説明

ガスタービンエンジン用PTOアセンブリ

【課題】エンジンコアを駆動させることによってガスタービンエンジンを始動させ、次いで、その他すべての動作中は低圧システムを用いてPTO負荷に動力を供給する方法を提供する。
【解決手段】PTO装置は、第1駆動シャフト28に結合される第1リングギア46と、PTOシャフト36に結合された第1ベベルギア44とを含む。第2駆動シャフト26に結合される第2リングギア52が設けられる。第2ベベルギア48が、第2リングギアと係合され、一方向クラッチ50によってPTOシャフト36に結合される。ガスタービンエンジンを動作させる方法は、PTOシャフト36を第1および第2駆動シャフト28、26に動作可能に結合し、シャフト36を介して前記第1および第2駆動シャフト28、26に始動トルクを供給することを含む。始動後は、第1駆動シャフト28からPTOシャフト36に動力が伝達され、第2シャフト26が切り離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的にガスタービンに関し、より詳細には、ガスタービン用の動力取出し(PTO)駆動アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、圧縮空気を燃焼器に供給する圧縮機を含み、燃焼器内では、高温の燃焼ガスを発生させるために空気が燃料と混合され点火される。これらのガスは、下流側へ1つまたは複数のタービンまで流れ、タービンは、ガスからエネルギーを取り出して圧縮機に動力供給し、飛行中の航空機に動力供給するなどの有益な仕事をする。コアエンジンの前側に配置されたファンを通常含む、ターボファンエンジンでは、高圧タービンがコアエンジンの圧縮機に動力供給する。ファンに動力供給するために、低圧タービンが高圧タービンの下流側に設けられる。
【0003】
ガスタービンエンジンは、飛行のための推力を提供することに加えて、発電機、燃料ポンプ、油圧ポンプなど、追加の動力を吸収する補機を動作させなければならない。したがって、動力取出し、すなわち「PTO」駆動装置が必要である。通常これは、PTOシャフトをエンジンの高圧シャフト、すなわち「コア」シャフトに、一連のギアを介して連結することによって実施される。その後、PTOシャフトは、補機歯車装置を介して補機を駆動する。エンジンを、PTOシャフトを介してエンジンコアを駆動させることによって始動させることもできる。PTO負荷に、低圧システムではなくエンジンコアを介して動力を供給するのは、エンジン効率の面からすると理想的とはいえない。さらに、高圧シャフトは、オフテーク(offtake)負荷がなければ、ずっと速く加速することができる。残念ながら、エンジンを始動させる最良の手段は、高圧シャフトを介してである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、エンジンコアを駆動させることによってガスタービンエンジンを始動させ、次いで、その他すべての動作中は低圧システムを用いてPTO負荷に動力を供給する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の必要は本発明によって満たされる。本発明の一態様では、第1および第2駆動シャフトを有するガスタービンエンジン用の動力取出し装置であって、第1駆動シャフトに結合される第1リングギアと、第1リングギアと係合され、動力取出しシャフトに結合された第1ベベルギアと、第2駆動シャフトに結合される第2リングギアと、第2リングギアと係合され、一方向クラッチによって動力取出しシャフトに結合される第2ベベルギアを含む装置が提供される。
【0006】
本発明の別の態様によると、ガスタービンエンジンは、第1駆動シャフトによって第1タービンに連結された第1圧縮機と、第1駆動シャフトと同心の第2駆動シャフトによって第2タービンに連結された第2圧縮機と、第1駆動シャフトに結合された第1リングギアと、第1リングギアと係合され、動力取出しシャフトに連結された第1ベベルギアと、第2駆動シャフトに結合された第2リングギアと、第2リングギアと係合された第2ベベルギアと、第2ベベルギアを動力取出しシャフトに結合する一方向クラッチとを含む。一方向クラッチは、第2ベベルギアが、動力取出しシャフトに対して第1の方向へ自由回転するのを許し、第2ベベルギアが、動力取出しシャフトに対して相対的に逆方向へ回転するのを防止するように形成されている。
【0007】
本発明の別の態様によると、第1および第2駆動シャフトを有するガスタービンエンジンを動作させる方法は、動力取出しシャフトを第1および第2駆動シャフトに動作可能に結合し、エンジンを始動させるために動力取出しシャフトを介して第1および第2駆動シャフトに始動トルクを供給するステップと、第1シャフトを第1の動作回転数で第1の方向に回転させるステップと、第2シャフトを第2の動作回転数で第2の方向に回転させるステップと、第1駆動シャフトから動力取出しシャフトに動力を伝達するステップと、第2駆動シャフトから動力取出しシャフトに実質的に動力が伝達されないように、第2シャフトを動力取出しシャフトから切り離すステップとを含む。
【0008】
本発明は、添付の図面に即した以下の説明を参照することにより、最もよく理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面を参照すると、いくつかの図を通して、同じ参照番号は同じ要素を示すが、図1は、全体を10で示す代表的なガスタービンエンジンを示している。エンジン10は、長手方向の中心線または軸A、および軸Aの周りに同心に、かつ軸Aと同軸に配置された外側固定環状ケーシング12を有する。エンジン10は、流れの順に配設された、前側ファン14、後側ファン15、昇圧器16、圧縮機18、燃焼器20、高圧タービン22、および逆回転低圧タービン24を有する。動作中、圧縮機18からの圧縮空気が、燃焼器20内で燃料と混合され点火され、それにより燃焼ガスが発生する。高圧駆動シャフト、すなわち「HP」シャフト26を介して圧縮機18を駆動する高圧タービン22によって、いくらかの仕事がこれらのガスから取り出される。燃焼ガスは次いで、第1および第2逆回転低圧駆動シャフト、すなわち「LP」シャフト28Aおよび28Bを介して前側ファン14、後側ファン15、および昇圧器16を駆動する、低圧タービン24に流れ込む。「LP」シャフト28Aおよび28Bは、HPシャフト26と同心に配置されている。ファン14および15が、エンジン10によって生み出される推力の大部分を供給し、昇圧器16は、圧縮機18に入る空気を過給するために使用される。HPシャフト26、LPシャフト28A、およびLPシャフト28Bは、1つまたは複数の構造フレーム32および34に取り付けられた軸受30に、回転可能に取り付けられる。
【0010】
動力取出しシャフト、すなわち「PTO」シャフト36は、構造フレーム32内に回転可能に取り付けられる。シャフト36は、エンジンの中心部分から径方向外側に延びている。シャフト36の内側端部は、PTOアセンブリ38を介してエンジンに結合され、外側端部は、公知のタイプの補機歯車装置40に結合される。補機歯車装置40は、PTOシャフト36からエンジントルクを受け取り、それを発電機またはオルタネータ、油圧ポンプ、燃料ポンプなど、「補機」と呼ばれる1つまたは複数の構成部品に伝達するギアを含む。PTOシャフト36は、補機歯車装置40に取り付けられたエンジン始動装置42からエンジン10にトルクを伝達するために使用することもできる。
【0011】
図2は、PTOアセンブリ38をより詳細に示している。PTOシャフト36は、LPベベルギア44を担持している。LPベベルギア44は、第1LPシャフト28Aに結合された補助LPリングギア46と係合する。PTOシャフト36は、HPベベルギア48も担持しており、ベベルギア48は、スプラグやローラクラッチなど公知のタイプの一方向クラッチ50によってシャフト36に結合される。図2の矢印「B」の方向から見ると、一方向クラッチ50の向きは、PTOシャフト36が、HPベベルギア48に対して反時計回りの方向に自由回転するのを許し、PTOシャフト36が時計回りに回転するときは、HPベベルギアと係合、すなわち「ロックアップ」するような向きとなっている。HPベベルギア48は、HPシャフト26に結合された補助HPリングギア52と係合する。図示の例では、HPシャフト26が第1の方向(例えば、後側から前方を見たときに時計方向)に回転し、第1LPシャフト28Aが逆方向に回転する。言い換えると、HPシャフト26とLPシャフト28Aは「逆回転」する。PTOアセンブリ38は、同方向に回転する高圧および低圧シャフト(図示せず)を有するエンジンで使用できるように構成することもでき、それは、例えば、LPリングギアの向きを逆転させ、LPベベルギア44の後側に移動させることによって可能となる。本発明は、LPシャフト28A、28B、およびHPシャフト26を有する2スプールエンジンに関して説明しているが、その概念は、PTOシャフト36を中圧シャフト(図示せず)に連結することにより、3つ以上のスプールを有するエンジンにも適用できることに留意されたい。本発明は、ファンおよびLPシャフトを1つしかもたないエンジンにも同様に適用可能である。
【0012】
PTOアセンブリ38は、以下のように動作する。エンジン10を始動させるために、電流や圧縮空気などの動力源が始動装置42に供給され、それにより、始動装置がPTOシャフト36を第1の方向(本例では時計回り)に回転させる。クラッチ50が係合し、それによりHPベベルギア48がHPリングギア52を回転させ、それによりHPシャフト26を時計回りの方向に回転させる。それと同時に、LPベベルギア44がLPリングギア46を回転させ、それにより第1LPシャフト28Aを逆方向に回転させる。シャフトのこの回転が、後側ファン15、昇圧器16、および圧縮機18を回転させて、空気流をエンジン10内に誘導する。
【0013】
燃焼が開始し、エンジン10が自らトルクを発生し始めると、LPシャフト28およびHPシャフト26はどちらも、始動回転数よりも十分速く、互いに逆方向に加速するようになる。始動後、HPシャフト26は、実質上すべての動作条件のもとで、LPシャフト28よりも実質的に高速で動作する。この条件のもとで、一方向クラッチ50は、HPシャフト26が加速し、PTOシャフト36からの負荷から解放されて回転することができるようにする。第1LPシャフト28Aが、LPリングギア46およびLPベベルギア44を介してPTOシャフト36にトルクを伝達する。したがって、PTOの必要動力のすべてが第1LPシャフト28Aによって供給されるようになる。
【0014】
以上、ガスタービンエンジン用のPTOアセンブリ、および、エンジンを始動させ、それに続いてPTOアセンブリを使用してエンジンから動力を取り出す方法を説明してきた。本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。例えば、このPTOアセンブリを2シャフトまたは3シャフトのガスタービンの広範囲の適用例に使用することができる。PTOは、2つのロータへのアクセスが可能な場所であれば、圧縮機間またはタービン間のどちらに設けてもよい。したがって、本発明の好ましい実施形態、および本発明を実施するための最良の形態についての上記の説明は、限定の目的ではなく、例示の目的で示したものにすぎず、本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従って作成された動力取出しアセンブリを組み込んだ例示的なガスタービンエンジンの断面図である。
【図2】動力取出しアセンブリをより詳細に示す、図1のエンジンの一部分の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
10 ガスタービンエンジン
12 外側固定環状ケーシング
14 前側ファン
15 後側ファン
16 昇圧器
18 圧縮機
20 燃焼器
22 高圧タービン
24 逆回転低圧タービン
26 高圧駆動シャフト
28A 第1逆回転低圧駆動シャフト
28B 第2逆回転低圧駆動シャフト
30 軸受
32 構造フレーム
34 構造フレーム
36 動力取出しシャフト
38 動力取出しアセンブリ
40 補機歯車装置
42 エンジン始動装置
44 低圧ベベルギア
46 低圧リングギア
48 高圧ベベルギア
50 一方向クラッチ
52 補助高圧リングギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2駆動シャフト(28、26)を有するガスタービンエンジン(10)用の動力取出し装置であって、
前記第1駆動シャフト(28)に結合される第1リングギア(46)と、
前記第1リングギアと係合され、動力取出しシャフト(36)に結合された第1ベベルギア(44)と、
前記第2駆動シャフト(26)に結合される第2リングギア(52)と、
前記第2リングギアと係合され、一方向クラッチ(50)によって前記動力取出しシャフト(36)に結合される第2ベベルギア(48)とを備える装置。
【請求項2】
前記動力取出しシャフト(36)に動作可能に結合された補機歯車装置(40)と、
前記補機歯車装置(40)に取り付けられ、前記動力取出しシャフト(36)に動作可能に結合された、少なくとも1つの動力を吸収する補機とをさらに備える、請求項1記載の動力取出し装置。
【請求項3】
前記動力取出しシャフト(36)に動作可能に結合された補機歯車装置(40)と、
前記補機歯車装置(40)に取り付けられ、前記動力取出しシャフト(36)に動作可能に結合された、エンジン始動装置(42)とをさらに備える、請求項1記載の動力取出し装置。
【請求項4】
第1駆動シャフト(28A、28B)によって第1タービン(24)に連結された第1圧縮機(14、15)と、
前記第1駆動シャフト(28A、28B)と同心の第2駆動シャフト(26)によって第2タービン(22)に連結された第2圧縮機(18)と、
前記第1駆動シャフト(28A、28B)に結合された第1リングギア(46)と、
前記第1リングギア(46)と係合され、動力取出しシャフト(36)に連結された第1ベベルギア(44)と、
前記第2駆動シャフト(26)に結合された第2リングギア(52)と、
前記第2リングギア(52)と係合された第2ベベルギア(48)と、
前記第2ベベルギア(48)を前記動力取出しシャフト(36)に結合する一方向クラッチ(50)とを備え、前記一方向クラッチ(50)が、前記第2ベベルギア(48)の、前記動力取出しシャフト(36)に対する第1の方向への自由回転を許し、前記第2ベベルギア(48)の、前記動力取出しシャフト(36)に対する逆方向の相対的な回転を防止するように構成されている、ガスタービンエンジン(10)。
【請求項5】
前記動力取出しシャフト(36)に動作可能に結合された補機歯車装置(40)と、
前記補機歯車装置(40)に取り付けられ、前記動力取出しシャフト(36)に動作可能に結合されたエンジン始動装置(42)とをさらに備える、請求項4記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
前記第1および第2駆動シャフト(28、26)が、エンジンの動作中、同方向に回転するようになっている、請求項4記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項7】
前記第1および第2駆動シャフト(28、26)が、エンジンの動作中、逆回転するようになっている、請求項4記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項8】
前記第1駆動シャフト(28A、28B)が低圧圧縮機(14、15、16)を低圧タービン(24)に連結し、前記第2駆動シャフト(26)が高圧圧縮機(18)を高圧タービン(22)に連結する、請求項4記載のガスタービンエンジン。
【請求項9】
前記第1ベベルギア(44)が、前記第2ベベルギア(48)と同軸に配置される、請求項4記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項10】
第1および第2駆動シャフト(28、26)を有するガスタービンエンジン(10)を動作させる方法であって、
動力取出しシャフト(36)を前記第1および第2駆動シャフト(28、26)に動作可能に結合し、前記エンジンを始動させるために、前記動力取出しシャフト(36)を介して前記第1および第2駆動シャフト(28、26)に始動トルクを供給するステップと、
前記第1シャフト(28)を第1の動作回転数で第1の方向に回転させるステップと、
前記第2シャフト(26)を第2の動作回転数で第2の方向に回転させるステップと、
前記第1駆動シャフト(28)から前記動力取出しシャフト(36)に動力を伝達するステップと、
前記第2駆動シャフト(26)から前記動力取出しシャフト(36)に実質的に動力が伝達されないように、前記第2シャフト(26)を前記動力取出しシャフト(36)から切り離すステップとを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−40302(P2007−40302A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−206054(P2006−206054)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY