説明

ガイド部材、これを備えたガイド装置及び建具装置

【課題】簡易な構造でありながらも建具の下端部側をスムーズにガイドし得るガイド部材、これを備えたガイド装置及び建具装置を提供する。
【解決手段】建具幅方向に沿って移動自在に上レール3に支持され、下端部11に下向きに開口するガイド溝31を建具幅方向に沿って設けた建具10の下端部側をガイドするガイド部材20であって、当該ガイド部材は、上方に向けて突出し、前記ガイド溝に挿入されるガイド体21を備え、このガイド体は、ガイド溝の溝幅に対応させた基端ガイド部23と、この基端ガイド部の突出方向先端側に連なるように設けられ、当該ガイド体の先端面21aと前記ガイド溝の溝幅方向両側の傾斜部35,35との接触を回避させるように、少なくとも前記ガイド溝の溝幅方向に沿う形状が先端側に向けて先細り状とされた先端ガイド部22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具の下端部側をガイドするガイド部材、これを備えたガイド装置及び建具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建具幅方向(戸幅方向)に沿って移動自在に上レールに支持されるいわゆる上吊り式の引戸等の建具が知られている。このような上吊り式の建具は、下端部に下向きに開口するガイド溝(走行溝)を建具幅方向に沿って設けており、このガイド溝に床面や下枠等に設置されたガイドピンが挿入され、その下端側のガイドがなされる。
例えば、下記特許文献1では、磁力による吸引によって吊り戸の下端面に形成された走行溝に向けて突出し、該走行溝に挿入されるガイドピンを備えた吊り戸のガイド装置が提案されている。このガイド装置は、磁石を先端に設けた第1ガイドと、この第1ガイドが上方に向けて突出自在に嵌め込まれる筒状をした第2ガイドとによってガイドピンを構成し、これらを伸縮自在に本体に収納した構成とされている。つまり、このガイド装置のガイドピンは、小径の第1ガイドとこれが嵌め込まれる大径の第2ガイドとからなる二段階伸縮構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−225436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなガイド装置においては、ガイド溝の溝幅に対してガイドピンの径が小さ過ぎれば、建具が上レールに沿って移動する際に、建具の下端側が建具厚方向(戸厚方向)に振れてしまうことが考えられ、安定的なガイドが困難となることが考えられる。そのため、ガイドピンの径を、ガイド溝の溝幅寸法よりも僅かに小さい程度の寸法とすることが考えられ、上記のような二段階伸縮構造とされたガイドピンにおいては、第1ガイドの径をガイド溝の溝幅寸法に対応させた寸法とすることが考えられる。上述のように第1ガイドは筒状の第2ガイドに嵌め込まれているため、第1ガイドが磁力によってガイド溝側に向けて吸引される際に、第2ガイドに引っ掛かり、第2ガイドに嵌まり込んだまま本体から突出した状態となることが考えられる。このような場合において、上記のようにガイド溝の溝幅寸法を、第1ガイドの径に対応させた寸法とした場合には、第1ガイドがスムーズにガイド溝に挿入され難くなることが考えられる。
【0005】
そこで、ガイド溝の建具幅方向両端部位、つまり、上レールに沿って移動する建具のガイド溝におけるガイドピンの受入始端側の部位に、第2ガイドへの嵌まり込みを解除させ、第1ガイドのみをガイド溝内に誘導させる嵌まり込み解除部を設けることが考えられる。このような嵌まり込み解除部としては、ガイド溝の建具幅方向両端部位の溝幅方向両側の溝内壁部に、建具幅方向中心側の溝縁部から建具幅方向外端側に向かうに従って溝天面に向けて傾斜する傾斜部をそれぞれに設けた構造とすることが考えられる。
上記特許文献1に記載されたガイド装置によれば、突出状態におけるガイドピンの突出寸法を確保しながらも収納状態においては床面等からの突出を略無くすことができるものではあるが、ガイドピンの構造が複雑化するという問題があった。そのため、簡易な構造とされたガイド部材を採用したいという要望があった。また、ガイド溝に上記のような嵌まり込み解除部としての傾斜部が設けられている場合にも適用でき、建具の下端部側をスムーズにガイドできるガイド部材が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でありながらも建具の下端部側をスムーズにガイドし得るガイド部材、これを備えたガイド装置及び建具装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るガイド部材は、建具幅方向に沿って移動自在に上レールに支持され、下端部に下向きに開口するガイド溝を建具幅方向に沿って設けた建具の下端部側をガイドするガイド部材であって、前記ガイド溝は、建具幅方向両端部位の溝幅方向両側の溝内壁部に、建具幅方向中心側の溝縁部から建具幅方向外端側に向かうに従って溝天面に向けて傾斜する傾斜部をそれぞれに設けた構造とされる一方、当該ガイド部材は、上方に向けて突出し、前記ガイド溝に挿入されるガイド体を備え、このガイド体は、前記ガイド溝の溝幅に対応させた基端ガイド部と、この基端ガイド部の突出方向先端側に連なるように設けられ、当該ガイド体の先端面と前記ガイド溝の溝幅方向両側の傾斜部との接触を回避させるように、少なくとも前記ガイド溝の溝幅方向に沿う形状が先端側に向けて先細り状とされた先端ガイド部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、当該ガイド部材の設置対象に埋め込まれるように配設され、上下に開口する中空部が形成されたケーシングを備えたものとし、前記ガイド体を、前記ケーシングに対して昇降自在とするとともに、このケーシングに設けられた付勢部材によって上方に向けて付勢された構成とし、かつ、下降した状態において、下端が前記ケーシングの中空部の下側開口縁に位置するように下端側部位が前記中空部に収容されるとともに、少なくとも前記先端ガイド部が前記ケーシングの上面から突出する構造とされたものとしてもよい。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るガイド装置は、本発明に係るガイド部材と、建具幅方向に沿って移動自在に上レールに支持される建具の下端部に、建具幅方向に沿って取り付けられるガイド溝部材と、を備え、前記ガイド溝部材には、下向きに開口するガイド溝が建具幅方向に沿って設けられ、このガイド溝の建具幅方向両端部位の溝幅方向両側の溝内壁部には、建具幅方向中心側の溝縁部から建具幅方向外端側に向かうに従って溝天面に向けて傾斜する傾斜部がそれぞれに設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る建具装置は、本発明に係るガイド部材と、建具幅方向に沿って移動自在に上レールに支持され、下端部に下向きに開口するガイド溝を建具幅方向に沿って設けた建具と、を備え、前記ガイド溝は、建具幅方向両端部位の溝幅方向両側の溝内壁部に、建具幅方向中心側の溝縁部から建具幅方向外端側に向かうに従って溝天面に向けて傾斜する傾斜部をそれぞれに設けた構造とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るガイド部材、これを備えたガイド装置及び建具装置は、上述のような構成としたことで、簡易な構造でありながらも建具の下端部側をスムーズにガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)〜(c)は、いずれも本発明の一実施形態に係るガイド部材を備えた建具装置の一例を模式的に示し、(a)は、図2(b)におけるX1方向から見た状態を示す一部破断概略拡大側面図、(b)は、(a)に対応させて同建具装置の別状態を示す一部破断概略拡大側面図、(c)は、図2(b)におけるY−Y線矢視に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図2】(a)、(b)は、いずれも同建具装置を設置した状態を模式的に示し、(a)は、概略正面図、(b)は、(a)におけるZ−Z線矢視に対応させた一部破断概略拡大横断面図である。
【図3】(a)は、同ガイド部材を模式的に示す一部省略概略斜視図、(b)は、同ガイド部材が備えるガイド体が下降した状態を図1(c)に対応させて模式的に示す概略縦断面図、(c)は、図2(a)におけるX2−X2線矢視に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図4】(a)は、図2(a)におけるW部に対応させた一部破断概略拡大斜視図、(b)は、(a)に対応させた一部破断概略底面図である。
【図5】(a)〜(c)は、いずれも同建具装置に適用される他のガイド部材(第2ガイド部材)の一例を模式的に示し、(a)は、一部省略概略斜視図、(b)は、同第2ガイド部材のガイド体が下降した状態を模式的に示す概略側面図、(c)は、図1(a)と略同様の一部破断概略側面図である。
【図6】(a)〜(c)は、いずれも同第2ガイド部材のガイド体の動作例を模式的に示し、図5(c)に対応させて別状態を示す一部破断概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本実施形態に係るガイド部材、これを備えたガイド装置及び建具装置の一例について説明するための概念的な説明図である。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の実施形態では、ガイド部材、これを備えたガイド装置及び建具装置が設置された状態を基準として上下方向等を原則的に説明する。
【0014】
本実施形態に係る建具装置1は、図2(a)に示すように、建具としての引戸10と、この引戸10の下端部11側をガイドするガイド部材20とを備えており、住居等の建物の内壁8に開設された開口部に配設される。
図例では、引戸10を納める袖壁(控え壁)を設け、引戸10を袖壁納めとした例を示している(図2(b)も参照)。また、開口部に、その内周に沿って開口枠(戸枠)としての上枠4、戸先側縦枠5及び戸尻側縦枠6を配設し、袖壁の戸先側端部に、中間縦枠(中方立)7を配設した例を示している(図2(b)も参照)。
【0015】
戸先側縦枠5は、引戸10によって閉塞または開放される出入口の戸先側の枠下地等に固定されて上下方向に沿って配設される。
戸尻側縦枠6は、引戸10が納められる袖壁の基端(戸尻)側の枠下地等に固定されて上下方向に沿って配設される。
これら戸先側縦枠5及び戸尻側縦枠6は、それぞれの上端部の内方側面に、上枠4の長手方向両側端面がそれぞれ当接され、木ねじや釘等の固定止具によって、上枠4にそれぞれ連結固定される。また、これら戸先側縦枠5及び戸尻側縦枠6は、上下方向の適所に固定止具が止着されて枠下地等に対して固定される。
【0016】
中方立7は、上記出入口の戸尻側において、袖壁の戸先側端部(先端部)に設けられた枠下地等に固定されて上下方向に沿って配設される。この中方立7は、その上端部が、上枠4に形成された切欠部に係合し、上枠4乃至は枠下地等に対して固定止具によって連結固定される。また、中方立7の下端部は、床面を形成する床材や床下地材、下枠などに固定止具によって固定される。
上枠4は、長手方向の略中間部に、中方立7の上端部が係合する切欠部を有し、長手方向両端部が一対の縦枠5,6に連結固定され、これら一対の縦枠5,6間に架け渡されるように配設され、枠下地等に固定される。
【0017】
この上枠4の下面には、下方に向けて開口する凹溝が当該上枠4の長手方向の全長に亘って、つまり、対向するように配設された一対の縦枠5,6間に延びるように設けられている。この凹溝には、図3(c)に示すように、上レール3が嵌め込まれるようにして固定されている。
上レール3は、凹溝と同様、上枠4の長手方向の全長に亘って配設されており、図3(c)に示すように、上板部3a及び両側板部3b,3bによって縦断面形状が、下方に向けて開口する略コ字状(略U字状乃至は略C字状)とされている。また、両側板部3b,3bの下縁部には、当該上レール3の幅方向内方側に向けて突出する案内片3c,3cが当該上レール3の長手方向の全長に亘ってそれぞれに設けられている。
【0018】
引戸10は、略矩形平板状とされ、上記戸枠に戸幅(建具幅)方向に沿って移動自在に建て付けられる。この引戸10の上端部13には、上ガイド部材としてのランナー15が設けられている。
ランナー15は、図3(c)に示すように、上レール3の案内片3c,3cに支持されるローラー(転動部)16や引戸10の上端部13に設けられたカップ部に連結固定される取付固定部等を有している。本実施形態では、図2(a)に示すように、引戸10の上端部13の戸幅方向両側端部近傍部位のそれぞれに2個のランナー15,15を設けた例を示している。
このランナー15のローラー16が、上レール3の案内片3c,3cに上レール3の長手方向に沿って転動自在に支持され、これにより、引戸10が戸幅方向に沿って移動自在に上レール3に支持される。つまり、引戸10は、上吊り式とされている。なお、図2(a)において、符号14は、引戸10に設けられた手掛部である。
【0019】
この引戸10の下端部11には、下向きに開口したガイド溝31が戸幅方向に沿って全長に亘って設けられている。本実施形態では、図4に示すように、引戸10の下端部11に、下向きに開口した凹溝12を戸幅方向に沿って全長に亘って設け、この凹溝12にガイド溝31を設けたガイド溝部材30を嵌め込むように取り付けて下端部11にガイド溝31を設けた例を示している。
ガイド溝部材30は、図2に示すように、引戸10の下端部11側をガイドする後記するガイド部材20とによって、本実施形態に係るガイド装置2を構成する。
【0020】
このガイド溝部材30は、図4(a)に示すように、略角柱状の外郭形状とされ、その下面が引戸10の下端面と略同一平面状となるように引戸10の凹溝12に嵌め込まれている。また、このガイド溝部材30は、その下面側に、戸幅方向(当該ガイド溝部材30の長手方向)に沿って全長に亘って下向きに開口したガイド溝31を設けている。
ガイド溝31の長手方向両端部位には、長手方向中心側よりも溝幅を広くした幅広溝部34がそれぞれに設けられている(図2(b)及び図4(b)も参照)。ガイド溝31の長手方向両端部位における溝幅方向両側の溝内壁部33,33には、図4(b)に示すように、長手方向中心側から長手方向外端(引戸10の戸尻または戸先端面)側に向けて徐々に溝幅を拡開させるテーパ部33a,33aがそれぞれに設けられている。幅広溝部34の両側内壁部は、これらテーパ部33a,33aにそれぞれ連なるように設けられている。
【0021】
また、ガイド溝31(図例では、幅広溝部34)は、長手方向両側端において、長手方向外方側に向けて開口するように形成されている。この長手方向両側端の開口が、後記するガイド部材20及び第2ガイド部材40のガイド体やガイドピン等の受入れ口となり、ガイド溝31へのこれらの受入れ始端となる。なお、引戸10の移動態様(スライド態様)や各ガイド部材20,40の構造(マグネット式の二段階伸縮構造の場合など)、これらの設置箇所等によっては、上記長手方向両側端の開口の一方または両方を設けないようにしてもよい。
【0022】
また、このガイド溝31の長手方向両端部位における両側の溝内壁部33,33には、長手方向中心側の溝縁部から長手方向外端側に向かうに従って溝天面32に向けて傾斜する傾斜部35,35がそれぞれに設けられている(図1(c)も参照)。これら傾斜部35,35の傾斜面は、斜め外方(長手方向外端側)かつ下方側に向くように形成されている。
また、これら傾斜部35,35の長手方向外端には、本実施形態では、テーパ部33a,33aの溝天面32側及び溝天面32に連なるように設けられ、斜め外方下方側でかつ溝幅方向中心側に向く誘い傾斜部35a,35aがそれぞれに設けられている。これら誘い傾斜部35a,35aを外端側の基端として、長手方向中心側に向かうに従って溝縁部(ガイド溝部材30の下面、引戸10の下端面)に向けて傾斜し、終端が溝縁部に連なるように両傾斜部35,35が形成されている。
【0023】
つまり、このガイド溝31の両側の溝内壁部33,33は、長手方向両端部位に、長手方向外端側から長手方向中心側に向けて、幅広溝部34の両側内壁部、テーパ部33a,33a、傾斜部35,35をこの順に設けた構成とされている。
ガイド溝31の長手方向中心側部位の溝幅寸法(中心溝幅寸法)は、長手方向に沿って略同一寸法とされている。
また、傾斜部35,35が設けられた部位では、これら傾斜部35,35の形成によって、両溝内壁部33,33間の寸法(溝幅寸法)は、溝天面32側の溝幅寸法が上記中心溝幅寸法と略同一寸法とされる。また、傾斜面を境にその下方側の溝幅寸法(傾斜面下方側溝幅寸法)が溝天面32側の溝幅寸法(上記中心溝幅寸法)よりも大きく、幅広溝部34の溝幅寸法よりも小さい寸法とされる。これら各溝幅寸法は、後記する各ガイド部材20,40のガイド体やガイドピンの各部等の幅寸法に応じた寸法とされる。
また。ガイド溝31のガイド溝部材30の下面から溝天面32までの寸法(溝深さ寸法)は、本実施形態では、長手方向の全長に亘って略同一寸法としている。この溝深さ寸法は、後記する各ガイド部材20,40のガイド体やガイドピン等が挿入されて、引戸10の下端部11側がガイドされ得るよう、適宜設定される。
【0024】
また、ガイド溝部材30の長手方向両端部位には、図1(c)に示すように、磁石36が設けられている。この磁石36は、ガイド溝31の長手方向にN極とS極とが並ぶように配設されており、長手方向外端側に一方極(例えば、N極)が配置され、長手方向中心側に他方極(例えば、S極)が配置されるように配設されている。また、ガイド溝部材30の長手方向中心側には、磁石36に隣接させて鉄板等からなる磁性板38が長手方向に沿って配設されている。
本実施形態では、ガイド溝部材30を、長手方向中心側部材と、この中心側部材の長手方向両端側に連結固定された両端部材とを組み合わせた構成とし、上記した幅広溝部34や傾斜部35,35、磁石36等を、両端部材にそれぞれ設けた例を示している。また、上記した磁性板38を中心側部材に設けた例を示している。
【0025】
なお、図1(c)及び図4では、ガイド溝部材30の長手方向両端部位の一方側(図示左方側)のみを図示しているが、他方側も同様の構成であり、該他方側にも上記同様の端部材が設けられている。
また、図1(c)において、符号37は、端部材に設けられた磁石収容凹所を閉塞する蓋37である。また、上記構成とされたガイド溝部材30は、ねじ等の固定止具や、接着剤等によって引戸10の凹溝12に固定するようにしてもよい。また、このガイド溝部材30は、合成樹脂系材料等から形成されたものとしてもよい。また、上記のようにガイド溝部材30を中心側部材と両端部材とを組み合わせた構成とせずに、一体的にガイド溝部材30を形成するようにしてもよい。
【0026】
本実施形態では、上記構成とされたガイド溝部材30を設けた引戸10の下端部11側をガイドするガイド部材として、図2に示すように、後記する本実施形態に係るガイド部材20に加えて、2つの第2ガイド部材40,40を更に設けた例を示している。これらガイド部材20及び第2ガイド部材40,40は、引戸10の下方側に配設され、引戸10の移動軌跡に沿って間隔を空けて配設される。図例では、ガイド部材20を、引戸10の移動軌跡の略中央部位に設け、2つの第2ガイド部材40,40を、引戸10の移動軌跡の両側端近傍部位に設けた例を示している。図例では、一方の第2ガイド部材40を戸先側縦枠5近傍部位、他方の第2ガイド部材40を戸尻側縦枠6近傍部位に設けた例を示している。なお、これら第2ガイド部材40,40の設置箇所は、図例の箇所に限られず、引戸10の移動軌跡の中央側に寄った位置にそれぞれを設置するようにしてもよい。
【0027】
まず、本実施形態に係る建具装置1に適用される他のガイド部材としての第2ガイド部材40の構成について、図5及び図6に基づいて説明する。
第2ガイド部材40は、図5に示すように、二段階伸縮構造とされたマグネット式のガイド部材とされている。この第2ガイド部材40は、二段階に伸縮するガイドピン41と、このガイドピン41を収容するガイドケース45と、このガイドケース45を収容する外側ケース49とを備えている。なお、図5(a)では、外側ケース49の図示を省略している。
ガイドピン41は、柱形状(図例では円柱形状)とされた第1ピン42と、この第1ピン42が上方に向けて出没自在に嵌め込まれ、上下に開口する筒形状(図例では円筒形状)とされた第2ピン44とを備えている。これら第1ピン42及び第2ピン44は、同心状に設けられている。
【0028】
第1ピン42のガイド溝31の溝幅方向に沿う幅寸法(径)は、図5(c)に示すように、ガイド溝31の上記中心溝幅寸法に対応させた寸法とされ、該中心溝幅寸法よりも僅かに小さい寸法とされている。また、第2ピン44から突出した状態における第1ピン42の突出寸法は、ガイド溝31の溝深さ寸法よりも少なくとも大きい寸法とされている。
第2ピン44のガイド溝31の溝幅方向に沿う幅寸法(径)は、図5(c)に示すように、ガイド溝31の上記中心溝幅寸法よりも大きい寸法とされ、幅広溝部43の溝幅寸法よりも小さい寸法とされている。また、第2ピン44の径は、上記した傾斜部35,35の形成によって溝天面32側よりも幅広とされた上記傾斜面下方側溝幅寸法に対応させた寸法とされ、上記傾斜面下方側溝幅寸法よりも僅かに小さい寸法とされている。この第2ピン44のガイドケース45から突出した状態における突出寸法は、引戸10と床面乃至はガイドケース45上面とのクリアランス等に応じて適宜設定するようにしてもよい。
【0029】
第1ピン42の上端部には、図5(b)、(c)に示すように、磁石43が埋め込まれるように設けられている。この磁石43は、N極とS極とが上下に並ぶように配設され、上面側が、ガイド溝部材30の磁石36の長手方向外端側と同極(例えば、N極)となるように配設されている。また、第1ピン42の下端外周部には、径方向にそれぞれ突出する一対の係合突起42a,42aが設けられている。
第2ピン44の内周部には、第1ピン42の一対の係合突起42a,42aにそれぞれ係合する一対の係合凹溝44a,44aが下端から上端のやや下方位置まで上下方向に沿って設けられている。この係合凹溝44a,44aに第1ピン42の係合突起42a,42aが上下に昇降自在に案内され、また、この係合凹溝44a,44aの上端天面部によって、第1ピン42の係合突起42a,42aの上方側への移動が規制される。また、第2ピン44の下端外周部には、径方向にそれぞれ突出する一対の係合突起44b,44bが設けられている。
【0030】
ガイドケース45には、上下に開口する中空部が設けられ、この中空部にガイドピン41が伸縮自在に収容される。この中空部の内周部には、第2ピン44の一対の係合突起44b,44bにそれぞれ係合する一対の係合凹溝45b,45bが下端から上端のやや下方位置まで上下方向に沿って設けられている。この係合凹溝45b,45bに第2ピン44の係合突起44b,44bが上下に昇降自在に案内され、また、この係合凹溝45b,45bの上端天面部によって、第2ピン44の係合突起44b,44bの上方側への移動が規制される。
【0031】
また、このガイドケース45の中空部には、下降(収縮)したガイドピン41の下方側への移動を規制する抜止ピン等の抜止部が設けられている。
また、このガイドケース45の上端部には、鍔部が設けられ、下端外周部には、周方向に沿って係合溝45aが設けられている。
外側ケース49は、上下に開口する筒形状とされ、上端部に鍔部、下端内周部にガイドケース45の係合溝45aに係合する突起を適所に設けた構造とされている。また、この外側ケース49の外周には、設置対象としての床9の床材等に食い込む複数の突起が設けられている。
【0032】
この第2ガイド部材40は、設置対象としての床9に埋め込むようにして外側ケース49を配設し、この外側ケース49にガイドピン41を設けたガイドケース45を嵌め込むように収容させ、床9に設置される。ガイドピン41が収縮された状態では、図5(b)に示すように、ガイドケース45の上面からガイドピン41が突出せず、ガイドピン41の全体がガイドケース45内に収容される。一方、ガイドピン41が伸長された状態では、図5(c)に示すように、ガイドケース45の上面から第2ピン44及び第1ピン42が上方に向けて突出する。このような二段階伸縮構造とすることで、ガイドピン41の伸長状態における突出寸法を確保しながらも収縮状態における上下寸法を比較的に小さくすることができる。これにより、収縮状態のガイドピン41を収容するガイドケース45及び外側ケース49の上下寸法を比較的に小さくできる。この結果、例えば、床スラブ上に直接的に施工されるいわゆる直貼りフローリングのような比較的に薄い床材を第2ガイド部材40の設置対象とした場合にも、比較的に容易に埋め込むように設置でき、好適なものとなる。
【0033】
上記構成とされた第2ガイド部材40は、引戸10の開閉等による一方向への移動を伴って引戸10のガイド溝部材30の一端部に設けられた磁石36の中心側の極(S極)が当該第2ガイド部材40のガイドピン41の上方に来れば、互いの磁力により吸引される。これにより、図5(c)に示すように、ガイドピン41が伸長されて床9から大きく突出し、ガイド溝31にガイドピン41の第1ピン42が挿入される。また、引戸10の更なる一方向への移動を伴ってガイド溝部材30の磁性板38に吸引され、ガイドピン41の突出状態が維持される。このように第1ピン42がガイド溝31に挿入されて引戸10の下端部11側が当該第2ガイド部材40のガイドピン41によって移動方向に沿ってガイドされる。また、引戸10の更なる一方向への移動を伴ってガイド溝部材30の他端部に設けられた磁石36の外端側の極(N極)が当該第2ガイド部材40のガイドピン41の上方に来れば、互いの反発力によってガイドピン41が下降して収縮し、ガイドケース45に収容される(図5(b)参照)。
【0034】
ところで、図5(c)では、伸長されたガイドピン41の先端面が引戸10の下端部11に設けられたガイド溝31の溝天面32に近接乃至は当接(摺接)した状態を示している。当該第2ガイド部材40の設置対象としての床9の不陸や引戸10の建て付け状態等によっては、図6に示すように、床面と引戸10の下端面とが比較的に近接する場合がある。このような場合において、引戸10のガイド溝部材30の一端部に設けられた磁石36の中心側の極(S極)に第1ピン42が吸引される際に、図6(a)に示すように、第2ピン44に引っ掛かり、第2ピン44に嵌まり込んだまま突出した状態となる場合がある。このような場合にも本実施形態では、ガイド溝31に傾斜部35,35を設けているので、第1ピン42の第2ピン44への嵌まり込みをスムーズに解除させることができる。
【0035】
つまり、図6(b)に示すように、ガイド溝31の長手方向外端側において吸引されたガイドピン41に、ガイド溝31の傾斜部35,35の部位が至れば、両側の傾斜部35,35によって第2ピン44が落とされるようにして下降させられる。これにより、第1ピン42の第2ピン44への嵌まり込みが解除され、図6(c)に示すように、第1ピン42のみがスムーズにガイド溝31に挿入され、引戸10の下端部11側をスムーズにガイドすることができる。つまりは、ガイド溝31に設けた傾斜部35,35は、マグネット式の二段階伸縮構造とされた第2ガイド部材40の第1ピン42の第2ピン44への嵌まり込みを解除させ、第1ピン42のみをガイド溝31内に誘導させる嵌まり込み解除部として機能する。
なお、当該第2ガイド部材40の各部は、各部の機能に応じて合成樹脂系材料や金属系材料等から形成されたものとしてもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係る建具装置1及びガイド装置2が備えるガイド部材20の構成について説明する。
本実施形態では、図2に示すように、上レール3(図3(c)参照)に沿って戸幅方向に移動自在とされた引戸10の移動軌跡の略中央部位にガイド部材20を配設した例を示している。図例では、引戸10の開閉がなされる際に、ガイド部材20の上方側に、常時、引戸10が位置するような位置にガイド部材20を配設した例を示している。また、図例では、引戸10が上記出入口を閉塞した状態でガイド溝31の戸尻側の幅広溝部34の下方側に位置し、引戸10が上記出入口を開放した状態でガイド溝31の戸先側の幅広溝部34の下方側に位置するようにガイド部材20を配設した例を示している。
【0037】
ガイド部材20は、図3(a)、(b)に示すように、引戸10の下端部11に設けられたガイド溝31に挿入される上方に突出したガイド体21と、床9に埋め込まれるように配設されるインナーケーシング25及びアウターケーシング29とを備えている。なお、図3(a)では、アウターケーシング29の図示を省略している。
ガイド体21は、外郭形状が略柱形状(図例では略円柱形状)とされており、突出方向先端側の先端ガイド部22と、この先端ガイド部22の下端側に連なるように設けられた基端ガイド部23とを備えている。
【0038】
基端ガイド部23のガイド溝31の溝幅方向に沿う幅寸法(径)は、図1(a)に示すように、ガイド溝31の上記中心側溝幅寸法に対応させた寸法とされ、該中心溝幅寸法よりも僅かに小さい寸法とされている。
先端ガイド部22は、引戸10の開閉がなされる際に、当該ガイド体21の先端面21aとガイド溝部材30のガイド溝31の両側の傾斜部35,35との接触を回避させるように、先端側に向けて先細り状とされている。本実施形態では、図例のように略円柱形状とされたガイド体21の先端部に、先端(上端)が下端よりも小径の円錐台形状の先端ガイド部22を設けた構成としている。この先端ガイド部22の下端の径は、基端ガイド部23の径と同寸法とされている。
【0039】
この先端ガイド部22は、図1(b)に示すように、ガイド体21に対してガイド溝31が戸厚方向にズレて移動してくる際に、ガイド体21の先端面21aが傾斜部35に接触せずに当該先端ガイド部22の側周面に傾斜部35が接触するように形成されている。換言すれば、ガイド溝31が戸厚方向にズレて移動してくる際に先端ガイド部22の側周面に傾斜部35が接触することで、互いの案内作用により当該ガイド体21に対するガイド溝31の戸厚方向へのズレを正規の状態(ガイド溝31の溝幅中心とガイド体21の中心とが略一致した状態)に戻すことができる。
【0040】
この先端ガイド部22の上下端の径差や上下寸法等は、上記のようにガイド体21の先端面21aと傾斜部35との接触回避が可能なように、ガイド溝31の溝幅及び両側の傾斜部35,35の形状(溝幅方向に沿う幅寸法、傾斜角度等)に応じて設定するようにすればよい。また、先端ガイド部22と基端ガイド部23とを合わせた上下寸法は、ガイド溝31の溝深さ寸法よりも少なくとも大きい寸法とされている。本実施形態では、先端ガイド部22と基端ガイド部23とを合わせた上下寸法を、上記した第2ガイド部材40の第2ピン44から突出した状態における第1ピン42の突出寸法と略同寸法としている。
【0041】
また、ガイド体21は、本実施形態では、インナーケーシング25に対して昇降自在とされるとともに、インナーケーシング25に設けられた付勢部材27によって上方に向けて付勢されている。本実施形態では、図3(a)、(b)に示すように、ガイド体21の基端ガイド部23の下端側に、インナーケーシング25に対して出没自在とされた下端側部24を連なるように設けている。この下端側部24の径は、本実施形態では、基端ガイド部23の径よりも大きい寸法とされ、上述の第2ガイド部材40の第2ピン44の径と略同寸法とされている。
このガイド体21の下端外周部には、径方向にそれぞれ突出する一対の係合突起21b,21bが設けられている。
【0042】
インナーケーシング25は、本実施形態では、上述の第2ガイド部材40のガイドケース45と同寸同形状とされており、上下に開口する中空部26を設けている。この中空部26の内周部には、ガイド体21の一対の係合突起21b,21bにそれぞれ係合する一対の係合凹溝26b,26bが下端から上端のやや下方位置まで上下方向に沿って設けられている。この係合凹溝26b,26bにガイド体21の係合突起21b,21bが上下に昇降自在に案内され、また、この係合凹溝26b,26bの上端天面部によって、ガイド体21の係合突起21b,21bの上方側への移動が規制される。
【0043】
また、ガイド体21には、図1(c)及び図3(b)に示すように、下方側に向けて開口するばね収容凹所21cが設けられている。付勢部材27は、本実施形態では、このばね収容凹所21cに収容される圧縮コイルばね等からなるばね部材27とされている。このばね部材27は、上端がばね収容凹所21cの天面に当接されて上方側への移動が規制され、下端がインナーケーシング25に設けられた抜止ピン等の抜止部28に当接乃至は連結されて下方側への移動が規制されている。ガイド体21には、抜止部28を受け入れる切欠部21dが設けられている。ガイド体21は、このばね部材27によって上方に突出する方向に向けて付勢され、また、圧縮状態におけるばね部材27及び抜止部28によって下方側への移動が規制される。
このように、ガイド体21にばね収容凹所21cを設け、このばね収容凹所21cにばね部材27を収容する構造とすることで、ガイド体21を付勢する付勢手段を簡易な構造で実現でき、比較的に小型化を図ることができる。なお、ガイド体21を上方に向けて付勢する付勢手段としては、上記構造とされたものに限られず、板ばね等の他のばね部材やゴム等の弾性部材を付勢部材として採用し、それに応じた係合部をガイド体21に設けた構造としてもよい。
【0044】
このガイド体21は、本実施形態では、図1(a)、(b)に示すように、ばね部材27によって付勢されて、インナーケーシング25に対して上昇(突出)した状態では比較的に大きく突出する。図1(a)では、ガイド体21がインナーケーシング25に対して略最大限突出した状態を示しており、この状態では、ガイド体21の先端面21aが引戸10の下端部11に設けられたガイド溝31の溝天面32に近接乃至は当接(摺接)した状態となる。また、この状態におけるガイド体21のインナーケーシング25からの突出寸法は、上述の第2ガイド部材40の伸長されたガイドピン41の突出寸法と略同寸法の突出寸法とされている。一方、図1(b)では、図1(a)と比べて、床面と引戸10の下端面とが比較的に近接した状態を示している。この状態では、ガイド体21の先端面21aが引戸10の下端部11に設けられたガイド溝31の溝天面32に当接(摺接)し、この溝天面32によって、ばね部材27の付勢によるガイド体21の上方側への移動が規制される。
【0045】
また、ガイド体21は、図3(b)に示すように、下降した状態において、下端21eがインナーケーシング25の下側開口縁26aと上下で同位置、つまり、インナーケーシング25の下面と略同一平面状となるように下端側部24が中空部26に収容される。また、ガイド体21は、この下降した状態において、少なくとも先端ガイド部22がインナーケーシング25の上面25aから上方に向けて突出するように形成されている。図例では、この下降した状態において、ガイド体21の下端側部24の略全体が中空部26に収容され、基端ガイド部23及び先端ガイド部22がインナーケーシング25の上面25aから上方に向けて突出する構造とされたガイド体21を例示している。
【0046】
なお、インナーケーシング25は、上述の第2ガイド部材40のガイドケース45と同様、上端には鍔部が設けられ、下端外周部には周方向に沿って係合溝25bが設けられている。
また、アウターケーシング29は、本実施形態では、上述の第2ガイド部材40の外側ケース49と同寸同形状とされている。このアウターケーシング29は、上記同様、上下に開口する筒形状とされ、上端部に鍔部、下端内周部にインナーケーシング25の係合溝25bに係合する突起を適所に設け、外周に設置対象としての床9の床材等に食い込む複数の突起を設けた構造とされている。
このガイド部材20は、上述の第2ガイド部材40と同様、設置対象としての床9に埋め込むようにしてアウターケーシング29を配設し、このアウターケーシング29にガイド体21を設けたインナーケーシング25を嵌め込むように収容させ、床9に設置される。
なお、当該ガイド部材20の各部は、各部の機能に応じて合成樹脂系材料や金属系材料等から形成されたものとしてもよい。
【0047】
上記構成とされたガイド部材20、これを備えたガイド装置2及び建具装置1によれば、簡易な構造でありながらも引戸10の下端部11側をスムーズにガイドすることができる。
つまり、ガイド部材20のガイド体21の先端側に、ガイド体21の先端面21aとガイド溝31の両側の傾斜部35,35との接触を回避させるように、先細り状とされた先端ガイド部22を設けている。従って、引戸10の移動を伴って、ガイド溝31に対して当該ガイド体21が相対的に移動する際に、ガイド体21の先端面21aがガイド溝31の傾斜部35に接触、摺接すること等に起因する引戸10の突き上げやガイド溝31からのガイド体21の脱離(脱線)等を抑制することができる。つまり、このような先端ガイド部22を設けない構造とした場合において、ガイド体に対してガイド溝31が戸厚方向にズレて移動してくる際に、ガイド体の先端面が傾斜部35に接触、摺接すれば、ガイド溝31の傾斜部35の傾斜面に沿ってガイド体が移動することが考えられる。このような場合には、ガイド体がガイド溝31にスムーズに挿入されずに引戸10の下端面に沿って移動したり、引戸10の戸厚方向に外れてしまったりすることも考えられるが、本実施形態に係るガイド部材20によれば、このような問題を抑制することができる。この結果、引戸10の下端部11側をスムーズにガイドすることができる。
【0048】
また、ガイド部材20のガイド体21は、上方に向けて突出し、ガイド溝31に挿入される基端ガイド部23と先端ガイド部22とを連なるように設けた構造とでき、多段階伸縮構造としたり、磁石を設けたりする必要がなく、簡易な構造とすることができる。
つまりは、本実施形態に係るガイド部材20によれば、上記のようにマグネット式の二段階伸縮構造とされた第2ガイド部材40の嵌まり込み解除のために特殊形状としたガイド溝31を設けたガイド溝部材30乃至は引戸10に簡易な構造で適用することができる。この結果、例えば、マグネット式の二段階伸縮構造とされた第2ガイド部材40を全ての箇所(図例では三箇所)に設ける場合と比べて低コスト化を図ることができる。または、第2ガイド部材40を設けない態様とすることもできる。このような態様によっても、ガイド溝部材30乃至は引戸10に、特殊形状とされたガイド溝31が設けられている場合にも適用が可能となり汎用性の高いガイド部材20となる。
【0049】
さらに、本実施形態では、ガイド部材20のガイド体21を、各ケーシング25,29に対して昇降自在とするとともに、インナーケーシング25に設けられたばね部材27によって上方に向けて付勢された構造としている。従って、ガイド体21を固定的に設けた場合と比べて、ガイド部材20が設置される設置対象(床)9の不陸や、引戸10の建て付け誤差等に起因するガイド体21と引戸10の下端側のガイド溝31との係合不足やガイド体21による引戸10の突き上げ等を抑制することができる。つまり、図1(b)に示すように、ガイド部材20の設置対象としての床9の不陸や引戸10の建て付け状態等によって床面と引戸10の下端面とが比較的に近接する場合にも、引戸10の下端部11側を安定的にガイドすることができる。
【0050】
さらにまた、本実施形態では、ガイド体21が昇降自在に支持されるインナーケーシング25に、上下に開口する中空部26を設けた構造としている。また、ガイド体21が下降した状態において、その下端21eがインナーケーシング25の中空部26の下側開口縁26aに位置するように下端側部24が中空部26に収容され、少なくとも先端ガイド部22がインナーケーシング25の上面25aから突出する構造としている。従って、上昇(突出)した状態におけるガイド体21のインナーケーシング25の上面25aからの突出寸法を比較的に大きくすることが可能でありながらも、設置対象としての床9に埋め込まれるように配設されるインナーケーシング25の上下寸法を比較的に小さくすることができる。これにより、上記第2ガイド部材40と同様、例えば、床スラブ上に直接的に施工されるいわゆる直貼りフローリングのような比較的に薄い床材を設置対象とした場合にも、比較的に容易に埋め込むように設置でき、好適なものとなる。なお、本実施形態では、ガイド体21が下降した状態において、先端ガイド部22及び基端ガイド部23がインナーケーシング25の上面25aから突出する構造とした例を示しているが、このような態様に限られない。ガイド体21が下降した状態において、例えば、先端ガイド部22のみまたは先端ガイド部22に加えて基端ガイド部23の一部のみが上面25aから突出する構造としてもよく、さらに基端ガイド部23の下端側の下端側部24の一部が上面25aから突出する構造としてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、ガイド部材20の各ケーシング25,29を、第2ガイド部材40の各ケース45,49と同寸同形状のものを採用している。従って、本実施形態に係るガイド部材20の各ケーシング25,29と、従来のマグネット式の二段階伸縮構造とされた第2ガイド部材40の各ケース45,49とを共用することもできる。なお、ガイド部材20の各ケーシング25,29を、第2ガイド部材40の各ケース45,49と同寸同形状とせずに、異なる形状とされたものを採用するようにしてもよい。例えば、図例では、ガイド体21の下端側部24を基端ガイド部23よりも大径とした例を示しているが、基端ガイド部23と同径とし、これに応じた中空部をインナーケーシング25に設けた構造としてもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、ガイド部材20のガイド体21を、略円柱形状とした例を示しているが、略多角柱形状としてもよく、この場合は、先端ガイド部22を、多角錐台形状としてもよい。または、ガイド体21を、ガイド溝31の長手方向に沿って長尺乃至は長径の平面視して略矩形状乃至は略楕円形状とされたものとしてもよい。
また、本実施形態では、先端ガイド部22を略円錐台形状とした例を示しているが、少なくともガイド溝31の溝幅方向に沿う断面視乃至は側面視した形状が先端側に向けて先細り状とされたものとすればよい。
【0053】
さらに、本実施形態では、インナーケーシング25に、上下に開口する中空部26を設け、ガイド体21が下降した状態において、その下端21eがインナーケーシング25の中空部26の下側開口縁26aに位置するように下端側部24が中空部26に収容され、少なくとも先端ガイド部22がインナーケーシング25の上面25aから突出する構造とした例を示しているが、このような態様に限られない。ガイド体21が下降した状態において、その下端21eがインナーケーシング25の中空部26の下側開口縁26aよりも上方位置となるものとしてもよく、ガイド体21の全体が中空部26に収容されるものとしてもよい。つまりは、ガイド部材20の設置対象に埋め込まれるように配設されるケーシング25を備えたものとし、ガイド体21を、ケーシング25に対して昇降自在とするとともに、このケーシング25に設けられた付勢部材27によって上方に向けて付勢されたものとしてもよい。このような態様によっても、ガイド体21と引戸10の下端側のガイド溝31との係合不足やガイド体21による引戸10の突き上げ等を抑制することができる。
【0054】
さらには、ガイド体21を付勢部材27によって付勢し、昇降自在とした態様に代えて、設置対象に設置されるガイド部材20の本体に対してガイド体20を固定的に設ける態様としてもよい。このような態様によっても、先端ガイド部22を設けることで、簡易な構造でありながらも引戸10の下端部11側を比較的にスムーズにガイドすることはできる。
また、本実施形態では、平面視して略円形状とされたインナーケーシング25に対してガイド体21を同心状に設けた例を示しているが、ガイド体21をインナーケーシング25に対して偏心状に設けるようにしてもよい。この場合、インナーケーシング25及びアウターケーシング29に、アウターケーシング29に対するインナーケーシング25の固定位置を周方向に多段階的乃至は無段階的に調整し得る位置調整手段を設けるようにしてもよい。例えば、周方向に多段階的乃至は無段階的に互いに係止する係止部を各ケーシング25,29に設けるようにしてもよい。なお、第2ガイド部材40のガイドピン41も同様、ガイドケース45に対して偏心状に設け、各ケースに上記同様の位置調整手段を設けるようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、ガイド溝部材30のガイド溝31の長手方向両端部位に、ガイド体21及びガイドピン41の誘いとしての幅広溝部34及びこれに連なるテーパ部33aを設けた例を示しているが、幅広溝部34を設けないようにしてもよく、またはこれら両方を設けないようにしてもよい。さらには、本実施形態では、ガイド溝31の溝深さ寸法をガイド溝31の長手方向全長に亘って略同一寸法とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、長手方向両端部位の溝深さ寸法を、長手方向中心側から長手方向外端側に向けて徐々に深くなる(溝天面32が高くなる)寸法としてもよい。これによれば、このガイド溝の長手方向両端部位を、突出状態とされたガイド部材20のガイド体21の誘いとして機能させることもできる。
さらに、本実施形態では、引戸10の下端部11に凹溝12を設け、この凹溝12にガイド溝31を設けたガイド溝部材30を嵌め込むように取り付けて引戸10の下端部11にガイド溝31を設けた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、引戸10の下端部11に一体的に上記形状のガイド溝31を設けた態様としてもよい。この場合は、必要に応じて、磁石や磁性板等を添設乃至は埋め込むようにしてもよい。
【0056】
さらに、上記した例では、袖壁納めとされた一枚からなる片引き式の引戸10の下端部11側をガイドするガイド装置2乃至はガイド部材20を例示しているが、このような態様に限られない。例えば、戸袋納めやいわゆるアウトセット納め、引き違い、引き分け(両引き)等、引戸10の納め態様やスライド態様、枚数に応じて、適宜の箇所にガイド部材20を配設するようにしてもよい。この場合、ガイド部材20のガイド体21は、上方に向けて突出した状態とされるため、上記同様、常時、上方側に引戸10が存在する部位に配設することが好ましく採用されるが、常時は上方側に引戸10が存在しない部位に配設するようにしてもよい。
また、建具としては、引戸10に限られず、間仕切壁(間仕切パネル)等としてもよい。
さらに、上記した例では、上レール3を下向きに開口し、両側板部3b,3bに、ランナー15のローラー16を案内する案内片3c,3cを連成したものとしているが、このような態様に限られない。例えば、上レールは、ランナーの形状や構造に応じて、略L字状とされたものや、横向きに開口した略コ字状とされたものとしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 建具装置
2 ガイド装置
3 上レール
9 床(設置対象)
10 引戸(建具)
11 下端部
20 ガイド部材
21 ガイド体
21a 先端面
21e 下端
22 先端ガイド部
23 基端ガイド部
24 下端側部(下端側部位)
25 インナーケーシング(ケーシング)
25a 上面
26 中空部
26a 下側開口縁
27 ばね部材(付勢部材)
30 ガイド溝部材
31 ガイド溝
32 溝天面
33 溝内壁部
35 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具幅方向に沿って移動自在に上レールに支持され、下端部に下向きに開口するガイド溝を建具幅方向に沿って設けた建具の下端部側をガイドするガイド部材であって、
前記ガイド溝は、建具幅方向両端部位の溝幅方向両側の溝内壁部に、建具幅方向中心側の溝縁部から建具幅方向外端側に向かうに従って溝天面に向けて傾斜する傾斜部をそれぞれに設けた構造とされる一方、
当該ガイド部材は、上方に向けて突出し、前記ガイド溝に挿入されるガイド体を備え、このガイド体は、前記ガイド溝の溝幅に対応させた基端ガイド部と、この基端ガイド部の突出方向先端側に連なるように設けられ、当該ガイド体の先端面と前記ガイド溝の溝幅方向両側の傾斜部との接触を回避させるように、少なくとも前記ガイド溝の溝幅方向に沿う形状が先端側に向けて先細り状とされた先端ガイド部とを備えていることを特徴とするガイド部材。
【請求項2】
請求項1において、
当該ガイド部材の設置対象に埋め込まれるように配設され、上下に開口する中空部が形成されたケーシングを備えており、
前記ガイド体は、前記ケーシングに対して昇降自在とされるとともに、このケーシングに設けられた付勢部材によって上方に向けて付勢されており、かつ、下降した状態において、下端が前記ケーシングの中空部の下側開口縁に位置するように下端側部位が前記中空部に収容されるとともに、少なくとも前記先端ガイド部が前記ケーシングの上面から突出する構造とされていることを特徴とするガイド部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガイド部材と、
建具幅方向に沿って移動自在に上レールに支持される建具の下端部に、建具幅方向に沿って取り付けられるガイド溝部材と、を備え、
前記ガイド溝部材には、下向きに開口するガイド溝が建具幅方向に沿って設けられ、このガイド溝の建具幅方向両端部位の溝幅方向両側の溝内壁部には、建具幅方向中心側の溝縁部から建具幅方向外端側に向かうに従って溝天面に向けて傾斜する傾斜部がそれぞれに設けられていることを特徴とするガイド装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のガイド部材と、
建具幅方向に沿って移動自在に上レールに支持され、下端部に下向きに開口するガイド溝を建具幅方向に沿って設けた建具と、を備え、
前記ガイド溝は、建具幅方向両端部位の溝幅方向両側の溝内壁部に、建具幅方向中心側の溝縁部から建具幅方向外端側に向かうに従って溝天面に向けて傾斜する傾斜部をそれぞれに設けた構造とされていることを特徴とする建具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2257(P2013−2257A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138065(P2011−138065)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000113779)マツ六株式会社 (68)
【Fターム(参考)】