説明

ガスエンジン用ミキサ

【課題】複数気筒ガスエンジンの各気筒にガス燃料の混合気を分配して供給するミキサについて、コストの高騰及び配置スペースの増大化を伴うことなく、ガス燃料の混合気を各気筒に精度高く供給できるようにする。
【解決手段】燃料供給用のメインノズル30,40が各々露出して開口している複数の吸気通路3,4を備え、レギュレータ7から送出されたガス燃料の混合気を、複数気筒を有するガスエンジンの各気筒に分配して供給するための複数の燃料供給系統を備えているガスエンジン用のミキサ1において、異なる気筒間の吸気脈動で生じる圧力干渉を防止するための逆止弁35,45が、各燃料供給系統に各々設けられていることを特徴とするものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジン用ミキサに関し、殊に、多気筒ガスエンジンの各気筒にガス燃料の混合機を分配して供給するためのガスエンジン用ミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒ガスエンジンに対し1つのミキサで2つ以上の気筒にガス燃料を供給するガス燃料供給システムにおいて、1ボア1ベンチュリのミキサや2ボア1ベンチュリのミキサでは、各気筒へのガス燃料の分配性能が低くなりやすいという欠点がある。
【0003】
これに対し、2ボア2ベンチュリのミキサでは、ガス燃料の分配性能は向上するものの、ガスエンジンの気筒間で生じる吸気干渉のために1つのレギュレータでは対応できないことから、2つのレギュレータを配設することが必要となる。従って、2つのレギュレータを使用することによりコスト面で不利になることに加え、そのためのスペースを余分に要してエンジンルームにおける配置の自由度も損なうことに繋がる。
【0004】
そこで、図2に示すようなガス燃料供給システムが特開2003−28007号公報に提案されている。このガス燃料供給システムに配置したミキサ2は、2ボア2ベンチュリ式のものであるが、単一のレギュレータ7から導入したガス燃料を一旦貯めるサージタンク21を備えている点を特徴としている。
【0005】
そして、そのサージタンク21内に、一方の吸気通路3内に突出して開口するメインノズル32と他方の吸気通路4内に突出して開口するメインノズル42の各基端側が開口しており、各メインノズル32,42を通過した吸気脈動を所定の容積を有するサージタンク21内で減衰させるものである。
【0006】
このような構成のミキサ2を採用したことにより、ガスエンジンの気筒間でタイミングの異なる吸気脈動による圧力干渉の影響を減少させることが可能となる。しかしながら、そのサージタンク21にはある程度の容積が必要であるため、ミキサ2全体が嵩張って大型化してしまい、エンジンルーム内における配置の自由度を損なうことに繋がってしまう。
【0007】
また、吸気脈動による圧力干渉をサージタンク21内で減衰させるとはいっても、両吸気通路3,4がメインノズル32,42で連通している以上、圧力干渉防止作用にも限界があるため、総ての気筒にガス燃料の混合気を精度高く供給することは困難である。
【特許文献1】特開2003−28007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、複数気筒ガスエンジンの各気筒にガス燃料の混合気を分配して供給するミキサについて、コストの高騰及び配置スペースの増大化を伴うことなく、ガス燃料の混合気を各気筒に精度高く供給できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、燃料供給ノズルの先端がそれぞれ露出して開口している複数の吸気通路を備え、レギュレータで調圧され送出されたガス燃料の混合気を、複数気筒を有するガスエンジンの各気筒に分配して供給するための複数の燃料供給系統を備えているミキサにおいて、異なる気筒間の吸気脈動で生じる圧力干渉を防止するための逆止弁が、各燃料供給系統にそれぞれ設けることとした。
【0010】
このように、複数の燃料供給系統を有するミキサの各燃料供給系統に逆止弁を設けただけの簡易な構成により、所定の気筒にガス燃料を供給するミキサの燃料供給系統において、ミキサ全体の大型化を伴うことなく他の気筒側の吸気脈動による圧力干渉を逆止弁の部分で閉止することができる。
【0011】
また、このガスエンジン用ミキサは、2つの燃料供給系統を有してガスエンジンの2つの気筒に各々ガス燃料を供給するものとして、且つ、2ボア2ベンチュリ式のものとすることにより、簡易な構成で高い燃料分配性能を発揮可能なものにすることができる。
【0012】
さらに、上述したガスエンジン用ミキサにおいて、前記逆止弁を傘型バルブとすることにより簡易な構成で吸気脈動による気筒間の圧力干渉を確実に防止でき、或いは、前記逆止弁をリードバルブまたはボールバルブとすることにより同様に気筒間の圧力干渉を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
ミキサの各燃料供給系統にそれぞれ逆止弁を設けた本発明によると、コストの高騰及び配置スペースの増大化を伴うことなく、ガスエンジンの各気筒にガス燃料の混合気を精度高く供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。尚、説明は、レギュレータから送出されたガス燃料の混合気を2気筒ガスエンジンの各気筒に分配して供給する場合についてのものである。
【0015】
図1は、本実施の形態のミキサ1を使用したガスエンジンの燃料供給システムの配置図を示すものであり、ミキサ1は、2ボア2ベンチュリ式のものであり簡略化した縦断面図で表している。そして、図示は省略するが、2気筒ガスエンジンの第1気筒には吸気通路3が接続し、第2気筒には吸気通路4が接続している。
【0016】
前記各吸気通路3,4は、ミキサ1のボディを並列した状態で貫通しており、一方の吸気通路3にはメインノズル30の先端が露出して開口し、他方の吸気通路4にはメインノズル40の先端が露出して開口しており、これらメインノズル30,40は並列状態で配置されており、ミキサ1における並列した2つの燃料供給系統を構成している。
【0017】
また、前記メインノズル30,40には、レギュレータ7から並列的に延設された図示しない燃料配管がそれぞれ接続されており、所定圧力に調圧されたガス燃料が導入されその先端側の吸気通路3,4内で吸入空気と混合される。また、メインノズル30,40の中途位置には各々メインジェット33,43が配設されており、導入したガス燃料の流量を規制する。
【0018】
そして、並列配置されたメインノズル30,40中のメインジェット33,44上流側には、下流側から上流側に逆流する流体及び圧力変動を閉止する逆止弁35,45がそれぞれ配設されており、2つの気筒間の異なる吸気脈動により生じる圧力干渉を、この位置で止めて他の気筒側からの吸気脈動による影響を回避できるようになっている。
【0019】
前記逆止弁35,45は、上流側から下流側に向かう流体の流れに対しては過剰な抵抗とならないで下流側から上流側に向かって逆流する動きを有効に閉止できるものであれば、リードバルブ、傘型バルブ、ボールバルブなど、様々な逆止弁を使用することができる。
【0020】
次に、本実施の形態であるガスエンジン用のミキサ1の作用について説明する。
【0021】
まず、ガスエンジンの第1気筒がガス燃料を吸入する時、第2気筒の吸気脈動による圧力干渉をメインジェット30内に配設した逆止弁35で閉止して、その影響が及ぶことを防止する。
【0022】
また、第2気筒がガス燃料を吸入する時、第1気筒の吸気脈動による圧力干渉をメインジェット40内に配設した逆止弁45で閉止して、その影響が及ぶことを防止する。尚、この場合、ミキサ1の2ボア2ベンチュリは各々独立しているので、ガス燃料の分配は各メインジェット33,43で充分に調整することができる。
【0023】
従って、2気筒ガスエンジンにガス燃料の混合気を供給する本実施の形態のミキサ1は、図2に示した従来例のミキサ2のような圧力干渉減衰用のサージタンク1を必要とせず、異なる気筒間の吸気脈動による圧力干渉を有効に回避することができ、1つのレギュレータ7だけでガスエンジンの両気筒にガス燃料の混合気を精度高く供給することができる。
【0024】
以上、述べたように、複数気筒ガスエンジンにガス燃料の混合気を供給するミキサについて、本発明により、コストの高騰及び余分な配置スペースの確保を要することなく、各気筒にガス燃料の混合気を精度高く供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明における実施の形態のガスエンジンの燃料供給システムを示す配置図。
【図2】従来例のガスエンジンの燃料供給システムを示す配置図。
【符号の説明】
【0026】
1 ミキサ、3,4 吸気通路、7 レギュレータ、30,40 メインノズル、33,43 メインジェット、35,45 逆止弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各燃料供給ノズルの先端が露出して開口している複数の吸気通路を備え、レギュレータから送出されたガス燃料の混合気を、複数気筒を有するガスエンジンの各気筒に分配して供給するための複数の燃料供給系統を備えているガスエンジン用ミキサにおいて、前記燃料供給系統に、異なる前記気筒間の吸気脈動で生じる圧力干渉を防止するための逆止弁がそれぞれ設けられていることを特徴とするガスエンジン用ミキサ。
【請求項2】
前記燃料供給系統が2つであって、前記ガスエンジンの2つの気筒にそれぞれガス燃料を供給するとともに、2ボア2ベンチュリ式であることを特徴とする請求項1に記載したガスエンジン用ミキサ。
【請求項3】
前記逆止弁が傘型バルブであることを特徴とする請求項1または2に記載したガスエンジン用ミキサ。
【請求項4】
前記逆止弁がリードバルブまたはボールバルブであることを特徴とする請求項1または2に記載したガスエンジン用ミキサ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−281163(P2009−281163A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131447(P2008−131447)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)