説明

ガスタービン燃焼器およびガスタービン

【課題】燃焼ガスによる熱負荷に応じてガスタービン燃焼器を適切に冷却することができるガスタービン燃焼器を提供する。
【解決手段】内部に燃焼ガスの流れが形成されるように筒状に形成された内筒52の壁部の燃焼ガス下流側に設けられた入口ヘッダと、入口ヘッダに接続され、前記壁部内に燃焼ガスの流れ方向に沿って並列して複数設けられた冷却通路53と、冷却通路53に接続され、前記壁部の燃焼ガス上流側に設けられた冷却空気出口部とを備えたガスタービン燃焼器において、冷却通路53は、冷却空気の流れ方向に向かって、その流路断面積が減少し、冷却通路53は、それぞれの流路断面積が略同一とされているとともに、冷却空気の上流側よりも冷却空気の下流側の方が少ない本数とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却構造を備えたガスタービン燃焼器およびガスタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン燃焼器は、内部を流れる燃焼ガスによって壁温が材料の耐久温度を超えるため、冷却構造を備えている。このような、ガスタービン燃焼器の冷却構造として、壁部に冷却媒体を流して冷却する方法が多く提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−37712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のガスタービン燃焼器の冷却構造は、壁部に冷却媒体を流すことまでは考慮されているものの、壁部の熱負荷に応じた適切な冷却を行っていなかった。例えば、燃焼器内を流れる燃焼ガスは、着火後下流側に流れるにつれて燃焼温度が上昇するので、燃焼器の下流側ほど熱負荷が高い。したがって、従来のガスタービン燃焼器の冷却構造では、局所的な高温部が壁部に発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃焼ガスによる熱負荷に応じてガスタービン燃焼器を適切に冷却することができるガスタービン燃焼器およびガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のガスタービン燃焼器およびガスタービンは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるガスタービン燃焼器は、内部に燃焼ガスの流れが形成されるように筒状に形成された壁部の燃焼ガス下流側に設けられた冷却媒体入口部と、該冷却媒体入口部に接続され、前記壁部内に燃焼ガスの流れ方向に沿って並列して複数設けられた冷却媒体通路と、該冷却媒体通路に接続され、前記壁部の燃焼ガス上流側に設けられた冷却媒体出口部とを備えたガスタービン燃焼器において、前記冷却媒体通路は、冷却媒体の流れ方向に向かって、その流路断面積が減少することを特徴とする。
【0007】
冷却媒体は、燃焼ガス下流側の冷却媒体入口部から燃焼ガス上流側の冷却媒体出口部に向かって流れる。すなわち、冷却媒体は、燃焼ガスの流れとは逆方向に冷却媒体通路内を流れることになる。したがって、燃焼ガスによる熱負荷が大きい燃焼ガス下流側に、燃焼ガスとの熱交換前の低い温度の冷却媒体を導くことができる。
さらに、冷却媒体通路の流路断面積を、冷却媒体の流れ方向に向かって減少するようにしたので、冷却媒体通路内を流れる冷媒の流速は下流側に向かって増加することになる。冷却媒体は下流側に流れるにしたがって燃焼ガスとの熱交換により温度が上昇するため燃焼ガスとの温度差が小さくなり冷却効率が低下するが、冷却媒体の流速を増加させることによって熱伝達率を増加させることで冷却媒体温度の上昇による欠点を補うこととした。これにより、燃焼ガスの流れ方向にわたってガスタービン燃焼器の壁部の部分的な温度上昇を抑えることができる。
なお、冷却媒体としては、ガスタービン圧縮機からの圧縮空気の一部分を抽気して昇圧した後の空気や、排熱回収ボイラからの蒸気等が挙げられる。
【0008】
さらに、本発明のガスタービン燃焼器では、前記冷却媒体通路の流路断面形状は、前記冷却媒体の流れ方向に向かって、前記壁部の厚さ方向に寸法が減少することを特徴とする。
【0009】
冷却媒体の流れ方向に向かって壁部の厚さ方向の寸法を減少するように流路断面形状を設定したので、隣り合う冷却媒体通路のピッチを冷却媒体流れ方向にわたって変更することなく流路断面積を減少させることができる。これに対して、冷却媒体通路が隣り合う方向の寸法を変化させる場合には、通路間のピッチを冷却媒体流れ方向に変化させる必要があるので、冷却媒体通路を小さなピッチで密に配置することが困難になる。したがって、本発明によれば、冷却媒体通路のピッチを小さくして密に冷却媒体通路を配置することができるので、冷却性能を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明のガスタービン燃焼器では、前記冷却媒体通路は、それぞれの流路断面積が略同一とされているとともに、前記冷却媒体の上流側よりも前記冷却媒体の下流側の方が少ない本数とされていることを特徴とする。
【0011】
冷却媒体の上流側よりも冷却媒体の下流側の方が少ない本数の冷却媒体通路とすることにより、下流側の方が総流路断面積が減少し、下流側の冷却媒体の流速を高めて熱伝達率を増大させることができる。
また、冷却媒体通路の本数を変更させることにより、部分的に大きく冷却能力を変更することができる。したがって、燃焼器の熱負荷が部分的に大きく変化する場合であっても、柔軟に対応することができる。
【0012】
また、本発明のガスタービンは、上記のいずれかのガスタービン燃焼器と、該燃焼器に圧縮空気を供給する圧縮機と、前記燃焼器からの燃焼ガスによって回転させられるタービンとを備えていることを特徴とする。
【0013】
上記のガスタービン燃焼器を備えることにより、燃焼温度を高くしてタービン入口温度を増大させることができる。これにより、高効率なガスタービンを提供することができる。
【0014】
さらに、本発明のガスタービンでは、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気の一部を昇圧する昇圧手段を備え、該昇圧手段によって昇圧した圧縮空気を前記ガスタービン燃焼器の冷却媒体として用い、該ガスタービン燃焼器を冷却した後の冷却媒体を燃焼用空気として用いることを特徴とする。
【0015】
圧縮機で圧縮した圧縮空気の一部を昇圧してから燃焼器を冷却するため、燃焼器を冷却する際に生じる圧力損失を最小限に抑制して燃焼器を適正に冷却することができる。また、燃焼器を冷却した空気を圧縮機で圧縮した圧縮空気と共に燃焼用空気として用いるため、燃焼用空気が減少することはなく、燃焼温度の上昇によるNOx排出量の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
冷却媒体通路の流路断面積を、冷却媒体の流れ方向に向かって減少するようにしたので、燃焼ガスによる熱負荷に応じてガスタービン燃焼器を適切に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかるガスタービンを表す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるガスタービンの概略構成を示した部分断面側面図である。
【図3】図2のガスタービンの燃焼器の概略構成を示した部分断面側面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるガスタービン燃焼器の冷却構造の概略を示した縦断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる燃焼器冷却構造を示し、(a)は内筒壁部の部分縦断面図、(b)は(a)のB−B切断線における部分横断面図、(c)は(a)のC−C切断線における部分横断面図である。
【図6】冷却通路の横断面形状を示し、(a)は蒲鉾形状とされた冷却通路の部分横断面図、(b)は円形とされた冷却通路の部分横断面図である。
【図7】本発明の効果を定性的に示したグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる燃焼器冷却構造を示し、(a)は内筒壁部の一部を示した斜視図、(b)は内筒壁部の部分横断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかり、音響ライナを備えた燃焼器の概略を示した縦断面図である。
【図10】図9の音響ライナ周りの構成を示し、(a)は音響ライナの横断面図、(b)は(a)のB−B切断線における縦断面図、(c)は(a)のC−C切断線における縦断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態にかかる燃焼器を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を用いて説明する。
図1には、本実施形態にかかるガスタービンの模式図が示されている。また、図2には、ガスタービンの概略構成が示されている。これらの図に示されているように、ガスタービンは、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13とにより構成され、このタービン13に発電機14が連結されている。圧縮機11は、空気を取り込む空気取入口15を有し、圧縮機車室16内に複数の静翼17と動翼18が交互に配設されてなり、その外側に抽気マニホールド19が設けられている。燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給し、バーナで点火することで燃焼可能となっている。タービン13は、タービン車室20内に複数の静翼21と動翼22が交互に設けられている。
【0019】
タービン13のタービン車室20には、排気室23が連続して設けられており、この排気室23は、タービン13に連続する排気ディフューザ24を有している。
また、圧縮機11、燃焼器12、タービン13及び排気室23の中心部を貫通するようにロータ25が位置しており、圧縮機11側の端部が軸受部26により回転自在に支持される一方、排気室23側の端部が軸受部27により回転自在に支持されている。
ロータ25には複数のディスクプレートが固定されており、各動翼18,22が連結されると共に、排気室23側の端部に発電機14の駆動軸が連結されている。
【0020】
上記構成により、圧縮機11の空気取入口15から取り込まれた空気が、複数の静翼17と動翼18を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器12にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給されることで燃焼する。そして、この燃焼器12で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン13を構成する複数の静翼21と動翼22を通過することでロータ25を駆動回転し、このロータ25に連結された発電機14に回転動力を付与することで発電を行う一方、排気ガスは排気室23の排気ディフューザ24で静圧に変換されてから大気に放出される。
【0021】
燃焼器12では、図3に示すように、燃焼器外筒31に燃焼器内筒32が支持され、この燃焼器内筒32の先端部に燃焼器尾筒33が連結されて燃焼器ケーシングが構成されている。
燃焼器内筒32によって囲まれた空間内に燃焼ガスの流れが形成される。
燃焼器内筒32内には、その中心部にパイロットノズル34が設けられると共に、燃焼器内筒32の内周面に周方向に沿ってパイロットノズル34を取り囲むように複数の予混合ノズル35が設けられている。パイロットノズル34の先端部にはパイロットコーン36が装着されている。
【0022】
従って、圧縮機11における圧縮機車室16から高温・高圧の圧縮空気が燃焼器12に流れこむと、各予混合ノズル35内では、この圧縮空気がメイン燃料棒から噴射された燃料と混合され、予混合気の旋回流となって燃焼器内筒32内に流れ込む。一方、パイロットノズル34内では、圧縮空気がパイロット燃料棒から噴射された燃料と混合され、この混合気は図示しない種火により着火されて燃焼し、燃焼ガスとなって燃焼器内筒32内に噴出する。そして、燃焼ガスの一部が燃焼器内筒32内に火炎を伴って周囲に拡散するように噴出することで、各予混合ノズル35から燃焼器内筒32及び燃焼器尾筒33に流れ込んだ予混合気に着火されて燃焼する。
【0023】
このように構成されたガスタービンでは、図1に示すように、圧縮機11で圧縮した圧縮空気の一部を車室から抽気して昇圧する昇圧装置(例えば、圧縮機やブロア)41と、この昇圧装置41で昇圧した圧縮空気により燃焼器12を冷却する燃焼器冷却構造42とを設け、この燃焼器12を冷却した後の圧縮空気を燃焼器12に供給するようになっている。
【0024】
即ち、圧縮機11から燃焼器12に連結される圧縮空気供給ライン43は、途中で分岐して圧縮空気分岐ライン44を形成し、昇圧装置41に連結されている。燃焼器冷却構造42は、燃焼器12を構成する内筒の壁部内に形成された多数の冷却通路(冷却媒体通路)である。昇圧装置41は、燃焼器冷却構造42と冷却空気供給ライン45により連結されている。そして、燃焼器冷却構造42は、圧縮空気供給ライン43と圧縮空気循環ライン46により連結されており、燃焼器12を冷却した圧縮空気が圧縮空気供給ライン43を介して燃焼器12に供給される。この場合、燃焼器12を冷却した圧縮空気を圧縮空気供給ライン43に戻すことで、燃焼器12の車室に供給することとなる。
【0025】
また、燃焼器12には、この燃焼器12に燃料を供給する燃料供給ライン47が連結されている。更に、燃焼器12は、タービン13と燃焼ガス排出ライン48により連結されている。
【0026】
従って、圧縮機11では、取り込まれた空気が複数の静翼17と動翼18を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、圧縮空気供給ライン43に流れる。そして、この圧縮空気供給ライン43を流れる圧縮空気の一部、つまり、車室から抽気した圧縮空気が圧縮空気分岐ライン44に分岐して昇圧装置41に供給され、ここで更に昇圧される。この昇圧装置41で昇圧された圧縮空気は、冷却空気供給ライン45を通して燃焼器冷却構造42に供給され、燃焼器12を構成する内筒の壁部内を流れることで冷却する。
燃焼器12を冷却した圧縮空気は、圧縮空気循環ライン46を通して圧縮空気供給ライン43に戻される。そのため、圧縮機11で圧縮された圧縮空気が全量圧縮空気供給ライン43を通して燃焼器12に供給されることとなる。このように、冷却後の圧縮空気についても燃焼用空気として確保することができるので、火炎温度を抑制することによりNOxを低減することができる。
【0027】
燃焼器12では、圧縮空気供給ライン43から供給された圧縮空気に対して、燃料供給ライン47から所定の燃料が供給されることで燃焼する。そして、この燃焼器12で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、燃焼ガス排出ライン48を通してタービン13に送られ、複数の静翼21と動翼22を通過することでロータ25が駆動回転し、このロータ25に連結された発電機14を駆動することで発電が行われる。
【0028】
図4には、燃焼器12に設けられた燃焼器冷却構造42の概略が示されている。
燃焼器冷却構造42は、燃焼器12を構成する内筒52の壁部内に形成された多数の冷却通路(冷却媒体通路)53を備えている。それぞれの冷却通路53は、独立しており、燃焼ガス流れ方向に沿って並列した状態で設けられている。
【0029】
各冷却通路53には、入口ヘッダ(冷却媒体入口部)54が接続されている。入口ヘッダ54は、内筒52の燃焼ガス流れ方向の下流側端部の外周に固定されている。入口ヘッダ54は、中空とされたリング形状となっており、内部に冷却空気が流通するようになっている。入口ヘッダ54には、冷却空気供給ライン45が接続されており(図1参照)、昇圧装置41によって昇圧された後の圧縮空気が供給されるようになっている。
【0030】
各冷却通路53の燃焼ガス流れ方向の上流側端部には、冷却空気出口部(冷却媒体出口部)55が接続されている。冷却空気出口部55は、各冷却通路53に連通する開口(図示せず)によって構成されている。冷却空気出口部55から流出する冷却空気は、車室56へと導かれる。このように、冷却後の冷却空気を車室56へと導くことによって燃焼用空気として確保することにより、火炎温度を抑制してNOxを低減することができる。
【0031】
図5には、内筒52の壁部内に形成した冷却通路53の形状が示されている。
図5(a)には、内筒52の壁部の縦断面の一部が示されている。同図において、冷却通路53内を流れる冷却空気は、右から左すなわち燃焼ガス流れ方向とは反対方向に流れる。
冷却通路53は、冷却空気の流れ方向に向かって壁部の厚さ方向の寸法(高さ寸法)Hが漸次減少する形状となっている。すなわち、冷却空気の上流側であるC−C断面を示す図5(c)と、冷却空気の下流側であるB−B断面を示す図5(b)とを参照すれば分かるように、冷却空気の上流側の方が冷却通路53の高さ寸法H1が大きく、冷却空気の下流側の方が冷却通路の高さ寸法H2が小さくなっている。ただし、冷却通路53の幅寸法(冷却通路53が隣り合う方向の寸法)Wは、冷却空気流れ方向の各位置において一定となっている。また、隣り合う冷却通路53間のピッチPは冷却空気の流れ方向の各位置において変化しておらず、一定となっている。
このようにして、冷却通路53の流路面積は、冷却空気の流れ方向に向かって漸次減少するように形成されている。
【0032】
なお、冷却通路53の横断面形状は、図5(b)、図5(c)及び図6(a)に示すように、燃焼ガス側に底辺を有すると共に、頂部が円弧形状とされた蒲鉾形状としても良いし、あるいは、図6(b)に示すように、円形としてもよい。図6(b)に示すように円形断面とする場合は、冷却空気の上流側でピッチを一定としたままで高さ寸法を大きくする際には、厚さ方向に延在する縦長の長円形状となる。
【0033】
上記構成の燃焼器冷却構造42によれば、以下の作用効果を奏する。
燃焼ガスの流れとは逆方向に冷却通路53内を冷却空気が流れるようにしたので、燃焼ガスによる熱負荷が大きい燃焼ガス下流側に燃焼ガスと熱交換する前の低い温度の冷却空気を導くことができる。
さらに、冷却通路53の流路断面積を、冷却空気の流れ方向に向かって漸次減少するようにしたので、冷却通路53内を流れる冷却空気の流速は下流側に向かって増加することになる。冷却空気は下流側に流れるにしたがって燃焼ガスとの熱交換により温度が上昇するため燃焼ガスとの温度差が小さくなり冷却効率が低下するが、冷却空気の流速を増加させることによって熱伝達率を増加させることで冷却空気温度の上昇による欠点を補うこととした。これにより、燃焼ガスの流れ方向にわたって燃焼器12の内筒52の壁部の部分的な温度上昇を抑えることができる。
また、冷却空気の流れ方向に向かって壁部の厚さ方向の寸法を減少するように流路断面形状を設定したので、隣り合う冷却通路53のピッチPを冷却空気流れ方向にわたって変更することなく流路断面積を減少させることができる。これに対して、冷却通路が隣り合う方向の寸法を変化させる場合には、通路間のピッチを冷却空気流れ方向に変化させる必要があるので、冷却通路を小さなピッチで密に配置することが困難になる。したがって、本実施形態によれば、冷却通路53のピッチPを小さくして密に冷却通路53を配置することができるので、冷却性能を向上させることができる。
【0034】
図7には、上記効果が定性的に示されている。同図の横軸は位置を示し、左端が燃焼器入口、右端が燃焼器出口を意味する。したがって、燃焼ガスは左から右への方向に流れ、冷却空気は右から左の方向に流れる。同図の縦軸は、各パラメータの大小を示す。
曲線Aは、燃焼ガスによる熱負荷を示し、燃焼器入口にて着火した燃焼ガスは燃焼反応が進行するに従い燃焼温度が増加するので、下流側である燃焼器出口側ほど熱負荷が大きくなることが示されている。
曲線Bは、冷却空気の温度を示し、燃焼器出口側から供給されるため燃焼器出口側では最も温度が低く、冷却空気が燃焼器入口側に向かって流れるに従い、燃焼ガスとの熱交換により温度が高くなることが示されている。
曲線Cは、冷却空気と流路壁部との熱伝達率を示しており、燃焼器出口側から燃焼器入口に向かって増大するようになっている。これは、上述したように、冷却空気の流速を漸次増加するようにしたので、冷却空気の下流側すなわち燃焼器入口側に行くほど熱伝達率が増大しているのである。
したがって、曲線Dに示すように、燃焼器12の内筒52のメタル温度は、熱負荷が大きい燃焼器出口側であっても、冷却空気の温度が低いので十分に冷却されて低い温度で維持されるとともに、燃焼器入口側では冷却空気の温度が上昇して燃焼ガスとの温度差が小さくなっても熱伝達率が上昇していることにより、許容温度内で維持される。
【0035】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図8を用いて説明する。
本実施形態は、第1実施形態に比べて、燃焼器12の内筒52に形成した冷却通路の構成が異なり、その他は同様なので、以下では冷却通路の構成について説明する。
図8(a)に示すように、冷却通路53の本数が、冷却空気の上流側よりも冷却空気の下流側の方が少なくなっている。なお、各冷却通路53の流路断面積は略同一となっている。
すなわち、上流側冷却通路53aでは通路間隔(ピッチ)を比較的密に配置し、下流側冷却通路53bでは通路間隔(ピッチ)を比較的疎に配置する。そして、上流側冷却通路53aと下流側冷却通路53bとは、合流ヘッダ60によって接続する。したがって、上流側冷却通路53aを流れた冷却空気は、合流ヘッダ60にて合流した後に、下流側冷却通路53へと流れ込む。
このように、本実施形態では、上流側では冷却通路の本数を多くして総流路断面積を大きくし、下流側では冷却通路の本数を少なくして総流路断面積を小さくすることにより、冷却空気の上流側から下流側に流れるにしたがい流速が増加するようにした。これにより、冷却空気の下流側での熱伝達率の増加を実現している。
さらに、本実施形態では、冷却通路53の本数を変更させることとしたので、部分的に大きく冷却能力を変更することができる。したがって、燃焼器12の熱負荷が部分的に大きく変化する場合であっても、柔軟に対応することができる。
【0036】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図9及び図10を用いて説明する。
本実施形態は、燃焼器内を冷却した後の冷却空気の流出方法が第1実施形態と異なり、その他の点については同様なので、共通する部分の説明は省略する。なお、本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態の燃焼器冷却構造を用いることができる。
【0037】
本実施形態は、燃焼器12にて発生する燃焼振動を抑制する音響ライナ70内に冷却後の冷却空気を流す構成としたものである。
音響ライナ70は、内筒52の外周であって、燃焼ガス流れの上流側に固定されている。音響ライナ70は、図10(a)及び(b)に示すように、燃焼ガス流路との間を連通するように連通孔71を多数設け、これら連通孔71から導かれた振動を音響ライナ70内で減衰させるものである。
本実施形態では、図10(a)及び(c)に示すように、導入孔73を形成することにより、冷却通路53の下流側と音響ライナ70内とを連通させている。これにより、冷却通路53を通過した後の冷却空気は、導入孔73を介して音響ライナ70内に流入し(図10(c)参照)、その後、音響ライナ70内から燃焼ガス流路内へと流出する(図10(b)参照)。
【0038】
このように、本実施形態では、冷却後の冷却空気を音響ライナ70から燃焼ガス流路へと流出させることとしたので、燃焼ガスが音響ライナ70内へと逆流することを防止することができる。したがって、燃焼ガスの音響ライナ70への逆流を防止するために別途パージ空気を使用する必要がなくなる。
また、冷却後の冷却空気は、燃焼ガスとの熱交換によって高温となっているため、体積流量が増加している。したがって、別途パージ空気を用いる場合に比べてパージ能力が高い。また、パージ空気と併用する場合であっても、パージ空気量を低減することができる。
また、冷却後の冷却空気を燃焼ガス流路内に導入し、燃焼用空気として使用することとしたので、第1実施形態と同様に火炎温度を抑制してNOxを低減することができる。
【0039】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図11を用いて説明する。
本実施形態は、燃焼器内を冷却した後の冷却空気の流出方法が第1実施形態および第3実施形態と異なり、その他の点については同様なので、共通する部分の説明は省略する。なお、本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態の燃焼器冷却構造を用いることができる。
本実施形態では、冷却空気出口部(冷却媒体出口部)57が、燃焼器12の入口側に設けられ、燃焼ガス流路側に向けて冷却空気が流出するように形成されている。さらに、冷却空気出口部57は、流出した空気が内筒52の内壁に沿ってフィルム状に流れるように形成されたフィルム冷却孔によって構成されている。
【0040】
このように、本実施形態の冷却空気出口部57によれば、内筒52の内壁に沿ってフィルム状に流れるように冷却空気を供給することができるので、内筒52をフィルム冷却することにより、さらに燃焼器12の冷却性能を向上させることができる。また、車室内の空気を用いてフィルム冷却する場合に比べて、冷却後の冷却空気は温度上昇によって体積流量が増加しているのでフィルム流速を高くできる。これにより、壁面を伝って逆火してくる火炎を吹き飛ばす能力を高くすることができ、燃焼器12の構造的信頼性を高めることができる。
【0041】
なお、上記各実施形態では、冷却通路に供給する冷却媒体として圧縮機から抽気した圧縮空気を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば排熱回収ボイラから抽気した蒸気を用いても良い。
【符号の説明】
【0042】
11 圧縮機
12 燃焼器(ガスタービン燃焼器)
13 タービン
41 昇圧装置
52 内筒
53 冷却通路(冷却媒体通路)
54 入口ヘッダ(冷却媒体入口部)
55 冷却空気出口部(冷却媒体出口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃焼ガスの流れが形成されるように筒状に形成された壁部の燃焼ガス下流側に設けられた冷却媒体入口部と、
該冷却媒体入口部に接続され、前記壁部内に燃焼ガスの流れ方向に沿って並列して複数設けられた冷却媒体通路と、
該冷却媒体通路に接続され、前記壁部の燃焼ガス上流側に設けられた冷却媒体出口部と、
を備えたガスタービン燃焼器において、
前記冷却媒体通路は、冷却媒体の流れ方向に向かって、その流路断面積が減少し、
前記冷却媒体通路は、それぞれの流路断面積が略同一とされているとともに、前記冷却媒体の上流側よりも前記冷却媒体の下流側の方が少ない本数とされていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
内部に燃焼ガスの流れが形成されるように筒状に形成された壁部の燃焼ガス下流側に設けられた冷却媒体入口部と、
該冷却媒体入口部に接続され、前記壁部内に燃焼ガスの流れ方向に沿って並列して複数設けられた冷却媒体通路と、
該冷却媒体通路に接続され、前記壁部の燃焼ガス上流側に設けられた冷却媒体出口部と、
を備えたガスタービン燃焼器において、
前記冷却媒体通路は、冷却媒体の流れ方向に向かって、その流路断面積が減少し、
前記冷却媒体通路の流路断面形状は、前記冷却媒体の流れ方向に向かって、前記壁部の厚さ方向に寸法が減少し、
前記冷却媒体通路は、それぞれの流路断面積が略同一とされているとともに、前記冷却媒体の上流側よりも前記冷却媒体の下流側の方が少ない本数とされていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1又は2記載のガスタービン燃焼器と、
該燃焼器に圧縮空気を供給する圧縮機と、
前記燃焼器からの燃焼ガスによって回転させられるタービンと、
を備えていることを特徴とするガスタービン。
【請求項4】
前記圧縮機で圧縮した圧縮空気の一部を昇圧する昇圧手段を備え、
該昇圧手段によって昇圧した圧縮空気を前記ガスタービン燃焼器の冷却媒体として用い、
該ガスタービン燃焼器を冷却した後の冷却媒体を燃焼用空気として用いることを特徴とする請求項3記載のガスタービン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−47181(P2012−47181A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239118(P2011−239118)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【分割の表示】特願2007−116037(P2007−116037)の分割
【原出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)