説明

ガイドブッシュ装置および旋盤

【課題】簡単な構造により低コスト化を図り易いうえ、素材の把持と主軸との同期回転とを一動作で行うことができるとともに、素材をより安定的に把持すること。
【解決手段】スリーブ22に固定された第1連結筒体24と、金属線材7(素材)を把持可能なダイヤフラムチャック30と、一方側および他方側に移動可能とされたピストン部材40と、を備え、ダイヤフラムチャック30は、弾性復元変形してピストン部材40を他方側に移動させるダイヤフラム部32と、ダイヤフラム部32の弾性変形に伴って金属線材7を把持するチャック部35と、を備え、ピストン部材40は、第1連結筒体24に連結される第2連結筒体44を備え、第1連結筒体24は、第2連結筒体44との連結時に主軸12に外嵌されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガイドブッシュ装置およびこのガイドブッシュ装置を備えた旋盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガイドブッシュ装置を備えた旋盤において、主軸の前方に配置されたガイドブッシュ装置を回転可能とし、主軸とガイドブッシュ装置とを同期させて回転させるようにした自動旋盤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたガイドブッシュ装置を備えた自動旋盤は、主軸台の前進によって主軸をガイドブッシュ装置に係合させ、該主軸の回転をガイドブッシュ装置に伝達する駆動力伝達手段と、ガイドブッシュ装置のガイドブッシュ体を開閉させて素材を把持させる把持手段と、を備えている。
【0004】
具体的な駆動力伝達手段の構成としては、主軸の前端に設けられたキャップナットの先端のクラッチ部が、ガイドブッシュスリーブの後端のクラッチ部と係脱可能とされている。そのため、主軸に前進によって上記両クラッチ部が係合し、主軸の回転力がガイドブッシュスリーブ側に伝達され、ガイドブッシュスリーブおよびこれに内嵌されたガイドブッシュ体が主軸と同期回転するように構成されている。
【0005】
また、具体的な把持手段の構成としては、上記両クラッチ部の係合時に、キャップナットによって揺動させられるレバー部がガイドブッシュスリーブに設けられ、このレバー部を揺動させることでガイドブッシュ体を径方向内側に変位させて素材を把持させる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−228703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のガイドブッシュ装置では、把持手段と駆動力伝達手段とがそれぞれ別の機構により構成されているので、ガイドブッシュ装置全体の構造が複雑化し易いうえ、部品点数も多く高コストになり易い。しかも、素材を把持するためには、レバー部を他部品との位置関係を考慮しながら高精度に組み付ける必要があるので、この点においても構成が複雑化し易く高コストに繋がり易かった。
【0008】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、簡単な構造により低コスト化を図り易いうえ、素材の把持と主軸との同期回転とを一動作で行うことができるとともに、素材をより安定的に把持し易いガイドブッシュ装置およびこのガイドブッシュ装置を用いた旋盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のガイドブッシュ装置は、棒状の素材を把持して回転する主軸の一方側に配設され、前記素材の回転をガイドするガイドブッシュ装置であって、前記主軸の前記一方側に該主軸と同軸上に配設された状態で軸支され、前記主軸よりも外方に延在すると共に前記素材を挿通させる筒状のスリーブと、該スリーブの他方側と前記主軸との間に配設され、該スリーブに固定された第1連結筒体と、前記スリーブの一方側に前記主軸と同軸上に配設された状態で固定され、前記素材を把持可能なダイヤフラムチャックと、前記素材を挿通させた状態で前記スリーブ内に配設されると共に、前記素材の軸方向に沿って前記スリーブの前記一方側および前記他方側に移動可能とされた筒状のピストン部材と、を備え、前記ダイヤフラムチャックは、前記素材の前記軸方向に弾性変形可能とされると共に該素材を挿通させる挿通孔が形成され、弾性復元力により前記スリーブ側に弾性復元変形して前記ピストン部材を前記他方側に移動させるダイヤフラム部と、前記素材を径方向外側から囲繞した状態で前記ダイヤフラム部に取り付けられると共に、該ダイヤフラム部の前記弾性変形に伴って前記素材の径方向に移動可能とされ、前記弾性復元変形時に径方向内側に移動させられて前記素材を把持するチャック部と、を備え、前記ピストン部材は、前記ダイヤフラム部によって前記他方側に移動させられると共に、前記一方側に移動させられた時に前記ダイヤフラム部を前記スリーブから離間する方向に弾性変形させるピストン本体筒と、該ピストン本体筒の他方側に固定され、該ピストン本体筒が他方側に移動させられた時に、前記第1連結筒体に連結される第2連結筒体と、を備え、前記第1連結筒体は、前記第2連結筒体との連結時に前記主軸に外嵌されることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、ダイヤフラム部の弾性復元変形によって、チャック部を径方向内側に移動させることができ、素材を把持することができる。またこれと同時に、ピストン部材をスリーブの他方側に移動させることで第1連結筒体と第2連結筒体とを連結させることができ、第1連結筒体を主軸に外嵌させることができる。したがって、主軸の回転力をピストン部材、スリーブおよびダイヤフラムチャックに同じタイミングで伝達させることができ、これらを主軸と同期回転させることができる。つまり、ダイヤフラム部を弾性復元変形させるという一動作で、素材の把持と主軸との回転同期とを同時に行うことができ、回転する素材に極力余計な負荷をかけることなく把持することができる。
特にダイヤフラム部の弾性復元変形によって、素材を径方向外側から囲繞しているチャック部を径方向内側に瞬時に移動させて、素材を略全周にわたって均等な力で把持できるので、素材を安定的に把持してその回転をガイドし易い。そのため、素材の加工精度の向上化に繋げることができる。
また、上記したようにダイヤフラム部を弾性復元変形させるという一動作で、素材の把持と主軸との回転同期とを同時に行うことができるので、部品点数を削減し易いうえ、構成の簡略化を図り易く、これにより低コスト化を図ることができる。
【0011】
また、前記第1連結筒体は、外周面が一方側から他方側に向かうにしたがって漸次拡径する第1テーパ面とされたコレットチャックとされ、前記第2連結筒体は、内周面が前記第1テーパ面に対応して、一方側から他方側に向かうにしたがって漸次拡径する第2テーパ面とされていることを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、ピストン本体筒の他方側への移動に伴って、第1連結筒体の第1テーパ面と第2連結筒体の第2テーパ面とを互いに圧接させることができると同時に、第1連結筒体を径方向内側に変位させて主軸に外嵌させることができる。このように、主軸とダイヤフラムチャックとを簡単な構造により確実に連結させ、主軸とダイヤフラムチャックとを同期回転させることができる。また、第1連結筒体の第1テーパ面と第2連結筒体の第2テーパ面とを単に圧接させてピストン部材と主軸とを連結しているので、ピストン部材と主軸との間で摩擦熱や異音等が発生しにくい。したがって、例えばタイミングプーリとタイミングベルトとを用いた従来技術よりも損失が少なく、回転効率に優れたガイドブッシュ装置とすることができる。
【0013】
また、前記ピストン部材を前記スリーブの前記一方側に移動させ、前記ダイヤフラム部を前記スリーブから離間する方向に弾性変形させる移動機構を備えていることを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、ピストン部材を一方側に移動させると、ダイヤフラム部がスリーブから離間する方向に弾性変形させられるので、チャック部を素材の径方向外側に移動させることができ、素材を開放することができる。また、これと同時に、第1連結筒体と第2連結筒体とを切り離して両者の連結を解除できるので、主軸からピストン部材への回転力の伝達を切断できる。つまり、移動機構によりピストン部材を一方側に移動させるという一動作で、素材の開放と主軸とピストン部材との切り離しとを同時に行うことができる。また、チャック部の上記移動により、素材とチャック部との間に所定の隙間を形成できるので、ダイヤフラムチャックを素材の回転振れ止めガイドとして機能させることができ、素材の加工精度の向上化に繋げることができる。
また、上記したように移動機構によりピストン部材を一方側に移動させるという一動作で、素材の開放とダイヤフラムチャックと主軸との切り離しとを同時に行うことができるので、部品点数を削減し易いうえ、構成の簡略化を図り易く、これにより低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、前記ピストン本体筒と前記ダイヤフラム部との間に、前記ダイヤフラム部を前記素材の前記軸方向に弾性変形させて、前記チャック部の移動量を調整する調整機構が設けられていることを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、ダイヤフラム部の軸方向の位置を調整可能とすることで、チャック部の移動量を調整できるので、素材に対するチャック部の把持力や、素材の開放時におけるチャック部と素材との隙間を調整できる。これにより、例えば線径の異なる素材を加工するときや、ダイヤフラムチャックの挿通孔が磨耗したときに、容易に対応できる。
【0017】
また、本発明の旋盤は、上述のガイドブッシュ装置を備えたことを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、上記したガイドブッシュ装置を備えているので、旋盤全体の低コスト化を図り易いうえ、素材を高精度に旋盤加工することができ、加工品の品質を向上させることができる。特に細径の素材に有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構造により低コスト化を図り易いうえ、素材の把持と主軸との同期回転とを一動作で行うことができるとともに、素材をより安定的に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態のガイドブッシュ装置を備えた旋盤の斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図2におけるガイドブッシュ装置の拡大図である。
【図4】ダイヤフラムチャックの斜視図である。
【図5】図3のB−B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態のガイドブッシュ装置およびガイドブッシュ装置を備えた旋盤につき図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のガイドブッシュ装置20を備えた旋盤1(自動旋盤)の斜視図である。なお、本実施形態では、切削加工対象物を金属線材7(棒状の素材)として説明する。また、その金属線材7の先端側、即ち被切削加工側を前方(一方側)とし、金属線材7の供給側を後方(他方側)と定義して説明している。
また、以下の説明において、「径方向」とは、主軸12(図2参照)の中心軸Oに沿って配置された金属線材7の径方向をいい、「周方向」とは前記金属線材7の周方向をいい、「軸方向」とは前記金属線材7の軸方向をいう。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の旋盤1は、主軸台座2の上面2aに設けられた主軸装置10と、主軸装置10の前方において、支持台3により支持されたガイドブッシュ装置20と、支持台3により支持され、垂直方向および水平方向(垂直方向と前後方向とに直行する方向)に移動可能に設けられた複数の切削刃4と、を備えている。
旋盤1は、中心軸Oを回転中心として金属線材7を回転させつつ、金属線材7の径方向外側から切削刃4を金属線材7に接触させて、金属線材7を切削加工するものである。
【0023】
(主軸)
図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。なお、図2では、図面をわかりやすくするために、主軸台座2および支持台3の図示を省略している。
図2に示すように、旋盤1の主軸装置10には、主軸装置10の中心に沿って、略円筒状の主軸12が設けられている。主軸12は、主軸装置10の主軸ハウジング11に、例えばベアリング11aを介して、主軸12の中心軸O回りに軸支されている。
主軸12の前方は、主軸ハウジング11から突出されて設けられている。主軸12には、中心軸Oに沿って主軸12の前方端面と後方端面とを貫通する主軸挿通孔12aが形成されており、主軸挿通孔12aには金属線材7が挿通される。
【0024】
主軸挿通孔12aの前方は、主軸チャック機構12bとなっており、主軸挿通孔12aを縮径させて主軸挿通孔12aに挿通された金属線材7を把持できるように構成されている。
主軸12の後方には、回転駆動機構としてコイル74とマグネット75とからなるビルトインモータが設けられている。主軸12および主軸12によって把持された金属線材7は、ビルトインモータを回転駆動させることにより、中心軸O回りに回転させられる。
【0025】
図1に示すように、主軸装置10は、主軸ハウジング11が主軸台座2の上面2aに固定されて配設されている。主軸台座2の上面2aは、不図示の駆動装置により前後方向に移動可能となっており、主軸台座2の移動に対応して主軸装置10が中心軸Oに沿って前後方向に移動する。これにより、主軸装置10の主軸12は、ガイドブッシュ装置20に対して中心軸Oに沿って前後方向に相対移動可能となっている。
【0026】
(ガイドブッシュ装置)
図3は、図2におけるガイドブッシュ装置20の拡大図である。
図3に示すように、主軸装置10の前方には、金属線材7の回転をガイドするガイドブッシュ装置20が設けられている。
ガイドブッシュ装置20は、主軸12の前方に延在するスリーブ22と、スリーブ22と主軸12との間に配置された第1連結筒体24と、スリーブ22の前方に配設されたダイヤフラムチャック30と、スリーブ22内に配設されたピストン部材40と、を備えている。
【0027】
(スリーブ)
スリーブ22は、略円筒形状をした部材であり、ガイドブッシュ装置20内において、主軸装置10の主軸ハウジング11よりも前方であって、主軸12と同軸上に設けられている。
スリーブ22の前方および後方の径方向外側には、ベアリング21aおよびベアリング21cが設けられている。スリーブ22は、ベアリング21aおよびベアリング21cを介して、スリーブハウジング21に回転可能に軸支されている。ベアリング21aおよびベアリング21cは、摺動抵抗を低減させるとともに、スリーブ22とスリーブハウジング21との軸方向および径方向の相対移動を規制している。
【0028】
スリーブ22の後方開口部22bの内径は、主軸12の外径よりも大径となっており、主軸12の前方を覆うように形成されている。スリーブ22の後方開口部22b内には、主軸12の他に、主軸12の径方向外側を覆うように設けられた後述の第1連結筒体24、および後述のピストン部材40の後方に設けられた第2連結筒体44が配置される。
【0029】
スリーブ22の軸方向における略中央から前方には、後述するピストン部材40のピストン本体筒42が挿通されている。
また、スリーブ22の前方開口部22cは、後述するダイヤフラムチャック30によって開口が覆われることにより、油圧調整室37を形成している。油圧調整室37は、スリーブ22内に設けられた第1油路38aおよび第2油路38bと連通されている。さらに第1油路38aおよび第2油路38bは、スリーブ22の外部に設けられた不図示の油圧ポンプと連通されている。油圧調整室37には、オイルが充填されており、油圧ポンプが駆動されることで、油圧調整室37、第1油路38aおよび第2油路38bをオイルが流動するように構成されている。そして、スリーブ22に形成された油圧調整室37、第1油路38a、第2油路38bおよびスリーブ22の外部の油圧ポンプにより、ピストン部材40を前後方向に移動させる移動機構39が構成されている。なお、移動機構39については後述する。
【0030】
(第1連結筒体)
スリーブ22の後方開口部22b内には、スリーブ22と主軸12との間に第1連結筒体24を備えている。
第1連結筒体24は、略円筒形状に形成された金属からなる部材である。第1連結筒体24の後方は、外径が拡径したフランジ部24dとなっており、中心軸Oを含む側面断面が略L字形状に形成されている。
フランジ部24dは、スリーブ22の後端面と当接しており、不図示のボルト等によりスリーブ22に固定されている。
【0031】
第1連結筒体24は、外周面24aが径方向に弾性変形可能に形成されている。具体的には、第1連結筒体24は、外周面24aが径方向内側に弾性変形させられると内周面24bが縮径し、外周面24aが復元すると内周面24bも復元するように構成されている。すなわち、第1連結筒体24は、いわゆるコレットチャックとなっている。
【0032】
第1連結筒体24には、主軸ハウジング11の前方に形成された突出部11bおよび主軸12が挿通される。
第1連結筒体24の内周面24bにおける後方の直径は、突出部11bの外径よりも若干大径に形成されている。これにより、主軸ハウジング11の突出部11bと第1連結筒体24の内周面24bとの間には隙間が形成され、第1連結筒体24は、中心軸Oを回転中心として主軸ハウジング11に対して回転可能になっている。
また、前述のとおり、フランジ部24dはスリーブ22の後端面に溶接等により固定されている。したがって、後述するように第1連結筒体24が主軸12に外嵌されて、主軸12とともに同期回転したときには、スリーブ22も同期回転可能になっている。
【0033】
第1連結筒体24の外周面24aの前方は、前方から後方に向かうにしたがって漸次拡径するように略テーパ状に形成された、第1テーパ面24cとなっている。第1テーパ面24cは、後述するピストン部材40の第2連結筒体44に形成された第2テーパ面44cと当接する。
【0034】
(ダイヤフラムチャック)
図3に示すように、スリーブ22の前方には、ダイヤフラムチャック30が設けられている。ダイヤフラムチャック30は、スリーブ22の前方端面に取り付けられるダイヤフラムベース31と、ダイヤフラムベース31の前方に取り付けられるダイヤフラム部32と、ダイヤフラム部32の前方に取り付けられるチャック部35と、により構成されている。
【0035】
ダイヤフラムベース31は、略中央に中心軸Oに沿って前後方向に貫通する貫通孔31aが形成された鉄等の金属からなる略平板形状の部材であり、スリーブ22の前方端面に不図示のボルト等によって取り付けられている。
ダイヤフラムベース31は、スリーブ22の前方開口部22cを閉塞しており、ダイヤフラムベース31と前方開口部22cとで、後述するピストン部材40を前後方向に移動可能とする油圧調整室37を形成している。また、ダイヤフラムベース31の貫通孔31aにはパッキン31bが配置されており、ピストン部材40とダイヤフラムベース31とのシール性を確保している。
【0036】
(ダイヤフラム部)
ダイヤフラムベース31の前方に取り付けられるダイヤフラム部32は、鉄等の金属の薄板からなる有底筒状の部材であり、切削加工やプレス等により形成される。
ダイヤフラム部32の底部32aは、中心軸Oに沿って前後に弾性変形可能となっている。後述するチャック部35の各チャック片36は、ボルト等によってダイヤフラム部32の底部32aに固定されており、ダイヤフラム部32の底部32aが前方に弾性変形したときには、各チャック片36を径方向外側に移動させる。また、ダイヤフラム部32の底部32aが弾性復元変形したときには、ピストン部材40の前方に配置された可動鉄心部材51を後方に押圧して、ピストン部材40を後方に移動させる。ダイヤフラム部32の底部32aにおける略中央には、中心軸Oに沿って前後方向に貫通する挿通孔32bが形成されており、金属線材7が挿通されている。
【0037】
(チャック部)
図4は、チャック部35の斜視図である。
図4に示すように、ダイヤフラム部32の前方には、チャック部35が、金属線材7を囲繞した状態で取り付けられている。
チャック部35は、前方から後方に向かって拡径する略円錐台形状に形成されている。チャック部35は、周方向に沿って分割されており、本実施形態では、60°ピッチで等しく分割された6個のチャック片36により構成されている。
チャック部35の略中央には、中心軸Oに沿ってチャック部35の前方面35bと後方面35aを貫通するチャック孔35cが形成されており、チャック孔35cには、金属線材7が挿通される。
【0038】
各チャック片36は、金属線材7の径方向に移動可能に形成されている。
具体的には、ダイヤフラム部32の底部32a(図3参照)が前方に弾性変形すると、底部32aに固定されたチャック部35の後方面35a(図3参照)が前方に押圧されて、各チャック片36が径方向外側に移動する。これにより、チャック孔35cが拡径して、金属線材7が開放されるとともに、金属線材7と各チャック片36との間に空間が形成される。すなわち、金属線材7と各チャック片36との間に空間を形成し、金属線材7加工時のガイドとしてダイヤフラムチャック30を機能させている。
また、ダイヤフラム部32の底部32a(図3参照)が弾性復元変形すると、各チャック片36が復元して径方向内側に移動する。これにより、チャック孔35cが縮径して、金属線材7が各チャック片36により把持される。
このように、各チャック片36が金属線材7の径方向に移動可能に形成されることで、チャック部35は、金属線材7を開放および把持できるように構成されている。
【0039】
(ピストン部材)
図3に示すように、スリーブ22内には、ピストン部材40が配設されている。ピストン部材40は鉄等の金属からなる略円筒状の部材であり、前方に形成されたピストン本体筒42と、ピストン本体筒42の後方に形成された第2連結筒体44とにより構成されている。
【0040】
(ピストン本体筒)
ピストン本体筒42の中央には、中心軸Oに沿ってピストン本体筒42の前方端面と後方端面とを貫通するピストン挿通孔42aが形成されており、ピストン挿通孔42aには金属線材7が挿通される。
ピストン本体筒42の前方は、外径が拡径したピストンフランジ部42bとなっている。ピストンフランジ部42bは、スリーブ22に形成された油圧調整室37に配置されるとともに、油圧調整室37を第1油圧調整室37aと第2油圧調整室37bとに分割している。
【0041】
ピストンフランジ部42bの前方におけるピストン本体筒42の周面には、前述のとおりパッキン31bが配置されており、ダイヤフラムベース31とピストン本体筒42とのシール性を確保している。また、ピストンフランジ部42bの後方におけるピストン本体筒42の周面には、パッキン23が配置されており、スリーブ22とピストン本体筒42とのシール性を確保している。すなわち、パッキン31bおよびパッキン23により、油圧調整室37からオイルが漏洩するのを防止している。
【0042】
(第2連結筒体)
ピストン本体筒42の後方には、第2連結筒体44が設けられている。第2連結筒体44は、後方に開口を有する有底筒状に形成されており、前方に配置された第2連結筒体44の底部44dが、ピストン本体筒42の後方端面に不図示のボルト等により固定されている。
【0043】
第2連結筒体44の外周面44aの直径は、スリーブ22の後方開口部22bの内径よりも若干小径に形成されており、第2連結筒体44は、スリーブ22の後方開口部22b内で前後方向に移動可能となっている。第2連結筒体44の外周面44aには、前方および後方にパッキン43が設けられている。パッキン43は、第2連結筒体44が回転したときの振動を抑制している。
【0044】
第2連結筒体44の内周面44bの直径は、主軸12の直径よりも大径に形成されている。第2連結筒体44内には、主軸12および第1連結筒体24の第1テーパ面24cが配置される。
第2連結筒体44の内周面44bは、前方から後方に向かうにしたがって漸次拡径する第2テーパ面44cとなっている。第2テーパ面44cの傾斜角度は、第1連結筒体24の第1テーパ面24cに対応した傾斜角度に形成される。このため、第2連結筒体44が前方から後方に移動すると、第2テーパ面44cは、第1テーパ面24cを径方向内側に押圧して移動させる構造となっている。
【0045】
(移動機構)
上述のように形成されたピストン部材40は、移動機構39により中心軸Oに沿って前方に移動可能となっている。本実施形態の移動機構39は、スリーブ22に形成された油圧調整室37、第1油路38a、第2油路38bおよびスリーブ22の外部の油圧ポンプにより構成されている。
【0046】
油圧調整室37は、ピストン部材40のピストンフランジ部42bにより2室に分割されており、ピストンフランジ部42bの前方の第1油圧調整室37aと、ピストンフランジ部42bの後方の第2油圧調整室37bと、を有している。
第1油圧調整室37aには第1油路38aが連通されており、第1油路38aには不図示の油圧ポンプが接続されている。また、第2油圧調整室37bには第2油路38bが連通されており、第2油路38bには不図示の油圧ポンプが接続されている。
【0047】
油圧ポンプを作動させて、第2油路38bを介して第2油圧調整室37bにオイルを供給すると、第2油圧調整室37bの油圧が上昇する。そして、第2油圧調整室37bの油圧の上昇により、ピストンフランジ部42bは前方に押圧されて、ピストン部材40が中心軸Oに沿って前方に移動する。このように、ピストン部材40は、軸方向に沿って前方に移動可能となっている。
【0048】
(調整機構)
図5は、図3のB−B線に沿った断面図である。
図3に示すように、ピストン本体筒42とダイヤフラム部32との間には、ダイヤフラム部32を軸方向に弾性変形させて、チャック部35の移動量を調整する調整機構50が設けられている。
本実施形態の調整機構50は、図3に示すように、ピストン本体筒42の前方に配置される調整ピニオン53と、調整ピニオン53とダイヤフラム部32との間に配置される可動鉄心部材51と、図5に示すように、調整ピニオン53を回転させるラック55と、ラックを径方向に沿って移動させる調整ネジ56と、により構成されている。
【0049】
調整ピニオン53は、有底筒状に形成されており、筒部54の外周面54aには雄ネジが形成され、筒部54の内周面54bには雌ネジが形成されている。筒部54の外周面54aは、ピストン本体筒42の前方端面に螺合されている。また、調整ピニオン53の前方端部における外周面には、ピニオンギヤ53aが形成されており、ダイヤフラム部32の内部において径方向に沿うように設けられた棒状のラック55と噛合している。
【0050】
図5に示すように、ラック55は、略円筒状の部材であり、径方向に沿って移動可能に支持されている。ラック55の外周面には、調整ピニオン53のピニオンギヤ53aと噛合するラックギヤ55aが形成されている。また、ラック55の内周面には雌ネジが形成されており、調整ネジ56が螺合されている。不図示のドライバ等の工具を用いて調整ネジ56を回転させることにより、ラック55は径方向に沿って移動させられ、調整ピニオン53を回転させている。
【0051】
可動鉄心部材51は、中心軸Oを含む断面形状が略T字形状をしており、円柱状の本体部51aと、本体部51aよりも大径に形成された当接部51bと、により形成されている。
本体部51aの外周面には雄ネジが形成されており、調整ピニオン53の筒部54の内周面54bに螺合されている。
当接部51bは、本体部51aの前方に形成されており、ダイヤフラム部32の底部32aと当接している。また、当接部51bには不図示の回り止めが形成されており、可動鉄心部材51の中心軸Oを中心とした回転が規制されている。
【0052】
調整機構50による調整方法は以下のとおりである。
ドライバ等の工具で調整ネジ56を回転させると、ラック55が径方向に移動する。これにより、ラックギヤ55aと噛合している調整ピニオン53は、中心軸Oを回転中心として回転する。ここで、調整ピニオン53に螺合された可動鉄心部材51は、調整ピニオン53とともに回転しようとするが、回り止めによって回転が規制されている。このため、可動鉄心部材51は、調整ピニオン53が回転することにより軸方向に沿って前後方向に移動する。
【0053】
具体的には、調整ピニオン53の回転方向が、調整ピニオン53と可動鉄心部材51との締結が解除される方向の場合には、可動鉄心部材51は前方に移動する。このとき、可動鉄心部材51の当接部51bにより、ダイヤフラム部32の底部32aに固定されたチャック部35の後方面35aが押圧されて、各チャック片36が径方向外側に移動する。したがって、チャック孔35cは拡径するように調整される。
また、調整ピニオン53の回転方向が、調整ピニオン53と可動鉄心部材51とが締結される方向の場合には、可動鉄心部材51は後方に移動する。このとき、可動鉄心部材51の当接部51bはダイヤフラム部32の底部32aから離反する方向に移動し、ダイヤフラム部32の底部32aに固定された各チャック片36が径方向内側に移動する。したがって、チャック孔35cは縮径するように調整される。
【0054】
なお、可動鉄心部材51の外周面における雄ネジのピッチを、調整ピニオン53の外周面54aにおける雄ネジのピッチよりも狭く形成してもよい。これにより、調整ピニオン53の1回転あたりにおける可動鉄心部材51の前後方向への移動量を減少させることができるので、より細かい調整ができる。
【0055】
(ダイヤフラム部が弾性復元変形したときの作用)
以下に、本実施形態のガイドブッシュ装置20において、ダイヤフラム部32が弾性復元変形したときの作用について説明する。
油圧ポンプを停止して第2油圧調整室37bへのオイルの供給を停止すると、第2油圧調整室37bの油圧の上昇が停止するとともに、ピストン部材40によるダイヤフラム部32の底部32aの前方への押圧が停止する。
ピストン部材40による押圧が停止すると、前方に押圧されて弾性変形していたダイヤフラム部32の底部32aが、復元力により後方に移動する。
ダイヤフラム部32が弾性復元変形すると、ダイヤフラム部32の底部32aに固定されたチャック部35の各チャック片36も復元して径方向内側に移動する。これにより、チャック孔35cの直径が縮径して、金属線材7が各チャック片36により把持される。
【0056】
これと同時に、ダイヤフラム部32の底部32aは、弾性復元によりピストン部材40の前方に配置された可動鉄心部材51を後方に押圧して、ピストン部材40を後方に移動させる。そして、ピストン部材40の後方に設けられた第2連結筒体44の第2テーパ面44cは、主軸12の径方向外側に設けられた第1連結筒体24の第1テーパ面24cに沿って移動する。
【0057】
ここで、第1連結筒体24は、径方向に弾性変形可能に形成されたコレットチャックである。したがって、第2連結筒体44が後方に移動するのに伴って、第1連結筒体24の内周面24bは縮径し、第1連結筒体24は主軸12に外嵌されて連結される。また、第2連結筒体44は、第2テーパ面44cが第1連結筒体24の第1テーパ面24cに当接した状態で第1連結筒体24に外嵌されて連結される。
【0058】
すなわち、ダイヤフラム部32の弾性復元変形により、ピストン部材40の第2連結筒体44、主軸12、スリーブ22に固定された第1連結筒体24、およびスリーブ22に固定されたダイヤフラムチャック30は、それぞれ連結される。したがって、主軸12が回転すると、主軸12の回転力は、第1連結筒体24を介してピストン部材40、スリーブ22およびダイヤフラムチャック30に同じタイミングで伝達される。そして、ダイヤフラムチャック30により把持された金属線材7は、主軸12、スリーブ22およびダイヤフラムチャック30と同期回転する。
【0059】
(ダイヤフラム部が弾性変形したときの作用)
続いて、本実施形態のガイドブッシュ装置20において、ダイヤフラム部32が前方に弾性変形したときの作用について説明する。
移動機構39を作動させると、油圧ポンプを作動して第2油圧調整室37bへのオイルの供給が開始される。そして、第2油圧調整室37bの油圧が上昇すると、第1油圧調整室37aと第2油圧調整室37bとの油圧差により、油圧調整室37内でピストンフランジ部42bが前方に移動し、ピストン部材40全体が前方に移動する。
【0060】
ピストン部材40が前方に移動すると、ダイヤフラム部32の底部32aは、ピストン部材40の前方に配置された可動鉄心部材51により押圧されて前方に弾性変形する。
ダイヤフラム部32の底部32aが弾性変形すると、チャック部35の各チャック片36は径方向外側に移動する。これにより、チャック孔35cの直径が拡径して、金属線材7と各チャック片36との間に隙間が形成された状態で金属線材7が保持され、ダイヤフラムチャック30は金属線材7のガイドとして機能する。
【0061】
これと同時に、ピストン部材40が前方に移動するため、第1連結筒体24と第2連結筒体44との連結が切り離される。したがって、主軸12からピストン部材40への回転力の伝達が切断される。
【0062】
(効果)
本実施形態によれば、ダイヤフラム部32の弾性復元変形によって、チャック部35のチャック片36を径方向内側に移動させることができ、金属線材7を把持することができる。またこれと同時に、ピストン部材40をスリーブ22の後方に移動させることで第1連結筒体24と第2連結筒体44とを連結させることができ、第1連結筒体24を主軸12に外嵌させることができる。したがって、主軸12の回転力をピストン部材40、スリーブ22およびダイヤフラムチャック30に同じタイミングで伝達させることができ、これらを主軸12と同期回転させることができる。つまり、ダイヤフラム部32を弾性復元変形させるという一動作で、金属線材7の把持と主軸12との回転同期とを同時に行うことができ、回転する金属線材7に極力余計な負荷をかけることなく把持することができる。
特に、ダイヤフラム部32の弾性復元変形によって、金属線材7を径方向外側から囲繞しているチャック部35を径方向内側に瞬時に移動させて、金属線材7を略全周にわたって均等な力で把持できるので、金属線材7を安定的に把持してその回転をガイドし易い。そのため、金属線材7の加工精度の向上化に繋げることができる。
また、上記したようにダイヤフラム部32を弾性復元変形させるという一動作で、金属線材7の把持と主軸12との回転同期とを同時に行うことができるので、部品点数を削減し易いうえ、構成の簡略化を図り易く、これにより低コスト化を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、ピストン本体筒42の後側への移動に伴って、第1連結筒体24の第1テーパ面24cと第2連結筒体44の第2テーパ面44cとを互いに圧接させることができると同時に、第1連結筒体24を径方向内側に変位させて主軸12に外嵌させることができる。このように、主軸12とダイヤフラムチャック30とを簡単な構造により確実に連結させ、主軸12とダイヤフラムチャック30とを同期回転させることができる。また、第1連結筒体24の第1テーパ面24cと第2連結筒体44の第2テーパ面44cとを単に圧接させてピストン部材40と主軸12とを連結しているので、ピストン部材40と主軸12との間で摩擦熱や異音等が発生しにくい。したがって、例えばタイミングプーリとタイミングベルトとを用いた従来技術よりも損失が少なく、回転効率に優れたガイドブッシュ装置20とすることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、ピストン部材40を前方に移動させると、ダイヤフラム部32がスリーブ22から離間する方向に弾性変形させられるので、チャック部35を金属線材7の径方向外側に移動させることができ、金属線材7を開放することができる。また、これと同時に、ピストン部材40を前方に移動させることで、第1連結筒体24と第2連結筒体44とを切り離して両者の連結を解除できるので、主軸12からピストン部材40への回転力の伝達を切断できる。つまり、移動機構39によりピストン部材40を前方に移動させるという一動作で、金属線材7の開放と主軸12とピストン部材40との切り離しとを同時に行うことができる。また、チャック部35の上記移動により、金属線材7とチャック部35との間に所定の隙間を形成できるので、ダイヤフラムチャック30を金属線材7の回転振れ止めガイドとして機能させることができ、金属線材7の加工精度の向上化に繋げることができる。
また、上記したように移動機構39によりピストン部材40を前方に移動させるという一動作で、金属線材7の開放とダイヤフラムチャック30と主軸12との切り離しとを同時に行うことができるので、部品点数を削減し易いうえ、構成の簡略化を図り易く、これにより低コスト化を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、ダイヤフラム部32の軸方向の位置を調整可能とすることで、チャック部35の移動量を調整できるので、金属線材7に対するチャック部35の把持力や、金属線材7の開放時におけるチャック部35と金属線材7との隙間を調整できる。これにより、例えば線径の異なる素材を加工するときや、ダイヤフラムチャック30の挿通孔32bが磨耗したときに、容易に対応できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、旋盤1は上記したガイドブッシュ装置20を備えているので、旋盤1全体の低コスト化を図り易いうえ、金属線材7を高精度に旋盤加工することができ、加工品の品質を向上させることができる。特に細径の素材に有効である。
【0067】
なお、この発明の技術範囲は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0068】
実施形態のピストン部材40は、ダイヤフラム部32の弾性復元変形により、後方に移動して第1連結筒体と第2連結筒体とを連結していた。しかし、ダイヤフラム部32の弾性復元変形に加えて、例えば、移動機構39によりピストン部材40の後方への移動を補助してもよい。具体的には、第1油圧調整室37aにオイルを供給して第1油圧調整室37aの油圧を上昇させ、ピストンフランジ部42bを後方に移動させることで、ピストン部材40の後方への移動を補助できる。ただし、複雑な油圧制御が不要であり、低コストである点で本実施形態に優位性がある。
【0069】
本実施形態では、移動機構39は油圧を利用してピストン部材40を移動させているが、油圧に限られず、例えば空気圧を利用してピストン部材40を移動させることもできる。また、移動機構39は本実施形態の構成に限られず、例えば電動アクチュエータを用いて構成してもよい。
【0070】
本実施形態では、第1連結筒体24はコレットチャックであり、第1テーパ面24cと第2テーパ面44cとを当接させることで第1連結筒体24、第2連結筒体44、および主軸12を連結していた。しかし、連結手段は本実施形態に限られることはなく、例えば、電磁クラッチ等を用いて第1連結筒体24、第2連結筒体44、および主軸12を連結してもよい。
【0071】
本実施形態では、旋盤1に本発明のガイドブッシュ装置を用いているが、旋盤1以外にも本発明のガイドブッシュ装置を用いることができる。本発明のガイドブッシュ装置20は、金属線材7等の細い素材を把持しつつ、素材と主軸12とを同期回転させる装置に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・旋盤 7・・・金属線材(素材) 12・・・主軸 20・・・ガイドブッシュ装置 22・・・スリーブ 24・・・第1連結筒体 24a・・・第1連結筒体の外周面 24c・・・第1テーパ面 30・・・ダイヤフラムチャック 32・・・ダイヤフラム部 32b・・・挿通孔 35・・・チャック部 39・・・移動機構 40・・・ピストン部材 42・・・ピストン本体筒 44・・・第2連結筒体 44b・・・第2連結筒体の内周面 44c・・・第2テーパ面 50・・・調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の素材を把持して回転する主軸の一方側に配設され、前記素材の回転をガイドするガイドブッシュ装置であって、
前記主軸の前記一方側に該主軸と同軸上に配設された状態で軸支され、前記主軸よりも外方に延在すると共に前記素材を挿通させる筒状のスリーブと、
該スリーブの他方側と前記主軸との間に配設され、該スリーブに固定された第1連結筒体と、
前記スリーブの一方側に前記主軸と同軸上に配設された状態で固定され、前記素材を把持可能なダイヤフラムチャックと、
前記素材を挿通させた状態で前記スリーブ内に配設されると共に、前記素材の軸方向に沿って前記スリーブの前記一方側および前記他方側に移動可能とされた筒状のピストン部材と、を備え、
前記ダイヤフラムチャックは、
前記素材の前記軸方向に弾性変形可能とされると共に該素材を挿通させる挿通孔が形成され、弾性復元力により前記スリーブ側に弾性復元変形して前記ピストン部材を前記他方側に移動させるダイヤフラム部と、
前記素材を径方向外側から囲繞した状態で前記ダイヤフラム部に取り付けられると共に、該ダイヤフラム部の前記弾性変形に伴って前記素材の径方向に移動可能とされ、前記弾性復元変形時に径方向内側に移動させられて前記素材を把持するチャック部と、
を備え、
前記ピストン部材は、
前記ダイヤフラム部によって前記他方側に移動させられると共に、前記一方側に移動させられた時に前記ダイヤフラム部を前記スリーブから離間する方向に弾性変形させるピストン本体筒と、
該ピストン本体筒の他方側に固定され、該ピストン本体筒が他方側に移動させられた時に、前記第1連結筒体に連結される第2連結筒体と、
を備え、
前記第1連結筒体は、前記第2連結筒体との連結時に前記主軸に外嵌されることを特徴とするガイドブッシュ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドブッシュ装置であって、
前記第1連結筒体は、外周面が一方側から他方側に向かうにしたがって漸次拡径する第1テーパ面とされたコレットチャックとされ、
前記第2連結筒体は、内周面が前記第1テーパ面に対応して、一方側から他方側に向かうにしたがって漸次拡径する第2テーパ面とされていることを特徴とするガイドブッシュ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガイドブッシュ装置であって、
前記ピストン部材を前記スリーブの前記一方側に移動させ、前記ダイヤフラム部を前記スリーブから離間する方向に弾性変形させる移動機構を備えていることを特徴とするガイドブッシュ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のガイドブッシュ装置であって、
前記ピストン本体筒と前記ダイヤフラム部との間に、前記ダイヤフラム部を前記素材の前記軸方向に弾性変形させて、前記チャック部の移動量を調整する調整機構が設けられていることを特徴とするガイドブッシュ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のガイドブッシュ装置を備えたことを特徴とする旋盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196722(P2012−196722A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60776(P2011−60776)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】