ガスクロマトグラフ装置およびガス成分脱離方法
【課題】捕集部材に捕集された検出対象成分を効率的に脱離し、且つ、ガス流路構成の制限を解消するガスクロマトグラフ装置およびガス成分脱離方法を提供する。
【解決手段】試料ガス成分を捕集し且つ捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材11aと、捕集部材11aを通過するようにパージガスを流動させるガス流動手段20と、を有するガス流路5を備えたガスクロマトグラフ装置1において、ガス流路5が、パージガスの流動方向に対して捕集部材11aより上流側に直列に配置され且つパージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部30を有し、ガス流動手段20が、パージガスの流動方向に対して捕集部材11aより下流側に直列に配置され且つガス流路5の圧損発生部30からガス流動手段20までの区間に負圧が生じるようにパージガスを圧損発生部30を介してガス流路内5に引き込んで流動させる手段である。
【解決手段】試料ガス成分を捕集し且つ捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材11aと、捕集部材11aを通過するようにパージガスを流動させるガス流動手段20と、を有するガス流路5を備えたガスクロマトグラフ装置1において、ガス流路5が、パージガスの流動方向に対して捕集部材11aより上流側に直列に配置され且つパージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部30を有し、ガス流動手段20が、パージガスの流動方向に対して捕集部材11aより下流側に直列に配置され且つガス流路5の圧損発生部30からガス流動手段20までの区間に負圧が生じるようにパージガスを圧損発生部30を介してガス流路内5に引き込んで流動させる手段である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料ガス中に含まれる物質(成分)を検出するガスクロマトグラフ装置およびこのガスクロマトグラフ装置で用いられるガス成分脱離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)は、例えば、家屋内雰囲気等の試料ガスに含まれる揮発性有機化合物等の検出対象成分(即ち、試料ガス成分)の検出に用いられる装置であり、該試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため、分離カラムおよび検出センサを備えた検出装置のほかに、検出対象成分を捕集して濃縮するための捕集装置を備えた構成のものが一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1で提案されているGC装置100は、図11に示されるように、検出対象成分を搬送するキャリアガスを発生するガスボンベなどのキャリアガス源108、キャリアガスによって搬送された試料ガスの成分を検出する分析装置(検出装置)110、試料ガスを導入する試料導入口101、試料導入口101から導入された試料ガスを吸引して排出口115から排出する吸引ポンプ104、試料ガスから検出対象成分を捕集する捕集剤を備えた捕集管(捕集部材)102、捕集管102のキャリアガス導入側端部に連設されたオリフィス113、および、捕集管102を試料導入口101と吸引ポンプ104との間またはキャリアガス源108と分析装置110との間に選択的に接続するバルブ105、などから構成されている。
【0004】
一般的に、捕集剤からの試料ガス成分の脱離においては、主に温度と圧力が影響し、温度が高いほど、また、圧力が低いほど、試料ガス成分が捕集剤から脱離しやすくなることが知られている。そして、このGC装置100において捕集管102に捕集された検出対象成分を脱離するときには、バルブ105を切り替えて、キャリアガス源108、バルブ105、配管114b、オリフィス113、および、捕集管102の順序にそれぞれを直列に接続し、キャリアガス(即ち、パージガス)をキャリアガス源108から捕集管102に向かって流動させる。すると、パージガスは捕集管102に流入する直前でオリフィス113を通過するので、パージガスの流れがここで絞られて流速が増加した状態で捕集管102に流入するため、増加した流速によるベルヌーイ効果により捕集管102内の圧力が降下(減圧)され、捕集管102に捕集されていた検出対象成分の脱離が促進され、脱離効率の向上が図られていた。
【特許文献1】特開2006−337158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、キャリアガス源108の下流側に捕集管102が接続されていることから、捕集管102に対してオリフィス113を経由して上流側からパージガスを押し込む構成となっており、ベルヌーイ効果による減圧はオリフィス113の近傍のみ働くため、捕集管102の一部のみしか減圧による脱離促進効果が生じず、さらに、分析装置110の分離カラムは一般的に細管状に形成されているため分離カラムにおいて圧力損失が生じ、捕集管内の圧力が上昇してベルヌーイ効果による減圧が相殺されてしまうため、捕集管からの試料ガス成分の脱離が十分に行われないという問題があった。また、ベルヌーイ効果はオリフィス113の近傍のみ生じるため、捕集管102内でその効果を得るためには捕集管102とオリフィス113とを連設する必要があるので、GC装置100のガス流路の構成が制限され、装置設計の自由度が損なわれるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、捕集部材に捕集された検出対象成分の脱離をより効率的に行うことを可能とし、ガス流路構成の制限を解消することができるガスクロマトグラフ装置およびガス成分脱離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置は、図1の基本構成図に示すように、試料ガスの流動に応じて試料ガス成分を捕集し且つパージガスの流動に応じて前記捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材11aと、前記捕集部材11aを通過するように前記パージガスを流動させるガス流動手段20と、を有するガス流路5を備えたガスクロマトグラフ装置1において、前記ガス流路5が、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材11aより上流側に直列に配置され且つ前記パージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部30を有し、前記ガス流動手段20が、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材11aより下流側に直列に配置され且つ前記ガス流路5の前記圧損発生部30から前記ガス流動手段20までの区間に負圧が生じるように前記パージガスを前記圧損発生部30を介して前記ガス流路5内に引き込んで流動させる手段であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載のガスクロマトグラフ装置は、請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置において、図1の基本構成図に示すように、前記ガス流路5は、前記捕集部材11aと前記圧損発生部30との間に直列に配置され且つ大気に含まれる不純物質を捕集して前記試料ガス成分を搬送するためのキャリアガスを生成するためのフィルタ22を有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載のガス成分脱離方法は、図1の基本構成図に示すように、試料ガスの流動に応じて試料ガス成分を捕集し且つパージガスの流動に応じて前記捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材11aと、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材11aより下流側に直列に配置され且つ前記捕集部材11aを通過するように前記パージガスを流動させるガス流動手段20と、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材11aより上流側に直列に配置され且つ前記パージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部30と、を有するガス流路5を備えたガスクロマトグラフ装置1において用いられるガス成分脱離方法であって、前記ガス流路5の圧損発生部30からガス流動手段20までの区間に負圧が生じるように前記パージガスを前記圧損発生部30を介して前記ガス流路5内に引き込んで流動させる脱離工程を有することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、圧損発生部30およびガス流動手段20によって、ガス流路5の圧損発生部30からガス流動手段20までの区間に負圧が生じるようにパージガスが圧損発生部30を介してガス流路5内に引き込まれて流動されることから、パージガス流動時に捕集部材11aの内部全体に亘って負圧が生じ、捕集部材11aに捕集された試料ガス成分の脱離をより効率的に行うことができる。また、ガス流動手段20によって、パージガスを引き込むように流動させることから、より強い負圧を生じさせることができ、試料ガス成分の脱離をさらに効率的に行うことができる。また、圧損発生部30は、捕集部材11aの上流に配置されていればよく、捕集部材11aに連設する必要がないので、ガス流路5の構成における制限が解消され、自由な装置設計が可能となる。
【0011】
請求項2に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、フィルタ22が、捕集部材11aと圧損発生部30との間に直列に配置されていることから、パージガス流動によるガス流路5内のクリーニング時に、フィルタ22内に負圧が生じ、フィルタ22に捕集された不純物質が脱離されるので、フィルタ22を清浄することができる。そのため、フィルタ22の劣化の進行を抑制することが可能となり、その使用寿命を延ばすことができる。
【0012】
請求項3に記載した本発明のガス成分脱離方法によれば、ガス流路5の圧損発生部30からガス流動手段20までの区間に負圧が生じるようにパージガスを圧損発生部30を介してガス流路5内に引き込んで流動させることから、パージガスの流動により、捕集部材11aの内部全体に亘って負圧を生じさせることができ、捕集部材11aに捕集された試料ガス成分の脱離をより効率的に行うことができる。また、ガス流路5内にパージガスを引き込むように流動させることから、より強い負圧を生じさせることができ、試料ガス成分の脱離をさらに効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一実施形態について、図2〜図9の図面を参照して説明する。
【0014】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)1は、図2に示すように、捕集装置11および検出装置12が直列に接続されてなる成分検出経路10と、成分検出経路10の検出装置12側に順次直列に接続されたバッファ26とガス流動部20と試料導入部23と、成分検出経路10の捕集装置11側に順次直列に接続された活性炭フィルタ22とオリフィス30Aと大気吸入口21と、捕集装置11に対して並列に配設されたバイパス経路31と、バイパス経路31上に直列に接続されたオリフィス35と、捕集装置11と検出装置12との間に位置するバイパス経路31の端部に配設されたバイパスバルブ32と、捕集装置11と活性炭フィルタ22との間に配設された排出バルブ42と、排出バルブ42に順次直列に接続されたオリフィス30Bと排出口41と、GC装置1の動作を制御する制御装置51と、で構成されている。
【0015】
捕集装置11は、試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため試料ガス成分を捕集して濃縮するための装置であり、捕集管11aと捕集管加熱冷却装置11bとを備えている。
【0016】
捕集管11aは、請求項の捕集部材に相当し、例えば、内径5mm程度、長さ20〜30cm程度のガラス管の内部に、耐熱性樹脂またはカーボンブラックなどの検出対象成分に対応した捕集剤を充填したものである。そして、低温にされた捕集管11a内部に試料ガスを通すことによって、試料ガス成分を捕集剤に吸着(捕集)したのち、高温に加熱されることで捕集した試料ガス成分が捕集剤から脱離されて、高濃度の試料ガスを生成する。また、捕集管11aは、その内部を加圧されることで試料ガス成分の吸着が促進され、その内部を減圧されることで試料ガス成分の脱離が促進される。そして、捕集管11a内に滞留しているガスは、キャリアガス又は大気(即ち、パージガス)によって、捕集管11aから押し出される。
【0017】
捕集管加熱冷却装置11bは、試料ガス成分の捕集に応じて捕集管11aを冷却し、試料ガス成分の脱離に応じて捕集管11aを加熱するものであり、加熱手段として電熱線などのヒータを備え、冷却手段としてペルチェ素子などを備えた、既存の装置である。また、捕集管加熱冷却装置11bは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0018】
検出装置12は、捕集装置11によって生成された高濃度の試料ガスが導入されてその成分検出を行う装置であり、分離カラム12aとカラム加熱冷却装置12bと検出センサ12cとを備えている。
【0019】
分離カラム12aは、試料ガスに含まれる成分の分離を行うためのものであり、内径2〜6mm、長さ数mの管に粒状の固定相を充填したパックドカラム、内径約0.5mm以下、長さ数十mの細い管の壁面に直接液状の固定相を保持させたキャピラリーカラム、または、エッチング処理によりガラス板に微細なカラム溝が形成されてなるマイクロカラムなどの、既存のカラムが用いられる。
【0020】
カラム加熱冷却装置12bは、分離カラム12aへの試料ガスの導入及び試料ガス成分の分離に応じて分離カラム12aの温度を調節するものであり、加熱手段として電熱線などのヒータを備え、冷却手段としてペルチェ素子などを備えた、既存の装置である。また、カラム加熱冷却装置12bは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0021】
検出センサ12cは、分離カラム12aにおいて分離されたのちにキャリアガスによって搬送されてきた試料ガス成分を検出するためのものであり、例えば、水素炎イオン化型検出器、熱伝導度型検出器などの既存の検出器が用いられており、検出センサ12cは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。なお、検出センサ12cの構成および動作については、本発明の本質とは関係しないため詳細は省略する。
【0022】
ガス流動部20は、請求項のガス流動手段に相当し、試料ガスおよびキャリアガスを流動させるポンプ24と、ポンプ24が流動させる各ガスの流動方向を切り替える流動方向切替バルブ25と、で構成されている。
【0023】
ポンプ24は、ポンプ吸入口24aから吸入したガスをポンプ排出口24bから排出して流動させるものであり、成分検出経路10内を通過するように、試料ガスおよびキャリアガスを流動させ、また、それぞれのガスが適切に流動されるように、状況に応じて、その流動の速さや流動量を細かく制御できる、既存のものである。ポンプ24の流動方向は一定方向に固定されており、後述する流動方向切替バルブ25によって、成分検出経路10に接続される向きが切り替えられ、即ち、成分検出経路10内を流れるガスの流動方向が切り替えられる。なお、ポンプ24は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0024】
流動方向切替バルブ25は、例えば、四方電磁弁などが用いられ、その4つの接続口に、バッファ26と試料導入部23とポンプ吸入口24aとポンプ排出口24bとが接続されている。そして、試料ガスを導入するとき、バッファ26とポンプ排出口24b、並びに、試料導入部23とポンプ吸入口24aがそれぞれ接続されて、試料導入部23から導入された試料ガスが、成分検出経路10内を検出装置12から捕集装置11に向かって流動されるように接続を切り替え、キャリアガスを導入するとき、バッファ26とポンプ吸入口24a、並びに、試料導入部23とポンプ排出口24bが接続されて、後述の活性炭フィルタ22から提供されたキャリアガスが、成分検出経路10内を捕集装置11から検出装置12に向かって流動されるように接続を切り替える。また、流動方向切替バルブ25は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0025】
バッファ26は、ポンプ24による流動の乱れを抑制し、流動量を一定に保つための既存のものであり、バッファ26を経路上に配設することで流動量が安定するため検出精度を高めることができる。また、ポンプ24の流動の乱れによる誤差が許容範囲内であれば、バッファ26を省略してもよい。
【0026】
試料導入部23は、GC装置1の構成の端部に配設されており、試料ガス成分を捕集するときに、GC装置1に対して試料ガスを導入するための導入部であるとともに、試料ガス成分を検出するときに、試料ガス成分を搬送したキャリアガスをGC装置1外に排出する排出部としても機能するものである。
【0027】
活性炭フィルタ22は、請求項のフィルタに相当し、試料導入部23とは反対側に位置するGC装置1の端部に配設されており、ポンプ24および流動方向切替バルブ25によって、成分検出経路10内を捕集装置11から検出装置12に向かう方向に吸引することにより、活性炭フィルタ22に接続された大気吸入口21から大気が吸入され、活性炭が大気に含まれる不純物を取り除いてキャリアガスを生成するものである。また、活性炭フィルタ22は、その内部が減圧された状態で大気に通過されると、活性炭が捕集した不純成分が脱離されて活性炭が清浄される。
【0028】
バイパス経路31は、捕集装置11を迂回して試料ガスおよびキャリアガスを流動させるためのガス流路であり、その一端が捕集装置11と検出装置12との間にバイパスバルブ32を介して接続され、その他端が捕集装置11と活性炭フィルタ22との間に接続されている。
【0029】
バイパスバルブ32は、例えば、既存の三方電磁弁などが用いられ、捕集装置11と検出装置12との間に位置するバイパス経路31の端部に設けられている。また、3つのポートa、b、cを備え、ポートaには検出装置12側に位置する捕集装置11の端部、ポートbにはバイパス経路31、ポートcには検出装置12、がそれぞれ接続されている。バイパスバルブ32は、キャリアガスを流動させる経路として、捕集装置11またはバイパス経路31のどちらか一方を選択して切り替えるものであり、即ち、捕集装置11と検出装置12(a−c接続)、または、バイパス経路31と検出装置12(b−c接続)、を選択的に接続するものである。また、バイパスバルブ32は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。なお、バイパスバルブ32は、バイパス経路31の一方の端部に設けているが、これに限らず、捕集装置11およびバイパス経路31のどちらか一方と検出装置12とを選択的に接続するものであれば、バイパス経路31の他方の端部または両端部に設けてもよい。
【0030】
排出バルブ42は、例えば、既存の三方電磁弁などが用いられており、また、3つのポートd、e、fを備え、ポートdには活性炭フィルタ22が、ポートeにはオリフィス30Bを介して排出口41が、ポートfには検出装置12側とは反対側に位置する捕集装置11の端部が、それぞれ接続されている。そして、排出バルブ42は、試料ガスの導入に応じて、捕集装置11と排出口41とを接続し(e−f接続)、キャリアガスの導入に応じて、前記端部と活性炭フィルタ22とを接続する(d−f接続)。また、排出バルブ42は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0031】
排出口41は、オリフィス30Bを介して排出バルブ42に接続されており、試料ガスの導入に応じて捕集装置11と接続され、成分検出経路10内を通過した試料ガスをGC装置1外に排出するものである。また、捕集装置11において脱離された試料ガス成分を検出装置12に導入するとき(即ち、打ち込み動作時)は、排出口41からパージガスとして大気が吸入される。
【0032】
オリフィス30Aは、請求項の圧損発生部に相当し、ガス通過時に圧力損失が発生するよう、その内径が絞られて形成された管路であり、大気吸入口21と活性炭フィルタ22との間に直列に配設されている。
【0033】
オリフィス30Bは、請求項の圧損発生部に相当し、その形状および発生する圧力損失が上記オリフィス30Aと同一であり、排出口41と排出バルブ42との間に直列に配設されている。
【0034】
オリフィス35は、上記オリフィス30A、30Bより発生する圧力損失が小さくなるよう形成されており、バイパス経路31上に直列に配設されている。
【0035】
制御装置51は、制御対象部位である捕集管加熱冷却装置11b(ア)、カラム加熱冷却装置12b(イ)、検出センサ12c(ウ)、ポンプ24(エ)、流動方向切替バルブ25(オ)、バイパスバルブ32(カ)、および、排出バルブ42(キ)に接続されており、それぞれを連動して制御する図示しないマイクロコンピュータ(MPU)を備えている。MPUは、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)、CPUのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM、各種のデータを格納するとともにCPUの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM、および、上述した制御対象部位との間で制御情報を送受信するためのシリアルインタフェースなどを含むI/O部等で構成されている。
【0036】
制御装置51のCPUは、ROMに格納されたプログラムに基づいて、捕集管11aの温度が適温となるように捕集管11aの加熱・冷却を行う捕集管加熱冷却手段、分離カラム12aの温度が適温となるように分離カラム12aの加熱・冷却を行うカラム加熱冷却手段、試料ガスに含まれる試料ガス成分を検出する成分検出手段、成分検出経路10内を流動される試料ガスおよびキャリアガスの流量および流速を制御する流量制御手段、試料ガスの導入に応じて、試料ガスが検出装置12から捕集装置11に向かって流動されるようにポンプ24による流動方向を切り替え、キャリアガスの導入に応じて、キャリアガスが捕集装置11から検出装置12に向かって流動されるようにポンプ24による流動方向を切り替える流動方向切替手段、キャリアガスが流動される経路として捕集装置11およびバイパス経路31のどちらか一方を選択して切り替えるバイパス選択手段、および、試料ガスの導入に応じて、捕集装置11と排出口41とを接続し、キャリアガスの導入に応じて、捕集装置11側と活性炭フィルタ22とを接続する排出口選択手段、として動作するものである。
【0037】
次に、ガスクロマトグラフ装置1の制御装置51(即ち、CPU)が実行する本発明に係る処理の一例を、図3に示すフローチャート、および、図4〜図9に示す各ステップに対応する概略動作図を参照して説明する。
【0038】
制御装置51のCPUは、GC装置1の電源投入により起動されると、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を捕集装置11から検出装置12に向かう方向(以下、検出方向)に切り替え、バイパスバルブ32によって、検出装置12と捕集装置11とを接続(a−c接続)し、排出バルブ42によって、活性炭フィルタ22と捕集装置11とを接続(d−f接続)する、などの所定の初期化動作を実行したあと、ステップS110に進む。
【0039】
ステップS110では、捕集管加熱冷却装置11bおよびカラム加熱冷却装置12bによって、捕集管11aおよび分離カラム12aを高温に加熱して不純成分を取り出したのち、ポンプ24によるキャリアガス(即ち、パージガス)流動を開始する。これにより、加熱による高温に加えて、オリフィス30Aからポンプ24までの区間に生じる負圧によって、活性炭フィルタ22、捕集管11a、および、分離カラム12aからより効率的に不純成分を取り出すことができる。そして、不純成分はパージガスによってGC装置1外に排出される(以上、図4 クリーニング1動作)。不純成分の排出が完了したのち、ステップS120に進む。
【0040】
ステップS120では、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を検出装置12から捕集装置11に向かう方向(以下、捕集方向)に切り替え、バイパスバルブ32によって、検出装置12とバイパス経路31とを接続(b−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって、捕集管11aを冷却し、そして、試料導入部23から試料ガスを導入する。これにより、導入初期の試料ガスをバイパス経路31および活性炭フィルタ22を経由して大気吸入口21から排出して、流動方向切り替えによる試料ガス流量の乱れがなくなって安定するまで試料ガスを導入して、流量の乱れによる捕集効率の低下を回避する(以上、図5 サンプリング1動作)。試料ガス流量が安定したのち、ステップS130に進む。
【0041】
ステップS130では、排出バルブ42によって、排出口41と捕集装置11とをオリフィス30Bを介して接続(e−f接続)し、バイパスバルブ32によって、検出装置12と捕集装置11とを接続(a−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって、捕集管11aの冷却を継続して行う。これにより、試料ガスが、検出装置12を通過して捕集装置11に導入され、捕集装置11により試料ガス成分の捕集が行われたのち、捕集装置11を通過した試料ガスが排出口41から排出される(以上、図6 サンプリング2動作)。サンプリング1動作およびサンプリング2動作において、分離カラム12aの加熱を継続して行うことにより、分離カラム12a内に試料ガス成分が留まることを防ぎ、そして、捕集管11aを冷却することにより、試料ガス成分が捕集管11aに吸着(捕集)されやすくしている。また、オリフィス30Bが、排出口41から試料ガスを排出するときの流動抵抗となることから、試料ガスの流動によりオリフィス30Bからポンプ24までの区間に正圧が生じ、捕集管11a内の圧力が高まって、捕集管11aへの試料ガス成分の吸着が促進される。また、オリフィス30Aとオリフィス30Bとオリフィス35とによって、各バルブの切り替え前後における試料ガスの流動抵抗の差異が小さくなり、サンプリング1動作からサンプリング2動作への移行時等、各動作の移行時に排出バルブ42又はバイパスバルブ32の切り替えによって生じる各ガスの流動の乱れが最小限に抑えられる。そして、試料ガス成分の捕集が完了したのち、ステップS140に進む。
【0042】
ステップS140では、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を検出方向に切り替えてキャリアガス(即ち、パージガス)を流動させ、バイパスバルブ32によって、検出装置12とバイパス経路31とを接続(b−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって捕集管11aを高温に加熱する。これにより、パージガスが活性炭フィルタ22からバイパス経路を経由して検出装置12(即ち、分離カラム12a)を通過して試料導入部23から排出されるので、パージガスの流動によりオリフィス30Aからバイパス経路31を経由したポンプ24までの区間に負圧が生じ、活性炭フィルタ22、および、分離カラム12aからより効率的に不純成分が取り出される。そして、不純成分は検出装置12内に滞留している試料ガスとともにパージガスによって押し出され、GC装置1外に排出される。また、これら動作と並行して、捕集装置11において捕集管11aが加熱されることにより、試料ガス成分の脱離が行われる。(以上、図7 クリーニング2動作)。そして、検出装置12内に滞留していた試料ガス等の排出が完了したのち、カラム加熱冷却装置12bにより分離カラム12aを冷却する。そして、分離カラム12aがガス成分分離に適した温度まで冷却され、且つ、捕集装置11での試料ガス成分の脱離が十分に行われたのち、ステップS150に進む。なお、この分離カラム12aの温度は、検出動作まで維持される。
【0043】
ステップS150では、バイパスバルブ32によって、検出装置12と捕集装置11とを接続(a−c接続)する。これにより、捕集装置11内に脱離されて滞留している高濃度の試料ガスが、排出口41から吸入された大気(即ち、パージガス)によって押し出され、検出装置12(即ち、分離カラム12a)に導入される(以上、図8 打ち込み動作)。このとき、捕集管11aの加熱による脱離に加えて、パージガスの流動によりオリフィス30Bからポンプ24までの区間に負圧が生じ、捕集管11aからの試料ガス成分の脱離が促進されて、より効率的に試料ガス成分が脱離される。そして、高濃度の試料ガスが分離カラム12a内に導入されたのち、ステップS160に進む。
【0044】
ステップS160では、バイパスバルブ32によって、検出装置12とバイパス経路31とを接続(b−c接続)し、キャリアガスによって、分離カラム12a内に導入された試料ガスに含まれる試料ガス成分が、分離カラム12a内で分離され、それぞれの試料ガス成分が時間差をもって検出センサ12cに搬送されて、各成分の検出が行われる(以上、図9 検出動作)。また、検出動作時のキャリアガスの流量は、ガス流路5内に負圧は生じない程度に小さいものである。そして、全ての検出対象成分が搬送されたのち、本フローチャートの処理を終了する。なお、上述したステップS110、S150は、請求項の脱離工程に相当する。
【0045】
次に、上述したガスクロマトグラフ装置1における、試料ガスの成分検出を行うときの動作の一例について、図4〜図9を参照して説明する。
【0046】
ガスクロマトグラフ装置1での成分検出は、最初に、捕集管11aおよび分離カラム12aを高温に加熱するとともに、オリフィス30Aからポンプ24までの区間に負圧を生じるようにキャリアガスを流動させ、活性炭フィルタ22、捕集管11a、および、分離カラム12aから不純成分を取り出して、ガス流路5のクリーニングを行う(図4 クリーニング1動作)。
【0047】
ガス流路5のクリーニング完了後、捕集管11aを冷却する。そして、試料導入部23から試料ガスを導入し、導入した試料ガスを、検出装置12、捕集装置11、及び、オリフィス30Bを順に通過させ排出口41から排出するとともに、オリフィス30Bからポンプ24までの区間に正圧が生じるように流動させて、試料ガス成分の捕集を行う。(図5 サンプリング1動作、図6 サンプリング2動作)。
【0048】
試料ガス成分の捕集完了後、捕集管11aを加熱して、捕集された試料ガス成分を脱離させる。また、それと同時に、オリフィス30Aからバイパス経路31を経由したポンプ24までの区間に負圧を生じるようにキャリアガスを流動させ、活性炭フィルタ22および分離カラム12aから不純成分を取り出して、検出装置12内等に滞留する試料ガスと共にキャリアガスによって試料導入部23から排出する。(図7 クリーニング2動作)。
【0049】
活性炭フィルタ22及び検出装置12のクリーニング完了後、分離カラム12aを冷却し、捕集管11aから脱離された試料ガス成分を検出装置12(即ち、分離カラム12a)に導入する(図8 打ち込み動作)。また、この導入に際して、捕集管11a内に負圧が生じるようにガス流路5内に大気を流動させる。
【0050】
そして、分離カラム12aを予め定められた昇温速度で加熱し、バイパス経路31を経由して分離カラム12aにキャリアガスを導入することによって、脱離された試料ガス成分を検出センサ12cまで搬送し、試料ガス成分の検出を行う(図9 検出動作)。
【0051】
上記サンプリング2動作時は、ポンプ24の下流に捕集管11a及びオリフィス30Bがあるので、試料ガスがポンプ24によって捕集管11aに押し込まれるように流動されるため、オリフィス30Bからポンプ24までの間に正圧が生じ、また、打ち込み動作時は、ポンプ24の上流に捕集管11a及びオリフィス30Bがあるので、捕集管11a内に滞留している試料ガスがポンプ24によって吸い出されるように流動されるため、オリフィス30Bからポンプ24までの間に負圧が生じる。そして、本実施形態でのオリフィス30A、及び、オリフィス30Bにおいて発生する圧力差(圧力損失)ΔPfは次式で表される。
ΔPf = 4λ(ρμ2/2)・(L/D) [Pa]………(1)
ここで、D:オリフィス内径、L:オリフィス管長さ、ρ:流体密度、μ:粘性係数、λ:管摩擦係数、である。ここで、本実施形態での数値として、オリフィス内径(D)0.05mm、オリフィス管長さ(L)1.0mm、流体密度(ρ)1.2kg/m3、粘性係数(μ)0.000018Pa・s(20℃)、管摩擦係数(λ)5.65×10-2、等の数値を(1)式に代入して計算した結果、ΔPfの値は約19.58kPaとなり、即ち、サンプリング2動作時及び打ち込み動作時にそれぞれ生じる正圧および負圧は上記ΔPfとなり、特許文献1において示される構成より大きな圧力差を捕集管12a内全体にわたって生じさせることができる。
【0052】
上記より、本実施形態によれば、オリフィス30A、オリフィス30Bおよびポンプ24によって、ガス流路5のオリフィス30A又はオリフィス30Bからポンプ24までの区間に負圧が生じるようにパージガス(即ち、キャリアガス又は大気)がガス流路5内に引き込まれて流動されることから、パージガス流動時に捕集管11aの内部全体に亘って負圧が生じ、捕集管11aに捕集された試料ガス成分の脱離をより効率的に行うことができる。また、ポンプ24によって、パージガスを引き込むように流動させることから、より強い負圧を生じさせることができ、試料ガス成分の脱離をさらに効率的に行うことができる。そのため、より濃度の高い試料ガスを生成することができ、そして、捕集管11aをよりきれいに清浄することができる。また、オリフィス30A及びオリフィス30Bは、捕集管11aの上流に配置されていればよく、捕集管11aに連設する必要がないので、ガス流路5の構成における制限が解消され、自由な装置設計が可能となる。
【0053】
また、活性炭フィルタ22が、捕集管11aとオリフィス30Aとの間に直列に配置されていることから、パージガス流動によるガス流路5内のクリーニング時に、活性炭フィルタ22内に負圧が生じ、活性炭フィルタ22に捕集された不純物質が脱離される(即ち、取り出される)ので、活性炭フィルタ22を清浄することができ、活性炭フィルタ22の劣化を防ぎ、その使用寿命を延ばすことができる。
【0054】
また、捕集管11aに試料ガスを導入する際に、オリフィス30Bからポンプ24までの区間に正圧が生じることから、捕集管11aへの試料ガス成分の吸着が促進され、捕集装置11による試料ガス成分の濃縮効率を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、活性炭フィルタ22と大気吸入口21との間に直列にオリフィス30Aを配設しているが、例えば、図10に示すように、クリーニングが不要なキャリアガス生成装置221を用いた構成などにおいては、キャリアガス生成装置221と捕集装置11との間にオリフィス30A1を配設し、また、オリフィス30A1と同一のオリフィス30B1をバイパス経路31上に配設することで、上記と同様に捕集管11aにおける捕集及び脱離の促進効果を得ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、検出動作時に分離カラム12aの温度を一定の温度に保ちつつ試料ガス成分の分離を行う方法(定温法)を用いているが、これに限らず、例えば、検出動作時に分離カラム12aの温度を昇温させつつ試料ガス成分の分離を行う方法(昇温法)など、検出対象となる試料ガスに応じてその方法を変更しても良い。
【0057】
なお、上述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のガスクロマトグラフ装置の基本構成図である。
【図2】本発明のガスクロマトグラフ装置の一実施形態を示す構成図である。
【図3】図2中のガスクロマトグラフ装置のCPUが実行する本発明に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図2中のガスクロマトグラフ装置のクリーニング1動作の状態を示す図である。
【図5】図2中のガスクロマトグラフ装置のサンプリング1動作の状態を示す図である。
【図6】図2中のガスクロマトグラフ装置のサンプリング2動作の状態を示す図である。
【図7】図2中のガスクロマトグラフ装置のクリーニング2動作の状態を示す図である。
【図8】図2中のガスクロマトグラフ装置の打ち込み動作の状態を示す図である。
【図9】図2中のガスクロマトグラフ装置の検出動作の状態を示す図である。
【図10】本発明のガスクロマトグラフ装置の他の実施形態を示す構成図である。
【図11】従来のガスクロマトグラフ装置の構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ガスクロマトグラフ装置
5 ガス流路
11a 捕集部材(捕集管)
20 ガス流動手段(ポンプ、流動方向切替バルブ)
22 フィルタ(活性炭フィルタ)
30(30A、30B) 圧損発生部(オリフィス)
【技術分野】
【0001】
本発明は試料ガス中に含まれる物質(成分)を検出するガスクロマトグラフ装置およびこのガスクロマトグラフ装置で用いられるガス成分脱離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)は、例えば、家屋内雰囲気等の試料ガスに含まれる揮発性有機化合物等の検出対象成分(即ち、試料ガス成分)の検出に用いられる装置であり、該試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため、分離カラムおよび検出センサを備えた検出装置のほかに、検出対象成分を捕集して濃縮するための捕集装置を備えた構成のものが一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1で提案されているGC装置100は、図11に示されるように、検出対象成分を搬送するキャリアガスを発生するガスボンベなどのキャリアガス源108、キャリアガスによって搬送された試料ガスの成分を検出する分析装置(検出装置)110、試料ガスを導入する試料導入口101、試料導入口101から導入された試料ガスを吸引して排出口115から排出する吸引ポンプ104、試料ガスから検出対象成分を捕集する捕集剤を備えた捕集管(捕集部材)102、捕集管102のキャリアガス導入側端部に連設されたオリフィス113、および、捕集管102を試料導入口101と吸引ポンプ104との間またはキャリアガス源108と分析装置110との間に選択的に接続するバルブ105、などから構成されている。
【0004】
一般的に、捕集剤からの試料ガス成分の脱離においては、主に温度と圧力が影響し、温度が高いほど、また、圧力が低いほど、試料ガス成分が捕集剤から脱離しやすくなることが知られている。そして、このGC装置100において捕集管102に捕集された検出対象成分を脱離するときには、バルブ105を切り替えて、キャリアガス源108、バルブ105、配管114b、オリフィス113、および、捕集管102の順序にそれぞれを直列に接続し、キャリアガス(即ち、パージガス)をキャリアガス源108から捕集管102に向かって流動させる。すると、パージガスは捕集管102に流入する直前でオリフィス113を通過するので、パージガスの流れがここで絞られて流速が増加した状態で捕集管102に流入するため、増加した流速によるベルヌーイ効果により捕集管102内の圧力が降下(減圧)され、捕集管102に捕集されていた検出対象成分の脱離が促進され、脱離効率の向上が図られていた。
【特許文献1】特開2006−337158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、キャリアガス源108の下流側に捕集管102が接続されていることから、捕集管102に対してオリフィス113を経由して上流側からパージガスを押し込む構成となっており、ベルヌーイ効果による減圧はオリフィス113の近傍のみ働くため、捕集管102の一部のみしか減圧による脱離促進効果が生じず、さらに、分析装置110の分離カラムは一般的に細管状に形成されているため分離カラムにおいて圧力損失が生じ、捕集管内の圧力が上昇してベルヌーイ効果による減圧が相殺されてしまうため、捕集管からの試料ガス成分の脱離が十分に行われないという問題があった。また、ベルヌーイ効果はオリフィス113の近傍のみ生じるため、捕集管102内でその効果を得るためには捕集管102とオリフィス113とを連設する必要があるので、GC装置100のガス流路の構成が制限され、装置設計の自由度が損なわれるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、捕集部材に捕集された検出対象成分の脱離をより効率的に行うことを可能とし、ガス流路構成の制限を解消することができるガスクロマトグラフ装置およびガス成分脱離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置は、図1の基本構成図に示すように、試料ガスの流動に応じて試料ガス成分を捕集し且つパージガスの流動に応じて前記捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材11aと、前記捕集部材11aを通過するように前記パージガスを流動させるガス流動手段20と、を有するガス流路5を備えたガスクロマトグラフ装置1において、前記ガス流路5が、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材11aより上流側に直列に配置され且つ前記パージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部30を有し、前記ガス流動手段20が、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材11aより下流側に直列に配置され且つ前記ガス流路5の前記圧損発生部30から前記ガス流動手段20までの区間に負圧が生じるように前記パージガスを前記圧損発生部30を介して前記ガス流路5内に引き込んで流動させる手段であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載のガスクロマトグラフ装置は、請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置において、図1の基本構成図に示すように、前記ガス流路5は、前記捕集部材11aと前記圧損発生部30との間に直列に配置され且つ大気に含まれる不純物質を捕集して前記試料ガス成分を搬送するためのキャリアガスを生成するためのフィルタ22を有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載のガス成分脱離方法は、図1の基本構成図に示すように、試料ガスの流動に応じて試料ガス成分を捕集し且つパージガスの流動に応じて前記捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材11aと、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材11aより下流側に直列に配置され且つ前記捕集部材11aを通過するように前記パージガスを流動させるガス流動手段20と、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材11aより上流側に直列に配置され且つ前記パージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部30と、を有するガス流路5を備えたガスクロマトグラフ装置1において用いられるガス成分脱離方法であって、前記ガス流路5の圧損発生部30からガス流動手段20までの区間に負圧が生じるように前記パージガスを前記圧損発生部30を介して前記ガス流路5内に引き込んで流動させる脱離工程を有することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、圧損発生部30およびガス流動手段20によって、ガス流路5の圧損発生部30からガス流動手段20までの区間に負圧が生じるようにパージガスが圧損発生部30を介してガス流路5内に引き込まれて流動されることから、パージガス流動時に捕集部材11aの内部全体に亘って負圧が生じ、捕集部材11aに捕集された試料ガス成分の脱離をより効率的に行うことができる。また、ガス流動手段20によって、パージガスを引き込むように流動させることから、より強い負圧を生じさせることができ、試料ガス成分の脱離をさらに効率的に行うことができる。また、圧損発生部30は、捕集部材11aの上流に配置されていればよく、捕集部材11aに連設する必要がないので、ガス流路5の構成における制限が解消され、自由な装置設計が可能となる。
【0011】
請求項2に記載した本発明のガスクロマトグラフ装置によれば、フィルタ22が、捕集部材11aと圧損発生部30との間に直列に配置されていることから、パージガス流動によるガス流路5内のクリーニング時に、フィルタ22内に負圧が生じ、フィルタ22に捕集された不純物質が脱離されるので、フィルタ22を清浄することができる。そのため、フィルタ22の劣化の進行を抑制することが可能となり、その使用寿命を延ばすことができる。
【0012】
請求項3に記載した本発明のガス成分脱離方法によれば、ガス流路5の圧損発生部30からガス流動手段20までの区間に負圧が生じるようにパージガスを圧損発生部30を介してガス流路5内に引き込んで流動させることから、パージガスの流動により、捕集部材11aの内部全体に亘って負圧を生じさせることができ、捕集部材11aに捕集された試料ガス成分の脱離をより効率的に行うことができる。また、ガス流路5内にパージガスを引き込むように流動させることから、より強い負圧を生じさせることができ、試料ガス成分の脱離をさらに効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一実施形態について、図2〜図9の図面を参照して説明する。
【0014】
ガスクロマトグラフ装置(以下、GC装置)1は、図2に示すように、捕集装置11および検出装置12が直列に接続されてなる成分検出経路10と、成分検出経路10の検出装置12側に順次直列に接続されたバッファ26とガス流動部20と試料導入部23と、成分検出経路10の捕集装置11側に順次直列に接続された活性炭フィルタ22とオリフィス30Aと大気吸入口21と、捕集装置11に対して並列に配設されたバイパス経路31と、バイパス経路31上に直列に接続されたオリフィス35と、捕集装置11と検出装置12との間に位置するバイパス経路31の端部に配設されたバイパスバルブ32と、捕集装置11と活性炭フィルタ22との間に配設された排出バルブ42と、排出バルブ42に順次直列に接続されたオリフィス30Bと排出口41と、GC装置1の動作を制御する制御装置51と、で構成されている。
【0015】
捕集装置11は、試料ガスに含まれる微量な成分の検出を可能とするため試料ガス成分を捕集して濃縮するための装置であり、捕集管11aと捕集管加熱冷却装置11bとを備えている。
【0016】
捕集管11aは、請求項の捕集部材に相当し、例えば、内径5mm程度、長さ20〜30cm程度のガラス管の内部に、耐熱性樹脂またはカーボンブラックなどの検出対象成分に対応した捕集剤を充填したものである。そして、低温にされた捕集管11a内部に試料ガスを通すことによって、試料ガス成分を捕集剤に吸着(捕集)したのち、高温に加熱されることで捕集した試料ガス成分が捕集剤から脱離されて、高濃度の試料ガスを生成する。また、捕集管11aは、その内部を加圧されることで試料ガス成分の吸着が促進され、その内部を減圧されることで試料ガス成分の脱離が促進される。そして、捕集管11a内に滞留しているガスは、キャリアガス又は大気(即ち、パージガス)によって、捕集管11aから押し出される。
【0017】
捕集管加熱冷却装置11bは、試料ガス成分の捕集に応じて捕集管11aを冷却し、試料ガス成分の脱離に応じて捕集管11aを加熱するものであり、加熱手段として電熱線などのヒータを備え、冷却手段としてペルチェ素子などを備えた、既存の装置である。また、捕集管加熱冷却装置11bは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0018】
検出装置12は、捕集装置11によって生成された高濃度の試料ガスが導入されてその成分検出を行う装置であり、分離カラム12aとカラム加熱冷却装置12bと検出センサ12cとを備えている。
【0019】
分離カラム12aは、試料ガスに含まれる成分の分離を行うためのものであり、内径2〜6mm、長さ数mの管に粒状の固定相を充填したパックドカラム、内径約0.5mm以下、長さ数十mの細い管の壁面に直接液状の固定相を保持させたキャピラリーカラム、または、エッチング処理によりガラス板に微細なカラム溝が形成されてなるマイクロカラムなどの、既存のカラムが用いられる。
【0020】
カラム加熱冷却装置12bは、分離カラム12aへの試料ガスの導入及び試料ガス成分の分離に応じて分離カラム12aの温度を調節するものであり、加熱手段として電熱線などのヒータを備え、冷却手段としてペルチェ素子などを備えた、既存の装置である。また、カラム加熱冷却装置12bは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0021】
検出センサ12cは、分離カラム12aにおいて分離されたのちにキャリアガスによって搬送されてきた試料ガス成分を検出するためのものであり、例えば、水素炎イオン化型検出器、熱伝導度型検出器などの既存の検出器が用いられており、検出センサ12cは、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。なお、検出センサ12cの構成および動作については、本発明の本質とは関係しないため詳細は省略する。
【0022】
ガス流動部20は、請求項のガス流動手段に相当し、試料ガスおよびキャリアガスを流動させるポンプ24と、ポンプ24が流動させる各ガスの流動方向を切り替える流動方向切替バルブ25と、で構成されている。
【0023】
ポンプ24は、ポンプ吸入口24aから吸入したガスをポンプ排出口24bから排出して流動させるものであり、成分検出経路10内を通過するように、試料ガスおよびキャリアガスを流動させ、また、それぞれのガスが適切に流動されるように、状況に応じて、その流動の速さや流動量を細かく制御できる、既存のものである。ポンプ24の流動方向は一定方向に固定されており、後述する流動方向切替バルブ25によって、成分検出経路10に接続される向きが切り替えられ、即ち、成分検出経路10内を流れるガスの流動方向が切り替えられる。なお、ポンプ24は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0024】
流動方向切替バルブ25は、例えば、四方電磁弁などが用いられ、その4つの接続口に、バッファ26と試料導入部23とポンプ吸入口24aとポンプ排出口24bとが接続されている。そして、試料ガスを導入するとき、バッファ26とポンプ排出口24b、並びに、試料導入部23とポンプ吸入口24aがそれぞれ接続されて、試料導入部23から導入された試料ガスが、成分検出経路10内を検出装置12から捕集装置11に向かって流動されるように接続を切り替え、キャリアガスを導入するとき、バッファ26とポンプ吸入口24a、並びに、試料導入部23とポンプ排出口24bが接続されて、後述の活性炭フィルタ22から提供されたキャリアガスが、成分検出経路10内を捕集装置11から検出装置12に向かって流動されるように接続を切り替える。また、流動方向切替バルブ25は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0025】
バッファ26は、ポンプ24による流動の乱れを抑制し、流動量を一定に保つための既存のものであり、バッファ26を経路上に配設することで流動量が安定するため検出精度を高めることができる。また、ポンプ24の流動の乱れによる誤差が許容範囲内であれば、バッファ26を省略してもよい。
【0026】
試料導入部23は、GC装置1の構成の端部に配設されており、試料ガス成分を捕集するときに、GC装置1に対して試料ガスを導入するための導入部であるとともに、試料ガス成分を検出するときに、試料ガス成分を搬送したキャリアガスをGC装置1外に排出する排出部としても機能するものである。
【0027】
活性炭フィルタ22は、請求項のフィルタに相当し、試料導入部23とは反対側に位置するGC装置1の端部に配設されており、ポンプ24および流動方向切替バルブ25によって、成分検出経路10内を捕集装置11から検出装置12に向かう方向に吸引することにより、活性炭フィルタ22に接続された大気吸入口21から大気が吸入され、活性炭が大気に含まれる不純物を取り除いてキャリアガスを生成するものである。また、活性炭フィルタ22は、その内部が減圧された状態で大気に通過されると、活性炭が捕集した不純成分が脱離されて活性炭が清浄される。
【0028】
バイパス経路31は、捕集装置11を迂回して試料ガスおよびキャリアガスを流動させるためのガス流路であり、その一端が捕集装置11と検出装置12との間にバイパスバルブ32を介して接続され、その他端が捕集装置11と活性炭フィルタ22との間に接続されている。
【0029】
バイパスバルブ32は、例えば、既存の三方電磁弁などが用いられ、捕集装置11と検出装置12との間に位置するバイパス経路31の端部に設けられている。また、3つのポートa、b、cを備え、ポートaには検出装置12側に位置する捕集装置11の端部、ポートbにはバイパス経路31、ポートcには検出装置12、がそれぞれ接続されている。バイパスバルブ32は、キャリアガスを流動させる経路として、捕集装置11またはバイパス経路31のどちらか一方を選択して切り替えるものであり、即ち、捕集装置11と検出装置12(a−c接続)、または、バイパス経路31と検出装置12(b−c接続)、を選択的に接続するものである。また、バイパスバルブ32は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。なお、バイパスバルブ32は、バイパス経路31の一方の端部に設けているが、これに限らず、捕集装置11およびバイパス経路31のどちらか一方と検出装置12とを選択的に接続するものであれば、バイパス経路31の他方の端部または両端部に設けてもよい。
【0030】
排出バルブ42は、例えば、既存の三方電磁弁などが用いられており、また、3つのポートd、e、fを備え、ポートdには活性炭フィルタ22が、ポートeにはオリフィス30Bを介して排出口41が、ポートfには検出装置12側とは反対側に位置する捕集装置11の端部が、それぞれ接続されている。そして、排出バルブ42は、試料ガスの導入に応じて、捕集装置11と排出口41とを接続し(e−f接続)、キャリアガスの導入に応じて、前記端部と活性炭フィルタ22とを接続する(d−f接続)。また、排出バルブ42は、後述する制御装置51に接続されており、GC装置1を構成する他の部材と連動して制御される。
【0031】
排出口41は、オリフィス30Bを介して排出バルブ42に接続されており、試料ガスの導入に応じて捕集装置11と接続され、成分検出経路10内を通過した試料ガスをGC装置1外に排出するものである。また、捕集装置11において脱離された試料ガス成分を検出装置12に導入するとき(即ち、打ち込み動作時)は、排出口41からパージガスとして大気が吸入される。
【0032】
オリフィス30Aは、請求項の圧損発生部に相当し、ガス通過時に圧力損失が発生するよう、その内径が絞られて形成された管路であり、大気吸入口21と活性炭フィルタ22との間に直列に配設されている。
【0033】
オリフィス30Bは、請求項の圧損発生部に相当し、その形状および発生する圧力損失が上記オリフィス30Aと同一であり、排出口41と排出バルブ42との間に直列に配設されている。
【0034】
オリフィス35は、上記オリフィス30A、30Bより発生する圧力損失が小さくなるよう形成されており、バイパス経路31上に直列に配設されている。
【0035】
制御装置51は、制御対象部位である捕集管加熱冷却装置11b(ア)、カラム加熱冷却装置12b(イ)、検出センサ12c(ウ)、ポンプ24(エ)、流動方向切替バルブ25(オ)、バイパスバルブ32(カ)、および、排出バルブ42(キ)に接続されており、それぞれを連動して制御する図示しないマイクロコンピュータ(MPU)を備えている。MPUは、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)、CPUのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM、各種のデータを格納するとともにCPUの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM、および、上述した制御対象部位との間で制御情報を送受信するためのシリアルインタフェースなどを含むI/O部等で構成されている。
【0036】
制御装置51のCPUは、ROMに格納されたプログラムに基づいて、捕集管11aの温度が適温となるように捕集管11aの加熱・冷却を行う捕集管加熱冷却手段、分離カラム12aの温度が適温となるように分離カラム12aの加熱・冷却を行うカラム加熱冷却手段、試料ガスに含まれる試料ガス成分を検出する成分検出手段、成分検出経路10内を流動される試料ガスおよびキャリアガスの流量および流速を制御する流量制御手段、試料ガスの導入に応じて、試料ガスが検出装置12から捕集装置11に向かって流動されるようにポンプ24による流動方向を切り替え、キャリアガスの導入に応じて、キャリアガスが捕集装置11から検出装置12に向かって流動されるようにポンプ24による流動方向を切り替える流動方向切替手段、キャリアガスが流動される経路として捕集装置11およびバイパス経路31のどちらか一方を選択して切り替えるバイパス選択手段、および、試料ガスの導入に応じて、捕集装置11と排出口41とを接続し、キャリアガスの導入に応じて、捕集装置11側と活性炭フィルタ22とを接続する排出口選択手段、として動作するものである。
【0037】
次に、ガスクロマトグラフ装置1の制御装置51(即ち、CPU)が実行する本発明に係る処理の一例を、図3に示すフローチャート、および、図4〜図9に示す各ステップに対応する概略動作図を参照して説明する。
【0038】
制御装置51のCPUは、GC装置1の電源投入により起動されると、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を捕集装置11から検出装置12に向かう方向(以下、検出方向)に切り替え、バイパスバルブ32によって、検出装置12と捕集装置11とを接続(a−c接続)し、排出バルブ42によって、活性炭フィルタ22と捕集装置11とを接続(d−f接続)する、などの所定の初期化動作を実行したあと、ステップS110に進む。
【0039】
ステップS110では、捕集管加熱冷却装置11bおよびカラム加熱冷却装置12bによって、捕集管11aおよび分離カラム12aを高温に加熱して不純成分を取り出したのち、ポンプ24によるキャリアガス(即ち、パージガス)流動を開始する。これにより、加熱による高温に加えて、オリフィス30Aからポンプ24までの区間に生じる負圧によって、活性炭フィルタ22、捕集管11a、および、分離カラム12aからより効率的に不純成分を取り出すことができる。そして、不純成分はパージガスによってGC装置1外に排出される(以上、図4 クリーニング1動作)。不純成分の排出が完了したのち、ステップS120に進む。
【0040】
ステップS120では、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を検出装置12から捕集装置11に向かう方向(以下、捕集方向)に切り替え、バイパスバルブ32によって、検出装置12とバイパス経路31とを接続(b−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって、捕集管11aを冷却し、そして、試料導入部23から試料ガスを導入する。これにより、導入初期の試料ガスをバイパス経路31および活性炭フィルタ22を経由して大気吸入口21から排出して、流動方向切り替えによる試料ガス流量の乱れがなくなって安定するまで試料ガスを導入して、流量の乱れによる捕集効率の低下を回避する(以上、図5 サンプリング1動作)。試料ガス流量が安定したのち、ステップS130に進む。
【0041】
ステップS130では、排出バルブ42によって、排出口41と捕集装置11とをオリフィス30Bを介して接続(e−f接続)し、バイパスバルブ32によって、検出装置12と捕集装置11とを接続(a−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって、捕集管11aの冷却を継続して行う。これにより、試料ガスが、検出装置12を通過して捕集装置11に導入され、捕集装置11により試料ガス成分の捕集が行われたのち、捕集装置11を通過した試料ガスが排出口41から排出される(以上、図6 サンプリング2動作)。サンプリング1動作およびサンプリング2動作において、分離カラム12aの加熱を継続して行うことにより、分離カラム12a内に試料ガス成分が留まることを防ぎ、そして、捕集管11aを冷却することにより、試料ガス成分が捕集管11aに吸着(捕集)されやすくしている。また、オリフィス30Bが、排出口41から試料ガスを排出するときの流動抵抗となることから、試料ガスの流動によりオリフィス30Bからポンプ24までの区間に正圧が生じ、捕集管11a内の圧力が高まって、捕集管11aへの試料ガス成分の吸着が促進される。また、オリフィス30Aとオリフィス30Bとオリフィス35とによって、各バルブの切り替え前後における試料ガスの流動抵抗の差異が小さくなり、サンプリング1動作からサンプリング2動作への移行時等、各動作の移行時に排出バルブ42又はバイパスバルブ32の切り替えによって生じる各ガスの流動の乱れが最小限に抑えられる。そして、試料ガス成分の捕集が完了したのち、ステップS140に進む。
【0042】
ステップS140では、流動方向切替バルブ25によって、ポンプ24による流動方向を検出方向に切り替えてキャリアガス(即ち、パージガス)を流動させ、バイパスバルブ32によって、検出装置12とバイパス経路31とを接続(b−c接続)し、また、カラム加熱冷却装置12bによって、分離カラム12aの加熱を継続して行うとともに、捕集管加熱冷却装置11bによって捕集管11aを高温に加熱する。これにより、パージガスが活性炭フィルタ22からバイパス経路を経由して検出装置12(即ち、分離カラム12a)を通過して試料導入部23から排出されるので、パージガスの流動によりオリフィス30Aからバイパス経路31を経由したポンプ24までの区間に負圧が生じ、活性炭フィルタ22、および、分離カラム12aからより効率的に不純成分が取り出される。そして、不純成分は検出装置12内に滞留している試料ガスとともにパージガスによって押し出され、GC装置1外に排出される。また、これら動作と並行して、捕集装置11において捕集管11aが加熱されることにより、試料ガス成分の脱離が行われる。(以上、図7 クリーニング2動作)。そして、検出装置12内に滞留していた試料ガス等の排出が完了したのち、カラム加熱冷却装置12bにより分離カラム12aを冷却する。そして、分離カラム12aがガス成分分離に適した温度まで冷却され、且つ、捕集装置11での試料ガス成分の脱離が十分に行われたのち、ステップS150に進む。なお、この分離カラム12aの温度は、検出動作まで維持される。
【0043】
ステップS150では、バイパスバルブ32によって、検出装置12と捕集装置11とを接続(a−c接続)する。これにより、捕集装置11内に脱離されて滞留している高濃度の試料ガスが、排出口41から吸入された大気(即ち、パージガス)によって押し出され、検出装置12(即ち、分離カラム12a)に導入される(以上、図8 打ち込み動作)。このとき、捕集管11aの加熱による脱離に加えて、パージガスの流動によりオリフィス30Bからポンプ24までの区間に負圧が生じ、捕集管11aからの試料ガス成分の脱離が促進されて、より効率的に試料ガス成分が脱離される。そして、高濃度の試料ガスが分離カラム12a内に導入されたのち、ステップS160に進む。
【0044】
ステップS160では、バイパスバルブ32によって、検出装置12とバイパス経路31とを接続(b−c接続)し、キャリアガスによって、分離カラム12a内に導入された試料ガスに含まれる試料ガス成分が、分離カラム12a内で分離され、それぞれの試料ガス成分が時間差をもって検出センサ12cに搬送されて、各成分の検出が行われる(以上、図9 検出動作)。また、検出動作時のキャリアガスの流量は、ガス流路5内に負圧は生じない程度に小さいものである。そして、全ての検出対象成分が搬送されたのち、本フローチャートの処理を終了する。なお、上述したステップS110、S150は、請求項の脱離工程に相当する。
【0045】
次に、上述したガスクロマトグラフ装置1における、試料ガスの成分検出を行うときの動作の一例について、図4〜図9を参照して説明する。
【0046】
ガスクロマトグラフ装置1での成分検出は、最初に、捕集管11aおよび分離カラム12aを高温に加熱するとともに、オリフィス30Aからポンプ24までの区間に負圧を生じるようにキャリアガスを流動させ、活性炭フィルタ22、捕集管11a、および、分離カラム12aから不純成分を取り出して、ガス流路5のクリーニングを行う(図4 クリーニング1動作)。
【0047】
ガス流路5のクリーニング完了後、捕集管11aを冷却する。そして、試料導入部23から試料ガスを導入し、導入した試料ガスを、検出装置12、捕集装置11、及び、オリフィス30Bを順に通過させ排出口41から排出するとともに、オリフィス30Bからポンプ24までの区間に正圧が生じるように流動させて、試料ガス成分の捕集を行う。(図5 サンプリング1動作、図6 サンプリング2動作)。
【0048】
試料ガス成分の捕集完了後、捕集管11aを加熱して、捕集された試料ガス成分を脱離させる。また、それと同時に、オリフィス30Aからバイパス経路31を経由したポンプ24までの区間に負圧を生じるようにキャリアガスを流動させ、活性炭フィルタ22および分離カラム12aから不純成分を取り出して、検出装置12内等に滞留する試料ガスと共にキャリアガスによって試料導入部23から排出する。(図7 クリーニング2動作)。
【0049】
活性炭フィルタ22及び検出装置12のクリーニング完了後、分離カラム12aを冷却し、捕集管11aから脱離された試料ガス成分を検出装置12(即ち、分離カラム12a)に導入する(図8 打ち込み動作)。また、この導入に際して、捕集管11a内に負圧が生じるようにガス流路5内に大気を流動させる。
【0050】
そして、分離カラム12aを予め定められた昇温速度で加熱し、バイパス経路31を経由して分離カラム12aにキャリアガスを導入することによって、脱離された試料ガス成分を検出センサ12cまで搬送し、試料ガス成分の検出を行う(図9 検出動作)。
【0051】
上記サンプリング2動作時は、ポンプ24の下流に捕集管11a及びオリフィス30Bがあるので、試料ガスがポンプ24によって捕集管11aに押し込まれるように流動されるため、オリフィス30Bからポンプ24までの間に正圧が生じ、また、打ち込み動作時は、ポンプ24の上流に捕集管11a及びオリフィス30Bがあるので、捕集管11a内に滞留している試料ガスがポンプ24によって吸い出されるように流動されるため、オリフィス30Bからポンプ24までの間に負圧が生じる。そして、本実施形態でのオリフィス30A、及び、オリフィス30Bにおいて発生する圧力差(圧力損失)ΔPfは次式で表される。
ΔPf = 4λ(ρμ2/2)・(L/D) [Pa]………(1)
ここで、D:オリフィス内径、L:オリフィス管長さ、ρ:流体密度、μ:粘性係数、λ:管摩擦係数、である。ここで、本実施形態での数値として、オリフィス内径(D)0.05mm、オリフィス管長さ(L)1.0mm、流体密度(ρ)1.2kg/m3、粘性係数(μ)0.000018Pa・s(20℃)、管摩擦係数(λ)5.65×10-2、等の数値を(1)式に代入して計算した結果、ΔPfの値は約19.58kPaとなり、即ち、サンプリング2動作時及び打ち込み動作時にそれぞれ生じる正圧および負圧は上記ΔPfとなり、特許文献1において示される構成より大きな圧力差を捕集管12a内全体にわたって生じさせることができる。
【0052】
上記より、本実施形態によれば、オリフィス30A、オリフィス30Bおよびポンプ24によって、ガス流路5のオリフィス30A又はオリフィス30Bからポンプ24までの区間に負圧が生じるようにパージガス(即ち、キャリアガス又は大気)がガス流路5内に引き込まれて流動されることから、パージガス流動時に捕集管11aの内部全体に亘って負圧が生じ、捕集管11aに捕集された試料ガス成分の脱離をより効率的に行うことができる。また、ポンプ24によって、パージガスを引き込むように流動させることから、より強い負圧を生じさせることができ、試料ガス成分の脱離をさらに効率的に行うことができる。そのため、より濃度の高い試料ガスを生成することができ、そして、捕集管11aをよりきれいに清浄することができる。また、オリフィス30A及びオリフィス30Bは、捕集管11aの上流に配置されていればよく、捕集管11aに連設する必要がないので、ガス流路5の構成における制限が解消され、自由な装置設計が可能となる。
【0053】
また、活性炭フィルタ22が、捕集管11aとオリフィス30Aとの間に直列に配置されていることから、パージガス流動によるガス流路5内のクリーニング時に、活性炭フィルタ22内に負圧が生じ、活性炭フィルタ22に捕集された不純物質が脱離される(即ち、取り出される)ので、活性炭フィルタ22を清浄することができ、活性炭フィルタ22の劣化を防ぎ、その使用寿命を延ばすことができる。
【0054】
また、捕集管11aに試料ガスを導入する際に、オリフィス30Bからポンプ24までの区間に正圧が生じることから、捕集管11aへの試料ガス成分の吸着が促進され、捕集装置11による試料ガス成分の濃縮効率を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、活性炭フィルタ22と大気吸入口21との間に直列にオリフィス30Aを配設しているが、例えば、図10に示すように、クリーニングが不要なキャリアガス生成装置221を用いた構成などにおいては、キャリアガス生成装置221と捕集装置11との間にオリフィス30A1を配設し、また、オリフィス30A1と同一のオリフィス30B1をバイパス経路31上に配設することで、上記と同様に捕集管11aにおける捕集及び脱離の促進効果を得ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、検出動作時に分離カラム12aの温度を一定の温度に保ちつつ試料ガス成分の分離を行う方法(定温法)を用いているが、これに限らず、例えば、検出動作時に分離カラム12aの温度を昇温させつつ試料ガス成分の分離を行う方法(昇温法)など、検出対象となる試料ガスに応じてその方法を変更しても良い。
【0057】
なお、上述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のガスクロマトグラフ装置の基本構成図である。
【図2】本発明のガスクロマトグラフ装置の一実施形態を示す構成図である。
【図3】図2中のガスクロマトグラフ装置のCPUが実行する本発明に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図2中のガスクロマトグラフ装置のクリーニング1動作の状態を示す図である。
【図5】図2中のガスクロマトグラフ装置のサンプリング1動作の状態を示す図である。
【図6】図2中のガスクロマトグラフ装置のサンプリング2動作の状態を示す図である。
【図7】図2中のガスクロマトグラフ装置のクリーニング2動作の状態を示す図である。
【図8】図2中のガスクロマトグラフ装置の打ち込み動作の状態を示す図である。
【図9】図2中のガスクロマトグラフ装置の検出動作の状態を示す図である。
【図10】本発明のガスクロマトグラフ装置の他の実施形態を示す構成図である。
【図11】従来のガスクロマトグラフ装置の構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ガスクロマトグラフ装置
5 ガス流路
11a 捕集部材(捕集管)
20 ガス流動手段(ポンプ、流動方向切替バルブ)
22 フィルタ(活性炭フィルタ)
30(30A、30B) 圧損発生部(オリフィス)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスの流動に応じて試料ガス成分を捕集し且つパージガスの流動に応じて前記捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材と、前記捕集部材を通過するように前記パージガスを流動させるガス流動手段と、を有するガス流路を備えたガスクロマトグラフ装置において、
前記ガス流路が、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材より上流側に直列に配置され且つ前記パージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部を有し、
前記ガス流動手段が、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材より下流側に直列に配置され且つ前記ガス流路の前記圧損発生部から前記ガス流動手段までの区間に負圧が生じるように前記パージガスを前記圧損発生部を介して前記ガス流路内に引き込んで流動させる手段である
ことを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記ガス流路は、前記捕集部材と前記圧損発生部との間に直列に配置され且つ大気に含まれる不純物質を捕集して前記試料ガス成分を搬送するためのキャリアガスを生成するためのフィルタを有することを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
試料ガスの流動に応じて試料ガス成分を捕集し且つパージガスの流動に応じて前記捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材と、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材より下流側に直列に配置され且つ前記捕集部材を通過するように前記パージガスを流動させるガス流動手段と、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材より上流側に直列に配置され且つ前記パージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部と、を有するガス流路を備えたガスクロマトグラフ装置において用いられるガス成分脱離方法であって、
前記ガス流路の圧損発生部からガス流動手段までの区間に負圧が生じるように前記パージガスを前記圧損発生部を介して前記ガス流路内に引き込んで流動させる脱離工程を有する
ことを特徴とするガス成分脱離方法。
【請求項1】
試料ガスの流動に応じて試料ガス成分を捕集し且つパージガスの流動に応じて前記捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材と、前記捕集部材を通過するように前記パージガスを流動させるガス流動手段と、を有するガス流路を備えたガスクロマトグラフ装置において、
前記ガス流路が、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材より上流側に直列に配置され且つ前記パージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部を有し、
前記ガス流動手段が、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材より下流側に直列に配置され且つ前記ガス流路の前記圧損発生部から前記ガス流動手段までの区間に負圧が生じるように前記パージガスを前記圧損発生部を介して前記ガス流路内に引き込んで流動させる手段である
ことを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記ガス流路は、前記捕集部材と前記圧損発生部との間に直列に配置され且つ大気に含まれる不純物質を捕集して前記試料ガス成分を搬送するためのキャリアガスを生成するためのフィルタを有することを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
試料ガスの流動に応じて試料ガス成分を捕集し且つパージガスの流動に応じて前記捕集した試料ガス成分が脱離される捕集部材と、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材より下流側に直列に配置され且つ前記捕集部材を通過するように前記パージガスを流動させるガス流動手段と、前記パージガスの流動方向に対して前記捕集部材より上流側に直列に配置され且つ前記パージガス流動時に圧力損失を発生させる圧損発生部と、を有するガス流路を備えたガスクロマトグラフ装置において用いられるガス成分脱離方法であって、
前記ガス流路の圧損発生部からガス流動手段までの区間に負圧が生じるように前記パージガスを前記圧損発生部を介して前記ガス流路内に引き込んで流動させる脱離工程を有する
ことを特徴とするガス成分脱離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−236590(P2009−236590A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81076(P2008−81076)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
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