ガスタービンの排ガス性能を高めるシステム及び方法
【課題】ガスタービンの排ガス性能を高める方法を提供する。
【解決手段】この方法は、排気ガス再循環システムによって排気ガス流118の一部をガスタービン102の圧縮機104に再循環させて、ガスタービン102の燃焼器110への高圧供給酸化剤流108中の酸素濃度を低下させるステップを含む。この方法は、更に、燃焼器110へと導かれる燃料流112又は圧縮機104へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤134を添加して、結果的に得られる排気ガス流118中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップを含む。
【解決手段】この方法は、排気ガス再循環システムによって排気ガス流118の一部をガスタービン102の圧縮機104に再循環させて、ガスタービン102の燃焼器110への高圧供給酸化剤流108中の酸素濃度を低下させるステップを含む。この方法は、更に、燃焼器110へと導かれる燃料流112又は圧縮機104へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤134を添加して、結果的に得られる排気ガス流118中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して排出削減に関し、特にガスタービンエンジンにおける排出削減に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NOx)は、元来、燃焼機関の排気ガス流中にみられる主な汚染物質である。窒素酸化物によって生物に有害な酸性雨が生じることが知られている。NOxの排出を削減するにあたり、予混合燃焼、排気ガス再循環(EGR)、拡散燃焼における水蒸気添加、再熱燃焼、及び選択触媒還元(SCR)等、これらに限定されない数々の排出削減技術が用いられてきた。
【0003】
例えば、予混合燃焼において、供給酸化剤流は燃料と混合された後、燃焼器に導入される。このような場合、燃料は燃焼用空気と均一に混合され、利用できる過剰空気が火炎温度を低温に保つ一助となる。低い火炎温度は、結果的にNOx生成量を減少させる。
【0004】
排気ガス再循環(EGR)では、排気ガス流の一部を供給酸化剤流中に戻して再循環させ、供給酸化剤流中の酸素濃度を効果的に低下させる。燃焼器内で過剰酸素が欠乏するとNOxの生成量が減少する。再熱燃焼はEGRと同様であるが、この場合、第1の燃焼器の燃焼生成物は、連続する第2の燃焼器内で再加熱又は再燃焼される。このように、第1の燃焼器の燃焼生成物を再加熱する第2の連続する燃焼器内における過剰酸素が欠乏することにより、NOxの生成が減少する。
【0005】
また、拡散炎中に水蒸気を添加すると、拡散炎の温度が急激に低下する。水蒸気の添加によって火炎温度を所望の限界まで低下させ、これにより、NOxの生成量を減少させることができる。選択触媒還元(SCR)では、例えばアンモニア等の還元剤を用いて、排気ガス流中の窒素酸化物を窒素元素に還元する。
【0006】
しかし、上述の排出削減技術を用いることにより、排気ガス流中のNOx濃度は約9ppmに低下する。クリーンな環境への関心が高まり、排出規制が厳しくなるにつれて、燃焼機関の排気ガス流中のNOx濃度を更に低下させることが強く望まれる。
【0007】
更に、地球温暖化への関心が高まっている。燃焼機関からの二酸化炭素の排出は、地球温暖化の最大の原因であるとされている。炭素回収及び炭素貯留といった技術が、排気ガス流中の二酸化炭素濃度を効果的に低下させることが立証されている。炭素回収技術は、排気ガス流中の二酸化炭素濃度が高い状態で、より効率的且つ費用効果的に機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6823821B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上述の1つ以上の問題に対処し、炭素回収技術を効果的に用いることができる、改良された排出削減技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高める方法を提供する。この方法は、排気ガス再循環システムによって排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるステップを含む。この方法は、更に、燃焼器へと導かれる燃料流又は圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップを含む。
【0011】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高める方法を提供する。この方法は、排気ガス再循環システムによって排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるステップを含む。この方法は、更に、予混合室へと導かれる燃料流に希釈剤を添加し、この燃料‐希釈剤混合物を予混合燃焼器で燃焼させて、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップを含む。
【0012】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高めるシステムを提供する。このシステムは、排気ガス流をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システムを含む。このシステムは、更に、燃焼器へと導かれる燃料流又は圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システムを含む。
【0013】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高めるシステムを提供する。このシステムは、排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システムを含む。このシステムは、更に、燃焼器内の予混合室へと導かれる燃料流に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システムを含む。
【0014】
本発明の別の実施形態に従って、発電時の排ガス性能を高めるシステムを提供する。このシステムは、少なくとも2つのガスタービンエンジンを含む。このシステムは、更に、第1及び第2のガスタービン燃焼器吸気部における燃料流又は第1及び第2のガスタービン圧縮機吸気部における低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加するように構成された希釈剤添加システムを含む。このシステムは、更に、第1のガスタービン出口からの排気ガス流の一部を第1のガスタービン圧縮機吸気部内へと再循環させるとともに、第1のガスタービンの排気ガス流の別の部分を第2のガスタービン圧縮機吸気部において循環させて、第1及び第2のガスタービン燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させることにより、第1及び第2のガスタービンの排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された排気ガス再循環システムを含む。
【0015】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高める後付けシステムを提供する。この後付けシステムは、排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器内への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された、後付け可能な排気ガス再循環システムを含む。このシステムは、更に、燃焼器へと導かれる燃料流又は圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された、後付け可能な希釈剤添加システムを含む。
【0016】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高めるシステムを提供する。このシステムは、少なくとも2つの燃焼器を含む。このシステムは、更に、排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの少なくとも2つの燃焼器のうち1つ以上の燃焼器への高圧供給酸化剤中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システムを含む。このシステムは、更に、ガスタービンの少なくとも2つの燃焼器のうち1つ以上の燃焼器に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システムを含む。
【0017】
全図面を通して同様の部分を同様の符号で示した添付図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読むことにより、本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点の理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による、EGRシステムと水蒸気又は水添加システムとを含むガスタービンエンジン用の例証的な排ガス性能向上システムのブロック図である。
【図2】燃料流と希釈剤流とを混合する混合器を含む、図1のガスタービンエンジン用の例証的な排ガス性能向上システムのブロック図である。
【図3】燃料‐希釈剤混合物を燃焼器の予混合室内に間接的に添加するための混合室を含む図1のガスタービンにおける燃焼器のブロック図である。
【図4】燃焼器の予混合室への燃料と希釈剤との直接添加を含む図1のガスタービンエンジンにおける燃焼器のブロック図である。
【図5】本発明の実施形態による複数のガスタービンエンジンの例証的な構成の概略図である。
【図6】希釈剤添加を含む図1のガスタービンにおける複数の燃焼器の例証的な構成の概略図である。
【図7】本発明の実施形態による、ガスタービンエンジンの排ガス性能を高める方法の例証的なステップを示す流れ図である。
【図8】本発明の実施形態による、ガスタービンエンジンの排ガス性能を高める方法の例証的なステップを示す、また別の流れ図である。
【図9】NOx生成の減少率と排気ガス再循環の増加との関係を示す例証的なグラフである。
【図10】NOx生成の減少率と、水又は水蒸気と燃料との比の増大と、の関係を示す例証的なグラフである。
【図11】NOx濃度の低下と、排気ガス再循環率及び燃料に対する水蒸気又は水の比の増大との関係を示す例証的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に詳細に説明するように、本発明の実施形態は、ガスタービンの排気ガス流中における窒素酸化物(NOx)排出を約3ppm未満に削減するとともに二酸化炭素濃度を約10%増加させる、排ガス性能を高めるシステムとガスタービンの運転方法とを提供する。本明細書で用いる「排ガス性能を高める」という表現は、ガスタービンの排気ガス流中のNOx濃度の低下を指す。「EGR」という表現は、ガスタービンエンジンの排気ガス再循環を指す。このシステムは、それぞれ排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機入口に戻して再循環させるとともに、希釈剤をガスタービンの燃焼器内に添加するために、EGRシステムと希釈剤添加システムとを組み合わせたものを含む。
【0020】
図1に示す実施形態に、ガスタービンエンジン102における排ガス性能を高めるシステム100を示す。ガスタービン102は、供給酸化剤流106を圧縮するとともに燃焼器110に高圧供給酸化剤流108を供給する圧縮機104を含む。燃焼器110は、高圧供給酸化剤流108を燃料流112と一緒に燃焼させる。一実施形態において、燃料流112は、液体燃料又は気体燃料を含む。液体燃料には、ディーゼル及び重油等、これらに限定されない種類の燃料が含まれる。気体燃料の非限定的な例には、天然ガス、合成ガス、及び水素が含まれる。ガスタービン102は、燃焼器110の燃焼排出物116から力学的仕事を取り出すタービン114を含む。燃焼排出物116は、タービン114の少なくとも1つのタービン段を通って流れた後、排気ガス流118としてガスタービン102から流出する。システム100の例証的な動作において、排熱回収ボイラ(HRSG)120はガスタービン102の排気ガス流118から熱を抽出し、HRSG内へと導かれる水124から水蒸気122を生成する。排気ガス再循環(EGR)システム126は、排気ガス流118の一部をガスタービン102の圧縮機104に再循環させ、ガスタービン102の燃焼器110内への高圧供給酸化剤流108中の酸素濃度を約5%低下させる。一実施形態において、EGRシステム126は、排気ガス流118の約50%未満を再循環させる。特定の実施形態において、EGRシステム126は、排気ガス流118の流れを調整する弁128を含む。別の実施形態において、EGRシステム126は、排気ガス流118を冷却する冷却器130を含む。更に、排気ガス流118中に存在する水分は、冷却器130内において排気ガス流118の温度低下により復水される。本明細書で用いる「HRSG」という表現は、排気ガス流118から熱を回収して水蒸気122を発生させる排熱回収ボイラ120を指す。水蒸気122は、一般的に、更なる仕事を取り出すために蒸気タービン(図示せず)へと導かれる。
【0021】
更に、希釈剤添加システム132が、燃焼器110への燃料流112又は燃焼器110へと導かれる高圧供給酸化剤流108の少なくとも一方に希釈剤134を添加して、排気ガス流118中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させる。一実施形態において、排気ガス流118中の窒素酸化物(NOx)の濃度は、約3ppm未満低下する。特定の実施形態では、二酸化炭素の濃度が約10%増加する。別の特定の実施形態において、希釈剤添加システム132は、希釈剤134を高圧供給酸化剤流108と混合する混合器136を含む。希釈剤134の非限定的な例には、水及び水蒸気が含まれる。
【0022】
動作時、NOxの生成は、火炎温度に対して指数関数的に、且つ、燃焼器110における酸素の使用可能量に対して比例的に増加する。EGRシステム126は、排気ガス流118の一部を圧縮機104へと再循環させ、供給酸化剤流106中の酸素含有量を約5%低下させる。燃焼器110において燃料流112と高圧供給酸化剤流108とが燃焼することにより、排気ガス流118中の酸素含有量は激減する。排気ガス流118が供給酸化剤流106と混合されると、この混合物中の酸素含有量は、純粋な供給酸化剤流中の酸素含有量よりも低くなる。この酸素含有量の低下が、燃焼器110内でのNOxの生成を、例えば約70%〜約80%低下させる一助となる。
【0023】
更に、燃焼器110への希釈剤134の添加は、火炎温度を低下させる一助となる。希釈剤134は、高圧供給酸化剤流108及び燃料流112の燃焼中に発生する熱を吸収して、燃焼器110内の火炎温度を低下させる。こうして、火炎温度の低下によりNOxの生成が阻害される。燃焼器110内への希釈剤134の添加は、NOxの生成を、例えば約60%〜約70%減少させる。
【0024】
EGRの使用は、また、結果的に得られる排気ガス流中の二酸化炭素の濃度を増大させる。特定の実施形態において、排気ガス再循環は、二酸化炭素の濃度を約10%増加させる。炭素回収及び貯留では、二酸化炭素が排気ガス流118から分離され、地層中又は海中深くに貯蔵されるか、或いは炭酸塩鉱物に変換される。炭素回収及び貯留技術の効果及び費用効果は、排気ガス流118中の二酸化炭素濃度が増大するほど高くなる。例証的な実施形態では、本明細書に示すように、HRSG120の出口からの排気ガス流118が炭素回収システム138を通ることで、排気ガス流140と一緒に大気中に排出される二酸化炭素の量が削減される。別の実施例では、再循環排気ガス流144を供給酸化剤流106と混合する、EGR混合器142が設置される。
【0025】
図2は、燃料流112と希釈剤流134とを最適な比で混合する混合器146を含む、図1のガスタービンエンジン102における排ガス性能を高めるシステム100のブロック図である。希釈剤と燃料の比は、燃焼器110内の希薄吹消えを防ぐために、約5.1未満とする。燃焼器110内の希薄吹消えは、燃焼器110への希釈剤添加が少しでも過剰に行われると、供給酸化剤流中の酸素含有量が低下すること、又は熱吸収によって火炎温度が低下することによって生じ得る。ガスタービンの例証的な動作において、排気ガス再循環により、供給酸化剤流中の酸素の使用可能量が例えば約5%〜約10%低下し、NOx生成が例えば約70%〜約80%減少する。更に、燃料流112への希釈剤134の添加により、燃焼器110内の火炎温度が低下し、更に燃焼器110におけるNOx生成が例えば約80%〜90%低下する。本発明の一実施形態によると、燃料流112に対する希釈剤134の添加比は、約1:1である。特定の実施形態では、図1のシステム100においてEGRシステム126と希釈剤134の添加とを組み合わせて用いることにより、排気ガス流118中のNOx濃度が例えば約3ppm未満に低減される。
【0026】
図3は、燃料‐希釈剤混合物を燃焼器110の予混合室148に間接的に添加するための混合器146を含む、図1のガスタービン102における燃焼器110のブロック図である。本発明の一実施形態によると、希釈剤134を燃焼器110の予混合室148において添加する、希釈剤添加システム132が設置される。供給酸化剤流108と燃料流112との希薄混合物は、予混合室148において形成された後、燃焼される。希薄混合物は、燃料流112に対して約2:1を超える比の非常に高濃度の供給酸化剤108を含む。更に、一実施例において、希釈剤134は、希釈剤‐燃料混合器146において燃料流112に添加され、その後、予混合室148で供給酸化剤流108と予混合される。本発明の特定の実施形態によると、図2で説明したように、希釈剤‐燃料比は大抵、約1に維持される。希釈剤‐燃料混合器146は、希釈剤134と燃料流112とを約1の比で混合する。
【0027】
図4は、燃焼器110の予混合室148に燃料112と希釈剤134とを直接添加する希釈剤添加システム132を含む、図1のガスタービン102における燃焼器110のブロック図である。本発明の実施形態によると、燃焼器110の予混合室148において希釈剤134を添加する、希釈剤添加システム132が設置される。更に、燃料流112が燃料噴射器150を介して予混合室148に添加される。供給酸化剤流108と燃料流112とは、予混合室148で希釈剤134と混合され、その後、この混合物が予混合室148で燃焼する。
【0028】
図5に示す本発明の別の実施形態において、多重ガスタービン発電システム202の排ガス性能を高めるシステム200を示す。多重ガスタービン発電システム202は、発電用に少なくとも2つのガスタービン204、206を含む。排ガス性能を高めるシステム200は、希釈剤流210を第1のガスタービン燃焼器212内に添加するように構成された第1の希釈剤添加システム208と、希釈剤流210を第2のガスタービン燃焼器216内に添加する第2の希釈剤添加システム214とを含む。システム200は、更に、排気ガス再循環システム218を含み、第1のガスタービン排気ガス流220の約50%未満を第1のガスタービン吸気部222に再循環させ、更に残りの第1のガスタービン排気ガス流220を第2のガスタービン206に循環させる。特定の実施形態において、システム200のEGRシステム218はバイパス弁224を含み、これにより、第1のガスタービン204の残りの排気ガス流226の一部を第2のガスタービン206の排気部228へと迂回させ、第2のガスタービン吸気部230における排気ガス226の添加と、第2のガスタービンの供給酸化剤流232とを併せて制御する。別の特定の実施形態において、EGRシステム218は、排気ガス流220の流れを調整する弁234を含む。また別の実施形態において、EGRシステム218は、排気ガス流220を冷却する冷却器236を含む。多重ガスタービン発電システム202の例証的な動作において、第1のガスタービン燃焼器212及び第2のガスタービン燃焼器216への希釈剤流210の添加により、第1及び第2のガスタービン204及び206の排気ガス流220及び238中のNOxの濃度が、例えば約60%〜約70%低下する。更に、第1のガスタービン吸気部222への第1のガスタービン排気ガス流220の再循環と第2のガスタービン吸気部230への第1のガスタービン204の残りの排気ガス流226の循環とにより、第1及び第2のガスタービン204及び206の排気ガス流220及び238中のNOx濃度が、例えば約80%〜約90%低下する。特定の実施形態において、システム200は、排気ガス流204及び206中のNOxの濃度を、例えば約3ppm〜約1ppm未満に低下させる。
【0029】
図6は、排ガス性能を高めるシステム300を含む、図1のガスタービン102における複数の燃焼器の例証的な構成の概略図である。図6のガスタービン302は、多重燃焼器燃焼システム304を含む。多重燃焼器燃焼システム404は更に、少なくとも2つの燃焼器306、308を含む。ガスタービン302の排ガス性能を高めるシステム300は、希釈剤添加システム310と排気ガス再循環システム312とを含む。希釈剤添加システム310は、多重燃焼器燃焼システム304の少なくとも1つの燃焼器306に希釈剤314を添加する。ガスタービン102の例証的な動作において、排気ガス再循環システム312は、排気ガス流316の約50%未満をガスタービン302の吸気部318内に再循環させる。更に、ガスタービン302の多重燃焼器燃焼システム304への希釈剤314の添加により、排気ガス流316中のNOx濃度が、例えば約80%〜約90%低下する。
【0030】
燃焼器306におけるNOxの生成は、燃焼器306内の火炎温度に対して指数関数的に増加する。燃焼器306への希釈剤314の添加により、燃焼器306の火炎温度が低下し、NOxの生成が例えば約60%〜約70%減少する。希薄吹消えは、供給酸化剤流320中の酸素含有量の減少によって生じる。排気ガス流316の再循環により、供給酸化剤流320中の酸素含有量が約5%低下する。更に、燃焼器306内の火炎温度及び酸素含有量の低下により、燃焼器306の燃焼効率が低下し、これによってガスタービン302の出力が低下する。適正な出力を生じ、また、NOx排出を低減するために、希釈剤噴射システム310で多重燃焼器燃焼システム304の少なくとも1つの燃焼器306に希釈剤314を添加して、NOxを例えば約80%〜約90%減少させる一方で、例証的な多重燃焼器燃焼システム404のその他の燃焼器308、322、324で、希釈剤314の影響を受けることなく燃料流326と供給酸化剤流320との混合物を燃焼させる。
【0031】
図7は、ガスタービンエンジンの排ガス性能を高める方法400の例証的なステップを示す流れ図である。この方法400は、ステップ402において、排気ガス再循環システムによって排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させるステップを含む。本発明の特定の実施形態において、再循環ステップは、弁を用いて排気ガス流の流れを調整するステップを含む。本発明の別の実施形態において、再循環ステップは、排気ガス流を冷却器で冷却するステップを含む。次に、ステップ404において、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させる。最後に、ステップ406において、燃焼器へと導かれる燃料流又は圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加する。本発明の特定の実施形態において、希釈剤添加ステップは、再循環排気ガス流又は低圧供給酸化剤流又は燃料流の少なくとも1つに希釈剤を添加するステップを含む。本発明の別の実施形態において、希釈剤添加ステップは、希釈剤を燃料に1:1の比で添加するステップを含む。一実施例において、この方法は、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を約3ppm未満に低下させる。別の実施例では、二酸化炭素の濃度を約10%増加させる。
【0032】
図8は、ガスタービンエンジンの排ガス性能を高める別の例証的な方法の、例証的なステップを示す流れ図である。この方法500は、ステップ502において排気ガス再循環システムによって排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させるステップを含む。次に、ステップ504において、ガスタービンの燃焼器へと導かれる高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させる。本発明の特定の実施形態において、再循環ステップは、弁を用いて排気ガス流の流れを調整するステップを含む。本発明の別の実施形態において、再循環ステップは、排気ガス流を冷却器内で冷却するステップを含む。最後に、ステップ506において、予混合室へと導かれる燃料流に希釈剤を添加し、燃料‐希釈剤混合物を予混合燃焼器内で燃焼させる。本発明の特定の実施形態において、希釈剤添加ステップは、予混合燃焼器の吸気部で希釈剤を添加するステップを含む。特定の実施形態において、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度が約3ppm未満に低減される。別の特定の実施形態において、二酸化炭素の濃度が約10%高くなる。
【実施例1】
【0033】
以下の例は、あくまでも一例であって、特許を受けようとする発明の技術的範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0034】
図9は、NOx生成の減少率と排気ガス再循環率の増加との関係を示すグラフ600である。x軸602は、排気ガス再循環率の増加を表す。y軸604は、NOx生成の減少率を表す。曲線606は、排気ガス再循環の変化に対するNOx生成の変化を表す。曲線606で示すように、排気ガス再循環率は、NOx生成率の減少に伴って増大する。例えば、NOx生成は、約50%の排気ガス再循環率において、約80%減少する。同様に、更に低い約10%の排気ガス再循環率において、約25%のNOx削減となる。このように、排気ガスの再循環を増大させることにより、ガスタービンエンジンのNOx生成が減少する。
【0035】
図10は、NOx生成の減少率と、水又は水蒸気と燃料との比の増大と、の関係を示すグラフ700である。x軸702は希釈剤‐燃料比を表す。y軸704はNOx生成の減少率を表す。曲線706は、希釈剤‐燃料比の増大に伴うNOx生成の変化を表す。特定の実施形態において、希釈剤には水又は水蒸気が含まれる。曲線706で示すように、希釈剤‐燃料比の増大はNOx生成の減少率を増加させる。例えば、約1:1の希釈剤‐燃料比では、NOx生成が約70%減少する。このように、希釈剤‐燃料比の増大は、ガスタービンエンジンにおけるNOx生成を減少させる。
【0036】
図11は、NOx生成の減少と、排気ガス再循環率及び燃料に対する水蒸気又は水の比の増大と、の関係を示すグラフ800である。x軸802は、排気ガス再循環率及び燃料に対する水蒸気又は水の比を変化させた様々な運転条件を表す。y軸804は、NOx生成率を表す。棒806は予混合燃焼によるNOx生成を表し、棒808は拡散燃焼におけるNOx生成を表す。第1の運転条件810は、0%のEGRを含み、水蒸気又は水と燃料との比は1:1である。この図に示すように、NOx生成は、運転条件810において、予混合燃焼で約20%、拡散燃焼で約60%となる。第2の運転条件812において、EGRは約25%であり、希釈剤添加は皆無である。NOx生成は、運転条件812において、予混合燃焼で約16%、拡散燃焼で約50%となる。同様に、第3の運転条件814において、EGRは約40%であり、希釈剤添加は皆無である。NOx生成は、第3の運転条件814において、予混合燃焼で約5%、拡散燃焼で約24%となる。第4の運転条件816は、25%のEGRを含み、燃料に対する水蒸気又は水の比は1:1に維持される。図示のように、NOx生成は、運転条件816において、予混合燃焼で約4%、拡散燃焼で約20%である。第5の運転条件818において、EGRは約40%であり、燃料に対する水蒸気又は水の比は約1:1に維持される。NOx生成は、運転条件818において、予混合燃焼で約2%、拡散燃焼で約9%である。このように、EGRと、燃料流への希釈剤添加とを組み合わせることにより、ガスタービン内でEGRのみ又は希釈剤添加のみを用いたNOx削減に比べて、NOx生成を全体的に更に大幅に減少させることができる。
【0037】
このように、上述したガスタービンの排ガス性能を高めるシステム及び方法の様々な実施形態は、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を約3ppm未満低下させ、二酸化炭素の濃度を約10%増加させる手法を提供する。また、この技術により、炭素回収技術を経済的に利用することができる。更に、このシステム及び方法により、既存のガスタービンベースの発電システム用の、NOx生成を約3ppm未満に減少させる後付けシステムが得られる。これによって、著しく環境を汚染する発電システムのNOx生成を経済的に制御し、ひいては厳しい環境規制を満たすことができる。
【0038】
当然ながら、上述のこうした全ての目的又は利点が、必ずしもいずれの特定の実施形態によっても達成されるわけではないことを理解されたい。このため、例えば、本明細書に教示する1つの利点又は1群の利点を、本明細書に教示又は示唆するその他の目的又は利点を達成することなく達成又は最適化するように、本明細書に記載のシステム及び技術を実施又は実現してもよいことが、当業者には明らかであろう。
【0039】
更に、異なる複数の実施形態の様々な特徴は互換性を有することが当業者には明らかであろう。例えば、水蒸気、水、又は一実施形態に関して説明した例えば窒素等その他の希釈剤等の希釈剤を、本発明の別の実施形態に関して説明したEGR冷却器と一緒に使用してもよい。同様に、当業者は本開示の原則に従って、説明した様々な特徴と各特徴のその他の周知の等価物とを併用及び適合し、更なるシステム及び技術を構成できる。
【0040】
ここでは、本発明の一部の態様のみを説明したが、当業者には多くの修正及び改変が想到可能である。したがって、そのような修正及び改変も全て、本発明の技術的範囲に含まれることから、添付の特許請求の範囲に含まれることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して排出削減に関し、特にガスタービンエンジンにおける排出削減に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NOx)は、元来、燃焼機関の排気ガス流中にみられる主な汚染物質である。窒素酸化物によって生物に有害な酸性雨が生じることが知られている。NOxの排出を削減するにあたり、予混合燃焼、排気ガス再循環(EGR)、拡散燃焼における水蒸気添加、再熱燃焼、及び選択触媒還元(SCR)等、これらに限定されない数々の排出削減技術が用いられてきた。
【0003】
例えば、予混合燃焼において、供給酸化剤流は燃料と混合された後、燃焼器に導入される。このような場合、燃料は燃焼用空気と均一に混合され、利用できる過剰空気が火炎温度を低温に保つ一助となる。低い火炎温度は、結果的にNOx生成量を減少させる。
【0004】
排気ガス再循環(EGR)では、排気ガス流の一部を供給酸化剤流中に戻して再循環させ、供給酸化剤流中の酸素濃度を効果的に低下させる。燃焼器内で過剰酸素が欠乏するとNOxの生成量が減少する。再熱燃焼はEGRと同様であるが、この場合、第1の燃焼器の燃焼生成物は、連続する第2の燃焼器内で再加熱又は再燃焼される。このように、第1の燃焼器の燃焼生成物を再加熱する第2の連続する燃焼器内における過剰酸素が欠乏することにより、NOxの生成が減少する。
【0005】
また、拡散炎中に水蒸気を添加すると、拡散炎の温度が急激に低下する。水蒸気の添加によって火炎温度を所望の限界まで低下させ、これにより、NOxの生成量を減少させることができる。選択触媒還元(SCR)では、例えばアンモニア等の還元剤を用いて、排気ガス流中の窒素酸化物を窒素元素に還元する。
【0006】
しかし、上述の排出削減技術を用いることにより、排気ガス流中のNOx濃度は約9ppmに低下する。クリーンな環境への関心が高まり、排出規制が厳しくなるにつれて、燃焼機関の排気ガス流中のNOx濃度を更に低下させることが強く望まれる。
【0007】
更に、地球温暖化への関心が高まっている。燃焼機関からの二酸化炭素の排出は、地球温暖化の最大の原因であるとされている。炭素回収及び炭素貯留といった技術が、排気ガス流中の二酸化炭素濃度を効果的に低下させることが立証されている。炭素回収技術は、排気ガス流中の二酸化炭素濃度が高い状態で、より効率的且つ費用効果的に機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6823821B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上述の1つ以上の問題に対処し、炭素回収技術を効果的に用いることができる、改良された排出削減技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高める方法を提供する。この方法は、排気ガス再循環システムによって排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるステップを含む。この方法は、更に、燃焼器へと導かれる燃料流又は圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップを含む。
【0011】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高める方法を提供する。この方法は、排気ガス再循環システムによって排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるステップを含む。この方法は、更に、予混合室へと導かれる燃料流に希釈剤を添加し、この燃料‐希釈剤混合物を予混合燃焼器で燃焼させて、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップを含む。
【0012】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高めるシステムを提供する。このシステムは、排気ガス流をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システムを含む。このシステムは、更に、燃焼器へと導かれる燃料流又は圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システムを含む。
【0013】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高めるシステムを提供する。このシステムは、排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システムを含む。このシステムは、更に、燃焼器内の予混合室へと導かれる燃料流に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システムを含む。
【0014】
本発明の別の実施形態に従って、発電時の排ガス性能を高めるシステムを提供する。このシステムは、少なくとも2つのガスタービンエンジンを含む。このシステムは、更に、第1及び第2のガスタービン燃焼器吸気部における燃料流又は第1及び第2のガスタービン圧縮機吸気部における低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加するように構成された希釈剤添加システムを含む。このシステムは、更に、第1のガスタービン出口からの排気ガス流の一部を第1のガスタービン圧縮機吸気部内へと再循環させるとともに、第1のガスタービンの排気ガス流の別の部分を第2のガスタービン圧縮機吸気部において循環させて、第1及び第2のガスタービン燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させることにより、第1及び第2のガスタービンの排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された排気ガス再循環システムを含む。
【0015】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高める後付けシステムを提供する。この後付けシステムは、排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの燃焼器内への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された、後付け可能な排気ガス再循環システムを含む。このシステムは、更に、燃焼器へと導かれる燃料流又は圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された、後付け可能な希釈剤添加システムを含む。
【0016】
本発明の別の実施形態に従って、ガスタービンの排ガス性能を高めるシステムを提供する。このシステムは、少なくとも2つの燃焼器を含む。このシステムは、更に、排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させて、ガスタービンの少なくとも2つの燃焼器のうち1つ以上の燃焼器への高圧供給酸化剤中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システムを含む。このシステムは、更に、ガスタービンの少なくとも2つの燃焼器のうち1つ以上の燃焼器に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システムを含む。
【0017】
全図面を通して同様の部分を同様の符号で示した添付図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読むことにより、本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点の理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による、EGRシステムと水蒸気又は水添加システムとを含むガスタービンエンジン用の例証的な排ガス性能向上システムのブロック図である。
【図2】燃料流と希釈剤流とを混合する混合器を含む、図1のガスタービンエンジン用の例証的な排ガス性能向上システムのブロック図である。
【図3】燃料‐希釈剤混合物を燃焼器の予混合室内に間接的に添加するための混合室を含む図1のガスタービンにおける燃焼器のブロック図である。
【図4】燃焼器の予混合室への燃料と希釈剤との直接添加を含む図1のガスタービンエンジンにおける燃焼器のブロック図である。
【図5】本発明の実施形態による複数のガスタービンエンジンの例証的な構成の概略図である。
【図6】希釈剤添加を含む図1のガスタービンにおける複数の燃焼器の例証的な構成の概略図である。
【図7】本発明の実施形態による、ガスタービンエンジンの排ガス性能を高める方法の例証的なステップを示す流れ図である。
【図8】本発明の実施形態による、ガスタービンエンジンの排ガス性能を高める方法の例証的なステップを示す、また別の流れ図である。
【図9】NOx生成の減少率と排気ガス再循環の増加との関係を示す例証的なグラフである。
【図10】NOx生成の減少率と、水又は水蒸気と燃料との比の増大と、の関係を示す例証的なグラフである。
【図11】NOx濃度の低下と、排気ガス再循環率及び燃料に対する水蒸気又は水の比の増大との関係を示す例証的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に詳細に説明するように、本発明の実施形態は、ガスタービンの排気ガス流中における窒素酸化物(NOx)排出を約3ppm未満に削減するとともに二酸化炭素濃度を約10%増加させる、排ガス性能を高めるシステムとガスタービンの運転方法とを提供する。本明細書で用いる「排ガス性能を高める」という表現は、ガスタービンの排気ガス流中のNOx濃度の低下を指す。「EGR」という表現は、ガスタービンエンジンの排気ガス再循環を指す。このシステムは、それぞれ排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機入口に戻して再循環させるとともに、希釈剤をガスタービンの燃焼器内に添加するために、EGRシステムと希釈剤添加システムとを組み合わせたものを含む。
【0020】
図1に示す実施形態に、ガスタービンエンジン102における排ガス性能を高めるシステム100を示す。ガスタービン102は、供給酸化剤流106を圧縮するとともに燃焼器110に高圧供給酸化剤流108を供給する圧縮機104を含む。燃焼器110は、高圧供給酸化剤流108を燃料流112と一緒に燃焼させる。一実施形態において、燃料流112は、液体燃料又は気体燃料を含む。液体燃料には、ディーゼル及び重油等、これらに限定されない種類の燃料が含まれる。気体燃料の非限定的な例には、天然ガス、合成ガス、及び水素が含まれる。ガスタービン102は、燃焼器110の燃焼排出物116から力学的仕事を取り出すタービン114を含む。燃焼排出物116は、タービン114の少なくとも1つのタービン段を通って流れた後、排気ガス流118としてガスタービン102から流出する。システム100の例証的な動作において、排熱回収ボイラ(HRSG)120はガスタービン102の排気ガス流118から熱を抽出し、HRSG内へと導かれる水124から水蒸気122を生成する。排気ガス再循環(EGR)システム126は、排気ガス流118の一部をガスタービン102の圧縮機104に再循環させ、ガスタービン102の燃焼器110内への高圧供給酸化剤流108中の酸素濃度を約5%低下させる。一実施形態において、EGRシステム126は、排気ガス流118の約50%未満を再循環させる。特定の実施形態において、EGRシステム126は、排気ガス流118の流れを調整する弁128を含む。別の実施形態において、EGRシステム126は、排気ガス流118を冷却する冷却器130を含む。更に、排気ガス流118中に存在する水分は、冷却器130内において排気ガス流118の温度低下により復水される。本明細書で用いる「HRSG」という表現は、排気ガス流118から熱を回収して水蒸気122を発生させる排熱回収ボイラ120を指す。水蒸気122は、一般的に、更なる仕事を取り出すために蒸気タービン(図示せず)へと導かれる。
【0021】
更に、希釈剤添加システム132が、燃焼器110への燃料流112又は燃焼器110へと導かれる高圧供給酸化剤流108の少なくとも一方に希釈剤134を添加して、排気ガス流118中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させる。一実施形態において、排気ガス流118中の窒素酸化物(NOx)の濃度は、約3ppm未満低下する。特定の実施形態では、二酸化炭素の濃度が約10%増加する。別の特定の実施形態において、希釈剤添加システム132は、希釈剤134を高圧供給酸化剤流108と混合する混合器136を含む。希釈剤134の非限定的な例には、水及び水蒸気が含まれる。
【0022】
動作時、NOxの生成は、火炎温度に対して指数関数的に、且つ、燃焼器110における酸素の使用可能量に対して比例的に増加する。EGRシステム126は、排気ガス流118の一部を圧縮機104へと再循環させ、供給酸化剤流106中の酸素含有量を約5%低下させる。燃焼器110において燃料流112と高圧供給酸化剤流108とが燃焼することにより、排気ガス流118中の酸素含有量は激減する。排気ガス流118が供給酸化剤流106と混合されると、この混合物中の酸素含有量は、純粋な供給酸化剤流中の酸素含有量よりも低くなる。この酸素含有量の低下が、燃焼器110内でのNOxの生成を、例えば約70%〜約80%低下させる一助となる。
【0023】
更に、燃焼器110への希釈剤134の添加は、火炎温度を低下させる一助となる。希釈剤134は、高圧供給酸化剤流108及び燃料流112の燃焼中に発生する熱を吸収して、燃焼器110内の火炎温度を低下させる。こうして、火炎温度の低下によりNOxの生成が阻害される。燃焼器110内への希釈剤134の添加は、NOxの生成を、例えば約60%〜約70%減少させる。
【0024】
EGRの使用は、また、結果的に得られる排気ガス流中の二酸化炭素の濃度を増大させる。特定の実施形態において、排気ガス再循環は、二酸化炭素の濃度を約10%増加させる。炭素回収及び貯留では、二酸化炭素が排気ガス流118から分離され、地層中又は海中深くに貯蔵されるか、或いは炭酸塩鉱物に変換される。炭素回収及び貯留技術の効果及び費用効果は、排気ガス流118中の二酸化炭素濃度が増大するほど高くなる。例証的な実施形態では、本明細書に示すように、HRSG120の出口からの排気ガス流118が炭素回収システム138を通ることで、排気ガス流140と一緒に大気中に排出される二酸化炭素の量が削減される。別の実施例では、再循環排気ガス流144を供給酸化剤流106と混合する、EGR混合器142が設置される。
【0025】
図2は、燃料流112と希釈剤流134とを最適な比で混合する混合器146を含む、図1のガスタービンエンジン102における排ガス性能を高めるシステム100のブロック図である。希釈剤と燃料の比は、燃焼器110内の希薄吹消えを防ぐために、約5.1未満とする。燃焼器110内の希薄吹消えは、燃焼器110への希釈剤添加が少しでも過剰に行われると、供給酸化剤流中の酸素含有量が低下すること、又は熱吸収によって火炎温度が低下することによって生じ得る。ガスタービンの例証的な動作において、排気ガス再循環により、供給酸化剤流中の酸素の使用可能量が例えば約5%〜約10%低下し、NOx生成が例えば約70%〜約80%減少する。更に、燃料流112への希釈剤134の添加により、燃焼器110内の火炎温度が低下し、更に燃焼器110におけるNOx生成が例えば約80%〜90%低下する。本発明の一実施形態によると、燃料流112に対する希釈剤134の添加比は、約1:1である。特定の実施形態では、図1のシステム100においてEGRシステム126と希釈剤134の添加とを組み合わせて用いることにより、排気ガス流118中のNOx濃度が例えば約3ppm未満に低減される。
【0026】
図3は、燃料‐希釈剤混合物を燃焼器110の予混合室148に間接的に添加するための混合器146を含む、図1のガスタービン102における燃焼器110のブロック図である。本発明の一実施形態によると、希釈剤134を燃焼器110の予混合室148において添加する、希釈剤添加システム132が設置される。供給酸化剤流108と燃料流112との希薄混合物は、予混合室148において形成された後、燃焼される。希薄混合物は、燃料流112に対して約2:1を超える比の非常に高濃度の供給酸化剤108を含む。更に、一実施例において、希釈剤134は、希釈剤‐燃料混合器146において燃料流112に添加され、その後、予混合室148で供給酸化剤流108と予混合される。本発明の特定の実施形態によると、図2で説明したように、希釈剤‐燃料比は大抵、約1に維持される。希釈剤‐燃料混合器146は、希釈剤134と燃料流112とを約1の比で混合する。
【0027】
図4は、燃焼器110の予混合室148に燃料112と希釈剤134とを直接添加する希釈剤添加システム132を含む、図1のガスタービン102における燃焼器110のブロック図である。本発明の実施形態によると、燃焼器110の予混合室148において希釈剤134を添加する、希釈剤添加システム132が設置される。更に、燃料流112が燃料噴射器150を介して予混合室148に添加される。供給酸化剤流108と燃料流112とは、予混合室148で希釈剤134と混合され、その後、この混合物が予混合室148で燃焼する。
【0028】
図5に示す本発明の別の実施形態において、多重ガスタービン発電システム202の排ガス性能を高めるシステム200を示す。多重ガスタービン発電システム202は、発電用に少なくとも2つのガスタービン204、206を含む。排ガス性能を高めるシステム200は、希釈剤流210を第1のガスタービン燃焼器212内に添加するように構成された第1の希釈剤添加システム208と、希釈剤流210を第2のガスタービン燃焼器216内に添加する第2の希釈剤添加システム214とを含む。システム200は、更に、排気ガス再循環システム218を含み、第1のガスタービン排気ガス流220の約50%未満を第1のガスタービン吸気部222に再循環させ、更に残りの第1のガスタービン排気ガス流220を第2のガスタービン206に循環させる。特定の実施形態において、システム200のEGRシステム218はバイパス弁224を含み、これにより、第1のガスタービン204の残りの排気ガス流226の一部を第2のガスタービン206の排気部228へと迂回させ、第2のガスタービン吸気部230における排気ガス226の添加と、第2のガスタービンの供給酸化剤流232とを併せて制御する。別の特定の実施形態において、EGRシステム218は、排気ガス流220の流れを調整する弁234を含む。また別の実施形態において、EGRシステム218は、排気ガス流220を冷却する冷却器236を含む。多重ガスタービン発電システム202の例証的な動作において、第1のガスタービン燃焼器212及び第2のガスタービン燃焼器216への希釈剤流210の添加により、第1及び第2のガスタービン204及び206の排気ガス流220及び238中のNOxの濃度が、例えば約60%〜約70%低下する。更に、第1のガスタービン吸気部222への第1のガスタービン排気ガス流220の再循環と第2のガスタービン吸気部230への第1のガスタービン204の残りの排気ガス流226の循環とにより、第1及び第2のガスタービン204及び206の排気ガス流220及び238中のNOx濃度が、例えば約80%〜約90%低下する。特定の実施形態において、システム200は、排気ガス流204及び206中のNOxの濃度を、例えば約3ppm〜約1ppm未満に低下させる。
【0029】
図6は、排ガス性能を高めるシステム300を含む、図1のガスタービン102における複数の燃焼器の例証的な構成の概略図である。図6のガスタービン302は、多重燃焼器燃焼システム304を含む。多重燃焼器燃焼システム404は更に、少なくとも2つの燃焼器306、308を含む。ガスタービン302の排ガス性能を高めるシステム300は、希釈剤添加システム310と排気ガス再循環システム312とを含む。希釈剤添加システム310は、多重燃焼器燃焼システム304の少なくとも1つの燃焼器306に希釈剤314を添加する。ガスタービン102の例証的な動作において、排気ガス再循環システム312は、排気ガス流316の約50%未満をガスタービン302の吸気部318内に再循環させる。更に、ガスタービン302の多重燃焼器燃焼システム304への希釈剤314の添加により、排気ガス流316中のNOx濃度が、例えば約80%〜約90%低下する。
【0030】
燃焼器306におけるNOxの生成は、燃焼器306内の火炎温度に対して指数関数的に増加する。燃焼器306への希釈剤314の添加により、燃焼器306の火炎温度が低下し、NOxの生成が例えば約60%〜約70%減少する。希薄吹消えは、供給酸化剤流320中の酸素含有量の減少によって生じる。排気ガス流316の再循環により、供給酸化剤流320中の酸素含有量が約5%低下する。更に、燃焼器306内の火炎温度及び酸素含有量の低下により、燃焼器306の燃焼効率が低下し、これによってガスタービン302の出力が低下する。適正な出力を生じ、また、NOx排出を低減するために、希釈剤噴射システム310で多重燃焼器燃焼システム304の少なくとも1つの燃焼器306に希釈剤314を添加して、NOxを例えば約80%〜約90%減少させる一方で、例証的な多重燃焼器燃焼システム404のその他の燃焼器308、322、324で、希釈剤314の影響を受けることなく燃料流326と供給酸化剤流320との混合物を燃焼させる。
【0031】
図7は、ガスタービンエンジンの排ガス性能を高める方法400の例証的なステップを示す流れ図である。この方法400は、ステップ402において、排気ガス再循環システムによって排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させるステップを含む。本発明の特定の実施形態において、再循環ステップは、弁を用いて排気ガス流の流れを調整するステップを含む。本発明の別の実施形態において、再循環ステップは、排気ガス流を冷却器で冷却するステップを含む。次に、ステップ404において、ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させる。最後に、ステップ406において、燃焼器へと導かれる燃料流又は圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加する。本発明の特定の実施形態において、希釈剤添加ステップは、再循環排気ガス流又は低圧供給酸化剤流又は燃料流の少なくとも1つに希釈剤を添加するステップを含む。本発明の別の実施形態において、希釈剤添加ステップは、希釈剤を燃料に1:1の比で添加するステップを含む。一実施例において、この方法は、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を約3ppm未満に低下させる。別の実施例では、二酸化炭素の濃度を約10%増加させる。
【0032】
図8は、ガスタービンエンジンの排ガス性能を高める別の例証的な方法の、例証的なステップを示す流れ図である。この方法500は、ステップ502において排気ガス再循環システムによって排気ガス流の一部をガスタービンの圧縮機に再循環させるステップを含む。次に、ステップ504において、ガスタービンの燃焼器へと導かれる高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させる。本発明の特定の実施形態において、再循環ステップは、弁を用いて排気ガス流の流れを調整するステップを含む。本発明の別の実施形態において、再循環ステップは、排気ガス流を冷却器内で冷却するステップを含む。最後に、ステップ506において、予混合室へと導かれる燃料流に希釈剤を添加し、燃料‐希釈剤混合物を予混合燃焼器内で燃焼させる。本発明の特定の実施形態において、希釈剤添加ステップは、予混合燃焼器の吸気部で希釈剤を添加するステップを含む。特定の実施形態において、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度が約3ppm未満に低減される。別の特定の実施形態において、二酸化炭素の濃度が約10%高くなる。
【実施例1】
【0033】
以下の例は、あくまでも一例であって、特許を受けようとする発明の技術的範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0034】
図9は、NOx生成の減少率と排気ガス再循環率の増加との関係を示すグラフ600である。x軸602は、排気ガス再循環率の増加を表す。y軸604は、NOx生成の減少率を表す。曲線606は、排気ガス再循環の変化に対するNOx生成の変化を表す。曲線606で示すように、排気ガス再循環率は、NOx生成率の減少に伴って増大する。例えば、NOx生成は、約50%の排気ガス再循環率において、約80%減少する。同様に、更に低い約10%の排気ガス再循環率において、約25%のNOx削減となる。このように、排気ガスの再循環を増大させることにより、ガスタービンエンジンのNOx生成が減少する。
【0035】
図10は、NOx生成の減少率と、水又は水蒸気と燃料との比の増大と、の関係を示すグラフ700である。x軸702は希釈剤‐燃料比を表す。y軸704はNOx生成の減少率を表す。曲線706は、希釈剤‐燃料比の増大に伴うNOx生成の変化を表す。特定の実施形態において、希釈剤には水又は水蒸気が含まれる。曲線706で示すように、希釈剤‐燃料比の増大はNOx生成の減少率を増加させる。例えば、約1:1の希釈剤‐燃料比では、NOx生成が約70%減少する。このように、希釈剤‐燃料比の増大は、ガスタービンエンジンにおけるNOx生成を減少させる。
【0036】
図11は、NOx生成の減少と、排気ガス再循環率及び燃料に対する水蒸気又は水の比の増大と、の関係を示すグラフ800である。x軸802は、排気ガス再循環率及び燃料に対する水蒸気又は水の比を変化させた様々な運転条件を表す。y軸804は、NOx生成率を表す。棒806は予混合燃焼によるNOx生成を表し、棒808は拡散燃焼におけるNOx生成を表す。第1の運転条件810は、0%のEGRを含み、水蒸気又は水と燃料との比は1:1である。この図に示すように、NOx生成は、運転条件810において、予混合燃焼で約20%、拡散燃焼で約60%となる。第2の運転条件812において、EGRは約25%であり、希釈剤添加は皆無である。NOx生成は、運転条件812において、予混合燃焼で約16%、拡散燃焼で約50%となる。同様に、第3の運転条件814において、EGRは約40%であり、希釈剤添加は皆無である。NOx生成は、第3の運転条件814において、予混合燃焼で約5%、拡散燃焼で約24%となる。第4の運転条件816は、25%のEGRを含み、燃料に対する水蒸気又は水の比は1:1に維持される。図示のように、NOx生成は、運転条件816において、予混合燃焼で約4%、拡散燃焼で約20%である。第5の運転条件818において、EGRは約40%であり、燃料に対する水蒸気又は水の比は約1:1に維持される。NOx生成は、運転条件818において、予混合燃焼で約2%、拡散燃焼で約9%である。このように、EGRと、燃料流への希釈剤添加とを組み合わせることにより、ガスタービン内でEGRのみ又は希釈剤添加のみを用いたNOx削減に比べて、NOx生成を全体的に更に大幅に減少させることができる。
【0037】
このように、上述したガスタービンの排ガス性能を高めるシステム及び方法の様々な実施形態は、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を約3ppm未満低下させ、二酸化炭素の濃度を約10%増加させる手法を提供する。また、この技術により、炭素回収技術を経済的に利用することができる。更に、このシステム及び方法により、既存のガスタービンベースの発電システム用の、NOx生成を約3ppm未満に減少させる後付けシステムが得られる。これによって、著しく環境を汚染する発電システムのNOx生成を経済的に制御し、ひいては厳しい環境規制を満たすことができる。
【0038】
当然ながら、上述のこうした全ての目的又は利点が、必ずしもいずれの特定の実施形態によっても達成されるわけではないことを理解されたい。このため、例えば、本明細書に教示する1つの利点又は1群の利点を、本明細書に教示又は示唆するその他の目的又は利点を達成することなく達成又は最適化するように、本明細書に記載のシステム及び技術を実施又は実現してもよいことが、当業者には明らかであろう。
【0039】
更に、異なる複数の実施形態の様々な特徴は互換性を有することが当業者には明らかであろう。例えば、水蒸気、水、又は一実施形態に関して説明した例えば窒素等その他の希釈剤等の希釈剤を、本発明の別の実施形態に関して説明したEGR冷却器と一緒に使用してもよい。同様に、当業者は本開示の原則に従って、説明した様々な特徴と各特徴のその他の周知の等価物とを併用及び適合し、更なるシステム及び技術を構成できる。
【0040】
ここでは、本発明の一部の態様のみを説明したが、当業者には多くの修正及び改変が想到可能である。したがって、そのような修正及び改変も全て、本発明の技術的範囲に含まれることから、添付の特許請求の範囲に含まれることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(102)の排ガス性能を高める方法であって、
排気ガス再循環システムによって排気ガス流(118)の一部を前記ガスタービン(102)の圧縮機(104)に再循環させて、前記ガスタービン(102)の燃焼器(110)への高圧供給酸化剤流(108)中の酸素濃度を低下させるステップと、
前記燃焼器(110)へと導かれる燃料流(112)又は前記圧縮機(104)へと導かれる低圧供給酸化剤流(106)の少なくとも一方に希釈剤(134)を添加して、結果的に得られる排気ガス流(118)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記再循環ステップは、弁(128)を用いて排気ガス流(118)の流れを調整するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希釈剤(134)を添加するステップは、前記再循環排気ガス流(118)又は前記低圧供給酸化剤流(106)又は前記燃料流(112)の前記少なくとも1つに希釈剤(134)を添加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記希釈剤(134)を添加するステップは、燃料(112)に1:1の比で希釈剤(134)を添加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ガスタービン(102)の排ガス性能を高める方法であって、
排気ガス再循環システムによって排気ガス流(118)の一部を前記ガスタービン(102)の圧縮機(104)に再循環させて、前記ガスタービン(102)の燃焼器(110)への高圧供給酸化剤流(108)中の酸素濃度を低下させるステップと、
予混合室(148)へと導かれる燃料流(112)に希釈剤(134)を添加し、前記燃料‐希釈剤混合物を予混合燃焼器内で燃焼させて、結果的に得られる排気ガス流(118)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップと、を含む方法。
【請求項6】
ガスタービン(102)の排ガス性能を高めるシステム(100)であって、
排気ガス流(118)の一部を前記ガスタービン(102)の圧縮機(104)に再循環させて、前記ガスタービン(102)の燃焼器(110)への高圧供給酸化剤流(108)中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システム(126)と、
前記燃焼器(110)へと導かれる燃料流(112)又は前記圧縮機(104)へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤(134)を添加して、結果的に得られる排気ガス流(118)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システム(132)と、を含むシステム(100)。
【請求項7】
ガスタービン(102)の排ガス性能を高めるシステム(100)であって、
排気ガス流(118)の一部を前記ガスタービン(102)の圧縮機(104)に再循環させて、前記ガスタービン(102)の燃焼器(110)への高圧供給酸化剤流(108)中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システム(126)と、
前記燃焼器(110)の予混合室(148)で燃料流(112)に希釈剤(134)を添加して、結果的に得られる排気ガス流(118)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システム(132)と、を含むシステム(100)。
【請求項8】
発電時の排ガス性能を高めるシステム(200)であって、
少なくとも2つのガスタービン(204、206)エンジンと、
第1及び第2のガスタービン燃焼器(212、216)における燃料流又は第1及び第2のガスタービン圧縮機吸気部(222、230)における低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤(210)を添加するように構成された希釈剤添加システム(208)と、
第1のガスタービン出口からの排気ガス流(220)の一部を第1のガスタービン圧縮機吸気部(222)に再循環させるとともに、前記第1のガスタービン(204)の前記排気ガス流(220)の一部を前記第2のガスタービン圧縮機吸気部(230)に循環させて、前記第1及び第2のガスタービン燃焼器(212、216)への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させ、且つ、前記第1及び第2のガスタービン(204、206)の前記排気ガス流(220、238)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された排気ガス再循環システム(218)と、を含むシステム(200)。
【請求項9】
ガスタービンの排ガス性能を高める後付けシステムであって、
排気ガス流の一部を前記ガスタービンの圧縮機に再循環させて、前記ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された後付け可能な排気ガス再循環システムと、
前記燃焼器へと導かれる燃料流又は前記圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された後付け可能な希釈剤添加システムと、を含む後付けシステム。
【請求項10】
ガスタービン(302)の排ガス性能を高めるシステム(300)であって、
少なくとも2つの燃焼器(306、308)と、
排気ガス流(316)の一部を前記ガスタービン(302)の圧縮機(318)に再循環させて、前記ガスタービン(302)の前記少なくとも2つの燃焼器(306、308)のうち1つ以上の燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システム(312)と、
前記ガスタービン(302)の前記少なくとも2つの燃焼器(306、308)のうち1つ以上の燃焼器に希釈剤(314)を添加して、結果的に得られる排気ガス流(316)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システム(310)と、を含むシステム(300)。
【請求項1】
ガスタービン(102)の排ガス性能を高める方法であって、
排気ガス再循環システムによって排気ガス流(118)の一部を前記ガスタービン(102)の圧縮機(104)に再循環させて、前記ガスタービン(102)の燃焼器(110)への高圧供給酸化剤流(108)中の酸素濃度を低下させるステップと、
前記燃焼器(110)へと導かれる燃料流(112)又は前記圧縮機(104)へと導かれる低圧供給酸化剤流(106)の少なくとも一方に希釈剤(134)を添加して、結果的に得られる排気ガス流(118)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記再循環ステップは、弁(128)を用いて排気ガス流(118)の流れを調整するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希釈剤(134)を添加するステップは、前記再循環排気ガス流(118)又は前記低圧供給酸化剤流(106)又は前記燃料流(112)の前記少なくとも1つに希釈剤(134)を添加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記希釈剤(134)を添加するステップは、燃料(112)に1:1の比で希釈剤(134)を添加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ガスタービン(102)の排ガス性能を高める方法であって、
排気ガス再循環システムによって排気ガス流(118)の一部を前記ガスタービン(102)の圧縮機(104)に再循環させて、前記ガスタービン(102)の燃焼器(110)への高圧供給酸化剤流(108)中の酸素濃度を低下させるステップと、
予混合室(148)へと導かれる燃料流(112)に希釈剤(134)を添加し、前記燃料‐希釈剤混合物を予混合燃焼器内で燃焼させて、結果的に得られる排気ガス流(118)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるステップと、を含む方法。
【請求項6】
ガスタービン(102)の排ガス性能を高めるシステム(100)であって、
排気ガス流(118)の一部を前記ガスタービン(102)の圧縮機(104)に再循環させて、前記ガスタービン(102)の燃焼器(110)への高圧供給酸化剤流(108)中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システム(126)と、
前記燃焼器(110)へと導かれる燃料流(112)又は前記圧縮機(104)へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤(134)を添加して、結果的に得られる排気ガス流(118)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システム(132)と、を含むシステム(100)。
【請求項7】
ガスタービン(102)の排ガス性能を高めるシステム(100)であって、
排気ガス流(118)の一部を前記ガスタービン(102)の圧縮機(104)に再循環させて、前記ガスタービン(102)の燃焼器(110)への高圧供給酸化剤流(108)中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システム(126)と、
前記燃焼器(110)の予混合室(148)で燃料流(112)に希釈剤(134)を添加して、結果的に得られる排気ガス流(118)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システム(132)と、を含むシステム(100)。
【請求項8】
発電時の排ガス性能を高めるシステム(200)であって、
少なくとも2つのガスタービン(204、206)エンジンと、
第1及び第2のガスタービン燃焼器(212、216)における燃料流又は第1及び第2のガスタービン圧縮機吸気部(222、230)における低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤(210)を添加するように構成された希釈剤添加システム(208)と、
第1のガスタービン出口からの排気ガス流(220)の一部を第1のガスタービン圧縮機吸気部(222)に再循環させるとともに、前記第1のガスタービン(204)の前記排気ガス流(220)の一部を前記第2のガスタービン圧縮機吸気部(230)に循環させて、前記第1及び第2のガスタービン燃焼器(212、216)への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させ、且つ、前記第1及び第2のガスタービン(204、206)の前記排気ガス流(220、238)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された排気ガス再循環システム(218)と、を含むシステム(200)。
【請求項9】
ガスタービンの排ガス性能を高める後付けシステムであって、
排気ガス流の一部を前記ガスタービンの圧縮機に再循環させて、前記ガスタービンの燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された後付け可能な排気ガス再循環システムと、
前記燃焼器へと導かれる燃料流又は前記圧縮機へと導かれる低圧供給酸化剤流の少なくとも一方に希釈剤を添加して、結果的に得られる排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された後付け可能な希釈剤添加システムと、を含む後付けシステム。
【請求項10】
ガスタービン(302)の排ガス性能を高めるシステム(300)であって、
少なくとも2つの燃焼器(306、308)と、
排気ガス流(316)の一部を前記ガスタービン(302)の圧縮機(318)に再循環させて、前記ガスタービン(302)の前記少なくとも2つの燃焼器(306、308)のうち1つ以上の燃焼器への高圧供給酸化剤流中の酸素濃度を低下させるように構成された排気ガス再循環システム(312)と、
前記ガスタービン(302)の前記少なくとも2つの燃焼器(306、308)のうち1つ以上の燃焼器に希釈剤(314)を添加して、結果的に得られる排気ガス流(316)中の窒素酸化物(NOx)の濃度を低下させるとともに二酸化炭素の濃度を上昇させるように構成された希釈剤添加システム(310)と、を含むシステム(300)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−127602(P2011−127602A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−278232(P2010−278232)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278232(P2010−278232)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
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