説明

ガスクロマトグラフィ用サンプルの調製のための装置および方法

ガスクロマトグラフィ用サンプル(62)を調製するための装置(10)は、キャリアガス(64)で充填されることができ、かつ、制御された態様で加熱されることができる下端領域を有する管状ライナ(16)と、制御された態様で加熱されることのできるサンプル貯槽(26)と、ライナ(16)の下端領域に設けられる活性材料(20)と、ライナの周りに同軸に配列され、ライナの下端領域に接続される空洞(46)がライナと外側管との間に形成される外側管(38)と、外側管(38)の分岐出口(48)と、外側管(38)に設けられ、空洞(46)にキャリアガス(82)を供給する用途のキャリアガス接続部(52)と、活性材料(20)の上方に設けられ、ガスクロマトグラフィカラム(12)を接続する用途のカラム接続部(22)と、キャリアガス流を、第1のセッティング(図1)においては、ライナ(16)の内部(24)から活性材料(20)を通って空洞(46)内に流れ、そこから分岐出口(48)に流れるように制御し、かつ、第2のセッティング(図2)においては、キャリアガス接続部(52)から反対方向に空洞(46)および活性材料(20)を通ってカラム接続部(22)に流れるように制御する制御手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
発明は、ガスクロマトグラフィ用サンプルの調製のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルをサンプリング装置によりガスクロマトグラフィカラム内に挿入することが知られている。このようなサンプリング装置は、サンプリングヘッドと、サンプリングヘッドに接続され、かつ、プログラムに従って電気加熱により加熱されるように構成された管状サンプリングチャンバと、ガスクロマトグラフィ分離カラムの端を、サンプリングヘッドの端から遠隔の端で受けるように構成された、サンプリングチャンバ内部のライナと、キャリアガスをライナ内に導入するための手段とを備える。
【0003】
このようなサンプリングチャンバは、たとえば、DE Journalの「LABO Kennziffer Fachzeitschrift fur Labortechnik」1983年7月版、第37頁から第46頁のSchomburgによる論文「Probenaufgabe in der Kapillargaschromatographie」およびDE 34 48 091 C3号により公知である。
【0004】
液状サンプルをガスクロマトグラフ中にサンプリングするためには、通常、取扱いやすい量を得るために、サンプルは溶媒中に溶解される。溶解されたサンプルは、隔膜または加熱されたバルブを有するサンプリングヘッドを介して、注入針によりキャリアガスの流れに注入される。キャリアガスの流れは、ライナを通ってサンプルおよび溶媒を運ぶ。通常、ガラスからなるライナは、熱によって加熱されるサンプリングチャンバ中に位置する。刊行物LABOにおいては、この加熱は、空気が加熱コイルにより加熱される空気加熱である。DE 34 48 091 C3号においては、サンプリングチャンバは、加熱コイルにより囲まれる管である。ライナは、管型サンプリングチャンバの中央に位置する。環状空間が、ライナとサンプリングチャンバとの間に形成される。サンプリングチャンバおよびそれによるライナは、プログラムに従って加熱されるように構成されている。
【0005】
「分岐」動作においては、初めに高揮発性溶媒が蒸発される。この蒸発した溶媒が、ライナおよび環状空間を通って流れ、分岐出口を通って除去される。次に、サンプル自体を、より高温に「バリスティック(ballistische)」加熱することによって、蒸発させる。好ましくは、わずかな量のサンプルしか必要としないおよびそれしか処理しないキャピラリカラムである分離カラムは、入口端を有する入口とは反対側のライナの端内まで延在する。サンプルは、キャリアガスにより分離カラム内に運ばれる。分離カラムは、温度プログラムに従って加熱される。
【0006】
より大容量のサンプルガスがライナ中に発生するにつれて、分離カラムの入口でサンプルの濃縮が行なわれる。分離カラムの温度は、初めは低く保たれる。これにより、分離カラム中で、サンプルの全成分の低いキャリア速度が生じる。サンプルガスの栓が分離カラムの入口に形成される。分離カラム中の温度を上昇させると、さまざまなサンプル成分の揮発性の差異がより明らかになり、異なるキャリア速度と、それにより、分離カラムの出口で別々に表れるピークにおけるサンプルの分離とが生じる。
【0007】
公知のサンプルヘッドは、妨害となる可能性のあるマトリックスの除去のために、困難なサンプル調製を必要とする。
【0008】
Anal. Bioanal. Chem (2006) 384; 1113-1122のM. Wortberg, W. Ziemer, M. Kugel, H. MullerおよびH. -J. Neuによる刊行物「Monitoring industrial wastewater by online GC-MS with direct aqueous injection」においては、分岐出口なしの、閉止された注入器を用いるアセンブリが記載されている。サンプルは注入器の蒸発体積で蒸発される。その後、蒸発したサンプルは上記蒸発体積を超えてライナに送られる。ライナはTenax TAで充満される。サンプルは、水蒸気が除去される間、冷たいライナ内に残留する。次に、ライナは加熱され、サンプルはカラム内に挿入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の開示
発明の目的は、サンプル調製を容易にし、かつ、分析結果の精度を上げる、上述の種類のアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明に従うと、この目的は、ガスクロマトグラフィ用サンプルの調製のための装置であって、
(a)制御可能に加熱されるように構成された下端部を有する、キャリアガスによりフラッシングされるように構成された管状ライナと、
(b)制御可能に加熱されるサンプル貯槽と、
(c)ライナの下端部に設けられる活性材料と、
(d)空間がライナと外側管との間に形成され、空間がライナの下端部に接している、ライナの周りに同軸に配列される外側管と、
(e)外側管の分岐出口と、
(f)空間内にキャリアガスを送るために、外側管に設けられるキャリアガス接続部と、
(g)ガスクロマトグラフィカラムを接続するために、活性材料の上方にあるカラム接続部と、
(h)キャリアガスの流れを、
第1のセッティングにおいては、ライナの内部から活性材料を通って空間内へ流れ、そこから分岐出口に向かって流れるように制御し、かつ、
第2のセッティングにおいては、キャリアガス接続部から反対方向に空間および活性材料を通って、カラム接続部に流れるように制御するための制御手段とを備える、装置により達成される。
【0011】
このような装置により、サンプルをサンプル貯槽とともに、ライナ内に挿入することができる。代替的には、サンプルは、既にライナ内に存在するサンプル貯槽内に導入される。サンプル貯槽は、ライナの上端部に存在してもよい。特に、サンプル貯槽は、ライナの上端部に、磁気的に取付け可能である。
【0012】
さらなる代替的な実施形態においては、サンプル貯槽は、ライナの外側に位置決めされる。これは特に、サンプルが大量にある場合に有用である。この実施形態により、サンプル貯槽をオートサンプラーにより作動させることができる。
【0013】
装置は、ライナの温度から独立して、かつ、さらなるサンプル調製工程から独立して、溶媒とともにサンプルを徐々に蒸発させることを可能とする。
【0014】
蒸発したサンプルは、第1の工程において溶媒とともにライナに入る。次に、ライナはキャリアガスによりフラッシングされる。キャリアガスはこの工程において、ライナまたはライナの栓にある接続部を介して導入され得る。サンプルは、キャリアガスとともに活性材料を通過し、そこに残留する。活性材料は、吸着剤または相材料であってもよい。活性材料は、ガラスフリット、ライナの多孔性ガラス底部などの上でライナ内に配置されることができる。キャリアガスは、ライナの下端のガラスフリットまたはガラス底部を通って出る。そこから、キャリアガスはライナと外側管との間の空間を通過する。キャリアガスは分岐出口を通って除去される。
【0015】
サンプルが完全に蒸発し、活性材料の範囲内に存在する場合、第2の方法工程において、キャリアガスの流れは反転される。次に、キャリアガスが、外側管のキャリアガス接続部を通って、ライナと外側管との間の空間に入る。同時に、それまでは閉止されていたカラム接続部は開放される。キャリアガスはここで、空間および活性材料を通って反対方向に流れる。そこでサンプルをそれとともに運ぶ。その後、カラム接続部を通ってカラムに送られる。
【0016】
好ましくは、活性材料は加熱および/または冷却され得る。冷却により、第1の工程における蒸発したサンプルの保持が改善される。加熱により、第2の工程におけるサンプルの放出が改善される。
【0017】
サンプルマトリックスは、サンプルが活性材料中に保持されている間、本発明に従う装置により除去される。活性材料の選択は、サンプルの組成および分析検査用物質に依存する。特に有利な態様においては、装置は、揮発性のあるおよび高沸点を有する物質の濃縮を可能とし、高沸点を有する物質は、既にわずかな長さだけ通過した後で、活性材料中に吸着または保持される。揮発性物質は、活性材料中に深く入り込む。しかし、放出は反対方向で行なわれ、それにより揮発性物質および高沸点を有する物質は、同時にカラム接続部に到達する。
【0018】
好ましくは、カラムの下流に冷却トラップが設けられる。制御手段はさらに、第1のセッティングにおいてキャリアガスの侵入を防ぐのに十分なガス圧力をカラム内部に発生するように構成された、カラムの下流の補助ガス接続部を備えてもよい。補助ガス接続部は、冷却トラップの上流または下流に設置されてもよい。カラム内の圧力をライナ内よりも高く設定することによって、カラム内にサンプルが早期に入ってしまうことを防ぐ。サンプルが蒸発し、キャリアガスの流れが反転されると、カラム内の圧力を低下させる。それによりサンプルがカラムを通って流れる。このようにして、高価なバルブ構造が防がれる。
【0019】
同様に、制御手段は、キャリアガス接続部の圧力を制御するための圧力制御手段を備えてもよい。ライナに対する圧力が圧力で制御される場合、キャリアガスが入ったり除去されたりすることはない。圧力を上げると、キャリアガスがライナと外側管との間の空間内に流れる。
【0020】
装置は、分岐出口中に遮断バルブを備えてもよい。遮断バルブは、キャリアガスの流れが、外側管中のキャリアガス供給部からカラム接続部に流れる場合に、分岐出口を閉止するために、第2のセッティングにおいて使用可能である。
【0021】
装置は、サンプル貯槽が、サンプルまたはサンプル容器を自動的に受けるための受け装置と、サンプル蒸気をライナ内に移送するための移送手段とを備えるように設計され得る。移送手段は、たとえば、ライナ中の加熱される移送ラインにより形成され得る。
【0022】
本発明に従う方法は、
(a)サンプルを蒸発させる工程と、
(b)ガス状サンプルを含むガスの流れを発生する工程と、
(c)サンプルが活性材料中に残留し、かつ、残留キャリアガスの流れが活性材料を通過するように選択される活性材料を通してサンプル蒸気−キャリアガスの流れを流す工程と、
(d)活性材料を通過したキャリアガスの流れを外側に向かって除去する工程と、
(e)活性材料に含まれるサンプルをキャリアガスの流れの中に含ませるために、活性材料を通るキャリアガスの流れを反対方向に発生する工程と、
(f)サンプル−キャリアガスの流れをガスクロマトグラフィカラムに流す工程とを含む。
【0023】
好ましくは、活性材料は、工程(e)の間に加熱される。好適な加熱コイルが活性材料の範囲における外側管の周りに設けられ得る。
【0024】
発明のさらなる変形例においては、活性材料が工程(c)の間に冷却される。この目的のために、冷却媒体を、活性材料の範囲内に、たとえば、加熱コイルの間の空間中に流すことができる。
【0025】
本発明の方法の変形例においては、サンプル蒸気が、活性材料と同一の容器中に含まれるサンプル貯槽を加熱することにより発生される。サンプル貯槽および活性材料は、サンプル貯槽の範囲における第1の加熱コイルと、活性材料の範囲における第2の加熱コイルとを有するライナ内に含まれてもよい。サンプル貯槽は、ライナの上部で同軸に保持される、小さいサンプリング管により形成され得る。次に、加熱工程の間に発生したサンプル蒸気で、ライナが充満する。
【0026】
発明の代替的な変形例においては、サンプル蒸気は、活性材料を含む容器の外側のサンプル貯槽を加熱することにより発生される。サンプル貯槽はその外径が限定されない。特に、大きいサンプル貯槽およびオートサンプラーを用いてもよい。
【0027】
本発明のさらなる変形例は従属項の主題である。実施形態を、添付の図面を参照しつつ、下記により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1のセッティングにおけるサンプル調製装置の概略断面図である。
【図2】第2のセッティングにおける図1のサンプル調製装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態の説明
図1は、参照番号10により全体的に示される、ガスクロマトグラフィ用サンプルの調製のための装置を示す。装置は、カラム12の上流に接続される。好適な検出器14は、カラム12に接続される。カラム12および検出器14は、ガスクロマトグラフィの技術分野において周知であり、ここでより詳細に説明することはない。
【0030】
装置10は、ガラス製で、かつ、数mmの内径を有する管状ライナ16を備える。ライナ16には、透過性の底部18が設けられる。吸着材20が底部18上に保持される。吸着材20の選択は、分析作業に依存する。
【0031】
カラム12の端22は底部18を通って延び、かつ、吸着材20を通ってライナ16の内部に延びる。
【0032】
サンプル貯槽26はライナの上部に保持される。透過性かつ不活性の保持装置28がこの目的のために設けられる。任意の種類の保持装置が好適であることが理解される。本実施形態においては、保持装置は、サンプル貯槽26のスチール製リングを保持する永久磁石を備える。
【0033】
サンプル30は、ガスクロマトグラフィによる分離および/または検査のためにサンプル貯槽26中に存在する。サンプルは、処理されているかまたは処理されておらず、固形材料または高沸点の残留物を含んでもよい。
【0034】
ライナ16は、上端32が栓34で閉止されている。さらに、キャリアガス接続部36が上部に設けられている。希ガス、窒素または水素またはその他の好適なキャリアガスまたはキャリアガスの混合物が、制御可能なキャリアガス供給部(図示せず)から与えられる。
【0035】
ライナ16は、外側管38中に同軸に配置される。外側管38はスリーブ40中に配置される。2つの加熱コイル42および44は、この二重壁管状構造の間に設けられる。加熱コイルは電流源または電圧源に接続され、制御器により制御される。加熱コイル42は、下部範囲内の活性材料20の周りにある。加熱コイル44は、上部範囲内のサンプル貯槽に巻回されている。サンプルを蒸発させるために、サンプル貯槽26が加熱される。活性材料を加熱するために加熱電流を加熱コイル42中に発生させる。それにより活性材料20の範囲が加熱される。
【0036】
外側管38とライナ16との間に空間46が形成される。空間46は本質的に、底部範囲50内のチャネルまたは穴を介してライナ16の内部に接続される環状空間である。分岐出口48は、外側管38の上部範囲内に設けられる。さらに、空間にキャリアガスを供給するために、キャリアガス接続部52が外側管の上部範囲内に設けられる。
【0037】
さらなるキャリアガス接続部54が、カラム12の下流に設けられる。さらなるキャリアガス接続部56は、カラムの下流の冷却トラップ58の下流に設けられる。冷却媒体供給部60から、加熱コイル42間の空間内に冷却媒体を流すことができる。このようにして活性材料20を冷却することができる。
【0038】
上述の装置は下記のように動作する。
まず、サンプル62がサンプル貯槽26内に入れられる。サンプル貯槽26が、上方から、開放されたライナ16内の保持装置28内に導入される。次に、ライナ16が塞栓される。次に装置10が、図1に示される第1のセッティングに設定される。このセッティングにおいては、キャリアガスが接続部36からライナ16内に流れる。これは矢印64によって示される。
【0039】
同時に、サンプル62を有するサンプル貯槽26が、加熱コイル44により加熱される。スイッチオンされた加熱コイル44は、塗り潰された断面図により示される。加熱コイル42は冷たい。これは白抜きの断面図により示される。代わりに、冷却媒体が接続部60から加熱コイル42間の空間中に流される。このようにして活性材料20が冷却される。
【0040】
分岐出口48は開放されている。これは矢印66によって示される。ライナ16内のガス圧力の範囲またはそれを若干上回るキャリアガス圧力が、接続部52、54および56に加えられる。これは矢印68、70および72により示される。このようにしてガスの早期の侵入が防がれる。サンプル62が加熱され、ライナ16の内部24内に徐々に蒸発する。これは矢印74により示される。蒸発したサンプル74は、供給部36からのキャリアガス64とともに活性材料20を通って流れる。キャリアガス64は抵抗なしに活性材料20を通って流れる。これは矢印76により示される。サンプル74は活性材料20により吸着されて保持される。高沸点を有する低揮発性サンプル成分は、早期に活性材料20の上部範囲内に残留する。低沸点を有するサンプルの高揮発性成分は、活性材料20内に深く入り込み、活性材料20の下部範囲内に保持される。十分な活性材料20が用いられ、かつ、活性材料の密度は、すべての所望のサンプル成分がその中に保持されるように選択されることが理解される。
【0041】
キャリアガスは空間46中を上方に流れる。これは矢印80により示される。キャリアガスは分岐出口48を介して除去される。図1に示される第1のセッティングは、サンプル62が所望量蒸発するまで保たれる。これにより、固体または高沸点を有するサンプル成分などのマトリックスの不要な残留物が、サンプル貯槽26中に残留する可能性がある(図2参照)。所望量の蒸発のあと、装置は第2のセッティングに切換えられる。これは図2に示される。
【0042】
第2のセッティングにおいては、接続部36を介して供給されるキャリアガスは存在しない。分岐出口48は閉止される。加熱コイル44はスイッチオフされる。冷却供給部60はスイッチオフされる。接続部54および56のキャリアガス圧力はスイッチオフされる。同時にまたはその後、活性材料20は加熱コイル42により加熱される。キャリアガスは接続部52から空間46に流される。これは矢印82および84により示される。第2のセッティングにおいて、キャリアガスの流れ84は空間46中で頂部から底部へ図1に示される第1のセッティングと反対方向に流れることがわかる。
【0043】
キャリアガスは加熱された活性材料20を通って、また底部から頂部へ反対方向に流れる。活性材料20中に保持されるサンプルは熱により蒸発する。キャリアガスの流れはサンプルを取り込む。矢印86により示されるキャリアガスおよび矢印88により示されるサンプルは、カラム接続部22を通ってカラム12内に流れる。そこで、サンプルは分離され、公知の態様で分析される。
【0044】
上述の装置は、サンプルが徐々に蒸発され得るという利点を有する。サンプルは大量に調製されることはなく、それによりプロセスのオンライン分析が可能になる。この方法により、サンプルの低揮発性および高揮発性成分がマトリックスから分離され、かつ同時にライナ内に存在する。このような良好な濃縮により、徐々に蒸発されながらであっても、カラム内での分離の間、特に鋭利なピークが可能となる。瞬時の蒸発は必要ない。
【0045】
キャリアガス接続部54および56の切換え状態に依存して、カラム12および/または冷却トラップ58はキャリアガスによりバックフラッシングさせることができる。キャリアガスの代わりに、任意のその他の補助ガスをこの目的のために用いてもよい。接続部に加えられるガスは、カラムのオンオフの切換えおよびバックフラッシングのために作用する。
【0046】
発明のさらなる代替の実施形態(図示せず)は、熱脱着管により動作する。液状サンプルはこの方法では蒸発しないが、ガス状サンプルは管を通って流れる。そこで分析されるべきサンプル成分が吸着される。残留ガスは除去される。キャリアガスで管をバックフラッシングさせることにより、蓄積したサンプルが再脱着され、ガスクロマトグラフなどの好適な分析機器に送られることができる。管は分析機器から独立しており、吸着プロセス後に分析機器に反転された位置で連結される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクロマトグラフィ用サンプル(62)の調製のための装置(10)であって、
(a)制御可能に加熱されるように構成された下端部を有する、キャリアガス(64)によりフラッシングされるように構成された管状ライナ(16)と、
(b)制御可能に加熱されるサンプル貯槽(26)と、
(c)前記ライナ(16)の前記下端部に設けられる活性材料(20)と、
(d)空間(46)が前記ライナと外側管(38)との間に形成され、前記空間が前記ライナの前記下端部に接している、前記ライナの周りに同軸に配列される外側管(38)と、
(e)前記外側管(38)の分岐出口(48)と、
(f)前記空間(46)内にキャリアガス(82)を送るために、前記外側管(38)に設けられるキャリアガス接続部(52)と、
(g)ガスクロマトグラフィカラム(12)を接続するために、前記活性材料(20)の上方にあるカラム接続部(22)と、
(h)前記キャリアガスの流れを、
第1のセッティング(図1)においては、前記ライナ(16)の内部(24)から前記活性材料(20)を通って前記空間(46)内に流れ、そこから前記分岐出口(48)に向かって流れるように制御し、かつ、
第2のセッティング(図2)においては、前記キャリアガス接続部(52)から反対方向に前記空間(46)および前記活性材料(20)を通って、前記カラム接続部(22)に流れるように制御するための制御手段とを備える、装置。
【請求項2】
前記サンプル貯槽(26)は、前記ライナ(16)の上端部に存在することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サンプル貯槽は、前記ライナ(16)の前記上端部に磁気的に取付けられることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記活性材料(20)は、吸着剤または相材料であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記活性材料(20)は、加熱および/または冷却されることができることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記カラム(12)の下流の冷却トラップ(58)を特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1のセッティングにおいてキャリアガスの侵入を防ぐのに十分なガス圧力を前記カラム(12)の内部に発生するように構成された、前記カラム(12)の下流の補助ガス接続部(54;56)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記キャリアガス接続部(52)の圧力を制御するための圧力制御手段を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記分岐出口(48)中の遮断バルブを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記サンプル貯槽は、サンプルまたはサンプル容器を自動的に受けるための受け装置と、サンプル蒸気を前記ライナ内に移送するための移送手段とを備えることを特徴とする、請求項1または3から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
分析目的用サンプルの調製のための装置であって、
(a)ガス状サンプルを含むガスの流れを発生する工程と、
(b)前記サンプルが活性材料(20)中に残留し、かつ、残留ガスの流れ(76)が前記活性材料を通過するように選択される前記活性材料(20)を通して前記ガスの流れを流す工程と、
(c)前記活性材料を通過した残留ガスの流れ(80)を外側に向かって除去する工程と、
(d)前記活性材料中に含まれる前記サンプルをキャリアガスの流れの中に含ませるために、前記活性材料(20)を通るキャリアガスの流れを反対方向に発生する工程と、
(e)サンプル−キャリアガスの流れ(86,88)を分析装置(12)に流す工程とを含む、装置。
【請求項12】
(i)サンプルを蒸発させる工程(74)と、
(ii)サンプル蒸気を含むキャリアガスの流れを発生する工程と、
(iii)前記活性材料(20)を通るようにサンプル蒸気−キャリアガスの流れを流す工程と、
(iv)前記活性材料を通過したキャリアガスの流れ(80)を外側に向かって除去する工程と、
(v)サンプル−キャリアガスの流れ(86,88)をガスクロマトグラフィカラム(12)に流す工程とを含む、請求項11に記載のガスクロマトグラフィ用サンプルの調製のための方法。
【請求項13】
前記活性材料は、前記工程(d)の間に加熱されることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記活性材料は、前記工程(b)の間に冷却されることを特徴とする、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記サンプル蒸気は、前記活性材料と同一の容器(16)中に含まれるサンプル貯槽(26)を加熱することにより発生されることを特徴とする、請求項12から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル蒸気は、前記活性材料を含む前記容器(16)の外側のサンプル貯槽を加熱することにより発生されることを特徴とする、請求項12から13のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−517008(P2012−517008A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548648(P2011−548648)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051064
【国際公開番号】WO2010/089251
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(507158318)ジョイント・アナリティカル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】JOINT ANALYTICAL SYSTEMS GMBH