説明

ガスセンサ

【構成】 電解液34に発泡金属32を浸し、メタルハウジング4との間の電流で、水を電解し、発生したガスをセンサ本体12へ供給して、自己診断する。
【効果】 ガスセンサの液溜の水を電解して水素を発生させ、ガスセンサの点検ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電気化学式ガスセンサに関し、特に点検ガスの発生手段を備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは特許文献1で、ガス発生用のMEAとガス検出用のMEAとを一体にしたガスセンサを開示した。発明者は、よりコンパクトでかつより簡便な構造の、点検ガス発生機能付きのガスセンサを検討し、この発明に到った。
【特許文献1】特開2004−61171号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の基本的課題は、点検ガスの発生ができる新たな構造のガスセンサを提供することにある。
この発明での補助的な課題は、
1) ガスセンサの構造を特に簡単にすること、
2) 点検ガスの発生でハウジングの内圧が上昇した際の安全策を講じること、及び
3) 電解液がセンサ本体に触れた際の影響を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、電気化学的にガスを検出するセンサ本体と、前記センサ本体に水蒸気もしくは電解液を供給する液溜とをハウジング内に備えたガスセンサにおいて、液溜中の水を電解するための手段を設けて、電解で発生した点検用のガスをセンサ本体に供給するようにしたことを特徴とする。この結果、センサ本体に水蒸気や電解液を補給するための液溜を点検ガスの発生に利用でき、一般に、液溜からは水蒸気もしくは液体をセンサ本体に供給できるようにしてあるので、液溜で発生した点検ガスもセンサ本体まで同様にして供給できる。
【0005】
好ましくは、電解手段として、電解手段として、前記ハウジングの一端に第1電極を設けると共に、ハウジングに第2電極を設けて、前記第1及電極と第2電極とを液溜を介して導通させる。
特に好ましくは、第1電極及び第2電極の少なくとも一方を高比表面積の導電性部材とし、例えば、Niなどの発泡金属や、Niなどの金属やカーボンなどのファイバーなどのマットやシート状などの束で構成する。
【0006】
また好ましくは、ハウジングの内圧の上昇時に発生したガスを逃がすための弁体を、前記ハウジングの一端に設ける。弁体は例えばゴムやバネなどの弾性体で構成し、内圧が所定値に達すると開いて点検ガスを逃がすようにする。
【0007】
好ましくは、ハウジングがメタルハウジングで、その一端側に封孔体を他端側にセンサ本体を設けて、封孔体とセンサ本体との間のハウジングのスペースを前記液溜とし、かつ封孔体とハウジングとの間の電解電流で点検用のガスを発生させる。封孔体は、例えばガスケットや接着剤などでハウジングと絶縁する。
【0008】
好ましくは、センサ本体は電解液をセパレータに保持し、かつ前記液溜の電解液とセパレータの電解液とで、電解質をほぼ同じにし、液溜の電解液がセンサ本体のセパレータに入り込んでも特性が変わらないようにする。特にメタルハウジングの場合、硫酸はハウジングを侵すので、硫酸Mgや塩化亜鉛などの弱酸性の電解質〜KOHやKHCOなどのアルカリ性の電解質が好ましい。なおセパレータの電解質と、液溜の電解質とは完全に同一である必要はなく、例えばセパレータがKCOで液溜がKOHなどでも良い。また電解時に塩素ガスなどが発生しないように、液溜の電解質はアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、あるいは炭酸水素塩が特に好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、ガスセンサの液溜を利用してガスを発生できるので、コンパクトに点検ガスを発生できる。またガスセンサの内部で点検ガスを発生させるので、微量のガスで良く、小電力で簡単に点検ガスを発生できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図5に、実施例とその変形とを示す。図1に、実施例のガスセンサ2の構造を示すと、4はメタルハウジングで例えばステンレス製とし、必要であればその内面を銅や金などの貴な元素でメッキする。6は封孔体、8はワッシャで、10はセンサ本体12へのガスの供給を制限するための拡散制御板で、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの膜でも良く、14は封孔体6をメタルハウジング4に組み付けるためのガスケットである。そしてガスケット14からの圧力により、封孔体6,拡散制御板10,センサ本体12,ワッシャ8間の導通が得られ、封孔体6がガスセンサ2の一方の極で、メタルハウジング4が他方の極となる。
【0012】
封孔体6にはシリカゲルや活性炭あるいはゼオライトなどのフィルタ材16を収容し、18,20は封孔体6に設けた開口、21は拡散制御板10に設けた開口で、例えば0.1mm〜1mm程度の直径とし、ワッシャ8に設けた開口22から、液溜からの水蒸気と点検ガスをセンサ本体12へ補給する。
【0013】
メタルハウジング4は例えば角筒や円筒状の形状をし、一端側に他の封孔体24を設け、他端側にセンサ本体12や封孔体6を設ける。ガスケット26は、封孔体24をメタルハウジング4から絶縁した状態で取り付け、27,28は開口で、30はEPDM(エチレンプロピレンゴム)などの耐アルカリ性のゴムからなる弁体で、SBR(スチレンブタジエンゴム)などを用いても良く、あるいはバネで図示しない金属板を開口28側に付勢して、バネの付勢力以上の内圧が加わった際に、金属板が開口28から離れるようにしても良い。弁体30は、ハウジング4の内圧が所定値以上に増した際に、点検ガスを逃がす。
【0014】
ワッシャ8と封孔体24間のメタルハウジング4内のスペースが液溜33である。メタルハウジング4もしくは封孔体24の何れかに、好ましくは封孔体24に、ニッケルなどの発泡金属32を溶接などで取り付け、電解液34中に浸す。発泡金属32は比表面積の大きな電解電極の例であり、金属繊維やカーボンファイバーなどを束ねたものなどでも良い。そして高比表面積の電極を用いることにより、小さな電力で効率的に点検ガスを発生できる。さらにこの発明では、ハウジング4の内部から点検ガスを発生させるので、ガス発生量は僅かで良く、封孔体24の内面をそのまま、あるいは銅や金などの不活性な金属でメッキして、電極とすることも可能である。また発泡金属32が変形してもメタルハウジング4の内面に触れないように、多孔質のポリプロピレンなどのセパレータ36で、メタルハウジング4の液溜33側の表面をカバーする。なおセパレータ36は通液性があり、電解電流を流すことができる。そして封孔体24とメタルハウジング4との間に例えば1.2〜1.5V程度、好ましくは1.3〜1.5V程度の電圧を加え、例えば、ハウジング4を+側とし、発泡金属32を−側とする。発泡金属32とメタルハウジング4間の電解電流により電解液34を電解して、例えば発泡金属32で水素などの点検ガスが発生し、このガスは発泡金属32を伝わって電解液34から逃れ、ほぼ全量が開口22からセンサ本体12へ入り、ごく僅かの電解電流でガスセンサ2の点検を行える。
【0015】
図2にセンサ本体12の例を示すと、40はセパレータで、例えば親水化処理を施したPTFE(ポリテトラフルオラエチレン)などを用い、好ましくは電解液34と同じ電解液を支持させる。41,42はプロトン導電体や水酸イオン導電体などの固体電解質膜である。43は作用極、44は対極で、これらはカーボンにPtやPt+Ruなどの触媒を担持させ、PTFEなどのバインダーとプロトン導電体や水酸イオン導電体などのイオン導電体とを混合したものである。46は疎水性導電体膜で、多孔質のカーボンペーパーやカーボンシートに、PTFEを含浸させて疎水性を持たせたもので、疎水性導電体膜46により、作用極43や対極44へガスを供給すると共に、電解液34が漏れ出すことを防止する。
【0016】
実施例では、セパレータ40にも電解液34にも、共に0.1M/LのKOH水溶液を用いるが、セパレータ40のKOHは一部がCOと接触して、KHCOやKCOなどに変質していることがある。また電解液34とセパレータ40とでは、KOHなどの濃度が異なっても良い。
【0017】
図3は、固体電解質膜50を用いたセンサ本体の例を示し、その両側に作用極43と対極44とを設け、疎水性導電膜46,46により、ガスの供給と電解液34の漏れ出しの防止とを行う。
【0018】
センサ本体12は固体電解質膜あるいは液体電解質膜に、少なくとも作用極と対極とを取り付け、ガスを検出するものであれば良く、例えば液体電解質として、イオン性液体をセパレータ40に支持させたものでも良い。イオン性液体には例えば陽イオンにエチルメチルイミダゾリウムイオンやブチルピリジウムイオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムイオンなどを用い、陰イオンにはBF4-,(CF3SO22-などを用いればよい。そしてイオン性液体は、−40℃〜200℃などの広い温度範囲で液体で、低抵抗で揮発性がない。
【0019】
図4に、実施例のガスセンサ2での点検ガス発生時の出力波形を示す。液溜の電解液は0.1M/LのKOHで、発泡金属32とメタルハウジング4の間に、パルス的に1.3Vの電圧を加えて水を電解すると、大きなセンサ出力が得られた。
【0020】
図5に、封孔体24側を簡単化したガスセンサ52を示し、特に指摘した点以外は、図1のガスセンサ2と同様である。54は電極板で、電極板54の電解液34側の面を電極とし、メタルハウジング4との間で電解電流を加えて点検ガスを発生させる。
【0021】
実施例ではメタルハウジング4を用いるものを示したが、ポリプロピレンなどのプラスチックハウジングでも良く、その場合は電解液34に硫酸などを用いても良い。またその場合、封孔体6,24はキャップなどに変更してハウジングに取り付け、ハウジングの内面やキャップの内面などの必要個所に金属板などを取り付けて、電極とすると良い。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例のガスセンサの断面図
【図2】液膜を用いたセンサ本体の断面図
【図3】固体電解質膜を用いたセンサ本体の断面図
【図4】実施例のガスセンサの点検時の出力波形を示す特性図
【図5】変形例のガスセンサの断面図
【符号の説明】
【0023】
2,52 ガスセンサ
4 メタルハウジング
6,24 封孔体
8 ワッシャ
10 拡散制御板
12 センサ本体
14,26 ガスケット
16 フィルタ材
18〜22 開口
27,28 開口
30 弁体
32 発泡金属
33 液溜
34 電解液
36 セパレータ
40 セパレータ
41,42 固体電解質膜
43 作用極
44 対極
46 疎水性導電体膜
50 固体電解質膜
54 電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的にガスを検出するセンサ本体と、前記センサ本体に水蒸気もしくは電解液を供給する液溜とをハウジング内に備えたガスセンサにおいて、
前記液溜中の水を電解するための手段を設けて、電解で発生した点検用のガスをセンサ本体に供給するようにしたことを特徴とする、ガスセンサ。
【請求項2】
前記電解手段として、前記ハウジングの一端に第1電極を設けると共に、ハウジングに第2電極を設けて、前記第1及電極と第2電極とを液溜を介して導通させたことを特徴とする、請求項1のガスセンサ。
【請求項3】
前記第1電極及び第2電極の少なくとも一方を、高比表面積の導電性部材で構成したことを特徴とする、請求項2のガスセンサ。
【請求項4】
ハウジングの内圧の上昇時に発生したガスを逃がすための弁体を、前記ハウジングの一端に設けたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかのガスセンサ。
【請求項5】
前記ハウジングがメタルハウジングで、その一端側に封孔体を他端側にセンサ本体を設けて、封孔体とセンサ本体との間のハウジングのスペースを前記液溜とし、かつ封孔体とハウジングとの間の電解電流で点検用のガスを発生させるようにしたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかのガスセンサ。
【請求項6】
前記センサ本体は電解液をセパレータに保持し、かつ前記液溜の電解液とセパレータの電解液とで、電解質がほぼ同じであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかのガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−84319(P2006−84319A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269261(P2004−269261)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000112439)フィガロ技研株式会社 (58)
【Fターム(参考)】