、連続プロセスで第1の基材及び第2の基材に塗布することができる。例えば、ある実施形態では、触媒ナノ粒子は、触媒ナノ粒子又はその前駆体の溶液又は懸濁液を含む触媒塗布ステーション内で第1の基材及び第2の基材に塗布することができる。
【0094】
本発明の方法のある実施形態では、層状構造は、第1の電極材料と第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料をさらに含み、前記セパレータ材料は、電解質のイオンに対して透過性である。前記セパレータ材料は、電気機器が帯電状態にある場合は電荷分離を維持することができ、電気機器が充電又は放電している場合は、電流の流れを可能にする。
【0095】
ある実施形態では、本発明の方法は、層状構造を電解質に晒すことをさらに含む。ある実施形態では、層状構造を電解質に曝露することは、層状構造を巻き付けて電気機器の螺旋形態を形成する前に実行される。例えば、ある実施形態では、層状構造を形成することは、電解質容器内で実行することができる。巻き付ける前に層状構造を電解質に晒す場合、本発明の方法は、巻き付ける前に層状構造を絶縁体材料で密封することをさらに含むことができる。層状構造を絶縁体材料で密封することにより、その中に保持された電解質をさらに効果的に閉じ込めることができる。別の実施形態では、層状構造を電解質に晒すことは、巻き付けた後に実行することができる。ある実施形態では、巻き付けによって得られた螺旋形態を電解質容器に浸漬することができる。他の実施形態では、螺旋形態は電解質容器に部分的に浸漬することができる。いずれの場合も、毛管作用が、適正な導電性が生じるための電極材料の十分な飽和を確実に行うために、螺旋形態の内部に確実に電解質を浸透するようにすることができる。
【0096】
ある実施形態では、層状構造は、絶縁体材料をさらに含むことができ、絶縁体材料は、第1のセパレータ材料と隣接していない。このような実施形態では、絶縁体材料は、電気機器の螺旋形態において隣接する電極層を電気的に隔離する。ある実施形態では、絶縁体材料は、層状構造の形成と同時に付与することができる。例えば、層状構造を形成するにつれ、又は層状構造が形成された直後に、絶縁体材料を層状構造の第2の電極材料上に配置することができる。非限定的実施形態では、絶縁体材料は、絶縁体材料を含む繰り出しリールから層状構造に付与することができる。他の実施形態では、層状構造の形成後に、別個の動作として絶縁体材料を層状構造に付与することができる。例えば、絶縁体材料の付与は、密封ステーションの中で実行することができ、任意選択で圧着動作と組み合わせることができる(図7参照)。ある実施形態では、本発明の方法は、図3Hに示すように、電気機器の螺旋形態の最外面上に絶縁体材料を付与することをさらに含む。
【0097】
別の実施形態では、電気的分離は、層状構造に絶縁体材料を付与せずに維持することができる。上述したように、第2のセパレータ材料を層状構造に付与することにより、電気的分離を達成することもできる。ある実施形態では、層状構造は、第1のセパレータ材料に隣接していない第2のセパレータ材料をさらに含む。すなわち、本発明の方法は、層状構造の第2の電極材料上に第2のセパレータ材料を配置することをさらに含む。このような実施形態では、螺旋形態の各電極材料は、第1又は第2のセパレータ材料のいずれかと隣接し、それにより、その間に電気的隔離を提供する。
【0098】
本発明の方法のある実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、巻き取り可能な寸法である。すなわち、第1の基材及び第2の基材は、本発明の実施形態により連続プロセスで電気機器に変換されるように操作可能である。ある実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、複数の連続繊維とすることができる。ある実施形態では、連続繊維は、導電性とすることができる。例えば、ある実施形態では、連続繊維は、炭素繊維及び/又は金属繊維とすることができる。本発明の方法のある実施形態では、第1の基材及び第2の基材の形態には、例えば金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維の織布シート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、及び/又は連続繊維のテープを含めることができる。
【0099】
本明細書で開示する実施形態は、同一出願人による同時係属の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号、第12/611,103号及び第12/938,328号に記載された方法、又はその簡単な変更によって、容易に準備することができるカーボン・ナノチューブ浸出基材を利用でき、それぞれは、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。これらの同時係属特許出願で説明されたプロセスについて、以下で簡単に説明する。これら同時係属特許出願は、連続繊維材料へのカーボン・ナノチューブの浸出について説明しているが、そこで説明された方法は、任意のタイプのカーボン・ナノチューブ浸出基材を提供するように容易に適応させることができる。以下の簡単な説明は、連続繊維材料を対象としているが、説明される方法を型通りに変更する事によって、任意のタイプの連続基材を同様に準備できることを認識されたい。
【0100】
カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するために、カーボン・ナノチューブを繊維材料上で直接合成する。ある実施形態では、これは、最初にカーボン・ナノチューブ形成触媒(例えば触媒ナノ粒子)を繊維材料上に付着させることによって遂行される。この触媒付着の前に、幾つかの準備プロセスを実行することができる。
【0101】
ある実施形態では、繊維材料を必要に応じてプラズマで処理して、触媒を受け入れるための表面を作ることができる。例えば、プラズマ処理されたガラス繊維により、カーボン・ナノチューブ形成触媒が付着する粗面化されたガラス繊維表面がもたらされる。また、ある実施形態では、プラズマは、繊維表面を「浄化(clean)」する機能をも果たす。このように繊維表面を「粗面化(roughing)」するためのプラズマプロセスにより、触媒の付着は促進される。粗さ(roughness)は、通常、ナノメートルのスケールである。プラズマ処理プロセスにおいて、深さ及び直径がナノメートル単位のクレーター又は窪みが形成される。このような表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、窒素及び水素など、種々の異なる1以上のあらゆるガスのプラズマを用いても達成される。
【0102】
ある実施形態では、使用される繊維材料が、これに付随するサイジング剤を有する場合、そのようなサイジング剤を触媒の付着前に必要に応じて除去してもよい。必要に応じて、前記サイジング剤は触媒付着後に除去してもよい。ある実施形態では、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブの合成中又は予熱工程におけるカーボン・ナノチューブの合成直前に行われる。他の実施形態では、サイジング剤の中には、カーボン・ナノチューブ合成プロセスの全体にわたって残存できるものもある。
【0103】
カーボン・ナノチューブ形成触媒(すなわち、触媒ナノ粒子)の付着前、又はこれと同時に行われる更にもう1つの工程として、繊維材料上へのバリア・コーティングの塗布がある。バリア・コーティングは、例えば、炭素繊維、有機繊維、金属繊維など(例えば非繊維質基材)のような繊細な繊維材料健全性を保護するために考えられた材料である。このようなバリア・コーティングは、例えば、アルコキシシラン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子を挙げることができる。例えば、ある実施形態では、バリア・コーティングは、Accuglass(登録商標)T−11スピンオンガラス(Honeywell International Inc.、ニュージャージー州モリスタウン)である。1つの実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、未硬化のバリア・コーティング材に加えられて、その後、共に繊維材料に塗布されてもよい。他の実施形態では、バリア・コーティング材は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の付着前に繊維材料に加えられる。このような実施形態の場合、バリア・コーティングは、触媒の付着前に部分的に硬化してよい。バリア・コーティング材は、後続のCVDなどのカーボン・ナノチューブ成長プロセスのための炭素原料ガスにカーボン・ナノチューブ形成触媒を晒すことが十分に可能な薄さである。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効径未満か、それに実質的に等しい。カーボン・ナノチューブ形成触媒及びバリア・コーティングが適切に配置されたなら、バリア・コーティングを十分に硬化させることができる。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、触媒へのカーボン・ナノチューブ原料ガスのアクセスがまだ可能な限りは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効径よりも大きくてよい。このようなバリア・コーティングは、カーボン・ナノチューブ形成触媒に対する炭素原料ガスのアクセスが可能となる程度に十分多孔質であってよい。
【0104】
ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nmから約100nmの間の範囲である。他の実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、40nmなど、約10nmから約50nmの間の範囲である。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nm未満であり、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、及び約10nmを含み、その間のすべての範囲及び部分的な範囲を含む。
【0105】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、繊維材料とカーボン・ナノチューブの中間層として機能し、機械的に繊維材料へカーボン・ナノチューブを浸出する。バリア・コーティングを介したこのような機械的浸出は、カーボン・ナノチューブが成長するための頑強なシステムを提供し、ここでは繊維材料がカーボン・ナノチューブを組織化するための基盤として機能しながら、有益なカーボン・ナノチューブ特性を繊維材料に与えられるようにする。さらに、バリア・コーティングを含むことの利点は、水分に晒されることに起因した化学的損傷及び/又はカーボン・ナノチューブの成長を促進するために用いられる高温度での熱的損傷から、繊維材料を保護するという点にある。
【0106】
以下でさらに説明するように、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、遷移金属触媒ナノ粒子の形でカーボン・ナノチューブ形成触媒を含む液体溶液として準備することができる。合成されたカーボン・ナノチューブの直径は、上述したような遷移金属触媒ナノ粒子の大きさに関連する。
【0107】
カーボン・ナノチューブの合成は、高温で実行される化学蒸着(CVD)プロセス又は関連のカーボン・ナノチューブ成長プロセスに基づくものである。ある実施形態では、CVDをベースとした成長プロセスは、カーボン・ナノチューブ成長が、電界の方向に従うように、成長プロセス中に電界を提供することによってプラズマ助長することができる。他の例示的なカーボン・ナノチューブ成長プロセスは、例えば、マイクロキャビティ、レーザ・アブレーション、火炎合成、アーク放電、及び高圧一酸化炭素(HiPCO)合成が挙げられる。具体的な温度は触媒の選択によるが、通常は約500℃から約1000℃の範囲である。したがって、カーボン・ナノチューブの合成は、カーボン・ナノチューブの成長を支援するために、繊維材料を上述の範囲の温度に加熱することを含む。
【0108】
ある実施形態では、触媒を含む繊維材料上でCVDにより促進されるカーボン・ナノチューブ成長が実行される。CVDプロセスは、例えばアセチレン、エチレン及び/又はエタノールなどのカーボン含有原料ガスによって促進することができる。カーボン・ナノチューブ成長プロセスは、一般的に、1次キャリアガスとして不活性ガス(例えば窒素、アルゴン及び/又はヘリウム)を使用する。カーボン含有原料ガスは、通常、混合物全体の約0.1%から約15%の間の範囲で供給される。CVD成長のための実質的に不活性な環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去することによって準備することができる。
【0109】
カーボン・ナノチューブ成長プロセスにおいて、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの成長に作用する遷移金属触媒ナノ粒子のある場所で成長する。強プラズマ励起電界の存在を任意に用いて、カーボン・ナノチューブの成長に影響を与えることができる。すなわち、成長は、電界方向に従う傾向がある。プラズマ溶射及び電界の配置(geometry)を適切に調節することにより、垂直配列の(すなわち、繊維材料の表面に対して垂直な)カーボン・ナノチューブを合成できる。特定の条件下では、プラズマがない場合であっても、密集したカーボン・ナノチューブは成長方向を実質的に垂直に維持して、結果として、カーペット(carpet)又はフォレスト(forest)に似た高密度配列のカーボン・ナノチューブが生じる。
【0110】
触媒付着プロセスに戻って、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを成長させることを目的として、その上に触媒ナノ粒子の層(通常は単分子層以内)を設けるために付着される。繊維材料上に触媒ナノ粒子を付着させる操作は、例えば触媒ナノ粒子の溶液の溶射又はディップコーティングなどを含む幾つかの技術によって、又はプラズマプロセスによって起こる気相蒸着によって遂行することができる。したがって、ある実施形態では、溶媒に触媒を含んだ溶液を形成した後、その溶液で繊維材料をスプレー若しくは浸漬コーティングすることにより、又はスプレー及び浸漬コーティングを組み合わせることにより、触媒が塗布される。単独で或いは組み合わせて用いられるいずれかの手法は、1回、2回、3回、4回、或いは何回でも使用され、これにより、カーボン・ナノチューブの形成に作用する触媒ナノ粒子が十分均一にコーティングされた繊維材料を提供することができる。例えば、浸漬コーティングが使用される場合、繊維材料は、第1の浸漬槽において、第1の滞留時間、第1の浸漬槽内に置かれる。第2の浸漬槽を使用する場合、繊維材料は、第2の滞留時間、第2の浸漬槽内に置かれる。例えば、繊維材料は、浸漬の形態及びラインスピードに応じて約3秒〜約90秒の間、カーボン・ナノチューブ形成触媒の溶液に晒される。スプレー又は浸漬コーティングを用いることにより、約5%未満から約80%もの表面被覆率の触媒表面密度を有する繊維材料が得られる。より高い表面密度(例えば、約80%)の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子は実質的に単分子層である。ある実施形態において、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒をコーティングするプロセスにより単分子層だけが生成される。例えば、積み重ねたカーボン・ナノチューブ形成触媒上におけるカーボン・ナノチューブ成長は、カーボン・ナノチューブが繊維材料へ浸出する程度を低下させることがある。他の実施形態において、遷移金属触媒ナノ粒子は、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に既知の他のプロセス(例えば、遷移金属触媒を、有機金属、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成物として、プラズマ原料ガスへ添加することなど)を用いて繊維材料上に付着する。
【0111】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維を製造するプロセスは、連続的になるよう設計されているので、巻き取り可能な繊維材料は、一連の槽で浸漬コーティングを施すことが可能であり、この場合、浸漬コーティング槽は空間的に分離されている。例えば、炉から新たに形成されたガラス繊維など、新生繊維が新たに生成される連続プロセスにおいて、カーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬又は溶射は、新たに形成された繊維材料を十分に冷却した後の第1ステップとすることができる。ある実施形態において、新たに形成されたガラス繊維の冷却は、カーボン・ナノチューブ形成触媒粒子を分散させた冷却水の噴流で実施される。
【0112】
ある実施形態では、連続プロセスにおいて、繊維を生成してこれにカーボン・ナノチューブを浸出させる場合、サイジング剤を塗布する代わりに、カーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布することができる。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、他のサイジング剤の存在下で新たに形成された繊維材料に塗布される。このようなカーボン・ナノチューブ形成触媒及び他のサイジング剤の同時塗布により、繊維材料と表面接触したカーボン・ナノチューブ形成触媒を供給してカーボン・ナノチューブの浸出を確実にすることができる。また、別の実施形態では、繊維材料が十分に軟化した状態にある間、例えば、焼きなまし温度近傍又はそれ未満の状態にある間に、カーボン・ナノチューブ形成触媒を溶射又は浸漬コーティングにより新生繊維に塗布し、これにより、カーボン・ナノチューブ形成触媒が繊維材料の表面に僅かに埋め込まれる。例えば、高温のガラス繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着させる場合、ナノ粒子が溶融して結果的にカーボン・ナノチューブの特性(例えば、直径)が制御不能とならないように、カーボン・ナノチューブ形成触媒の融点を超えないように配慮する必要がある。
【0113】
繊維材料に浸出されたカーボン・ナノチューブは、例えば、水分、酸化、摩耗、圧縮及び/又は他の環境状態などを含む状態から繊維材料を保護する働きをすることができる。この場合は、カーボン・ナノチューブ自体が、サイジング剤として作用することができる。このようなカーボン・ナノチューブベースのサイジング剤は、従来のサイジング剤の代わりに、又はそれに加えて繊維材料に塗布することができる。従来のサイジング剤が存在する場合、それは、繊維材料上のカーボン・ナノチューブの浸出及び成長前に、又はその後に塗布することができる。従来のサイジング剤は、タイプ及び機能が多種多様であり、例えば、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、シロキサン、アルコキシシラン、アミノシラン、シラン、シラノール、ポリビニルアルコール、デンプン、及びその混合物などが挙げられる。このような従来のサイジング剤は、カーボン・ナノチューブ自体を様々な状態から保護するために、又はカーボン・ナノチューブが与えられていない繊維材料にさらなる特性を伝えるために用いられる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブが成長する前に、従来のサイジング剤を繊維材料から除去することができる。選択的に、従来のサイジング剤を、カーボン・ナノチューブ又はカーボン・ナノチューブ成長状態との適合性がさらに高い別の従来のサイジング剤と交換することができる。
【0114】
カーボン・ナノチューブ形成触媒溶液は、任意のd‐ブロック遷移金属の遷移金属ナノ粒子溶液であってよい。さらに、ナノ粒子は、元素形態及び塩形態のd‐ブロック金属からなる合金と非合金の混合物、並びにこれらの混合物を含むことができる。このような塩形態としては、酸化物、炭化物、窒化物、酢酸塩、硝酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例示的遷移金属ナノ粒子としては、例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au及びAg、これらの塩及びこれらの混合物が挙げられる。多くのナノ粒子遷移金属触媒が、例えば、Ferrotec Corporation(ニューハンプシャー州ベッドフォード)などの様々な供給業者から市販されており容易に入手可能である。
【0115】
繊維材料にカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布するために使用される触媒溶液は、カーボン・ナノチューブ形成触媒が全域にわたって均一に分散可能な任意の一般的な溶媒でもよい。このような溶媒としては、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又は自身内にカーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子の適切な分散を生成するために極性が制御された任意の他の溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。触媒溶液中におけるカーボン・ナノチューブ形成触媒の濃度は、触媒対溶媒で、約1:1から約1:10,000の範囲とすることができる。
【0116】
ある実施形態では、繊維材料にカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布した後、繊維材料は、軟化温度まで任意に加熱される。この工程は、繊維材料の表面にカーボン・ナノチューブ形成触媒を埋め込むのに役立ち、これにより、種成長(seeded growth)を促して、先端の成長を防止することができ、触媒は、成長するカーボン・ナノチューブの先端縁に浮遊(float)する。ある実施形態では、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着した後、繊維材料の加熱は、約500℃から約1000℃の間の温度とすることができる。カーボン・ナノチューブの成長のためにも用いられるこのような温度への加熱により、繊維材料上にある既存のサイジング剤の除去が促進され、これにより、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を直接付着させることが可能となる。また、ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、加熱前にサイジング剤のコーティング表面上に配置することもできる。加熱工程は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料表面上に付着させたままサイジング物質を除去するために用いられる。この温度での加熱は、カーボン・ナノチューブ成長のための炭素原料ガスの導入前に、又はこれと実質的に同時に実行することができる。
【0117】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出させるプロセスは、繊維材料からサイジング剤を除去すること、サイジング剤除去後にカーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に塗布すること、繊維材料を少なくとも約500℃まで加熱すること、及び、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成することを含む。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの工程は、繊維材料からサイジング剤を除去すること、繊維材料に対してカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布すること、カーボン・ナノチューブの合成温度まで繊維材料を加熱すること、及び、触媒を含有する繊維材料上へ炭素プラズマを溶射することを含む。このように、市販のガラス繊維材料が使用される場合、カーボン・ナノチューブ浸出繊維を構成するためのプロセスは、繊維材料上に触媒を配置する前に、繊維材料からサイジング剤を除去する個別のステップを含む。なんらかの市販のサイジング物質が存在する場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒と繊維材料との面接触を防止して、繊維材料に対するカーボン・ナノチューブの浸出を抑制することができる。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブの成長条件下でサイジング剤を確実に除去する場合には、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブ形成触媒付着後であって、炭素含有原料ガスの供給直前又は供給中に行われる。
【0118】
カーボン・ナノチューブを合成する工程には、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD法、レーザ・アブレーション、アーク放電、火炎合成、及び高圧一酸化炭素法(HiPCO)といった、カーボン・ナノチューブを形成するための多数の技術が挙げられるが、これらには限定されない。CVD中、特に、カーボン・ナノチューブ形成触媒が付着したサイジング済み繊維材料を直接使用することができる。ある実施形態では、従来のいかなるサイジング剤もカーボン・ナノチューブの合成中に除去することができる。ある実施形態では、他のサイジング剤は除去されないが、サイジング剤を介した炭素原料ガスの拡散のため、繊維材料へのカーボン・ナノチューブの合成及び浸出を妨げることはない。ある実施形態では、アセチレンガスをイオン化して、カーボン・ナノチューブ合成のための低温炭素プラズマジェットを生成することができる。プラズマは触媒を含む繊維材料に向けられる。このように、ある実施形態では、繊維材料上におけるカーボン・ナノチューブの合成には、(a)炭素プラズマを形成すること、及び(b)繊維材料上に配置された触媒に炭素プラズマを向けること、が含まれる。成長するカーボン・ナノチューブの直径は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の大きさにより決定される。ある実施形態では、サイジングされた繊維材料は約550℃〜約800℃に加熱され、カーボン・ナノチューブの成長を促進する。カーボン・ナノチューブの成長を開始させるために、反応器には2つ以上のガス、すなわち、不活性キャリアガス(例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素)及び炭素含有原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール又はメタン)が供給される。カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ形成触媒のある場所で成長する。
【0119】
ある実施形態では、CVD成長プロセスはプラズマで助長される。プラズマは、成長プロセス中に電界を与えることにより生成される。この条件下で成長するカーボン・ナノチューブは電界方向に従う。したがって、反応器の配置を調節することにより、垂直配列のカーボン・ナノチューブを、繊維材料の表面に対して実質的に垂直に成長させることができる(すなわち、放射状成長)。ある実施形態では、繊維材料の周囲に放射状に成長させるために、プラズマは必要ではない。明確な面を有する、例えば、テープ、マット、織物、パイルなどのような繊維材料の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、繊維材料の片面又は両面に付着させることができる。それに応じて、このような条件下、カーボン・ナノチューブもまた、繊維材料の片面又は両面に成長させることができる。
【0120】
上述したように、カーボン・ナノチューブ合成は、巻き取り可能な繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させる連続プロセスを提供するのに十分な速度で行われる。以下に例示されるように、このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。
【0121】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、「オール・プラズマ(all plasma)」プロセスで準備することができる。このような実施形態では、繊維材料は、多くのプラズマ介在工程を通って、最終的なカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成する。第1のプラズマプロセスには、繊維表面の改質工程が含まれる。これは、前述のように、繊維材料の表面を「粗面化(roughing)」して触媒の付着を容易にするためのプラズマプロセスである。また前述のように、表面改質は、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素及び窒素を含むが、これらに限定されない種々の異なるガスの任意の1つ又は複数のプラズマを用いて達成される。
【0122】
表面改質後、繊維材料は触媒の塗布へと進む。本発明のオール・プラズマプロセスでは、このステップは、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着するためのプラズマプロセスである。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、前述のように、通常、遷移金属である。遷移金属触媒は、例えば、磁性流体、有機金属、金属塩、これらの混合物、又は気相輸送の促進に適した他のあらゆる組成物など、限定しない形態の前駆体としてプラズマ原料ガスに添加され得る。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とはせず、周囲環境の室温で塗布可能である。ある実施形態では、繊維材料は触媒の塗布前に冷却される。
【0123】
オール・プラズマプロセスを継続して行うと、カーボン・ナノチューブの合成は、カーボン・ナノチューブ成長反応器内で起こる。カーボン・ナノチューブの成長は、プラズマ助長化学蒸着を用いて実現されるが、この場合、炭素プラズマが触媒を含む繊維に溶射される。カーボン・ナノチューブの成長は、高温(触媒にもよるが、通常は約500℃〜約1000℃の範囲)で起こるので、触媒を含む繊維は、炭素プラズマに晒される前に加熱される。カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの場合、繊維材料は、軟化が始まるまで任意に加熱することができる。加熱後、繊維材料は、炭素プラズマを受けられる状態になっている。炭素プラズマは、例えば、炭素含有原料ガス、例えば、アセチレン、エチレン、エタノールなどを、ガスのイオン化が可能な電界中に通すことにより生成される。この低温炭素プラズマは、溶射ノズルにより繊維材料に向けられる。繊維材料は、プラズマを受けるために、例えば、溶射ノズルから約1センチメートル以内など、溶射ノズルに近接していてもよい。ある実施形態では、加熱器は、繊維材料の上側のプラズマ溶射装置に配置され、これにより繊維材料を高温に維持する。
【0124】
連続的なカーボン・ナノチューブ合成の別の構成は、カーボン・ナノチューブを繊維材料上に直接合成・成長させるための専用の矩形反応器を含む。その反応器は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を生成するための連続的なインラインプロセス用に設計することができる。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは、CVDプロセスにより、大気圧、かつ、約550℃から約800℃の範囲の高温で、マルチゾーン反応器(multi-zone reactor)内で成長する。カーボン・ナノチューブの合成が大気圧で起こるということは、繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させるための連続処理ラインに反応器を組み込むことを容易にする一因である。このようなゾーン反応器を用いた連続的なインライン処理に合致する別の利点は、カーボン・ナノチューブの成長が、当該技術分野で標準的な他の手法及び装置構成における数分(又はそれ以上)ではなく、数秒で起こるということである。
【0125】
様々な実施形態によるカーボン・ナノチューブ合成反応器は、以下の特徴を含む。
【0126】
(矩形構成の合成反応器)
当該技術分野で既知の標準的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は、横断面が円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒状の反応器がよく用いられる)及び利便性(流体力学は円筒状の反応器でモデル化すると容易になり、また、加熱器システムは円管チューブ(石英など)に容易に対応する)、並びに製造の容易性などの多くの理由がある。本開示は、従来の円筒形状に代えて、矩形横断面を有するカーボン・ナノチューブ合成反応器を提供する。変更の理由は以下の通りである。
【0127】
1)反応器容積の非効率的な使用。反応器により処理される多くの繊維材料は相対的に平面(例えば、平坦なテープ、シート状形態、或いは、開繊したトウ若しくはロービング(roving)など)であるので、円形横断面では反応器の容積の使用が非効率的である。この非効率的な結果、円筒状のカーボン・ナノチューブ合成反応器にはいくつかの欠点がある。例えば、a)十分なシステムパージの維持;反応器の容積が増大すれば、同レベルのガスパージを維持するためにガス流量の増大が必要となり、この結果、開放環境におけるカーボン・ナノチューブを大量生産するには非効率的である。b)炭素含有原料ガス流量の増大;前記a)のように、システムパージのための不活性ガス流を相対的に増大させると、炭素含有原料ガス流量を増大させる必要がある。例示的な12Kのガラス繊維ロービングが、矩形横断面を有する合成反応器の全容積に対して約2000分の1の容積であるとする。同等の円筒状反応器(すなわち、矩形横断面の反応器と同じ平坦化されたガラス繊維材料を収容できるだけの幅を有する円筒状の反応器)では、ガラス繊維材料の容積は、反応器の容積の約17,500分の1である。CVDなどのガス蒸着プロセス(gas deposition processes)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、容積は蒸着の効率に顕著な影響を与え得る。矩形反応器の場合、それでもなお余分な容積が存在し、この余剰容積は無用の反応を促進する。しかしながら、円筒状反応器は、無用な反応の促進が可能なその容積が約8倍もある。このように競合する反応が発生する機会がより大きいと、所望の反応が有効に生じるには、円筒状反応器では一層遅くなってしまう。このようなカーボン・ナノチューブ成長の速度低下は、連続的な成長プロセスの進行にとって問題となる。矩形反応器構成の別の利点は、矩形チャンバーの高さを更に低くすることで反応器の容積が低減され、これにより容積比が改善され反応が更に効率的になるという点である。本明細書に開示される実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して僅か約3000倍にしか過ぎないものがある。更なる実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して僅か約4000倍にしか過ぎないものもある。さらに別の実施形態の中には、矩形合成反応器の全容積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全容積に対して約10,000倍未満のものがある。加えて、円筒状反応器を使用した場合、矩形横断面を有する反応器と比較すると、同じ流量比を提供するためには、より大量の炭素含有原料ガスが必要である点に注目されたい。当然のことながら、他の実施形態の中には、矩形ではないがこれに比較的類似しており、かつ、円形横断面を有する反応器に対して、反応器の容積を同様に低減する多角形状で表される横断面を有する合成反応器がある。c)問題のある温度分布;相対的に小径の反応器を用いた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。しかし、例えば、工業規模の生産に用いられるような場合などには、サイズの増大に伴い、このような温度勾配は増加する。温度勾配は、繊維材料の全域で製品品質がばらつく(すなわち、製品品質が半径位置の関数として変化する)原因となる。この問題は、矩形横断面を有する反応器を用いた場合に殆ど回避される。特に、平面的な基材が用いられる場合、基材のサイズが大きくなったときに、反応器の高さを一定に維持することができる。反応器の頂部と底部間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。
【0128】
2)ガス導入。当該技術分野では、通常、管状炉が使用されているので、一般的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は、ガスを一端に導入し、それを反応器に通して他端から引き出している。本明細書に開示された実施形態の中には、ガスが、反応器の両側面又は反応器の頂面及び底面のいずれかを通して対称に、反応器の中心又は目標成長ゾーン内に導入されるものがある。これにより、流入する原料ガスがシステムの最も高温の部分、すなわち、カーボン・ナノチューブの成長が最も活発な場所に、連続的に補充されるので、全体的なカーボン・ナノチューブ成長速度が向上する。
【0129】
(ゾーン分け)
比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーは、矩形合成反応器の両端から延びる。出願人は、仮に高温ガスが外部環境(すなわち、矩形反応器の外部)と接触(mix)すると、繊維材料の劣化(degradation)が増加すると結論を下した。低温パージゾーンは、内部システムと外部環境との間の緩衝部となる。当該技術分野で既知のカーボン・ナノチューブ合成反応器の構成では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが求められる。本発明の矩形カーボン・ナノチューブ成長反応器の出口における低温パージゾーンは、連続的なインライン処理に必要とされるような短時間の冷却を実現する。
【0130】
(非接触式ホットウォール型金属製反応器)
ある実施形態では、金属製ホットウォール型(hot-walled)反応器(例えば、ステンレス鋼)が用いられる。金属、特にステンレス鋼が炭素の付着(すなわち、煤及び副生成物の形成)を受けやすいために、この種類の反応器の使用は、常識に反するようにも考えられる。したがって、大部分のカーボン・ナノチューブ合成反応器は、炭素の付着が殆どないため、また、石英は洗浄し易く、また試料の観察が容易であるため、石英から作られる。しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上における煤及び炭素付着物が増加することにより、より着実で、効率的、高速、かつ、安定的なカーボン・ナノチューブ成長がもたらされるということを発見した。理論に拘束されるものではないが、大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、反応器内で起こるCVDプロセスでは拡散が制限されることが示されている。すなわち、カーボン・ナノチューブ形成触媒が「過剰供給(overfed)」、つまり、過量の炭素が、(反応器が不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧により反応器システム内で得られる。結果として、開放システム(特に清浄なシステム)では、過量の炭素がカーボン・ナノチューブ形成触媒の粒子に付着して、カーボン・ナノチューブの合成能力を低下させる。ある実施形態では、反応器に「汚れが付いて(dirty)」いる、すなわち、金属反応器壁に煤が付着している状態の場合に、矩形反応器を意図的に運転する。炭素が反応器壁上に単分子層で付着すると、炭素は容易にその上に付着する。得られる炭素の中には、このメカニズムにより「回収される(withdrawn)」ものがあるので、ラジカルの形で残っている炭素原料が、カーボン・ナノチューブ形成触媒を被毒させない速度でこの触媒と反応する。既存のシステムは「清浄に(cleanly)」運転するが、これは連続処理のために開放状態であれば、減速した成長速度で、はるかに低い収率でしかカーボン・ナノチューブを生産できないことになる。
【0131】
通常は、前述のようにカーボン・ナノチューブの合成を「汚れた」状態で実施するのは有利であるが、それでも、装置の特定の部分(例えば、ガスマニフォールド及びガス入口)は、煤が閉塞状態を引き起こした場合、カーボン・ナノチューブの成長プロセスに悪影響を与える。この問題に対処するために、カーボン・ナノチューブ成長反応チャンバーのこのような部分を、例えば、シリカ、アルミナ又はMgOなどの煤抑制コーティングで保護してもよい。実際には、装置のこれらの部分は、これら煤抑制コーティングを、浸漬コーティングすることができる。INVAR(登録商標)は、高温におけるコーティングの適切な接着性を確実にする同様のCTE(熱膨張係数)を有し、重要なゾーンにおける煤の著しい堆積を防止するので、INVAR(商標名)などの金属が、これらのコーティング用に用いられる。
【0132】
(触媒還元及びカーボン・ナノチューブ合成の組合せ)
本明細書に開示されたカーボン・ナノチューブ合成反応器において、触媒還元及びカーボン・ナノチューブ成長のいずれもが反応器内で起こる。還元工程が個別の動作として実施されると、連続プロセスに用いるには十分タイムリーに行えなくなるため、このことは重要である。当該技術分野において既知の標準的なプロセスにおいて、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。本開示によれば、両方の動作は1つの反応器内で生じるが、これは、少なくとも1つには、炭素含有原料ガスを導入するのが、円筒状反応器を用いる当該技術分野では標準的となっている反応器の端部ではなく、中心部であることに起因する。還元プロセスは、繊維材料が加熱ゾーンに入ったときに行われる。この時点に至るまでに、ガスには、(水素ラジカルの相互作用を介して)触媒を還元する前に、反応器壁と反応して冷える時間があるということである。還元が起こるのはこの遷移領域である。システム内で最も高温の等温ゾーンでカーボン・ナノチューブの成長は起こり、反応器の中心近傍におけるガス入口の近位で最大の成長速度が生じる。
【0133】
ある実施形態では、例えば、トウ又はロービングなど(例えば、ガラスロービング)、緩くまとまった(loosely affiliated)繊維材料が使用される場合、連続プロセスには、トウ又はロービングのストランド(strand)又はフィラメントを広げる工程が含まれる。このように、トウ又はロービングは、広げられるときには、例えば、真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を用いて開繊される。例えば、サイジングされて比較的堅いガラス繊維ロービングを使用する場合、ロービングを「軟化」して繊維の開繊を容易にするために、更なる加熱を用いることができる。個々のフィラメントを含んで構成される開繊繊維(spread fiber)は、フィラメントの全表面積を晒させるよう十分分離して開繊され、こうして後続の処理工程でロービングがより効率的に反応できるようにする。例えば、開繊トウ又は開繊ロービングは、前述のようにプラズマシステムで構成される表面処理工程を経る。その後、粗面化された開繊繊維はカーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬槽を通過する。その結果、表面で放射状に分布した触媒粒子を有するガラスロービングの繊維となる。触媒を含んだロービングの繊維は、その後、前述のように、例えば、矩形チャンバーなどの適切なカーボン・ナノチューブ成長チャンバーに入るが、ここでは、大気圧CVD又はプラズマCVDプロセスを通る流れを用いて、毎秒数ミクロンの速度でカーボン・ナノチューブを合成する。ロービングの繊維は、こうして、そこに放射状に配列されたカーボン・ナノチューブを備えて、カーボン・ナノチューブ成長反応器を出る。
【0134】
本発明の様々な実施形態の働きに実質的に影響を及ぼさない変更も、本明細書で提供する本発明の定義に含まれることを理解されたい。したがって、以下の実施例は本発明を例示するものであり、それを限定するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料と、
第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料と、
を含み、
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料が、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられている電気機器。
【請求項2】
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料に接触している電解質と、
前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料と、をさらに含み、
前記第1のセパレータ材料が、前記電解質のイオンに対して透過性がある請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記電気機器が、スーパーキャパシタを含む請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記電解質が、無機電解質を含む請求項2に記載の電気機器。
【請求項5】
前記電解質が、有機電解質を含む請求項2に記載の電気機器。
【請求項6】
絶縁体材料をさらに含み、
前記絶縁体材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項2に記載の電気機器。
【請求項7】
第2のセパレータ材料をさらに含み、
前記第2のセパレータ材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項2に記載の電気機器。
【請求項8】
前記第1の電極材料の縁部と前記第2のセパレータ材料の縁部とが相互にずれている請求項2に記載の電気機器。
【請求項9】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、複数の連続繊維を含む請求項1に記載の電気機器。
【請求項10】
前記連続繊維が、炭素繊維、金属繊維及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項9に記載の電気機器。
【請求項11】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維の織りシート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、連続繊維のテープ、及びこれらの組合せからなる群から選択される形態を含む請求項1に記載の電気機器。
【請求項12】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、カーボン・ナノチューブが浸出される前に導電性である請求項1に記載の電気機器。
【請求項13】
前記螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料を、さらに含む請求項1に記載の電気機器。
【請求項14】
前記第1の電極材料と接触する第1の電極端子と、
前記第2の電極材料と接触する第2の電極端子と、
をさらに含む請求項1に記載の電気機器。
【請求項15】
前記カーボン・ナノチューブが、自身が浸出される先の前記基材の表面に実質的に垂直である請求項1に記載の電気機器。
【請求項16】
第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料を提供するステップと、
第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を提供するステップと、
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、
前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記層状構造が、前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料をさらに含み、
前記第1のセパレータ材料が、電解質のイオンに対して透過性がある請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記層状構造を電解質に晒すステップを、さらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記層状構造を電解質に晒すステップが、前記巻き付けるステップの前に実行される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記層状構造を形成するステップが、前記電解質のリザーバ(容器)内で実行される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
巻き付けるステップの前に前記層状構造を絶縁体材料で密封するステップを、さらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記層状構造を電解質に晒すステップが、巻き付けるステップの後に実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記層状構造が、絶縁体材料をさらに含み、
前記絶縁体材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記層状構造が、第2のセパレータ材料をさらに含み、
前記第2のセパレータ材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、巻き取り可能な寸法である請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、複数の連続繊維を含む請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記連続繊維が、炭素繊維、金属繊維及びこれその組合せからなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維の織りシート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、連続繊維のテープ、及びこられの組合せからなる群から選択される形態を含む請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料が、層状構造を形成するプロセス及び前記層状構造を巻き付けるプロセスと動作可能に連結する連続カーボン・ナノチューブ浸出プロセスから提供される請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記螺旋形態の最外面上に絶縁体材料を塗布するステップを、さらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項31】
第1の繰り出しリール上に巻き取り可能な寸法の第1の基材及び第2の繰り出しリール上に巻き取り可能な寸法の第2の基材を提供するステップと、
カーボン・ナノチューブを浸出するように、カーボン・ナノチューブ成長反応器を通して前記第1の基材及び前記第2の基材を搬送し、それにより、前記第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料、及び前記第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を形成するステップと、
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、
前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるステップと、
を含む方法。
【請求項32】
前記層状構造が、前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料を、さらに含み、
前記第1のセパレータ材料が、電解質のイオンに対して透過性がある請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記層状構造を電解質に晒すステップを、さらに含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記層状構造を電解質に晒すステップが、前記巻き付けるステップの前に実行される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記層状構造を形成するステップが、前記電解質のリザーバ内で実行される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記巻き付けるステップの前に前記層状構造を絶縁体材料で密封するステップを、さらに含む請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記層状構造を電解質に晒すステップが、前記巻き付けるステップの後に実行される請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記層状構造が、絶縁体材料を、さらに含み、
前記絶縁体材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記層状構造が、第2のセパレータ材料を、さらに含み、
前記第2のセパレータ材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、複数の連続繊維を含む請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記連続繊維が、炭素繊維、金属繊維及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維の織りシート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、連続繊維のテープ、及びこられの組合せからなる群から選択される形態を含む請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記螺旋形態の最外面上に絶縁体材料を塗布するステップを、さらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項44】
触媒ナノ粒子を、前記第1の基材及び前記第2の基材に塗布するステップを、さらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項45】
カーボン・ナノチューブ成長反応器と、
前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流に第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリールと、を含み、
前記カーボン・ナノチューブ成長反応器を通って第1の基材及び第2の基材を連続的に搬送して、カーボン・ナノチューブを浸出するように、前記第1の繰り出しリール及び前記第2の繰り出しリールが前記カーボン・ナノチューブ成長反応器に動作可能に連結され、
さらに、
前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流に第3の繰り出しリールを含み、
前記第1の基材、前記第2の基材、及び前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置された前記第3の繰り出しリールの出力を含む層状構造を形成するように、前記第3の繰り出しリールが前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の出力に動作可能に結合され、
さらに、
前記層状構造を中心軸の周囲で螺旋形態に巻き付けるために動作可能である巻き取りリールを含む装置。
【請求項46】
前記第3の繰り出しリールの下流に、電解質塗布ステーションを、さらに含む請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流に触媒塗布ステーションを、さらに含む請求項45に記載の装置。
【請求項48】
前記巻き取りリールの上流に、密封ステーションをさらに含む請求項45に記載の装置。
【請求項49】
前記第1の基材、前記第2の基材、前記第3の繰り出しリールの出力、及び自身の出力を含む層状構造を形成するように、前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の出力及び前記第3の繰り出しリールの出力と動作可能に結合し、前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流にある第4の繰り出しリールを、さらに含み、
前記第3の繰り出しリールの前記出力が、前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置され、
前記第2の基材が、前記第3の繰り出しリールの前記出力と前記第4の繰り出しリールの前記出力の間に配置される請求項45に記載の装置。
【請求項1】
第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料と、
第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料と、
を含み、
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料が、中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けられている電気機器。
【請求項2】
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料に接触している電解質と、
前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料と、をさらに含み、
前記第1のセパレータ材料が、前記電解質のイオンに対して透過性がある請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記電気機器が、スーパーキャパシタを含む請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記電解質が、無機電解質を含む請求項2に記載の電気機器。
【請求項5】
前記電解質が、有機電解質を含む請求項2に記載の電気機器。
【請求項6】
絶縁体材料をさらに含み、
前記絶縁体材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項2に記載の電気機器。
【請求項7】
第2のセパレータ材料をさらに含み、
前記第2のセパレータ材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項2に記載の電気機器。
【請求項8】
前記第1の電極材料の縁部と前記第2のセパレータ材料の縁部とが相互にずれている請求項2に記載の電気機器。
【請求項9】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、複数の連続繊維を含む請求項1に記載の電気機器。
【請求項10】
前記連続繊維が、炭素繊維、金属繊維及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項9に記載の電気機器。
【請求項11】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維の織りシート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、連続繊維のテープ、及びこれらの組合せからなる群から選択される形態を含む請求項1に記載の電気機器。
【請求項12】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、カーボン・ナノチューブが浸出される前に導電性である請求項1に記載の電気機器。
【請求項13】
前記螺旋形態の最外面を被覆する絶縁体材料を、さらに含む請求項1に記載の電気機器。
【請求項14】
前記第1の電極材料と接触する第1の電極端子と、
前記第2の電極材料と接触する第2の電極端子と、
をさらに含む請求項1に記載の電気機器。
【請求項15】
前記カーボン・ナノチューブが、自身が浸出される先の前記基材の表面に実質的に垂直である請求項1に記載の電気機器。
【請求項16】
第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料を提供するステップと、
第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を提供するステップと、
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、
前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記層状構造が、前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料をさらに含み、
前記第1のセパレータ材料が、電解質のイオンに対して透過性がある請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記層状構造を電解質に晒すステップを、さらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記層状構造を電解質に晒すステップが、前記巻き付けるステップの前に実行される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記層状構造を形成するステップが、前記電解質のリザーバ(容器)内で実行される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
巻き付けるステップの前に前記層状構造を絶縁体材料で密封するステップを、さらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記層状構造を電解質に晒すステップが、巻き付けるステップの後に実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記層状構造が、絶縁体材料をさらに含み、
前記絶縁体材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記層状構造が、第2のセパレータ材料をさらに含み、
前記第2のセパレータ材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、巻き取り可能な寸法である請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、複数の連続繊維を含む請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記連続繊維が、炭素繊維、金属繊維及びこれその組合せからなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維の織りシート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、連続繊維のテープ、及びこられの組合せからなる群から選択される形態を含む請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料が、層状構造を形成するプロセス及び前記層状構造を巻き付けるプロセスと動作可能に連結する連続カーボン・ナノチューブ浸出プロセスから提供される請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記螺旋形態の最外面上に絶縁体材料を塗布するステップを、さらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項31】
第1の繰り出しリール上に巻き取り可能な寸法の第1の基材及び第2の繰り出しリール上に巻き取り可能な寸法の第2の基材を提供するステップと、
カーボン・ナノチューブを浸出するように、カーボン・ナノチューブ成長反応器を通して前記第1の基材及び前記第2の基材を搬送し、それにより、前記第1の基材に浸出された第1の複数のカーボン・ナノチューブを含む第1の電極材料、及び前記第2の基材に浸出された第2の複数のカーボン・ナノチューブを含む第2の電極材料を形成するステップと、
前記第1の電極材料及び前記第2の電極材料を含む層状構造を形成するステップと、
前記層状構造を中心軸の周囲に螺旋形態で巻き付けるステップと、
を含む方法。
【請求項32】
前記層状構造が、前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との間に配置された第1のセパレータ材料を、さらに含み、
前記第1のセパレータ材料が、電解質のイオンに対して透過性がある請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記層状構造を電解質に晒すステップを、さらに含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記層状構造を電解質に晒すステップが、前記巻き付けるステップの前に実行される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記層状構造を形成するステップが、前記電解質のリザーバ内で実行される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記巻き付けるステップの前に前記層状構造を絶縁体材料で密封するステップを、さらに含む請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記層状構造を電解質に晒すステップが、前記巻き付けるステップの後に実行される請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記層状構造が、絶縁体材料を、さらに含み、
前記絶縁体材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記層状構造が、第2のセパレータ材料を、さらに含み、
前記第2のセパレータ材料が、前記第1のセパレータ材料に隣接していない請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、複数の連続繊維を含む請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記連続繊維が、炭素繊維、金属繊維及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、金属シート、金属箔、金属フィルム、グラファイトシート、グラファイトフィルム、連続繊維の織りシート、連続繊維の不織シート、連続繊維のプライ、連続繊維のマット、連続繊維のリボン、連続繊維のテープ、及びこられの組合せからなる群から選択される形態を含む請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記螺旋形態の最外面上に絶縁体材料を塗布するステップを、さらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項44】
触媒ナノ粒子を、前記第1の基材及び前記第2の基材に塗布するステップを、さらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項45】
カーボン・ナノチューブ成長反応器と、
前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流に第1の繰り出しリール及び第2の繰り出しリールと、を含み、
前記カーボン・ナノチューブ成長反応器を通って第1の基材及び第2の基材を連続的に搬送して、カーボン・ナノチューブを浸出するように、前記第1の繰り出しリール及び前記第2の繰り出しリールが前記カーボン・ナノチューブ成長反応器に動作可能に連結され、
さらに、
前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流に第3の繰り出しリールを含み、
前記第1の基材、前記第2の基材、及び前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置された前記第3の繰り出しリールの出力を含む層状構造を形成するように、前記第3の繰り出しリールが前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の出力に動作可能に結合され、
さらに、
前記層状構造を中心軸の周囲で螺旋形態に巻き付けるために動作可能である巻き取りリールを含む装置。
【請求項46】
前記第3の繰り出しリールの下流に、電解質塗布ステーションを、さらに含む請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の上流に触媒塗布ステーションを、さらに含む請求項45に記載の装置。
【請求項48】
前記巻き取りリールの上流に、密封ステーションをさらに含む請求項45に記載の装置。
【請求項49】
前記第1の基材、前記第2の基材、前記第3の繰り出しリールの出力、及び自身の出力を含む層状構造を形成するように、前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の出力及び前記第3の繰り出しリールの出力と動作可能に結合し、前記カーボン・ナノチューブ成長反応器の下流にある第4の繰り出しリールを、さらに含み、
前記第3の繰り出しリールの前記出力が、前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置され、
前記第2の基材が、前記第3の繰り出しリールの前記出力と前記第4の繰り出しリールの前記出力の間に配置される請求項45に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2013−521656(P2013−521656A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556204(P2012−556204)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2011/026819
【国際公開番号】WO2011/109480
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2011/026819
【国際公開番号】WO2011/109480
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】
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