説明

ガスハイドレート洗浄塔

【課題】ハイドレートに同伴する未反応海水を必要最小限の洗浄水で洗浄すると共に、洗浄を妨げることなく円滑に払い出すことができるガスハイドレート洗浄塔を提供する。
【解決手段】ハイドレートスラリー導入部22と、ハイドレートスラリー中の未反応海水を脱水する水切り部23と、ハイドレートに付着している未反応海水を稀釈すると共に洗浄後のハイドレートを系外に掻き出す洗浄掻取部24から成るガスハイドレート洗浄塔4である。洗浄掻取部24に回転式又はワイパー式のガスハイドレート掻取装置を設けると共に洗浄水噴射ノズルを設け、飽和域Eにおけるハイドレートの空隙率をε、洗浄塔の断面積をA、ハイドレート堆積層の上昇速度をU、不飽和域Fにおけるハイドレートの飽和度をSとした時に、洗浄水噴射ノズルから噴射する洗浄水の水量Qが次式(1)を満たすようする。Q=1.1ε・A・U・S ・・・・ (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスハイドレートスラリーを導入する導入部と、該導入部の上方にあってガスハイドレートスラリー中の未反応海水を重力を利用して脱水する水切り部と、該水切り部の上方にあってガスハイドレートに付着している未反応海水を稀釈すると共に、洗浄されたガスハイドレートを系外に掻き出す洗浄掻取部から成るガスハイドレート洗浄塔に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、他の化石燃料に比較して二酸化炭素(CO2 )の発生量が少ないので、21世紀の中心的なエネルギーとして需要の拡大が予想されている。現在、天然ガスの海上輸送システムは、液化天然ガス方式(LNG方式)が主流である。しかし、LNG方式を適用できる大規模な天然ガス田は、希少、かつ、偏在しており、今後予想される天然ガスの需要拡大及び安定供給への対応のため、LNG方式を補完する実用的、かつ、経済的な天然ガスの新しい輸送システムの出現が期待されている。
【0003】
天然ガスの新しい輸送方式として、天然ガスをハイドレート化して輸送する方式が注目されている。天然ガスハイドレート(NGH)の輸送方式において想定されている産ガス地は、東南アジア、オセアニアの小規模ガス田であり、それらのほとんどが海上ガス田であるため、NGH輸送システムにおいては、ガス田の真上の海面にFPSO(浮体式生産貯蔵荷上設備)を設置し、天然ガスを洋上で、直接、ハイドレート化して積み出す方法が合理的である。
【0004】
海水からガスハイドレートを製造する方法としては、逆浸透膜法等の海水淡水化装置を導入して原料水(海水)を淡水化してガスハイドレートを製造する方法と、海水淡水化装置を使用することなく、海水を直接原料水に用いてガスハイドレートを製造する方法の二通りの方法を挙げることができる。
【0005】
前者の場合は、海水淡水化装置の設備費、設置スペース、製造エネルギー等が余分に必要になる。他方、後者のように、海水を直接原料水に用いてガスハイドレートを製造すると、図6の□印に示すように、製造後のガスハイドレートに残留する塩分の影響によってガスハイドレートの分解が速まることが知られている(図6のだ円部、メタンハイドレートペレットでの比較。保存条件:大気圧下、−20℃。)。このため、製造直後のガスハイドレートから塩分を分離することが望まれている。
【0006】
ところで、冷凍法による海水淡水化技術としては、過去に多くの研究が行われており、水道水基準を満たす洗浄効果が得られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
しかし、ガスハイドレートを製造する場合には、ガスハイドレートに同伴するブライン量(未反応海水量)以上の洗浄水を散布すれば、ガスハイドレートに付着する洗浄水量が増加するため、洗浄水の損失量が増加すると共に、ガスハイドレートの付着水を除去する第2生成器の負担が増加すると言う問題がある。これとは逆に、ガスハイドレートに同伴するブライン量よりも少ない洗浄水量を散布した場合は、ガスハイドレートに同伴するブライン量の一部のみが置換され、十分な洗浄効果が得られないため、ガスハイドレートの分解を抑制することが難いと言う問題がある。
【0008】
また、非特許文献1では、洗浄塔上部に備えた結晶氷掻出装置について具体的に開示していないが、結晶氷掻出装置として、真水からガスハイドレートを製造する脱水塔に使用されているスクリュー軸を使用すると、スクリュー軸に阻害されて洗浄水を洗浄塔上面に均一に散布することが困難になる。
【非特許文献1】長島義悟、外2名、「冷凍法海水淡水化プロセスにおける氷分離洗浄塔試験」、三井造船技報、三井造船株式会社、昭和45年1月1日、第69号、p.22−27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、海水から直接ガスハイドレートを製造する際に、ガスハイドレートに同伴する未反応海水を必要最小限の洗浄水で洗浄するとともに、ガスハイドレートの洗浄を妨げることなく、円滑に払い出すことができるガスハイドレート洗浄塔を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明に係るガスハイドレート洗浄塔は、ガスハイドレートスラリーを導入する導入部と、該導入部の上方にあってガスハイドレートスラリー中の未反応海水を重力を利用して脱水する水切り部と、該水切り部の上方にあってガスハイドレートに付着している未反応海水を稀釈すると共に、洗浄されたガスハイドレートを系外に掻き出す洗浄掻取部から成るガスハイドレート洗浄塔において、前記洗浄掻取部に回転式又はワイパー式のガスハイドレート掻取装置を設けると共に洗浄水噴射ノズルを設け、ガスハイドレートと未反応海水によって構成された飽和域Eにおけるガスハイドレートの空隙率をε、洗浄塔の断面積をA、ガスハイドレート堆積層の上昇速度をU、飽和域の上方に位置して未反応海水を稀釈する不飽和域Fにおけるガスハイドレートの飽和度をSとした場合に、前記洗浄水噴射ノズルから噴射する洗浄水の水量Qが次式(1)を、
Q=1.1ε・A・U・S ・・・・ (1)
満たすようにしたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明に係るガスハイドレート洗浄塔は、請求項1において、洗浄掻取部を、塔体の頂部に設けた中空円筒状の掻取槽と、該掻取槽内に設けたガスハイドレート掻取装置と、前記掻取槽の天井に設けた洗浄水噴射ノズルにより形成することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明に係るガスハイドレート洗浄塔は、請求項2において、掻取槽の軸心に対して、その一方の側に塔体を有し、他の一方の側にハイドレート排出口を配したことを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明に係るガスハイドレート洗浄塔は、請求項1において、回転式のガスハイドレート掻取装置を、掻取槽の軸心に設けた垂直な回転軸と、該回転軸の側面に設けた片持ち式の短冊状のスクレーパーにより形成し、かつ、前記スクレーパーの下辺によって掻取槽の底面を払拭するようにしたことを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の発明に係るガスハイドレート洗浄塔は、請求項1において、ワイパー型のガスハイドレート掻取装置を、4点リンク式のスクレーパーの駆動装置により形成すると共に、前記スクレーパーの駆動装置を形成している2本の長尺のリンクの先端にピン止めした短尺のリンクにスクレーパーを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、請求項1に係る発明は、ガスハイドレートスラリーを導入する導入部と、該導入部の上方にあってガスハイドレートスラリー中の未反応海水を重力を利用して脱水する水切り部と、該水切り部の上方にあってガスハイドレートに付着している未反応海水を稀釈すると共に、洗浄されたガスハイドレートを系外に掻き出す洗浄掻取部から成るガスハイドレート洗浄塔において、前記洗浄掻取部に回転式又はワイパー式のガスハイドレート掻取装置を設けたので、洗浄水噴射ノズルから噴射される洗浄水を阻害することがなくなった。このため、洗浄水噴射ノズルから未反応の海水が付着しているガスハイドレートに対して洗浄水をムラなく供給することが可能となった。
【0016】
また、この発明は、ガスハイドレートと未反応海水によって構成された飽和域Eにおけるガスハイドレートの空隙率をε、洗浄塔の断面積をA、ガスハイドレート堆積層の上昇速度をU、飽和域の上方に位置して未反応海水を稀釈する不飽和域Fにおけるガスハイドレートの飽和度をSとした場合に、前記洗浄水噴射ノズルから噴射する洗浄水の水量Qが次式(1)を、
Q=1.1ε・A・U・S ・・・・ (1)
満たすようにしたので、洗浄水噴射ノズルから噴射される洗浄水の水量が必要最小限に制御することが可能となり、洗浄水の無駄を回避することが可能となった。
【0017】
請求項2に記載の発明は、洗浄掻取部を、塔体の頂部に設けた中空円筒状の掻取槽と、該掻取槽内に設けたガスハイドレート掻取装置と、前記掻取槽の天井に設けた洗浄水噴射ノズルにより形成したので、塔体の頂部に設けた洗浄掻取部をコンパクトな構造にすることが可能となった。
【0018】
請求項3に記載の発明は、掻取槽の軸心に対して、その一方の側に塔体を有し、他の一方の側にハイドレート排出口を配したので、塔体の頂部に設けた洗浄掻取部をコンパクトな構造にすることが可能となるほか、洗浄後のガスハイドレートを塔体からハイドレート排出口に円滑に移動させることが可能となった。
【0019】
請求項4に記載の発明は、回転式のガスハイドレート掻取装置を、掻取槽の軸心に設けた垂直な回転軸と、該回転軸の側面に設けた片持ち式の短冊状のスクレーパーにより形成し、かつ、前記スクレーパーの下辺によって掻取槽の底面を払拭するようにしたので、洗浄水噴射ノズルから噴射される洗浄水を邪魔することなく、洗浄後のガスハイドレートを塔体からハイドレート排出口に円滑に移動させることが可能となった。
【0020】
請求項5に記載の発明は、ワイパー型のガスハイドレート掻取装置を、4点リンク式のスクレーパーの駆動装置により形成すると共に、前記スクレーパーの駆動装置を形成している2本の長尺のリンクの先端にピン止めした短尺のリンクにスクレーパーを設けたので、洗浄水噴射ノズルから噴射される洗浄水を邪魔することなく、洗浄後のガスハイドレートを塔体からハイドレート排出口に円滑に移動させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明に係るガスハイドレート洗浄塔(以下、洗浄塔と称する。)4を含むガスハイドレート製造装置100は、海上ガス田の近傍に係留したバージ(図示せず)上に設置され、海上ガス田から採取した天然ガスaと、付近の海から汲み上げた海水bを原料にしてガスハイドレートを製造するようになっている。
【0023】
このガスハイドレート製造装置100は、揚水ポンプ1と、融解槽2と、第1生成器3と、洗浄塔4を備え、揚水ポンプ1によって汲み上げた海水bと、海上ガス田から採取した天然ガスaを第1生成器3に供給して天然ガスハイドレート(以下、ガスハイドレートと称する。)を生成するようになっている。この第1生成器3は、攪拌バブリング方式を採用しており、天然ガスを微細な気泡にして噴出するノズル(図示せず)と、海水を攪拌する攪拌機(図示せず)を備えている。
【0024】
第1生成器3内で製造されたガスハイドレートと未反応の海水が混合しているガスハイドレートスラリーdは、スラリーポンプ5によって洗浄塔4の底部に供給されるが、その一部は、スラリー供給管6から分岐した分岐管7によって第1生成器3に戻される。その際、分岐管7に設けた冷却器8によってガスハイドレート生成熱を除去するようになっている。
【0025】
洗浄塔4は、有底筒状の縦型の塔体21と、塔体21の底部に設けたガスハイドレートスラリー導入部22と、塔体21の側面に設けた水切り部23と、塔体21の頂部に設けた洗浄掻取部24により形成され、洗浄掻取部24から排出されたガスハイドレートe’は、第1ガスハイドレート排出管25を経て図示しない第2生成器に供給される。その際、ガスハイドレートe’の一部を第2ガスハイドレート排出管26を経て融解槽2に供給するようになっている。融解槽2に供給されたガスハイドレートe’は、揚水ポンプ1によって汲み上げられた海水bとの熱交換により天然ガスaと水cに分解される。この水cは、海水に比べ塩分濃度が低いため、洗浄水として洗浄掻取部24に供給され、天然ガスaは、配管9を経て第1生成器3内のガス噴出ノズルに供給される。
【0026】
上記洗浄塔4は、図2に示すように、有底筒状の縦型の塔体21と、塔体21の底部に設けたガスハイドレートスラリー導入部22と、塔体21の側面に設けた水切り部23と、塔体21の頂部に設けた洗浄掻取部24により形成されている。
【0027】
上記水切り部23は、塔体31の側面にスクリーン27を有し、ガスハイドレートスラリー中の未反応海水のみを除去するようになっている。更に、塔体21の外側にスクリーン27を完全にカバーする中空状の排水ジャケット28を設けている。
【0028】
上記洗浄掻取部24は、図3に示すように、塔体21の頂部に設けられている。この洗浄掻取部24は、中空円筒状の掻取槽31と、掻取槽31内に設けたガスハイドレート掻取装置32と、掻取槽31の天井34に設けた洗浄水噴射ノズル33により形成されている。この洗浄水噴射ノズル33は、塔体21の真上に位置するように掻取槽31の天井34に設けられている。掻取槽31は、図4に示すように、塔体21よりも大径であり、掻取槽31の軸心Oに対して、その一方の側に塔体21を有し、他の一方の側にハイドレート排出口35を配している。
【0029】
ガスハイドレート掻取装置32は、掻取槽31の軸心Oに設けた垂直な回転軸36と、回転軸36の側面に設けた片持ち式の短冊状のスクレーパー(ヘラ)37により形成され、スクレーパー37の下辺38によって掻取槽31の底面39を払拭するようになっている。スクレーパー37は、図4に示すように、途中でくの字形又はへの字形に曲げられ、遠心力によってガスハイドレートが外側に移動せず、全てのガスハイドレートをガスハイドレート排出口35に供給できるようにする。この際、掻取槽31の底面39上にテフロン(登録商標)製の板40を敷設することが望ましい。また、回転軸36を回転させるモータ41は、防爆仕様とする。
【0030】
上記スクレーパー(ヘラ)37は、破線で示すように、ガスハイドレートが掻き取り可能な量になるまでガスハイドレートの上昇の障害にならないように、ガスハイドレート排出口35の近傍に位置させることが望ましい(図4参照。)。
【0031】
ガスハイドレート掻取装置としては、図5に示すように、ワイパー型を適用することができる。ワイパー型のガスハイドレート掻取装置32’は、スクレーパー37によって塔体上端を扇面状に払拭するようになっている。スクレーパー37の駆動装置51は、4点リンク式になっており、2本の長尺のリンク52,53の先端にピン止めした短尺のリンク54にスクレーパー37が取り付けられている。長尺のリンク52,53の基部は、既に説明した外筒55に枢支されている。そして、ラックピニオン式の駆動手段(図示せず)によって一方の長尺のリンク52を左右に揺動させるようになっている。符号56は、防爆型の駆動モーターである。
【0032】
図3に示すように、ハイドレート排出口35には、第1ガスハイドレート排出管25を接続させているが、この第1ガスハイドレート排出管25内に第1ガスハイドレート排出管25よりも小径の第2ガスハイドレート排出管26を挿入すると、ガスハイドレートを第1、第2のガスハイドレート排出管25,26に同時に供給することができる。更に、ワイパー型のガスハイドレート掻取装置32’を想定して、予め、塔体21に外側にガスハイドレート排出用の外筒55を設けておいてもよい。
【0033】
洗浄水噴射ノズル33から噴射する洗浄水量Qは、次式(1)により調整するようになっている。
Q=1.1ε・A・U・S ・・・・ (1)
ここで、
ε:洗浄部のガスハイドレートと未反応海水によって形成された飽和域Eにおける ガスハイドレートの空隙率
A:塔体の断面積(m2
U:水切り部の直下に集合したガスハイドレート堆積層(ベッド)の上昇速度(m /分)
S:飽和域の上方に位置して未反応海水を稀釈する不飽和域Fにおけるガスハイド レートの飽和度
である。
【0034】
上記洗浄水噴射ノズル33に洗浄水cを供給する水管10に流量制御弁11を設け、制御装置12によって制御するようになっている。この制御装置12には、予め、塔体21の断面積Aのみが入力されており、塔体21に設けた各種のセンサー(図示せず)から入力された計測値、即ち、飽和域におけるガスハイドレートの空隙率ε、ベッドの上昇速度U、不飽和域におけるガスハイドレートの飽和度Sによって上記制御弁11を制御するようになっている。
【0035】
なお、飽和域とは、ハイドレート粒子間の間隙に液が充満している部分を云う。
また、不飽和域とは、ハイドレート粒子間の間隙に液が充満していない部分を云う。
【0036】
他方、飽和域のハイドレートの空隙率εは、サンプリングしたハイドレートの重量(Wt)とサンプリングした体積(Vt)とハイドレート密度(ρh)から求める。
ε=1−Wt/(Vt・ρh) ・・・・・ (2)
【0037】
また、ベッドの上昇速度Uは、上部からハイドレートベッドが一定高さ上昇するのに要する時間を計測して求める。
【0038】
更に、不飽和域における飽和度Sは、空隙率(ε)とサンプリングしたハイドレートの重量(Wt)とサンプリングした体積(Vt)とハイドレート密度(ρh)と液密度(ρB)から求める。
S=Wt/(Vt・ρB・ε)−ρh/ρB・((1−ε)/ε) ・・・ (3)
【0039】
続いて、海水からガスハイドレートを、直接、製造する方法について説明する。
【0040】
図1に示すように、揚水ポンプ1によって汲み上げた海水bと、海上ガス田から採取した天然ガスaを第1生成器3に供給すると共に、第1生成器3内を所定の温度及び圧力に維持しなから攪拌機(図示せず)によって攪拌すると、第1生成器3内でガスハイドレートが生成する。
【0041】
第1生成器3内で製造されたガスハイドレートは、未反応の海水と混合してスラリー状になっているので、スラリーポンプ5によって洗浄塔4の底部のガスハイドレート導入部22に強制的に供給する。その際、ガスハイドレートスラリーdの一部は、スラリー供給管6から分岐した分岐管7によって第1生成器3に戻される。その際、分岐管7に設けた冷却器8によってガスハイドレート生成熱が除去される。
【0042】
洗浄塔4の底部に供給されたガスハイドレートスラリーdは、塔体21に沿って上昇する。そして、図2に示すように、水切り部23のスクリーン27から未反応の海水bのみが排水ジャケット28内に流出し、ガスハイドレートeが塔体21の上部に残る。ガスハイドレートeは、スクリーン27の下方にも蓄積され、多孔質体のベッドgを形成する。このベッドgは、ガスハイドレートスラリーdの連続供給のもと、ガスハイドレートeの浮力により上昇し続け、塔頂部から連続的に取り出せるようになる。
【0043】
塔頂部では、洗浄水噴射ノズル33から洗浄水cが散布され、上昇するガスハイドレートeに付着している未反応の海水と置換される。その際、洗浄水噴射ノズル33から散布する洗浄水cの洗浄水量Qは、上記(1)式によって制御される。つまり、制御装置12によって流量制御弁11を制御して必要最小限の洗浄水cが洗浄水噴射ノズル33から塔頂部のガスハイドレートeに対して噴射される。
【0044】
洗浄水cによって洗浄されたガスハイドレートe’は、図3及び図4に示す回転式のガスハイドレート掻取装置32のスクレーパー37によって掻き取られ、ガスハイドレート排出口25に供給される。ガスハイドレート排出口25に供給された清浄なガスハイドレートe’は、第1ガスハイドレート排出管25を通って図示しない第2生成器に供給される。ガスハイドレート排出口25に供給されたガスハイドレートe’の一部は、第2ガスハイドレート排出管26を通って融解槽2に供給される。融解槽2内のガスハイドレートe’は、海水bによって水cと天然ガスaに分解する。この水cは、海水と比べて塩分濃度が低いため、ポンプ13によって前記洗浄水噴射ノズル33に供給され、洗浄水として使用される。他方。天然ガスaは、配管14を経て第1生成器3に戻される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るガスハイドレート洗浄塔を含むガスハイドレート製造装置の概略構成図である。
【図2】ガスハイドレート洗浄塔の概略構成図である。
【図3】洗浄掻取部の断面図である。
【図4】図3のX−X断面図である。
【図5】ガスハイドレート掻取装置の第2の実施形態を示す平面図である。
【図6】ガスハイドレートの分解状況を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
4 ガスハイドレート洗浄塔
22 ハイドレートスラリー導入部
23 水切り部
24 洗浄掻取部
32 ガスハイドレート掻取装置
33 洗浄水噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレートスラリーを導入する導入部と、該導入部の上方にあってガスハイドレートスラリー中の未反応海水を重力を利用して脱水する水切り部と、該水切り部の上方にあってガスハイドレートに付着している未反応海水を稀釈すると共に、洗浄されたガスハイドレートを系外に掻き出す洗浄掻取部から成るガスハイドレート洗浄塔において、前記洗浄掻取部に回転式又はワイパー式のガスハイドレート掻取装置を設けると共に洗浄水噴射ノズルを設け、ガスハイドレートと未反応海水によって構成された飽和域Eにおけるガスハイドレートの空隙率をε、洗浄塔の断面積をA、ガスハイドレート堆積層の上昇速度をU、飽和域の上方に位置して未反応海水を稀釈する不飽和域Fにおけるガスハイドレートの飽和度をSとした場合に、前記洗浄水噴射ノズルから噴射する洗浄水の水量Qが次式(1)を、
Q=1.1ε・A・U・S ・・・・ (1)
満たすようにしたことを特徴とするガスハイドレート洗浄塔。
【請求項2】
洗浄掻取部を、塔体の頂部に設けた中空円筒状の掻取槽と、該掻取槽内に設けたガスハイドレート掻取装置と、前記掻取槽の天井に設けた洗浄水噴射ノズルにより形成することを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート洗浄塔。
【請求項3】
掻取槽の軸心に対して、その一方の側に塔体を有し、他の一方の側にハイドレート排出口を配したことを特徴とする請求項2記載のガスハイドレート洗浄塔。
【請求項4】
回転式のガスハイドレート掻取装置を、掻取槽の軸心に設けた垂直な回転軸と、該回転軸の側面に設けた片持ち式の短冊状のスクレーパーにより形成し、かつ、前記スクレーパーの下辺によって掻取槽の底面を払拭するようにしたことを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート洗浄塔。
【請求項5】
ワイパー型のガスハイドレート掻取装置を、4点リンク式のスクレーパーの駆動装置により形成すると共に、前記スクレーパーの駆動装置を形成している2本の長尺のリンクの先端にピン止めした短尺のリンクにスクレーパーを設けたことを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート洗浄塔。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−274129(P2008−274129A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119859(P2007−119859)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年〜平成18年度、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、海水を用いた天然ガスハイドレート(NGH)製造の委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000144049)株式会社三井造船昭島研究所 (27)
【Fターム(参考)】