説明

ガスクロマトグラフ装置

【課題】オーブン内に外気を取り込む吸気口と、オーブンと筐体との間の空間に空気を流通させる排気ファンが近接配置されていても、カラム及びオーブンを速やかに冷却する。
【解決手段】筐体12の後面部の右半部には、オーブン内に空気を排出・吸入するための排気口24及び吸気口26が上下に並んで設けられている。また、筐体12の後面部のうち前記吸気口26の左部には筐体12とオーブンとの間の空間に空気を流通させてオーブンの周壁を冷却する排気ファン30が設けられている。排気ファン30と吸気口26、吸気口26と排気口24との間にはL字状の仕切板37が設けられており、排気ファン30及び排気口26から排出された高温の空気が吸気口26からオーブン内に流入することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブン内を換気するための吸気口及び排気口と、前記オーブンの周囲を冷却するための冷却ファンを備えたガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なガスクロマトグラフ装置は、筐体の内部にオーブンが配置されており、筐体とオーブン外壁の間の空間に電気系の制御基板が配置されている。多くの場合、分析用のカラムはオーブンに収容され、徐々に温度が上昇するように加熱される。これにより、カラムに注入された試料中の成分が分離される。通常は、試料注入時のカラム温度は低く、徐々に昇温することにより試料中の成分が分離され、最後の成分が分離されるときには200℃程度の高温になる。従って、分析が終了し、次の試料をカラムに注入して分析を開始するためには、速やかに高温のカラム及びオーブンを冷却する必要がある。このため、ガスクロマトグラフ装置では、分析終了後、前記オーブン内に設置された撹拌用のファンでオーブン内を強制的に換気している。
【0003】
また、オーブンが高温になると、制御基板の電気回路の特性が変化してガスクロマトグラフ装置による分析動作が不安定になる。このため、冷却用の排気ファンにより筐体とオーブン外壁の間の空間に空気を流通させて、オーブン外壁及び制御基板を冷却している。
ガスクロマトグラフ装置は、通常、オーブンの上部に試料注入口や検出部用試料流出口が配置されており、オーブン内を換気するための吸気口及び排気口や前述の冷却用の排気ファンは、筐体の後面部にまとめて配置されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-19867号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、排気ファンと吸気口がまとめて配置されていると、冷却用ファンによって排出された高温の空気が吸気口からオーブン内に吸入されることになり、カラムやオーブンの冷却効率が低下する。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、オーブン内に外気を取り込む吸気口と、オーブンと筐体との間の空間に空気を流通させる排気ファンとがまとめて配置されているものにおいて、カラム及びオーブンを速やかに冷却することができるガスクロマトグラフ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係るガスクロマトグラフ装置は、筐体内にカラムを加熱するためのオーブンを配置したものであって、
a)前記筐体の一側面に配置され、前記筐体と前記オーブンとの間の空間に空気を流通させて前記オーブンの周壁を冷却する排気ファンと、
b)前記排気ファンが配置された前記筐体の側面と同一側面に配置された、前記オーブン内に空気を吸入・排出するための吸気口及び排気口と、
c)前記吸気口と前記冷却ファンとの間に設けられた仕切板と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスクロマトグラフ装置では、近接して配置された吸気口と冷却用の排気ファンとの間に仕切板を設けたので、排気ファンによって排出された高温の空気が吸気口から取り込まれることを防止することができ、カラムやオーブンを迅速に冷却することができる。このように冷却速度が速くなることにより、ある試料の分析が終了してから次の試料の分析を開始できるようになるまでの待ち時間が短くなる。従って、同じ条件で(即ち、カラムを変えずに)多数の試料を連続分析する際の全試料の分析終了までの時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係るガスクロマトグラフ装置の背面図。
【図2】本実施例のガスクロマトグラフ装置の内部構造を模式的に示す概略図。
【図3】オーブン内温度の時間的変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一実施例について添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例のガスクロマトグラフ装置の背面図、図2は本実施例のガスクロマトグラフ装置の内部構造を模式的に示す概略図である。図2では、説明の便宜のため、実際とは異なる位置関係で各要素を描いている。
【0011】
本実施例のガスクロマトグラフ装置において、矩形箱状のオーブン10は断熱材から成る壁で囲われ、筐体12の内部に配置されている。オーブン10と筐体12との間には適度の空間が設けられている。オーブン10内にはカラム14が取り外し可能に収容されている。カラムの一端は試料導入口16に接続され、他端は検出器18に接続されている。
【0012】
オーブン10内には、加熱用のヒータ20、撹拌用のファン22が設置されている。筐体12の後面部の右半部(前方からみて左半部)には矩形状の排気口24及び吸気口26が上下に並んで形成されている。排気口24及び吸気口26は、それぞれ、共通の駆動機構で開閉可能な扉24a及び26a(図2にのみ示す)を備える。また、排気口24及び吸気口26は図示しない排気ダクト及び吸気ダクトを介してオーブン10内と連通している。前記ファン22が回転駆動されると、オーブン10内の空気が撹拌され、オーブン10内の空気が排気口24から排出されると共に外部の空気が吸気口26からオーブン10内に流入する。
【0013】
また、筐体12の後面部のうち前記吸気口26の左部には円形状の開口28が形成されており、この開口28内に冷却用の排気ファン30が配置されている。排気ファン30はファンモータ32によって回転駆動される。なお、図2では、オーブン10下部の空間にファンモータ32を描いているが、実際はオーブン10の後壁と筐体12との間の空間にファンモータ32は配置されており、その回転軸の一端部で排気ファン30を回転駆動し、他端部で撹拌用のファン22を回転駆動する。
【0014】
オーブン10の下面と筐体12との間の空間にはガスクロマトグラフ装置の電気系統を制御する制御装置34が配置されている。制御装置34は、CPU、RAM、ROMなどを含むマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0015】
本実施例では、筐体12の後面部に開口28と吸気口26の間に位置する第1仕切部35、排気口24と吸気口26の間に位置する第2仕切部36を有するL字状の仕切板37が設けられている。この仕切板37の前後方向の高さ寸法は、例えば6〜10cmに設定されている。
【0016】
本実施例のガスクロマトグラフ装置では、分析中(昇温時)及び分析終了時(冷却時)のいずれにおいても、ファンモータ32によって撹拌用ファン22及び排気用ファン30が常時回転される。分析中は、排気口24及び吸気口26の扉24a及び26aが閉じており、撹拌用ファン22の送風作用によってオーブン10内の空気が循環され、オーブン10内の温度が均一に保たれる。一方、分析終了時は、排気口24及び吸気口26の扉24a及び26aが開放される。この時、同時に、吸気口26に設けられた吸気用ファン25(図2にのみ示す)も回転を始める。この結果、吸気口26からオーブン10内に比較的温度の低い外気が取り込まれ、撹拌用ファン22の送風作用によってオーブン10内の空気が循環され、温度の高い空気が排気口24から排出される。これにより、オーブン10内の冷却が促進される。なお、分析中、分析終了時のいずれにおいても、排気ファン30の送風作用により、外気の取込口39からオーブン10外壁と筐体12との間の空間に空気が取り込まれ、当該空間を流通した後、開口28から排出される。
【0017】
このとき、吸気口26と開口28との間、吸気口26と排気口24との間に仕切板37が設けられているため、排気ファン30によって開口28から排出された高温の空気、及び撹拌用ファン22によって排気口24から排出された高温の空気が吸気口26から取り込まれることが防止される。
【0018】
図3は、本実施例のガスクロマトグラフ装置において、仕切板37の効果を調べるために、オーブン温度を450℃から50℃に冷却するために要した時間を実験的に求めた結果を示す。実験は、以下の条件のもと、高さ寸法が6cm、10cmの仕切板37を設けたガスクロマトグラフ装置、及び仕切板がない従来のガスクロマトグラフ装置を用いて行った。図3中、曲線Aは仕切板37の高さ寸法が6cm、曲線Bは仕切板37の高さ寸法が10cmのときの冷却時間を示す。曲線Cは仕切板がない従来のガスクロマトグラフ装置の冷却時間を示す。
・ファンモータ32の回転数:1200回転/分(50Hzのとき)、1450回転/分(60Hzのとき)
・排気口24及び吸気口26の大きさ:100mm×100mm
・吸気用ファン25の仕様 最大風量:2.55m3/min
最大静圧:211Pa
回転速度:6300r/min
【0019】
図3に示すように、仕切板37がないときの冷却時間は4分5秒程度であるのに対して、6cmの仕切板37があると3分54秒、10cmの仕切板37があると3分24秒に冷却時間が短縮された。
このように、本実施例では、仕切板37を取り付けたため、高温のカラム及びオーブンの冷却時間を短縮することができる。このため、分析終了からカラムを交換するまでの時間を短縮することができ、多数の分析対象について連続して分析する際の分析時間の短縮化を図ることができる。
【0020】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような変形が可能である。
仕切板は少なくとも冷却ファンと吸気口の間にあれば良く、吸気口と排気口との間の仕切部は省略しても良い。
仕切板の高さ寸法は大きいほど排気ファンによって排出された高温の空気が吸気口から取り込まれることを防止する効果は高くなるが、その分、仕切板が筐体から大きく突出してガスクロマトグラフ装置の設置場所を制約することになる。従って、仕切板の高さ寸法は、排気ファンの風量と、吸気口からの取り込み風量、筐体の大きさなどを考慮して適宜の大きさに設定する。
【符号の説明】
【0021】
10・・・オーブン
12・・・筐体
14・・・カラム
20・・・加熱用のヒータ
22・・・撹拌用ファン
24・・・排気口
25・・・吸気用ファン
26・・・吸気口
30・・・排気ファン
32・・・ファンモータ
35・・・第1仕切部
36・・・第2仕切部
37・・・仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内にカラムを加熱するためのオーブンを配置したガスクロマトグラフ装置において、
a)前記筐体の一側面に配置され、前記筐体と前記オーブンとの間の空間に空気を流通させて前記オーブンの周壁を冷却する排気ファンと、
b)前記排気ファンが配置された前記筐体の側面と同一側面に配置された、前記オーブン内に空気を吸入・排出するための吸気口及び排気口と、
c)前記吸気口と前記冷却ファンとの間に設けられた仕切板と
を備えることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置において、
前記仕切板は、吸気口と冷却ファンとの間に位置する第1仕切部と前記吸気口と前記排気口との間に位置する第2仕切部から成ることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−249730(P2010−249730A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101023(P2009−101023)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)