説明

ガスクロマトグラフ

【課題】オーブン内を照明することによりカラム交換等のオーブン内作業の作業性を改善したガスクロマトグラフを提供する。
【解決手段】オーブン外に照明用の光源7を設け、この光源7から光ファイバー8によりオーブン内部に光を導くように構成する。このように構成することにより、照明装置の耐熱性を考慮することなくオーブン内部を照明することが可能となり、カラム4の交換やガス漏れテストの作業に際して作業者の手元が明るく照明されるので、作業性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスクロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフは、試料成分を分離する役割を担うカラムを収容しこれを所定温度にコントロールするオーブン(恒温槽)を備えている。一般的なガスクロマトグラフ用オーブンは、例えば特許文献1に従来技術として示されているように、前面に扉を有する箱形の断熱容器で構成される。
【0003】
図2に従来のガスクロマトグラフ用オーブンの構造の一例を断面図で示す。
同図に示すように、箱形のオーブン筐体2は、金属板の間に断熱材を挟んだ槽壁23で構成され、槽壁23と前面の扉1で囲われた内部空間である槽室24にカラム4が収められ、カラム4の後方(図では右方)には図示しない加熱用ヒータと槽内空気を循環させるファン3が設けられる。ファン3を回すモータ31はオーブン筐体2の外部背面に設けられ、オーブン筐体2の上部には、分析すべき試料をカラム4に導入する試料導入部5とカラム4で分離された試料成分を検出し電気信号として取り出す検出器6が設けられる。試料導入部5と検出器6の底部はそれぞれカラム接続部51および61としてオーブン筐体2の内壁下面(天井面25)に露出しており、これらにカラム4の両端がそれぞれ接続されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−108664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスクロマトグラフィにおいては分析対象に応じて種類やサイズの異なるカラムを用いるので、頻繁にカラムを交換する必要がある。カラムの交換は、オーブンの扉を開け、カラム接続部のネジを緩めてカラムを取り外し、新たなカラムの両端をカラム接続部に挿入して再度ネジを締めることで行われる。これはオーブン内の天井面での作業であるから、作業者に不自然な姿勢を強いることになるばかりでなく、実験室は通常は上方から照明されているため、槽内天井面には光が届き難く、作業者の手元が暗くなるので作業性が悪かった。あるいは外部からの照明具を用いたとしても、作業者の手元が暗くなると言う作業性の悪さを改善することは出来なかった。
【0006】
このような問題に対処するために考えられる手段はオーブン内部の上部より照明することであるが、オーブン内の温度は400°C以上にもなる高温であるから、照明装置の耐熱性を考えるとオーブン内に照明装置を設けることは困難である。また、オーブン壁の一部をガラスなどの透過性のある部材とし、外部から照明すると、オーブンの断熱性が悪くなる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、オーブン内を照明することによりカラム交換等のオーブン内作業の作業性を改善したガスクロマトグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、オーブン外に照明用の光源を設け、この光源から光ファイバー等の導光手段によりオーブン内部に光を導くように構成する。このように構成することにより、照明装置の耐熱性を考慮することなくオーブン内部を照明することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記のように構成されているので、カラム交換やガス漏れテストの作業に際して作業対象が明るく照明されるので、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明が提供するガスクロマトグラフの第1の特徴はオーブン内を照明するための光源をオーブンの外部に設けるように構成した点にあり、第2の特徴はその光源から光ファイバーで光をオーブン内に導くように構成した点である。ここで言う光ファイバーは、500℃以上の高温にも耐えうる石英、あるいはガラス製である。
従って、最良の形態の基本的な構成は、上記の特徴的構成を具備するガスクロマトグラフである。
【0010】
図1に本発明の一実施例を示す。同図におけるオーブンの基本的な構成は図2に示す従来例と同様であり、同図中で図2と同符号を付したものは図2と同一物であるから、ここでは再度の説明を略す。
本実施例では、図2の従来構成に加えて、オーブン筐体2の外部後方に設けた照明用の光源7と、この光源7とオーブン内部の槽室24とを連通するように槽壁23を貫通する光ファイバー8とを備えている。白熱灯などを内蔵する光源7は、槽壁23の外壁にネジ止め等により固定される。光源7の取り付け位置は、図示のように、オーブン筐体2の後方上面が適当と考えられるが、光ファイバー8でオーブン内部と連通可能な位置であればどこでもよい。光ファイバー8は極く細いので、槽壁23に直径1mm以下の小孔を穿設すれば挿通することが可能であり、この小孔を通してオーブンの熱気が漏れる恐れもほとんどないが、必要に応じて耐熱性のブッシング(図示しない)を用いて隙間を塞ぐようにしてもよい。光ファイバー8のオーブン内の末端は天井面25のカラム接続部51、61に向くように位置や方向が調節されている。
【0011】
光ファイバー8は導光性と可撓性を有する材料であり、曲げた状態でもその中を光が伝わるので、上記のように構成することで光源7から発する光はオーブン内に導かれ、カラム接続部51および61とその周辺を照明することができる。また、光ファイバー8は自在に曲げることができるので、その末端から出射される照明光Aが作業対象を適切に照射するように調節することが可能である。
光ファイバー8は耐熱性にも優れており、500°C程度の温度まで耐えられるから、オーブンの熱により損傷を受ける恐れはない。
加えて、石英あるいはガラス製の光ファイバーは有機物を材質として有しない事が多いので、オーブン内の高温に晒されても、有機ガスを発生しない。ガスクロマトグラフは有機物の分析装置であり、オーブン内部より有機ガスを発生しないため、本発明により、分析精度を悪化させる事はない。
【0012】
変形例として、光ファイバー8を複数本用いてカラム接続部51および61を各々照明し、或いは槽内のその他の作業箇所も照明するようにしてもよい。また、ドアスイッチを利用することにより、扉1を開けた状態でのみ光源7が点灯するようにも構成できる。
なお、光源7からオーブン内に光を導く導光手段としては、光ファイバー8に限らず、例えば、内面に鏡面加工を施した金属ダクトなどを用いることもできる。
商品展示などのセールスプロモーション時においては、着色された光源(赤色、緑色など)を使用することにより、集客できる効果も期待出来る。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明はガスクロマトグラフに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】従来のオーブンの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
1 扉
2 オーブン筐体
3 ファン
4 カラム
5 試料導入部
6 検出器
7 光源
8 光ファイバー
23 槽壁
24 槽室
25 天井面
31 モータ
51 カラム接続部
61 カラム接続部
A 照明光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラムを収容するオーブンを備えたガスクロマトグラフにおいて、前記オーブンの外部に設けた照明用の光源と、前記光源から発する光を前記オーブンの内部まで導く導光手段とを備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ。
【請求項2】
導光手段に光ファイバーを用いることを特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−298705(P2008−298705A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147650(P2007−147650)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)