説明

ガススプリング装置

【課題】本発明はバルブ機構のシール部材の耐久性を高めることを課題とする。
【解決手段】ガススプリング装置10は、有底筒状のチューブ20と、ピストン30と、プッシュロッド40と、バルブ機構50とを有する。プッシュロッド40には、バルブ機構50を構成する弁部42が設けられている。バルブ機構50は、ピストン30の内部を貫通する貫通孔32と、貫通孔32に設けられたガイド部材100と、ガイド部材100の中央孔を摺動可能に挿通された弁部42とを有する。ガイド部材100は、中央孔の内周に潤滑材を保持する潤滑材保持部104が設けられている。ガイド部材100は、両端の夫々にシール部材110A、110Bが設けられている。プッシュロッド40の弁部42が軸方向に摺動するのに伴って、弁部42の下端大径部44に潤滑材保持部104に保持された潤滑材が少しずつ付着して一対のシール部材110A、110Bに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガススプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガススプリング装置では、例えば、シリンダ内を摺動するピストンによって画成される上室と下室にガスを封入すると共に、シリンダの端部にシリンダの外周側に形成された通路と上室との間を開閉するバルブ機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このバルブ機構は、シリンダ上部に設けられており、円筒形状のガイドの内周にシール部材(Oリング)が装着されている。また、バルブ機構では、ガイドを軸方向に貫通する貫通孔に弁部を有するプッシュロッドが挿入されており、当該プッシュロッドを軸方向に摺動させることで、シール部材と弁部との隙間からガスを流通可能とするように構成されている。
【0004】
ガススプリング装置においては、バルブ機構によりシリンダ内の上室と下室のガスが流通可能な状態となると、ピストンとシリンダとがガス圧により相対変位して軸方向(高さ方向)の位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−60877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のガススプリング装置では、バルブ機構の弁部がシール部材を摺動する開閉動作を繰り返すと、当該シール部材の表面が乾燥するため、弁部とのシール性能の信頼性が低下するおそれがあるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決したガススプリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0009】
本発明は、内部に加圧ガスが封入されたシリンダと、
該シリンダ内に摺動可能に挿入されて当該シリンダ内を二室に画成するピストン部と、
一端がピストン部に連結され、他端が前記シリンダの外部に延出されたロッドと、
前記シリンダ内に形成された二室を連通する連通路と、
該連通路を開閉する弁部を有するプッシュロッドとを備え、
前記プッシュロッドを外部から操作して前記連通路を開放して前記ロッドの前記シリンダに対する軸方向長さを調整可能とするガススプリング装置において、
前記プッシュロッドの外周には、
前記プッシュロッドをガイドするガイド部材と、
前記ガイド部材の両端のそれぞれに設けられるシール部材と、
を備え、
前記ガイド部材には、内周側に前記シール部材に供給される潤滑材を保持する潤滑材保持部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シール部材の摩耗を防止すると共に、シール部材による弁部に対するシール性能の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるガススプリング装置の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】ガイド部材を軸方向からみた平面図である。
【図3】ガススプリング装置のバルブ機構を開弁操作による動作を示す縦断面図である。
【図4】ガススプリング装置の変形例を示す縦断面図である。
【図5】変形例のバルブ機構を拡大して示す縦断面図である。
【図6A】変形例のガイド部材を軸方向からみた平面図である。
【図6B】変形例のガイド部材の内部構造を示す縦断面図である。
【図7】変形例のバルブ機構の開弁操作による動作を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
図1は本発明によるガススプリング装置の一実施例を示す縦断面図である。図1に示されるように、ガススプリング装置10は、有底筒状のチューブ20と、ピストン30と、プッシュロッド40と、バルブ機構50とを有する。
【0014】
チューブ20は、内部にシリンダ60が形成されており、下端開口にロッドガイド70がロールカシメにより固定されている。また、チューブ20の内部に形成されたシリンダ60は、密閉された状態で加圧されたガスと、一定量の潤滑油(オイル)が封入されている。
【0015】
また、シリンダ60には、ピストン30及びピストンロッド80が摺動可能に挿入されている。このピストン30及びピストンロッド80とで本発明のピストン部を構成する。ピストンロッド80の下端は、ロッドガイド70を貫通し、シール部材72によりシールされている。
【0016】
ピストン30は、シリンダ60内を上室60Aと下室60Bとに画成しており、ピストン30の内部には、上室60Aと下室60Bとの間を連通する連通路90が設けられている。プッシュロッド40には、バルブ機構50を構成する弁部42が設けられている。なお、上室60Aと下室60Bは取付け状態で、上室60Aが上側となることが望ましいが、水平方向や逆さに用いてもよい。
【0017】
バルブ機構50は、ピストン30の内部を貫通する貫通孔32に設けられたガイド部材100と、ガイド部材100の中央孔を摺動可能に挿通された弁部42とを有する。
【0018】
ガイド部材100は、円筒形状に形成され、両端の夫々にシール部材110A、110Bが設けられている。シール部材110A、110Bは、シリンダ60内に封入されたガス及び潤滑油が外部に流出しないように弁部42の外周をシールしている。
【0019】
また、ピストン30の上端には、弁部42の上端外周をシールするシール部材112が設けられている。
【0020】
弁部42は、スプール弁構造であり、一対のシール部材110A、110Bにシールされる下端大径部44と、シール部材110A、110B、112の内径より小径な小径部46と、シール部材112にシールされる上端大径部48とを有する。弁部42は、上端大径部48がシール部材112にシールされているとき、連通路90を閉止する。このように、弁部42により連通路90が閉止されると、上室60Aと下室60Bとの間のガスの流通が遮断されるため、ピストン30の軸方向への摺動動作が規制された停止状態(ロック状態)となる。
【0021】
図2はガイド部材を軸方向からみた平面図である。図2に示されるように、ガイド部材100は、中央孔の内周に潤滑材W(図2中、梨地模様で示す)を保持する潤滑材保持部104が3箇所に設けられている。潤滑材保持部104は、例えば、粘性を有するグリスが潤滑材Wとして充填された凹部からなり、上下端部がシール部材110A、110Bによって閉塞される。尚、潤滑材保持部104の数は3箇所に限らず、2箇所あるいは3箇所以上としても良い。
【0022】
なお、図2においては、ガイド部材100は、弁部42が摺動しガイドする構成となっているが、シール部材110A、110Bが噛みこまない程度の隙間を設けてもよい。
(高さ調整操作による動作)
図3はガススプリング装置のバルブ機構を開弁操作による動作を示す縦断面図である。図3に示されるように、ガススプリング装置10の高さ調整を行なう際は、レバー操作によりプッシュロッド40を上方に押圧操作する。
【0023】
ピストンロッド80の内部の貫通孔82に挿通されたピン120の下端が外部からの操作力によって上方に持ち上げられると、ピン120の上端に当接するプッシュロッド40が押上げられる。
【0024】
これにより、プッシュロッド40の弁部42がシール部材110A、110Bを摺接しながら上方へ移動する。弁部42は、上端大径部48がシール部材112の上方に摺動することで、連通路90を開放する。よって、上室60Aと下室60Bとの間は、ガスの移動が可能となる。そのため、ピストン30の上面側の受圧面積が下面側よりも大きいので、ピストン30はシリンダ60に対して下方に摺動する。このように、ガススプリング装置10は、ピストン30の摺動動作により長さ調整が行える。
【0025】
また、プッシュロッド40の弁部42が軸方向に摺動するのに伴って、弁部42の下端大径部44に潤滑材保持部104に保持された潤滑材Wが少しずつ付着して一対のシール部材110A、110Bに供給される。よって、シール部材110A、110Bの表面は、常に潤滑材Wによって滑りやすくなっており、且つ弁部42の下端大径部44の外周には、油膜が形成されてシール性能が高められる。すなわち、シール部材110A、110Bの耐久性を向上させると共に、シール性能の信頼性を高めることができる。
【0026】
また、潤滑材保持部104は、内周側と上下端部の3方向に開口する凹部により形成されており、且つ上下端部には一対のシール部材110A、110Bが直接的に接触しているので、内周側に接するプッシュロッド40の弁部42が軸方向に移動する度に潤滑材Wを各シール部材110A、110Bの摺動面側に供給することが可能になる。
【0027】
また、ガススプリング装置10において、高さ調整操作が終了した場合には、プッシュロッド40に対する押圧操作を解除することで、プッシュロッド40が図1に示す位置に復帰してバルブ機構50が閉弁状態に戻り、ピストン30の移動を制限するロック状態になる。
〔変形例〕
図4はガススプリング装置の変形例を示す縦断面図である。図4に示されるように、ガススプリング装置200は、筒状のベースチューブ210と、ピストン220と、バルブ機構230とを有する。ベースチューブ210の内周には、インナーチューブ260が挿入されている。そして、ベースチューブ210の内周とインナーチューブ260の外周との間には、微小な隙間からなる連通路262が形成されている。この連通路262は、上端が連通路320を介してシリンダ240の上室240Aに連通され、下端が下室240Bに連通される。
【0028】
ピストン220は、ベースチューブ210内のシリンダ240を上室240Aと下室240Bとに画成しており、ピストンロッド250の上端に結合されている。また、ピストンロッド250の下端は、シリンダ240の底部に設けられたロッドガイド270を貫通している。
【0029】
図5は変形例のバルブ機構を拡大して示す縦断面図である。図5に示されるように、バルブ機構230は、チューブ210の上部に嵌合固定された弁本体280と、弁本体280を軸方向に貫通する貫通孔282の凹部284に嵌合されたガイド部材290と、ガイド部材290の中央孔を摺動可能に挿通されたプッシュロッド300とを有する。
【0030】
また、弁本体280は、外周と凹部284との間を連通する連通路320を有する。この連通路320は、連通路262及びガイド部材290の小孔340と共にガス流通路を形成している。ガイド部材290の小孔340は、プッシュロッド300の摺動により開又は閉とされる。
【0031】
ガイド部材290の上下両端には、夫々シール部材(Oリング)310A、310Bが設けられている。各シール部材310は、プッシュロッド300の外周との間をシールすることで、連通路320と上室240Aとの間を密閉する。
【0032】
プッシュロッド300は、スプール弁からなる弁部302を有する。弁部302は、上側のシール部材310にシールされる上端大径部304と、シール部材310A、310B間に位置する小径部306と、下側のシール部材310Bにシールされる下端大径部308とを有する。弁部302は、下端大径部308がシール部材310Bにシールされているとき、ガス流路を形成する連通路320及び小孔340を閉止する。このように、弁部302により連通路320と上室240Aとの間が閉止されると、連通路262を介して上室240Aと下室240Bとの間のガスの流通が遮断されるため、ピストン220の軸方向への摺動動作が規制された停止状態(ロック状態)となる。
【0033】
図6Aは変形例のガイド部材を軸方向からみた平面図である。図6Bは変形例のガイド部材の内部構造を示す縦断面図である。図6A及び図6Bに示されるように、ガイド部材290は、上部内周の3箇所に設けられた潤滑材保持部330と、潤滑材保持部330の下方に設けられた小孔340とを有する。潤滑材保持部330は、例えば、粘性を有するグリスが潤滑材W(図6A、図6B中、梨地模様で示す)として充填された凹部からなり、上端部が上側のシール部材310Aによって閉塞される。
【0034】
また、ガイド部材290の外周には、全周に亘り凹部350が設けられている。この凹部350は、弁本体280の連通路320の内周側開口に対向し、連通路320と小孔340との間を連通され、ガスが流通するための溝である。
【0035】
さらに、ガイド部材290の内周には、小孔340に連通する立て溝360が下方に延在形成されている。この立て溝360は、ガスが流通するための通路であり、弁部302が開弁操作したときに上室240Aに連通される。
【0036】
また、潤滑材保持部330は、連通路320と連通する小孔340から外れた上側の位置に設けられており、潤滑材Wは小孔340の影響を受けないように形成されている。尚、潤滑材保持部330の数は、3箇所に限らず、2箇所あるいは3箇所以上としても良い。
(高さ調整操作による動作)
図7は変形例のバルブ機構の開弁操作による動作を拡大して示す縦断面図である。図7に示されるように、ガススプリング装置200の高さ調整を行なう際は、レバー操作によりプッシュロッド300を下方に押圧操作する。
【0037】
プッシュロッド300が外部からの操作力によって下方に押し下げられると、弁部302が降下して下端大径部308がシール部材310Bの下方に移動する。
【0038】
これにより、プッシュロッド300の下端大径部308がシール部材310Bを摺接しながら下方へ移動すると共に、小径部306の外周に形成された空間が上室240Aに連通する。このように弁部302は、下端大径部308がシール部材310Bの下方に摺動することで、小孔340と上室240Aとの間を連通する。
【0039】
よって、上室240Aと下室240Bとの間は、ガスの移動が可能となる。そのため、ピストン220の上面側の受圧面積が下面側よりも大きいので、ピストン220はシリンダ240に対して下方に摺動する。このように、ガススプリング装置200は、ピストン220の摺動動作により長さ調整が行える。
【0040】
また、プッシュロッド300の弁部302が軸方向(下方向)に摺動するのに伴って、弁部302の上端大径部304に潤滑材保持部330に保持された潤滑材Wが少しずつ付着し、弁部302が上方向に復帰して上端大径部304に付着した潤滑材が上側のシール部材310Aに供給される。よって、シール部材310Aの表面は、常に潤滑材Wによって滑りやすくなっており、且つ弁部302の下端大径部308の外周には、油膜が形成されてシール性能が高められる。すなわち、上側のシール部材310Aの耐久性を向上させると共に、シール性能の信頼性を高めることができる。
【0041】
また、潤滑材保持部330は、内周側と上端部の2方向に開口する凹部により形成されており、且つ上端部には上側のシール部材310Aが直接的に接触しているので、内周側に接する上端大径部304が軸方向に移動する度に潤滑材Wをシール部材310Aの摺動面側に供給することが可能になる。
【0042】
尚、下端大径部308が摺接するシール部材310Bは、弁部302の開弁動作によりガスに含まれる潤滑材(油蒸気)が付着するため、シール性能が維持される。
【0043】
また、ガススプリング装置200において、高さ調整操作が終了した場合には、プッシュロッド300に対する押圧操作を解除することで、プッシュロッド300が図5に示す位置に復帰してバルブ機構230が閉弁状態に戻り、ピストン220の移動を制限するロック状態になる。
【符号の説明】
【0044】
10、200 ガススプリング装置
20 チューブ
30、220 ピストン
40、300 プッシュロッド
42 弁部
44 下端大径部
46 小径部
48 上端大径部
50、230 バルブ機構
60、240 シリンダ
60A、240A 上室
60B、240B 下室
70、270 ロッドガイド
80、250 ピストンロッド
90 連通路
100、290 ガイド部材
104、330 潤滑材保持部
110A、110B、112、310A、310B シール部材
120 ピン
210 ベースチューブ
260 インナーチューブ
262 連通路
280 弁本体
302 弁部
304 上端大径部
306 小径部
308 下端大径部
320 連通路
340 小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加圧ガスが封入されたシリンダと、
該シリンダ内に摺動可能に挿入されて当該シリンダ内を二室に画成するピストン部と、
一端がピストン部に連結され、他端が前記シリンダの外部に延出されたロッドと、
前記シリンダ内に形成された二室を連通する連通路と、
該連通路を開閉する弁部を有するプッシュロッドとを備え、
前記プッシュロッドを外部から操作して前記連通路を開放して前記ロッドの前記シリンダに対する軸方向長さを調整可能とするガススプリング装置において、
前記プッシュロッドの外周には、
前記プッシュロッドをガイドするガイド部材と、
前記ガイド部材の両端のそれぞれに設けられるシール部材と、
を備え、
前記ガイド部材には、内周側に前記シール部材に供給される潤滑材を保持する潤滑材保持部を形成することを特徴とするガススプリング装置。
【請求項2】
前記プッシュロッドは、前記ピストン部を軸方向に貫通する貫通孔に挿通され、
前記ガイド部材は、前記ピストン部の貫通孔に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガススプリング装置。
【請求項3】
前記プッシュロッドは、前記シリンダの端部に取り付けられたバルブ機構を摺動可能に貫通する貫通孔に挿通され、
前記ガイド部材は、前記バルブ機構の貫通孔に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガススプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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