説明

ガスクロマトグラフ

【課題】 モータに高温の熱が伝導しないようにしたまま、大きさを小さくすることができるガスクロマトグラフを提供する。
【解決手段】 貫通孔16aが形成された断熱性の壁12、15、16を有するハウンジング10と、ハウンジング10の内部に配置され、試料が通過するカラム11と、ハウンジング10の内部に配置され、ハウンジング10の内部の空気を加熱するヒータ13と、ハウンジング10の内部に配置されるファン14と、ハウンジング10の外部に配置されるモータ17と、ハウンジング10の貫通孔16aを貫通することにより、ハウンジング10の内部のファン14と、ハウンジング10の外部のモータ17とを連結する金属製のシャフト18とを備えるガスクロマトグラフであって、シャフト18には、ファン14とモータ17とを連結する連結方向に垂直となる断面積が小さくなるように変化する小断面部分18aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブンの内部にカラムを収容して、カラムの温度を調節するガスクロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフでは、試料ガスが、キャリアガスに押されてカラムの入口端からカラム内に導入される。これにより、試料ガスに含まれる各測定物質は、カラム内を通過する間に時間軸方向に分離されて、カラムの出口端に到達することになる。このとき、試料ガスを所定の温度でカラム内を通過させるために、オーブンの内部にカラムを収容して、オーブンの内部の温度(例えば、450℃までの任意の温度)Tを調節することができるガスクロマトグラフが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来のガスクロマトグラフの一例の断面図であり、また、図4は、図3に示すモータの拡大断面図である。
ガスクロマトグラフは、オーブン2と、試料ガスが通過するカラム11と、ラジアルファン14と、モータ17と、ラジアルファン14とモータ17とを連結するシャフト58とを備える。
オーブン2は、上下左右の4面の断熱性の壁12と、断熱性の背面壁16と、断熱性の前面壁となる前面扉15とで囲われた立方体形状のハウンジング10を備え、ハウンジング10の内部には、ハウンジング10の内部の空気を加熱するヒータ13が収容されている。
【0004】
また、ハウンジング10の内部には、カラム11とラジアルファン14とが収容されるとともに、ハウンジング10の外部には、モータ17が設けられている。
そして、背面壁16には円柱形状の貫通孔16aが形成されており、シャフト58が貫通孔16aを貫通することにより、ハウンジング10の内部のラジアルファン14と、ハウンジング10の外部のモータ17とを連結する。
【0005】
シャフト58は、所定の耐熱性と所定の強度を有する金属(例えば、鉄等)で形成されており、例えば、直径10mm、長さ150mm等の円柱形状ある。そして、シャフト58の一端部は、ラジアルファン14の中央部に固定されるとともに、シャフト58の他端部は、モータ17に対して円柱形状の中心軸を回転軸として回転自在となるように支持されている。すなわち、円柱形状の中心軸と回転軸とが、ラジアルファン14とモータ17とを連結する連結方向となる。
モータ17は、円筒形状のフレーム17aと、フレーム17aの内周面に固定されたステータ17bと、シャフト58の他端部の外周面に固定されたロータ17cと、シャフト58がフレーム17aに対して回転自在となるようにシャフト58の他端部を支持する2個のベアリング17dとを有する。ベアリング17dには、シャフト58を滑らかに回転させるために、潤滑油が使用されている。
【0006】
このようなガスクロマトグラフにおいて、ヒータ13に通電電力を供給することによってハウンジング10の内部の空気を加熱して、モータ17に通電電力を供給することによってシャフト58を介してラジアルファン14を回転させることで加熱された空気を循環させることにより、ハウンジング10の内部を均一の目的温度Tにするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−68520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したようなガスクロマトグラフでは、モータ17が100℃以上の高温になると、モータ17のベアリング17dの潤滑油等が揮発したり、電気導線(図示せず)等が劣化したりしてしまうため、ハウンジング10の外部に配置されるとともに、ハウンジング10の内部の高温の熱が、金属製のシャフト58を介してモータ17まで伝導しないように、シャフト58の長さをL(例えば、150mm以上)と長くしている。
よって、シャフト58の長さをLと長くする必要があるため、ガスクロマトグラフ自体の大きさを小さくすることができないという問題点があった。
そこで、本発明は、モータに高温の熱が伝導しないようにしたまま、大きさを小さくすることができるガスクロマトグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明のガスクロマトグラフは、貫通孔が形成された断熱性の壁を有するハウンジングと、前記ハウンジングの内部に配置され、試料が通過するカラムと、前記ハウンジングの内部に配置され、前記ハウンジングの内部の空気を加熱するヒータと、前記ハウンジングの内部に配置されるファンと、前記ハウンジングの外部に配置されるモータと、前記ハウンジングの貫通孔を貫通することにより、前記ハウンジングの内部のファンと、前記ハウンジングの外部のモータとを連結する金属製のシャフトとを備えるガスクロマトグラフであって、前記シャフトには、前記ファンとモータとを連結する連結方向に垂直となる断面積が小さくなるように変化する小断面部分が形成されているようにしている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガスクロマトグラフによれば、シャフトには、連結方向に垂直となる断面積が小さくなるように変化する小断面部分が形成されているので、シャフトの長さを短くしても、モータにハウンジングの内部の高温の熱がシャフトを介して伝導しないようにすることができる。よって、シャフトの長さを短くすることができるので、ガスクロマトグラフ自体の大きさを小さくすることができる。
【0011】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記小断面部分は、前記連結方向に垂直となる方向に貫通する穴が形成されたものであるようにしてもよい。
本発明のガスクロマトグラフによれば、シャフトは回転するので、所定の強度を有する必要があるが、穴によって小断面部分を形成しているので、シャフトの強度をあまり低下させないものとすることができる。
【0012】
そして、上記の発明において、前記シャフトは、前記連結方向が中心軸となる円柱形状であり、前記モータは、前記円柱形状の中心軸を回転軸としてシャフトを回転させることで、前記ファンを回転させることにより、前記ハウンジングの内部の空気を攪拌させるようにしてもよい。
本発明のガスクロマトグラフによれば、シャフトは、中心軸を回転軸として回転するので、穴を外部の室温の空気が通過することによって、シャフトを伝達する熱を冷却することができる。
【0013】
さらに、上記の発明において、前記モータは、円筒形状のフレームと、当該フレームの内周面に固定されたステータと、前記シャフトの外周面に固定されたロータと、前記シャフトがフレームに対して回転自在となるようにシャフトを支持するベアリングとを有するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態のガスクロマトグラフの一例の断面図である。
【図2】図1に示すシャフトの図である。
【図3】従来のガスクロマトグラフの一例の断面図である。
【図4】図3に示すモータの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態のガスクロマトグラフの一例の断面図である。また、図2(a)は、図1に示すシャフトの斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すシャフトの小断面部分の断面図である。なお、上述したガスクロマトグラフと同様のものについては、同じ符号を付している。
ガスクロマトグラフは、オーブン2と、試料ガスが通過するカラム11と、ラジアルファン14と、モータ17と、ラジアルファン14とモータ17とを連結するシャフト18とを備える。
【0017】
シャフト18は、所定の耐熱性と所定の強度を有する金属(例えば、鉄等)で形成されており、例えば、直径D=10mm、長さ100mm等の円柱形状ある。そして、シャフト18の一端部は、ラジアルファン14の中央部に固定されるとともに、シャフト18の他端部は、モータ17に対して円柱形状の中心軸を回転軸として回転自在となるように支持されている。すなわち、円柱形状の中心軸と回転軸とが、ラジアルファン14とモータ17とを連結する連結方向となる。
シャフト18には、図2に示すように、直径D=4mmの円柱形状の2個の穴18aが形成されている。2個の穴18aは、連結方向に垂直となる方向に貫通する。つまり、シャフト18において、連結方向と垂直となる断面積が、79mmから19mmとなるように変化する小断面部分が形成されている。
なお、シャフト18は円柱形状の中心軸を回転軸として回転するので、所定の強度を有する必要があるが、2個の穴18aによって小断面部分を形成しているので、シャフト18の強度をあまり低下させないものとなっている。
【0018】
このようなガスクロマトグラフによれば、シャフト18の長さをL(例えば、100mm以下)と短くしても、ハウンジング10の内部の高温の熱がシャフト18を介してモータ17まで伝導することを抑えることができる。また、シャフト18は、中心軸を回転軸として回転するので、2個の穴18aを外部の室温の空気が通過することによって、ハウンジング10の内部の高温の熱がシャフト18を伝導するうちに冷却されるようにもなっている。
したがって、シャフト18の長さを短くすることができるので、ガスクロマトグラフ自体の大きさを小さくすることができる。
【0019】
(他の実施形態)
上述したガスクロマトグラフでは、シャフト18には、円柱形状の2個の穴18aが形成されている構成を示したが、円柱形状以外の形状の穴が形成されていてもよく、さらに1個や3個の穴が形成されているような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、オーブンの内部にカラムを収容して、カラムの温度を調節するガスクロマトグラフに利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
2 オーブン
10 ハウンジング
11 カラム
12 壁
13 ヒータ
14 ラジアルファン
15 前面扉
16 背面壁
16a 貫通孔
17 モータ
18、58 シャフト
18a 穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された断熱性の壁を有するハウンジングと、
前記ハウンジングの内部に配置され、試料が通過するカラムと、
前記ハウンジングの内部に配置され、前記ハウンジングの内部の空気を加熱するヒータと、
前記ハウンジングの内部に配置されるファンと、
前記ハウンジングの外部に配置されるモータと、
前記ハウンジングの貫通孔を貫通することにより、前記ハウンジングの内部のファンと、前記ハウンジングの外部のモータとを連結する金属製のシャフトとを備えるガスクロマトグラフであって、
前記シャフトには、前記ファンとモータとを連結する連結方向に垂直となる断面積が小さくなるように変化する小断面部分が形成されていることを特徴とするガスクロマトグラフ。
【請求項2】
前記小断面部分は、前記連結方向に垂直となる方向に貫通する穴が形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項3】
前記シャフトは、前記連結方向が中心軸となる円柱形状であり、
前記モータは、前記円柱形状の中心軸を回転軸としてシャフトを回転させることで、前記ファンを回転させることにより、前記ハウンジングの内部の空気を攪拌させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項4】
前記モータは、円筒形状のフレームと、当該フレームの内周面に固定されたステータと、前記シャフトの外周面に固定されたロータと、前記シャフトがフレームに対して回転自在となるようにシャフトを支持するベアリングとを有することを特徴とする請求項3に記載のガスクロマトグラフ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−164454(P2010−164454A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7462(P2009−7462)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)