説明

ガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置

【解決手段】本発明が開示したガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置は、ガスクロマトグラフカラムとインバースガスクロマトグラフカラムを含み、ガスクロマトグラフカラムの導入端は試料導入器に連結され、ガスクロマトグラフカラムの導出端はインバースガスクロマトグラフカラムの導入端と連結され、ガスクロマトグラフカラムの導出端は更に第1検出器に連結され、インバースガスクロマトグラフカラムの導入端は更にキャリアガス管に連結され、インバースガスクロマトグラフカラムの導出端は第2検出器に連結され、第1検出器、第2検出器はいずれも信号収集器に連結される。本発明は、測定対象である固体吸着材料の各種単一プローブに対する吸着性を考察可能とすると共に、各種固体吸着材料の混合プローブにおける各種成分に対する吸着性を考察可能とし、インバースガスクロマトグラフィー技術の開発効率を高めるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体材料の表面特性を測定する装置に関し、特にガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体材料の表面性能を評価するにあたっては、よく走査型電子顕微鏡やX線分光法等の技術を用い、吸着剤自体の比表面積、細孔容積等の表面特性を測定することが多かった。しかし、こうした方法では、固体材料表面と、その固体材料に作用するプローブとの相互作用力を反映できず、特に、固体材料と、混合プローブ中の各種成分物質との相互作用を考察することが難しかった。従来のインバースガスクロマトグラフィーでは、主に測定対象である固体材料をパックドカラムに充填し、当該固体材料と作用する単体プローブ分子を気化させてから当該パックドカラムに通過させる。この場合、当該プローブ分子は、通過するパックドカラムにおける充填材料によって相対保持時間が異なるため、相対保持時間の値及び他のクロマトグラフパラメータから、当該プローブ分子と測定された材料の表面との相互作用を測定可能である。しかし、従来方法による吸着材料の測定では、プローブ分子が吸着材料の表面を通過する際の相対保持時間の算出が難しいことが多かった。特に混合プローブについては、従来のインバースガスクロマトグラフィーでは分離が難しく、ピーク出現後に各成分が分離されないという課題があった。この場合、測定時に基準サンプルが必要となることで測定の難易度が上がり、混合プローブ中の各種成分の測定に不利であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術における上記の課題を回避可能なガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置の提供を解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置は、ガスクロマトグラフカラムとインバースガスクロマトグラフカラムを含み、前記ガスクロマトグラフカラムの導入端は試料導入器に連結され、ガスクロマトグラフカラムの導出端は前記インバースガスクロマトグラフカラムの導入端と連結され、ガスクロマトグラフカラムの導出端は更に第1検出器に連結され、前記インバースガスクロマトグラフカラムの導入端は更にキャリアガス管に連結され、インバースガスクロマトグラフカラムの導出端は第2検出器に連結され、前記第1検出器、第2検出器はいずれも信号収集器に連結される。
【0005】
好ましくは、本発明のガスクロマトグラフカラムの導出端と前記インバースガスクロマトグラフカラムの導入端とは、恒温配管によって連結される。
【0006】
好ましくは、本発明のガスクロマトグラフカラムはキャピラリーカラムである。
【0007】
好ましくは、本発明のインバースガスクロマトグラフカラムはパックドカラムである。
【0008】
好ましくは、本発明のキャリアガス管には流量調整弁が設けられる。
【0009】
好ましくは、本発明のガスクロマトグラフカラムの導出端、第1検出器、インバースガスクロマトグラフカラムの導入端及びキャリアガス管は、四方弁によって連結される。
【発明の効果】
【0010】
以上の技術方案によると、本発明のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置は、インバースガスクロマトグラフィーの原理を用い、設定温度下における各種プローブ分子と測定された固体の表面との相互作用、例えば、表面吸着エンタルピー、表面酸・塩基性、表面相溶性、プローブ分子の吸着剤における拡散係数、各種結晶パラメーター、異なる試料の表面化学性質の相違、単一成分又は複数成分混合物の表面物性の相違(表面エネルギー位置の分布測定による)、塊状物体のガラス化温度、などを測定する。当該装置は、測定対象である固体吸着材料の各種単一プローブに対する吸着性を考察可能とすると共に、各種固体吸着材料の混合プローブにおける各種成分に対する吸着性を考察可能とし、同時に、測定された材料の表面と各種プローブ分子との相互作用力を分析可能とする。これにより、当該装置の柔軟性が大幅に高まり、従来の分析手法を進化、改善させる作用を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置の構造を示す図である。うち、1は試料導入器を、2は流量調整弁を、3はガスクロマトグラフカラムを、4は四方弁を、5は恒温配管を、6はインバースガスクロマトグラフカラムを、7は第1検出器を、8は第2検出器を、9は信号収集器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本発明のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置は、ガスクロマトグラフカラム3及びインバースガスクロマトグラフカラム6を備え、ガスクロマトグラフカラム3の導入端は試料導入器1に連結され、ガスクロマトグラフカラム3の導出端はインバースガスクロマトグラフカラム6の導入端に連結され、ガスクロマトグラフカラム3の導出端は更に第1検出器7に連結され、インバースガスクロマトグラフカラム6の導入端は更にキャリアガス管に連結され、インバースガスクロマトグラフカラム6の導出端は第2検出器8に連結され、第1検出器7、第2検出器8はいずれも信号収集器9に連結される。
【0013】
ガスクロマトグラフカラムの導出端とインバースガスクロマトグラフカラムの導入端とは、プローブの移動中の温度を保つように恒温配管5で連結される。
【0014】
ガスクロマトグラフカラム3の導出端、第1検出器7、インバースガスクロマトグラフカラム6の導入端、及びキャリアガス管は四方弁4で連結されており、キャリアガス管には流量調整弁2が設けられ、キャリアガス管のキャリアガス導入量を調整可能としている。第1検出器7と第2検出器8は、熱伝導度検出器(TCD)であっても、水素炎イオン化検出器(FID)であってもよい。
【0015】
本装置では、ガスを介して直接試料を導入しても、微量の液体を介して試料を導入してもよく、例えば、ヘッドスペース法で試料導入したり、或いは測定対象である液体プローブ分子を気化してから試料導入してもよい。ガスクロマトグラフカラム3としてはキャピラリーカラムを用い、インバースガスクロマトグラフカラム4としてはパックドカラムを用いる。気化したプローブ分子は、まずキャピラリーカラム(実際の必要に応じて適切なキャピラリーカラムを選択すればよい)でプログラム昇温してから分離する。分離してキャピラリーカラムから導出した試料は分流し、一部が第1検出器7に導入し、検出され、他の一部はパックドカラムを通過して第2検出器8に導入し、検出される。
【0016】
本装置では、インバースガスクロマトグラフカラム3の導入端がキャリアガス管とも連結し、そのキャリアガス管中のキャリアガスをキャピラリーカラムから導出された試料と共にパックドカラムに通過させるよう設けているので、キャピラリーカラムのキャリアガス流量が制限された場合に、パックドカラムを通過するキャリアガスの流量が左右されるのを防ぐことができる。キャピラリーカラム以外の付属の経路からのキャリアガスをパックドカラムに通過させることで、ガスクロマトグラフのキャピラリーカラムに対する内径要求が緩和されると共に、パックドカラムを通過するキャリアガス流量が合理的に設計されるので、より科学的且つ柔軟な測定が可能となる。
【0017】
本装置では、2つの検出器を用いて同時に検出を行い、両検出器におけるプローブ分子のピーク出現時間の違いを考察することで、プローブ分子がパックドカラム内の材料を通過する際の相対保持時間を特定すると共に、各種プローブ分子と測定対象材料との相互作用、及び測定対象材料の表面特性を測定する。
【0018】
本装置は、混合プローブと測定対象材料表面との相互作用を測定する前に、まず混合プローブをガスクロマトグラフカラムに通過させて分離することで、混合ガスプローブを直接インバースガスクロマトグラフカラムに通過させた場合に、出現したガスクロマトグラフのピークがうまく分離されないという課題を効果的に回避可能とする。これにより、単独のプローブに対してしか測定できないという従来のインバースガスクロマトグラフィーシステムにおける課題が大幅に改善されると共に、操作が簡略化される。本装置は、ガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用することで、ガスクロマトグラフィーにおけるプローブ分子の分離機能を最大限に発揮させ、システム手法をより科学的且つ合理的とし、より速やかな検出を実現する。特に、混合プローブ中の各種成分と固体材料表面との相互作用を同時に測定可能とすることで、固体材料の他の表面特性に対する測定プロセスを大幅に簡略化する。
【0019】
測定時には、まずガスクロマトグラフカラム3によって混合プローブ分子中の各種成分を良好に分離することで、混合ガスプローブが強吸着性材料を充填したパックドカラムを直接通過した場合に出現したピークがうまく分離されないという、従来のインバースガスクロマトグラフでの測定における課題が効果的に回避される。そして、混合プローブ中の各種成分が測定対象吸着材料を通過する際の相対保持時間の違いから表面物性を考察することで、同一プローブ分子と各種固体材料表面との相互作用、又は各種プローブ分子と同一固体材料表面との相互作用を比較し、これら測定を通じて更に測定対象となる材料の他の表面特性を特定する。
【0020】
本発明の具体的な実施例では、前記試料導入器として回転盤式自動試料導入器を、ガスクロマトグラフとしてAgilent 6890Nを用い、キャピラリーカラムを長さ27.5m、内径0.53mmのCP−Poraplot−Qとした。また、インバースガスクロマトグラフカラムとしては、内径約2mm、外径約6mm、長さ約8cmのパックドカラムを用いた。カラム温度を200℃、キャリアガス流量を26.5mL/min、試料導入量を0.2μl、試料導入口の分流比を30:1、試料導入口温度を250℃とすると共に、検出器を温度がいずれも250℃のFID検出器及びTCD検出器とした。次に、以下のような実験を行った。パックドカラム内に測定対象となる16mgの試料を充填し、アセトアルデヒド、アセトン、ブチルアルデヒド、ベンゼン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、酢酸エチルをプローブ分子とし、測定対象である固体吸着材料表面におけるこれらの吸着性を測定した。
【0021】
実験においては、まず準備したパックドカラムを調整済みのガスクロマトグラフに装着して気密性を確保し、キャリアガスの流量を調整した。続いて、ガス流動法でインバースガスクロマトグラフカラムをエージングした。即ち、インバースガスクロマトグラフカラムの導入端とガスクロマトグラフの気化室出口とをつなぎ、導出端を開放した。そして、キャリアガス(流速:10.5mL/min)を30分注入し、システム内の空気を追い出した。続いて、クロマトグラフカラムの温度を上げて200℃程度に制御し、2時間のエージングを行った。エージング完了後、検出器をつないで検出したところ、安定したベースラインが得られた。
【0022】
固体材料のプローブ分子に対する吸着自由エネルギー△Gの算出方法は、次の通りである。
【0023】
【数1】

【0024】
上記の式のうち、ΔGは標準吸着自由エネルギー(J/mol)、Rは一般ガス定数8.3145J/(mol・K)、Tは絶対温度(K)であり、K値は重合体の量、表面積及び吸着状態と関連するため、同一のクロマトグラフカラムにおいてKは定数(J/mol)である。
【0025】
比保持容量Vgは、下記式から得られる。
【0026】
【数2】

【0027】
式中、△t=tr−t0であり、trとt0はそれぞれプローブ分子の保持時間(s)とデッドタイム(s)を示し、Fはインバースガスクロマトグラフカラム出口におけるキャリアガスの流速(mL/s)、mは固定相の質量(g)、Tは雰囲気温度(K)、Pi及びP0は、それぞれインバースガスクロマトグラフカラムの入口及び出口における圧力(Pa)、Vgは比保持容量(mL/g)である。
【0028】
実施例1〜7では、測定対象である材料Aの各種プローブに対する吸着性を考察し、上記式1及び式2から以下の結果を得た。
【0029】
【表1】

【0030】
上記実施例の結果より、固体吸着材料Aの各種ガスプローブに対する吸着性には一定の差があり、当該方法が吸着材料の各種プローブ分子に対する吸着性を良好に評価可能であることが明らかになった。
【0031】
固体材料Aの表面の各種プローブに対する吸着のエンタルピー△H及びエントロピー△Sは、以下のように算出される。
【0032】
熱力学公式ΔG=ΔH−TΔSと上記式1により、
【数3】

が得られることから、
【数4】

が得られる。
【0033】
式中、Vgは比保持容量(mL/g)、Rは一般ガス定数8.3145J/(mol・K)、Tは雰囲気温度(K)である。
【0034】
InVg:1/Tからグラフを作成し、得られた直線の傾きと切片から、測定された試料の各種プローブに対する吸着のエンタルピー及びエントロピーが得られる。
【0035】
実施例8〜12では、固体材料Aのアセトン、エチルアルコール、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、酢酸エチル等各種ガス成分に対する表面吸着エンタルピーを検出し、上記式4から以下の結果を得た。
【0036】
【表2】

【0037】
グートマン(Gutmann)の酸塩基理論に上記の方法で測定した材料Aの表面のプローブ分子に対する吸着エンタルピーΔHを組み合わせて、以下の方法でその表面の酸解離定数及び塩基解離定数が算出される。
【数5】

【0038】
式中、DNとANはそれぞれグートマンが定義した極性プローブ分子の電子供与体定数及び電子受容体定数であり、KaとKbはそれぞれ吸着剤表面の酸解離定数及び塩基解離定数である。複数の極性プローブの−ΔH/AN:DN/ANからグラフを作成し、得られた直線の傾きと切片から、吸着剤表面における酸・塩基性の半定量的定数Ka及び定数Kbを得られる。
【0039】
実施例13〜15は固体材料Aの表面の酸・塩基性測定の結果であり、上記式5から以下の結果が得られた。
【0040】
【表3】

【0041】
実施例13〜15から、材料Aの酸解離定数と塩基解離定数の比は1より大きく、強い酸性であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置であって、ガスクロマトグラフカラムとインバースガスクロマトグラフカラムを含み、
前記ガスクロマトグラフカラムの導入端は試料導入器に連結され、ガスクロマトグラフカラムの導出端は前記インバースガスクロマトグラフカラムの導入端に連結され、ガスクロマトグラフカラムの導出端は更に第1検出器に連結され、前記インバースガスクロマトグラフカラムの導入端は更にキャリアガス管に連結され、インバースガスクロマトグラフカラムの導出端は第2検出器に連結され、前記第1検出器、第2検出器はいずれも信号収集器に連結されることを特徴とするガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置。
【請求項2】
前記ガスクロマトグラフカラムの導出端と前記インバースガスクロマトグラフカラムの導入端とは、恒温配管によって連結されることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置。
【請求項3】
前記ガスクロマトグラフカラムはキャピラリーカラムであることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置。
【請求項4】
前記インバースガスクロマトグラフカラムはパックドカラムであることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置。
【請求項5】
前記キャリアガス管には流量調整弁が設けられることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置。
【請求項6】
前記ガスクロマトグラフカラムの導出端、前記第1検出器、前記インバースガスクロマトグラフカラムの導入端及び前記キャリアガス管は、四方弁によって連結されることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフィーとインバースガスクロマトグラフィーを併用した分析装置。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−521514(P2013−521514A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−509443(P2013−509443)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【国際出願番号】PCT/CN2011/077205
【国際公開番号】WO2012/139340
【国際公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【出願人】(512067757)上海煙草集団有限責任公司 (2)