説明

ガスタービンエンジンアセンブリ内に熱交換器を搭載する方法

【課題】ガスタービンエンジンアセンブリ内で熱交換器(602)を組み立てる方法を提供すること。
【解決手段】方法は、細長いスロット(524)を有する壁を含む構造体(520)を提供するステップと、ブラケット(702)と動作可能に連動する熱交換器(602)を提供するステップと、ブラケットを構造体に結合するスリップジョイント(704)を提供するステップとを含む。スリップジョイントは、スタンドオフ(724)と、細長い部材(728)と、細長い部材の周りに配置された付勢部材(726)とを含む。スタンドオフは壁を通って挿入され、したがって付勢部材は、ブラケットと構造体の間に所定の付勢力を与える。このスリップジョイントにより、熱膨張または収縮による摺動力が付勢力より大きいとき、ブラケットと構造体の間で相対的な摺動動作を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、一般に、ガスタービンエンジンアセンブリ内に熱交換器を搭載する方法に関し、より詳細には、スリップジョイントアセンブリを使用して熱交換器を搭載する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの知られているガスタービンエンジンは、エンジンの寿命および/または信頼性の改善を容易にするために、冷却すべきエンジンサブシステムを有する。エンジンサブシステムの冷却を容易にするために、少なくともいくつかの知られているガスタービンエンジンアセンブリは放熱器を含み、この放熱器を、エンジンアセンブリ内を流れる空気に露出して、放熱器内を流れる作動流体(たとえば、オイルおよび/または燃料)の冷却を容易にする。しかし、多くのガスタービンエンジンの放熱器は、エンジンアセンブリを通る空気流を遮断して、エンジンアセンブリ内で乱流および/または圧力降下をもたらすことが知られてきた。これは、エンジン性能に悪影響を及ぼす恐れがある。さらに、放熱器がジョイントアセンブリに割り込むことで、冷却できる面積が低減する。さらに、少なくともいくつかの知られているガスタービンエンジンの放熱器は、高サイクル疲労(たとえば、回転体の不均衡によってもたらされる振動に起因する疲労)および/または低サイクル疲労(たとえば、放熱器と支持構造の温度差動によってもたらされる放熱器の熱膨張に起因する疲労)を受けやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、ガスタービンエンジンの効率の向上を容易にしながら、同時に高サイクル疲労および低サイクル疲労の問題に対処する熱交換器搭載システムを提供することが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示する例示的な実施形態は、振動による高サイクル疲労の仲介にとって十分な剛性を提供しながら、熱膨張によってもたらされる低サイクル疲労の応力を軽減する、熱交換器のための搭載システムを提供する。
【0005】
例示的な実施形態では、熱交換器アセンブリは、径方向の内側表面から延びる複数のフィンと、径方向の外側表面上に画定された複数の円周方向に延びる隔置された取付け箇所とを有する弓形の本体を備える第1の部材を含む。第1の部材には、取付け箇所の少なくとも1つによって、ブラケットアセンブリが、支持された状態で接続されるように取り付けられ、このブラケットアセンブリは、熱交換器アセンブリをガスタービンアセンブリの構造体に支持された状態で取り付けるために、スリップジョイントアセンブリと動作可能に連動するように寸法設定および構成される。
【0006】
例示的な実施形態では、熱交換器アセンブリは、径方向の内側表面から延びる複数のフィンと、径方向の外側表面上に画定された複数の円周方向に延びる溶接タブとを有する弓形の本体を備える第1の部材を含む。ブラケットアセンブリはブラケットを含み、このブラケットは、基部部分と、基部部分から延びてブラケットにc字状の断面を提供する第1および第2のアーム部分とを有する。第1および第2のアーム部分はそれぞれ、基部部分が径方向の外側表面に対して隔置された関係で配置されるように、関連する溶接タブにしっかりと固定される。ブラケットは、基部部分内に画定された開口を含み、この開口は、取付け部材を受け入れるように寸法設定および構成される。ブラケットアセンブリは、開口近傍に、基部部分と径方向の外側表面の間で空間内を延びる締め具部材を含む。
【0007】
例示的な実施形態では、熱交換器支持部は、ブラケットを含むブラケットアセンブリを含み、このブラケットは、基部部分と、基部部分から延びてブラケットにc字状の断面を提供し、かつ内部領域を画定する第1および第2のアーム部分とを有する。ブラケットは開口を含み、この開口は、基部部分内に画定され、取付け部材を受け入れるように寸法設定および構成される。ブラケットアセンブリは、内部領域内の開口近傍に、ブラケットに選択的に固定される締め具部材を含む。
【0008】
例示的な実施形態では、細長い断面を有するスロットを含む壁に対する壁貫通搭載システムを組み立てる方法が提供され、このスロットは、壁の第1の表面から壁の第2の表面まで壁を貫通する。この方法は、ブラケットと、スタンドオフおよび付勢要素を含むスリップマウントとを提供するステップであって、スタンドオフが、細長い部材と細長い部材から外側に延びるフランジとを含み、付勢要素が、細長い部材の周りに位置決めされる、提供するステップを含む。この方法はまた、壁に搭載すべきデバイスにブラケットを結合するステップと、壁の第1の表面に隣接してブラケットおよびデバイスを位置決めするステップとを含む。この方法は、細長い部材がブラケットに隣接するように、そして付勢要素が、壁の第2の表面とフランジの間で細長い部材の周りに位置決めされるように、壁の第2の表面から壁の第1の表面までスロットを通ってスタンドオフを挿入するステップと、スタンドオフが、フランジおよび付勢要素を介して壁の第2の表面に第1の所定の負荷を伝達し、また細長い部材を介してブラケットに第2の所定の負荷を伝達して、スタンドオフがスロットの細長い断面に沿って摺動することを容易にするように、スタンドオフをブラケットに結合するステップとをさらに含む。
【0009】
例示的な実施形態では、細長い断面を有するスロットを含む壁に対する壁貫通搭載システムが提供され、このスロットは、壁の第1の表面から壁の第2の表面まで壁を貫通する。このシステムは、壁に搭載すべきデバイスに結合するように構成されたブラケットを含み、このブラケットは、壁の第1の表面に隣接して位置決め可能である。このシステムはまた、細長い部材と、細長い部材から外側に延びるフランジとを備えるスタンドオフを含み、このスタンドオフは、細長い部材がブラケットに隣接するように、壁の第2の表面から壁の第1の表面までスロットを貫通するように寸法設定され、また付勢要素は、スタンドオフがブラケットに締め付けられたとき、スタンドオフが、フランジおよび付勢要素を介して壁の第2の表面に第1の所定の負荷を伝達し、また細長い部材を介してブラケットに第2の所定の負荷を伝達して、スタンドオフがスロットの細長い断面に沿って摺動することを容易にするように、壁の第2の表面とフランジの間で細長い部材の周りに位置決めされるように寸法設定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガスタービンエンジンアセンブリの概略図である。
【図2】熱交換器アセンブリが搭載されたエンジンアセンブリの側面図である。
【図3】熱交換器アセンブリに対する搭載システムを示す、図2の3−3に沿った横断面図である。
【図4】図3の4−4に沿った横断面図である。
【図5】図4の5−5に沿った横断面図である。
【図6】熱交換器アセンブリの概略側面図である。
【図7】熱交換器アセンブリの概略図である。
【図8】熱交換器アセンブリに対する搭載システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、例示的な搭載システムおよび例示的な搭載システムを組み立てる方法を、限定ではなく例として示す。この説明により、当業者であれば明らかに本開示を作製および使用できるはずであり、またこの説明では、現在本開示を実施する最良の形態と考えられるものを含めて、本開示のいくつかの実施形態、適合形態、変形形態、代替形態、および使用形態について説明する。本開示は、本明細書では、ガスタービンエンジンアセンブリに適用されるように好ましい実施形態に適用されるものとして説明される。しかし、この開示は、広い範囲のシステムでの一般的な応用例、ならびに/または様々な他の商業用、工業用、および/もしくは消費者用の応用例を有することが企図される。
【0012】
概略的に、ガスタービンエンジン向けの熱交換器アセンブリおよび搭載システムについて、本明細書に開示する。熱交換器アセンブリは複数の弓形マニホルドを含み、弓形マニホルドはそれぞれ、径方向の内側表面から延びるフィンのアレイを支持する。径方向の外側表面上には、複数の円周方向に延びる隔置された溶接タブが一体形成される。フィンの配置に利用可能な表面積を最大にするように、そしてマニホルド内の冷却回路に干渉しないように、熱交換器をガスタービンエンジンアセンブリの構造部材に取り付けるために、ブラケットアセンブリ、たとえばファンケースが利用される。
【0013】
例示的なブラケットアセンブリはブラケットを含み、ブラケットは、ブラケット基部と熱交換器の間で締め具を支持する。
【0014】
図1は、例示的なガスタービンエンジンアセンブリ500の概略図である。ガスタービンエンジンアセンブリ500は、中心線軸502および半径R(図2に示す)を有し、また吸気側504、排気側506、ファンアセンブリ508、および中核のガスタービンエンジン510を含む。ファンアセンブリ508は、ファンの羽根512のアレイを含み、ファンの羽根512は、回転板514から外側へ径方向に延び、また第1のダクト表面518と第2のダクト表面522の間に画定されたバイパスダクト516の軸方向に前方で位置決めされる。例示的な実施形態では、ファンアセンブリ508の軸方向に後方で、バイパスダクト516を通る空気流AFに露出されるように、熱交換器アセンブリ600がファンケース520に結合される。他の実施形態では、ガスタービンエンジンアセンブリ500上の任意の適切な位置に、熱交換器アセンブリ600を搭載することができる。
【0015】
図2は、ファンケース520と動作可能に係合して搭載された状態で示す、例示的な熱交換器アセンブリ600の側面図である。例示的な実施形態では、熱交換器アセンブリ600は、複数の実質上類似の円周方向に延びる熱交換器602を含む。各熱交換器602は、第1の端部604と、第2の端部606と、第1の端部604と第2の端部606の間を延びる実質上弓形の本体608とを有し、したがって熱交換器602は、バイパスダクト516(図1に示す)のプロファイルと実質上共形となる。熱交換器アセンブリ600は、熱交換器アセンブリ600が本明細書に記載の通り機能することを可能にする任意の適切なプロファイルを有する任意の適切な数の熱交換器602を有することができる。
【0016】
例示的な実施形態では、以下に記載のように、第1の端部604は、ファンケース520および本体608にしっかりと結合(たとえば、ボルト締め)することができ、また第2の端部606は、複数の搭載システム700を介してファンケース520に摺動可能に結合される。各熱交換器602は、任意の適切な数の搭載システム700を介してファンケース520に結合することができる。例示的な実施形態では、各熱交換器602に対して約20個の搭載システム700を利用することができる。例示的な実施形態では、第1の端部604は、熱交換器602を少なくとも1つの流体伝達ライン(図示せず)に結合すること、そして冷却すべき熱交換器602を通るように加熱流体の流れを誘導することを容易にするために、入口ポート(図示せず)および出口ポート(図示せず)を含む。
【0017】
例示的な実施形態では、熱交換器アセンブリ600は、熱交換器602が互いから(たとえば、少なくとも0.25インチ)円周方向に隔置されるように、ファンケース520に結合される。一実施形態では、熱交換器アセンブリ600全体にわたって空気がより滑らかに流れることを容易にするために、隣接する熱交換器602間の空間に、フェアリング(図示せず)が実質上またがる。別法として、熱交換器アセンブリ600は、熱交換器602が互いに対して任意の適切な向きを有するように、任意の適切な締め具を使用して、ガスタービンエンジンアセンブリ500上の任意の適切な位置に搭載することができる。
【0018】
具体的には図3〜8を参照すると、例示的な実施形態では、熱交換器602は、マニホルド610と、マニホルド610から径方向に延びる複数の冷却フィン612とを含む。マニホルド610は、径方向に内側の表面614と、径方向に外側の表面616と、上流壁618と、反対側の下流壁620とを含み、したがってマニホルド610は、実質上方形の断面プロファイルを有する。マニホルド610は、マニホルド610を通って長手方向に延びて、冷却すべき加熱流体(たとえば、オイル)の流れの誘導を容易にするように選択的に寸法設定された、少なくとも1つのチャネル622を画定する。例示的な実施形態では、各チャネル622は、実質上方形の断面プロファイルを有する。他の実施形態では、マニホルド610および/または各チャネル622は、任意の適切な断面プロファイル(たとえば、円形)を有することができる。
【0019】
熱交換器602は、アルミニウム押出し成形プロセスを介してともに形成された一体型のマニホルド610および冷却フィン612を含むことができる。他の実施形態では、各冷却フィン612は、接合プロセス(たとえば、溶接プロセスもしくは蝋付けプロセス)を介してマニホルド610に結合することができ、および/またはセグメント化されていない単一の本体として形成することができる。別法として、熱交換器602は、任意の適切な製造プロセスを介して、および/または任意の適切な材料から製作することができる。以下により詳細に論じるように、マニホルド610は、ファンケース上への熱交換器の搭載を容易にするために、複数の円周の一体形成された溶接タブ615を有することができる。
【0020】
例示的な実施形態では、各搭載システム700は、ファンケース520の壁560を実質上径方向に貫通するスロット524で、熱交換器602とファンケース520の結合を容易にする。具体的には、スロット524は、壁560の径方向に内側の第1の表面544上に画定された第1の端部526と、壁560の径方向に外側の第2の表面546上に画定された第2の端部528と、第1の端部526から第2の端部528まで延びる長さSL(図4参照)とを有し、したがってスロット524は、細長い断面プロファイル(すなわち、図5の長軸530および短軸532)を有する。他の実施形態では、スロット524は、搭載システム700が本明細書に記載の通り機能することを可能にする任意の適切な形状および/または断面プロファイルを有することができる。
【0021】
例示的な実施形態では、スリップジョイントの摺動動作中、表面を摩耗から保護することができる。たとえば、耐摩耗部材または被覆を利用することができる。図を簡単にするために、耐摩耗部材または被覆を耐摩耗要素534と呼ぶ。例示的な実施形態では、耐摩耗要素534は、スロット524近傍で壁560に適切に結合される。具体的には、耐摩耗要素534は、スロット524の周りで円周方向に壁560の第1の表面544に結合された第1の部分536と、スロット524の周りで円周方向に壁560の第2の表面546に結合された第2の部分538と、スロット524の内部表面542に結合された第3の部分540とを含む。一実施形態では、第2の部分538と第3の部分540は、第1の部分536とは別に、ともに一体形成することができる。他の実施形態では、耐摩耗要素534は、ともに一体形成され、または互いとは別々に形成された、任意の適切な数の部分を有することができる。
【0022】
例示的な実施形態では、熱交換器アセンブリ600をガスタービンエンジン内の構造、たとえばファンケースに搭載するために、複数の搭載システム700が利用される。搭載システム700は、振動の問題に対処するのに十分な剛性を提供しながら、軸方向と円周方向の両方で熱交換器の熱膨張を実現する。
【0023】
例示的な実施形態では、各搭載システム700は、熱交換器602とファンケース520または他のエンジン構造の結合を容易にするために、ブラケット702および摺動ジョイント704を含むことができる。ブラケット702は、摺動ジョイント704のボルト738を受け入れる締め具アセンブリ735を含む。例示的な実施形態では、締め具アセンブリ735は固定ナット板736を含み、固定ナット板736により、ナットを締めるのではなくボルト738を回すことによって、摺動ジョイント704とブラケット702の取付けが実現される。これは、以下により詳細に述べるように、ファンケース520の外径から実現することができる。
【0024】
例示的な実施形態では、ブラケット702は、第1のアーム706と、第2のアーム708と、第1のアーム706と第2のアーム708の間を延びる基部710とを含む。例示的な実施形態では、図3に示すように、ブラケット702の長さはマニホルド610の幅より小さい。第1のアーム706は第1の長さALを有し、第2のアーム708は第2の長さALを有する。例示的な実施形態では、特定の応用例によって保証される場合、第2の長さALを第1の長さALより大きくすることができる。例示的な実施形態では、ブラケット702は、第1のアーム706および第2のアーム708で、隔置された溶接タブ615にしっかりと固定される。例示的な実施形態では、マニホルド706は、ブラケット702の長さを収容するために、少なくとも3つの連続する溶接タブ615を含む。連続する溶接タブにより、マニホルド706に沿って様々な位置でブラケット702の配置が可能になる。例示的な実施形態では、ブラケット702は、熱交換器内で正弦波モードを最小化または防止するように、マニホルド706の長さに沿って不規則に隔置される。例示的な実施形態では、ブラケットにより、ブラケット702の軸方向の長さに沿って締め具アセンブリ735の様々な位置が可能になる。例示的な実施形態では、マニホルド706は、互いに対してずらすことができる円周方向に2列のブラケット702を収容することができる。他の例示的な実施形態では、マニホルド706は、4つの連続する溶接タブ615を含む。ブラケットおよび溶接タブの他の構成もこの開示の範囲内で企図されており、上記の説明は、例示のみを目的として与えられる。例示的な実施形態では、少なくとも1つの締め具(たとえば、リベット720)を介して、スペーサ716(たとえば、鋼製のスペーサ)を基部710の底面718に結合することができる。
【0025】
例示的な実施形態では、スリップマウント704は、保持板またはワッシャ722と、スタンドオフ724と、付勢要素726(たとえば、波形ばね)とを含む。スタンドオフ724は、長さCLを有する中空の細長い部材またはブッシング728と、細長い部材728から外側に延びるフランジ730とを含む。例示的な実施形態では、細長い部材728は、ブラケット702に対するボルト738の動きを制限するように機能し、したがって付勢要素(波形ばね)726の圧縮を制限し、または事前に負荷をかける。付勢要素(波形ばね)726の圧縮の量は、スリップジョイントによってファンケース520上に加えられる付勢力に影響する。付勢力は、振動力に耐えるのに十分なものであるが、本明細書では「摺動力」と呼ぶ熱的力より小さい。したがって、ジョイントは、振動力がより小さいため動かないが、熱膨張傾向からの摺動力が事前に負荷された付勢力を超えると摺動する。
【0026】
一実施形態では、フランジ730は、細長い部材728の周りで付勢要素726を支持することを容易にするために、リップ760を含む。別の実施形態では、フランジ730は、細長い部材728と一体形成され、細長い部材728から円周方向に外側に延びる。ワッシャ722および付勢要素726は実質上環状であり、したがって以下に記載のように、付勢要素726および/またはワッシャ722を通って細長い部材728を挿入することができる。他の実施形態では、スタンドオフ724、ワッシャ722、および/または付勢要素726は、任意の適切な構造を含むことができ、搭載システム700が本明細書に記載の通り機能することを可能にするように、ともに一体化して、または互いとは別々に形成することができる。
【0027】
例示的な実施形態では、搭載システム700はまた、ワッシャ722とフランジ730の間で付勢要素726を保持することを容易にするために、フランジ730に対して位置するキャップ742と、ワッシャ722とともに形成され、またはワッシャ722に結合された脚部744と、脚部744とキャップ742の間を延びるリンク746(たとえば、ケーブル)とを含むロックデバイス740を含む。他の実施形態では、ロックデバイス740は、ロックデバイス740が本明細書に記載の通り機能することを可能にする任意の適切な構造を含むことができる。
【0028】
搭載システム700を組み立てるために、ブラケット702は、スペーサ716が耐摩耗要素534の第1の部分536に対して位置するように、そしてマニホルド610が基部710に対して角度θをなすように、ファンケース520に隣接して位置決めされる。このようにして、マニホルド610の径方向に内側の表面614は第1のダクト表面518の輪郭と実質上整合され、したがって冷却フィン612だけが、バイパスダクト516内に延びる。
【0029】
例示的な実施形態では、マニホルド610の上流壁618および下流壁620は、以下に記載のように、加熱されるとマニホルド610が中心線軸502に沿って膨張できることを容易にするように、それぞれ第1の間隙Gおよび第2の間隙Gによって第1のダクト表面518から隔置される。一実施形態では、ガスタービンエンジンアセンブリ500の動作中、第1の間隙Gおよび/または第2の間隙Gを通る空気流の阻止を容易にするために、第1の封止部732が実質上第1の間隙Gを覆い、第2の封止部734が実質上第2の間隙Gを覆う。
【0030】
ブラケット702をファンケース520に隣接して位置決めした状態で、スタンドオフ724がスロット524内に挿入され、付勢要素726およびワッシャ722は、付勢要素726がロックデバイス740を介してフランジ730とワッシャ722の間で保持されるように、細長い部材728を囲む。ロックデバイス740は、スリップマウント704のより簡単な取扱いを容易にするのに有用であり、付勢要素726およびワッシャ722は、細長い部材728の周りに位置決めされる。
【0031】
細長い部材728がスペーサ716に接触すると、ボルト738が細長い部材728を通って挿入され、したがってボルト738は、ナット736および/またはブラケット702に係合して、ブラケット702とファンケース520の締付けを容易にする。そのようにして、スペーサ716と耐摩耗要素534の第1の部分536の間、およびワッシャ722と耐摩耗要素534の第2の部分538の間で、摩擦による係合が確立される。
【0032】
例示的な実施形態では、細長い部材728の長さCLはスロット524の長さSLより大きく、したがって、ユーザがボルト738にトルクをかけると、制限された負荷がファンケース520に伝達される(すなわち、第1の所定の負荷が、フランジ730、付勢要素726、および/またはワッシャ722を介してファンケース520に伝達され、第2の所定の負荷が、細長い部材728を介してブラケット702に伝達される)。そのようにして、搭載システム700とファンケース520の間の摩擦による係合は、振動などの高サイクル疲労に対して搭載システム700を安定させるのに十分な所定の量に制限される。しかし、摺動力が摩擦による係合に打ち勝つとき、スタンドオフ724およびボルト738は、スロット524の長軸530に沿って摺動して、熱交換器602の熱膨張および収縮などの低サイクル疲労の影響を軽減することができる。
【0033】
動作の際には、第1の端部604の入口および出口ポートを介して熱交換器602のチャネル622を通って、加熱流体(たとえば、オイル)が誘導される。加熱流体がマニホルド610を通って流れるとき、マニホルド610を介して加熱流体から冷却フィン612まで熱が伝達され、冷却フィン612から、冷却フィン612内を流れる空気(すなわち、バイパスダクト516内を流れる空気)内へ放散されて、マニホルド610内を流れる加熱流体の温度の低下を容易にする。
【0034】
加熱流体がマニホルド610内を流れるとき、マニホルド610の温度が上昇し、したがってマニホルド610が製作される材料(たとえば、アルミニウム)が膨張する。熱交換器602が第1の端部604でファンケース520に固定されているため、マニホルド610の膨張により、マニホルド610の長手方向の延長(すなわち、第2の端部606の第1の円周方向の変位)を容易にする。マニホルド610の長手方向の延長で、ブラケット702がファンケース520の第1の表面544に沿って第1の方向D’に円周方向に摺動することを容易にし、したがってスタンドオフ724およびボルト738は、スロット524の長軸530に沿って距離DDだけ摺動する。
【0035】
その後マニホルド610の温度が低下すると、マニホルド610の材料(たとえば、アルミニウム)は収縮し、それによりマニホルド610の長手方向の収縮(すなわち、第2の端部606の第2の円周方向の変位)を容易にする。具体的には、マニホルド610の長手方向の収縮で、ブラケット702が、第1の方向D’とは実質上反対である第2の方向D”に、ファンケース520の第1の表面544に沿って円周方向に摺動することを容易にし、したがってスタンドオフ724およびボルト738は、長軸530に沿って第1の距離DDだけ後ろに摺動する。一実施形態では、スロット524、細長い部材728、および/またはボルト738は、マニホルドが長手方向に約0.3インチ延びることを容易にするように寸法設定される(すなわち、距離DDが最大0.3インチになるように寸法設定される)。他の実施形態では、スロット524、細長い部材728、および/またはボルト738は、マニホルド610の任意の適切な長手方向の延長を容易にするように寸法設定される。
【0036】
本明細書に記載の方法およびシステムは、ファンケースの壁などの構造部材へデバイスを搭載すること、そしてそれらの間の相対的な摺動動作を可能にすることを容易にする。例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法およびシステムは、高サイクル疲労(HCF)および低サイクル疲労(LCF)の負荷条件で熱交換器を支持すること(すなわち、HCF負荷の下で熱交換器に十分に安定した支持を提供しながら、熱により引き起こされたLCF負荷の下で熱交換器の十分な円周方向の摺動を可能にすること)を容易にする。
【0037】
具体的には、本明細書に記載の方法およびシステムは、ユーザが加えたトルク負荷がファンケースに伝達されるのを制限することを容易にしながら、十分な負荷がファンケースに確実に伝達されることを容易にして、スリップマウントとファンケースの間の摩擦による係合の生成を容易にし、HCF負荷の下で熱交換器を安定させる。本明細書に記載の方法およびシステムはさらに、熱交換器が長手方向に膨張することを容易にし、したがって、熱によって引き起こされた偏向および/またはLCF応力が熱交換器および/またはファンケースに印加されるのを最小にすることを容易にしながら、熱によって引き起こされた摺動中のファンケースの摩耗による損傷を低減させるのを容易にする。
【0038】
さらに、本明細書に記載の方法およびシステムは、比較的制限された空間内で熱交換器を確実に支持することを容易にするように寸法設定された搭載システムの提供を容易にしながら、保守要員による搭載システムへの十分なアクセスを容易にするように搭載システムの向きを合わせる。さらに、本明細書に記載の方法およびシステムは、ガスタービンエンジンの効率の向上およびガスタービンエンジン向けの熱交換器の製作に関連する製造コストの低減を容易にしながら、熱交換器の信頼性を向上させて、熱交換器の有用寿命を延ばす。
【0039】
搭載システムおよび搭載システムを組み立てる方法の例示的な実施形態について、上記で詳細に説明した。これらの方法およびシステムは、本明細書に記載の特有の実施形態に限定されるものではなく、方法およびシステムの構成要素は、本明細書に記載の他の構成要素とは独立して別々に利用することができる。たとえば、本明細書に記載の方法およびシステムは、他の工業用および/または消費者用の応用例を有することができ、ガスタービンエンジンのみとともに実施することに限定されるものではない。逆に、本発明は、多くの他の業界に関連して実施および利用することができる。
【0040】
本発明について、様々な特有の実施形態の点から説明したが、本発明は、特許請求の範囲の精神および範囲内で、修正を加えて実施できることが、当業者には認識されるであろう。
【符号の説明】
【0041】
500 ガスタービンエンジンアセンブリ
502 中心線軸
504 吸気側
506 排気側
508 ファンアセンブリ
510 ガスタービンエンジン
512 ファンの羽根
514 回転板
516 バイパスダクト
518 第1のダクト表面
520 ファンケース
522 第2のダクト表面
524 スロット
526 第1の端部
528 第2の端部
530 長軸
532 短軸
534 耐摩耗要素
536 第1の部分
538 第2の部分
540 第3の部分
542 内部表面
544 径方向に内側の第1の表面
546 径方向に外側の第2の表面
560 壁
600 熱交換器アセンブリ
602 熱交換器
604 第1の端部
606 第2の端部
608 実質上弓形の本体
610 マニホルド
612 冷却フィン
614 径方向に内側の表面
615 溶接タブ
616 径方向に外側の表面
618 上流壁
620 下流壁
700 搭載システム
702 ブラケット
704 摺動ジョイント、スリップマウント
706 第1のアーム、マニホルド
708 第2のアーム
710 基部
716 スペーサ
718 底面
720 リベット
722 保持板、ワッシャ
724 スタンドオフ
726 付勢要素、波形ばね
728 中空の細長い部材、ブッシング
730 フランジ
732 第1の封止部
734 第2の封止部
735 締め具アセンブリ、ボルト
736 固定ナット板、ナット
738 ボルト
740 ロックデバイス
742 キャップ
744 脚部
746 リンク
760 リップ
AL 第1の長さ
AL 第2の長さ
CL 長さ
D’ 第1の方向
D” 第2の方向
DD 第1の距離
第1の間隙
第2の間隙
SL 長さ
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンで使用する構造体(520)を提供するステップであって、前記構造体が、細長い断面をもつスロット(524)を有する壁(560)を含み、前記スロットが、前記壁の第1の表面から前記壁の第2の表面まで前記壁を貫通する、提供するステップと、
ブラケット(702)と動作可能に連動する熱交換器(602)を提供するステップと、
スタンドオフ(724)および付勢要素(726)を含むスリップジョイント(704)を提供するステップであって、前記スタンドオフが、細長い部材(728)と前記細長い部材から外側に延びるフランジ(730)とを含み、前記付勢要素が、前記細長い部材の周りに位置決めされる、提供するステップと、
前記壁の前記第1の表面に隣接して前記ブラケットを位置決めするステップと、
前記細長い部材が前記ブラケットに隣接するように、そして前記付勢要素が、前記壁の前記第2の表面と前記フランジの間で前記細長い部材の周りに位置決めされるように、前記壁の前記第2の表面から前記壁の前記第1の表面まで前記スロットを通って前記スタンドオフを挿入するステップと、
前記スタンドオフが、前記フランジおよび前記付勢要素を介して前記壁の前記第2の表面に第1の所定の負荷を伝達し、また前記細長い部材を介して前記ブラケットに第2の所定の負荷を伝達して、前記スタンドオフが前記スロットの前記細長い断面に沿って摺動することを容易にするように、前記スタンドオフを前記ブラケットに結合するステップと
を特徴とする方法。
【請求項2】
ブラケットを提供するステップが、基部(710)と、前記基部から延びる第1のアーム(706)と、前記基部から延びる第2のアーム(708)とを含むブラケット(702)を提供するステップであって、前記第1のアームが第1の長さを有し、前記第2のアームが前記第1の長さより大きい第2の長さを有する、提供するステップを含み、また前記ブラケットをデバイスに結合するステップが、前記デバイスが前記基部に対してある角度をなすように、前記ブラケットの前記第1のアームおよび前記第2のアームを前記デバイスに結合するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ブラケットおよびスリップジョイントを提供するステップが、前記細長い部材の周りで前記付勢要素を支持することを容易にするために、前記スタンドオフの前記フランジにリップ(760)を提供するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記スタンドオフを前記ブラケットに結合するステップが、前記細長い部材および前記ブラケットを通ってボルト(738)を挿入するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記壁に保護被覆を結合するステップであって、したがって前記保護被覆の第1の部分(536)が前記スロットの周りで前記壁の前記第1の表面に結合され、前記保護被覆の第2の部分(538)が前記スロットの周りで前記壁の前記第2の表面に結合され、また前記保護被覆の第3の部分(540)が前記スロットの内部表面に結合され、前記第1の部分が前記ブラケットと前記壁の前記第1の表面の間で位置決めされ、また前記第2の部分が前記ブラケットを介して前記付勢要素と前記壁の前記第2の表面の間で位置決めされる、結合するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記付勢要素と保護表面の前記第2の部分の間で、前記スタンドオフの前記細長い部材の周りにワッシャ(722)を位置決めするステップをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記ブラケットの前記基部にスペーサ(716)を結合するステップであって、したがって前記スペーサが、前記基部と前記保護被覆の前記第1の部分の間で位置決めされる、結合するステップをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記壁に保護被覆を結合するステップが、前記第2の部分と前記第3の部分がともに一体形成された状態で前記保護被覆を提供するステップを含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
ロックデバイス(740)を介して前記ワッシャと前記スタンドオフの前記フランジをともに結合するステップであって、前記ロックデバイスが、前記ワッシャに結合された脚部(744)を含み、前記フランジに対してキャップ(742)が位置し、また前記付勢要素が前記ワッシャと前記フランジの間で保持されるように、リンク(746)が前記付勢要素を通って前記脚部を前記キャップに結合する、結合するステップをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記ブラケットの前記基部にスペーサを結合するステップが、前記スペーサおよび前記基部を通ってリベット(720)を挿入するステップを含む、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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