説明

カーボン繊維調模型用デカール

【課題】 従来から模型の装飾用として、カーボン繊維強化プラスチック部品を表現するためにカーボン繊維の織り目に似せたパターンを印刷したデカールを使用していたが、これでは本物のカーボン繊維の持つ立体感や質感が表現できなかった。
【解決手段】 本発明はスクリーン印刷法で万線技術を用い、インクの物性や図柄を組み合わせて光の反射をコントロールすることにより本物のカーボン繊維の持つ立体感や質感のある模型用デカールを作製する事を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水転写用紙に模型等の装飾用として、立体感のある図柄をスクリーン印刷で形成し、その図柄はカーボン繊維を使用していないのにカーボン繊維調を表現する事にある。
【背景技術】
【0002】
万線印刷の大きな目的は、銀行券、株券、有価証券、通行券、カード等の偽造、変造を防止する必要性のあるものが対象である(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−209646
【特許文献2】特開2005−119098
【0003】
しかしながら、万線の特徴である光の反射を利用した模型用デカール製品は今まで存在しなかった
【0004】
従来はカーボン繊維調のデザインを形成するのには、黒インクのベタ印刷にグレーや白のインクでカーボン繊維に似せたパターンを印刷していた。この方法で印刷形成されたパターンはカーボン繊維の立体感ある特徴を再現できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明で言う万線とは厚み5ミクロン以上の線の集合で構成され、画像の表面の反射光を制御し、光の反射角度によって意図した画像を浮かび上がらせる効果を得るものである。
【0006】
従来の模型用カーボン繊維調デカールは単にカーボン繊維の折り目に似せた図柄を印刷して表現をしていた。
【0007】
本物のカーボン繊維で形成されていると、立体的に織り込まれたカーボン繊維が光を反射するため、見る角度によって、光の反射方向が変化して動きを伴い、より立体的に見えるものである。しかしながら0006の形成方法では図柄が立体的に見えると言う本来の特徴が全く再現できなかった。
【0008】
従って、本物のカーボン繊維調を表現する事は、従来の方法では技術的にもコスト的にも商業的にも不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的な転写紙にスクリーン印刷法で黒インクを用いてカーボン繊維調模型用デカールのベースを印刷し、その上に立体感を必要とされる図柄をUVインクを用いて、同じくスクリーン印刷法で形成する。
【0010】
印刷終了後、所定の室温乾燥(レベリング)とUV乾燥(UV照射乾燥機)の後、被転写物にスライド転写で、例えば自動車の模型のボンネットに転写する。
【0011】
転写後に貼り付けた転写物と被転写物の界面に存在する気泡等を除去し乾燥させる。
【発明の効果】
【0012】
模型に施された転写部は本物のカーボン繊維図柄と同じような立体感があり、本物のカーボン繊維の持つ質感を再現する事が出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
スクリーン印刷でカーボン繊維調デカール用の万線図柄パターンを転写紙に印刷し、模型等の所定の位置にスライド転写し、乾燥して立体感のあるカーボン繊維調の絵柄を得る事を考案した。
【実施例1】
【0014】
通常の転写紙(図1−101,102)は丸繁紙工株式会社製SPAを使用した。
下地インク(図1−103)は株式会社セイコーアドバンス製1300シリーズ(黒)を使用し、180メッシュの製版を用いてスクリーン法で印刷した。万線図柄(図1−104)のインクは十条ケミカル株式会社製4700VX(クリヤー)を使用し、420メッシュの製版を用いてスクリーン法で印刷した。尚このインクはUV乾燥型インクであるのでUV照射で乾燥した。
【0015】
万線図柄(図1−104)としては図2を採用した。
【0016】
この印刷された転写紙を2〜3分水に浸け、スライド法により模型自動車のボンネットに転写した。転写後、気泡等ヘラを用いて取り除き所定の温度で乾燥した。
【0017】
目視観察によると、従来にない立体感のある本物のカーボン繊維調が再現出来た。これは、光の反射方向をコントロールするU字型の万線図柄を本物のカーボン繊維パターンと同じような光の反射のしかたをするように並べる事によって本物のカーボン繊維の持つ質感を再現する事を可能にした。
【実施例2】
【0018】
万線図柄(図1−104)のインクは株式会社セイコーアドバンス製1300シリーズ(クリヤー)を使用し、スクリーン法で印刷した。尚このインクは溶剤タイプのインクである。それ以外は実施例1と同じである。
【0019】
目視観察によると、実施例1ほどには立体感のあるカーボン繊維調が再現出来なかった。理由としては同じ印刷条件でもUVインクほどの厚み(高さ)がとれず、乾燥後のレンズ効果が弱かった為であろうと考えられる。
【実施例3】
【0020】
万線図柄を図3とした以外は全て実施例1と同じである。
【0021】
目視観察によると、実施例1ほどには立体感のあるカーボン繊維調が再現出来なかった。理由としては同じ印刷条件でも図柄(パターン)により光の反射効果で差が出てくるものと思われる。
【実施例4】
【0022】
万線図柄を図4とした以外は全て実施例1と同じである。
【0023】
目視観察によると、実施例1ほどには立体感のあるカーボン繊維調が再現出来なかった。理由は0021記載の内容と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、スクリーン印刷によって万線図柄を最適に配置し且つ図柄を形成するインクの最適化によりカーボン繊維を使わなくとも、カーボン繊維の質感を安価に再現でき、デカールなどの模型の装飾に高級感を持たすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に使用する転写シートの一例の模式的断面図である。
【図2】本発明に使用する万線図柄の一例の模式的平面図である。
【図3】本発明に使用する万線図柄の一例の模式的平面図である。
【図4】本発明に使用する万線図柄の一例の模式的平面図である。
【符号の説明】
【0026】
101転写用台紙
102デキストリン
103黒色インク(ベタ)
104クリヤーインク(万線図柄)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷で転写紙に万線図柄を印刷し、模型製品の表面に絵付けを行う事を目的とする転写紙。
【請求項2】
請求項1の転写紙の図柄、特にカーボン繊維調図柄においてU字型の曲線を縦横、交互に配列する事を特徴とする模型用デカール及びそれを転写した製品。
【請求項3】
請求項2の万線図柄を形成する際、光の反射をより効果的にするためにUVインクを使用する事を特徴とする模型用デカール及びそれを転写した製品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−274344(P2009−274344A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128184(P2008−128184)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(307010683)株式会社青木転写 (4)
【Fターム(参考)】