説明

ガスコンロにおける乱流形成装置

【課題】容易に乱流形成体の装着の有無が検査でき、最大ガス流動量が異なる場合であっても、適正な混合ガスを生成し良好な燃焼を行うことが可能となるガスコンロにおける乱流形成方法を提供する。
【解決手段】ノズル孔から噴出する燃料ガスと前段一次空気とが筒体において混合されて第1混合気を成し、さらに、燃焼用空気と第1混合気とを混合した第2混合気を燃焼させる火炎形成部を有するガスコンロにおいて、筒体の先端から噴出される前記第1混合気の流れに乱れを生じさせる乱流形成体が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス噴出用のノズル孔とそのノズル孔に燃焼ガスを供給するガス流動路を備えたガスノズルと、このガスノズルから噴出する燃料ガスとその燃料ガスが噴出されることによるエジェクター効果により吸引される燃焼用空気とを混合する混合部と、この混合部にて混合された混合気を燃焼させる火炎形成部とを有するガス燃焼部とが備えられ、前記ガスノズルにおける前記ガス流動路に燃料ガスの流れに乱れを生じさせる乱流形成体が備えられているガスコンロにおける乱流形成方法及び前記ガスコンロにおける乱流形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ガスコンロは、ガスノズルから燃料ガスが噴出されることによるエジェクター効果により燃焼用空気としての燃焼用一次空気が吸引され、ガスノズルから噴出される燃料ガスと吸引した燃焼用一次空気とを混合部において混合させて混合気を生成して、火炎形成部に導くようになっており、火炎形成部では、混合気を一次燃焼させながら燃焼用二次空気を供給して二次燃焼を行わせる、すなわちブンゼン燃焼を行うものである。
【0003】
また、上記ガスコンロでは、ガスノズルにおけるガス流動路に燃料ガスの流れに乱れを生じさせる乱流形成体が備えられており、ガスノズルから噴出される燃料ガスの噴出速度が低下しても、乱流形成体により、燃焼用空気の吸引比率(以下、空気吸引比率という)の低下を防止して良好に混合気を形成することができる。
そして、このようにガスノズルのガス流動路に燃料ガスの流れに乱れを生じさせる乱流形成体を備えさせるにあたり、従来、ノズル孔の上流に障害物としてキャップを配置しノズルから噴出するガス流を乱流状態にすることで、バーナの混合管部におけるガス流による一次空気の吸引を促進する技術が知られている。(例えば、特許文献1参照。)上記従来技術では、使用者がガス量を絞ったときに急激にガス量が低下した場合も、乱流状態を維持して空気吸引比率の低下を抑えるようにしてある。
【0004】
また、ガスバーナに設けられ、筒体の内空に設けられた噴出孔から燃料ガスを噴出すると共に、その燃料ガスの噴出に伴い、前記筒体の外周に設けられた吸引孔から前記筒体の内空に吸い込まれる一次空気を、前記燃料ガスと合流させて筒体の先端に設けられた開口からガスバーナへ向けて噴出するガスノズルを用いて一次空気率を向上させることができる技術が知られている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−211028号公報
【特許文献2】特開平11−182819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7に示すように、特許文献1の技術と特許文献2の技術を組み合わせて用いると、ガスの流量が小流量の時の一次空気の吸引比率(以下、一次吸引率という)をさらに高くでき、器具栓操作等で急激にガス量が下がっても、乱流状態を維持して吸引の低下を抑える効果が得られるものであるが、つぎの課題がありこれらの点の改善が望まれていた。
【0007】
(1)ノズル内の障害物はノズル内に仕込まれているので、ノズルの外観からは存在の有り無しの判断が困難で、入れ忘れたときの確認が困難である。(ノズル孔からピンゲージを通す等の検査により可能であるが手間がかかることになる。)
【0008】
つまり、工場において当該技術を用いた製品や部品を生産する際に、外観によって検査できないことから、ピンゲージなどの検査装置による検査を必要とすることになり、検査の工数増加に起因して生産コストの増加を招くことになってしまうので、改善が望まれていた。
【0009】
(2)ガスの流れに対して乱れを加えることになるので、ガスの噴出速度(ガス流量)に応じた乱れしか加えることが出来ない。
【0010】
しかし、燃料ガスの種類あるいはガス燃焼量が異なる場合においては、ガスの噴出速度(ガス流量)が異なり、燃焼状態が不安定になるおそれがある。
【0011】
つまり、ガスコンロとしては、火炎形成部が大径の調理用鍋等の大型の被加熱物に対応するような大径の火炎を形成する大火力用のガス燃焼部や、火炎形成部が小径の調理用鍋等の小型の被加熱物に対応するような小径の火炎を形成する小火力用のガス燃焼部を備えるガスコンロ等が存在するものであり、そして、大火力用のガス燃焼部における最大ガス流動量は、小火力用のガス燃焼部における最大ガス流動量に比べて多いものとなる。
【0012】
そして、このような最大ガス流動量が異なるガス燃焼部を備えるガスコンロに対して、ガスの噴出速度(ガス流量)に依存した乱れを生じせしめる乱流形成体では、最大ガス流動量が異なる場合には、適正な混合ガスを生成できなくなることがあり、改善が望まれていた。
【0013】
また、ガスコンロに使用される燃料ガスとしては、例えばLPガスや都市ガス等、異なる種類の燃料ガスが用いられることがあるが、このように種類が異なる燃料ガスは単位ガス量当たりの発熱量が異なるものであり、発熱量の多い燃料ガスは発熱量の少ない燃料ガスよりもガスノズルからの噴出速度を大きくして、エジェクター効果を高める必要があるが、異なる種類の燃料ガスに対して同様の乱流形成体を用いると、発熱量の多い燃料ガスと、発熱量の少ない燃料ガスとに対する乱流効果が異なることに起因して、適正な混合ガスを生成できなくなることがあり、改善が望まれていた。
【0014】
本発明の目的は、生産の際には容易にその装着の有無が検査できて、かつ、ガス燃焼部における最大ガス流動量が異なる場合であっても、適正な混合ガスを生成して良好な燃焼を行うことが可能となるガスコンロにおける乱流形成方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るガスコンロにおける乱流形成装置は、
ガス噴出用のノズル孔とそのノズル孔に燃料ガスを供給するガス流動路を備えたガスノズルと、吸引口を備える筒体とにより主体が構成され、前記ノズル孔から前記燃料ガスが噴出されることによるエジェクター効果によって、燃焼用空気を前段一次空気として前記吸引口から吸引し、前記ノズル孔から噴出する前記燃料ガスと前記前段一次空気とが前記筒体において混合されて第1混合気を成し、さらに、前記第1混合気を前記筒体の先端から噴出し、前記第1混合気が供給されて、前記第1混合気が前記筒体の先端から噴出されることによるエジェクター効果によって吸引される燃焼用空気と前記第1混合気とを混合し第2混合気を作る混合部と、前記第2混合気を燃焼させる火炎形成部とを有するガス燃焼部が備えられているガスコンロにおける乱流形成装置であって、その第1特徴構成は、
前記筒体に、前記筒体の先端から噴出される前記第1混合気の流れに乱れを生じさせる乱流形成体が備えられている点にある。
【0016】
すなわち、本発明の第1特徴構成では、前記筒体の先端から噴出される前記第1混合気の流れに乱れを生じさせる乱流形成体を前記筒体に備えられているのである。
【0017】
つまり、ガスコンロとして、大径の調理用鍋等の大型の被加熱物に対応するような大径の火炎を形成する大火力用のガス燃焼部や、小径の調理用鍋等の小型の被加熱物に対応するような小径の火炎を形成する小火力用のガス燃焼部を備えるガスコンロ等、被加熱物の大きさの違いに対応した燃焼状態が得られるように複数種のガス燃焼部を備えるガスコンロが存在するものであるが、大火力用のガス燃焼部は最大ガス流動量が多く、小火力用のガス燃焼部は、大火力用のガス燃焼部に比べて最大ガス流動量が少ないものであり、上記した複数種のガス燃焼部は、最大ガス流動量が互いに異なるものとなる。そして、このようなガス燃焼部における最大ガス流動量の違いがあった場合にも、ガス流動量の幅広い範囲で乱流形成効果を生じせしめることが可能になるように、混合気の流れに関するレイノルズ数が大きな値となるように、前記筒体の内部から噴出される、前記第1混合気の流れに乱れを生じさせる乱流形成体を前記筒体に備えるようにするのである。
【0018】
さらに説明すると、前記筒体の先端に設けられた開口から流出する前記第1混合気の流量は、前記吸引口から吸引される前段一次空気の流量と前記ノズル孔を流れるガスの流量との和であるから、前記ガスノズルを流れるガスの流量より大きい値となり、小さな乱流形成体であっても大きな乱れを生じせしめる効果が得られるのである。
【0019】
つまり、任意の流路を通過するガス流動量が大きい値から小さい値に変化していったときに、ガス流動量が大きい値のときにはレイノルズ数が大きい値となる乱流を形成することになるが、ガス流動量がある限界流量より小さい値となったときには、レイノルズ数が小さい値となり、乱流ではなく層流を形成する状態となる。
【0020】
一方、燃焼部において燃焼部の混合部に向けて気体を噴出させて、この噴出によるエジェクター効果によって燃焼用空気を吸引する場合、この噴出する気体が乱流であるときの方が噴出する気体が層流であるときに比べてエジェクター効果が大きいものである。
【0021】
そのため、火力が大火力の時には大きなエジェクター効果が得られることにより適切な燃焼用空気を吸引することができ良好な燃焼が可能であっても、火力を小火力に絞った場合にガス流動量がある限界流量より小さい値となったときには、レイノルズ数が小さい値となって層流を形成する状態となって、エジェクター効果が大きく低下してしまい、適切な燃焼用空気を吸引することができなくなってしまうことが考えられる。
【0022】
これに対して、乱流形成体を備えることで、噴出させる気体の流れを乱流形成体によって乱流状体に保つことができることになるが、本願においては、乱流形成体を、前記ガスノズル内ではなく、前記筒体に備えることで、レイノルズ数が大きい状態にある気体の流れを、さらに乱流形成体によって乱流状体に保つものであるから、広いガス流動量の範囲において、小さな通過抵抗を有する小さな乱流形成体により、バーナすなわちガス燃焼部の混合部における気体の噴出を乱流状体に保つという効果が得られるものとなる。
【0023】
従って、本発明の第1特徴構成によれば、ガス燃焼部における最大ガス流動量が異なる場合であっても、適正な混合ガスを生成して良好な燃焼を行うことが可能となるガスコンロにおける乱流形成体を提供できるに至った。
【0024】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記乱流形成体が、前記ノズル孔の中心軸を延長した延長軸上に配設されている点にある。
【0025】
すなわち、前記乱流形成体が前記ノズル孔の中心軸を延長した延長軸上にない場合には、前記第1混合気の流れに対して乱流を生じせしめにくいものとなるが、前記乱流形成体が前記ノズル孔の中心軸を延長した延長軸上に配設されているから、小さな通過抵抗でも大きな乱流を生じせしめることになる。
【0026】
つまり、本発明の第2特徴構成によれば、第1特徴構成による作用効果に加えて、前記乱流形成体の通過抵抗を極力小さな通過抵抗として、大きな乱流を生じせしめることができる。
【0027】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記乱流形成体が、前記延長軸上から前記筒体に向けて延びる3本以上の放射状体により構成されている点にある。
【0028】
すなわち、前記乱流形成体が、前記延長軸上から前記筒体に向けて延びる3本以上の放射状体により構成されているから、前記筒体を通過する前記第1混合気が前記筒体の内部において多少偏って流れた場合にも、前記第1混合気の流れに対して前記乱流形成体によって乱流を生じさせやすいものとなるから、乱流を生じせしめる効果のバラツキを小さいものとすることができる。
【0029】
従って、本発明の第3特徴構成によれば、第2特徴構成による作用効果に加えて、前記筒体を通過する前記第1混合気が前記筒体の内部において多少偏って流れた場合にも、前記乱流形成体により乱流を生じせしめる効果のバラツキを小さいものとすることができる
【0030】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記乱流形成体が、前記筒体の先端に設けられている点にある。
【0031】
すなわち、前記乱流形成体が、前記筒体の先端に設けられているから、外観により前記乱流形成体の有り無しが判別可能となり、前記乱流形成体の装着の有無が確認し易いものとなる。
【0032】
従って、本発明の第4特徴構成によれば、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、前記乱流形成体の装着の有無が確認し易いものとすることができる。
【0033】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記乱流形成体が、前記筒体の壁面から離れるほど前記第1混合気の流れの下流側に位置する形態で湾曲して設けられている点にある。
【0034】
すなわち、前記筒体における前記乱流形成体装着箇所の周辺を流れる前記第1混合気の流速が小さい前記筒体の壁面近傍では、前記第1混合気の流れ方向の長い距離に亘り前記乱流形成体が存在することになり前記筒体の径方向における前記第1混合気の流速が大きい前記筒体の中心軸近傍では、前記第1混合気の流れ方向の短い距離に亘り前記乱流形成体が存在し、このようにすることで前記筒体の径方向における前記第1混合気の流速の分布に応じて効果的に乱流を生じせしめる構成とすることが容易にできる。
【0035】
従って、本発明の第5特徴構成によれば、第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかの作用効果に加えて、前記筒体の径方向における前記第1混合気の流速の分布に応じて効果的に乱流を生じせしめる乱流形成体が容易に構成できる。
【0036】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成に加えて、前記乱流形成体が、前記筒体の先端より前記第1混合気の流れの下流側に突出して設けられている点にある。
【0037】
すなわち、前記乱流形成体が、前記筒体の先端より前記第1混合気の流れの下流側に突出して設けられていることにより、前記延長軸上にある前記乱流形成体が前記筒体の先端より下流側の開放空間に位置することになり、より小さな通過抵抗で乱流を生じせしめることが可能となる。
【0038】
従って、本発明の第6特徴構成によれば、第5特徴構成による作用効果に加えて、より小さな通過抵抗で乱流を生じせしめることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ガスコンロの平面図
【図2】コンロバーナの斜視図
【図3】コンロバーナの縦断面図
【図4】乱流形成体付き二段式ガスノズルの縦断面図
【図5A】乱流形成体付き二段式ガスノズルの斜視図
【図5B】乱流形成体付き二段式ガスノズルの斜視図
【図5C】乱流形成体付き二段式ガスノズルの斜視図
【図6】流速との関係を示す、乱流形成体付き二段式ガスノズルの縦断面図
【図7】従来技術を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係るガスコンロにおける乱流形成装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、ガスコンロは、ガス燃焼部としての3つのコンロバーナ1及び図示しないグリルを備えてビルトインタイプのガスコンロにて構成されている。
3つのコンロバーナ1は、大火力バーナ1a、標準バーナ1b、小火力バーナ1cにより構成されている。
以下、コンロバーナ1について説明するが、大火力バーナ1a、標準バーナ1b、小火力バーナ1cは基本的に同じ構造であるので、大火力バーナ1aを代表にしてコンロバーナ1の構成について説明し、必要な場合には、標準バーナ1b、小火力バーナ1cについても説明する。
【0041】
このコンロバーナ1は、図2及び図3に示すように、バーナ本体2の上にバーナキャップ3が着脱自在に載置され、天板4の貫通孔5から天板4上に露出させてある。バーナ本体2と天板4の貫通孔5との間に円環状のバーナリング6が介装されており、バーナリング6と天板4との間、及び、バーナ本体2とバーナリング6との間がパッキンを介して水密構造で固定されており、天板4から煮汁等が下に落ちるのを防止している。
【0042】
また、天板4には五徳7が貫通孔5を取り巻くようにして載置されている。五徳7は、天板4に載置する環状の脚部7aと、この脚部7aの任意箇所から上方且つ中央方向に突設して鍋などの調理具を載置させる複数のコの字状の爪部7bとで構成されており、脚部7aに設けた係止部を天板4に取り付けたバーナリング6の被係止部に係止させるなどして周方向への廻り止め状態で天板4上に載置される。また、以上に述べた大火力バーナ1aではなく、標準バーナ1bにおいては、後述するバーナカバー8に開口を形成して鍋底温度センサーSを前記開口を介して上方に臨ませて設置してある。この鍋底温度センサーSにてコンロバーナ1に鍋を設置したときの鍋底の温度を検出し、この検出した温度に応じてコンロバーナ1の燃焼の各種制御ができるようになる。なお、鍋底温度センサーSを全てのコンロバーナ1に供えてもよい。
【0043】
図2に示すように、バーナ本体2は略円環状に構成され、バーナ本体2の上には円環状をしたバーナキャップ3が載置され、バーナキャップ3はバーナ本体2と同様にADC12等のアルミダイキャスト成形品でその外径は約60mmとなっており、標準バーナ1bのバーナ本体2及びバーナキャップ3の外径も大火力バーナ1aと同様に約60mmであるが、小火力バーナ1cについてはこれよりも小径となっている。
【0044】
図2及び図3に示すように、バーナ本体2は、混合部としての混合管9を一体に有するものであり、このバーナ本体2及び混合管9(混合部)はADC12等のアルミダイキャスト成形品である。混合管9(混合部)のガス入口側の開口を覆うように装着された支持板9aにて支持される状態で後述する第1混合気を吐出する乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nが設けられている。支持板9aには、周方向に適宜間隔をあけて空気取り入れ口9bが形成され、後述する乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nから、第1混合気(燃料ガスと後述する前段一次空気(燃焼用空気)との混合気)を噴出させると、第1混合気を噴出させることによるエジェクター効果により空気取り入れ口9bから燃焼用空気が吸入されて、混合管9(混合部)内で第1混合気とこの燃焼用空気とが混合されて混合ガス(第2混合気)が生成されるようになっている。バーナ本体2は円環状に形成されており、バーナ本体2の内周側の空間(後述する上下開口部12)を通っても燃焼用の二次空気が供給されるようになっている。なお、乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nについては後に詳述する。
【0045】
このバーナ本体2には円環状のガス供給室11を設けてあり、このガス供給室11は混合管9(混合部)に連通している。図2、図3に示すように、ガス供給室11は、内部に上下開口部12を形成する内筒部13と、内筒部13の径外方向に所定の間隔をあけて重ねて配置した外筒部14と、内筒部13及び外筒部14の下端同士を連結する下面部15とで囲まれた上方に開口する円環状の空間部位である。このガス供給室11の下面部15には混合管9(混合部)が連結する側の端部から反対側の端部に向けて徐々に上方に位置するような傾斜面が形成されている。つまり、バーナ本体2の上下開口部12はその下部において下方のみならず側方にも開口するように形成されている。
【0046】
バーナキャップ3は、図2、図3に示すように、中央に上下に開口した上下開口部12を有する円環状のブロック体であって、バーナキャップ3の下面の外周部がバーナ本体2に載置され、これによりガス供給室11が形成される。すなわち、バーナ本体2には円筒状をした内筒部13と外筒部14からなる円環状となり、バーナキャップ3の外周部をバーナ本体2に載置することにより、内筒部13及び外筒部14との間の上方が閉じられてガス供給室11となる。
【0047】
バーナキャップ3の下面のバーナ本体2に載置される部分には、周方向に放射状に複数の炎口用溝16が形成され、バーナキャップ3をバーナ本体2に載置した際、炎口用溝16によって外側の大気と内側のガス供給室11とが連通し、ガス供給室11の混合ガスが炎口用溝16を通って外側へと流れるように構成されている。従って、炎口用溝16の外側の開口が混合ガスが燃焼する火炎形成部としての炎口17を構成することになる。
また、バーナキャップ3の上面にはバーナキャップ3に煮汁等が付着するのを防止するためのバーナカバー8が設置され、バーナ本体2には、点火動作を行う点火プラグ20及び着火状態を検出する熱電対21も設けられている。
【0048】
図3に示すように、前記ガスノズル10は、位置固定状態で支持されるガス供給管41にネジの締め付けにより連結されており、ガス供給管41に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路22には、操作者の操作に基づいて燃料ガスの供給量を変更調節自在なガス量調節弁23が設けられ、コンロバーナにおける火力を変更調整することが可能に構成されている。
又、大火力バーナ1a、標準バーナ1b、小火力バーナ1cは、夫々、最大火力に調節された場合における燃料ガスの最大ガス流動量が互いに異なるものであり、その最大ガス流動量は、大火力バーナ1aが最も大きく、標準バーナ1bが、大火力バーナ1aの最大ガス流動量よりも小さい最大ガス流動量が設定され、さらに、小火力バーナ1cが、標準バーナ1bの最大ガス流動量よりも小さい最大ガス流動量が設定されている。また、最小火力に調節された場合におけるガス流動量も、大火力バーナ1a>標準バーナ1b>小火力バーナ1cの順に設定されている。ちなみに、このガスコンロでは、燃料ガスとして都市ガス(13A)が使用される構成となっている。
【0049】
以下、実施例を用いて説明する乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nには、以下の特徴を備えるもので、以下その具体的な構成について説明を加える。
【0050】
図3に示すように、ガスノズル10の噴出孔(ノズル孔24)から噴出される燃料ガスの流れの下流側には、筒体Tを備え、乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nを構成する。
【0051】
図4に示すように、乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nは、筒体Tの入口側に設けられたガスノズル10の噴出孔(ノズル孔24)から燃料ガスが噴出されると共に、その燃料ガスの噴出に伴うエジェクター効果によって、ガスノズル10の噴出孔(ノズル孔24)の下流側に備えられ筒体Tの外周に設けられた吸引口Kから筒体Tの内部空間に吸引される空気(前段一次空気と呼ぶ)を、
前記燃料ガスと合流させて筒体Tの先端に設けられた噴出用開口Fからガスバーナへ向けて噴出する二段式ノズルとしての基本構造を有する。なお、図4においては、ノズル10が乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nに一体に形成される場合を示してあるが、図3のようにノズル10を乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nの主構成部である筒体Tから分離可能に構成してもよい。
【0052】
さらに、筒体Tの先端に設けられた噴出用開口Fの付近には、ガスノズル10からのガスと前段一次空気が混合された混合気である第1混合気の流れに乱れを生じせしめる乱流形成体26が前記噴出用開口Fの直径方向に巾0.8mmの一文字の帯状に備えている。(図4、図5A参照。)
【0053】
前記乱流形成体26は、ノズル孔24の中心軸を延長した延長軸上に位置するものであるから、小さな通過抵抗で大きな乱流を生じせしめるものである。これに対し、前記乱流形成体26がノズル孔24の中心軸を延長した延長軸上にない場合には、延長軸上に位置する場合と比較して、乱流を生じせしめる効果が低下することが試験によって確認されている。
【0054】
なお、筒部Tの先端に設けられた噴出用開口Fの付近に上記第1混合気の流れに乱れを生じせしめる乱流形成体26を備える場合は、図7に示す従来技術の組み合わせ技術のようにノズル内障害物がガスノズル内に組み込まれている場合に比べて、次のような利点がある。
【0055】
図4に示すように、ガスノズル10を流れるガスの流量をQ1、吸引口Kから吸引される前段一次空気の流量をQ2とすると、筒体Tの先端に設けられた開口から流出する前記混合気の流量Q3はQ3=Q1+Q2であるから、Q3はQ1より大きいため、より小さな乱流形成体26により大きな乱れを生じせしめる効果が得られる。すなわち、図7に示した、従来技術の組み合わせにおけるガスノズル内障害物は、上記ガスの流量Q1に乱れを生じせしめるが、本実施例では乱流形成体26を上記第1混合気の流量Q3に乱れを生じせしめるものであり、同じガス流量におけるレイノルズ数は、ガスノズル10内より前記筒体Tの内部の方が大きいので、より小さな乱れ要素(=より小さな通過抵抗)の付加によって、流れを乱流状態に保つことができるのである。
【0056】
これにより、コンロの火力を大火から小火に急激に絞った時(急絞り時)の空気吸引比率の低下が緩やかになり、急絞り時に空気吸引比率が低下することによる燃焼速度の低下に起因する吹き消えが発生しにくいようにでき、火力を急絞りした時の燃焼性能がさらに向上されることになる。
【0057】
さらに、(1)入れ忘れが発見しやすい(外観で乱流形成体26の有り無しが分かる)、(2)ガスノズル10におけるガスの通過抵抗を小さくできるので、通過抵抗増加に起因するガス流量(インプット)の低下量を小さくすることができるから広いガスの流量範囲で乱流形成体26が共用でき生産の合理化が図れる、(3)ガスノズル10内に障害物を収納する構造ではなく乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nの筒体Tの先端付近に乱流形成体26を取り付ける構造とできるので、組み立てが容易である、等の利点を兼ね備える。
【0058】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する
【0059】
(1)乱流形成体26が前記開口の外周上における120度間隔の3点から開口の中心に向かう半径方向に巾0.2mmの3枚羽根を持つ矢車形状の帯状に、つまり、ノズル孔24の中心軸を延長した延長軸上から前記筒体Tの壁に向けて延びる3本以上の放射状体により構成される携帯で備えてもよい。(図5B参照。)この場合、上述の羽根(放射状体)を4枚以上備えるように乱流形成体26を構成してもよい。
【0060】
このように構成することで、噴出用開口Fを通過するガスと空気の混合気である第1混合気が乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nの筒体T内において多少偏って流れた場合にも、乱流を生じせしめる効果のバラツキを小さいものとすることができる。
【0061】
(2)前記乱流形成体26が、乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nの噴出部付近を構成する筒体Tの壁面から前記筒体Tの径方向の中心側に離れるほど下流側に位置するような形態で湾曲した状態で取り付けられており、前記乱流形成体26が、噴出用開口Fの先端側に、噴出用開口Fを通過するガスと空気の混合気が流れる方向の下流側に向けて円弧上に突出して湾曲した弓状に備えてえるように構成してもよい。(図5C参照。)この場合、中心軸上にある乱流形成体26が上記筒体Tの先端より下流側の開放空間に位置するように構成してもよい。
【0062】
このように構成することで、乱流形成体付き二段式ガスノズル10Nの噴出部付近を構成する筒体Tの径方向における上記第1混合気の流速が小さい筒体Tの壁面近傍では、上記第1混合気の流れ方向の長い距離に亘り乱流形成体26が存在することになり前記筒体Tの径方向における前記第1混合気の流速が大きい筒体Tの中心軸近傍では、上記第1混合気の流れ方向の短い距離に亘り乱流形成体26が存在するが、このようにすることで上記筒体Tの径方向における上記第1混合気の流速の分布に応じて効果的に乱流を生じせしめることができる。さらに、乱流形成体26が、筒体Tの先端より前記第1混合気の流れの下流側に突出するようにして設けて、上記延長軸上にある乱流形成体26が筒体Tの先端より下流側の開放空間に位置することで、より小さな通過抵抗で大きな乱流を生じせしめることが可能となる。(図6参照。)
【0063】
(3)上記実施形態では、ガス燃焼部としてのコンロバーナ1について説明したが、ガス燃焼部としてのグリルにおいても用いることができる。
【0064】
(4)乱流形成体26は、筒体Tの先端より第1混合気の流れの方向における上流側(奥側)に設けられてもよい。この場合、生産工程等における、乱流形成体26の視認性は悪くなるが、生産工程等において筒体Tの先端に異物が接触した時などにおいても、乱流形成体26が損傷しにくいものとなる。
【0065】
なお、上記実施形態で示した乱流形成体付き二段式ガスノズル10N、および、乱流形成体26について記載した数値は一例であって、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
9 混合部(混合管)
10 ガスノズル
10N 乱流形成体付き二段式ガスノズル
17 火炎形成部
24 ノズル孔
26 乱流形成体
F 噴出用開口
K 吸引口
T 筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス噴出用のノズル孔とそのノズル孔に燃料ガスを供給するガス流動路を備えたガスノズルと、吸引口を備える筒体と、により主体が構成され、
前記ノズル孔から前記燃料ガスが噴出されることによるエジェクター効果によって、燃焼用空気を前段一次空気として前記吸引口から吸引し、
前記ノズル孔から噴出する前記燃料ガスと前記前段一次空気とが前記筒体において混合されて第1混合気を成し、さらに、前記第1混合気を前記筒体の先端から噴出し、
前記第1混合気が供給されて、前記第1混合気が前記筒体の先端から噴出されることによるエジェクター効果によって吸引される燃焼用空気と前記第1混合気とを混合し第2混合気を作る混合部と、前記第2混合気を燃焼させる火炎形成部と、を有するガス燃焼部が備えられているガスコンロにおいて、
前記筒体に、前記筒体の先端から噴出される前記第1混合気の流れに乱れを生じさせる乱流形成体が備えられている乱流形成装置。
【請求項2】
前記乱流形成体が、前記ノズル孔の中心軸を延長した延長軸上に配設されている請求項1に記載のガスコンロにおける乱流形成装置。
【請求項3】
前記乱流形成体が、前記延長軸上から前記筒体に向けて延びる3本以上の放射状体により構成されている請求項2に記載のガスコンロにおける乱流形成装置。
【請求項4】
前記乱流形成体が、前記筒体の先端に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載のガスコンロにおける乱流形成装置。
【請求項5】
前記乱流形成体が、前記筒体の壁面から離れるほど前記第1混合気の流れの下流側に位置する形態で湾曲して設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスコンロにおける乱流形成装置。
【請求項6】
前記乱流形成体が、前記筒体の先端より前記第1混合気の流れの下流側に突出して設けられている請求項5に記載のガスコンロにおける乱流形成装置。

【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−15292(P2013−15292A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149749(P2011−149749)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)
【Fターム(参考)】