説明

ガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置

【課題】 ガスハイドレート生成プラントにおける脱水装置の脱水器を安定して運転することができるようにする脱水装置の運転制御装置を提供する。
【解決手段】 脱水器10へGHスラリーSを供給する給送ポンプ2の吐出圧を圧力センサP6で測定し、給送管2aに熱交換器12を設け、脱水器10が安定した運転状態の圧力から変動があった場合に、熱交換器12でGHスラリーSを加温して一部を分解させて脱水器10に供給する。脱水器10の内筒10aには管状の熱媒体流路16を巻回して、温水等を流通させることができるようにし、脱水器10の異なる部分の圧力を圧力センサP1〜P5で測定し、前記熱媒体流路16を圧力センサPの位置に対応して分割して設ける。圧力の変動があった場合に、その変動が生じた部分の熱媒体流路16に温水等を流通させて、内筒10aの内部を加温してGHスラリーSの一部を分解させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、海底下等に存在している天然ガスを輸送や貯蔵等に適したガスハイドレートの状態に生成する天然ガスハイドレート生成プラントで生成された低濃度のガスハイドレートを脱水処理を行って、高濃度のガスハイドレートスラリーを生成する脱水装置の脱水器を安定して運転するためのガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シベリアやカナダ、アラスカ等の凍土地帯や大陸周辺部における水深500m以下の海底下には、主成分がメタンである天然ガスハイドレート(NGH)が存在している。このNGHは、メタン等のガス分子と水分子とから構成される低温高圧下で安定した水状固体物質あるいは包接水和物であり、二酸化炭素や大気汚染物質の排出量が少ないクリーンエネルギーとして着目されている。
【0003】
天然ガスは液化された後、貯蔵されてエネルギーとして利用されているが、その製造や貯蔵は−162℃の極低温において行われている。これに対して天然ガスハイドレートは、−20℃で分解せずに安定した性質を示し、固体として扱うことができる等の利点を備えている。このような性質から、世界中に存在している採算面等の理由から未開発の中小ガス田におけるガス資源を有効に利用することができる手段として、あるいは大ガス田からの近距離、小口輸送の場合等に天然ガスハイドレート方式(NGH方式)を活用できる。
【0004】
NGH方式では、中小ガス田等のNGH出荷基地において、輸送や貯蔵に適したNGHを生成し、輸送船や車両等によって所望のNGH受入基地まで輸送され、NGH受入基地では輸送されたNGHを貯蔵し、必要に応じてNGHガス化装置によってエネルギー源として利用することになる。図4は、前記NGH出荷基地に利用されるガスハイドレートの生成プラントの構成の一例を説明する概略のブロック図である。採掘された原料ガスは高圧反応容器である生成器1において水と十分に混合されてハイドレート化されて、低濃度のガスハイドレート(GH)スラリーが生成される。生成されたGHスラリーは給送ポンプ2によって脱水器3に供給され、脱水されて高濃度のGHスラリーを生成する。このとき、GHスラリーは、該脱水器3の最下部から脱水器3へ供給される。供給されたGHスラリーは脱水器3を徐々に上昇しながら脱水されて、脱水器3の上端部から取り出される。取り出されたガスハイドレートは、脱水されてパウダー状または含水率60%程度のスラリー状となったGHパウダーまたはGHスラリーとして取り出される。このガスハイドレートがペレット成型器4に供給されて造粒され、輸送や貯蔵等にとって適宜な大きさのGHペレットが形成される。次いで、常圧下においても分解しない温度まで冷却機5により冷却された後、脱圧装置6に供給される。すなわち、前記生成器1から冷却機5に至るまでは、常温高圧下において処理がなされ、冷却機5と脱圧装置6とにより、常圧下でも分解しない温度に処理される。その後、生成されたGHペレットは貯蔵槽に給送されて貯蔵される。
【0005】
図3は前記生成器1と脱水器3との処理工程を示しており、生成器1には原料ガスGと水Wとが生成器1の反応槽1aに供給される。供給された原料ガスGと水Wとが攪拌装置1bにより攪拌され、原料ガスGと水Wとが反応して低濃度GHが生成される。未反応の原料ガスGは反応槽1aの上部から回収されブロワ1cにより反応槽1aの底部から再び供給される。生成されたGHスラリーは未反応水と共に前記給送ポンプ2により脱水器3の底部に給送される。供給されたGHスラリーは脱水器3を上昇しながら未反応水が脱水処理されて、該脱水器3の上部からスクリュフィーダ等の給送装置3cにより次工程の前記ペレット成型器4に給送される。脱水器3は内筒3aと該内筒3aを収容する外筒3bとの二重構造とされており、GHスラリーは内筒3aに供給され、該GHスラリーからの脱水は外筒3b内に流出する。外筒3bに流出した流出水は回収ポンプ3dにより前記生成器1に返戻されて、原料ガスGとの反応に供される。
【0006】
例えば、特許文献1には、脱水されたGHスラリーを脱水器3から円滑に搬出するために、ガスハイドレートの付着水を重力脱水する縦型移動層式の脱水器を備えたガスハイドレート脱水装置であって、前記脱水器は略垂直に立設された第1の塔体と、前記第1の塔体の上部に接続し、複数の微細な貫通孔を有する水切り部と、前記水切り部を外囲する貯水部と、前記水切り部の上部に接続する第2の塔体とからなり、前記第1の塔体の底部から供給され前記脱水部を通過したガスハイドレートを上方へ搬送する搬送手段が設けられており、この搬送手段により脱水器の上部に配された搬出機へ脱水器内のガスハイドレートを搬送するものである。なお、搬出機と搬出手段には、スクリュコンベヤが用いられている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−224116
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記脱水器3では、供給されたGHスラリーが上昇するのにしたがって、水分が除去される。該脱水器3の最下部では未反応水とこの未反応水に随伴されたGHスラリーが混在しており、その上部に前記未反応水に対して浮遊したGHスラリーが滞留する駆動部が形成され、この駆動部の上部には内筒3aの壁面に多数の透孔が形成された排水部が存し、この多数の透孔から前記未反応水が外筒3bに流出する。この排水部を通過したGHスラリーは濃度が高くなった状態にあるが、未だ付着水を伴った状態にある。この随伴されている付着水は、GHスラリーを毛管現象による水の上昇限界よりも高位まで上昇させることにより除去される。このため、前記排水部の上部にはこの毛管現象による水の上昇限界以上の高さとなる脱水部が形成される。この場合に、重力を利用した、いわゆる重力方式による脱水処理では処理時間が長くなってしまうことから、加圧することにより水の上昇限界を低くする加圧方式による脱水処理が行われる脱水器がある。
【0009】
前記加圧方式による脱水器では、例えば、脱水器へのGHスラリーの供給が不安定となると、GHスラリーの脱水処理も不安定となる。前述したように、内筒3aの途中には排水部が設けられているが、この排水部は内筒3aの壁体に形成された多数の透孔によるものであることから、脱水器の壁面側のGHスラリーからの排水が促進されて、中央部のGHスラリーからの脱水は遅れることになる。特に、脱水処理が不安定となると、この排水部からの排水が継続されるにも拘わらず、脱水器の中央部のGHスラリーからの排水が滞るおそれがある。このため、脱水器の中央部にGHスラリーが滞留し、専ら壁面近くのGHスラリーからの排水が促進され、排水部の壁面の部分にGHスラリーが存しなくなってしまう。すなわち、排水部の透孔を介して内筒3aの内外部が連通してしまうことになる。この場合、特に、加圧方式による脱水器では加えられた圧力がこの排水部の透孔から抜けてしまうことになるから、さらに脱水処理の不安定さが加速されることになり、脱水器を停止しなければならなくなってしまう。
【0010】
ところで、脱水処理が安定して行われている場合には、GHスラリーが順次処理されていくことから、GHスラリーを脱水器に供給する給送ポンプの吐出圧はほぼ一定にある。他方、脱水部での脱水処理が安定せずにGHスラリーが滞留してしまうと、給送ポンプの負荷が大きくなって吐出圧が大きくなり、過剰な脱水処理がなされている場合には吐出圧が小さくなる。
【0011】
また、脱水器が安定した運転状態にある場合には、脱水器の各部においても、圧力の変動は生ぜず、ほぼ一定した圧力を維持するが、運転状態が不安定となると、脱水器の各部の圧力が変動することになる。
【0012】
そこで、この発明は、給水ポンプの吐出圧または脱水器の各部における圧力に着目して、脱水器における脱水処理を安定して行えるように脱水器を運転するガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、ガスハイドレートの製造過程で生成されたガスハイドレートスラリーから脱水するための円筒形の容器からなる脱水器の運転制御装置おいて、ガスハイドレートスラリーを脱水器へ供給する給送ポンプの吐出圧を測定する供給圧力検出手段を設け、前記供給圧力検出手段による検出結果に基づいて、脱水器に供給するガスハイドレートスラリーの供給量あるいは濃度のいずれか一方または双方を変更することを特徴としている。
【0014】
脱水器における脱水処理が不安定となって、GHスラリーが停滞して閉塞状態となると、前記給送ポンプへの負荷が大きくなり、吐出圧が大きくなる。このため、吐出圧を測定することにより脱水器の運転状態を把握することができる。この吐出圧の測定結果に応じて、GHスラリーの供給量を調整し、またはGHスラリーの濃度を調整する。例えば、GHスラリーが滞留して給送ポンプの吐出圧が上昇する場合には、GHスラリーの供給量を増加させて希釈されたGHスラリーを供給し、または供給するGHスラリーの濃度を低下させる。
【0015】
すなわち、脱水器における脱水処理によってGHスラリーの濃度が高められると、GHスラリーあるいはGHパウダーが圧密された状態となり、内筒の内壁面との間の摩擦力が増加して、GHスラリーまたはGHパウダーの上昇が阻害されて滞留してまう。このため、供給するGHスラリーの濃度を低下させるか、供給量を増加させて、GHスラリーの含水率を高め、前記摩擦力を減少させることにより、GHスラリーの滞留を解消するようにしたものである。なお、脱水処理が過剰な状態にある場合には、GHスラリーの供給量を減少させ、または、GHスラリーの濃度を高くする。
【0016】
また、請求項2の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記ガスハイドレートスラリーの供給量調整は、脱水器へのガスハイドレートスラリーを供給する給送ポンプの吐出量を変更することにより行うことを特徴としている。
【0017】
前記GHスラリーの供給量の調整を、GHスラリーを脱水器へ供給する給送ポンプの吐出量を調整することにより行うものである。脱水器における脱水処理が停滞した場合には、吐出量を増加させてGHスラリーの含水率を高める。脱水処理が過剰となった場合には吐出量を減少させて、含水率を低下させる。
【0018】
また、請求項3の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記ガスハイドレートスラリーの濃度調整は、ガスハイドレートの生成器における生成の条件を変更することにより行うことを特徴としている。
【0019】
ガスハイドレートの生成器における処理温度を低下させると過冷却度が大となり、ガスハイドレートの生成量が増大するため、濃度が高いガスハイドレートが生成され、処理温度を上昇させると生成量が減少して濃度の低いガスハイドレートが生成される。したがって、給送ポンプの吐出圧に応じて生成器の処理温度を変更すればよい。
【0020】
また、請求項4の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記排水部から流出した流出水を循環ポンプの入口側に導入し、該循環ポンプの吐出側を、前記脱水器にガスハイドレートスラリーを供給する給送ポンプの吐出側に接続して、前記流出水をガスハイドレートスラリーに混合して再度脱水器に供給し、この流出水の混合量を調整することにより、ガスハイドレートスラリーの供給量を調整することを特徴としている。
【0021】
脱水器においてGHスラリーに随伴した未反応水は排水部から流出するから、この流出水を給送ポンプの吐出側に返戻させて、循環させるようにしたものである。この流出水の量を調整することにより、脱水器へ供給されるGHスラリーの流量が調整されるから、給送ポンプの吐出圧に応じて該給送ポンプの吐出側への供給量を調整する。なお、前述した回収ポンプの吐出側の途中で給送ポンプ2の吐出側に接続することにより、脱水器へ供給する循環径路を構成することもできる。
【0022】
また、請求項5の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、ガスハイドレートの製造過程で生成されたガスハイドレートスラリーから脱水するための円筒形の容器からなる脱水器の運転制御装置おいて、ガスハイドレートスラリーを脱水器へ供給する給送ポンプの吐出圧を測定する供給圧力検出手段と、前記脱水器へ供給されるガスハイドレートスラリーの温度を変更するスラリー温度調整手段と、前記脱水器の内部温度を調整する脱水器温度調整手段とを有し、前記供給圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記スラリー温度調整手段あるいは脱水器温度調整手段のいずれか一方または双方によりガスハイドレートスラリーの状態を変更することを特徴としている。
【0023】
脱水器の脱水処理が停滞する場合は、GHスラリーが圧密されて内筒の内壁面との間の摩擦力が大きくなった場合である。このため、脱水器に供給されるGHスラリーの一部を分解させることにより、GHスラリーの流動性を高めるようにしたものである。GHスラリーは、所定温度以上となると分解するため、脱水器で脱水処理される際には所定の温度以下に冷却されている。このため、供給するGHスラリーに前記スラリー温度調整手段により加温して、一部のGHスラリーを分解させるものである。
【0024】
また、脱水器に供給されたGHスラリーを、前記脱水器温度調整手段により加温することにより分解させてGHスラリーの流動性を高めたものである。
【0025】
また、請求項6の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置は、前記脱水器の異なる位置に脱水器圧力検出手段を設け、前記脱水器温度調整手段を脱水器の異なる部分に、それぞれの部分で各別に作動可能に設け、前記脱水器圧力検出手段により検出された結果に基づいて、圧力変動が生じた部分に対応した前記脱水器温度調整手段を作動させて脱水器の内部温度を調整することを特徴としている。
【0026】
前記脱水器温度調整手段を脱水器の異なる部分に配設して、該当する部分に存したGHスラリーを分解することにより、最小限のGHスラリーを分解して流動性を確保しようとするものである。分解させるべきGHスラリーが存している箇所は、脱水器の異なる位置に設けた前記脱水器圧力検出手段により検出された圧力の変動により把握する。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置によれば、脱水器にGHスラリーを供給するための給送ポンプの吐出圧を測定することにより、脱水器における運転状態の変動を検出することができる。この検出結果に基づいて、GHスラリーの供給量や濃度を調整することにより、脱水器の運転状態を安定させることができる。
【0028】
また、請求項5の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置によれば、脱水器へ供給するGHスラリーの一部あるいは、脱水器内のGHスラリーの一部を分解させることにより、内筒壁面のハイドレートの付着が解除され、GHスラリーの流動性が高められて、停滞したGHスラリーを上昇させることができる。このため、脱水器の脱水処理を継続させることができ、脱水器の連続処理を円滑に行わせることができる。
【0029】
また、前記脱水器温度調整手段により脱水器内のGHスラリーが一部分解されて流動性が高められるから、脱水器の連続運転を円滑に行うことができる。
【0030】
また、請求項6の発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置によれば、複数の圧力検出手段によりGHスラリーが滞留して閉塞している部分を迅速に把握することができると共に、閉塞している部分のGHスラリーを分解させることができるから、脱水器の脱水処理の効率を低下させることが殆どなく、連続運転を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置を具体的に説明する。
【0032】
図1はこの発明に係る運転制御装置を備えた脱水器10と、該脱水器10に供給する低濃度のGHスラリーを生成する前記生成器1とによる工程を説明する図である。生成器1で生成されたGHスラリーは給送ポンプ2により給送管2aを通って脱水器10へ供給されるようにしてある。この給送管2aの途中にはスラリー温度調整手段としての熱交換器12が設けられており、給送管2aを流通するGHスラリーはこの熱交換器12を通過することにより、該熱交換器12に供給される熱媒体との間で熱交換が行われる。
【0033】
前記脱水器10は、内筒10aが外筒10bに収容された二重構造としてある。この脱水器10における脱水処理は、GHスラリーが分解しない高圧下で行われる必要があり、内筒10aは後述するように排水部で開放されているため、二重構造とした場合には内筒10aには耐圧性は要求されず、外筒10bが圧力容器とされている。前記給送管2aは内筒10aの底部に接続されており、GHスラリーは該内筒10aの底部に供給される。なお、排水部を囲う状態で部分的に外筒を設けて、内筒10aを圧力容器とする構造とすることもできる。
【0034】
図2は脱水器10の構造の概略を説明する図であり、供給されたGHスラリーSの脱水器10内における状態を併記してある。脱水器10に供給されたGHスラリーSは内筒10a内を上昇することになり、排水部11bに至る。この排水部11bは、内筒10aの壁体に多数の透孔が形成された部分であり、GHスラリーSが随伴されていた未反応水が該排水部11bから内筒10aの外部に排出されることになる。内筒10aは外筒10bに収容されているから、排水部11bから流出した未反応水は外筒10bに流入することになる。外筒10bの底部には回収管13aを介して循環ポンプ13が接続されており、この循環ポンプ13の吐出管13bは循環弁14を介して前記給送管2aに接続されている。前記排水部11bから外筒10bに流出した流出水は、この循環ポンプ13によって給送管2aを介して内筒10aに供給されることになる。なお、図3において、想像線で示すように、回収ポンプ3dの吐出側を分岐させて給送ポンプ2の吐出側に循環弁14を介して接続させても構わない。
【0035】
前記排水部11bで未反応水が排出されるから、排水部11bに臨む部分にはGHスラリーSが滞留することになり、他方、下方から順次GHスラリーSが供給されているから、この滞留したGHスラリーSは密度が高くなり団塊Bとなって下方に延びることになる。しかも、排水部11bが壁体に形成されているため、排水部11bの近傍のGHスラリーSは上昇が促進され、内筒10aの中心部近傍のGHスラリーSは滞留した団塊Bが大きくなる。このため、図1及び図2に示すように、GHスラリーSの団塊Bは下に凸となった円錐形に近似した外形となる。この団塊Bが存している部分が駆動部11aとなり、この下方にはガスハイドレートが多量の未反応水に分散している状態のGHスラリーSが流入・上昇している準備部11dが形成される。また、前記排水部11bの上方には、未反応水が除去されたGHスラリーSで形成された層による脱水部11cが形成される。この脱水部11cでは、上昇したGHスラリーSに随伴した付着水が毛管現象の上昇限界により付着水がGHスラリーSから分離されて除去されて、濃度が高められてGHスラリーSまたはGHパウダーが生成される。すなわち、脱水器10内では、上部に向かってGHスラリーSの濃度が徐々に高くなる。
【0036】
前記準備部11dと駆動部11a、排水部11b、脱水部11cのそれぞれと、内筒10aの最上部近傍及び脱水器10の最上部近傍には、ぞれぞれ脱水器圧力検出手段としての圧力センサP0、P1、P2、P3、P4、P5が配されており、それぞれ部分における圧力が検出されるようにしてある。また、前記給送ポンプ2の吐出圧を検出する供給圧力検出手段としての圧力センサP6が配されている。また、内筒10aの外周面には脱水器温度調整手段としての管状の熱媒体流路16が巻回されて設けられている。この、熱媒体流路16は適宜間隔に螺旋状に巻回されると共に、前記圧力センサP1、P2、P3、P4、P5に対応する部分毎に分割されて、それぞれの部分に各別に熱媒体を流通させることができるようにしてある。すなわち、図1及び図2に示すように、圧力センサP1に対応して熱媒体流路16aが、圧力センサP2に対応して熱媒体流路16bが、圧力センサP3に対応して熱媒体流路16cが、圧力センサP4に対応して熱媒体流路16dが、圧力センサP5に対応して熱媒体流路16eがそれぞれ各別に設けられている。なお、これら熱媒体には適宜な温度の温水等を用いることができる。
【0037】
また、給送管2aの脱水器10への入口部分のGHスラリーと脱水器10の外筒10b内に回収されたGHスラリー、脱水処理が行われたGHスラリーの温度を測定するための温度センサ17がそれぞれの部分に対応して配されている。なお、必要に応じて他の部分に温度センサを配しても構わない。
【0038】
以上により構成されたこの発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置の作用を、以下に説明する。
【0039】
前記圧力センサP6により給送ポンプ2の吐出圧が測定されており、脱水器10が安定した運転状態にある場合には、吐出圧はほぼ一定となって大きな変動がない。脱水器10が安定した運転状態にある場合には、供給されたGHスラリーSは準備部11dから駆動部11a、排水部11bへ徐々に上昇し、GHスラリーSに随伴した未反応水が排水部11bから外筒10bへ流出する。未反応水が除去されたGHスラリーSは前記脱水部11cを上昇しながらGHスラリーSに付着した未反応水が除去されて高濃度のGHスラリーSあるいはGHパウダーが生成される。他方、脱水部11cではGHスラリーSの濃度が高くなるため、圧密された状態となり、内筒10aとの間の摩擦力が大きくなる。このため、GHスラリーSが閉塞状態となり、供給されたGHスラリーSの上昇が阻害される場合がある。この状態となると、脱水器10の内圧が大きくなり、給送ポンプ2の負荷が増大する。このため、該給送ポンプ2の吐出圧が大きくなる。
【0040】
給送ポンプ2の吐出圧が大きくなった場合には、脱水器10へ供給するGHスラリーSの供給量を増加させる。または、供給するGHスラリーSの濃度を低くする。GHスラリーSの供給量を増加させるには、給送ポンプ2の吐出量を増加させる。これにより、脱水器10へ供給されるGHスラリーSに付随する未反応水が増加して、GHスラリーSの流動性が大きくなる。このため、圧密していたGHスラリーSが流動することになり、閉塞状態が解除されることになる。また、GHスラリーSの濃度を低くすることによっても、脱水器10における脱水処理の負荷が軽減されるから、GHスラリーSの流動性が大きくなって閉塞状態が解除されることになる。なお、GHスラリーSの濃度の変更は、前工程の生成器1における生成条件を変更することによる。すなわち、生成器1では、原料ガスと反応用の冷却水とを混合させて攪拌することによる。このとき、冷却水の温度を低下させると原料ガスと冷却水との反応が促進されて生成されるGHスラリーSの濃度が高くなり、冷却水の温度を上昇させるとGHスラリーSの濃度が低くなる。あるいは、原料ガスの供給量や冷却水の供給量を変更することによってもGHスラリーSの濃度を調整することができる。
【0041】
他方、脱水器10における脱水処理が過剰な状態となった場合には、GHスラリーSの供給量を減少させ、またはGHスラリーSの濃度を高くすることにより調整することができる。
【0042】
さらに、前記循環ポンプ13を経由する回収された水の前記給送管2aへの供給量を調整することによりGHスラリーSの脱水器への供給量を調整することもできる。すなわち、脱水器10においてGHスラリーSの閉塞が発生した場合には給送管2aへの供給量を増加させて、GHスラリーSを流出水により希釈して供給量を増加させ、脱水処理が過剰となった場合には給送管2aへの流出水の供給量を減じて、GHスラリーSを希釈することなく脱水器10に供給するようにする。なお、この流出水の給送管2aの供給量は、前記循環弁14の開度を調整することにより行うことができる。
【0043】
また、脱水器10に供給するGHスラリーSを分解温度まで加温して供給することにより、GHスラリーSの流動性を高めて、脱水器10の閉塞状態を解除することもできる。すなわち、前記熱交換器12に熱媒体を流通させて、給送管2aを流通するGHスラリーSを分解温度まで加温する。これにより、内筒壁面でガスハイドレートの生成反応が起きなくなり、内壁への付着が防止される。また、脱水器10に供給されるGHスラリーSの一部が分解されて希釈された状態となって流動性が高められる。したがって、脱水器10における閉塞状態が解除される。
【0044】
また、前記圧力センサP0、P1、P2、P3、P4、P5による測定結果により、圧力が大きくなった圧力センサPが配された部分でGHスラリーSの閉塞状態が生じていることを把握できる。この場合には、前記熱媒体流路16のうちの、大きな圧力を測定した圧力センサPが配された部分に対応した位置に設けた熱媒体流路16に温水等の熱媒体を流通させる。これにより、当該部分の脱水器10の内部が加温されて、閉塞の原因となっているGHスラリーSを分解して流動性を生じさせる。これにより、脱水器10内のGHスラリーSの上昇が円滑に行われて、脱水器10の脱水処理を継続させることができる。しかも、閉塞が生じた部分のGHスラリーSを分解するため、迅速に閉塞状態を解除できると共に、脱水効率の低下は最小限ですむ。
【0045】
以上に説明した実施形態では、脱水器温度調整手段として熱媒体流路16を内筒10aに螺旋状に巻回した構造について説明したが、熱媒体流路16に限らない。例えば、内筒10aに向けて温水を噴射するシャワーノズル等を設けて、温水を内筒10aに吹き付けるようにすることもできる。この場合には、前記圧力センサPと対応させて複数箇所にシャワーノズルを配してあれば、圧力センサPのうちの大きな圧力を検出した圧力センサPに対応した部分のシャワーノズルから温水を噴射して該当部分のGHスラリーSを分解することができる。また、内筒10aと外筒10bとの間の気相部分の温度を調整することによるものであっても構わない。この構造では、圧力センサPのいずれかが大きな圧力を検出した場合に、気相部分に温風等を供給することにより内筒10aを加温することになる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置によれば、脱水器の運転状態を安定させることができることから、ガスハイドレート生成プラントの連続運転を支障なく行うことに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明に係るガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置の構成を説明する図であり、ガスハイドレート生成プラントの生成器と脱水器とによる工程を示している。
【図2】この発明に係る運転制御装置により運転制御される脱水器の概略の構造を説明する断面図である。
【図3】生成器におけるガスハイドレートの生成処理と、脱水器における脱水処理とを説明する概略のブロック図である。
【図4】ガスハイドレート生成プラントの構成の一例を説明する概略のブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
1 生成器
2 給送ポンプ
2a 給送管
3c 給送装置
3d 回収ポンプ
10 脱水器
10a 内筒
10b 外筒
11a 駆動部
11b 排水部
11c 脱水部
11d 準備部
12 熱交換器
13 循環ポンプ
13a 回収管
13b 吐出管
14 循環弁
16 熱媒体流路
B 団塊
S GHスラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレートの製造過程で生成されたガスハイドレートスラリーから脱水するための円筒形の容器からなる脱水器の運転制御装置おいて、
ガスハイドレートスラリーを脱水器へ供給する給送ポンプの吐出圧を測定する供給圧力検出手段を設け、
前記供給圧力検出手段による検出結果に基づいて、脱水器に供給するガスハイドレートスラリーの供給量あるいは濃度のいずれか一方または双方を変更することを特徴とするガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項2】
前記ガスハイドレートスラリーの供給量調整は、脱水器へのガスハイドレートスラリーを供給する給送ポンプの吐出量を変更することにより行うことを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項3】
前記ガスハイドレートスラリーの濃度調整は、ガスハイドレートの生成器における生成の条件を変更することにより行うことを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項4】
前記排水部から流出した流出水を循環ポンプの入口側に導入し、該循環ポンプの吐出側を、前記脱水器にガスハイドレートスラリーを供給する給送ポンプの吐出側に接続して、前記流出水をガスハイドレートスラリーに混合して再度脱水器に供給し、この流出水の混合量を調整することにより、ガスハイドレートスラリーの供給量を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項5】
ガスハイドレートの製造過程で生成されたガスハイドレートスラリーから脱水するための円筒形の容器からなる脱水器の運転制御装置おいて、
ガスハイドレートスラリーを脱水器へ供給する給送ポンプの吐出圧を測定する供給圧力検出手段と、
前記脱水器へ供給されるガスハイドレートスラリーの温度を変更するスラリー温度調整手段と、
前記脱水器の内部温度を調整する脱水器温度調整手段とを有し、
前記供給圧力検出手段の検出結果に基づいて、前記スラリー温度調整手段あるいは脱水器温度調整手段のいずれか一方または双方によりガスハイドレートスラリーの状態を変更することを特徴とするガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。
【請求項6】
前記脱水器の異なる位置に脱水器圧力検出手段を設け、
前記脱水器温度調整手段を脱水器の異なる部分に、それぞれの部分で各別に作動可能に設け、
前記脱水器圧力検出手段により検出された結果に基づいて、圧力変動が生じた部分に対応した前記脱水器温度調整手段を作動させて脱水器の内部温度を調整することを特徴とする請求項5に記載のガスハイドレート生成プラントにおける脱水器の運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−235334(P2009−235334A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86604(P2008−86604)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】