説明

ガスハイドレートのガス化方法及ガス化システム

【課題】常圧で貯蔵された貯蔵タンク側への戻りガスの発生量を減少できて、戻りガス用の圧縮機等や、液層の動力攪拌装置や、ガスハイドレートのペレットの粉砕装置が不要で、付帯設備及び消費動力を低減できると共に、効率よくガス化でき、ガスを安定して供給できるガスハイドレートのガス化方法及びガス化システムを提供する。
【解決手段】常圧系ガスハイドレート供給配管10からロータリーバルブ20の格納室21にガスハイドレートAを供給し、ロータリーバルブを回転させて格納室21を高圧系ガスハイドレート供給配管31と高圧系循環水配管38に連通させて、格納室21のガスハイドレートAを循環水Bで高圧系ガスハイドレート供給配管31に圧入すると共に、ガスハイドレートAを熱交換器で受熱した循環水Baと共にガス化槽32に供給してガス化し、発生したガスCをガス供給配管33から排出すると共に、循環水Bを分離排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常圧状態で貯蔵されている天然ガスハイドレート(NGH)等のガスハイドレートをガス化して高圧状態のガスで供給するために、ガスの圧力上昇のために多大な圧縮動力を必要としないガスハイドレートのガス化方法及びガスハイドレートのガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新しい天然ガス輸送システムとして、天然ガスを人工的にガスハイドレート化して海上を輸送するチェーン(一連のシステム)の研究が進められている。この天然ガスハイドレート(NGH)輸送チェーンは、主にNGHの生成、ペレット化、搬送、貯蔵、及び再ガス化の部分で構成されている。
【0003】
このNGHの利用先として、再ガス化させた天然ガスをガス焚きガスタービン複合発電設備へ供給するチェーンが考えられている。また、その他にも、都市ガスの原料、分散型発電燃料、化学物質の原料等が考えられる。これらの装置で天然ガスを使用する場合には、燃料ガスでは3.5MPa以上、都市ガスでは2MPa以上の高圧が要求される。
【0004】
このガスハイドレートの分解方法及び分解装置としては、例えば、ガス化に伴う気液分離を速やかに行うために、ガス化槽の上部から天然ガスハイドレート(NGH)を供給し、この供給された天然ガスハイドレートを粉砕して、ガス化槽内の多孔性支持体の上面に保持し、この保持された天然ガスハイドレートに温水を散布して加熱分解するガスハイドレートの分解方法及び分解装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この分解装置では、常圧の天然ガスハイドレートの貯蔵施設から高圧状態のガス化槽への間に圧入用の容器である導入タンクを配置し、高圧と常圧が連通しないように、上下2段の第1ゲート弁と第2ゲート弁を設けて、交互に開閉しながら、導入タンクに供給された天然ガスハイドレートをガス化槽に供給している。
【0006】
この仕切り弁式バッチ方式では、天然ガスハイドレートをガス雰囲気のまま圧入するが、バッチ式であるため、常圧側と高圧側に圧入機の導入タンクが交互に連通するので、導入タンクの容積分の高圧ガスが常圧側に戻る構造となっており、戻りガスが発生する。天然ガスハイドレートをガス化すると、体積の約170倍のガスとなるため、圧入条件として、例えば、ガス化槽を5MPa、圧入機内の天然ガスハイドレートのペレットの充填率を50%と仮定すると、発生するガス量全体の約60%が常圧側に戻ることになる。
【0007】
このように、従来技術の仕切り弁式バッチ方式の圧入装置では戻りガスの量が非常に多いので、常圧側が高圧になるのを防止するために、系外に放出して常圧側を減圧する必要がある。また、この戻りガスを利用するためには、圧縮機で昇圧してガス化槽に入れたりする必要がある。よって、高圧まで動力昇圧する付帯設備や圧縮動力が必要となり、システム全体の大型化に繋がる。従って、経済性の観点から、戻りガス量を極力減らし、ガス圧縮に必要な消費動力を低減する必要がある。
【特許文献1】特開2006−348193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、常圧で貯蔵された固形状のガスハイドレートを、高圧のガス化槽に供給して、該ガス化槽でガス化させた高圧のガスを外部に供給するガスハイドレートのガス化方法及びガス化システムにおいて、戻りガスの発生量を減少できて、戻りガス用の圧縮機等や、液層の動力攪拌装置や、ガスハイドレートのペレットの粉砕装置が不要で、付帯設備及び消費動力を低減できると共に、効率よくガス化でき、ガスを安定して供給できるガスハイドレートのガス化方法及びガス化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するためのガスハイドレートのガス化方法は、常圧で貯蔵された固形状のガスハイドレートを、高圧のガス化槽に供給して、該ガス化槽でガス化させた高圧のガスを外部に供給するガスハイドレートのガス化方法において、常圧系ガスハイドレート供給配管からロータリーバルブの格納室に前記ガスハイドレートを供給し、供給後に前記ロータリーバルブを回転して前記常圧系ガスハイドレート供給配管から高圧系ガスハイドレート供給配管に切り替えて、前記格納室に供給された前記ガスハイドレートを循環水でガス化槽に移送し、前記ガス化槽に移送した前記ガスハイドレートをガス化し、発生したガスをガス供給配管から排出すると共に、前記ガス化槽で分離した、循環水及びガスハイドレートの分解水を高圧系循環水配管の循環水用ポンプで循環して、該循環水を前記格納室に供給して前記ガスハイドレートの前記ガス化槽への移送に使用すると共に、前記循環水を熱交換器に供給して、該熱交換器に供給される熱を循環水に伝熱して、該受熱した循環水を前記ガス化槽に供給することにより前記ガス化槽に熱を供給することを特徴とする。
【0010】
ここでいう「常圧」とは大気圧、及び、ガスハイドレートを貯蔵する際の大気圧に近い圧力(例えば、ゲージ圧で、0MPa〜0.1MPa程度)のことをいう。また、ここでいう「高圧」とはガス化したガスを、ガス焚きガスタービン複合発電設備や都市ガス供給設備等のガス利用設備に供給するのために必要な圧力のことをいう。例えば、都市ガスへの供給においては、ゲージ圧で、2MPa以上であるので、この高圧としては、2MPa〜7MPa程度が考えられる。
【0011】
この方法によれば、ロータリーバルブを高圧系ガスハイドレート供給配管に切り替えたときの高圧雰囲気から、常圧系ガスハイドレート供給配管に切り替えたときの常圧雰囲気に切り替える際、ロータリーバルブの格納室内に循環水が充填されてガスが戻らないので、ガスハイドレートを高圧系ガスハイドレート供給配管に圧入するときの戻りガスをゼロにすることができるようになる。そのため、戻りガスを昇圧するための圧縮機が不要となり、更に、格納室を回転軸方向に複数、回転方向の角度を変えて設けることにより、連続圧入が可能となる。従って、このガス化システムを、その物性により動力機械に頼ることなく高圧ガスを得られるというガスハイドレートの特性を活かした高圧ガス化システムにすることができる。
【0012】
また、常圧系ガスハイドレート供給配管からロータリーバルブの格納室に投入されたガスハイドレートを高圧系ガスハイドレート供給配管に圧入する際に、格納室内に循環水を充填して切り替えを行うが、その際に、充填する循環水の温度が高いと格納室内でガスハイドレートが分解してガスが発生してしまう。
【0013】
これに対して、ガスハイドレートをガス化させるための循環水用の熱交換器をロータリーバルブに接続されている高圧系ガスハイドレート供給配管と循環水配管とを連結する熱交換器用配管に設置し、高温となった循環水をロータリーバルブの下流側の高圧系ガスハイドレート供給配管に供給してガス化槽に熱を供給することで、ガス化槽内でガスハイドレートを分解することができる。
【0014】
そして、上記の目的を達成するためのガスハイドレートのガス化システムは、常圧で貯蔵された固形状のガスハイドレートを、高圧のガス化槽に供給して、該ガス化槽でガス化させた高圧のガスを外部に供給するガスハイドレートのガス化システムにおいて、常圧系ガスハイドレート供給配管と高圧系ガスハイドレート供給配管とを順次繰り返し切り替えるロータリーバルブと、ガスハイドレートをガス化するガス化槽と、ガス化用の熱を供給する熱交換器と、前記ロータリーバルブに前記ガスハイドレートを供給するための常圧系ガスハイドレート供給配管と、前記ロータリーバルブと前記ガス化槽とを連結して、前記ガス化槽で分離した、循環水及びガスハイドレートの分解水を循環する高圧系循環水配管と、該高圧系循環水配管と前記高圧系ガスハイドレート供給配管とを連結する熱交換用配管とを備えて構成し、前記ガス化槽に、外部に高圧のガスを供給するガス供給配管を、前記高圧系循環水配管に循環用ポンプを、前記熱交換用配管に前記熱交換器をそれぞれ設けて構成する。
【0015】
この構成によれば、ロータリーバルブが常圧貯蔵タンクと高圧ガス化槽とのシールを確保した連続投入器となり、また、ガス化装置に粉砕装置や攪拌装置が不要になり、小型化できると共に、上記のガスハイドレートのガス化方法を実施することができる。
【0016】
従って、上記と同様に、ガスハイドレートを高圧系ガスハイドレート供給配管に圧入するときの戻りガスをゼロにすることができるようになり、また、高温となった循環水をロータリーバルブの下流側の高圧系ガスハイドレート供給配管に供給してガス化槽に熱を供給することで、ガス化槽内でガスハイドレートを分解することができる。
【0017】
上記のガスハイドレートのガス化システムにおいて、前記ガスハイドレートの前記ロータリーバルブへの移動を制御する投入装置を前記常圧系ガスハイドレート供給配管に備えると共に、前記ロータリーバルブを前記常圧系ガスハイドレート供給配管に切り替えたときに、前記格納室内の水分である水の排出及び前記格納室内への水充填を行う、水充填用ポンプを備えた常圧系給排水配管を備えて構成する。
【0018】
この構成によれば、投入装置により、常圧系ガスハイドレート供給配管に切り替えられた格納室内の水分を常圧系給排水配管に排水した後にガスハイドレートを格納室に供給することができるので、格納室に収容されるガスハイドレートの量を多くすることができる。この格納室内の水分はガスハイドレートを高圧系ガスハイドレート供給配管に押し出した後の循環水の一部であり、格納室から排出された排水は水充填用ポンプによりガスハイドレート投入後の格納室内に再充填、あるいは水充填用タンク内に循環される。排水をガスハイドレート投入後の格納室内に再充填させてから格納室を回転させることで、常圧系ガスハイドレート供給配管と高圧系ガスハイドレート供給配管との間で格納室を切り替える際の圧力差の影響を低減させることができる。
【0019】
上記のガスハイドレートのガス化システムにおいて、前記ロータリーバルブを常圧系ガスハイドレート供給配管から前記高圧系ガスハイドレート供給配管に切り替える途中に前記格納室内に前記循環水で加圧するための加圧用配管を設けると共に、前記ロータリーバルブを前記高圧系ガスハイドレート供給配管から前記常圧系ガスハイドレート供給配管に切り替える途中に前記格納室内を減圧するための減圧用配管を設けて構成する。この加圧用配管は、例えば、ロータリーバルブと高圧系循環水配管とを連結して設け、減圧用配管は、例えば、ロータリーバルブと水充填用タンクとを連結して設ける。
【0020】
この構成によれば、ロータリーバルブを常圧系ガスハイドレート供給配管と高圧系ガスハイドレート供給配管との間で切り替える際に、ロータリーバルブの格納室の内外の間で生じる圧力差により、急激な吸い込みや噴き出しが発生する可能性が生じるが、ガスハイドレートを格納室に供給及び高圧系ガスハイドレート供給配管に圧入するための配管ラインとは別に、格納室を加圧及び減圧するための加圧用と減圧用の配管ラインを設置することで、格納室の内外の圧力差を緩和し、高圧系ガスハイドレート供給配管と常圧系ガスハイドレート供給配管との間で切り替わる際の圧力差の影響を低減させることができる。 従って、ガス化システムの安全性と供給の安定性を向上させることができる。
【0021】
上記のガスハイドレートのガス化システムにおいて、前記高圧系ガスハイドレート供給配管の一部又は全部を前記ガス化槽側が上になるように水平に対して10度(deg)から90度傾斜させて設けて構成する。この構成によれば、ペレット等の固形状のガスハイドレート比重は水の比重よりも小さいため、水中では浮力によって上昇するので、配管の傾斜が10度以上であれば、ガスハイドレート自身の浮力で配管内を移動する。
【0022】
従って、ガスハイドレートを圧入した後の高圧系ガスハイドレート供給配管の一部又は全部に傾斜を設けることで、傾斜のない水平の配管に比べて少ない循環水量で効率的なガスハイドレートの移送を行うことができる。その結果、ロータリーバルブからガス化槽へのガスハイドレートの移送のために必要な循環水用ポンプの必要動力を低減でき、また、ガスハイドレートの移送を高速化することができる。
【0023】
上記のガスハイドレートのガス化システムにおいて、前記常圧系ガスハイドレート供給配管に、凍結防止用加熱装置を設けて構成する。この構成によれば、天然ガスハイドレート等のガスハイドレートは常圧ではマイナス20℃程度で貯蔵されるため、貯留タンクからロータリーバルブに投入する際に、常圧系ガスハイドレート供給配管の内部でガスハイドレートが凍結する可能性がある。これに対して、常圧系ガスハイドレート供給配管に設けたヒータ等の凍結防止用加熱装置により、この配管内における水分の凍結を防止できるので、ガスハイドレートの安定した供給が可能となる。
【0024】
上記のガスハイドレートのガス化システムにおいて、前記高圧系循環水配管に水量調整用タンクを備えると共に、前記水充填用タンク内の水を前記水量調整用タンクに圧入するための水圧入配管及水圧入用ポンプを設けて構成する。この構成によれば、循環水の水量を調整すると共に、ガス化槽からの排水を循環水として利用する際、ガス化槽で発生した気泡が循環水に混入したまま循環水用ポンプに供給されてしまう可能性があるが、ガス化槽の下流側に設置した水量調整用タンクによって、ガス化の際に発生した気泡を循環水から分離して循環水用ポンプに気泡が供給されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガスハイドレートのガス化方法及びガス化システムによれば、ガスハイドレートのガス化に際して、液充填式ロータリーバルブ方式を採用し、熱効率の高いガス化方法及びガス化システムとしているので、ガス化システムの小型化とガス化の効率の向上が可能となり、また、連続運転時におけるシステム全体の安全性と、ガスの供給の安定性も大幅に向上する。そのため、従来技術では、必要であった付帯設備、動力が不要となり、設備費用及び運転費用の低減を図ることができる。その結果、従来技術と比較して大幅な経済性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係るガスハイドレートのガス化方法及びガス化システムの実施の形態について説明する。ここでは、ガスハイドレートとして天然ガスハイドレートペレット(NGHペレット)を対象に想定して説明しているが、本発明は、メタンガスハイドレート等の他のガスハイドレートにも適用できる。
【0027】
図1に示すように、この実施の形態のガス化システム1は、常圧で貯蔵された固形状のガスハイドレートAを、貯蔵タンク11からロータリーバルブ20経由で高圧のガス化槽32に供給して、このガス化槽32でガス化させた高圧のガスCをガス供給配管33から外部に供給するシステムである。
【0028】
ここでいう「常圧」とは大気圧、及び、ガスハイドレートAを貯蔵する際の大気圧に近い圧力(例えば、ゲージ圧で、0MPa〜0.1MPa程度)のことをいう。また、ここでいう「高圧」とはガス化したガスを、ガス焚きガスタービン複合発電設備や都市ガス供給設備等のガス利用設備に供給するのために必要な圧力のことをいう。例えば、都市ガスへの供給においては、ゲージ圧で、2MPa以上であるので、この高圧としては、2MPa〜7MPa程度が考えられる。
【0029】
このガスハイドレートのガス化システム1は、常圧系ガスハイドレート供給配管10と高圧系ガスハイドレート供給配管31とを順次繰り返し切り替えるロータリーバルブ20と、ガスハイドレートをガス化するガス化槽32と、ガス化用の熱を供給する熱交換器42を備えて構成される。
【0030】
このロータリーバルブ20は、格納室21を有して構成される連続的な圧入装置であり、この格納室21を回転することにより、図2から図5に示すように、格納室21に連通する配管通路を順次切り替えるように構成されている。このロータリーバルブ20を用いることにより、略連続的にガスハイドレートAをガス化槽32に移送できると共に、ガスシール性を向上させることができる。特に格納室21を回転軸方向に複数設け、ロータリーバルブ20の回転方向に関して位相をずらすことにより、移送における連続性をより確保することができるようになる。
【0031】
このガス化槽32は、高圧に耐える容器で構成され、循環水Bと共に移送されたガスハイドレートAをガス化し、ガス化したガスを上部に設けたガス供給配管33から排出する。また、循環水用スクリーン32aを通過してガスハイドレートAと分離された循環水Bを高圧系循環水配管34に排出する。
【0032】
この熱交換器42はチューブ型熱交換器やプレート型熱交換器等で構成され、熱交換前の熱媒体Eaを供給する供給配管43と熱交換後の熱媒体Ebを排出する排出配管44とを備えている。この熱交換器42では、図示しない熱源からの熱媒体Eaの熱を熱交換により循環水Bに供給する。この熱媒体Eaの熱源としては、例えば、ガス焚きガスタービン複合(GTOC)発電プラントの発電タービン(GT)の排熱を熱利用し、熱交換後の熱媒体Ebはガス焚きガスタービン複合発電プラントの冷却用として利用する。
【0033】
また、配管系としては、常圧系ガスハイドレート供給配管10と、高圧系ガスハイドレート供給配管31と、高圧系循環水配管34、36、38と、熱交換用配管41と、常圧系給排水配管51、53と、水圧入配管55とを備えている。
【0034】
常圧系ガスハイドレート供給配管10は、ロータリーバルブ20にガスハイドレートAを供給するための配管であり、ガスハイドレートAを常圧で貯蔵する貯蔵タンク11とロータリーバルブ20を連結して設けられる。この常圧系ガスハイドレート供給配管10には、スライド弁等で構成される投入装置12を設けて、この開閉弁制御により、ガスハイドレートAの貯蔵タンク11からロータリーバルブ20への移動を制御する。
【0035】
この常圧系ガスハイドレート供給配管10に、凍結防止用加熱装置であるヒータ13を設ける。このヒータ13により、ガスハイドレートAが保存されているマイナス20℃程度の冷気により、ロータリーバルブ20からの水分が常圧系ガスハイドレート供給配管10の内部で凍結するのを防止して、ガスハイドレートAを安定して供給できる。
【0036】
高圧系ガスハイドレート供給配管31は、ガスハイドレートAを循環水Bでガス化槽32に移送するための配管であり、ロータリーバルブ20とガス化槽32とを連結して設けられる。この高圧系ガスハイドレート供給配管31は、その配管の一部又は全部をガス化槽32側が上になるように、水平に対して10度(deg)から90度傾斜させて設ける。
【0037】
この傾斜構造により、水の比重よりも小さく水中では浮力によって上昇するガスハイドレートAを自身の浮力を利用させて配管内を移動させる。従って、傾斜のない水平の配管に比べて少ない循環水Bの流量で効率的なガスハイドレートAの移送を行うことができる。その結果、ロータリーバルブ20からガス化槽32へのガスハイドレートAの移送のために必要な高圧系循環水配管36、38の間に設けられる循環水用ポンプ37の必要動力を低減でき、また、ガスハイドレートAの移送を高速化することができる。
【0038】
この高圧系循環水配管34、36、38は、ガス化槽32で分離された循環水Bを循環するための配管であり、ガス化槽32とロータリーバルブ20とを連結して設けられる。また、高圧系循環水配管36、38の間に、循環用ポンプ37を設けて循環水Bを高圧状態で循環させる。
【0039】
この高圧系循環水配管34、36の間に水量調整用タンク35を設ける。これにより、循環水Bの水量を調整すると共に、ガス化槽32からの排水を循環水Bとして利用する際、ガス化の際にガス化槽32で発生した気泡を循環水Bから分離して、この気泡が循環水Bに混入したまま循環水用ポンプ37に供給されるのを防止することができる。
【0040】
熱交換用配管41は、高圧系ガスハイドレート供給配管31に、ガス化のための熱量の供給源となる高温(例えば、5℃〜50℃程度)の循環水Baを供給するための配管であり、高圧系循環水配管38と高圧系ガスハイドレート供給配管31とを連結して設けられる。この熱交換用配管41には、熱交換器42が設けられる。
【0041】
常圧系給排水配管51、53は、ロータリーバルブ20を常圧系ガスハイドレート供給配管10に切り替えたときに、ロータリーバルブ20の格納室21内の水分である排水Dを排出すると共に、ロータリーバルブ20の格納室21内にガスハイドレートAを投入した後に排水Dを再充填(給水)するための配管である。
【0042】
この常圧系給排水配管51には、水充填用タンク52を設けると共に、水充填用タンク52の排水Dをロータリーバルブ20の格納室21内に再充填(給水)するための水充填用ポンプ54と常圧系給排水配管53を設ける。また、図1に示すように常圧系給排水配管53と常圧系給排水配管51との接続部に3方弁31bを設けると共に、常圧系給排水配管51からの分岐通路51aに開閉弁31cを設けて、これらの弁の操作により、格納室21からの排水Dの排出と格納室21への排水Dの給水とを行えるように構成する。
【0043】
これによれば、ガスハイドレートAを高圧系ガスハイドレート供給配管31に押し出した後にロータリーバルブ20の格納室21内に循環水の一部である排水Dが残るが、ロータリーバルブ20が常圧系ガスハイドレート供給配管10に切り替えられた際に、格納室21内の排水Dを常圧系給排水配管51側に排水することができる。その後で、投入装置12を開弁してガスハイドレートAを格納室21に供給するので、格納室21に収容されるガスハイドレートAの量を多くすることができる。
【0044】
水圧入配管55は、循環水Bの水量調整のために排水Dを高圧系循環水配管34、36に圧入するための配管であり、水充填用タンク52と水量調整用タンク35とを連結して設けられる。この水圧入配管55には、水圧入用ポンプ56を設ける。
【0045】
更に、ロータリーバルブ20に接続して、加圧用配管22と減圧用配管23を設ける。この加圧用配管22は、ロータリーバルブ20を常圧系ガスハイドレート供給配管10から高圧系ガスハイドレート供給配管31に切り替える途中(図3の状態)で格納室21内を循環水Bで加圧するための配管である。この加圧用配管22は、例えば、ロータリーバルブ20と高圧系循環水配管36とを連結して設け、ロータリーバルブ20の近傍にバルブ22aを設ける。
【0046】
また、減圧用配管23は、ロータリーバルブ20を高圧系ガスハイドレート供給配管31から常圧系ガスハイドレート供給配管10に切り替える途中(図5の状態)で格納室21内を減圧するための配管である。また、減圧用配管23は、例えば、ロータリーバルブ20と水充填用タンク52とを連結して設け、ロータリーバルブ20の近傍にバルブ23aを設ける。
【0047】
この構成によれば、ロータリーバルブ20を常圧系ガスハイドレート供給配管10と高圧系ガスハイドレート供給配管31との間で切り替える際に、ロータリーバルブ20の格納室21の内外の間で生じる圧力差により、急激な吸い込みや噴き出しが発生する可能性が生じるが、図2に示すようなガスハイドレートAを格納室21に供給するための配管ラインや、図4に示すようなガスハイドレートAを高圧系ガスハイドレート供給配管31に圧入するための配管ラインとは別に、格納室21を加圧及び減圧するための加圧用配管22と減圧用配管23を設置することで、格納室21の内外の圧力差を緩和し、高圧系ガスハイドレート供給配管31と常圧系ガスハイドレート供給配管20との間で切り替わる際の圧力差の影響を低減させることができる。従って、ガス化システム1の安全性と供給の安定性を向上させることができる。
【0048】
次に、上記の構成のガスハイドレートのガス化システム1におけるガスハイドレートのガス化方法について説明する。
【0049】
最初に、ロータリーバルブ20を回転して、図2に示すように、格納室21を常圧系ガスハイドレート供給配管10と常圧系給排水配管51に連通させる。この常圧系の配管10、51への接続状態では、格納室21の下側が常圧系給排水配管51に連結された状態となるので、格納室21内の循環水Bは、排水用スクリーン24を通過して排水Dとして常圧系給排水配管51に排出される。この排水Dは、水充填用タンク52に一時的に貯蔵された後に、水量調整のために、この水充填用タンク52に接続する常圧系給排水配管55の水圧入用ポンプ56で昇圧されて高圧系循環水配管34、36に配置された水量調整用タンク35に圧入される。
【0050】
この排水処理の後に、ガスハイドレートAが常圧状態で貯蔵されている貯蔵タンク11の下部に設けた投入装置12を開弁操作して、−20℃程度のガスハイドレートAを常圧系ガスハイドレート供給配管10経由でロータリーバルブ20の格納室21に供給する。
【0051】
ここでは、低温常圧で貯蔵されたガスハイドレートAを、投入装置12で格納室21内に定量投入する。このとき、常圧系ガスハイドレート供給配管10をヒータ(凍結防止用加熱装置)13で加熱して、ガスハイドレートAが途中で凍結するのを防止する。
【0052】
この供給後に、排水Dを格納室21に再充填し、ロータリーバルブ20を45度回転して、図3に示すように、格納室21を加圧用配管22に連通させてバルブ22aを開弁し、高圧の循環水Bにより格納室21を加圧する。この加圧処理により、ロータリーバルブ20が更に回転して図4に示すように格納室21が高圧系循環水配管38に連通した時に生じる格納室21の内外間の圧力差を小さくして、循環水Bの急激な吸い込みを防止する。
【0053】
この加圧処理の後にバルブ22aを閉弁し、ロータリーバルブ20を更に45度回転して、図4に示すように2MPa〜7MPa程度の高圧系の配管31、38に切り替えて、格納室21を高圧系ガスハイドレート供給配管31と循環水配管28に連通させて、循環水配管28の高圧の循環水Bにより格納室21に供給されたガスハイドレートAを傾斜した高圧系ガスハイドレート供給配管31に送り出す。送り出されたガスハイドレートAはそれ自体の浮力と循環水Bの循環によりガス化槽32に供給される。
【0054】
この高圧系ガスハイドレート供給配管31の途中に、熱交換器用配管41から熱交換器42を通過して、高温(例えば、5℃〜50℃程度)となった循環水Baを混入させてガス化槽32内に熱を供給する。この熱を使用して、ガス化槽32でガスハイドレートAをガス化する。この発生したガスCを、ガス化槽32の上部に設けたガス供給配管33から排出する。
【0055】
それと共に、ガス化に伴って発生した水分は循環水Bに混合する。この循環水Bは、ガス化槽32の循環水用スクリーン32aにより分離してガス化槽32の下部に接続された高圧系循環水配管34に排出される。この循環水Bを高圧系循環水配管36、38に設けた循環水用ポンプ37で循環して、この循環水Bを高圧系循環水配管36、38経由で格納室21に供給して、ガスハイドレートAを高圧系ガスハイドレート供給配管31経由でガス化槽32に移送する。
【0056】
一方、循環水用ポンプ57で循環させた循環水Bの一部を熱交換用配管41の熱交換器42に供給する。熱交換器43では熱源から供給される温水(例えば、10℃〜90℃程度)等の熱媒体Eaと、例えば、1℃〜40℃程度の循環水Bの間で熱交換して、循環水Bに熱を伝達する。この伝熱されて例えば、1℃〜40℃程度から例えば、5℃〜50℃程度になった循環水Baを高圧系ガスハイドレート供給配管31に供給してガス化槽32にガス化用の熱を供給する。なお、熱交換後の熱媒体Ebの温度は例えば、5℃〜70℃程度となる。
【0057】
このガスハイドレートAを格納室21から排出した後に、ロータリーバルブ20を45度回転して、図5に示すように格納室21を減圧用配管23に連通させてバルブ23aを開弁し、格納室21内の高圧の循環水Bを減圧用配管23により水充填用タンク52に抜いて格納室21内を減圧する。
【0058】
その後、バルブ23aを閉弁し、ロータリーバルブ20を45度回転して、図2に示すように、格納室21を常圧系の配管10、51に連通させる。このように、ロータリーバルブ20を順次回転させることにより、格納室21を常圧系の配管10、51、加圧用配管22、高圧系の配管31、38、減圧用配管23に順次連通させるサイクルを繰り返して実行することができ、略連続的にガスハイドレートAをガス化槽32に移送して連続的にガス化することができる。
【0059】
上記のように、この液充填式のロータリーフィーダー方式では、ガスハイドレートAを高圧の循環水Bにより排出した後に、ガスハイドレートAのペレット等の格納部である格納室21を常圧に回転させる。なお、ガスハイドレートAの投入は、循環水Bが常圧となった排水Dを排出した後に行う。また、ガスハイドレートAを投入し、排水Dを格納室21内に再充填した後に、格納室21を高圧に回転させる。高圧側から常圧側に格納室21が回転する際に、高圧循環水Bを常圧排水Dに、常圧側から高圧側に格納室21が回転する際に、常圧排水Dを高圧循環水Bに置き換える方式である。
【0060】
この方式では、天然ガスハイドレートAを循環水B中に入れてから、高圧系ガスハイドレート供給配管31に圧入する液シール方式であるので、仕切り弁式のバッチ方式のような高圧ガスと常圧ガスとが接触する行程が生じないために、理論上は戻りガスをゼロにすることが可能となり、戻りガスが非常に少ないというメリットがある。また、液シールであるので、高圧系の配管31、38に連通する際の衝撃圧の発生が殆どない上に、更に加圧用配管22と減圧用配管23を設けているので、急激な吸い込みや吐き出しも生じないというメリットがある。
【0061】
上記のガスハイドレートのガス化方法及びガス化システム1によれば、ガスハイドレートAのガス化に際して、液充填式ロータリーバルブ方式を採用し、熱効率の高いガス化方法及びガス化システム1としているので、戻りガスの低減を行いつつ、ガスハイドレートAを効率的に圧入、融解、ガス化するコンパクトなガス化システムが可能となり、ガス化システム1を小型化できると共に、ガス化の効率を向上することができる。また、連続的なガス化におけるシステム全体の安全性と、ガスの供給の安定性を大幅に向上させることができる。その結果、従来技術では、必要であった付帯設備、動力が不要となり、設備費用及び運転費用の低減を図ることができ、従来技術と比較して大幅な経済性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態におけるガスハイドレートのガス化システムの構成を示す図である。
【図2】ロータリーバルブの格納室を常圧系の配管に連通させた状態を示す図である。
【図3】ロータリーバルブの格納室を加圧用配管に連通させた状態を示す図である。
【図4】ロータリーバルブの格納室を高圧系の配管に連通させた状態を示す図である。
【図5】ロータリーバルブの格納室を減圧用配管に連通させた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ガスハイドレートのガス化システム
10 常圧系ガスハイドレート供給配管
11 貯蔵タンク
12 投入装置
13 ヒータ(凍結防止用加熱装置)
20 ロータリーバルブ
21 格納室
22 加圧用配管
23 減圧用配管
31 高圧系ガスハイドレート供給配管
32 ガス化槽
33 ガス供給配管
34、36、38 高圧系循環水配管
35 水量調整用タンク
37 循環水用ポンプ
41 熱交換用配管
42 熱交換器
51、53 常圧系給排水配管
52 水充填用タンク
54 水充填用ポンプ
55 水圧入配管
56 水圧入ポンプ
A ガスハイドレート
B 循環水
Ba 高温の循環水
C ガス
D 排水
Ea 熱交換前の熱媒体
Eb 熱交換後の熱媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧で貯蔵された固形状のガスハイドレートを、高圧のガス化槽に供給して、該ガス化槽でガス化させた高圧のガスを外部に供給するガスハイドレートのガス化方法において、 常圧系ガスハイドレート供給配管からロータリーバルブの格納室に前記ガスハイドレートを供給し、供給後に前記ロータリーバルブを回転して前記常圧系ガスハイドレート供給配管から高圧系ガスハイドレート供給配管に切り替えて、前記格納室に供給された前記ガスハイドレートを循環水でガス化槽に移送し、前記ガス化槽に移送した前記ガスハイドレートをガス化し、発生したガスをガス供給配管から排出すると共に、前記ガス化槽で分離した、循環水及びガスハイドレートの分解水を高圧系循環水配管の循環水用ポンプで循環して、該循環水を前記格納室に供給して前記ガスハイドレートの前記ガス化槽への移送に使用すると共に、前記循環水を熱交換器に供給して、該熱交換器に供給される熱を循環水に伝熱して、該受熱した循環水を前記ガス化槽に供給することにより前記ガス化槽に熱を供給することを特徴とするガスハイドレートのガス化方法。
【請求項2】
常圧で貯蔵された固形状のガスハイドレートを、高圧のガス化槽に供給して、該ガス化槽でガス化させた高圧のガスを外部に供給するガスハイドレートのガス化システムにおいて、
常圧系ガスハイドレート供給配管と高圧系ガスハイドレート供給配管とを順次繰り返し切り替えるロータリーバルブと、ガスハイドレートをガス化するガス化槽と、ガス化用の熱を供給する熱交換器と、前記ロータリーバルブに前記ガスハイドレートを供給するための常圧系ガスハイドレート供給配管と、前記ロータリーバルブと前記ガス化槽とを連結して前記ガスハイドレートを前記ガス化槽に移送するための高圧系ガスハイドレート供給配管と、前記ガス化槽と前記ロータリーバルブとを連結して、前記ガス化槽で分離した、循環水及びガスハイドレートの分解水を循環する高圧系循環水配管と、該高圧系循環水配管と前記高圧系ガスハイドレート供給配管とを連結する熱交換用配管とを備えて構成し、
前記ガス化槽に、外部に高圧のガスを供給するガス供給配管を、前記高圧系循環水配管に循環用ポンプを、前記熱交換用配管に前記熱交換器をそれぞれ設けたことを特徴とするガスハイドレートのガス化システム。
【請求項3】
前記ガスハイドレートの前記ロータリーバルブへの移動を制御する投入装置を前記常圧系ガスハイドレート供給配管に備えると共に、前記ロータリーバルブを前記常圧系ガスハイドレート供給配管に切り替えたときに、前記格納室内の水分である水を排出して一時的に貯留する水充填用タンク、及び前記格納室内への水充填を行う水充填用ポンプを含む常圧系給排水配管を備えたことを特徴とする請求項2に記載のガスハイドレートのガス化システム。
【請求項4】
前記ロータリーバルブを常圧系ガスハイドレート供給配管から前記高圧系ガスハイドレート供給配管に切り替える途中に前記格納室内に前記循環水で加圧するための加圧用配管を設けると共に、前記ロータリーバルブを前記高圧系ガスハイドレート供給配管から前記常圧系ガスハイドレート供給配管に切り替える途中に前記格納室内を減圧するための減圧用配管を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載のガスハイドレートのガス化システム。
【請求項5】
前記高圧系ガスハイドレート供給配管の一部又は全部を前記ガス化槽側が上になるように水平に対して10度から90度傾斜させて設けたことを特徴とする請求項2、3又は4に記載のガスハイドレートのガス化システム。
【請求項6】
前記常圧系ガスハイドレート供給配管に、凍結防止用加熱装置を設けたことを特徴とする請求項2、3、4又は5に記載のガスハイドレートのガス化システム。
【請求項7】
前記高圧系循環水配管に水量調整用タンクを備えると共に、前記水充填用タンク内の水を前記水量調整用タンクに圧入するための水圧入配管及び水圧入用ポンプを設けたことを特徴とする請求項2、3、4、5又は6に記載のガスハイドレートのガス化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−18752(P2010−18752A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182191(P2008−182191)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(000144049)株式会社三井造船昭島研究所 (27)
【Fターム(参考)】