説明

ガスコンロ

【課題】コンロバーナでの放電点火に伴う輻射ノイズの発生を根本的に低減したガスコンロを提供する。
【解決手段】イグナイタユニット31もコンロバーナ21と同じ数の複数用意し、互いに独立配置可能な個別のユニット31a,31b,31cとする。各コンロバーナの放電電極14には、それぞれ複数のイグナイタユニット31の一つ宛を専用のイグナイタユニットとし、その高電圧出力部を電気的に接続させる。イグナイタユニット駆動回路12からの低電圧の駆動信号は、低圧配線32を介して複数のイグナイタユニット31の各々に与えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに関し、特に着火時にコンロ筐体内の高圧配線から発する輻射ノイズを低減するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に家庭用のガスコンロは、図2に模式的に示すように、上部天板に複数、例えば三つの調理用コンロバーナ21a,21b,21c を備え、また、内部には手前扉で開けられるグリル庫用のグリルバーナ22等を備えている場合も多い。これらコンロバーナ21a,21b,21c やグリルバーナ22でのガスへの点火には、昨今では高圧放電火花点火が採用されている。すなわち、コンロの燃焼制御等を行う制御回路11の指令の下、点火を必要とするときにはイグナイタユニット駆動回路12がイグナイタユニット13を駆動し、当該イグナイタユニット13からの高電圧が各コンロバーナ21a,21b,21c やグリルバーナ22の点火部に備えられている放電電極14a,14b,14c,14d,14e,14fに印可され、そこで火花を発生させてガスに点火する。図示の場合には放電電極はコンロバーナ21a,21b,21c には一つずつ、グリルバーナ22には三つ、あてがわれている。このように、通常、グリルバーナ22には複数の点火部が備えられる。
【0003】
制御回路11は、これも昨今ではマイクロコンピュータを利用して組まれ、多くの機能はソフト的に実現されるようになっており、また、イグナイタユニット駆動回路12とイグナイタユニット13は通常一体に組まれ、所謂CDI(Capacitive Discharge Ignition:容量放電点火)回路装置となっていることが多い。この場合、イグナイタユニット13は、実質的には一次側にイグナイタユニット駆動回路12からの低電圧の容量放電電流を駆動信号として受けて二次側に高電圧を発生する点火トランスにより構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イグナイタユニット駆動回路12が発する駆動信号(例えば容量放電電流)は、それがCDI原理に従う相当程度のエネルギを持ったものでも、電圧的には相対的に低電圧であるが、これを受けて高電圧を発生、出力するイグナイタユニット13からの出力電圧はまさに高電圧であって、この高電圧が高圧配線15a,15b,15c,15d,15e,15fを介し、それぞれ対応する放電電極14a,14b,14c,14d,14e,14fに導かれる。なお、以下では特に個々に弁別的に指定する必要のない場合には、各符号の添字a〜fは省略し、例えば単に高圧配線15等と記して全ての高圧配線を代表させる。
【0005】
しかるに、イグナイタユニット駆動回路12やイグナイタユニット13は、従来、上述のように一体の回路装置ないしモジュールとして組まれ、その結果、当該回路装置からそれぞれの放電電極14に至る高圧配線15の長さは、コンロ筐体内の引き回しのため、かなりな長さとなっていた。しかも、この高圧配線15の周囲には、表示装置、温度センサ等のコンロ補器類への配線もあり、他配線との併走、近接を回避することは難しく、そのため、点火時に高圧配線15から輻射される輻射ノイズが直接的に干渉するか、または周囲の他配線を介して間接的に干渉し、制御回路11における誤動作等を招く恐れがあった。そこで従来からも、高圧配線15と他配線の配線処理に関する検討、ノイズ対策部品の追加、制御回路11の搭載位置検討等、種々の工夫がなされてはきた。しかし、それは寧ろ、器具設計の自由度を制限する結果となっており、また、根本的なノイズ対策ともなり得てはいなかった。
【0006】
本発明はこの点に鑑みてなされたもので、ガスコンロのバーナでの放電点火時に輻射ノイズ発生源となる高圧配線を極力短くし得る、至上、無くし得るような点火系統の配置構成を提案し、もって輻射ノイズの発生を根本的に低減せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、イグナイタユニット駆動回路の発する低電圧の駆動信号でイグナイタユニットの高電圧出力部に高電圧を発生させ、この高電圧で複数設けられているコンロバーナの各々の点火部に備えられている放電電極に放電火花を飛ばし、ガスへの点火を図るガスコンロとして;
イグナイタユニットもコンロバーナと同じ数の複数あって、互いに独立配置可能な個別のユニットとなっており;
各々のコンロバーナの放電電極には、それぞれ複数のイグナイタユニットの一つ宛が専用のイグナイタユニットとしてその高電圧出力部を電気的に接続していると共に;
イグナイタユニット駆動回路からの低電圧の駆動信号は、低圧配線を介して複数のイグナイタユニットの各々に与えられるようになっていること;
を特徴とするガスコンロを提案する。
【0008】
上記の構成の下、実質的に高圧配線の長さを零にしたに等しい構成として、本発明の特定の態様では、各イグナイタユニットの高電圧出力部と放電電極とは一体構造となっているガスコンロも提案する。すなわち、各イグナイタユニットの高電圧出力部と放電電極とが概念として電気的に接続している場合の特殊な例として、各イグナイタユニットの高電圧出力部を構造的ないし形状的には先鋭な導体形状とすること等で、それをそのまま放電電極として使うことができる。
【0009】
さらに、複数の放電電極の備えられたグリルバーナをさらに有するガスコンロに対する改良としては、本発明ではまた、上記の各イグナイタユニットは高電圧出力部を少なくとも二つ有するものとし、一つはコンロバーナに備えられている放電電極に電気的に接続させ、他の一つはグリルバーナに備えられている放電電極の一つに電気的に接続させたガスコンロを提案する。
【0010】
上記同様、複数のコンロバーナに加えて、複数の放電電極の備えられたグリルバーナをさらに有する場合であっても、本発明のまた別な態様としては、上記のコンロバーナ点火用の複数のイグナイタユニットに加え、グリルバーナ点火用のイグナイタユニットもグリルバーナの放電電極の数と同じ数の複数用意し、それらを互いに独立配置可能な個別のユニットとし、グリルバーナの放電電極の各々には、それぞれこれら複数のグリルバーナ点火用イグナイタユニットの一つ宛を専用のイグナイタユニットとしてその高電圧出力部を電気的に接続させ、イグナイタユニット駆動回路からの低電圧の駆動信号は、低圧配線を介して複数のグリルバーナ点火用イグナイタユニットの各々に与えるようにしたガスコンロも提案する。この場合にも、各グリルバーナ点火用イグナイタユニットの高電圧出力部とグリルバーナの放電電極とを一体構造とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、複数のイグナイタユニットを互いに独立配置可能なものとしている。と言うことは、各イグナイタユニットをそれぞれ各コンロバーナの放電電極の近傍に配置できることを意味する。その結果、各イグナイタユニットの高電圧出力部と対応する放電電極との間は、例え高圧配線で接続する場合にも最短となるような配置関係とし得、従来のように高圧配線をガスコンロ筐体内で長く引き回さねばならないことによる輻射ノイズの発生は大幅に抑え込むことができる。イグナイタユニットとイグナイタユニット駆動回路や制御回路との離間距離も十分に長く取れる。
【0012】
このように、本発明によれば輻射ノイズ対策は相当強化され、機器誤動作の防止能力は高められて、ガスコンロとしての安全性を大幅に高めることができる。狭いガスコンロ筐体内での各回路の配置設計にも相当な自由度が生まれ、これも実質的に有用な本発明の効果の一つである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の望ましい一実施形態としてのガスコンロの概略構成図である。
【図2】従来のガスコンロの代表的一例の点火系統に関する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には本発明の望ましい一実施形態におけるガスコンロ、特にその点火系統に関する概略構成が示されている。本発明の理解を促し、その有効性を明らかにするため、この実施形態は図2に示した従来のガスコンロに対する改良として示してある。従って、同じ符号は同じ構成要素を示し、それに対する説明は特に必要な場合を除き、繰り返すことはせず、従来例に関してなされた先の説明を援用する。各符号の添字a〜cに関しても同様で、特に一つずつ説明する必要の無いときには添字を省略して説明する。
【0015】
本発明では、最も特徴的なことに、従来は一つの回路装置ないしモジュール内においてイグナイタユニット駆動回路12を一体であったイグナイタユニットを別体とし、さらに、当該イグナイタユニットをコンロバーナ21と同じ数だけ用いる。従って、図示の場合は三つのイグナイタユニット31a,31b,31cがあって、それらは互いには独立配置可能な個別のユニットとなっている。従って、各イグナイタユニット31a,31b,31cはそれぞれ各コンロバーナ21a,21b,21cの放電電極14a,14b,14cのそれぞれに専用のイグナイタユニットとすることができ、それぞれのイグナイタユニット31は対応する放電電極14の近傍に配置し、その高電圧出力部を当該対応する放電電極14に電気的に接続することができる。
【0016】
イグナイタユニット31に例えば容量放電電流等、電圧次元では低電圧な駆動信号を与えるイグナイタユニット駆動回路12は、従来のように各イグナイタユニット31と一体の構成ではないため、ガスコンロ筐体内の適当な位置に配され、そこからの当該低電圧駆動信号は、低圧配線32a,32b,32cを介して各イグナイタユニット31a,31b,31cの各々に与えられるようになっている。
【0017】
このように、複数のイグナイタユニット31a,31b,31cが互いに独立配置可能なため、各イグナイタユニット31a,31b,31cをそれぞれ各コンロバーナ21a,21b,21cの放電電極14a,14b,14cの近傍に配置できるようになる結果、各イグナイタユニット31a,31b,31cの高電圧出力部と対応する放電電極14a,14b,14cとの間は、高圧配線15a,15b,15cで接続する場合にも、最短となるような配置関係に選択できる。従来のように、高圧配線15をガスコンロ筐体内で長く引き回さねばならない不都合もなく、引き回すのはイグナイタユニット駆動回路12からの低圧配線32a,32b,32cであるので、高圧配線からの輻射ノイズは大幅に低減することができる。イグナイタユニット31とイグナイタユニット駆動回路12や制御回路11との離間距離も十分に長く取れ、輻射ノイズ対策は相当強化される。
【0018】
また、図示の場合には、短い高圧配線15a,15b,15cで各イグナイタユニット31と近傍の放電電極14との間が接続されているが、実質的にこの高圧配線15a,15b,15cの長さを零にしたに等しい構成として、設置位置を確保できるのならば、各イグナイタユニット31の高電圧出力部と放電電極14とを一体構造とすることもできる。例えば、一般に放電電極は一対の電極で構成され、一方は筐体接地、他方が先鋭な導体形状となっているが、イグナイタユニット31の高電圧出力部を形状的に先鋭な導体形状とすること等で、当該高電圧出力部自体をそれと電気的に接続関係にあるべき放電電極としてそのまま使うことができる。もちろん、このように、実質的に高圧配線長を零にすれば、輻射ノイズはさらに低減される。
【0019】
図示の場合、図2に示した従来例同様、複数の放電電極14d,14e,14fの備えられたグリルバーナ22も備えられている。そこで、この実施形態では、各イグナイタユニット31は高電圧出力部を少なくとも二つ有するものとしている。一つは既述のように、コンロバーナに備えられている放電電極14a,14b,14cに電気的に接続させるが、他の一つはグリルバーナ22の方に備えられている放電電極14d,14e,14fの一つに高圧配線15d,15e,15fを介し、電気的に接続させている。
【0020】
これはある意味で、ガスコンロの一般的な構造を考えると、合理的な構成でもある。すなわち、この種のガスコンロでは通常、各コンロバーナ21のほぼ真下、かなり近い位置にグリル庫が配置されている。つまり、それらの間の離間距離はかなり短い。従って、コンロバーナ用イグナイタユニット31からグリルバーナの各放電電極14d,14e,14fに向けて高圧配線15d,15e,15fで配線したとしても、当該高圧配線15d,15e,15fの長さは短い長さに留めることができる。従来のように、離れた所にあるイグナイタユニット12から延々と高圧配線を引き回して来るよりも、遙かに短い長さとすることができる。
【0021】
また、グリル庫の周囲は比較的高温となることもあり、一般に他の信号配線類が配線されることもない。そのため、本発明に従い、各コンロバーナ放電電極用にそれぞれ専用にイグナイタユニット31を設けるならば、これを二出力型として、そこからそれぞれ高圧配線15d,15e,15fでグリルバーナ用放電電極14d,14e,14fの一つ宛に配線するようにしても、輻射ノイズの問題はそう生じないで済む。
【0022】
しかしもちろん、本図では示していないが、コンロバーナ用と同様、グリルバーナ点火用イグナイタユニットもグリルバーナ22の放電電極14d,14e,14fの数と同じ数の複数用意して、それらを互いに独立配置可能な個別のユニットとし、グリルバーナ22の複数の放電電極14d,14e,14fの各々に、それぞれこれら複数のグリルバーナ点火用のイグナイタユニットの一つ宛を専用のイグナイタユニットとしてその高電圧出力部を電気的に接続させ、イグナイタユニット駆動回路12からの低電圧の駆動信号は、低圧配線を介して複数のグリルバーナ点火用イグナイタユニットの各々に与えるようにしても良い。さらに、このようにした場合、各グリルバーナ点火用イグナイタユニットの高電圧出力部をそのまま、グリルバーナ22の放電電極14d,14e,14fとして用いるように、それらを一体構造とすることもできる。
【0023】
以上、本発明方法の望ましい一実施形態につき説明したが、本発明の要旨構成に即する限り、任意の改変は自由である。
【符号の説明】
【0024】
11 制御装置
12 イグナイタユニット駆動回路
14 放電電極
15 高圧配線
21 コンロバーナ
22 グリルバーナ
31 イグナイタユニット
32 低圧配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグナイタユニット駆動回路の発する低電圧の駆動信号でイグナイタユニットの高電圧出力部に高電圧を発生させ、該高電圧で複数設けられているコンロバーナの各々の点火部に備えられている放電電極に放電火花を飛ばし、ガスへの点火を図るガスコンロであって;
上記イグナイタユニットも上記コンロバーナと同じ数の複数あって、互いに独立配置可能な個別のユニットとなっており;
上記各々のコンロバーナの上記放電電極には、それぞれ上記複数のイグナイタユニットの一つ宛が専用のイグナイタユニットとしてその高電圧出力部を電気的に接続していると共に;
上記イグナイタユニット駆動回路からの上記低電圧の駆動信号は、低圧配線を介して上記複数のイグナイタユニットの各々に与えられるようになっていること;
を特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
請求項1記載のガスコンロであって;
上記各イグナイタユニットの上記高電圧出力部と上記放電電極とは一体構造となっていること;
を特徴とするガスコンロ。
【請求項3】
請求項1記載のガスコンロであって;
複数の放電電極の備えられたグリルバーナをさらに有し;
上記各イグナイタユニットは上記高電圧出力部を少なくとも二つ有し、一つは上記コンロバーナに備えられている上記放電電極に電気的に接続し、他の一つは上記グリルバーナに備えられている上記放電電極の一つに電気的に接続していること;
を特徴とするガスコンロ。
【請求項4】
請求項1記載のガスコンロであって;
複数の放電電極の備えられたグリルバーナをさらに有し;
上記コンロバーナ点火用の複数のイグナイタユニットに加え、該グリルバーナ点火用のイグナイタユニットも該グリルバーナの放電電極の数と同じ数の複数あって、互いに独立配置可能な個別のユニットとなっており;
該グリルバーナの上記放電電極の各々には、それぞれ上記複数のグリルバーナ点火用イグナイタユニットの一つ宛が専用のイグナイタユニットとしてその高電圧出力部を電気的に接続していると共に;
上記イグナイタユニット駆動回路からの上記低電圧の駆動信号は、低圧配線を介して該複数のグリルバーナ点火用イグナイタユニットの各々に与えられるようになっていること;
を特徴とするガスコンロ。
【請求項5】
請求項4記載のガスコンロであって;
上記各グリルバーナ点火用イグナイタユニットの上記高電圧出力部と上記グリルバーナの上記放電電極とは一体構造となっていること;
を特徴とするガスコンロ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−122794(P2011−122794A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282382(P2009−282382)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000174426)阪神エレクトリック株式会社 (291)