ガス分離方法及び装置
【課題】2以上の成分を有する原料ガスから、所定の成分を有する分離対象ガスを高濃度で分離する方法及び装置を提供する。
【解決手段】吸着塔11にて2以上の成分を有する原料ガスC0から分離対象ガスC1を吸着剤Wに吸着し、次いで再生塔12にて吸着剤Wから分離対象ガスC1を、再生塔12の内部の圧力を吸着塔11の内部の圧力よりも低くして脱着させ、該脱着後の吸着剤Wを吸着塔11に戻すことにより分離対象ガスC1を連続的に分離するに当たり、吸着剤Wは吸着塔11の上部から下部へ、且つ再生塔12の下部から上部へと循環し、脱着された分離対象ガスC1の一部を吸着塔11内部の下方に供給して吸着塔11内部の下方に分離対象ガスC1の高濃度領域を形成し、吸着剤Wに対して該高濃度領域を通過させて分離対象ガスC1の吸着割合を高めることを特徴とする。
【解決手段】吸着塔11にて2以上の成分を有する原料ガスC0から分離対象ガスC1を吸着剤Wに吸着し、次いで再生塔12にて吸着剤Wから分離対象ガスC1を、再生塔12の内部の圧力を吸着塔11の内部の圧力よりも低くして脱着させ、該脱着後の吸着剤Wを吸着塔11に戻すことにより分離対象ガスC1を連続的に分離するに当たり、吸着剤Wは吸着塔11の上部から下部へ、且つ再生塔12の下部から上部へと循環し、脱着された分離対象ガスC1の一部を吸着塔11内部の下方に供給して吸着塔11内部の下方に分離対象ガスC1の高濃度領域を形成し、吸着剤Wに対して該高濃度領域を通過させて分離対象ガスC1の吸着割合を高めることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの分離方法及び装置に関し、特に、高炉等から排出される2以上の成分を有するガスから分離対象のガスを高濃度で分離する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学工業や石油精製業、製鉄所等の様々な設備において、副生ガスと呼ばれるガスが発生し、この副生ガスには、水素や一酸化炭素、メタンといった、燃料として利用可能な成分の他に、昨今の環境問題から排出削減が要請されている二酸化炭素等が含有されている。従来、こうした副生ガスから特定の成分を抽出し、高濃度で分離回収する様々な技術が開発されてきた。
【0003】
このような技術の1つに、圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption,PSA)法がある。このPSA法は、吸着剤に対するガス成分の吸着量が、ガス種及びその分圧によって異なることを利用したガスの分離方法であり、分離対象のガスを吸着剤へ吸着させる工程と、吸着したガスを吸着剤から脱着させて、吸着剤を再生する工程とを含み、そのためにはガスを加圧又は減圧することが必要である。
【0004】
こうしたPSA法に基づくガス分離装置の一形態に、複数の塔で構成される固定PSA装置がある(例えば、特許文献1参照)。この装置は、装置を構成する各塔において、吸着、脱圧、洗浄、減圧、脱着等の多くの工程を含むバッチ式のシステムであり、分離対象ガスは断続的に発生する。このような固定PSA装置は、3塔以上の吸着塔を備えるのが通例であり、その各塔が所定の成分ガスを順次発生する。そのため、発生した分離対象ガスは、装置の下流側に設けられたバッファタンクに一時的に蓄えられ、ここで整流されることにより擬似的に連続的な分離対象ガスの分離が行われる。
【0005】
しかし、上述のように、分離対象ガスの発生を擬似的にも連続的に行い、また発生したガスを速やかに排出するためには、大容量を有するバッファタンクが必要となる。また、バッチ式のシステムのため、装置は多くのバルブを有しており、更にこれらを頻繁に切り換えて運転する必要があるため、その保守や交換に多くの労力を有する問題があった。
【0006】
そこで、原料ガスから分離対象ガスを吸着させる吸着剤を流動層として使用し、分離対象ガスを吸着剤に吸着させる吸着塔と、該吸着塔の内部圧力よりも低い圧力にてガス吸着後の吸着剤から分離対象ガスを脱着させて吸着剤を再生する再生塔との間において、吸着剤を循環させて連続的にガスを発生させる、小型化が可能な連続PSA装置が提案されている。
例えば、特許文献2には、流動層連続PSA装置を用いて、燃焼用空気から酸素を濃縮する方法について記載されている。
また、特許文献3には、分離対象ガスの吸着剤への吸着と脱着における温度差による吸着量の変動を利用する温度スイング吸着(Temperature Swing Adsorption,TSA)法により、ボイラーの排ガスから二酸化硫黄を除去する技術について記載されている。更に、特許文献4には、PSA法とTSA法を併用して、連続的且つ大量のガスを分離する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−007719号公報
【特許文献2】特開昭63−17205号公報
【特許文献3】特表昭47−46265号公報
【特許文献4】特開平5−237329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2〜4に記載された技術では、バック・ミキシング(逆混合)のため、分離された分離対象ガスの濃度を高めることが困難であり、これまで高濃度の分離対象ガスを得るためには、固定PSA装置に頼らざるを得なかった。その結果、上述のように大容量のバッファタンクが必要となり、また、電気機器類の連続運転によりアイドル・タイムが発生する等の不利点が存在するため、小型な連続PSA装置を用いて、高濃度の分離対象ガスを分離させる方法の確率が希求されていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、原料ガスから分離対象ガスを高濃度で分離する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、上記の課題を解決する方途について鋭意検討したところ、再生塔から回収された分離対象ガスの一部を吸着塔に供給することにより、吸着塔の内部に高濃度の分離対象ガス領域を形成し、該高濃度分離対象ガス領域に吸着剤を通過させて、分離対象ガスの吸着剤への吸着割合を高めることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明のガス分離装置は、2以上の成分を有する原料ガスを吸着剤を装入した吸着塔に導いて該原料ガス中の分離対象ガスを吸着剤に吸着させ、該ガス吸着後の吸着剤を吸着塔から再生塔へ導いて、該再生塔の内部圧力を前記吸着塔内圧力よりも低くして前記吸着剤に吸着させた前記分離対象ガスを脱着して回収する一方、前記脱着処理後の吸着剤を前記再生塔から前記吸着塔に戻すことにより前記吸着塔と前記再生塔との間にて前記吸着剤を循環させて前記分離対象ガスを連続的に分離するに当たり、前記再生塔にて回収された分離対象ガスの一部を前記吸着塔に供給して高濃度の前記分離対象ガスの領域を形成し、該高濃度分離対象ガス領域を通過した吸着剤を前記再生塔へ導くことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のガス分離方法において、前記再生塔の温度は前記吸着塔の温度よりも高く設定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のガス分離方法において、前記分離対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のガス分離方法において、前記吸着剤は、ゼオライト又は活性炭であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のガス分離装置は、2以上の成分を有する原料ガスが導かれ、該原料ガス中の分離対象ガスを吸着する吸着剤が装入される吸着塔と、該吸着塔から前記吸着剤が導かれ、該吸着剤から前記分離対象ガスを脱着させる再生塔との間にて、前記吸着剤を循環させて前記分離対象ガスを連続的に分離するガス分離装置において、前記脱着された分離対象ガスの一部を前記吸着塔内部の下方に供給する分離対象ガス供給管を有し、前記原料ガスの前記吸着塔への供給管を、前記分離対象ガス供給管の前記吸着塔への接続位置よりも上部に接続したことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のガス分離装置において、前記再生塔の温度は前記吸着塔の温度よりも高く設定することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のガス分離装置において、前記分離対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のガス分離装置において、前記吸着剤は、ゼオライト又は活性炭であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸着塔から再生塔へ導入される吸着剤が高濃度の分離対象ガス領域を通過するため、分離対象ガスの吸着剤への吸着割合を高めることができ、高濃度の分離対象ガスを連続的に発生させることができる。また、固定PSA装置のように大容量のバッファタンクを必要としないため、装置を小型化することができる。更に、吸着塔及び再生塔の運転を切り換える必要がないため、装置から電磁弁等の自動弁を省略することができ、これらの保守や交換にかかるコストが不要となり、高濃度の分離対象ガスを従来に比べて安価に効率よく発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ガスA及びBに対する等温吸着線を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によるガス分離装置を示す図である。
【図3】粒子系及び粒子密度と粒子の流動性との関係を示すGeldart図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本発明のガス分離方法は、吸着塔にて原料ガスから分離対象ガスを吸着剤に吸着させ、該ガス吸着後の吸着剤を吸着塔から再生塔へ導いて、再生塔の内部圧力を前記吸着塔内圧力よりも低くして吸着剤に吸着させた分離対象ガスを脱着して回収する一方、脱着処理後の吸着剤を再生塔から吸着塔に戻すことにより吸着塔と再生塔との間にて吸着剤を循環させて分離対象ガスを連続的に分離する。
その際、脱着された分離対象ガスの一部を吸着塔に供給して高濃度の分離対象ガス領域を形成し、該高濃度分離対象ガス領域を通過した吸着剤を前記再生塔へ導くことが肝要である。これにより、吸着剤を高濃度分離対象ガス領域に通過させて分離対象ガスの吸着剤への吸着割合を高めることができ、分離対象ガスを高濃度で分離させることができる。
【0022】
ここで、再生塔から排気された分離対象ガスの一部を吸着塔に供給することにより、分離対象ガスの濃度を高めることができる原理について説明する。
図1は、所定の温度でのガスの圧力と吸着剤に吸着するガスの吸着量との関係を示す等温吸着線を示す図であり、原料ガスの圧力と、該原料ガスに含まれる2つの成分、ガスA及びBの吸着量との関係を示している。この等温吸着線は、使用する吸着剤とガスの種類により変化するが、ガスの圧力が上昇すると吸着量が増加し、ガスの圧力が低下すると吸着量が低下する傾向を示す。また、同じ圧力下であっても、ガスの種類によって吸着量は異なる。図1に示す等温吸着線の場合には、ガスAとガスBの混合比が1:1の混合ガスを、P1の2倍の圧力で吸着させ、P2の2倍の圧力で脱着させると、脱着したガス中に含まれるガスAとガスBの比はaA:aBとなる。このように、ガスA及びBに対する等温吸着線が図1のような場合、混合比が1:1の混合ガスを吸着させると、脱着したガスに含まれるガスA及びBの混合比がaA:aBとなり、ガスAの割合が上昇するのである。これがPSA法により特定のガスの濃度を高める原理である。
【0023】
本発明のガス分離方法により分離対象ガスの濃度が上昇する原理も、上述のPSA法により特定のガスの濃度を高める原理と同じである。即ち、吸着塔に供給される分離対象ガスにおいて、分離対象ガス(ガスA)の分圧はその他の成分ガス(ガスB)の分圧よりも高く、それぞれP1及びP2である。従って、再生塔において形成される高濃度分離ガス領域においても、分離対象ガス及びその他の成分ガスの分圧の比率もP1:P2になる。再生塔における原料ガスの吸着及び脱着時に、分離対象ガスの分圧がP1からP2へ、その他の成分ガスの分圧がP2からP3へ変化する場合、ガスAとガスBの脱着後の比率はaA:aB’となり、分離対象ガスの濃度を更に高めることができる。こうして、本発明のガス分離方法において、高濃度分離対象ガス領域に吸着剤を通過させることにより、分離対象ガスの濃度を高めることができるのである。
以下、本発明のガス分離方法について、使用する装置を示す図2を参照して説明する。
【0024】
図2は、本発明に従うガス分離装置を示す図である。このガス分離装置1は、2以上の成分を有する原料ガスC0が導かれ、該原料ガスC0中の分離対象ガスC1を吸着する吸着剤Wが装入される吸着塔11と、該吸着塔11から吸着剤Wが導かれ、該吸着剤Wから分離対象ガスC1を脱着させる再生塔12との間にて、吸着剤Wを循環させて分離対象ガスC1を連続的に分離するように構成されている。ここで、分離された分離対象ガスの一部C4を吸着塔11に供給する洗浄ガス供給管27を設けることが肝要である。これにより、高濃度の分離対象ガスC1を連続的に発生することができる。
【0025】
このガス分離装置1において、流動層を構成する吸着剤Wは、吸着塔11の内部を上方から下方へ移動して吸着剤導出管23を介して導出され、再生塔12の内部を下方から上方に移動して吸着剤導出管24を介して導出されて再び吸着塔11の上部へ戻され、ガス分離装置1内を循環するように構成されている。
【0026】
分離対象ガスC1の一部を吸着塔11に供給する洗浄ガス供給管27の吸着塔11での接続位置は、吸着剤Wが導出される吸着剤導出管23の接続位置の近傍とし、高濃度分離対象ガス領域を吸着塔11内部の下方にて形成するようにする。
【0027】
また、吸着塔11内部における分離対象ガスC1の濃度は、上方から下方に向かうにつれて上昇する。原料ガスC0中に含まれる分離対象ガスC1の濃度は、吸着塔11内部の上方での濃度よりも高く、吸着塔11内部の下方の高濃度分離対象ガス領域よりも低いため、原料ガス供給管21は、洗浄ガス供給管27の接続位置よりも上方の適切な位置に接続し、少なくとも吸着塔11の下方に形成された高濃度分離対象ガス領域を破壊しないように構成する。
【0028】
尚、上記高濃度分離対象ガス領域用のチャンバ(図示せず)を吸着塔11と再生塔12との間に別に用意し、このチャンバに洗浄ガス供給管27を接続して分離された分離対象ガスC4を供給し、チャンバ内部を高濃度分離対象ガス領域とし、吸着剤Wを該高濃度分離対象ガス領域に通過させるように構成することもできる。
【0029】
吸着塔11の吸着剤Wを流動化させるために、吸着塔11及び再生塔12の下部にディフューザ(図示せず)を設けることができる。このディフューザの形状は特に限定されず、様々な形状のディフューザを設けることができる。ディフューザの面積に対する開口部の面積の割合である開口率は、20%以上70%以下であることが好ましい。
【0030】
また、吸着塔11及び再生塔12、又は吸着塔11と再生塔12とを結ぶ吸着剤導出管23及び24に温度制御手段(図示せず)を設置して、これらの外部及び/又は内部から加熱及び/又は冷却するTSA法を併用することにより、分離対象ガスC1の濃度を更に高めることができる。
【0031】
尚、流動層である吸着剤Wの流動性を向上させるために、分離対象ガス送気管25により排気された分離対象ガスの一部C4を、再生塔12の下部から供給するように構成することができる。
【0032】
以下、このガス分離装置1の動作について説明する。
まず、原料ガス供給管21を流通する原料ガスC0を、原料ガス供給手段13により吸着塔11に供給するとともに、吸着塔11の内部を所定の圧力に設定する。供給された原料ガスC0を構成する成分のうち、分離対象ガスC1を吸着剤Wに優先的に吸着させた後に、吸着剤導出管23から吸着剤Wを導出する。吸着剤Wに吸着されなかった原料ガスC0は、排気ガスC2として排気管22から排気される。原料ガス供給手段13としては、例えばガス圧縮機を使用できる。
【0033】
次いで、吸着塔11から導出された吸着剤Wは、再生塔減圧手段14により吸着塔11内部の圧力よりも低い圧力に設定された再生塔12に導入され、分離対象ガスC1が吸着剤Wから脱着されて再生され、吸着剤導出管24から導出される。脱着された分離対象ガスC1は、分離対象ガス送気管25から排気される。再生塔減圧手段14としては、例えば減圧ポンプを使用できる。
【0034】
吸着剤導出管24から導出された吸着剤Wは、吸着剤供給手段15により吸着塔11の上部から吸着塔11内部に戻される。また、分離対象ガス送気管25から排気された分離対象ガスC1は、製品ガス回収管26により製品ガスC3として回収されるとともに、排出された分離対象ガスの一部C4は、分離対象ガス供給手段16により、洗浄ガス供給管27を経て吸着塔11内部の下方に戻される。吸着剤供給手段15としては、例えばスクリューフィーダーを使用でき、また、分離対象ガス供給手段16としては、例えばガス・ブロアーを使用できる。
【0035】
このような本発明のガス分離装置1により、原料ガスC0から分離対象ガスC1を高濃度で分離することができる。
【0036】
以下、本発明のガス分離方法における諸条件について説明する。
原料ガスC0としては、例えば高炉から排気された2以上の成分を有する副生ガスを使用することができる。
また、分離対象ガスC1は、水素、一酸化炭素、メタン、酸素、窒素、二酸化炭素等とすることができるが、特に、二酸化炭素の分離に適している。
【0037】
原料ガスC0の吸着工程及び脱着工程において、吸着塔11及び再生塔12内部の圧力は、吸着剤Wの吸着性能に合わせて自由に適切に設定することができ、常圧以下での運転も容易に行うことができる。
【0038】
使用する吸着剤Wは特に限定されず、PSA法において一般的に使用される如何なる種類の吸着剤も使用することができるが、分離対象ガスC1の吸着割合が高いものを適切に選択するようにする。本発明は、吸着剤Wを流動層として使用する連続的PSA法であるため、従来の組成のものに流動層を形成させるための物理的条件が満足されればよい。例えば、図3に示す、粒子径と粒子密度と流動性の関係を示したGeldartの分類におけるA粒子であれば好ましく、更に、流動性に優れたA’粒子であればより好ましい。吸着剤Wとしては、例えばゼオライトや活性炭を使用することができる。
【0039】
また、ガス分離装置1内における良好な流動性を維持しつつ、流動中の磨耗によるロスを低減するために、吸着剤Wは球形であることが好ましい。このような球形の吸着剤は、吸着剤そのものを球形に整形するか、又は吸着剤にバインダーを添加して球形に成形する等により製造することができる。流動性が良好でない吸着剤粒子を使用する場合には、グッド・フラクションと呼ばれる44μm以下の吸着剤粒子を添加することにより、流動性を改善することができる。
【0040】
本発明は、吸着剤Wを循環層として使用する連続的PSA法であるため、吸着塔11の吸着剤Wは流動している必要がある。この場合、吸着剤Wの流動は、吸着剤Wとガスの種類とによって決定される最小流動化速度以上の空塔速度を有していればよい。ただし、空塔速度が大きすぎる場合には、磨耗による吸着剤Wのロス及び吸着剤Wの飛散量が増加するため、吸着塔11及び再生塔12の上部の排気口(図示せず)には、サイクロン、フィルター等を設置して飛散を防止する必要があり、装置コストが上昇するとともに、装置内外の差圧の上昇等を招く。このため、空塔速度は、好ましくは最小流動化速度以上5m/秒以下であり、より好ましくは最小流動化速度以上0.5m/秒である。
【0041】
また、高濃度分離対象ガス領域の容量は、該領域を通過する吸着剤Wに、分離対象ガスC1が高い吸着割合で十分に吸着できるように構成する。
【0042】
こうして、原料ガスから、高濃度の分離対象ガスを含む製品ガスを連続的に分離することができる。
【0043】
上述の連続PSA法に加えて、吸着塔11及び再生塔12を外部及び/又は内部から加熱及び/又は冷却することにより、TSA法を併用することができる。即ち、分離対象ガスC1の吸着剤Wへの吸着及び脱着の際に、温度条件をスイングする。この方法も、バッチ式の固定PSA法とは異なり、加熱及び/又は冷却を連続的に行うことができ、また、流動層を構成する吸着剤Wは伝熱係数が高いため、高濃度の分離対象ガスC1を効率的に分離することが可能である。
【0044】
例えば、再生塔12を加熱し、吸着塔11を冷却することにより、分離対象ガスC1が吸着剤Wに吸着する際の、分離対象ガスC1の吸着剤Wへの吸着割合の増大と、吸着剤Wから分離対象ガスC1を脱着させる際の、分離対象ガスC1の吸着剤Wへの残存率の低下とを同時達成することができる。
この加熱及び/又は冷却処理は、吸着塔11及び再生塔12の各々、又は吸着塔11と再生塔12とを結ぶ配管に温度制御手段を設置することにより行うことができる。あるいは、ガス分離装置1内を流通させるガスを加熱及び/又は冷却して行うこともできる。
【0045】
こうして、製品ガスにおける分離対象ガスの濃度を更に高めることができる。
【実施例】
【0046】
(発明例1)
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明に従うガス分離装置1を使用して、原料ガスC0から分離対象ガスC1である二酸化炭素を分離する処理を施した。吸着剤Wとして東ソー製ゼオラムF−9ゼオライトを粉砕し、平均粒径約70μmに粉砕した粒子を用いた。これを100g吸着塔11(内径30mm×500mm)に充填した。原料ガスC0の組成は二酸化炭素25%、窒素75%とし、原料ガス供給手段13であるガスポンプ13により原料ガス供給管21を介して40cc/minの割合にて、吸着塔11に供給した。二酸化炭素の吸着工程において、吸着塔11内部の圧力を300kPaとし、また、再生工程においては再生塔12内部の圧力を10kPaとした。また洗浄ガス供給管27により、製品ガスの1/3を吸着塔11底部より供給した。このような条件の下で二酸化炭素の分離処理を連続的に施した。その結果、分離された製品ガス中の二酸化炭素の濃度を分析したところ95%であり、二酸化炭素の回収率は90%であった。
【0047】
(発明例2)
発明例1における原料ガスC0からの二酸化炭素を分離する処理に、TSA法を併用して分離処理を施した。その際、吸着塔11の温度を20℃、再生塔12の温度を60℃とし、他の処理条件は発明例1と同一にした。その結果、分離された製品ガス中の二酸化炭素の濃度を分析したところ98%、二酸化炭素の回収率は95%であった。このように、TSA法を併用することにより、製品ガス中の二酸化炭素の濃度は更に上昇することが分かる。
【0048】
(比較例1)
PSA法に基づく従来のガス分離装置、即ち、製品ガスの一部を吸着塔に供給しない構成を有するガス分離装置を用いて、原料ガスC0から分離対象ガスC1である二酸化炭素を分離する処理を施した。使用する原料ガスC0、吸着材W、吸着塔11及び再生塔12の圧力等の処理条件は、全て発明例1と同一にした。その結果、製品ガスC0中の二酸化炭素の濃度は70%であり、二酸化炭素の回収率は80%と、いずれも発明例1よりも低い値となった。このように、本発明により、製品ガスC0中の分離対象ガスC1の濃度を大きく高めることができることが分かる。
【0049】
(比較例2)
TSA法に基づく従来のガス分離装置、即ち、分離対象ガスC1を吸着剤Wへ吸着及び脱着させる際の温度条件をスイングすることにより、原料ガスC0から分離対象ガスC1である二酸化炭素を分離する処理を施した。処理条件は、圧力を常圧にて一定とし、洗浄ガス供給管27より洗浄ガスを供給しなかったこと以外は、発明例2と同一にした。その結果、分離された製品ガス中の二酸化炭素の濃度を分析したところ72%となり、二酸化炭素の回収率は80%と、いずれも発明例2よりも低い結果となった。
【0050】
(比較例3)
PSA法及びTSA法を併用した従来のガス分離装置、により、原料ガスC0から分離対象ガスC1である二酸化炭素を分離する処理を施した。その際、洗浄ガス供給管27より洗浄ガスを供給しなかったこと以外は、発明例2と同一とした。その結果、分離された製品ガス中の二酸化炭素の濃度を分析したところ75%となり、二酸化炭素の回収率は85%と、いずれも発明例1よりも低い結果となった。
【符号の説明】
【0051】
1 ガス分離装置
11 吸着塔
12 再生塔
13 原料ガス供給手段
14 再生塔減圧手段
15 吸着剤供給手段
16 分離対象ガス供給手段
21 原料ガス供給管
22 排気管
23,24 吸着剤導出管
25 分離対象ガス送気管
26 製品ガス回収管
27 洗浄ガス供給管
C0 原料ガス
C1,C4 分離ガス
C2 排気ガス
C3 製品ガス
W 吸着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの分離方法及び装置に関し、特に、高炉等から排出される2以上の成分を有するガスから分離対象のガスを高濃度で分離する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学工業や石油精製業、製鉄所等の様々な設備において、副生ガスと呼ばれるガスが発生し、この副生ガスには、水素や一酸化炭素、メタンといった、燃料として利用可能な成分の他に、昨今の環境問題から排出削減が要請されている二酸化炭素等が含有されている。従来、こうした副生ガスから特定の成分を抽出し、高濃度で分離回収する様々な技術が開発されてきた。
【0003】
このような技術の1つに、圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption,PSA)法がある。このPSA法は、吸着剤に対するガス成分の吸着量が、ガス種及びその分圧によって異なることを利用したガスの分離方法であり、分離対象のガスを吸着剤へ吸着させる工程と、吸着したガスを吸着剤から脱着させて、吸着剤を再生する工程とを含み、そのためにはガスを加圧又は減圧することが必要である。
【0004】
こうしたPSA法に基づくガス分離装置の一形態に、複数の塔で構成される固定PSA装置がある(例えば、特許文献1参照)。この装置は、装置を構成する各塔において、吸着、脱圧、洗浄、減圧、脱着等の多くの工程を含むバッチ式のシステムであり、分離対象ガスは断続的に発生する。このような固定PSA装置は、3塔以上の吸着塔を備えるのが通例であり、その各塔が所定の成分ガスを順次発生する。そのため、発生した分離対象ガスは、装置の下流側に設けられたバッファタンクに一時的に蓄えられ、ここで整流されることにより擬似的に連続的な分離対象ガスの分離が行われる。
【0005】
しかし、上述のように、分離対象ガスの発生を擬似的にも連続的に行い、また発生したガスを速やかに排出するためには、大容量を有するバッファタンクが必要となる。また、バッチ式のシステムのため、装置は多くのバルブを有しており、更にこれらを頻繁に切り換えて運転する必要があるため、その保守や交換に多くの労力を有する問題があった。
【0006】
そこで、原料ガスから分離対象ガスを吸着させる吸着剤を流動層として使用し、分離対象ガスを吸着剤に吸着させる吸着塔と、該吸着塔の内部圧力よりも低い圧力にてガス吸着後の吸着剤から分離対象ガスを脱着させて吸着剤を再生する再生塔との間において、吸着剤を循環させて連続的にガスを発生させる、小型化が可能な連続PSA装置が提案されている。
例えば、特許文献2には、流動層連続PSA装置を用いて、燃焼用空気から酸素を濃縮する方法について記載されている。
また、特許文献3には、分離対象ガスの吸着剤への吸着と脱着における温度差による吸着量の変動を利用する温度スイング吸着(Temperature Swing Adsorption,TSA)法により、ボイラーの排ガスから二酸化硫黄を除去する技術について記載されている。更に、特許文献4には、PSA法とTSA法を併用して、連続的且つ大量のガスを分離する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−007719号公報
【特許文献2】特開昭63−17205号公報
【特許文献3】特表昭47−46265号公報
【特許文献4】特開平5−237329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2〜4に記載された技術では、バック・ミキシング(逆混合)のため、分離された分離対象ガスの濃度を高めることが困難であり、これまで高濃度の分離対象ガスを得るためには、固定PSA装置に頼らざるを得なかった。その結果、上述のように大容量のバッファタンクが必要となり、また、電気機器類の連続運転によりアイドル・タイムが発生する等の不利点が存在するため、小型な連続PSA装置を用いて、高濃度の分離対象ガスを分離させる方法の確率が希求されていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、原料ガスから分離対象ガスを高濃度で分離する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、上記の課題を解決する方途について鋭意検討したところ、再生塔から回収された分離対象ガスの一部を吸着塔に供給することにより、吸着塔の内部に高濃度の分離対象ガス領域を形成し、該高濃度分離対象ガス領域に吸着剤を通過させて、分離対象ガスの吸着剤への吸着割合を高めることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明のガス分離装置は、2以上の成分を有する原料ガスを吸着剤を装入した吸着塔に導いて該原料ガス中の分離対象ガスを吸着剤に吸着させ、該ガス吸着後の吸着剤を吸着塔から再生塔へ導いて、該再生塔の内部圧力を前記吸着塔内圧力よりも低くして前記吸着剤に吸着させた前記分離対象ガスを脱着して回収する一方、前記脱着処理後の吸着剤を前記再生塔から前記吸着塔に戻すことにより前記吸着塔と前記再生塔との間にて前記吸着剤を循環させて前記分離対象ガスを連続的に分離するに当たり、前記再生塔にて回収された分離対象ガスの一部を前記吸着塔に供給して高濃度の前記分離対象ガスの領域を形成し、該高濃度分離対象ガス領域を通過した吸着剤を前記再生塔へ導くことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のガス分離方法において、前記再生塔の温度は前記吸着塔の温度よりも高く設定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のガス分離方法において、前記分離対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のガス分離方法において、前記吸着剤は、ゼオライト又は活性炭であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のガス分離装置は、2以上の成分を有する原料ガスが導かれ、該原料ガス中の分離対象ガスを吸着する吸着剤が装入される吸着塔と、該吸着塔から前記吸着剤が導かれ、該吸着剤から前記分離対象ガスを脱着させる再生塔との間にて、前記吸着剤を循環させて前記分離対象ガスを連続的に分離するガス分離装置において、前記脱着された分離対象ガスの一部を前記吸着塔内部の下方に供給する分離対象ガス供給管を有し、前記原料ガスの前記吸着塔への供給管を、前記分離対象ガス供給管の前記吸着塔への接続位置よりも上部に接続したことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のガス分離装置において、前記再生塔の温度は前記吸着塔の温度よりも高く設定することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のガス分離装置において、前記分離対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のガス分離装置において、前記吸着剤は、ゼオライト又は活性炭であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸着塔から再生塔へ導入される吸着剤が高濃度の分離対象ガス領域を通過するため、分離対象ガスの吸着剤への吸着割合を高めることができ、高濃度の分離対象ガスを連続的に発生させることができる。また、固定PSA装置のように大容量のバッファタンクを必要としないため、装置を小型化することができる。更に、吸着塔及び再生塔の運転を切り換える必要がないため、装置から電磁弁等の自動弁を省略することができ、これらの保守や交換にかかるコストが不要となり、高濃度の分離対象ガスを従来に比べて安価に効率よく発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ガスA及びBに対する等温吸着線を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によるガス分離装置を示す図である。
【図3】粒子系及び粒子密度と粒子の流動性との関係を示すGeldart図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本発明のガス分離方法は、吸着塔にて原料ガスから分離対象ガスを吸着剤に吸着させ、該ガス吸着後の吸着剤を吸着塔から再生塔へ導いて、再生塔の内部圧力を前記吸着塔内圧力よりも低くして吸着剤に吸着させた分離対象ガスを脱着して回収する一方、脱着処理後の吸着剤を再生塔から吸着塔に戻すことにより吸着塔と再生塔との間にて吸着剤を循環させて分離対象ガスを連続的に分離する。
その際、脱着された分離対象ガスの一部を吸着塔に供給して高濃度の分離対象ガス領域を形成し、該高濃度分離対象ガス領域を通過した吸着剤を前記再生塔へ導くことが肝要である。これにより、吸着剤を高濃度分離対象ガス領域に通過させて分離対象ガスの吸着剤への吸着割合を高めることができ、分離対象ガスを高濃度で分離させることができる。
【0022】
ここで、再生塔から排気された分離対象ガスの一部を吸着塔に供給することにより、分離対象ガスの濃度を高めることができる原理について説明する。
図1は、所定の温度でのガスの圧力と吸着剤に吸着するガスの吸着量との関係を示す等温吸着線を示す図であり、原料ガスの圧力と、該原料ガスに含まれる2つの成分、ガスA及びBの吸着量との関係を示している。この等温吸着線は、使用する吸着剤とガスの種類により変化するが、ガスの圧力が上昇すると吸着量が増加し、ガスの圧力が低下すると吸着量が低下する傾向を示す。また、同じ圧力下であっても、ガスの種類によって吸着量は異なる。図1に示す等温吸着線の場合には、ガスAとガスBの混合比が1:1の混合ガスを、P1の2倍の圧力で吸着させ、P2の2倍の圧力で脱着させると、脱着したガス中に含まれるガスAとガスBの比はaA:aBとなる。このように、ガスA及びBに対する等温吸着線が図1のような場合、混合比が1:1の混合ガスを吸着させると、脱着したガスに含まれるガスA及びBの混合比がaA:aBとなり、ガスAの割合が上昇するのである。これがPSA法により特定のガスの濃度を高める原理である。
【0023】
本発明のガス分離方法により分離対象ガスの濃度が上昇する原理も、上述のPSA法により特定のガスの濃度を高める原理と同じである。即ち、吸着塔に供給される分離対象ガスにおいて、分離対象ガス(ガスA)の分圧はその他の成分ガス(ガスB)の分圧よりも高く、それぞれP1及びP2である。従って、再生塔において形成される高濃度分離ガス領域においても、分離対象ガス及びその他の成分ガスの分圧の比率もP1:P2になる。再生塔における原料ガスの吸着及び脱着時に、分離対象ガスの分圧がP1からP2へ、その他の成分ガスの分圧がP2からP3へ変化する場合、ガスAとガスBの脱着後の比率はaA:aB’となり、分離対象ガスの濃度を更に高めることができる。こうして、本発明のガス分離方法において、高濃度分離対象ガス領域に吸着剤を通過させることにより、分離対象ガスの濃度を高めることができるのである。
以下、本発明のガス分離方法について、使用する装置を示す図2を参照して説明する。
【0024】
図2は、本発明に従うガス分離装置を示す図である。このガス分離装置1は、2以上の成分を有する原料ガスC0が導かれ、該原料ガスC0中の分離対象ガスC1を吸着する吸着剤Wが装入される吸着塔11と、該吸着塔11から吸着剤Wが導かれ、該吸着剤Wから分離対象ガスC1を脱着させる再生塔12との間にて、吸着剤Wを循環させて分離対象ガスC1を連続的に分離するように構成されている。ここで、分離された分離対象ガスの一部C4を吸着塔11に供給する洗浄ガス供給管27を設けることが肝要である。これにより、高濃度の分離対象ガスC1を連続的に発生することができる。
【0025】
このガス分離装置1において、流動層を構成する吸着剤Wは、吸着塔11の内部を上方から下方へ移動して吸着剤導出管23を介して導出され、再生塔12の内部を下方から上方に移動して吸着剤導出管24を介して導出されて再び吸着塔11の上部へ戻され、ガス分離装置1内を循環するように構成されている。
【0026】
分離対象ガスC1の一部を吸着塔11に供給する洗浄ガス供給管27の吸着塔11での接続位置は、吸着剤Wが導出される吸着剤導出管23の接続位置の近傍とし、高濃度分離対象ガス領域を吸着塔11内部の下方にて形成するようにする。
【0027】
また、吸着塔11内部における分離対象ガスC1の濃度は、上方から下方に向かうにつれて上昇する。原料ガスC0中に含まれる分離対象ガスC1の濃度は、吸着塔11内部の上方での濃度よりも高く、吸着塔11内部の下方の高濃度分離対象ガス領域よりも低いため、原料ガス供給管21は、洗浄ガス供給管27の接続位置よりも上方の適切な位置に接続し、少なくとも吸着塔11の下方に形成された高濃度分離対象ガス領域を破壊しないように構成する。
【0028】
尚、上記高濃度分離対象ガス領域用のチャンバ(図示せず)を吸着塔11と再生塔12との間に別に用意し、このチャンバに洗浄ガス供給管27を接続して分離された分離対象ガスC4を供給し、チャンバ内部を高濃度分離対象ガス領域とし、吸着剤Wを該高濃度分離対象ガス領域に通過させるように構成することもできる。
【0029】
吸着塔11の吸着剤Wを流動化させるために、吸着塔11及び再生塔12の下部にディフューザ(図示せず)を設けることができる。このディフューザの形状は特に限定されず、様々な形状のディフューザを設けることができる。ディフューザの面積に対する開口部の面積の割合である開口率は、20%以上70%以下であることが好ましい。
【0030】
また、吸着塔11及び再生塔12、又は吸着塔11と再生塔12とを結ぶ吸着剤導出管23及び24に温度制御手段(図示せず)を設置して、これらの外部及び/又は内部から加熱及び/又は冷却するTSA法を併用することにより、分離対象ガスC1の濃度を更に高めることができる。
【0031】
尚、流動層である吸着剤Wの流動性を向上させるために、分離対象ガス送気管25により排気された分離対象ガスの一部C4を、再生塔12の下部から供給するように構成することができる。
【0032】
以下、このガス分離装置1の動作について説明する。
まず、原料ガス供給管21を流通する原料ガスC0を、原料ガス供給手段13により吸着塔11に供給するとともに、吸着塔11の内部を所定の圧力に設定する。供給された原料ガスC0を構成する成分のうち、分離対象ガスC1を吸着剤Wに優先的に吸着させた後に、吸着剤導出管23から吸着剤Wを導出する。吸着剤Wに吸着されなかった原料ガスC0は、排気ガスC2として排気管22から排気される。原料ガス供給手段13としては、例えばガス圧縮機を使用できる。
【0033】
次いで、吸着塔11から導出された吸着剤Wは、再生塔減圧手段14により吸着塔11内部の圧力よりも低い圧力に設定された再生塔12に導入され、分離対象ガスC1が吸着剤Wから脱着されて再生され、吸着剤導出管24から導出される。脱着された分離対象ガスC1は、分離対象ガス送気管25から排気される。再生塔減圧手段14としては、例えば減圧ポンプを使用できる。
【0034】
吸着剤導出管24から導出された吸着剤Wは、吸着剤供給手段15により吸着塔11の上部から吸着塔11内部に戻される。また、分離対象ガス送気管25から排気された分離対象ガスC1は、製品ガス回収管26により製品ガスC3として回収されるとともに、排出された分離対象ガスの一部C4は、分離対象ガス供給手段16により、洗浄ガス供給管27を経て吸着塔11内部の下方に戻される。吸着剤供給手段15としては、例えばスクリューフィーダーを使用でき、また、分離対象ガス供給手段16としては、例えばガス・ブロアーを使用できる。
【0035】
このような本発明のガス分離装置1により、原料ガスC0から分離対象ガスC1を高濃度で分離することができる。
【0036】
以下、本発明のガス分離方法における諸条件について説明する。
原料ガスC0としては、例えば高炉から排気された2以上の成分を有する副生ガスを使用することができる。
また、分離対象ガスC1は、水素、一酸化炭素、メタン、酸素、窒素、二酸化炭素等とすることができるが、特に、二酸化炭素の分離に適している。
【0037】
原料ガスC0の吸着工程及び脱着工程において、吸着塔11及び再生塔12内部の圧力は、吸着剤Wの吸着性能に合わせて自由に適切に設定することができ、常圧以下での運転も容易に行うことができる。
【0038】
使用する吸着剤Wは特に限定されず、PSA法において一般的に使用される如何なる種類の吸着剤も使用することができるが、分離対象ガスC1の吸着割合が高いものを適切に選択するようにする。本発明は、吸着剤Wを流動層として使用する連続的PSA法であるため、従来の組成のものに流動層を形成させるための物理的条件が満足されればよい。例えば、図3に示す、粒子径と粒子密度と流動性の関係を示したGeldartの分類におけるA粒子であれば好ましく、更に、流動性に優れたA’粒子であればより好ましい。吸着剤Wとしては、例えばゼオライトや活性炭を使用することができる。
【0039】
また、ガス分離装置1内における良好な流動性を維持しつつ、流動中の磨耗によるロスを低減するために、吸着剤Wは球形であることが好ましい。このような球形の吸着剤は、吸着剤そのものを球形に整形するか、又は吸着剤にバインダーを添加して球形に成形する等により製造することができる。流動性が良好でない吸着剤粒子を使用する場合には、グッド・フラクションと呼ばれる44μm以下の吸着剤粒子を添加することにより、流動性を改善することができる。
【0040】
本発明は、吸着剤Wを循環層として使用する連続的PSA法であるため、吸着塔11の吸着剤Wは流動している必要がある。この場合、吸着剤Wの流動は、吸着剤Wとガスの種類とによって決定される最小流動化速度以上の空塔速度を有していればよい。ただし、空塔速度が大きすぎる場合には、磨耗による吸着剤Wのロス及び吸着剤Wの飛散量が増加するため、吸着塔11及び再生塔12の上部の排気口(図示せず)には、サイクロン、フィルター等を設置して飛散を防止する必要があり、装置コストが上昇するとともに、装置内外の差圧の上昇等を招く。このため、空塔速度は、好ましくは最小流動化速度以上5m/秒以下であり、より好ましくは最小流動化速度以上0.5m/秒である。
【0041】
また、高濃度分離対象ガス領域の容量は、該領域を通過する吸着剤Wに、分離対象ガスC1が高い吸着割合で十分に吸着できるように構成する。
【0042】
こうして、原料ガスから、高濃度の分離対象ガスを含む製品ガスを連続的に分離することができる。
【0043】
上述の連続PSA法に加えて、吸着塔11及び再生塔12を外部及び/又は内部から加熱及び/又は冷却することにより、TSA法を併用することができる。即ち、分離対象ガスC1の吸着剤Wへの吸着及び脱着の際に、温度条件をスイングする。この方法も、バッチ式の固定PSA法とは異なり、加熱及び/又は冷却を連続的に行うことができ、また、流動層を構成する吸着剤Wは伝熱係数が高いため、高濃度の分離対象ガスC1を効率的に分離することが可能である。
【0044】
例えば、再生塔12を加熱し、吸着塔11を冷却することにより、分離対象ガスC1が吸着剤Wに吸着する際の、分離対象ガスC1の吸着剤Wへの吸着割合の増大と、吸着剤Wから分離対象ガスC1を脱着させる際の、分離対象ガスC1の吸着剤Wへの残存率の低下とを同時達成することができる。
この加熱及び/又は冷却処理は、吸着塔11及び再生塔12の各々、又は吸着塔11と再生塔12とを結ぶ配管に温度制御手段を設置することにより行うことができる。あるいは、ガス分離装置1内を流通させるガスを加熱及び/又は冷却して行うこともできる。
【0045】
こうして、製品ガスにおける分離対象ガスの濃度を更に高めることができる。
【実施例】
【0046】
(発明例1)
以下、本発明の実施例について説明する。
本発明に従うガス分離装置1を使用して、原料ガスC0から分離対象ガスC1である二酸化炭素を分離する処理を施した。吸着剤Wとして東ソー製ゼオラムF−9ゼオライトを粉砕し、平均粒径約70μmに粉砕した粒子を用いた。これを100g吸着塔11(内径30mm×500mm)に充填した。原料ガスC0の組成は二酸化炭素25%、窒素75%とし、原料ガス供給手段13であるガスポンプ13により原料ガス供給管21を介して40cc/minの割合にて、吸着塔11に供給した。二酸化炭素の吸着工程において、吸着塔11内部の圧力を300kPaとし、また、再生工程においては再生塔12内部の圧力を10kPaとした。また洗浄ガス供給管27により、製品ガスの1/3を吸着塔11底部より供給した。このような条件の下で二酸化炭素の分離処理を連続的に施した。その結果、分離された製品ガス中の二酸化炭素の濃度を分析したところ95%であり、二酸化炭素の回収率は90%であった。
【0047】
(発明例2)
発明例1における原料ガスC0からの二酸化炭素を分離する処理に、TSA法を併用して分離処理を施した。その際、吸着塔11の温度を20℃、再生塔12の温度を60℃とし、他の処理条件は発明例1と同一にした。その結果、分離された製品ガス中の二酸化炭素の濃度を分析したところ98%、二酸化炭素の回収率は95%であった。このように、TSA法を併用することにより、製品ガス中の二酸化炭素の濃度は更に上昇することが分かる。
【0048】
(比較例1)
PSA法に基づく従来のガス分離装置、即ち、製品ガスの一部を吸着塔に供給しない構成を有するガス分離装置を用いて、原料ガスC0から分離対象ガスC1である二酸化炭素を分離する処理を施した。使用する原料ガスC0、吸着材W、吸着塔11及び再生塔12の圧力等の処理条件は、全て発明例1と同一にした。その結果、製品ガスC0中の二酸化炭素の濃度は70%であり、二酸化炭素の回収率は80%と、いずれも発明例1よりも低い値となった。このように、本発明により、製品ガスC0中の分離対象ガスC1の濃度を大きく高めることができることが分かる。
【0049】
(比較例2)
TSA法に基づく従来のガス分離装置、即ち、分離対象ガスC1を吸着剤Wへ吸着及び脱着させる際の温度条件をスイングすることにより、原料ガスC0から分離対象ガスC1である二酸化炭素を分離する処理を施した。処理条件は、圧力を常圧にて一定とし、洗浄ガス供給管27より洗浄ガスを供給しなかったこと以外は、発明例2と同一にした。その結果、分離された製品ガス中の二酸化炭素の濃度を分析したところ72%となり、二酸化炭素の回収率は80%と、いずれも発明例2よりも低い結果となった。
【0050】
(比較例3)
PSA法及びTSA法を併用した従来のガス分離装置、により、原料ガスC0から分離対象ガスC1である二酸化炭素を分離する処理を施した。その際、洗浄ガス供給管27より洗浄ガスを供給しなかったこと以外は、発明例2と同一とした。その結果、分離された製品ガス中の二酸化炭素の濃度を分析したところ75%となり、二酸化炭素の回収率は85%と、いずれも発明例1よりも低い結果となった。
【符号の説明】
【0051】
1 ガス分離装置
11 吸着塔
12 再生塔
13 原料ガス供給手段
14 再生塔減圧手段
15 吸着剤供給手段
16 分離対象ガス供給手段
21 原料ガス供給管
22 排気管
23,24 吸着剤導出管
25 分離対象ガス送気管
26 製品ガス回収管
27 洗浄ガス供給管
C0 原料ガス
C1,C4 分離ガス
C2 排気ガス
C3 製品ガス
W 吸着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の成分を有する原料ガスを吸着剤を装入した吸着塔に導いて該原料ガス中の分離対象ガスを吸着剤に吸着させ、該ガス吸着後の吸着剤を吸着塔から再生塔へ導いて、該再生塔の内部圧力を前記吸着塔内圧力よりも低くして前記吸着剤に吸着させた前記分離対象ガスを脱着して回収する一方、前記脱着処理後の吸着剤を前記再生塔から前記吸着塔に戻すことにより前記吸着塔と前記再生塔との間にて前記吸着剤を循環させて前記分離対象ガスを連続的に分離するに当たり、
前記再生塔にて回収された分離対象ガスの一部を前記吸着塔に供給して高濃度の前記分離対象ガスの領域を形成し、該高濃度分離対象ガス領域を通過した吸着剤を前記再生塔へ導くことを特徴とするガス分離方法。
【請求項2】
前記再生塔の温度は前記吸着塔の温度よりも高く設定することを特徴とする、請求項1に記載のガス分離方法。
【請求項3】
前記分離対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分離方法。
【請求項4】
前記吸着剤は、ゼオライト又は活性炭であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス分離方法。
【請求項5】
2以上の成分を有する原料ガスが導かれ、該原料ガス中の分離対象ガスを吸着する吸着剤が装入される吸着塔と、該吸着塔から前記吸着剤が導かれ、該吸着剤から前記分離対象ガスを脱着させる再生塔との間にて、前記吸着剤を循環させて前記分離対象ガスを連続的に分離するガス分離装置において、
前記脱着された分離対象ガスの一部を前記吸着塔内部の下方に供給する分離対象ガス供給管を有し、
前記原料ガスの前記吸着塔への供給管を、前記分離対象ガス供給管の前記吸着塔への接続位置よりも上部に接続したことを特徴とするガス分離装置。
【請求項6】
前記再生塔の温度は前記吸着塔の温度よりも高く設定することを特徴とする、請求項5に記載のガス分離装置。
【請求項7】
前記分離対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とする、請求項5または6に記載のガス分離装置。
【請求項8】
前記吸着剤は、ゼオライト又は活性炭であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載のガス分離装置。
【請求項1】
2以上の成分を有する原料ガスを吸着剤を装入した吸着塔に導いて該原料ガス中の分離対象ガスを吸着剤に吸着させ、該ガス吸着後の吸着剤を吸着塔から再生塔へ導いて、該再生塔の内部圧力を前記吸着塔内圧力よりも低くして前記吸着剤に吸着させた前記分離対象ガスを脱着して回収する一方、前記脱着処理後の吸着剤を前記再生塔から前記吸着塔に戻すことにより前記吸着塔と前記再生塔との間にて前記吸着剤を循環させて前記分離対象ガスを連続的に分離するに当たり、
前記再生塔にて回収された分離対象ガスの一部を前記吸着塔に供給して高濃度の前記分離対象ガスの領域を形成し、該高濃度分離対象ガス領域を通過した吸着剤を前記再生塔へ導くことを特徴とするガス分離方法。
【請求項2】
前記再生塔の温度は前記吸着塔の温度よりも高く設定することを特徴とする、請求項1に記載のガス分離方法。
【請求項3】
前記分離対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス分離方法。
【請求項4】
前記吸着剤は、ゼオライト又は活性炭であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス分離方法。
【請求項5】
2以上の成分を有する原料ガスが導かれ、該原料ガス中の分離対象ガスを吸着する吸着剤が装入される吸着塔と、該吸着塔から前記吸着剤が導かれ、該吸着剤から前記分離対象ガスを脱着させる再生塔との間にて、前記吸着剤を循環させて前記分離対象ガスを連続的に分離するガス分離装置において、
前記脱着された分離対象ガスの一部を前記吸着塔内部の下方に供給する分離対象ガス供給管を有し、
前記原料ガスの前記吸着塔への供給管を、前記分離対象ガス供給管の前記吸着塔への接続位置よりも上部に接続したことを特徴とするガス分離装置。
【請求項6】
前記再生塔の温度は前記吸着塔の温度よりも高く設定することを特徴とする、請求項5に記載のガス分離装置。
【請求項7】
前記分離対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とする、請求項5または6に記載のガス分離装置。
【請求項8】
前記吸着剤は、ゼオライト又は活性炭であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載のガス分離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−157812(P2012−157812A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18775(P2011−18775)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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