説明

ガスバリア性シート、積層シートおよび素子封止体

【課題】
接着剤等を使用することなく、ガスバリア層を介して被着体に直接貼着できるガスバリア性シートと、このガスバリア性シートを複数枚貼合させて得られる積層シート、及び前記ガスバリア性シートを有する素子封止体を提供する。
【解決手段】
基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートであって、前記基材の、25℃におけるヤング率と厚みの積が、1.5×10N/m以下で、前記ガスバリア層の表面粗さRaが5nm以下であり、かつ、表面粗さRtが80nm以下であることを特徴とするガスバリア性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己接着性を有するガスバリア性シートと、それを積層してなる積層シート、及び前記ガスバリア性シートを用いる素子封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のディスプレイの基板として、ディスプレイの薄型化、軽量化、フレキシブル化を図るために、透明プラスチックフィルムを使用することが検討されている。
しかしながら、一般にプラスチックフィルムは、従来使用されているガラス基板に比べて水蒸気や酸素等を透過させるため、ディスプレイ内部の素子が劣化し易いという問題があった。
【0003】
この問題を解決する方法として、基材上にガスバリア層を設けたガスバリア性フィルムを複数枚用いることが提案されている。
例えば、特許文献1には、ガスバリア性フィルム同士をウレタン系接着剤組成物を用いて積層する技術が記載されている。
特許文献2には、ガスバリアフィルムを少なくとも2枚以上積層してなる太陽電池モジュール用表面保護シートが記載されている。
また、特許文献3には、2枚のガスバリアフィルムと、その間に設けられた接着剤層とを有する複合フィルムが記載されている。
【0004】
しかしながら、接着剤等を使用してガスバリア性フィルムを貼り合わせる場合、ガスバリア性フィルムのガスバリア層側に接着剤層を設けると、接着剤に含まれる反応性官能基によって、ガスバリア性が低下することがあった。
一方、ガスバリア性フィルムの基材側に接着剤層を設けると、ガスバリア層が最外層となるため、傷つきやすく、ガスバリア性が低下することがあった。
【0005】
一方、従来から、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、発光素子が酸素や水蒸気と接触することを防ぐために、ガラス基板上に、樹脂系の封止剤により封止された素子封止体が用いられている。例えば、特許文献4には、ガラス基板と、該ガラス基板上に載置された素子と、該素子を封止する保護ガラスとを含む素子封止体が記載されている。
このような素子封止体においても、ディスプレイの薄型化、軽量化、フレキシブル化の点から、ガラス基板に代えてガスバリア性フィルムを使用することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−285183号公報
【特許文献2】特開2007−173449号公報
【特許文献3】特開2011−51195号公報
【特許文献4】特開2011−29169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであって、接着剤等を使用することなく、ガスバリア層を介して被着体に直接貼着できるガスバリア性シート、このガスバリア性シートを複数枚貼合させて得られる積層シート、及び前記ガスバリア性シートを有する素子封止体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、基材のヤング率と厚みの積と、ガスバリア層の表面粗さとを規定することで、目的のガスバリア性シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(4)のガスバリア性シートが提供される。
(1)基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートであって、前記基材の、25℃におけるヤング率と厚みの積が、1.5×10N/m以下で、前記ガスバリア層の表面粗さRaが5nm以下であり、かつ、表面粗さRtが80nm以下であることを特徴とするガスバリア性シート。
(2)基材と、該基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に形成されたガスバリア層とを有する、(1)に記載のガスバリア性シート。
(3)積層シート形成用のシートである、(1)又は(2)に記載のガスバリア性シート。
(4)素子封止用のシートである、(1)又は(2)に記載のガスバリア性シート。
【0010】
本発明の第2によれば、下記(5)〜(9)の積層シートが提供される。
(5)少なくとも2枚のシートを積層して得られる積層シートであって、前記シートのうち少なくとも1枚が、(1)又は(2)に記載のガスバリア性シートであり、該ガスバリア性シートのガスバリア層と他のシートとが貼合されていることを特徴とする積層シート。
(6)前記他のシートが、(1)又は(2)に記載のガスバリア性シートであることを特徴とする(5)に記載の積層シート。
(7)基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートの少なくとも2枚を、ガスバリア性シートのガスバリア層同士で直接貼合させてなる積層構造を有する積層シートであって、前記ガスバリア性シートの少なくとも1枚が、(1)又は(2)に記載のガスバリア性シートであることを特徴とする積層シート



【0011】
(8)前記ガスバリア性シートのガスバリア層の、接着面積が100mm(10mm×10mm)のときのせん断接着力が、0.5N/100mm以上である、(5)〜(7)のいずれかに記載の積層シート。
(9)電子部材用のシートである、(5)〜(7)のいずれかに記載の積層シート。
【0012】
本発明の第3によれば、下記(10)の素子封止体が提供される。
(9)基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートの少なくとも2枚を、それらのガスバリア層同士で直接貼合させてなる積層構造と、素子が前記少なくとも2枚のガスバリア性シートで挟まれてなる封止構造を有する素子封止体であって、前記ガスバリア性シートのうち少なくとも1枚が、(1)又は(2)に記載のガスバリア性シートである素子封止体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガスバリア性シートは優れた自己接着性を有する。すなわち、本発明のガスバリア性シートのガスバリア層は他の層との接着性に優れる。従って、本発明のガスバリア性シートを用いることで、接着剤等を使用することなく、ガスバリア層を介して被着体に貼着することができる。
本発明の積層シートは、ガスバリア層の自己接着性によって貼合されたものであるため、接着剤等の影響によるガスバリア性の低下を避けることができる。また、ガスバリア層が最外層にならないため、ガスバリア層の傷つきによるガスバリア性の低下を避けることができる。
本発明の素子封止体は、封止剤や接着剤を使用することなく、ガスバリア性シートによって素子が封止されてなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のガスバリア性シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の積層シートの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の素子封止体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の素子封止体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、1)ガスバリア性シート、2)積層シート、及び、3)素子封止体、に項分けして詳細に説明する。
【0016】
1)ガスバリア性シート
本発明のガスバリア性シートは、基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートであって、前記基材の、25℃におけるヤング率と厚みの積が、1.5×10N/m以下で、前記ガスバリア層の表面粗さRaが5nm以下であり、かつ、表面粗さRtが80nm以下であることを特徴とする。
本明細書において「シート」には、短冊状のもののほか、長尺状(帯状)のものも含まれる。
【0017】
(基材)
本発明のガスバリア性シートは、基材として、25℃におけるヤング率と厚みの積が、1.5×10N/m以下のものを用いる。この値が、1.5×10N/mを超えると、基材の曲げ応力が大きいため、ガスバリア性シートの自己接着性が低下する。
下限値は適宜決定することができるが、上記値が小さすぎるとガスバリア層を担持しにくくなる。当該観点から、25℃におけるヤング率と厚みの積は、好ましくは0.3×10〜1.5×10N/mであり、より好ましくは0.4×10〜1.4×10N/mである。
【0018】
25℃におけるヤング率と厚みの積を上記範囲に容易に調節する観点から、用いる基材の25℃におけるヤング率は、通常2.0〜30.0GPa、好ましくは2.5〜5.0GPaである。
また、用いる基材の厚みは、通常5〜75μm、好ましくは10〜40μmである。
【0019】
基材の材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、透明性に優れ、汎用性があることから、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましい。
【0021】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
【0022】
シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。
【0023】
また、後述する特定の範囲の表面粗さRa(算術平均粗さ)、および表面粗さRt(最大断面高さ)を有するガスバリア層を得るという観点から、基材は表面平滑性に優れていることが好ましい。
基材のガスバリア層が形成される面側の表面粗さRaは、好ましくは1.0〜5.0nm、より好ましくは2.0〜4.5nmである。また、表面粗さRtは、好ましくは10〜80nm、より好ましくは20〜70nmである。
なお、表面粗さRa及びRtは、光干渉顕微鏡を用いて測定領域10000μm(100μm×100μm)について得られた値である。
【0024】
(ガスバリア層)
本発明のガスバリア性シートにおけるガスバリア層は、酸素や水蒸気の透過を抑制する特性(以下、「ガスバリア性」という)を有する層である。
本発明のガスバリア性シートにおけるガスバリア層の表面粗さRaは、5nm以下であり、かつ、表面粗さRtが80nm以下である。
表面粗さRa及びRtが、それぞれ上記の値以下であることで、ガスバリア層が表面平滑性に優れ、ガスバリア性及び自己接着性に優れるガスバリア性シートが得られる。当該観点から、表面粗さRaは、好ましくは、1.0〜5nm、より好ましくは2.0〜4.5nmである。また、表面粗さRtは、好ましくは、10〜80nm、より好ましくは20〜70nmである。
なお、上記表面粗さRa及びRtは、光干渉顕微鏡を用いて測定領域10000μm(100μm×100μm)について得られた値である。
【0025】
上記の表面粗さRa及びRtのガスバリア層を形成する方法としては、表面平滑性に優れる基材を用いる方法や、基材とガスバリア層の間にプライマー層を設ける方法等が挙げられる。
【0026】
ガスバリア層の厚みは、特に制限されないが、通常20nm〜50μm、好ましくは30nm〜1μm、より好ましくは40nm〜500nmである。
【0027】
ガスバリア層は、上記表面粗さを有する限り、その材質は特に限定されない。
例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等の金属;酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物;窒化珪素等の無機窒化物;無機炭化物;無機硫化物;これらの複合体である無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物;高分子化合物;等が挙げられる。
【0028】
ガスバリア層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、上述の材料を蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等により基材上に形成する方法や、上記材料を有機溶剤に溶解又は分散した溶液を、公知の塗布方法によって基材上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、目的のガスバリア層を容易に形成できることから、高分子化合物から構成される高分子層に、プラズマ処理がされて形成されるものが好ましい。高分子化合物から構成される高分子層は、プラズマ処理を施すことによって改質され、ガスバリア性が向上する。
【0030】
プラズマ処理としては、公知の方法を用いることができるが、ガスバリア性に優れるガスバリア層を形成できるという点から、イオンを注入する方法が好ましい。すなわち、ガスバリア層は、高分子化合物から構成される高分子層に、イオンが注入されて形成されるものが好ましい。
このようにしてガスバリア層を形成することにより、優れたガスバリア性が得られるという点に加えて、ガスバリア層の表面平滑性と、ガスバリア層そのものが基材の曲げ応力を適度に緩和することができることにより、自己接着性をより向上させることができる。
なお、この場合、「ガスバリア層」とは、イオン注入により改質された部分のみを意味するのではなく、「イオン注入により改質された部分を有する高分子層」を意味する。
【0031】
高分子層を構成する高分子化合物としては、例えば、ケイ素系高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体、及びこれらの高分子の二種以上の組合せ等が挙げられる。
【0032】
また、高分子化合物は、エネルギー線硬化性化合物の硬化物であってもよい。エネルギー線硬化性化合物としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートが多官能アクリレート等のエネルギー線重合性モノマー;ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートオリゴマー;等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0033】
これらの中でも、ガスバリア性に優れるガスバリア層をより容易に形成することができることから、ケイ素系高分子化合物、ポリエステル又はアクリル系樹脂が好ましく、ケイ素系高分子化合物がより好ましい。
【0034】
ケイ素系高分子化合物としては、ケイ素を含有する高分子であれば、有機化合物であっても無機化合物であってもよい。例えば、ポリオルガノシロキサン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリシラザン系化合物等が挙げられる。
【0035】
ポリオルガノシロキサン系化合物は、加水分解性官能基を有するシラン化合物を重縮合して得られる化合物である。
【0036】
ポリオルガノシロキサン系化合物の主鎖構造に制限はなく、直鎖状、ラダー状、籠状のいずれであってもよい。
例えば、前記直鎖状の主鎖構造としては下記式(a)で表される構造が、ラダー状の主鎖構造としては下記式(b)で表される構造が、籠状の主鎖構造としては、例えば下記式(c)で表される構造が、それぞれ挙げられる。
【0037】
【化1】

【0038】
【化2】

【0039】
【化3】

【0040】
式中、Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基等の非加水分解性基を表す。なお、式(a)の複数のRx、式(b)の複数のRy、及び式(c)の複数のRzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。ただし、前記式(a)のRxが2つとも水素原子であることはない。
【0041】
無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0042】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0043】
前記アルキル基及びアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0044】
無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
【0045】
前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0047】
ポリオルガノシロキサン系化合物としては、前記式(a)で表される直鎖状の化合物が好ましく、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有する層を形成できる観点から、前記式(a)において2つのRxがともにメチル基の化合物であるポリジメチルシロキサンがより好ましい。
【0048】
ポリオルガノシロキサン系化合物は、例えば、加水分解性官能基を有するシラン化合物を重縮合する、公知の製造方法により得ることができる。
【0049】
用いるシラン化合物は、目的とするポリオルガノシロキサン系化合物の構造に応じて適宜選択すればよい。好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等の2官能シラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の3官能シラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラs−ブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン等の4官能シラン化合物等が挙げられる。
【0050】
ポリカルボシラン系化合物は、分子内の主鎖に、(−Si−C−)結合を有する高分子化合物である。なかでも、本発明に用いるポリカルボシラン系化合物としては、下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0051】
【化4】

【0052】
式中、Rw、Rvは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は1価の複素環基を表す。複数のRw、Rvは、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
【0053】
Rw、Rvのアルキル基、アリール基、アルケニル基としては、前記Rx等として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0054】
1価の複素環基の複素環としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の環状化合物であれば特に制約はない。
1価の複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、2−ピラジル基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−(1,3,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基等が挙げられる。
【0055】
これらの基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0056】
Rは、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
Rのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0057】
アリーレン基としては、フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。
【0058】
2価の複素環基としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の複素環化合物から導かれる2価の基であれば特に制約はない。
【0059】
2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等のフランジイル基;2,5−セレノフェンジイル基等のセレノフェンジイル基;2,5−ピロールジイル基等のピロールジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基;2,5−チエノ[3,2−b]チオフェンジイル基、2,5−チエノ[2,3−b]チオフェンジイル基等のチエノチオフェンジイル基;2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基;2,6−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基等のベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。
【0060】
なお、Rのアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0061】
これらの中でも、式(1)において、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rがアルキレン基又はアリーレン基である繰り返し単位を含むものがより好ましく、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、Rがアルキレン基である繰り返し単位を含むものがさらに好ましい。
【0062】
式(d)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシラン系化合物の重量平均分子量は、通常400〜12,000である。
【0063】
ポリカルボシラン系化合物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。例えば、ポリシランの熱分解重合により製造する方法(特開昭51−126300号公報)、ポリ(ジメチルシラン)の熱転位により製造する方法(Journal of Materials Science,2569−2576,Vol.13,1978)、クロロメチルトリクロロシランのグリニャール反応によりポリカルボシラン系化合物を得る方法(Organometallics,1336−1344,Vol.10,1991)、ジシラシクロブタン類の開環重合により製造する方法(Journal of Organometallic Chemistry,1−10,Vol.521,1996)、ジメチルカルボシランとSiH基含有シランの構造単位を有する原料ポリマーに、塩基性触媒の存在下で水及び/又はアルコールを反応させることにより製造する方法(特開2006−117917号公報)、末端にトリメチルスズ等の有機金属基を有するカルボシランを、n−ブチルリチウム等の有機典型金属化合物を開始剤として重合反応させて製造する方法(特開2001−328991号公報)等が挙げられる。
【0064】
ポリシラン系化合物は、分子内に、(−Si−Si−)結合を有する高分子化合物である。かかるポリシラン系化合物としては、下記式(e)で表される構造単位から選択された少なくとも一種の繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0065】
【化5】

【0066】
式(e)中、Rq及びRrは、同一又は異なって、水素原子、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、シリル基、又はハロゲン原子を表す。
【0067】
Rq及びRrのアルキル基、アルケニル基、アリール基としては、前記Rx等で例示したのと同様のものが挙げられる。
【0068】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0069】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜10のシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
【0070】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜20のアリールオキシ基が挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェニルプロピルオキシ基等の炭素数7〜20のアラルキルオキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアミノ基としては、アミノ基;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基等で置換されたN−モノ又はN,N−ジ置換アミノ基等が挙げられる。
【0071】
シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等のSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)、置換シリル基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基等で置換された置換シリル基)等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0072】
前記シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリル基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0073】
これらの中でも、本発明のより優れた効果が得られることから、前記式(e)で表される繰り返し単位を含む化合物が好ましく、式(e)において、Rq、Rrが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基又はシリル基である繰り返し単位を含む化合物がより好ましく、式(e)において、Rq、Rrが、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基である繰り返し単位を含む化合物がさらに好ましい。
【0074】
ポリシラン系化合物の形態は特に制限されず、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等)や、環状ポリシラン等の単独重合体であっても、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシラン系化合物が非環状ポリシランである場合は、ポリシラン系化合物の末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
【0075】
ポリシラン系化合物の具体例としては、ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピルシラン)、ポリ(メチルブチルシラン)、ポリ(メチルペンチルシラン)、ポリ(ジブチルシラン)、ポリ(ジヘキシルシラン)等のポリジアルキルシラン、ポリ(ジフェニルシラン)等のポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニルシラン)等のポリ(アルキルアリールシラン)等のホモポリマー;ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体等のジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体、フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体等のコポリマ;等が挙げられる。
【0076】
なお、ポリシラン系化合物については、詳しくは、例えば、R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)等に記載されている。本発明においては、これらの文献に記載されるポリシラン系化合物を用いることができる。
【0077】
ポリシラン系化合物の平均重合度(例えば、数平均重合度)は、通常、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度である。
また、ポリシラン系化合物の重量平均分子量は、300〜100,000、好ましくは400〜50,000、さらに好ましくは500〜30,000程度である。
【0078】
ポリシラン系化合物の多くは公知物質であり、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報等)、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)等)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)等)、特定の重合用金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮合させる方法(特開平4−334551号公報等)、ビフェニル等で架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)等)、環状シラン類の開環重合による方法等が挙げられる。
【0079】
ポリシラザン系化合物としては、式(f)
【0080】
【化6】

【0081】
で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。
また、用いるポリシラザン系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。
【0082】
式(f)中、nは任意の自然数を表す。
Rm、Rp、Rtは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。
【0083】
前記アルキル基、アルケニル基、アリール基としては、前記Rx等で例示したのと同様のものが挙げられる。
シクロアルキル基としては、前記Rq等で例示したのと同様のものが挙げられる。
【0084】
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt−ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
【0085】
これらの中でも、Rm、Rp、Rtとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0086】
前記式(h)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン系化合物としては、Rm、Rp、Rtが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rm、Rp、Rtの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
無機ポリシラザンとしては、下記式
【0087】
【化7】

【0088】
で表される繰り返し単位を有する直鎖状構造を有し、690〜2000の分子量を持ち、一分子中に3〜10個のSiH基を有するペルヒドロポリシラザン(特公昭63−16325号公報)、式(A)
【0089】
【化8】

【0090】
〔式中、b、cは任意の自然数を表し、Yは、水素原子又は式(B)
【0091】
【化9】

【0092】
(式中、dは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Yは水素原子、又は前記(B)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕で表される繰り返し単位を有する、直鎖状構造と分岐構造を有するペルヒドロポリシラザン、式(C)
【0093】
【化10】

【0094】
で表されるペルヒドロポリシラザン構造を有する、分子内に、直鎖状構造、分岐構造及び環状構造を有するペルヒドロポリシラザン等が挙げられる。
【0095】
有機ポリシラザンとしては、
(i)−(Rm’SiHNH)−(Rm’は、Rmと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基を表す。以下のRm’も同様である。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(ii)−(Rm’SiHNRt’)−(Rt’は、Rtと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iii)−(Rm’Rp’SiNH)−(Rp’は、Rpと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基アルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iv)下記式で表される構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザン、
【0096】
【化11】

【0097】
(v)下記式
【0098】
【化12】

【0099】
〔Rm’、Rp’は前記と同じ意味を表し、e、fは任意の自然数を表し、Yは、水素原子又は下記式(D)
【0100】
【化13】

【0101】
(式中、gは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Yは水素原子、又は前記(D)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕
で表される繰り返し構造を有するポリシラザン等が挙げられる。
【0102】
上記有機ポリシラザンは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記式
【0103】
【化14】

【0104】
(式中、mは2又は3を表し、Xはハロゲン原子を表し、Rは、前述した、Rm、Rp、Rt、Rm’、Rp’、Rt’のいずれかの置換基を表す。)で表される無置換若しくは置換基を有するハロゲノシラン化合物と2級アミンとの反応生成物に、アンモニア又は1級アミンを反応させることにより得ることができる。
用いる2級アミン、アンモニア及び1級アミンは、目的とするポリシラザン系化合物の構造に応じて、適宜選択すればよい。
【0105】
また、本発明においては、ポリシラザン系化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。
ポリシラザン変性物としては、例えば、金属原子(該金属原子は架橋をなしていてもよい。)を含むポリメタロシラザン、繰り返し単位が〔(SiH(NH))〕及び〔(SiHO〕(式中、j、h、iはそれぞれ独立して、1、2又は3である。)で表されるポリシロキサザン(特開昭62−195024号公報)、ポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造するポリボロシラザン(特開平2−84437号公報)、ポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン(特開昭63−81122号公報等)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン(特開平1−138108号公報等)、ポリシラザンに有機成分を導入した共重合シラザン(特開平2−175726号公報等)、ポリシラザンにセラミックス化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加した低温セラミックス化ポリシラザン(特開平5−238827号公報等)、ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報等)、上記ポリシラザン又はその変性物に、アミン類及び/又は酸類を添加してなるポリシラザン組成物(特開平9−31333号公報)、ペルヒドロポリシラザンにメタノール等のアルコール或いはヘキサメチルジシラザンを末端N原子に付加して得られる変性ポリシラザン(特開平5−345826号公報、特開平4−63833号公報)等が挙げられる。
【0106】
これらの中でも、本発明において用いるポリシラザン系化合物としては、Rm、Rp、Rtが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rm、Rp、Rtの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンが好ましく、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有する注入層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。
なお、ポリシラザン系化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
【0107】
前記高分子層は、上述した高分子化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、他の高分子、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
【0108】
高分子層中の、高分子化合物の含有量は、優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できる観点から、50重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上であるのがより好ましい。
【0109】
高分子層を形成する方法としては、特に制約はなく、上述したガスバリア層の形成方法と同様の方法が挙げられ、例えば、高分子化合物の少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する層形成用溶液を、前記プライマー層上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。
塗工装置としては、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。
得られた塗膜の乾燥、フィルムのガスバリア性向上のため、塗膜を加熱することが好ましい。加熱、乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80〜150℃であり、加熱時間は、通常、数十秒から数十分である。
【0110】
形成される高分子層の厚みは、特に制限されないが、通常20〜1000nm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、高分子層の厚みがナノオーダーであっても、後述するようにイオンを注入することで、充分なガスバリア性能を有するフィルムを得ることができる。
【0111】
高分子層に注入されるイオンの注入量は、形成するフィルムの使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。
【0112】
注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;
金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の導電性の金属のイオン;
シラン(SiH)又は有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
【0113】
有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルアルコキシシラン;
ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールアルコキシシラン;
ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等のジシロキサン;
ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、テトラキスジメチルアミノシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン等のアミノシラン;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン;
テトライソシアナートシラン等のシアナートシラン;
トリエトキシフルオロシラン等のハロゲノシラン;
ジアリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン等のアルケニルシラン;
ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、テトラメチルシラン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ベンジルトリメチルシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルシラン;
ビス(トリメチルシリル)アセチレン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン等のシリルアルキン;
1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン等のシリルアルケン;
フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン等のアリールアルキルシラン;
プロパルギルトリメチルシラン等のアルキニルアルキルシラン;
ビニルトリメチルシラン等のアルケニルアルキルシラン;
ヘキサメチルジシラン等のジシラン;
オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン等のシロキサン;
N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド;
ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド;
等が挙げられる。
これらのイオンは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
これらの中でも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性を有するガスバリア層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
【0115】
イオンを注入する方法としては、特に限定されないが、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便にガスバリア性のフィルムが得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。
【0116】
プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、高分子層の表面部に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、高分子層の表面部に注入する方法が好ましい。
【0117】
前記(A)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01〜1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一にイオンを注入することができ、目的のガスバリア層を効率よく形成することができる。
【0118】
前記(B)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーで層の表面部に連続的に注入することができる。さらに、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、層の表面部に良質のイオン注入層を均一に形成することができる。
【0119】
前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、より簡便にかつ効率よく、均一にイオンを注入することができる。
【0120】
また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1〜−50kV、より好ましくは−1〜−30kV、特に好ましくは−5〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時にフィルムが帯電し、またフィルムへの着色等の不具合が生じ、好ましくない。
【0121】
プラズマイオン注入するイオン種としては、前記注入されるイオンとして例示したのと同様のものが挙げられる。
【0122】
層の表面部にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(α)高分子層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルーに高周波電力を重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突、堆積させる装置(特開2001−26887号公報)、(β)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001−156013号公報)、(γ)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(δ)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。
【0123】
これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(γ)又は(δ)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置を用いる方法については、国際公開WO2010/021326号公報に記載のものが挙げられる。
【0124】
前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、高分子層の表面部に連続的にプラズマ中のイオンを注入し、表面部にイオン注入により改質された部分を有する高分子層、すなわちガスバリア層が形成された本発明のガスバリア性シートを量産することができる。
【0125】
イオンが注入される部分の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、高分子層の厚み、ガスバリア性シートの使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10〜1000nmである。
【0126】
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて高分子層の表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
【0127】
(ガスバリア性シート)
本発明のガスバリア性シートは、基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートであって、前記基材の、25℃におけるヤング率と厚みの積が、1.5×10N/m以下で、前記ガスバリア層の表面粗さRaが5nm以下であり、かつ、表面粗さRtが80nm以下であることを特徴とする。
【0128】
ガスバリア層は基材の片面に形成されていても、基材の両面に形成されていてもよい。また、ガスバリア層は単層であってもよく、複数層積層されていてもよい。
本発明のガスバリア性シートが他の層を含む積層体である場合、ガスバリア層が実質的に最外層である限り、他の層の種類や配置位置、層の数は特に限定されない。
なお、「ガスバリア層が実質的に最外層である」とは、ガスバリア層が有する自己接着性を利用する際において、ガスバリア層が最外層であることをいい、被着体に貼着されるまでは、ガスバリア層の表面に剥離シート等を有していてもよい。
他の層としては、プライマー層、導電体層、衝撃吸収層等が挙げられる。
【0129】
本発明のガスバリア性シートは、基材とガスバリア層のほかに、プライマー層を1層又は2層以上有していてもよい。この場合、プライマー層が形成される場所は、特に限定されない。なかでも、基材と、基材上の少なくとも一方の面側に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に形成された実質的に最外層となるガスバリア層とを有するガスバリア性シートが好ましい。
このような構成にすることで、表面平滑性に優れるガスバリア層を容易に形成することができ、自己接着性に優れるガスバリア性シートを容易に得ることができる。
【0130】
プライマー層を構成する材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む光重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;ポリエチレンイミン;等が挙げられる。これらの材料は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
これらの中でも、ガスバリア層がケイ素系高分子化合物を含む層である場合には、より優れた層間密着性と表面平滑性を得ることができることから、ケイ素含有化合物が好ましい。
【0132】
ケイ素含有化合物としては、ポリシリケート;シランカップリング剤;ポリシラザン;ポリカルボシラン;ポリシランからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0133】
ポリシリケートとしては、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物であるメチルポリシリケート、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物であるエチルポリシリケート等のアルキルポリシリケート;式:MO・nSiO(式中、Mはリチウムまたはナトリウム等のアルカリ金属原子を表し、nは2〜10の正数を表す。)で示されるアルカリ金属ポリシリケートが挙げられる。
【0134】
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン,3−アミノプロピルトリエトキシシラン,3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン,3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン,3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン,3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノシランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;特開2000−239447号公報、特開2001−40037号公報等に記載された高分子シランカップリング剤;が挙げられる。
【0135】
ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリシランとしては、上記の高分子層を形成する材料として用いられるポリシラザン、ポリカルボシラン及びポリシランと同様のものが挙げられる。
【0136】
プライマー層は、プライマー層を構成する材料を適当な溶剤に溶解又は分散してなるプライマー層形成用溶液を、基材の片面又は両面に塗付し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱することより形成することができる。
プライマー層形成用溶液の塗布方法、及び得られた塗膜の乾燥、加熱方法としては、それぞれ、高分子層を形成する方法として先に示したものを用いることができる。
プライマー層の厚みは、通常、10〜1000nmである。
【0137】
また、表面平滑性に優れるガスバリア層を容易に形成するという点から、プライマー層は表面平滑性に優れていることが好ましい。このようなプライマー層の表面粗さRaは、1.0nm〜5.0nm、表面粗さRtは、10nm〜80nmであることが好ましく、より好ましくは、表面粗さRaは、2.0nm〜4.5nm、表面粗さRtは、20nm〜70nmである。
【0138】
本発明のガスバリア性シートは、基材とガスバリア層のほかに、導電体層を1層又は2層以上有していてもよい。この場合、導電体層は、基材のガスバリア層が形成される面側とは反対の面に形成されていることが好ましい。
導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。
【0139】
導電体層の形成方法としては特に制限はない。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。
導電体層の厚さはその用途等に応じて適宜選択すればよい。通常10nm〜50μm、好ましくは20nm〜20μmである。
【0140】
本発明のガスバリア性シートは、基材とガスバリア層のほかに、衝撃吸収層を1層又は2層以上有していてもよい。
衝撃吸収層を形成する材料は、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、ゴム系材料等が挙げられる。
【0141】
衝撃吸収層の形成方法としては特に制限はない。例えば、衝撃吸収層を形成する材料、及び、所望により、溶剤等の他の成分を含む衝撃吸収層形成溶液を調製し、この溶液を積層すべき層上に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等して形成する方法が挙げられる。
また、別途、剥離基材上に衝撃吸収層を成膜し、得られた膜を、積層すべき層上に転写して積層してもよい。
衝撃吸収層の厚みは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0142】
本発明のガスバリア性シートは、剥離シートを有していてもよい。剥離シートは、ガスバリア層の表面に積層されている。すなわち、保護シートは、ガスバリア性シートを被着体に貼着する前に剥離されるものであり、ガスバリア性シートを保存、運搬等する際に、ガスバリア層等を保護する役割を有する。
【0143】
剥離シートとしては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;上記基材にセルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル−スチレン樹脂等で目止め処理を行った紙基材;あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムやポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルム;及びこれらのプラスチックフィルムに易接着処理を施したフィルム等に剥離剤を塗布し剥離剤層を設けたもの;等が挙げられる。
【0144】
剥離剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー;長鎖アルキル系樹脂;アルキド系樹脂;フッ素系樹脂;シリコーン系樹脂;等を含むものが挙げられる。
【0145】
剥離剤層の厚さは、特に制限されないが、剥離剤を溶液状態で塗工する場合は好ましくは0.02〜2.0μm、より好ましくは0.05〜1.5μmである。
【0146】
剥離シートのガスバリア層に積層される面の表面粗さRaは、10.0nm以下が好ましく、8.0nm以下がより好ましい。また、表面粗さRtは、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。
表面粗さRa及びRtが、それぞれ、10.0nm、100nmを超えると、積層されるガスバリア層の表面粗さが大きくなるおそれがある。
なお、上記表面粗さRa及びRtは、光干渉顕微鏡を用いて測定領域10000μmについて得られた値である。
【0147】
本発明のガスバリア性シートの一例を図1(a)〜(d)に示す。
図1(a)に示すガスバリア性シート10は、基材11と、基材11上に形成されたガスバリア層12とからなるガスバリア性シートである。
図1(b)に示すガスバリア性シート20は、基材21と、基材21上に形成されたプライマー層23と、該プライマー層23上に形成されたガスバリア層22とからなるガスバリア性シートである。
図1(c)に示すガスバリア性シート30は、基材31と、基材31の両面にそれぞれ形成されたガスバリア層32a、32bとからなるガスバリア性シートである。
図1(d)に示すガスバリア性シート40は、基材41と、基材41上に形成されたプライマー層43と、基材41のプライマー層43が形成された面とは反対の面上に形成されたガスバリア層42とからなるガスバリア性シートである。
【0148】
本発明のガスバリア性シートはガスバリア性に優れる。本発明のガスバリア性シートがガスバリア性に優れていることは、本発明のガスバリア性シートの水蒸気透過率が小さいことから確認することができる。
水蒸気透過率は、例えば、40℃、相対湿度90%雰囲気下で、0.5g/m/day以下が好ましい。ガスバリア性シートの水蒸気の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。
【0149】
本発明のガスバリア性シートは、優れた自己接着性を有する。ここで、「自己接着性」とは、ガスバリア性シートが、接着剤等を用いることなく、ガスバリア層を介して被着体に貼着する性質をいう。
本発明のガスバリア性シートが優れた自己接着性を有していることは、本発明のガスバリア性シートのガスバリア層と、他のシート(例えば、他のガスバリア性シートのガスバリア層又はプライマー層)とを貼り合わせたときのせん断接着力が大きいことから確認することができる。本発明のガスバリア性シートのガスバリア層と被着体との接着面積が100mm(10mm×10mm)のときにおけるせん断接着力は、0.5N/100mm以上であることが好ましい。
【0150】
本発明のガスバリア性シートを、その自己接着性により被着体に貼着する場合は、被着体が平滑性に優れることが好ましく、その表面粗さRaが5nm以下であり、かつ、表面粗さRtが80nm以下であることが好ましい。被着体の表面粗さが上記の範囲であれば、本発明のガスバリア性シートを、その自己接着性により、容易に被着体に貼着することができる。
【0151】
上記のように、本発明のガスバリア性シートは、ガスバリア性及び自己接着性に優れるため、積層シート形成用のガスバリア性シート、素子封止用のガスバリア性シートとして好ましく用いられる。
【0152】
2)積層シート
本発明の積層シートは、少なくとも2枚のシートを積層して得られる積層シートであって、前記シートのうち少なくとも1枚が、本発明のガスバリア性シートであり、該ガスバリア性シートのガスバリア層と他のシートとが貼合されていることを特徴とする。
【0153】
本発明の積層シートにおいて、被着体となる他のシートは、シート状物であれば特に限定されないが、基材と、該基材の少なくとも一方の面側にガスバリア層を有するガスバリア性シートであることが好ましく、本発明のガスバリア性シートであることがより好ましい。
【0154】
また、本発明のガスバリア性シートのガスバリア層と貼着される被着体の貼着面(貼合される層)は、本発明のガスバリア性シートの自己接着性が十分に発揮される限り、特に限定されない。被着体の貼着面(貼合される層)としては、例えば、ガスバリア性シートの、ガスバリア層やプライマー層が挙げられる。
【0155】
本発明の好ましい積層シートとしては、
(i)少なくとも2枚のガスバリア性シートを、それらのガスバリア層同士で直接貼合させてなる積層構造を有する積層シートであって、かかるガスバリア性シートのうち少なくとも1枚が、本発明のガスバリア性シートである積層シート、
(ii)少なくとも2枚のシートを積層して得られる積層シートであって、前記シートのうち少なくとも1枚が、本発明のガスバリア性シートであり、他のシートの少なくとも1枚が、基材と、該基材の一方の面側にガスバリア層を有し、他方の面側にプライマー層を有するガスバリア性シート(以下、「他のガスバリア性シート」ということがある。)であって、本発明のガスバリア性シートのガスバリア層と、他のガスバリア性シートのプライマー層とが貼合されている積層シート、及び、
(iii)これらの積層シートに、ガスバリア性シートの1枚又は2枚以上をさらに積層して得られる積層シート;等が挙げられる。
【0156】
本発明においては、これらの中でも、少なくとも2枚のガスバリア性シートを、それらのガスバリア層同士で直接貼合させてなる積層構造を有する積層シートであって、前記2枚のガスバリア性シートがいずれも、本発明のガスバリア性シートである積層シートがより好ましい。このような構成であれば、本発明のガスバリア性シートのガスバリア層同士の自己接着性により、ガスバリア性シート同士の密着力をより高くすることができる。
【0157】
なお、上述した積層シートや後述する素子封止体の説明において、「本発明のガスバリア性シート」とは、「基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートであって、前記基材の、25℃におけるヤング率と厚みの積が、1.5×10N/m以下で、前記ガスバリア層の表面粗さRaが5nm以下であり、かつ、表面粗さRtが80nm以下であることを特徴とするガスバリア性シート」をいう。また、単に「ガスバリア性シート」あるいは「他のガスバリア性シート」と記載されるシートには、上記規定を満たさないガスバリア性シートも含まれる。
【0158】
本発明の積層シートは、ガスバリア性シートのガスバリア層の接着面積が100mm(10mm×10mm)のときのせん断接着力が、0.5N/100mm以上であることが好ましい。
【0159】
本発明の積層シートの一例を図2(a)、(b)、(c)に示す。
図2(a)に示す積層シート50は、図1(b)に示すタイプのガスバリア性シート20aのガスバリア層22aと、ガスバリア性シート20bのガスバリア層22bとを、それぞれの自己接着性によって貼り合わせて得られる積層シートである。したがって、ガスバリア層22aと22bの間に接着剤層等を形成していない。
【0160】
図2(b)に示す積層シート60は、図1(c)に示すタイプのガスバリア性シート30の両面のガスバリア層32a及び32bと、図1(a)に示すタイプのガスバリア性シート10a及び10bのガスバリア層12a及び12bとを、それぞれの自己接着性によって貼り合せて得られる積層シートである。したがって、ガスバリア層12aと32aの間及びガスバリア層12bと32bの間には、接着剤層等を形成していない。
【0161】
図2(c)に示す積層シート70は、図1(d)に示すタイプのガスバリア性シート40aのプライマー層43aと、ガスバリア性シート40bのガスバリア層42bとを、ガスバリア層42bの自己接着性によって、貼り合わせて得られる積層シートである。したがって、ガスバリア層42bとプライマー層43aの間には、接着剤層等を形成していない。
【0162】
なお、図2(c)においては、2枚のガスバリア性シート40a、40bを用いる例を示したが、3枚以上のガスバリア性シート40を用いることで、さらに積層化された積層シートを得ることもできる。例えば、図2(c)に示す積層シート70のガスバリア層42a上に、ガスバリア性シート40bと同様の層構成を有するガスバリア性シート(他のガスバリア性シート、図示を省略)を、ガスバリア層42aと他のガスバリア性シートのプライマー層とを貼り合わせることにより、より積層化された積層シートを得ることができる。
【0163】
積層シートを製造する方法は特に制限されない。例えば、上記のガスバリア性シートを、得られる積層シートが所望の層構成となるように重ね合わせ、圧着することで、目的の積層シートを得ることができる。
【0164】
圧着する方法としては、特に限定されず、圧着時間、圧着温度は適宜選択することができ、ラミネーター等の公知の装置を用いて行うことができる。
自己接着性に優れる本発明のガスバリア性シートを用いることで、特に接着剤などを使用しなくとも、容易に積層体を得ることができる。
【0165】
本発明の積層シートは、ガスバリア層が接着剤等と接することがないため、接着剤の影響により、ガスバリア性が低下することがない。また、ガスバリア層が最外層にならないため、ガスバリア層の傷つきにより、ガスバリア性が低下することもない。
【0166】
このような特性を有する本発明の積層シートは、電子部材用のシート、食品、医薬品等の包装材料用のシートとして、好ましく用いられる。
特に、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイ部材;太陽電池等に用いる太陽電池バックシート;等の電子部材用のシートとして好適である。
本発明の積層シートを電子部材用のシートとして用いる場合、例えば、本発明の積層シートの基材面と、電子部材のガスバリア性が求められる面とを接着剤等を用いて貼着することで、電子部材にガスバリア性が付与される。
【0167】
3)素子封止体
本発明の素子封止体は、基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートの少なくとも2枚を、それらのガスバリア層同士で直接貼合させてなる積層構造と、素子が前記少なくとも2枚のガスバリア性シートで挟まれてなる封止構造を有する素子封止体であって、前記ガスバリア性シートのうち少なくとも1枚が、本発明のガスバリア性シートである素子封止体である。
本発明の素子封止体においては、用いるガスバリア性シートの全てが、本発明のガスバリア性シートであることが好ましい。
【0168】
本発明の素子封止体の一例を図3、4に示す。図3、4において、ガスバリア性シートの層構造は記載を省略しているが、ガスバリア性シート同士が接する面側にガスバリア層が存在している。
【0169】
図3中、(a)は、素子封止体80を上から見た図であり、(b)は、(a)におけるX−Yにおける断面を横から見た図である。
素子封止体80は、ガスバリア性シート81a上に載置された素子82を覆うようにガスバリア性シート81bが積層されてなる。ガスバリア性シート81aとガスバリア性シート81bは、それぞれのガスバリア性シートが有するガスバリア層の自己接着性により貼合されている。
【0170】
ガスバリア性シート81a、81bの厚みは、特に制限されず、ガスバリア性や素子封止体の反りを考慮して、適宜決定することができる。
また、ガスバリア性シート81a、81bの素子82と接する部分に凹部を設けてもよい。凹部を設けることで、より平坦な素子封止体を得ることができる。
【0171】
封止される素子82は、特に限定されず、発光素子、受光素子、複合光素子、光集積回路等が挙げられる。
【0172】
図4中、(a)は、素子封止体90を上から見た図であり、(b)は、(a)におけるX−Yにおける断面を横から見た図である。
素子封止体90においては、ガスバリア性シート91a上に、基材と、該基材の両面が自己接着性のガスバリア層であって、その中心部に孔が設けられているガスバリア性シート91bが積層されている。素子92は、ガスバリア性シート91bの孔の内部に載置され、この素子92を覆うように、ガスバリア性シート91cが、ガスバリア性シート91b上に積層されている。ガスバリア性シート91aとガスバリア性シート91b、ガスバリア性シート91bとガスバリア性シート91cは、それぞれのガスバリア性シートが有するガスバリア層の自己接着性により貼合されている。
素子封止体90の構造は、比較的厚みのある素子を封止する際に好適に用いられる。
【0173】
本発明の素子封止体においては、封止剤や接着剤を使用しなくても素子が封止される。したがって、封止剤や接着剤の部分を酸素や水蒸気が透過することにより素子が劣化するという問題が解決される。
【実施例】
【0174】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0175】
ガスバリア層を形成するために用いたプラズマイオン注入装置及びイオン注入条件、プライマー層を形成するために用いたUV光照射装置、表面平滑性の評価方法、ガスバリア性の評価(水蒸気透過率測定装置及び測定条件)並びにせん断接着力の測定方法は以下の通りである。
【0176】
(プラズマイオン注入装置)
RF電源:日本電子社製、型番号「RF」56000
高電圧パルス電源:栗田製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」
(プラズマイオン注入条件)
プラズマ生成ガス:Ar
ガス流量:100sccm
Duty比:0.5%
電圧:5kV
RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000W
チャンバー内圧:0.2Pa
パルス幅:5μsec
処理時間(イオン注入時間):5分間
搬送速度:0.2m/min
【0177】
(UV光照射装置)
コンベア型UV光照射装置:フュージョン社製、「F600V」、UVランプ:高圧水銀灯を使用。
【0178】
(表面平滑性の評価)
表面平滑性の評価は、光干渉顕微鏡(Veeco社製、「NT1100」)を用いて、10000μm(100μm×100μm)におけるガスバリア性シートの表面(ガスバリア層)の平滑性を評価した。
【0179】
(せん断接着力の測定)
2枚のガスバリア性シートのガスバリア層同士を、接着面積が100mm(10mm×10mm)になるように圧着して測定試料を得た。
上記試料を用いて、せん断接着力をJIS Z 0237:1991に準じて評価した。
【0180】
(水蒸気透過度の測定)
水蒸気透過度測定装置(mocon社製、「PERAMATRAN 3/33」)を用いて、得られたガスバリア性シート、及び積層シートの、RH90%、40℃の条件下における水蒸気透過度を測定した。
【0181】
(実施例1)
厚さ25μm、25℃におけるヤング率4.5GPaのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「PET25 R−56」)からなる基材(以下、PET基材という)に、紫外線硬化型樹脂(大日精化工業社製、商品面「セイカビームEXF−01L(NS)」)をバーコータにて塗布し、得られた塗膜を60℃で1分間加熱乾燥した後、コンベア型UV光照射装置(フュージョン社製、「F600V」、UVランプ:高圧水銀灯、ライン速度:20m/min、積算光量:120mJ/cm、照度1.466W、ランプ高さ:104mm)を用いて、UV光照射を2回行い、厚さ0.75μmのプライマー層を形成した。
その後、プライマー層上に、ペルヒドロポリシラザン(クラリアント社製、商品名「アクアミカNL110A−20」)をスピンコート法により塗布し、得られた塗膜を120℃で2分間加熱して高分子層を形成した。プラズマイオン注入法により、前記高分子層の表面にアルゴンイオンを注入して、ガスバリア層を形成し、ガスバリア性シート1を得た。
【0182】
(実施例2)
プライマー層の厚みを0.75μmから1.0μmに変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート2を得た。
(実施例3)
プライマー層の厚みを0.75μmから1.5μmに変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート3を得た。
(実施例4)
プライマー層の厚みを0.75μmから2.0μmに変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート4を得た。
【0183】
(実施例5)
プライマー層形成用の樹脂として、紫外線硬化型樹脂(荒川化学工業社製、商品名「ビームセット907」)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート5を得た。
(実施例6)
実施例1において、PET基材の厚みを31μm(25℃におけるヤング率4.5GPaのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「PET25 R−56」)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート6を得た。
(実施例7)
PET基材に代えて、基材として、厚さ16μm、25℃におけるヤング率3.0GPaのシクロオレフィンコポリマーフィルム(ポリプラスティック社製、製品名「TOPAS−6017」)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート7を得た。
(実施例8)
PET基材に代えて、基材として、厚さ31μm、25℃におけるヤング率3.0GPaのシクロオレフィンコポリマーフィルム(ポリプラスティック社製、製品名「TOPAS−6017」)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート8を得た。
【0184】
(比較例1)
プライマー層形成用の樹脂として、紫外線硬化型樹脂(大成ファインケミカル社製、製品名「ACRIT 8KX−052C」)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート9を得た。
(比較例2)
PET基材の厚みを50μmに変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート10を得た。
(比較例3)
PET基材に代えて、基材として、厚さ50μm、25℃におけるヤング率4.0GPaのポリカーボネートフィルム(帝人化成社製、製品名「ピュアエースS−148」)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート11を得た。
(比較例4)
PET基材に代えて、基材として、厚さ110μm、25℃におけるヤング率3.0GPaのシクロオレフィンコポリマーフィルム(ポリプラスティック社製、製品名「TOPAS−6017」)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ガスバリア性シート12を得た。
【0185】
実施例1〜8及び比較例1〜4で得られたガスバリア性シートのガスバリア層の表面平滑性(表面粗さRa、Rt)、用いた基材の物性を第1表に示す。
【0186】
【表1】

【0187】
(実施例9〜17、比較例5〜8)
第2表に示すように、ガスバリア性シート1〜12から選んだ2枚のガスバリア性シートを、それらのガスバリア層同士を圧着させて、積層シートを得た。得られた積層シートの、せん断接着力と、水蒸気透過度を第2表に示す。なお、比較例5〜8においては、2枚のガスバリア性シートのガスバリア層同士が接着せず、積層シートを得ることが出来なかった。
【0188】
(実施例18)
発光素子を準備し、実施例1のガスバリア性シート2枚で発光素子を挟むようにして、ガスバリア層同士を圧着させて、素子封止体を得た。得られた素子封止体は、問題なく発光することを確認した。
【0189】
【表2】

【0190】
実施例1〜8で得られたガスバリア性シート1〜8は、自己接着性を有するため、接着剤を使用することなく積層シートを形成することができる。
また、ガスバリア性シート1〜9を用いて得られる実施例9〜17の積層シートは、水蒸気透過度が低く、ガスバリア性に優れている。
【符号の説明】
【0191】
10、10a、10b、20、20a、20b、30、40、40a、40b・・・ガスバリア性シート
11、11a、11b、21、21a、21b、31、41、41a、41b・・・基材
12、12a、12b、22、22a、22b、32a、32b、42、42a、42b・・・ガスバリア層
23、23a、23b、43、43a、43b・・・プライマー層
50、60、70・・・積層シート
80、90・・・素子封止体
81a、81b、91a、91b、91c・・・ガスバリア性シート
82、92・・・素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートであって、
前記基材の、25℃におけるヤング率と厚みの積が、1.5×10N/m以下で、
前記ガスバリア層の表面粗さRaが5nm以下であり、かつ、表面粗さRtが80nm以下であることを特徴とするガスバリア性シート。
【請求項2】
基材と、該基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に形成されたガスバリア層とを有する、請求項1に記載のガスバリア性シート。
【請求項3】
積層シート形成用のシートである、請求項1又は2に記載のガスバリア性シート。
【請求項4】
素子封止用のシートである、請求項1又は2に記載のガスバリア性シート。
【請求項5】
少なくとも2枚のシートを積層して得られる積層シートであって、前記シートのうち少なくとも1枚が、請求項1又は2に記載のガスバリア性シートであり、該ガスバリア性シートのガスバリア層と他のシートとが貼合されていることを特徴とする積層シート。
【請求項6】
前記他のシートが、請求項1又は2に記載のガスバリア性シートであることを特徴とする請求項5に記載の積層シート。
【請求項7】
基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートの少なくとも2枚を、ガスバリア性シートのガスバリア層同士で直接貼合させてなる積層構造を有する積層シートであって、前記ガスバリア性シートの少なくとも1枚が、請求項1又は2に記載のガスバリア性シートであることを特徴とする積層シート



【請求項8】
前記ガスバリア性シートのガスバリア層の接着面積が100mm(10mm×10mm)のときのせん断接着力が、0.5N/100mm以上である、請求項5〜7のいずれかに記載の積層シート。
【請求項9】
電子部材用のシートである、請求項5〜8のいずれかに記載の積層シート。
【請求項10】
基材と、該基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリア層を有するガスバリア性シートの少なくとも2枚を、それらのガスバリア層同士で直接貼合させてなる積層構造と、素子が前記少なくとも2枚のガスバリア性シートで挟まれてなる封止構造を有する素子封止体であって、前記ガスバリア性シートのうち少なくとも1枚が、請求項1又は2に記載のガスバリア性シートである素子封止体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6340(P2013−6340A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140185(P2011−140185)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】