説明

ガスタービン

【課題】尾筒の下流側部分における圧力変動を抑える。
【解決手段】燃焼器の尾筒20の下流部で、タービンロータの周方向Cで互いに対向する一対の側壁22の内面24は、尾筒20の軸線Ac方向の下流側に向うに連れて、次第に隣接する他の燃焼器の尾筒に近づく向きに、尾筒20の下流端20eに至るまで傾斜している傾斜面25を成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器と、複数の燃焼器からの燃焼ガスにより回転するロータを有するタービンと、を備えているガスタービンに関し、特に、燃焼器の尾筒に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、外気を取り込んで圧縮空気を生成する圧縮機と、燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器と、複数の燃焼器からの燃焼ガスにより回転するロータを有するタービンと、を備えている。複数の燃焼器は、ロータを中心として環状に配置されている。各燃焼器は、タービンのガス入り口に燃焼ガスを送る尾筒を有している。
【0003】
燃焼ガスは、燃焼器の尾筒から流出すると、タービンのガス入り口からタービンの燃焼ガス流路内に入り込む。この際、燃焼ガスは、尾筒から流出した直後に、その流れの中にカルマン渦列が形成され、このカルマン渦列を振動源とする非定常圧力変動が音響固有値に共振し、大きな圧力変動が生じて、運転負荷になる場合がある。
【0004】
そこで、以下の特許文献1に記載の技術では、尾筒の下流端と第一段静翼の上流端との間の軸線方向における寸法や、第一段静翼の上流端とロータを中心とした周方向で隣接する尾筒間の中心との間の周方向の寸法等に関して、特定の範囲に限定することで、大きな圧力変動を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−197650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術は、確かに、尾筒の下流側部分における大きな圧力変動を抑えることができる。しかしながら、尾筒の下流側部分における圧力変動をより抑え、よりガスタービン効率を高めることが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、このような要望に応えるべく、燃焼器の尾筒の下流側部分における圧力変動をより抑え、よりガスタービン効率を高めることができるガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明に係るガスタービンは、
燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器と、複数の該燃焼器からの燃焼ガスにより回転するロータを有するタービンと、を備え、複数の燃焼器は、前記ロータを中心として環状に配置され、前記タービンのガス入口に燃焼ガスを送る尾筒を有するガスタービンにおいて、前記燃焼器の前記尾筒の下流部で、前記ロータの周方向で互いに対向する一対の側壁のうち、少なくとも一方の側壁の内面は、該尾筒の軸線方向の下流側に向うに連れて、次第に隣接する他の燃焼器の尾筒に近づく向きに、該尾筒の下流端に至るまで傾斜している傾斜面を成している、ことを特徴とする。
【0009】
尾筒内を下流側に向って流れる燃焼ガスは、尾筒内から流出した後も尾筒の側壁内面に沿った方向に流れようとするため、尾筒の下流端面の下流側にカルマン渦列が形成されることがある。
【0010】
当該ガスタービンでは、尾筒の下流側の側壁内面が尾筒の下流端に至るまで傾斜面を成しているため、互いに隣接し合う燃焼器の尾筒の側壁内面に沿う流れ同士が、尾筒の下流端面の下流側に角度をもって合流するので、尾筒の下流端面の下流側にカルマン渦列が形成されるのを抑制でき、尾筒の下流側部分の圧力変動を抑えることができる。
【0011】
ここで、前記ガスタービンにおいて、前記タービンは、前記ロータを中心として環状に且つ前記ガス入口に沿って配置された複数の第一段静翼を有し、該第一段静翼は、翼弦が伸びる翼弦方向が前記周方向に対して傾斜しており、前記周方向で、前記第一段静翼の上流端に対して該第一段静翼の下流端が存在する側を翼傾斜側とした場合、前記尾筒の前記少なくとも一方の側壁は、前記尾筒における前記周方向で互いに対向する一対の前記側壁のうちの該翼傾斜側の側壁であることが好ましい。
【0012】
尾筒における周方向で互いに対向する一対の側壁のうちの翼傾斜側の側壁のみの内面が傾斜面である場合、この傾斜面により導かれる燃焼ガスの流れの向きと、第一段静翼により導かれる燃焼ガスの流れの向きとがほぼ同じなり、尾筒から第一段静翼への燃焼ガスの流れがスムーズになる。このため、翼傾斜側の側壁のみの内面が傾斜面であっても、尾筒の下流側部分の圧力変動を効果的に抑えることができる。なお、翼弦とは、静翼の上流端と下流端とを結んだ線分である。
【0013】
また、前記ガスタービンにおいて、前記尾筒における前記周方向で互いに対向する一対の前記側壁の両方の前記内面が前記傾斜面を成していることが好ましい。
【0014】
当該ガスタービンでは、尾筒の一対の側壁の内面のそれぞれから連なる尾筒の各下流端面の下流側にカルマン渦列が形成されるのを抑制できる。
【0015】
また、前記ガスタービンにおいて、前記傾斜面の上流端から下流端までの前記周方向の寸法Bを基準として、該上流端から該下流端までの前記軸線方向の寸法Aの割合A/Bは、1以上で8以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記ガスタービンにおいて、前記傾斜面は、前記尾筒の軸線に近づき且つ下流側に向う側に滑らかに膨らんだ曲面を少なくとも一部に含んでもよい。
【0017】
また、前記ガスタービンにおいて、前記燃焼器の数と前記第一段静翼の数との比が2:3以上の奇数であり、複数の前記第一段静翼のピッチ寸法Pを基準にして、前記燃焼器の前記尾筒と前記他の燃焼器の尾筒との中間地点から前記周方向で最も近い第一段静翼の上流端までの該周方向の寸法Sの割合S/Pは、0.05以下、0.2から0.55の間、及び0.7から1.0の間であることが好ましい。
【0018】
当該ガスタービンでは、いずれの燃焼器の尾筒の一対の側壁の内面のそれぞれから連なる尾筒の各下流端に対しても、いずれかの第1段静翼が周方向において比較的近くに存在することになるため、この第一段静翼の存在により、各尾筒の下流側における圧力変動を抑えることができる。
【0019】
また、前記ガスタービンにおいて、複数の前記第一段静翼のピッチ寸法Pを基準にして、前記尾筒の下流端から前記第一段静翼の上流端までの前記軸線方向の寸法Lの割合L/Pが0.2以下であることが好ましい。
【0020】
当該ガスタービンでは、尾筒の下流端に対して、第一段静翼が尾筒の軸線方向において比較的に近くに存在することになるため、この第一段静翼の存在により、各尾筒の下流側における圧力変動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、尾筒の下流端面の下流側にカルマン渦列が形成されるのを抑制でき、尾筒の下流側部分の圧力変動を抑えることができる。このため、本発明によれば、ガスタービン効率を高めることがでる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの要部を切り欠いた全体側面図である。
【図2】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの燃焼器周りの断面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における尾筒の斜視図である。
【図4】本発明に係る一実施形態における尾筒の下流側の断面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における傾斜面の傾斜率と圧力変動幅との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る一実施形態における尾筒と第一段静翼との位置関係を示す説明図である。
【図7】本発明に係る一実施形態における尾筒の下流側の圧力変動を示す説明図で、同図(a)は周方向割合が10%の場合を示し、同図(b)は周方向割合が22.5%の場合を示し、同図(c)は周方向割合が35%の場合を示し、同図(d)は周方向割合が47.5%の場合を示す。
【図8】本発明に係る一実施形態の尾筒の下流側の圧力変動幅と周方向割合との関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係る一実施形態の傾斜面の変形例を示すための尾筒の下流側の断面図であり、同図(a)は傾斜面の第一変形例を示し、同図(b)は傾斜面の第二変形例を示す。
【図10】本発明に係る一実施形態の変形例における尾筒の傾斜面と第1段静翼との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るガスタービンの一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
本実施形態のガスタービンは、図1に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃料供給源からの燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器10と、燃焼ガスにより駆動するタービン2と、を備えている。
【0025】
タービン2は、ケーシング3と、このケーシング3内で回転するタービンロータ5とを備えている。タービンロータ5は、複数のロータディスクが積層されて構成されているロータ本体6と、複数のロータディスク毎にそのロータディスクから放射方向に延びる複数の動翼7と、を有している。すなわち、このタービンロータ5は、多段動翼構成である。このタービンロータ5には、例えば、このタービンロータ5の回転で発電する発電機(図示されていない。)と接続されている。また、ケーシング3には、各段の動翼7の各上流側に、その内周面からロータ本体6に近づく方向に延びる複数の静翼4が固定されている。
【0026】
複数の燃焼器10は、タービンロータ5の回転軸線Arを中心として、周方向に互いに等間隔でケーシング3に固定されている。
【0027】
燃焼器10は、図2に示すように、高温・高圧の燃焼ガスGをタービン2のガス入口9からタービン2のガス流路8内に送る尾筒20と、この尾筒20内に燃料及び圧縮空気Airを供給する燃料供給器11と、を備えている。タービン2の動翼7及び静翼4は、このガス流路8中に配置されている。燃料供給器11は、パイロット燃料Xを尾筒20内に供給して、この尾筒20内に拡散火炎を形成するパイロットバーナ12と、メイン燃料Y及び圧縮空気Airを予混合して、予混合気体として尾筒20内に供給し、この尾筒20内に予混合火炎を形成する複数のメインノズル13と、を備えている。
【0028】
尾筒20は、図2及び図3に示すように、筒状を成し、内周側に燃焼ガスGが流れる胴体21と、胴体21の下流端部に設けられ、尾筒20の軸線Acから遠ざかる向きに広がる出口フランジ31とを有している。
【0029】
胴体21の下流側の断面形状は長方形状を成し、この胴体21は、その下流側に、タービンロータ5の回転軸線Arを中心とした周方向Cで互いに対向する一対の側壁22と、この回転軸線Arを中心とした放射方向で互いに対向する一対の側壁23と、を有している。
【0030】
図4に示すように、胴体21の下流端部に設けられている出口フランジ31は、胴体21の下流端から尾筒20の軸線Acに対して遠ざかる向きに広がるフランジ本体部32と、このフランジ本体部32の外縁から上流側に向って延びる対向部33と、を有している。このフランジ本体部32の下流端面は、尾筒20の下流端面20eaを成している。また、この対向部33と、周方向Cで隣接する燃焼器10の尾筒20の対向部33との間には、隣接する燃焼器10の尾筒相互間をシールするシール部材35が設けられている。なお、本実施形態では、胴体21の下流側の部分、つまり胴体21の下流側の側壁22,23とフランジ本体部32とは、一体成形品で形成されている。
【0031】
周方向Cで互いに対向する一対の側壁22のそれぞれの内面24は、尾筒20の軸線Ac方向の下流側に向うに連れて、次第に隣接する他の燃焼器10の尾筒20に近づく向きに、尾筒20の下流端20eに至るまで傾斜している傾斜面25を成している。すなわち、傾斜面25の下流端は尾筒20の下流端20eである。
【0032】
尾筒20内を下流側に向って流れる燃焼ガスGは、尾筒20内から流出した後も側壁22の内面24に沿った方向に流れようとするため、フランジ本体部32の下流端面20eaの下流側にカルマン渦列が形成されることがある。
【0033】
本実施形態では、尾筒20の下流側の側壁22の内面24が傾斜面25を成しているため、側壁22の内面24に対してフランジ本体部32の下流端面20eaの成す角度が小さくなる。よって、本実施形態では、フランジ本体部32の下流端面20eaの下流側にカルマン渦列が形成されるのを抑制でき、尾筒20の下流側部分の圧力変動を抑えることができる。
【0034】
ここで、この傾斜面25の傾斜率を変えた際の尾筒20の下流側部分の圧力変動幅についてシミュレートしたので、このシミュレート結果について説明する。なお、このシミュレートでは、図4に示すように、傾斜面25の上流端25sから下流端20e(=尾筒20の下流端)までの周方向Cの寸法Bを基準として、上流端25sから下流端20eまでの軸線Ac方向の寸法Aの割合A/Bを、傾斜面25の傾斜率と定義している。
【0035】
このシミュレートの結果、図5に示すように、傾斜率A/Bが1以上で8以下であるとき、燃焼器10の下流側部分の圧力変動幅ΔPが小さくなることが分かった。これは、傾斜率A/Bが1未満のとき、及び8より大きいときには、傾斜が急すぎる又は緩すぎるため、傾斜面25としての効果を十分に得ることができないためである。さらに、傾斜面25の傾斜率A/Bが2以上で6以下であると、圧力変動幅ΔPが極めて小さくなることも分かった。なお、尾筒20内を流れる燃焼ガスGの流速が高くなるに連れて、圧力変動幅ΔPも大きくなるが、傾斜面25の傾斜率A/Bと圧力変動幅ΔPとの関係は、尾筒20内を流れる燃焼ガスGの流速が変化しても基本的に同じである。
【0036】
このため、傾斜面25の傾斜率A/Bの好ましい範囲Raは、1以上で8以下であり、より好ましい範囲Rbは、2以上で6以下であると言える。
【0037】
さらに、ここでは、尾筒20と第一段静翼4aとの相対位置を変えた際の燃焼器10の下流側部分での圧力変動幅についてもシミュレートしたので、このシミュレート結果についても説明する。具体的に、図6に示すように、複数の第一段静翼4aの周方向Cのピッチ寸法Pを基準にして、特定の燃焼器10aの尾筒20とこれに周方向Cの一方の側に隣接する他の燃焼器10bの尾筒20との中間地点Mから周方向Cの一方の側で最も近い第一段静翼4aの上流端4sまでの周方向Cの寸法Sの割合S/P(以下、周方向割合S/Pとする)と圧力変動幅ΔPとの関係についてシミュレートした。
【0038】
なお、このシミュレートは、燃焼器10の数Ncと第一段静翼4aの数Nsとの比が2:3で、尾筒20の傾斜面25の傾斜率A/Bが2.75で行った。さらに、このシミュレートは、ピッチ寸法Pを基準にして、尾筒20の下流端20eから第一段静翼4aの上流端4sまでの軸線Ac方向の寸法Lの割合L/P(以下、軸線方向割合L/Pとする)を12%で行った。
【0039】
図8に示すように、軸線方向割合L/Pが12%の場合、周方向割合S/Pが0%〜5%では非定常圧力変動はほとんどなかった。しかしながら、周方向割合S/Pが5%を越えると、大きな圧力変動幅ΔPが見られ始め、周方向割合S/Pが10%になると、圧力変動幅ΔPがより大きくなった。
【0040】
図7(a)に示すように、周方向割合S/Pが10%の場合、特定の燃焼器10aの尾筒20とこれに周方向Cの一方の側に隣接する他の燃焼器10bの尾筒20との間の下流側では、非定常圧力変動がみられないものの、特定の燃焼器10aの尾筒20とこれに周方向Cの他方の側に隣接する他の燃焼器10cの尾筒20との間の下流側では、カルマン渦列vが発生し、比較的大きな非定常圧力変動が生じた。これは、特定の燃焼器10aの尾筒20とこれに周方向Cの他方の側に隣接する他の燃焼器10cの尾筒20との間から、周方向Cで最も近い第一段静翼4aの上流端4sまでの周方向Cの寸法が大きくなっているためである、と考えられる。なお、図8中の細線は、等静圧線を示している。
【0041】
よって、周方向割合S/Pが10%になると、圧力変動幅ΔPが大きくなったと考えられる。但し、このシミュレートでは、傾斜面25の傾斜率A/Bは、より好ましい範囲Rb(2以上で6以下)内である2.75であるから、傾斜面25が形成されていない場合等よりも、圧力変動幅ΔPより小さい。
【0042】
圧力変動幅ΔPは、周方向割合S/Pが20%になると、図8に示すように、急激に小さくなり、周方向割合S/Pが22.5%になると、非定常圧力変動はほとんど見られなくなった。図7(b)に示すように、周方向割合S/Pが22.5%の場合、特定の燃焼器10aの尾筒20とこれに周方向Cの一方の側に隣接する他の燃焼器10bの尾筒20との間の下流側、及び特定の燃焼器10aの尾筒20とこれに周方向Cの他方の側に隣接する他の燃焼器10cの尾筒20との間の下流側でも、非定常圧力変動はほとんど見られなくなった。
【0043】
非定常圧力変動は、図7(c)及び(d)に示すように、周方向割合S/Pが35%、47.5%でも、ほとんど見られなかった。しかし、図8に示すように、周方向割合S/Pが55%を越えると、再び、大きな圧力変動幅ΔPが見られ始め、周方向割合S/Pが60%になると、圧力変動幅ΔPがより大きくなった。これは、特定の燃焼器10aの尾筒20とこれに周方向Cの一方の側に隣接する他の燃焼器10bの尾筒20との間から、周方向Cで最も近い第一段静翼4aの上流端4sまでの周方向Cの寸法が大きくなっているためである、と考えられる。すなわち、周方向割合S/Pが60%のときには、周方向割合S/Pが10%のときと、基本的に同様の理由で同様の現象が生じている、と考えられる。
【0044】
この圧力変動幅ΔPは、周方向割合S/Pが70%になると、急激に小さくなり、周方向割合S/Pが72.5%になると、非定常圧力変動がほとんど見らなくなった。以降、周方向割合S/Pが100%になるまで、非定常圧力変動はほとんど見なれない。
【0045】
以上のように、周方向割合S/Pが0%〜5%、20%〜55%、70%〜100%では、非定常圧力変動がほとんどみられず、尾筒20の下流側部分の圧力変動幅ΔPが非常に小さくなることが分かった。すなわち、周方向割合S/Pで好ましい範囲Rcは、0%〜5%、20%〜55%、70%〜100%であることが分かった。
【0046】
さらに、ここで、軸線方向割合L/Pを変えて、以上と同様に、周方向割合S/Pと圧力変動幅ΔPとの関係についてシミュレートした。
【0047】
図8に示すように、軸線方向割合L/Pが18%のとき、20%のとき、27%のときでも、周方向割合S/Pの変化に対する圧力変動幅ΔPの変化は、前述の軸線方向割合L/Pが12%のときと同様の傾向が見られた。すなわち、前述の軸線方向割合L/Pが12%のときと同様、周方向割合S/Pが0%〜5%、20%〜55%、70%〜100%の場合、周方向割合S/Pが5%〜20%、55%〜70%の場合と比べて、燃焼器10の下流側部分の圧力変動幅ΔPが相対的に小さくなることが分かった。
【0048】
しかしながら、軸線方向割合L/Pが18%及び20%のとき、周方向割合S/Pが0%〜5%、20%〜55%、70%〜100%の場合、前述の軸線方向割合L/Pが12%のときと同様、非定常圧力変動がほとんど見られず、圧力変動幅ΔPの絶対値が小さいものの、軸線方向割合L/Pが27%のときでは、周方向割合S/Pが0%〜5%、20%〜55%、70%〜100%の場合でも、圧力変動幅ΔPの絶対値が大きくなることが分かった。
【0049】
すなわち、軸線方向割合L/Pは20%以下にすることで、圧力変動幅ΔPが小さくなることが分かった。
【0050】
また、以上のシミュレーション結果は、燃焼器10の数Ncと第一段静翼4aの数Nsとの比が2:3の場合のものであるが、Nc:Ns=2:5、Nc:Ns=2:7、Nc:Ns=2:9以上の場合でも、尾筒20と第一段静翼4aとの相対位置と尾筒20の下流側部分での圧力変動幅ΔPとの関係は、以上と同様の結果が得られると考えられる。但し、燃焼器10の数Ncに対して第一段静翼4aの数Nsが多くなるほど、周方向割合S/Pや軸線方向割合L/Pがいずれの値でも、圧力変動幅ΔPが大きくなる際の圧力変動幅ΔPの絶対値は小さくなり、第一段静翼4aの数Nsがより多くなれば、周方向割合S/Pや軸線方向割合L/Pがいずれの値でも、非定常圧力変動がほとんど見られなくなると考えられる。
【0051】
なお、燃焼器10の数Ncと第一段静翼4aの数Nsとの比が1:自然数のときには、各燃焼器10の尾筒20と、それに隣接する他の尾筒20との間の直下に第一段静翼4aの上流端4sを配置することができるため、このように第一段静翼4aを配置することで、非定常圧力変動をほとんどなくすことができる。
【0052】
次に、尾筒20の傾斜面25の各種変形例について説明する。
【0053】
以上の実施形態の傾斜面25は、その上流端25sから下流端20eまでの全体が平面であるが、この傾斜面25は、全体が平面である必要はなく、少なくとも一部に曲面を含んでもよい。
【0054】
この曲面は、具体的に、図9に示すように、尾筒20の軸線Acに近づき且つ下流側に向う側に滑らかに膨らんだ曲面26a,26b,26cである。例えば、曲面26aは、同図(a)に示すように、傾斜面25とフランジ本体部32の下流端面20eaとの境界領域に、つまり、この曲面26aの下流端が傾斜面25の下流端20eと一致する。また、曲面26bは、この曲面26bの上流端が傾斜面25の上流端25sと一致する。また、同図(b)に示すように、傾斜面25の全体が曲面26cである。
【0055】
このように、傾斜面25の少なくとも一部に曲面を採用すると、燃焼ガスGの流れの向きが急激に変化する箇所がなくなるため、尾筒20の下流端面20eaの下流側にカルマン渦列が形成されるのをより抑制でき、尾筒20の下流側部分の圧力変動をより効果的に抑えることができる。このため、傾斜面25の少なくとも一部に曲面を採用した場合、傾斜面25の傾斜率A/Bの好ましい範囲Raは、以上で説明した1以上で8以下よりも広がる。
【0056】
また、以上の実施形態では、周方向Cで互いに対向する一対の側壁22のそれぞれの内面24が傾斜面25を成しているが、いずれか一方の内面24のみが傾斜面25を成しても、尾筒20の下流側部分の圧力変動を抑えることができる。この場合、図10に示すように、周方向Cにおいて、第一段静翼4aの上流端4sに対して第一段静翼4aの下流端4eが存在する側を翼傾斜側Caとした場合、周方向Cで互いに対向する一対の側壁22(図10の場合では22a及び22b)のうちの翼傾斜側Caの側壁22(図10の場合では22b)の内面24が傾斜面25を成していることが好ましい。これは、傾斜面25により導かれる燃焼ガスGの流れの向きと、第一段静翼4aの上流端4sと下流端4eとの繋ぐ線分である翼弦の方向、つまり第一段静翼4aにより導かれる燃焼ガスGの流れの向きとがほぼ同じなり、尾筒20から第一段静翼4aへの燃焼ガスGの流れがスムーズになり、尾筒20の下流側部分の圧力変動を効果的に抑えることができるからである。
【0057】
なお、以上のように、周方向Cで互いに対向する一対の側壁22のうち、いずれか一方の側壁22(図10の場合では22a及び22b)の内面24のみが傾斜面25を成していても、尾筒20と第一段静翼4aとの相対位置と尾筒20の下流側部分での圧力変動幅ΔPとの関係は、以上のシミュレート結果と基本的に同様である。
【符号の説明】
【0058】
1:圧縮機、2:タービン、3:ケーシング、4:静翼、4a:第1段静翼、4s:(静翼の)上流端、4e:(静翼の)下流端、5:タービンロータ、6:ロータ本体、7:動翼、8:ガス流路、9:ガス入口、10:燃焼器、20:尾筒、20e:(尾筒のor傾斜面の)下流端、20ea:(尾筒のorフランジ本体部の)下流端面、21:胴体、22,22a,22b,23:側壁、24:内面、25:傾斜面、25s:(傾斜面の)上流端、26a,26b,26c:曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器と、複数の該燃焼器からの燃焼ガスにより回転するロータを有するタービンと、を備え、
複数の燃焼器は、前記ロータを中心として環状に配置され、前記タービンのガス入口に燃焼ガスを送る尾筒を有するガスタービンにおいて、
前記燃焼器の前記尾筒の下流部で、前記ロータの周方向で互いに対向する一対の側壁のうち、少なくとも一方の側壁の内面は、該尾筒の軸線方向の下流側に向うに連れて、次第に隣接する他の燃焼器の尾筒に近づく向きに、該尾筒の下流端に至るまで傾斜している傾斜面を成している、
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンにおいて、
前記タービンは、前記ロータを中心として環状に且つ前記ガス入口に沿って配置された複数の第一段静翼を有し、該第一段静翼は、翼弦が伸びる翼弦方向が前記周方向に対して傾斜しており、
前記周方向で、前記第一段静翼の上流端に対して該第一段静翼の下流端が存在する側を翼傾斜側とした場合、前記尾筒の前記少なくとも一方の側壁は、前記尾筒における前記周方向で互いに対向する一対の前記側壁のうちの該翼傾斜側の側壁である、
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項3】
請求項1に記載のガスタービンにおいて、
前記尾筒における前記周方向で互いに対向する一対の前記側壁の両方の前記内面が前記傾斜面を成している、
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービンにおいて、
前記傾斜面の上流端から下流端までの前記周方向の寸法Bを基準として、該上流端から該下流端までの前記軸線方向の寸法Aの割合A/Bは、1以上で8以下である、
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンにおいて、
前記傾斜面は、前記尾筒の軸線に近づき且つ下流側に向う側に滑らかに膨らんだ曲面を少なくとも一部に含む、
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービンにおいて、
前記燃焼器の数と前記第一段静翼の数との比が2:3以上の奇数であり、
複数の前記第一段静翼のピッチ寸法Pを基準にして、前記燃焼器の前記尾筒と前記他の燃焼器の尾筒との中間地点から前記周方向で最も近い第一段静翼の上流端までの該周方向の寸法Sの割合S/Pは、0.05以下、0.2から0.55の間、及び0.7から1.0の間である、
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のガスタービンにおいて、
複数の前記第一段静翼のピッチ寸法Pを基準にして、前記尾筒の下流端から前記第一段静翼の上流端までの前記軸線方向の寸法Lの割合L/Pが0.2以下である、
ことを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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