説明

ガスコンロ用温度検出装置

【課題】 ガスコンロにかけた調理器具の温度を正確に検出できる温度検出装置を提供する。
【解決手段】 温度検出装置7は内筒8内に感温体(センサ)9を収納し、上端開口を集熱用キャップ10で閉塞し、この集熱用キャップ10の裏面に感温体9を接触せしめ、更に内筒8の底面と集熱用キャップ10の裏面間にスプリング11を縮装し、集熱用キャップ10を上方に付勢している。また、前記内筒8の外側には外筒13を配置している。この外筒13はカップ状をなし、外筒13の底部にはゴミを落とすための開口を形成し、また外筒13の外側面には断熱層15を形成し、ガスバーナの炎が直接内側領域に影響を及ぼさないようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋やフライパン等の調理器具の底面に当接して温度を検出するガスコンロ用温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近ではガスコンロにかけている鍋やフライパンなどの調理器具の温度を、ガスコンロの中央から上方に向けて突出する温度センサに当接せしめて測定し、測定温度に応じてガスの供給量をコントロールするガスコンロが市販されている。
【0003】
上述した温度センサを備えたガスコンロにあっては、ガスの火炎がゆれたりして温度センサに接触することで、実際の調理器具の底面温度よりも測定温度が高くなる傾向がある。特に炎を内向きにした内炎式バーナにあっては、ドラフトが生じにくく、炎がセンサ若しくはセンサを覆っている集熱キャップに直接触れることによって検出温度が急激に高くなることがある。また、直接に炎に触れなくても、炎の輻射熱が強く温度センサが過熱されて、検出温度がその影響を受けて高くなることがある。そこで、ガスバーナの炎によるセンサの過熱を防止する提案がなされている。
【0004】
センサの過熱防止手段としては、大別して冷却風や気流によってセンサの過熱を防ぐ方法と、断熱構造によってガスバーナの炎による過熱を防ぐ方法があり、断熱構造を採用した先行技術としては特許文献1〜3に開示されるものが知られている。
【0005】
特許文献1には、内筒に集熱キャップを被せ、この集熱キャップ裏面に内筒内に収納したサーミスタを密着せしめ、また内筒の外側に外筒を配置し、これら内筒と外筒との間に略密閉された空間を形成し、外乱や燃焼条件によって熱気が内筒に作用するのを当該空間が遮断する構造が開示されている。
【0006】
特許文献2には、センサカバー内にスプリングを介してサーモスタットを上方に付勢した状態で収納した構造が示され、特にスプリングの上端部を支持するささえ板とサーモスタット下面との間に断熱性(熱伝導率の悪い)パッキンを介在させた構造が提案されている。
【0007】
特許文献3には、ホルダ(内筒)の上端開口を当接集熱部(集熱キャップ)で閉塞し、この当接集熱部の下面(裏面)にサーミスタを取り付け、またホルダ(内筒)の外側に間隔を置いて遮熱筒状部を配置した構造が開示されている。
【特許文献1】特開平11−201461号公報
【特許文献2】特開2000−249341号公報
【特許文献3】特開2001−272039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献2に開示される構造では、バーナの炎からの熱がサーモスタットを収納しているセンサカバーに直接作用するため、たとえ、ささえ板とサーモスタット下面との間に断熱性パッキンを介在させても、サーモスタット(センサ)に対する炎の影響を回避することができない。
【0009】
特許文献1及び3に開示される構造では、外筒が設けられているので、特許文献2に比較すればセンサに及ぼす影響は小さくなるが、それでもバーナの炎からの熱が直接外筒に作用するため、センサは実際の鍋等の底面温度よりも高い温度を検出する傾向にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係るガスコンロ用温度検出装置は、サーモスタットなどの温度検出素子を収納する内筒と、この内筒の外側に隙間をもって配置される外筒を備え、且つ前記内筒の外側面、前記外筒の外側面および前記外筒の内側面のうちの少なくとも一側面には断熱層が設けられた構成とした。
【0011】
外筒の外側面に断熱層を設けることで、内筒を含む広い範囲で過熱状態になることを抑制することができ検出温度の精度を高めることができる。
【0012】
また、外筒の内側面または内筒の外側面に断熱層を設けた場合には、前記と同様に内筒を含めた範囲で過熱状態になることを抑制できるとともに、断熱層が直接炎に曝されないので、断熱層の耐久性が向上する。なお、外筒の外側面と内側面の両方に断熱層を設ける場合には、ディッピング法によって両面同時にマスクなしに断熱層を形成することができるので製作コスト面において有利になる。
【0013】
前記断熱層としては酸化スズ、ITO(インジウム・スズ・オキサイド)などを材料とする熱線反射層を蒸着やスパッタリングまたはゾルゲルの湿式プロセスで形成するか、シラスバルーンやパーライトなどの無機系軽量骨材を無機系バインダにて結合した断熱材のように、耐火、耐熱性を有する断熱材により構成する。
【0014】
また本願の別発明に係るガスコンロ用温度検出装置は、温度検出素子を収納する内筒と、この内筒の外側に隙間をもって配置される外筒を備え、且つ前記内筒の内部および前記内筒と外筒との間の隙間のうち少なくとも一方には断熱材が充填された構成とした。
【0015】
内筒の内部に断熱材を充填することで、温度検出素子が断熱材にて取り囲まれ、外部からの熱の外乱がなく且つ調理器具には直接接触しているため、正確な温度を検出することができる。
【0016】
前記耐火、耐熱性を有する断熱材としては、シラスバルーンやパーライトなどの無機系軽量骨材を無機系バインダにて結合して構成したもの、或いは断熱材の表面に熱線反射層を輻射熱抑制のために施したものが挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るガスコンロ用温度検出装置によれば、ガスバーナの輻射熱を遮断し、炎がゆれて外筒に接触しても十分な断熱対策が施されているので、正確な温度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る温度検出装置を適用したガスコンロを示す図、図2(a)は同温度検出装置の断面図、(b)は同温度検出装置を下から見た図である。
【0019】
ガスコンロは天板1の上面に五徳2を設け、天板1の下側にケーシング3を取り付けている。そして、ケーシング3内に汁受け皿4を設け、この汁受け皿4の外側に内炎式のバーナ5を配置している。
【0020】
また、前記汁受け皿4に形成した開口6を貫通して温度検出装置7が上方に伸びている。温度検出装置7は内筒8内にサーミスタ、サーモスタット等の感温体(センサ)9を収納し、上端開口を集熱用キャップ10で閉塞し、この集熱用キャップ10の裏面に9を接触せしめ、更に内筒8の底面と集熱用キャップ10の裏面間にスプリング11を縮装し、集熱用キャップ10を上方に付勢している。
【0021】
集熱用キャップ10はスプリング11にて上方に付勢されているが図示しないストッパによって内筒8から外れることはなく、且つ何も外力が作用していない状態では集熱用キャップ10の上面は前記五徳2の上面よりも若干高くなるように設定しているので、鍋などの調理器具12をコンロにかけた状態で、集熱用キャップ10の上面は確実に調理器具12の底面に接触し、また集熱用キャップ10の裏面には感温体9が接触しているので、調理器具12の底面の温度を直に測定することができる。
【0022】
また、前記内筒8の外側には外筒13を配置している。この外筒13はカップ状をなしている。そして、外筒13の底面にはゴミなどが溜まらないようにするための開口14を形成し、外筒13の外側面には断熱層15を形成し、ガスバーナの炎が直接内側領域に影響を及ぼさないようにしている。
【0023】
断熱層15を形成する方法としては、スパッタリングやゾルゲルプロセスなどにより酸化スズやITOなどの熱線反射コーティング膜を形成する方法、シラスバルーンやパーライトなどの無機系軽量骨材を無機系バインダに混練した塗料を塗布したり吹き付ける方法などが挙げられる。無機系軽量骨材と無機系バインダによって断熱層15を構成した場合には、高温に曝されても有害なガスが発生しない。
【0024】
図3乃至図8は別実施例に係る温度検出装置の断面図であり、図3に示す別実施例は外筒13の内側面に断熱層15を形成している。この位置に断熱層15を形成した場合には、直接バーナの炎が作用しないため、断熱層15の耐久性が向上する。
【0025】
図4に示す実施例は、外筒13の外側面と内側面に断熱層15を形成している。両面に形成すればより断熱効果は高まり、特にディッピング法にて断熱層を形成する場合には、マスクを用いる必要がないので製作が容易になる。
【0026】
図5に示す実施例は、内筒8の外側面に断熱層15を形成している。このような構成とすると、断熱層の耐久性を高め且つ外筒の表面に形成するよりも施工面積を小さくすることができる。
【0027】
図6に示す実施例は、断熱層を内筒8または外筒13の側面に形成する代わりに、内筒8と外筒13との間に形成される空間Sの一部又は全部を断熱材16で充填するようにしている。この場合には予め断熱材16を所定の形状に成形しておけばよく製作が容易である。また、既存の温度検出装置に後付けで適用することができる。
【0028】
図7に示す実施例は、断熱材16の表面に熱線反射コーティング膜としての断熱層15を形成している。このような構成とすることで、断熱と熱線反射の2つの機能を1つの部材で達成することができる。
【0029】
図8に示す実施例は、内筒8内に断熱材16を充填している。このように断熱材16を内筒8内に入れることで、感温体9に影響する外側からの熱を遮断し、一方感温体9はキャップ10の裏面に接触しているので正確な温度を測定することができる。
【0030】
これらの実施例では、金属製の内筒と外筒を備えたものを示したが、断熱層をもって外筒と兼用することができる。
また、以上の図で示した実施例を組み合わせることも可能であり、キャップ10と外筒の間に特許文献1同様のキャップを設けて内筒と外筒の間を閉鎖空間としても良く、また温度検出装置の構造も内筒と外筒を備えたもの、または断熱層により外筒を兼用するものであれば、図示の構造には限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るガスコンロ用温度検出装置は、調理温度のコントロールや空焚き防止などに有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る温度検出装置を適用したガスコンロを示す図
【図2】(a)は同温度検出装置の断面図、(b)は同温度検出装置を下から見た図
【図3】別実施例に係る温度検出装置の断面図
【図4】別実施例に係る温度検出装置の断面図
【図5】別実施例に係る温度検出装置の断面図
【図6】別実施例に係る温度検出装置の断面図
【図7】別実施例に係る温度検出装置の断面図
【図8】別実施例に係る温度検出装置の断面図
【符号の説明】
【0033】
1…天板、2…五徳、3…ケーシング、4…汁受け皿、5…バーナ、6…開口、7…温度検出装置、8…内筒、9…感温体(センサ)、10…集熱用キャップ、11…スプリング、12…調理器具、13…外筒、14…開口、15…断熱層、16…断熱材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスコンロで加熱される調理器具の底面に接触して当該調理器具の温度を検出するガスコンロ用温度検出装置において、このガスコンロ用温度検出装置は温度検出素子を収納する内筒と、この内筒の外側に隙間をもって配置される外筒を備え、且つ前記内筒の外側面、前記外筒の外側面および前記外筒の内側面のうちの少なくとも一側面には断熱層が設けられていることを特徴とするガスコンロ用温度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスコンロ用温度検出装置において、前記断熱層は酸化スズ、ITOなどを材料とする熱線反射層であることを特徴とするガスコンロ用温度検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガスコンロ用温度検出装置において、前記断熱層は耐火、耐熱性断熱材で構成されることを特徴とするガスコンロ用温度検出装置。
【請求項4】
ガスコンロで加熱される調理器具の底面に接触して当該調理器具の温度を検出するガスコンロ用温度検出装置において、このガスコンロ用温度検出装置は温度検出素子を収納する内筒と、この内筒の外側に隙間をもって配置される外筒を備え、且つ前記内筒の内部および前記内筒と外筒との間の隙間のうち少なくとも一方には断熱材が充填されていることを特徴とするガスコンロ用温度検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガスコンロ用温度検出装置において、前記断熱材は耐火、耐熱性断熱材で構成されることを特徴とするガスコンロ用温度検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載のガスコンロ用温度検出装置において、前記断熱材の表面には熱線反射層が施されていることを特徴とするガスコンロ用温度検出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−84066(P2006−84066A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267248(P2004−267248)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(593001565)ワールドウイング株式会社 (6)
【出願人】(501448211)株式会社ジャステックス (4)