説明

ガスバリア性ゴム組成物

【課題】
本発明の課題は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムとブチルゴムとをヒドロシリコン架橋して得られ、耐熱性、耐圧縮永久歪や耐熱老化性に優れ、ゴム組成物として良好な硬さを有し、特に、ガスバリア性および機械強度に優れるゴム組成物を提供することである。
【解決手段】
特定のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴム(A)、特定のブチルゴム(B)、ヒドロシリル基含有化合物(C)、ヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)、および反応抑制剤(E)からなる配合物をヒドロシリコン架橋したゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性および機械強度に優れるゴム組成物に関する。より詳しくは、ブチルゴムとエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムとからなり、ヒドロシリコン架橋により得られ、耐熱性、耐圧縮永久歪や耐熱老化性優れ、ゴム組成物として良好な硬さを有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルゴムは、気体透過率が低いためガスバリア性に優れ(非特許文献1)、パッキン、ガスケット等のシール部品に広く応用されている。しかしながら、ブチルゴムは、通常、イソブテンとイソプレンとの共重合体であり、耐熱老化性に問題があった。
【0003】
一方、エチレン・プロピレン・非共役ポリエンランダム重合体よりなるゴムは、耐熱性、耐圧縮永久歪、耐熱老化性、および機械強度に優れ、様々な分野で使用されている。しかしながら、該共重合体ゴムは、気体透過率が高くガスバリア性に劣る。
【0004】
そのため、両者の優れた特性を共に有するゴム組成物の開発が望まれていた。この課題を解決するため、特開2005−206703号公報(特許文献1)には、ブチルゴムとエチレン・プロピレン・非共役ポリエンランダム重合体ゴムとのブレンド物が開示されている。しかしながら、架橋方法が過酸化物架橋によるものであり、ブチルゴムの劣化を招くため、それらのブレンドによるゴム組成物は、機械強度、特に、ゴム組成物の特性である伸びが不十分であった。また、ガスバリア性も未だ満足に至るものではなかった。
【特許文献1】特開2005年206703号公報
【非特許文献1】プラスチックス大辞典編集委員会編、「プラスチックス大辞典」、(株)工業調査会、1994年10月20日、110頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ガスバリア性および機械強度に優れるゴム組成物を提供することである。より詳しくは、ブチルゴムとエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムとからなり、ヒドロシリコン架橋により得られ、耐熱性、耐圧縮永久歪や耐熱老化性優れ、ゴム組成物として良好な硬さを有するゴム組成物提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスバリア性ゴム組成物は、具体的には、以下の[1]により提供される。
[1] (1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと、下記一般式(I)または(II)で表わされる少なくとも一種の非共役ポリエンよりなり、以下の(イ)〜(ハ)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴム(A)、
(イ)エチレン/炭素数3〜20のα−オレフィンのモル比が60/40〜85/15、
(ロ)ヨウ素価が0.5〜30g/100g、
(ハ)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が0.3〜3.0dl/g、
(2)ブチルゴム(B)(ただし、不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーを第3成分として共重合化したブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムは除く)で、前記共重合体ゴム(A)と該ブチルゴム(B)との重量比(A)/(B)が85/15〜45/55であり、
(3)ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個以上持つヒドロシリル基含有化合物(C)が0.1〜100重量部(前記共重合(A)を100重量部とする。)
(4)ヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)が0.1〜100000重量ppm(前記共重合(A)を100重量部とする。)、および
(5)反応抑制剤(E)が0.0001〜50重量部(前記共重合(A)を100重量部とする。)からなる配合物をヒドロシリコン架橋して得られることを特徴とするゴム組成物。
【0007】
【化1】

(式中、nは0ないし10の整数であり、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0008】
【化2】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム組成物は、ブチルゴムとエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムとからなり、ヒドロシリコン架橋により得られ、耐熱性、耐圧縮永久歪や耐熱老化性優れ、ゴム組成物として良好な硬さを有し、ガスバリア性および機械強度に優れるゴム組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[共重合体ゴム(A)]
本発明のゴム組成物で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴム(A)(以下、共重合体(A)と略す)は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと、前記式(I)または(II)で表される少なくとも一種の末端ビニル基含有ノルボルネン化合物とのランダム共重合によって得られる。
【0011】
[α−オレフィン]
共重合体ゴム(A)の原料である炭素数3〜20のα−オレフィン具体的例としては、側鎖の無い直鎖の構造を有する、炭素数3のプロピレン、同4の1−ブテンからはじまり、同9の1−ノネンや同10の1−デセンを経て、同19の1−ノナデセン、同20の1−エイコセン、並びに側鎖を有する4−メチル−1−ペンテン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどがあげられる。これらのα−オレフィンは単独で、または2種以上組み合せて用いられる。これらの中では炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが好ましい。
【0012】
[非共役ポリエン]
共重合体ゴム(A)の原料である非共役ポリエンは、前記式(I)または(II)で表される末端ビニル基含有ノルボルネン化合物である。式(I)においてRは水素原子またはアルキル基であり、その具体例は、メチル基やエチル基からはじまりノニル基やデシル基に至る、n−、iso−、sec−などの異性体を含む炭素数1〜10、好ましくは1〜8のアルキル基であり、R水素原子またはアルキル基であり、その具体例は、メチル基からはじまりペンチル基に至る、n−、iso−、sec−などの異性体を含む炭素数1〜5、好ましくは1〜8の異性体を含むアルキル基であり、nは0〜10、好ましくは0〜8、特に好ましくは0〜3の整数、特に最も好ましくは0である。式(II)のRは水素原子またはアルキル基であり、その具体例は、前記式(I)のRと同様である。
【0013】
前記式(I)または(II)の具体例は、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−エチル−4−ペンテニル)、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセシル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネンなどあげられる。
【0014】
これらの中で、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネンが好ましく、特に好ましくは、5−メチレン−2−ノルボルネンと5−ビニル−2−ノルボルネンである。これらは1種単独でも2種以上を組み合せても使用可能である。
【0015】
本発明の目的を損なわない範囲で、上記の非共役ポリエンと共に使用可能な非共役ポリエンの具体例は、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどの鎖状非共役ジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの環状非共役ジエン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどのトリエン等があげられる。
【0016】
[共重合体ゴム(A)の特性]
本発明で用いる共重合体ゴム(A)は、下記(イ)〜(ハ)の特性を全て有している。
(イ)エチレン/炭素数3〜20のα−オレフィンのモル比が60/40〜85/15
(ロ)ヨウ素価が0.5〜30g/100g
(ハ)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が0.3〜3.0dl/g
[(イ)エチレン/α−オレフィンのモル比]
本発明で用いる共重合体ゴム(A)のエチレン/炭素数3〜20のα−オレフィンのモル比は、60/40〜85/15である。好ましくは65/35〜85/15、さらに好ましくは70/30〜80/20であるのが望ましい。該モル比が60/40未満では、架橋ゴム強度が低下し、また85/15を超えるとエチレン量が多くなり樹脂的になり耐寒性が悪化し、好ましくない。
【0017】
[(ロ)ヨウ素価]
本発明で用いる共重合体ゴム(A)のヨウ素価は、0.5〜30g/100gである。好ましくは0.8〜27g/100g、さらに好ましくは1〜25g/100g、特に好ましくは1〜23g/100gである。該ヨウ素価が0.5g/100g未満では架橋速度が遅くなり、30g/100gを超えると長鎖分岐が多く、加工性悪化を招くため、好ましくない。
【0018】
[(ハ)極限粘度[η]]
本発明で用いる共重合体ゴム(A)の極限粘度[η]は、0.3〜3.0dl/gである。好ましくは0.5〜2.8dl/g、さらに好ましくは0.7〜2.8dl/g、特に好ましくは1.0〜2.8dl/gである。該極限粘度が0.3dl/g未満では、粘度が低すぎて加工性悪化や強度不足となり、3.0dl/gを超えると粘度が高くなりすぎて加工性悪化を招くため、好ましくない。
【0019】
[共重合体ゴム(A)の製造]
本発明で用いる共重合体ゴム(A)は、上記原料であるエチレン、α−オレフィン、および非共役ポリエンを公知の方法によりランダム共重合化して製造される。
【0020】
具体的には、公知の可溶性バナジウム化合物またはハロゲン化バナジウム化合物と、公知の有機アルミニウム化合物とを主成分として含有する触媒を用いて、重合温度30〜60℃、好ましくは30〜50℃、重合圧力4〜12kgf/cm(ゲージ圧)、好ましくは5〜8kgf/cm(ゲージ圧)、非共役ポリエンとエチレンとの供給量のモル比(非共役ポリエン/エチレン)が0.01≦非共役ポリエン/エチレン≦0.2、好ましくは0.012≦非共役ポリエン/エチレン≦0.18を満たす条件で、またエチレン/炭素数3〜20のα−オレフィンのモル比が60/40〜85/15の範囲になるように、原料の供給量を調整して、製造される。重合は、炭化水素媒体中で行うのが好ましい。
【0021】
[共重合体ゴム(A)のグラフト変性]
本発明で用いる共重合体ゴム(A)は、極性モノマーによりグラフト変性されていても良い。変性に用いる極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどがあげられる。グラフト変性に使用する時の極性モノマーの量は、共重合体ゴム(A)100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の量である。変性方法は公知の方法が特に制限無く用いることができる。
【0022】
[ブチルゴム(B)]
本発明で用いるブチルゴム(B)は、不飽和結合を分子内に2個以上有する第3成分を用いて共重合したブチルゴム、およびハロゲン化したブチルゴムを含まない。そのようなブチルゴムを本発明で用いた場合、耐熱老化性悪化を招くため、好ましくない。ブチルゴム(B)は、IIRとも略称され、市販されているブチルゴムが本発明では特に制限なく使用できる。具体的にブチルゴム(B)は、イソプレンが数%のイソブチレンとの共重合体ゴムであり、その一般的グレードは、不飽和度が0.8〜2.2モル%、ム−ニ−粘度ML1+8(125℃)が45〜55、好ましくは48〜54の特性を有する。
【0023】
[ブレンド比]
共重合体ゴム(A)とブチルゴムとの重量比(A)/(B)は、85/15〜45/55、好ましくは80/20〜45/55、特に好ましくは75/25〜50/50である。両者の配合量が上記範囲にある場合、ガスバリア性、および強度特性に優れているほか、ブチルゴム(B)が本来有する特性が低下しない。下限範囲外の場合ガスバリア性が満足せず、上限範囲外では機械的強度、伸びが不足するため好ましくない。
【0024】
[ヒドロシリル基含有化合物(C)]
本発明で用いるヒドロシリル基含有化合物(C)は、共重合体ゴム(A)と反応して架橋剤として作用する。このヒドロシリル基含有化合物(C)は、従来から製造・市販されている、例えば、線状、環状、分岐状の各構造あるいは三次元網目状構造の樹脂状物など、その構造においていずれでも使用可能であるが、本発明で用いるヒドロシリル基含有化合物(C)は、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含んでいなければならない。
このようなヒドロシリル基含有化合物(C)は、通常、下記の一般組成式
SiO(4−b−c)/2
で表わされる化合物を使用することができる。
【0025】
上記一般組成式において、Rは、脂肪族不飽和結合を除く、炭素原子数1〜10、特に炭素原子数1〜8の置換または非置換の1価炭化水素基であり、このような1価炭化水素基としては、メチル基やエチル基からはじまりノニル基やデシル基に至る、n−、iso−、sec−などの異性体を含むアルキル基、フェニル基、ハロゲン置換のアルキル基例えばトリフロロプロピル基を例示することができる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。bは、1≦b<3、好ましくは0.6<b<2.2、特に好ましくは1.5≦b≦2であり、cは、1<c≦3、好ましくは1≦c<2であり、かつ、b+cは、0<b+c≦3、好ましくは1.5<b+c≦2.7である。
【0026】
ヒドロシリル基含有化合物(C)は、1分子中のケイ素原子数が好ましくは2〜1000個、特に好ましくは2〜300個、最も好ましくは4〜200個のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、R(H)SiO1/2 単位とSiO4/2単位とからなり、任意にRSiO1/2 単位、RSiO2/2 単位、R(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2 またはRSiO3/2単位を含み得るシリコーンレジンなどを挙げることができる。
【0027】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
(CHSiO−(−SiH(CH)−O−)−Si(CH
[式中のdは2以上の整数である。]
【0028】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
(CHSiO−(−Si(CH−O−)−(−SiH(CH)−O−)−Si(CH
[式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。]
【0029】
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)−Si(CH
[式中のeは1以上の整数である。]
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CHO−(−SiH(CH)−O−)−Si(CH
[式中のeは1以上の整数である。]
【0030】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)−(−SiH(CH)−O−)−Si(CH
[式中のeおよびhは、それぞれ1以上の整数である。]
【0031】
以上のような化合物は、公知の方法により製造することができ、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となり得るヘキサメチルジシロキサンあるいは1,3−ジハイドロ−1,1,3,3− テトラメチルジシロキサンなどの、トリオルガノシリル基あるいはジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に、−10℃〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0032】
ヒドロシリル基含有化合物(C)は、共重合体ゴム(A)100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.1〜75重量部、より好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは0.2〜30重量部、さらにより好ましくは0.2〜20重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部の割合で用いられる。100重量部を超える割合でヒドロシリル基含有化合物(C)を用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。
【0033】
[ヒドロシリコン架橋用白金系触媒(D)]
本発明で用いるヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)は、付加反応触媒であり、前記共重合体ゴム(A)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(C)のヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば特に制限はなく使用することができる。
【0034】
具体的な白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などが挙げられる。より具体的には、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。
【0035】
ヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)は、前記共重合体ゴム(A)に対して、0.1〜100000重量ppm、好ましくは0.1〜10000重量ppm、さらに好ましくは1〜5000重量ppm、特に好ましくは5〜1000重量ppmの割合で用いられる。5重量ppm以下では架橋速度が遅くなり、また、100000重量ppmを超える割合で用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。上記範囲内の割合でヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)を用いると、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れる加硫ゴム成形体を形成できるゴム組成物が得られる。
【0036】
[反応抑制剤(E)]
本発明で用いる反応抑制剤(E)としては、ベンゾトリアゾール、エチニルシクロヘキサノールを代表例とするエチニル基含有アルコール、アクリロニトリル、N,N−ジアリルアセトアミド、N,N−ジアリルベンズアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−o−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−m−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−p−フタル酸ジアミドなどのアミド化合物、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、およびハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0037】
反応抑制剤(E)は、前記共重合体ゴム(A)100重量部に対して、0.0001〜50重量部用いる。好ましくは0.0001〜30重量部、より好ましくは0.0001〜20重量部、さらに好ましくは0.0001〜10重量部、特に好ましくは0.0001〜5重量部の割合で用いられる。0.0001重量部以下では架橋速度が速すぎるため、また、50重量部を超える割合で反応抑制剤(E)を用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。
【0038】
[その他の配合剤]
本発明のゴム組成物には、上記の必須の配合剤以外に、必要に応じて、補強剤、無機充填剤、軟化剤、老化防止剤(安定剤)、加工助剤、さらには発泡剤、発泡助剤、可塑剤、着色剤、他のゴム配合剤、ゴム、樹脂などを他の成分として配合することができる。それらの配合剤は、用途に応じて、その種類、含有量が適宜選択されるが、これらのうちでも特に補強剤、無機充填剤、軟化剤などを用いることが好ましい。
【0039】
本発明では、必要に応じて用いられる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用樹脂が挙げられる。また、本発明では、必要に応じて用いられるゴムとしては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(EPR)、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどをブレンドして用いることができる。また、上記共重合体(A)とは異なるが類似するゴム(EPT)、更には、上記共重合体(A)同士であっても、イ)エチレン/炭素数3〜20のα−オレフィンのモル比、(ロ)ヨウ素価、または(ハ)極限粘度[η]が異なる上記共重合体(A)同士を2種以上混合して用いることもできる。特に、(ハ)においては、低極限粘度成分と高極限粘度の混合が挙げられる。
【0040】
[ゴム組成物の製法]
本発明のゴム組成物は、必須成分である、前記共重合体ゴム(A)、ブチルゴム(B)、ヒドロシリル基含有化合物(C)、ヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)、および反応抑制剤(E)を用いて、公知の一般的なゴム配合物の調製方法によって調製することができる。具体的には、以下の通りである。
【0041】
バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、前記共重合体ゴム(A)およびブチルゴム(B)、ならびに他の成分を80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、ヒドロシリル基含有化合物(C)、ヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)、および反応抑制剤(E)ならびに他の配合剤や他のゴムや樹脂などを加えて、オープンロールなどのロール類あるいはニーダーを用いて、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状の配合物が得られる。その後、架橋を行ない、本発明のゴム組成物を得る。
【0042】
本発明のゴム組成物を得るには、上記の配合物を、通常押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機など種々の成形法によって所望形状に予備成形し、成形と同時にまた成形物を加硫槽内に導入し、加熱してヒドロシリコン架橋することにより得ることができる。加熱する方法としては、公知の方法が制限無く用いることができるが、特に、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の加熱槽を用いて、150〜270℃の温度で1〜30分間加熱することが好ましい。成形、加硫に際しては、金型を用いてもよく、また金型を用いないでもよい。金型を用いない場合は、ゴム組成物は通常連続的に成形、架橋される。
【0043】
[実施例]
以下、本発明の優れた効果を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例で行った評価の測定方法は次の通りである。
1)組成;共重合体の組成は13C−NMR法で測定した。
2)ヨウ素価;滴定法により求めた。
3)極限粘度[η];135℃、デカリン中で測定した。
4)引張特性;JIS K 6251に従って、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、ゴムシートの破断時の強度(TB)および伸び(EB)を測定した。
5)スプリング硬さ;JIS K6253に準拠し、スプリング硬さHA(Hs、JIS A硬度)を求めた。
6)気体透過性試験;東洋精機(株)製の差圧法ガス透過試験機を使用し、試験ガスに100%酸素を用いて、温度23℃、湿度0%にて測定した。
【0044】
[製造例1][共重合体ゴム(A−1)の製造]
攪拌羽根を備えた実質内容積100リットルのステンレス製重合器(攪拌回転数=250rpm)を用いて、連続的にエチレンとプロピレンと5−ビニル−2−ノルボルネンとの三元共重合を行なった。重合器側部より液相へ毎時ヘキサンを60リットル、エチレンを3.7kg、プロピレンを8.0kg、5−ビニル−2−ノルボルネンを480gの速度で、また、水素を50リットル、触媒としてVOClを48ミリモル、Al(Et)Clを240ミリモル、Al(Et)1.5 Cl1.5 を48ミリモルの速度で連続的に供給した。上記条件で共重合反応を行い、エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネンランダム共重合体(A−1)(以下、共重合体(A−1)と略す)が均一な溶液状態で得られた。
【0045】
その後、重合器下部から連続的に抜き出した重合溶液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にて重合体を溶媒から分離した後、55℃で48時間真空乾燥を行なった。得られたム共重合体(A−1)の製造条件と評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
[実施例1]
表2に示すように、製造例1で得られた共重合体ゴム(A−1)75gとブチルゴム(B)25gを容量1.7リットルのバンバリーミキサー(神戸製鋼所(株)製)で30秒間素練りし、ついでヒドロシリル基含有化合物(C)、酸化亜鉛、およびカーボンブラックを表2に示す所定量(単位;共重合体(A)とブチルゴム(B)との合計量を100重量部とした重量部)入れ、2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行い、さらに1分間混練を行い、約140℃で排出し、配合物を得た。この混練は該ミキサー容積に対して充填率70%で行った。
【0048】
得られた上記配合物を6インチロール(前ロールの表面温度60℃、後ロールの表面温度60℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、表2に示す所定量(単位;共重合体(A)とブチルゴム(B)との合計量を100重量部とした重量部)のヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)および反応抑制剤(E)を加えて4分間混練した後、シート状に分出しして180℃で10分間プレスし、厚み2mmのゴムシートを調製した。このゴムシートについて引張試験、硬さ試験、気体透過性試験を評価した。結果を表2に示す。
【0049】
[実施例2、および比較例1〜4]
実施例1における共重合体ゴム(A−1)とブチルゴム(B)を、表2に示す所定量に変えた以外は実施例1と同様に行なった。結果を表2に示す。
【0050】
[比較例5および6]
実施例1および2において、それらで用いている(C)、(D)、および(E)の代わりに、架橋剤ジクミルペルオキシド40%濃度品(化薬アクゾ社製、カヤクミルD−40C)6.8重量部(共重合体(A)とブチルゴム(B)との合計量を100重量部とした重量部)、架橋助剤トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製)1重量部(同上)を用いた以外は、実施例1および2と同様にそれぞれ行った。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のゴム組成物は、耐熱性、耐圧縮永久歪や耐熱老化性に優れ、ゴム組成物として良好な硬さを有し、ガスバリア性および機械強度に優れることから、ランプソケットなどのカバー材、振動部のカバー材、ラジエーターホース、燃料ホースなどの自動車工業部品、油圧ホースなどの工業用ゴム部品、コンデンサーパッキン、プリンターチューブなどの電気・電子部品、ゴム引布、ルーフィングシート、ガスホースなどの土木建築用品、断熱材やシーリング材等の用途に広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと、下記一般式(I)または(II)で表わされる少なくとも一種の非共役ポリエンよりなり、以下の(イ)〜(ハ)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴム(A)、
(イ)エチレン/炭素数3〜20のα−オレフィンのモル比が60/40〜85/15、
(ロ)ヨウ素価が0.5〜30g/100g、
(ハ)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が0.3〜3.0dl/g、
(2)ブチルゴム(B)(ただし、不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーを第3成分として共重合化したブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムは除く)で、前記共重合体ゴム(A)と該ブチルゴム(B)との重量比(A)/(B)が85/15〜45/55であり、
(3)ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個以上持つヒドロシリル基含有化合物(C)が0.1〜100重量部(前記共重合(A)を100重量部とする。以下同様。)
(4)ヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(D)が0.1〜100000重量ppm、および
(5)反応抑制剤(E)が0.0001〜50重量部からなる配合物をヒドロシリコン架橋して得られることを特徴とするゴム組成物。
【化1】

(式中、nは0ないし10の整数であり、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。)
【化2】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)

【公開番号】特開2007−246550(P2007−246550A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67556(P2006−67556)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】