説明

ガス供給装置、ガス搬送システム及びガス搬送方法

【課題】コストがかからず省エネルギーを図れるガス供給装置の提供。
【解決手段】窒素を利用して加工をする第一加工機1と、この第一加工機1で利用する窒
素の純度より低くても利用可能な不活性ガスを用いて加工をする第二加工機2と、第一加
工機1と第二加工機2との間に設けられ第一加工機1から排出されるとともに加工に伴っ
て生じる不純物を含む排気ガスを第二加工機2に送るガス導入部31を有するガス供給装
置3とを備えた。第一加工機1で排出された排気ガスから不純物を濾過するフィルター3
2と、このフィルター32に排気ガスを供給するポンプ33とをガス導入部31に設けた
。第一加工機1で排出され不純物が含まれる排気ガスを第二加工機2でそのまま利用する
ので、第一加工機1と第二加工機2とで別々に製造された窒素を用いる場合に比べて、全
体の窒素の使用量が削減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機へ不活性ガスを供給するためガス供給装置、このガス供給装置を用い
たガス搬送システム並びにガス搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工品製造のために不活性ガスが利用されることが多々ある。例えば、半導体を製造す
るために窒素が利用されることがあり、この装置では、窒素液化貯蔵タンクで液化された
窒素は、蒸発器で気化された後、半導体製造装置で使用される。この使用済みの窒素は加
工に伴って発生する不純物とともに大気中に放出されていることが多い。放出するガスを
回収し、再利用すれば、窒素を製造するための運転コストがかからないだけでなく、窒素
製造の電力供給に際して発生する二酸化炭素の量も削減できて環境上も好ましい。
【0003】
そのため、半導体製造装置で使用された不純物を含む窒素を圧縮ポンプによって精留塔
に回収し、この精留塔で不純物の純度を低減し、高純度の窒素を窒素タンクに貯蔵する従
来例(特許文献1)がある。
また、触媒脱気装置から排出された酸素が混入した窒素を触媒反応装置で酸素を取り除
き、この酸素が取り除かれた窒素を、窒素循環ラインを通じて触媒脱気装置に返送する従
来例(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−315431号公報
【特許文献2】特開2000−176436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1と特許文献2で示される従来例では、半導体製造装置や触媒脱気装置等の排
出された不純物が含まれる窒素が精留塔や触媒反応塔で精製され、この精製されて不純物
が低減された窒素が半導体製造装置や触媒脱気装置等で再度利用されるものであり、いわ
ば、クローズループの状態で窒素が循環されている。
これらの従来例では、不純物を窒素から取り除いて窒素の純度を上げるための特別な装
置や、この装置に不純物が含まれる窒素を搬送する装置が必要となり、これらの装置を駆
動し、あるいは、保守するためのコストやエネルギーが必要となる。そして、これらの装
置を駆動するに際して二酸化炭素も発生することになり、環境上も好ましくはない。
【0006】
本発明の目的は、コストがかからず省エネルギーを図れるガス供給装置、ガス搬送シス
テム及びガス搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例にかかるガス供給装置は、不活性ガスを利用して加工をするとともに加工に伴
って生じる不純物を含む排気ガスを排出する第一加工機と、この第一加工機で利用する不
活性ガスの純度より低くても利用可能な不活性ガスを用いて加工をする第二加工機との間
に設けられ、前記第一加工機から排出される前記排気ガスを前記第二加工機に送るガス導
入部を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成の本適用例では、第一加工機、ガス供給装置及び第二加工機を直列に接続し、
第一加工機で排出される不純物が含まれる排気ガスを、ガス供給装置を通じて直接第二加
工機に送る。第二加工機で要求される不活性ガスの純度は第一加工機で要求される不活性
ガスで要求される純度より低い。例えば、第一加工機としては、シーム溶接機を例示でき
、第二加工機としてはデシケーターを例示できる。
従って、本適用例は、加工機によって、要求される不活性ガスの純度が異なることに着
目し、純度の高い不活性ガスを第一加工機側に用い、純度が高くなくても利用できる不活
性ガスを第二加工機側に用い、これらの加工機の間をガス供給装置のガス導入部で接続し
た。そのため、第一加工機と第二加工機とで別々に製造された不活性ガスを用いる場合に
比べて、全体の不活性ガスの使用量が削減されることになる。その上、本適用例では、従
来例に比べて、第一加工機で排出される排気ガス中の不活性ガスの純度を上げるための設
備が不要とされるため、不活性ガスの純度を上げるための設備に必要なコストやエネルギ
ーが不要となる。
【0009】
[適用例2]
本適用例にかかるガス供給装置は、前記ガス導入部は、前記第一加工機で排出された前
記排気ガスから不純物を濾過するフィルターと、このフィルターに前記排気ガスを供給す
るポンプとを備えたことを特徴とする。
この構成の本適用例では、第一加工機から排出される排気ガスに含まれる油分や塵等が
フィルターで濾過されるので、第二加工機で使用できる不活性ガスの純度の許容範囲が広
くなる。そのため、第二加工機として使用できる機器類が多くなる。そして、フィルター
を用いることで、ガス導入部の中で送られる排気ガスの圧力が低くなっても、ポンプによ
り強制的に第一加工機から第二加工機へ排気ガスを送ることができるので、第二加工機に
おいて不活性ガスが安定供給されることになる。
【0010】
[適用例3]
本適用例にかかるガス供給装置は、前記ガス導入部に新規不活性ガスを供給する新規ガ
ス供給機構と、この新規ガス供給機構の前記ガス導入部への新規不活性ガスの供給を前記
ポンプの駆動が停止した信号を受けて許容する操作機構とを備えたことを特徴とする。
この構成の本適用例では、ポンプの駆動が停止した信号を操作機構が受けると、この操
作機構で新規ガス供給機構の前記ガス導入部への新規不活性ガスの供給を許容する。する
と、ポンプの駆動中止に伴って第一加工機から第二加工機への排気ガスの供給が停止して
も、新規ガス供給機構によってガス導入部を通じて第二加工機に新規不活性ガスが供給さ
れるから、第二加工機での加工を継続させることができる。
【0011】
[適用例4]
本適用例にかかるガス搬送システムは、不活性ガスを利用して加工をするとともに加工
に伴って生じる不純物を含む排気ガスを排出する第一加工機と、この第一加工機で利用す
る不活性ガスの純度より低くても利用可能な不活性ガスを用いて加工をする第二加工機と
、前述の構成のガス供給装置と、前記第一加工機で使用される不活性ガスの圧力を検出す
る第一圧力センサーの検出信号からの信号で前記ポンプの駆動を制御する制御装置とを備
え、この制御装置は、前記第一圧力センサーで検出される圧力が前記第一加工機で必要な
基準圧力に満たないことを検出した信号を受領して前記ポンプに駆動停止信号を出力する
ことを特徴とする。
この構成の本適用例では、第一加工機で必要な基準圧力に満たないことを第一圧力セン
サーが検出し、この第一圧力センサーから出力される信号を制御装置が受領すると、制御
装置はポンプに駆動停止信号を出力し、これにより、ポンプの駆動が停止される。そのた
め、第一加工機から必要以上に排気ガスが吸引されることが防止されるので、第一加工機
での作業環境が維持される。
【0012】
[適用例5]
本適用例にかかるガス搬送システムは、前記ガス導入部の前記ポンプより上流側には前
記第一加工機から排出される前記排気ガスを外部に排出する外部排出管が接続され、この
外部排出管には開閉弁が設けられ、この開閉弁と前記制御装置とは接続され、前記制御装
置は、前記ポンプの駆動を停止する信号を出力した際に前記開閉弁を開放操作する信号を
前記開閉弁に出力することを特徴とする。
この構成の本適用例では、制御装置はポンプに駆動を停止する信号を出力する際に、開
放操作する信号を開閉弁に出力するので、ポンプの駆動が停止して第二加工機に送られな
い排気ガスは外部排出管を通じて外部に排出されることになる。
そのため、ポンプが停止しても、第一加工機から排出される排気ガスは第一加工機やガ
ス導入部に溜まることがないので、第一加工機の内圧が高くなりすぎることがなく、第一
加工機での作業環境が維持される。
【0013】
[適用例6]
本適用例にかかるガス搬送方法は、不活性ガスを用いて第一加工機で加工をし、この第
一加工機の加工に伴って生じる不純物を含む排気ガスを、前記第一加工機で利用する不活
性ガスの純度より低くても利用可能な第二加工機で再使用するものであって、前記第一加
工機で排出された前記排気ガスから不純物をフィルターで濾過し、この不純物が濾過され
た排気ガスをポンプで前記第二加工機に送り、前記第一加工機の内圧が基準値に満たない
場合には前記ポンプの駆動を停止して第二加工機への排気ガスへの供給を中止することを
特徴とする。
この構成の本適用例では、前述と同様な効果を奏することができるガス搬送方法を提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の全体構成を示す概略図。
【図2】(A)従来構造の第一加工機の内圧変動を示すグラフ、(B)従来構造の第二加工機の内圧変動を示すグラフ。
【図3】(A)従来構造の第一加工機に第二加工機を直接接続した場合の第二加工機の内圧変動を示すグラフ、(B)前記実施形態でポンプが過剰吸気した場合の第一加工機の内圧変動を示すグラフ。
【図4】前記実施形態のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の全体構成を示す概略図である。
図1において、ガス搬送システムは、第一加工機1と、第二加工機2と、これらの第一
加工機1と第二加工機2との間に設けられるガス供給装置3と、このガス供給装置3と第
一加工機1とに接続される制御装置4とを備えて構成される。
【0016】
第一加工機1は、不活性ガスを利用して加工をするとともに加工に伴って生じる不純物
を含む排気ガスを排出するものであり、本実施形態では、例えば、窒素ガスを加工に際し
て使用するシーム溶接機が第一加工機に相当する。このシーム溶接機は、水晶振動子、電
子部品等をパッケージのケース内に収納し、このケースとリッドとをシーム溶接する機械
であり、窒素雰囲気中で溶接工程が実施されるものである。第一加工機1では、溶接加工
に伴って窒素以外の不純物が発生することになり、この不純物が含まれる排気ガスが図示
しないダクトを通じて排出される構造となっている。
この第一加工機1では、内圧を検出する第一圧力センサー11が設けられている。この
第一圧力センサー11は制御装置4に検出信号が送られる構造とされる。
【0017】
第一加工機1は、内圧が所定圧力値に保たれている。例えば、第一加工機1をシーム溶
接機とした場合、このシーム溶接機はロードロック室が併設されており、このロードロッ
ク室の開閉により内圧が変動する。
図2(A)は、従来構造のシーム溶接機での内圧変化の概略を示すグラフである。図2
(A)において、第一加工機1を構成するシーム溶接機では、ロードロック室の開閉によ
り、内圧が低下することがあるが、この低下した状態の内圧は要求される下限値より高い
圧力値とされており、雰囲気の純度維持のために、比較的高い圧力に設定される。
【0018】
第二加工機2は第一加工機1で利用する窒素ガスの純度より低くても利用可能な窒素ガ
スを用いて加工をするものであり、例えば、デシケーター、クリーンオーブンが相当する
。さらに、本実施形態では、シーム溶接機であって、第一加工機1で使用される窒素ガス
より純度の低い窒素ガスが利用可能のシーム溶接機であれば、第二加工機2として用いて
もよい。
第二加工機2は、内圧が変動する。例えば、第二加工機2をデシケーターとした場合、
このデシケーターは扉の開閉に伴って内圧が変動する。
図2(B)は、工場ガス源からガスが供給される従来構造のデシケーターでの内圧変化
の概略を示すグラフである。図2(B)において、デシケーターは、比較的低い内圧が設
定されており、扉の開閉に伴って生じる内圧の差も小さいものとなっている。
【0019】
ガス供給装置3は、第一加工機1のダクト(図示せず)から排出される排気ガスを第二
加工機2に送るガス導入部31と、このガス導入部31に設けられるとともに排気ガスか
ら不純物を取り除くフィルター32と、ガス導入部31のフィルター32より上流側に設
けられたポンプ33と、ガス導入部31のポンプ33とフィルター32との間に接続され
る新規ガス供給機構34と、ガス導入部31のポンプ33より上流側に接続される外部排
出機構35と、ガス導入部31のポンプ33とフィルター32との間に接続される配管内
圧抜機構36と、を備えている。これらの器具類はケース30の内部に収納されている。
ガス導入部31はケース30に配置された筒状部材である。この筒状部材は種々の材質
から形成可能であるが、少なくとも、第一加工機1で生じた不純物が含まれる排気ガスに
対して腐食等しないことが必要である。ガス導入部31の径は、第一加工機1の排気ガス
の供給量等により設定されるが、例えば、直径が10mmである。
【0020】
フィルター32は、エアフィルター321と、このエアフィルター321より下流側に
配置された窒素清浄化用フィルター群322とを備えている。この窒素清浄化用フィルタ
ー群322とエアフィルター321との間には下流から上流への排気ガスの逆流を阻止す
る逆止弁323がガス導入部31に設けられている。この逆止弁323とエアフィルター
321との間には第二圧力センサー324がガス導入部31に設けられている。この第二
圧力センサー324は、逆止弁323とエアフィルター321との間に流通する排気ガス
の圧力値が基準値範囲内であることを監視するものであり、基準値を超え、あるいは、基
準値未満である場合を異常状態とし、制御装置4に異常信号を送るものとなっている。フ
ィルター32と第二加工機2との間には流量計325がガス導入部31に設けられている

【0021】
エアフィルター321は、ポンプ33から送られる排気ガスの脈動防止を兼ねるもので
あり、ガスタンクの様なものでも良い。
窒素清浄化用フィルター群322は、フィルター付きレギュレーター326と、スーパ
ーミストフィルター327とを備えている。
フィルター付きレギュレーター326はレギュレーター326Aに所定の圧力がかかる
と流通される排気ガスをフィルター部326Bで不純物を濾過するものである。このフィ
ルターでは、0.3μmの大きさの不純物を95%取り除くことができる。
スーパーミストフィルター327は、フィルター付きレギュレーター326よりも小さ
な不純物を取り除くことが可能である。このフィルターでは、0.01μmの大きさの不
純物を95%取り除くことができる。
【0022】
ポンプ33は第一加工機1の内圧変動にかかわりなく安定してフィルター32に排気ガ
スを送るためのものである。ポンプ33を駆動することなくガス導入部31からフィルタ
ー32を介して排気ガスを第二加工機2に送る場合では、第一加工機1の内圧変動の影響
を大きく受けて第二加工機2での内圧変動は大きなものとなる。
図3(A)は、第一加工機1としてシーム溶接機を用い、第二加工機2としてデシケー
ターを用い、このシーム溶接機とデシケーターとをガス導入部31で接続した場合にデシ
ケーターで生じる内圧変動を示したグラフである。
図3(A)において、実線は、デシケーターの内圧変動である。デシケーターの内圧は
、図2(A)で示されるシーム溶接機の内圧変動を直接受けることになるので、変動が大
きくなる。ガス導入部31に圧力調整弁を設けると、全体の圧力が小さくなるので、デシ
ケーターが利用できなくなる。そのため、本実施形態では、ガス導入部31にポンプ33
を設け、このポンプ33でガス導入部31に流通する排気ガスを強制的にデシケーターに
送ることで、デシケーターでの圧力変動を少なくした(図3(A)の想像線参照)。
【0023】
新規ガス供給機構34は、流路341と、この流路341を開閉する開閉弁342とを
備える。この開閉弁342は操作機構343で開閉操作される。
流路341は、一端がガス導入部31に接続され、他端が窒素供給源344と接続され
ている。この窒素供給源344は工場で予め設置されているものである。この窒素供給源
344と同じ供給源から第一加工機1の窒素が供給される。流路341の開閉弁342よ
り下流側には上流への逆流を防止する逆止弁345が設けられている。
開閉弁342はエアーオペレートバルブであり、「開」の位置P1と「閉」の位置P2
とが切り替え可能とされる。
【0024】
操作機構343はソレノイドバルブであり、「開」の位置P1と「閉」の位置P2とが
切り替え可能とされる。操作機構343では、制御装置4からポンプ33の駆動が停止し
た信号を受けると「開」の位置P1に切り替えられ、これにより、開閉弁342が開放操
作され、窒素供給源344から窒素が供給される。制御装置4からポンプ33の駆動が停
止した信号を受けない場合には、「閉」の位置P2に切り替えられ、開閉弁342が閉塞
操作される。
【0025】
外部排出機構35は、ガス導入部31に一端が接続され他端が外部に開口された外部排
出管351と、この外部排出管351に設けられた開閉弁352とを備え、この開閉弁3
52は操作機構343を介して制御装置4と接続されている。
外部排出管351の開閉弁352より下流側には上流への逆流を阻止する逆止弁353
が設けられている。
開閉弁352は、エアーオペレートバルブであり、操作機構343からの信号で「開」
の位置P1と「閉」の位置P2とが切り替え可能とされる。この操作機構343は、制御
装置4からポンプ33の駆動が停止した信号を受けて開閉弁352を開放操作し、制御装
置4からポンプ33の駆動が停止した信号を受けない場合には開閉弁352を閉塞操作す
る。
【0026】
配管内圧抜機構36は、流路361と、この流路361に設けられた開閉弁362とを
備えている。
流路361は、一端がガス導入部31に接続され、他端がガス供給装置3の外部に開口
されている。
開閉弁362はソレノイドバルブであり、「閉」の位置P1と「開」の位置P2とが切
り替え可能とされる。この開閉弁362は制御装置4からの信号を受けると所定時間の間
に「閉」と「開」とが連続して操作される。
【0027】
制御装置4は、操作ボックス41と接続されており、この操作ボックス41に設けられ
た稼働ボタン(図示せず)が操作されると、まず、配管内圧抜機構36の開閉弁362に
開閉信号を送り、さらに、ポンプ33に稼働信号を送り、停止ボタン(図示せず)が操作
されると、ポンプ33に停止信号を送る。
そして、制御装置4は、第一圧力センサー11及び第二圧力センサー324からの信号
を受けて操作機構343及び開閉弁362を操作する。つまり、制御装置4は、第一圧力
センサー11で検出する圧力信号が第一加工機1で必要な基準圧力に満たない場合には、
ポンプ33に駆動停止信号を出力する。第一加工機1での内圧は図2(A)に示される通
り、通常は要求される下限値より大きいが、ポンプ33により第一加工機1が過剰に吸気
された場合には第一加工機1の内圧が著しく低下することになる。図3(B)はポンプが
過剰吸気した場合のシーム溶接機(第一加工機1)の内圧変動を示すグラフである。
【0028】
図3(B)において、ロードロック室の開閉により、シーム溶接機の内圧が高い値と低
い値とを繰り返すことになるが、ポンプ33によりシーム溶接機内が過剰吸気されると、
内圧の下限値は要求される下限値を下回る(実線参照)。本実施形態では、これを避ける
ために、ポンプ33での吸気を中止することで、シーム溶接機の低い圧力値が内圧の要求
される下限値を上回るようにできる(想像線参照)。
制御装置4は、第二圧力センサー324から逆止弁323とエアフィルター321との
間に流通する排気ガスの圧力値が異常状態にあるという信号を受信すると、ポンプ33に
停止信号を送る。
【0029】
次に、ガス搬送方法にかかる実施形態を図4のフローチャートに基づいて説明する。
図4に示される通り、まず、操作ボックス41に設けられた稼働ボタンを押すと、制御
装置4は配管内圧抜機構36の開閉弁362に信号を送り、この信号により、開閉弁36
2が「閉」の位置P1から「開」の位置P2に切り替えられ、所定時間T秒後に「開」の
位置P2から「閉」の位置P1に切り替えられる(S101)。開閉弁362の「閉」か
ら「開」への切替操作により、ガス導入部31内に残っていた排気ガスが流路361を通
って外部に排出され、逆に、「開」から「閉」への切替操作により、以降、第一加工機1
から送られる排気ガスが外部に漏出することを防止する。
【0030】
その後、制御装置4は操作機構343に「閉」となるように信号を送る。すると、操作
機構343は位置P1から位置P2となって「閉」となり(S102)、この操作機構3
43の閉操作により、開閉弁342,352がそれぞれ位置P1から位置P2となって「
閉」となる(S103)。これにより、新規ガス供給機構34の流路341が閉塞されて
新規ガスがガス導入部31に導入されることがなく、さらには、外部排出管351が閉塞
されてガス導入部31の排気ガスが外部に漏出されることがない。以上の操作が終了した
ら、ポンプ33が稼働される(S104)。また、このポンプ33の稼働操作に先立ち、
第一加工機1と第二加工機2とをそれぞれ作動させておく。
窒素を用いた第一加工機1の加工を実施すると、この加工に伴って不純物が生じる。こ
の不純物を含む排気ガスはガス導入部31を一端側に送り込まれる。ここで、ポンプ33
が稼働しているので、ガス導入部31の一端に送り込まれた排気ガスはエアフィルター3
21及び窒素清浄化用フィルター群322を通って他端側に接続された第二加工機2に送
られる。これらのエアフィルター321及び窒素清浄化用フィルター群322を排気ガス
が通ることで、排気ガスの中の不純物が濾過され、窒素の純度が第一加工機1から排出さ
れた直後の排気ガスに比べて高くなる。
【0031】
第一加工機1の内圧は第一圧力センサー11で検出されており、この第一圧力センサー
11から圧力値が制御装置4に送られる。第一加工機1の内圧は種々の影響を受けて変化
する。例えば、第一加工機1がシーム溶接機である場合には、ロードロック室の開閉によ
り、シーム溶接機の内部圧力が変化する。ここで、ポンプ33で排気ガスを吸い込む力が
大きい場合には、シーム溶接機の内圧が要求される値より低くなってしまうことがある。
この状態では、第一圧力センサー11で検出される信号は感知信号として制御装置4に送
られ、この制御装置4が第一圧力センサー11からの感知信号を受領したら(S105)
、ポンプ33に停止信号を送る(S106)。すると、ポンプ33の駆動が停止されるの
で、ポンプ33から第二加工機2に排気ガスが強制的に送られ、シーム溶接機の内圧が要
求された値より低くなることがない。
【0032】
そして、制御装置4から操作機構343に信号が送られ、この操作機構343は位置P
2から位置P1となって「開」となる(S107)。この操作機構343の開操作により
、開閉弁342,352がそれぞれ位置P2から位置P1となって「開」となり(S10
8)、これにより、新規ガス供給機構34の流路341が開放されて新規ガスがガス導入
部31に導入されるとともに、外部排出管351が開放されてガス導入部31の排気ガス
が外部に排出される。新規ガスがガス導入部31に導入されることで、ガス導入部31か
ら第二加工機2に窒素が引き続き供給されることになり、第二加工機2での作業が継続で
きる。さらに、外部排出管351が開放されることで、第一加工機1から送れる排気ガス
がガス導入部31のポンプ33より上流側に溜まって第一加工機1側に逆流することがな
い。
ロードロック室の開閉により第一加工機1の内圧が回復して、圧力回復の確認をすると
再スタートする(S109)。そのため、制御装置4からポンプ33に稼動信号が送られ
るが、ポンプ33のチャタリング(稼動、停止の繰り返し)を避けるために、タイマーが作
動して所定時間経過したら(S110)、最初のステップS101に戻る。
【0033】
制御装置4が第一圧力センサー11からの感知信号を受領しない状態では(S105)
、ポンプ33が引き続き稼働される。ガス導入部31の内圧は第二圧力センサー324で
検出され、その検出信号が制御装置4に送られる。制御装置4が第二圧力センサー324
から異常信号、つまり、ガス導入部31の内圧が基準範囲より大きくあるいは小さい場合
に発生される信号を受けると(S111)、制御装置4はポンプ33に停止信号を送る(
S106)。その後は、前述の工程を繰り返す。
ガス導入部31の内圧が基準範囲内にある場合には、引き続きポンプ33が稼働される
。ここで、操作ボックス41に設けられた停止ボタンを押すと、制御装置4は操作機構3
43に信号を送る。この操作機構343は位置P2から位置P1となって「開」となる(
S114)。この操作機構343の開操作により、開閉弁342,352がそれぞれ位置
P2から位置P1となって「開」となり(S115)、これにより、新規ガス供給機構3
4の流路341が開放されて新規ガスがガス導入部31に導入されるとともに、外部排出
管351が開放されてガス導入部31の排気ガスが外部に排出される。新規ガスがガス導
入部31に導入されることで、ガス導入部31から第二加工機2に窒素が引き続き供給さ
れることになり、外部排出管351が開放されることで、第一加工機1から送られる排気
ガスがガス導入部31のポンプ33より上流側に溜まって第一加工機1側に逆流すること
がない。この工程が完了したら、終了する。
【0034】
従って、本実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)窒素を利用して加工をする第一加工機1と、この第一加工機1で利用する窒素の純
度より低くても利用可能な不活性ガスを用いて加工をする第二加工機2と、第一加工機1
と第二加工機2との間に設けられ第一加工機1から排出されるとともに加工に伴って生じ
る不純物を含む排気ガスを第二加工機2に送るガス導入部31を有するガス供給装置3と
を備えてガス搬送システムを構成した。
そのため、本実施形態では、第一加工機1で排出され不純物が含まれる排気ガスを第二
加工機2でそのまま利用するので、第一加工機1と第二加工機2とで別々に製造された窒
素を用いる場合に比べて、全体の窒素の使用量が削減される。その上、第一加工機1で排
出される排気ガス中の不活性ガスの純度を上げることを必要としないから、窒素の純度を
上げるための特別な設備が不要とされ、コストダウン及び省エネルギーを図ることができ
る。工場全体における窒素消費量を削減できるので、窒素製造における電力量を低減でき
る。したがって、電力供給時に発生する二酸化炭素の削減による温暖化防止の効果を有す
る。
【0035】
(2)第一加工機1で排出された排気ガスから不純物を濾過するフィルター32をガス導
入部31に設けたから、第二加工機2で使用できる窒素の純度の範囲が広くなる。そのた
め、第二加工機2として使用できる機器類が多くなり、生産効率が上がる。
(3)フィルター32に排気ガスを供給するポンプ33をガス導入部31に設けたから、
フィルター32を用いることで、ガス導入部31の中で送られる排気ガスの圧力が低くな
っても、ポンプ33により強制的に第一加工機1から第二加工機2へ排気ガスが送られる
、そのため、第二加工機2において窒素が安定供給されることになり、第二加工機2での
運転が安定する。
【0036】
(4)フィルター32は、主に脈動を抑えるエアフィルター321を備えているから、こ
のエアフィルター321により安定した圧力の窒素を第二加工機2に送ることができる。
(5)フィルター32は、エアフィルター321より下流側に配置された窒素清浄化用フ
ィルター群322を備え、この窒素清浄化用フィルター群322は、フィルター付きレギ
ュレーター326と、このフィルター付きレギュレーター326より目の細かいスーパー
ミストフィルター327とを備えているから、粒径の大きな不純物と小さな不純物とを2
種類のフィルターで効率的に捕捉することができる。
【0037】
(6)ガス導入部31に新規不活性ガスを供給する新規ガス供給機構34を設け、この新
規ガス供給機構34のガス導入部31への新規不活性ガスの供給を許容する操作機構34
3を新規ガス供給機構34に設けたから、ポンプ33の駆動中止に伴って第一加工機1か
ら第二加工機2への排気ガスの供給が停止しても、新規ガス供給機構34によってガス導
入部31を通じて第二加工機2に新規不活性ガスを供給することができることになり、第
二加工機2での加工を継続させることができる。
【0038】
(7)第一加工機1で使用される窒素の圧力を検出する第一圧力センサー11を第一加工
機1に設け、この第一圧力センサー11で検出される信号でポンプ33の駆動を制御装置
4で制御する構成とし、この制御装置4は、第一圧力センサー11で検出される圧力が第
一加工機1で必要な基準圧力に満たないことを検出した信号を受領してポンプ33に駆動
停止信号を出力する構成とした。そのため、第一加工機1で必要な基準圧力に満たないこ
とを第一圧力センサー11が検出し、この第一圧力センサー11から出力される信号を制
御装置4が受領すると、制御装置4でポンプ33の駆動が停止されるから、第一加工機1
から必要以上に排気ガスが吸引されることが防止されることになり、第一加工機1での作
業環境が維持される。
【0039】
(8)ガス導入部31のポンプ33より上流側に第一加工機1から排出される排気ガスを
外部に排出する外部排出機構35が接続される。そして、外部排出機構35は、ガス導入
部31に一端が接続された外部排出管351と、この外部排出管351に設けられた開閉
弁352とを備え、この開閉弁352をポンプ33の駆動が停止される際に開放操作する
ものにした。従って、ポンプ33の駆動が停止して第二加工機2に送られない排気ガスは
外部排出管351を通じて外部に排出されることになるため、ポンプ33が停止しても、
第一加工機1から排出される排気ガスは第一加工機1やガス導入部31に溜まることがな
くなり、第一加工機1での作業環境が維持される。
【0040】
(9)開閉弁352は開閉弁342とともに操作機構343で開閉操作される構成とした
から、制御装置4から操作機構343に信号を出力することで、開閉弁352と開閉弁3
42とを同時に切替操作することができる。つまり、2つの開閉弁342,352を1つ
の操作機構343で作動させることができるので、装置の構造を簡易なものにすることが
できる。
【0041】
(10)ガス導入部31に配管内圧抜機構36を設けたから、ポンプ33を作動させる前
にガス導入部31に残存している排気ガスを外部に排出することで、ポンプ33の再稼動
を容易なものとする。また、ガス導入部31に長期間残存している排気ガスをそのまま第
二加工機2に用いることがないので、第二加工機2の加工に不具合を生じさせることがな
い。
(11)配管内圧抜機構36を、一端がガス導入部31に接続された流路361と、この
流路361に設けられた開閉弁362とを備えて構成したから、配管内圧抜機構36の構
造を簡易なものにすることができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成
できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記実施形態では、第二加工機2を1台としたが、本発明では、第二加工機2
を複数台に配置するものでもよい。この場合、1台のガス供給装置3ガス導入部31の下
流側を分岐させ、これらの分岐された端部をそれぞれ第二加工機2と接続する構成として
もよい。
本発明では、不活性ガスとして、窒素以外に、アルゴン、ヘリウムを用いてもよい。
【0043】
本発明では、フィルター32を必ずしも設けることを要しない。仮に、設ける場合であ
っても、1つのみ設けるものであってもよい。
そして、第一加工機1から排出される排気ガスの圧力と第二加工機2で使用される排気
ガスの圧力とに大きな差があれば、ポンプ33は不要である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、シーム溶接機、半導体製造装置、その他の装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…第一加工機、2…第二加工機、3…ガス供給装置、4…制御装置、11…第一圧力
センサー、31…ガス導入部、32…フィルター、33…ポンプ、34…新規ガス供給機
構、35…外部排出機構、36…配管内圧抜機構、342…開閉弁、343…操作機構、
344…窒素供給源、351…外部排出管、352…開閉弁、362…開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスを利用して加工をするとともに加工に伴って生じる不純物を含む排気ガスを
排出する第一加工機と、この第一加工機で利用する不活性ガスの純度より低くても利用可
能な不活性ガスを用いて加工をする第二加工機との間に設けられ、
前記第一加工機から排出される前記排気ガスを前記第二加工機に送るガス導入部を備え
たことを特徴とするガス供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガス供給装置において、
前記ガス導入部は、前記第一加工機で排出された前記排気ガスから不純物を濾過するフ
ィルターと、このフィルターに前記排気ガスを供給するポンプとを備えたことを特徴とす
るガス供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたガス供給装置において、
前記ガス導入部に新規不活性ガスを供給する新規ガス供給機構と、この新規ガス供給機
構の前記ガス導入部への新規不活性ガスの供給を前記ポンプの駆動が停止した信号を受け
て許容する操作機構とを備えたことを特徴とするガス供給装置。
【請求項4】
不活性ガスを利用して加工をするとともに加工に伴って生じる不純物を含む排気ガスを
排出する第一加工機と、この第一加工機で利用する不活性ガスの純度より低くても利用可
能な不活性ガスを用いて加工をする第二加工機と、請求項3に記載されたガス供給装置と
、前記第一加工機で使用される不活性ガスの圧力を検出する第一圧力センサーの検出信号
からの信号で前記ポンプの駆動を制御する制御装置とを備え、この制御装置は、前記第一
圧力センサーで検出される圧力が前記第一加工機で必要な基準圧力に満たないことを検出
した信号を受領して前記ポンプに駆動停止信号を出力することを特徴とするガス搬送シス
テム。
【請求項5】
請求項4に記載されたガス搬送システムにおいて、
前記ガス導入部の前記ポンプより上流側には前記第一加工機から排出される前記排気ガ
スを外部に排出する外部排出管が接続され、この外部排出管には開閉弁が設けられ、この
開閉弁と前記制御装置とは接続され、前記制御装置は、前記ポンプの駆動を停止する信号
を出力した際に前記開閉弁を開放操作する信号を前記開閉弁に出力することを特徴とする
ガス搬送システム。
【請求項6】
不活性ガスを用いて第一加工機で加工をし、この第一加工機の加工に伴って生じる不純
物を含む排気ガスを、前記第一加工機で利用する不活性ガスの純度より低くても利用可能
な第二加工機で再使用するものであって、
前記第一加工機で排出された前記排気ガスから不純物をフィルターで濾過し、この不純
物が濾過された排気ガスをポンプで前記第二加工機に送り、前記第一加工機の内圧が基準
値に満たない場合には前記ポンプの駆動を停止して第二加工機への排気ガスへの供給を中
止することを特徴とするガス搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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