説明

ガス分離膜を用いたガス製造方法およびガス製造装置

【課題】 必要とされる膜の面積(モジュール数)が少なくでき、簡便な手法で透過ガスの純度と回収率の安定性を確保することが可能なガス分離膜を用いたガス製造方法およびガス製造装置を提供すること。
【解決手段】 ガス分離膜S、原料ガス流路1、透過ガス流路2、残留ガス流路3、バイパス流路B、製品ガス流路4、圧力計測手段PT1等の計測手段あるいは流量調整手段FCbなどの調整手段を有するガス製造装置であって、前記計測手段の計測値によって、流量調整手段FCb等または/および圧力調整手段PC1等を制御し、製品ガス中の易透過性ガスの純度C4および易透過性ガスについての回収率を所望の範囲内に制御操作を行う機能を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離膜を用いたガス製造方法およびガス製造装置に関し、具体的には、選択的透過性を有するガス分離膜を用い、複数の成分ガスを含むガス混合物から特定のガス成分を分離回収するガス製造方法およびガス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工場あるいは各種の化学プロセス工場などにおいては、各工程における原料ガスあるいは処理ガスとして所定量の純度の高いガスが必要とされ、入手容易で低コストの原料からこうしたガスを分離して連続的に使用することが多く行われる。具体的には、例えば、空気から富化酸素ガスを得る場合、ナフサ分解ガスから水素を分離濃縮する場合、有機物蒸気を含むガス混合物から有機物蒸気を分離回収する場合、水性ガスから水素を分離する場合などが該当する。かかる工程においては、装置が小型で簡便であることから、選択的透過性を有するガス分離膜に透過性の異なるガス混合物を原料ガスとして供給し、透過ガスと残留ガスに分離し、易透過性ガスに富んだ透過ガスを製品として取り出す方法が採られることが多い。
【0003】
こうしたガス分離膜を用いたガス製造方法においては、その主要な性能に、透過ガスの純度と回収率があり、上記のような種々の用途においては、透過ガスの純度を一定条件とし回収率が高いことが望まれる。具体的には、図7に例示するような、圧縮機102、乾燥器108、加熱器109、ガス分離膜101を備えたガス分離部103、残留側圧力調整弁110、冷却器113透過側圧力調整弁111を備えた系を基本として、例えば、図8に示すようなカスケードサイクルが、従来用いられてきた。この例にあっては、二組のガス分離膜201(第1ガス分離膜201a及び第2ガス分離膜201b)が組み合わせて使用される。この構造にあっては、原料ガスg1は、第2ガス分離膜201bの透過性ガスg2aaと合流され、圧縮後、第1ガス分離膜201aに供給される。この状態で、第1ガス分離膜201aによる透過性ガスg2aが産出され、その残留性ガスg2bは、第2ガス分離膜201bの原料ガスとして供給される。この第2ガス分離膜201bでは、残留性ガスが産出される。それからの透過性ガスg2aaは、元々の原料ガスと合流することにより再利用される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−33222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記装置あるいは方法によっては、いくつかの課題が生じることがあった。つまり、図7のような基本的な構成にあっては、原料ガスの全量を処理するため必要とされる膜の面積(モジュール数)が大きくなることがある、また、原料ガスの流量が変化する場合、他の運転条件をそのままにしておくと、純度が変化して問題となることがある。具体的には、原料ガスの流量が基準の値から減少した時、他の運転条件をそのままにしておくと、透過ガスの割合が増加し、残留ガスの割合は減少する。即ち、残留ガスにおける透過率の低い成分(難透過性ガス)の回収率は減少し、その割合は増加する。一方、透過ガスに於ける透過率の高い成分(易透過性ガス)の回収率は増加するが、その割合は減少する。この場合、特に、透過ガスが製品であると、製品純度が低下するため、問題となる。図8のようなカスケードサイクルも同様に、原料ガスの流量が変化する時は、最初に述べた基本的な構成と同様、その影響によって、製品ガスの純度が低下する。
【0006】
また、他の条件を変えずに、ガス分離膜の膜面積を増加してゆくと、透過ガス中の易透過性ガスの濃度(以下「透過ガスの純度」といい、原料ガス・残留ガス・製品ガス・バイパスガスについても同様に表現する。)は単調降下し、原料ガス中の易透過性ガスについての回収率は単調増加する。同様に、ガス分離膜に対する原料ガスや透過ガスの流量を変化させたときも、所望の透過ガスの純度を確保しながら回収率の安定性を確保することが困難であった。また、実動運転においては、原料ガスの最大流量に対して例えば100%から約50%程度まで連続的に減量する条件で運転されることが好ましく、こうした減量運転時において、所望の純度と回収率を確保できる制御方法が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、選択的透過性を有するガス分離膜に透過性の異なるガス混合物を原料ガスとして供給し、透過ガスと残留ガスに分離して易透過性ガスに富んだ透過ガスあるいは該透過ガスと難透過性ガスに富んだ残留ガスを製品とするガス製造装置において、必要とされる膜の面積(モジュール数)を少なくでき、簡便な手法で透過ガスの純度と回収率の安定性を確保することが可能なガス分離膜を用いたガス製造方法およびガス製造装置を提供することである。特に、原料ガスの流量が減少した場合も、モジュール数を変更することなく連続的に、所望の製品ガスの純度や回収率を確保できるガス製造方法およびガス製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すガス分離膜を用いたガス製造方法およびガス製造装置により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は、選択的透過性を有するガス分離膜に対して透過性の異なる複数の成分ガスを含むガス混合物を原料ガスとして供給し、該ガス分離膜によって透過ガスと残留ガスに分離し、易透過性ガスに富んだ透過ガスあるいは該透過ガスと難透過性ガスに富んだ残留ガスを製品として製造する方法であって、前記原料ガスの一部をバイパスガスとして前記透過ガスに添加するとともに、該バイパスガスの流量を制御して、易透過性ガスの所望の純度の製品ガスを作製するとともに、易透過性ガスについて所望の回収率を確保することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、選択的透過性を有するガス分離膜、該ガス分離膜に対して透過性の異なる複数の成分ガスを含むガス混合物を供給する原料ガス流路、前記ガス分離膜を透過する透過ガスを取り出す透過ガス流路、前記ガス分離膜からの残留ガスを供出する残留ガス流路、前記原料ガス流路から分岐され、前記透過ガス流路と合流するバイパス流路、該合流点以降において作製された混合ガスを製品ガスとして供出する製品ガス流路、前記流路のいずれかに設けられる圧力計測手段、濃度計測手段あるいは流量計測手段のいずれか、前記バイパス流路に設けられた流量調整手段と原料ガス流路あるいは残留ガス流路に設けられた圧力調整手段あるいは流量調整手段とを有するガス製造装置であって、前記計測手段の計測値によって、前記流量調整手段または/および前記圧力調整手段を制御し、製品ガス中の易透過性ガスの純度および易透過性ガスについての回収率を所望の範囲内に制御操作を行う機能を有することを特徴とする。
【0011】
以上のような課題に対して本発明では、ガス分離膜に対する使用条件の研究過程において、原料ガスの一部を透過ガスに添加する方法を検証し、以下の知見を得た。
具体的には、
(1)まず後述する図7に示すような基本構成において、原料ガスの最大流量に対して易透過性ガスの所望の回収率を得るべく膜の面積(モジュール数)を選択し、透過ガスの純度が所望の値より高くなる稼動条件を設定した場合であって、かつ、この条件において、基本構成にバイパス流路等本発明に係る諸機能を付加し、原料ガスの一部をバイパス流路に割振った場合には、ガス分離膜へ供給される原料ガスの流量が少なくなり、この流量に比例してモジュール数を減少させることが可能である。このとき、ガス分離膜を透過する透過ガスの純度およびガス分離膜自体の回収率は、不変に保つことができる。従って、バイパスガスの流量を適切に調整すれば、製品ガスの純度を所望の値以上に保つことができる。
(2)一方、バイパスガスは全て易透過性ガスを主成分とする製品ガスに回収されるので、バイパス流路を含めた系全体での総合回収率は所望値以上になる。結局、モジュール数をさらに減少させた状態で、製品ガスの純度と回収率を所望の値以上に保つことが可能である。つまり、バイパスを使用しない場合に比較し、少ないモジュール数で製品ガスの純度と回収率を所望の値以上に保つことが可能である。
(3)また、別途原料ガス流路に昇圧手段を配設しバイパス流路をこの手前から分岐する場合、バイパスガスの流量分の圧縮動力の低減を図るというメリットを得ることができる。
(4)さらに、ガス分離膜の稼動条件とバイパスガスの流量との関係について実証し、製品ガスの純度と回収率に対する制御方法を検討したところ、後述するようないくつかのパターンの制御方法を適用し両者の相関関係を維持しながら制御操作を行うことによって、上記のような課題を解決することができた。
【0012】
つまり、上記のような構成あるいは方法を適用することによって、原料ガスの流量が減少した場合もモジュール数を変更することなく、簡便な手法で所望の製品ガスの純度と回収率の安定性を確保することが可能なガス分離膜を用いたガス製造方法およびガス製造装置を提供することが可能となった。なお、本願において、単に「回収率」とした場合には、製品ガス中の所望の成分(易透過性ガス)の流量の、原料ガス中の所望の成分の流量に対する割合を意味し、上記原料ガスはバイパスへの分岐前の総量で捉えるものとする。
【0013】
本発明は、上記ガス分離膜を用いたガス製造方法であって、前記透過ガスとバイパスガスの合流後に、濃度計測手段を設け、製品ガスの純度が規定値以上となるようにバイパスガスの流量を制御することを特徴とする。
【0014】
ガス分離膜を用いたガス製造装置において、一般に運転条件が安定している場合には、各流路における流量および圧力を管理することによって、所望のガス成分の物質収支を把握することができることが多い。しかしながら、供給される原料ガスの純度の変化やガス分離膜の劣化など実稼動時に生じる要素に対しては、こうした管理項目だけでは十分に対応することが難しい。本発明は、製品ガス流路に濃度計測手段を設け、自動的に製品ガスの純度が規定範囲内となるようにバイパスガスの流量などを制御することによって、これらの影響を排除して安定した製品ガスの純度を確保するもので、実稼動時に生じる種々の要素に追従した対応を行うことができる。なお、この場合、濃度計測手段の測定誤差や応答時間遅れなどを考慮して、製品ガスの純度の設定値は、要求純度条件より少し高い値とし余裕を持たせることが有効である。
【0015】
本発明は、上記ガス分離膜を用いたガス製造方法であって、前記バイパスガスの流量Fbを、前記原料ガスの流量Foに対し、下式1によって演算された値で制御するとともに、a1,b1を、前記製品ガス中の所望の易透過性ガスの濃度計測値を指標として、微調整することを特徴とする。
Fb=a1×Fo+b1・・(式1)
【0016】
簡便な手法で所望の製品ガスの純度と回収率を確保する1つの優れた方法として、上記のように、原料ガスの一部をバイパスガスとして透過ガスに添加する方法を挙げることができる。このとき、ガス製造装置の稼動条件に対して、バイパスガスの流量を如何に制御することが最適であるかが重要な課題となる。実稼動条件下においては、(a)装置に供給される原料ガスの流量が変化し、与えられた原料に対し製品純度を保ちつつ極力多い製品を産出する場合と、(b)製品需要が変化し、その製品純度を保ちつつ極力少ない原料ガスで製品を産出する場合とがあり、(a)の場合においては、変化する原料ガスの流量に対応してバイパスガスの流量を制御することが好ましい。具体的には、バイパスガスの流量Fbを、上式1のような原料ガスの流量Foの一次関数として表し、その値を基に制御するもので、原料ガスの流量Foの増減に合せてバイパスガスの流量Fbを増減させることによって、ガス分離膜の透過ガスの純度変化を補償することができ、所望の製品ガスの純度と回収率の安定性を確保することが可能となった。なお、実際のガス分離膜においては、原料ガスの組成の時間変化やガス分離膜の劣化による性能の変化などの影響などを考慮する必要があることから、本発明においては、上式1における各係数a1,b1を、透過ガス中の所望の易透過性ガスの濃度計測値を指標として微調整することによって、その影響を補正し、さらに精度の高い制御を行うことができる。
【0017】
本発明は、上記ガス分離膜を用いたガス製造方法であって、前記バイパスガスの流量Fbを、前記製品ガスの流量F4に対し、下式2によって演算された値で制御するとともに、a2,b2を、前記製品ガス中の所望の易透過性ガスの濃度計測値を指標として、微調整することを特徴とする。
Fb=a2×F4+b2・・(式2)
【0018】
上記(a)の場合においては、供給される原料ガスの流量の変動に対する制御方法として、原料ガスの流量に対応してバイパスガスの流量を制御する。本発明は、上記(b)の場合、つまり製品の要求仕様によって供出される製品ガスの流量が変動する場合において、変化する製品ガスの流量に対応してバイパスガスの流量を制御するものである。具体的には、バイパスガスの流量Fbを、上式2のような製品ガスの流量F4の一次関数として表し、その値を基に制御するもので、製品ガスの流量F4の増加に合せてバイパスガスの流量Fbを増加させることによって、ガス分離膜の透過ガスの純度変化を補償することができ、所望の製品ガスの純度と回収率の安定性を確保することが可能となった。ここで、製品ガスの流量F4とは、透過ガスの流量F2とバイパスガスの流量Fbの合計をいう。なお、上式2における各係数a2,b2の微調整については、前項と同様である。
【0019】
本発明は、上記ガス分離膜を用いたガス製造方法であって、前記ガス分離膜に対して、その1次圧力あるいは1次圧力と連動するプロセス値を、前記原料ガスの流量あるいは前記製品ガスの流量の関数として制御するとともに、該関数の係数を、製品ガス中の易透過性ガスの濃度計測値および/あるいは回収率を指標として、微調整することを特徴とする。
【0020】
上記発明は、バイパスガスの流量Fbを、上式1および上式2に示す原料ガスの流量Foあるいは製品ガスの流量F4の関数として制御することによって、バイパスガスの流量Fbとガス分離膜の稼動条件との関係を規制するものである。つまり、原料ガスあるいは製品ガスの最大流量の稼動条件を基準にして、減量運転時の制御を行うものであり、原料ガスの流量Foあるいは製品ガスの流量F4の減量に伴い、バイパスガスの流量Fbも低下させる。しかしながら、実稼動条件においては、こうした制御方法では所望の製品ガスの純度を安定的に確保することが難しい場合がある。つまり、原料ガスあるいは製品ガスの最大流量の稼動条件を基準にしてモジュール数を選択した状態で、原料ガスの流量が減少された場合には、難透過性ガスも透過してゆくため透過ガスの純度は低下する。また、ガス分離膜に供給される原料ガス量が減少するので回収率は増加し、所望の回収率に対して余裕が生ずる。このとき、この回収率の余裕の範囲内で、ガス分離膜の1次圧力を低下させると、透過ガスの純度は上昇し、更なる減量条件においても、透過ガスの純度を上げることができる。一方、回収率は、減少し所望の値に近づく。従って、1次圧を下げない時に比較してより広い減量条件まで、所望の製品ガスの純度と回収率を確保することができる。以上のように、本発明においては、上記のようないくつかのパターンによってバイパスガスの流量Fbを制御すると同時にガス分離膜の1次圧力を制御することによって、所望の製品ガスの純度と回収率を確保することを図るものである。
【0021】
具体的方法としては、下式3あるいは下式4のように原料ガスの流量Foあるいは製品ガスの流量F4に対応してガス分離膜の1次圧力P1を制御することによって、透過のドライビングフォースを調整して、透過ガスの純度低下を軽減すると同時に前記種々の方法によりバイパスガスの流量Fbを制御することによって、両者の相関関係を保持しながら制御することができるようにしたもので、広い範囲での製品ガスの純度と回収率の安定性を確保することが可能となった。また、ガス分離膜の1次圧力を変更する減量方法は図7のようなバイパス流路を持たない場合にも利用できるが、この場合に比較して、本発明による方法では、モジュール数が少ないため更に広い減量範囲での運転が可能である。また、原料ガス流路に昇圧手段を配設し、昇圧手段の吐出圧力をそのままガス分離膜に供給して残留ガス流路の圧力調整手段で制御する場合には、昇圧手段の圧縮比の減少による圧縮動力の低減を図ることができるというメリットを得ることができる。なお、下式3および下式4における各係数a3,b3およびa4,b4の微調整については、前項と同様である。また、下式3あるいは下式4による圧力P1の制御操作と、製品ガスの純度と回収率の関係についての詳細は、後述する。
P1=a3×Fo+b3・・(式3)
P1=a4×F4+b4・・(式4)
【0022】
上記方法は直接的にガス分離膜の1次圧P1を制御する方法であったが、例えば、次の如く間接的にガス分離膜の1次圧力P1を制御してもよい。つまり、下式5あるいは下式6のように、原料ガスの流量Foあるいは製品ガスの流量F4に対応してガス分離膜の残留ガスの流量F3を制御する方法である。その結果として間接的にガス分離膜の1次圧力P1が制御され同様の効果が齎される。同時に前記種々の方法によりバイパスガスの流量Fbを制御することによって、両者の相関関係を保持しながら制御することができる。この方法では、残留ガスの流量F3を制御することにより、原料ガスの流量Foと製品ガスの流量F4の相関を制御したことになり、バイパスガスの流量Fbの制御で純度が制御されると、回収率も制御できるとの考え方に依っている。
F3=a5×Fo+b5・・(式5)
F3=a6×F4+b6・・(式6)
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明に係るガス分離膜を用いたガス製造方法および製造装置を適用することによって、簡便な手法で透過ガスの純度と回収率の安定性を確保することが可能となり、バイパス流路を設けない場合に比較して、モジュール数を減らすことができる。特に、昇圧手段を原料ガス流路に配設し、バイパス流路をこの手前から分岐する場合、バイパスガスの流量分の圧縮動力の低減を図ることができる。
【0024】
また、減量運転時においても、所望の製品ガスの純度や回収率を維持した状態で、膜のモジュール数の変更なく連続的に広い減量率を確保することが可能となった。特に、昇圧手段を原料ガス流路に配設し、原料昇圧手段の出口圧力をそのまま膜モジュールに与え、膜の残留ガス出口の圧力調整手段で制御する場合には、その圧縮比の減少による圧縮動力の低減を図ることができるというメリットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、選択的透過性を有するガス分離膜に対して透過性の異なる複数の成分ガスを含むガス混合物を原料ガスとして供給し、ガス分離膜によって透過ガスと残留ガスに分離し、易透過性ガスに富んだ透過ガスあるいは該透過ガスと難透過性ガスに富んだ残留ガスを製品として製造するプロセスにおいて、原料ガスの一部をバイパスガスとして前記透過ガスと添加するとともに、該バイパスガスの流量を制御して、所望の純度の製品ガスを作製するとともに、易透過性ガスについて所望の回収率を確保する制御操作を行うことが基本となる。
【0026】
<本発明に係るガス製造プロセスにおける計測制御方法>
本発明においては、ガス製造プロセスにおける計測制御の実現方法が重要となるので、まず、その具体的な計測制御方法について図1〜6を参照しつつ説明する。むろん実際の計測制御方法は、図示されたものに限定されるものでなく多くの他の変形が可能であること、また、上流あるいは下流のプロセスの状況に応じて追加の計測制御手段が必要となることはいうまでもない。
【0027】
〔計測制御方法1〕
図1は、本発明に係るガス製造プロセスの基本的な構成例(第1構成例)を示す。構成要素として、ガス分離膜S、原料ガス流路1、透過ガス流路2、残留ガス流路3、バイパス流路B、製品ガス流路4、および各流路に設けられた計測制御手段がある。本構成においては、これらの計測制御手段によって、以下のような計測制御機能を有している。
(1)残留ガス流路3に取り付けられた、圧力発信器PT1(圧力計測手段に相当)、圧力調整弁PCV1および圧力調節計PC1(合せて圧力調整手段に相当)は、ガス分離膜Sの1次圧力P1を実質的に略一定に保つために利用される。圧力発信器PT1の計測値をもとに圧力調節計PC1により設定値との比較がなされ、その制御出力により圧力調整弁PCV1の開度が調整され、その結果1次圧力P1が実質的に略一定に保たれる。
(2)バイパス流路Bに設置された流量発信器FTb(流量計測手段に相当)の計測値Fb(バイパスガスの流量Fbに相当)をもとに流量調節計FCbにより設定値との比較がなされる。流量調節計FCbの制御出力により流量調整弁FCVb(流量調節計FCbと合わせて流量調整手段に相当)の開度が調整され、その結果バイパスガスの流量Fbが実質的に略流量調節計FCbの設定値に調整される。
(3)製品ガス流路4に設置された濃度発信器AT4(濃度計測手段に相当)の計測値C4(製品ガスの純度C4に相当)を基に、濃度調節計AC4により設定値との比較がなされる。濃度調節計AC4の制御出力は上記流量調節計FCbに入力され、カスケード制御にてバイパス流路の原料ガス流量Fbが調整され、その結果製品ガスの純度C4が実質的に略濃度調節計AC4の設定値に制御される。
(4)ガス製造プロセスの性能確認用に、原料ガスの流量発信器FToおよび指示計FIo、製品ガスの流量発信器FT4および指示計FI4、原料ガスの分析ポートAP1(ガスクロ分析計などによるバッチ分析に利用する)が含まれている。原料ガス組成や回収率の確認用に供せられる。
(5)なお、本方法1において、ガス分離膜Sの1次圧力P1の制御を、残留ガス流路3に設けられた圧力調整手段によるとしているが、圧力調整手段を原料ガス流路1に配設する構成あるいは別途バイパス流路を追加してそこに配設する構成等、これに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0028】
〔計測制御方法2〕
図2は、上記〔計測制御方法1〕に例示した製造プロセスに、式1演算器CU1およびデータメモリM1を加えた構成例を示している(第2構成例)。バイパスガスの流量Fbを、原料ガスの流量Foによって制御する機能を有している。製品ガス流路4には、第1構成例に示した濃度発信器AT4および濃度調節計AC4に代え、分析ポートAP2が設けられている。〔計測制御方法1〕と共通の部分の説明は省略する。
(1)原料ガスの流量発信器FToの計測値FoとデータメモリM1に格納された係数a1、b1の値を基に、式1演算器CU1でバイパスガスの流量Fbの値が演算され、その値を基にバイパスガスの流量調節計FCbの設定値が修正され、結果的にバイパスガスの流量Fbが式1を満たすよう制御される。
Fb=a1×Fo+b1・・(式1)
(2)係数a1、b1の値は、製品ガス流路4の製品ガスの分析ポートAP2でのバッチ分析の濃度計測値を指標として、必要に応じて書換え手段(図示せず)によって適宜変更される。
(3)なお、本方法において、原料ガスの流量Foを基準した制御について述べたが、バイパスガスの流量Fbを含まないガス分離膜Sへの原料供給ガスの流量F1を基準にすることも可能である。
【0029】
〔計測制御方法3〕
図3は、第2構成例に示した式1演算器CU1およびデータメモリM1に代え、式2演算器CU2およびデータメモリM2が設けられている(第3構成例)。バイパスガスの流量Fbを、原料ガス流量Foに代え、製品ガス流量F4によって制御する機能を有している。〔計測制御方法1〕および〔計測制御方法2〕と共通の部分の説明は省略する。
(1)製品ガスの流量発信器FT4の計測値F4(製品ガスの流量F4に相当)とデータメモリM4に格納された係数a2,b2の値を基に、式2演算器CU2でバイパスガスの流量Fbの値が演算され、その値を基にバイパスガスの流量調節計FCbの設定値が修正され、結果的にバイパスガスの流量Fbが式2を満たすよう制御される。
Fb=a2×F4+b2・・(式2)
(2)係数a2、b2の値は、製品ガス流路4の製品ガスの分析ポートAP2でのバッチ分析の濃度計測値を指標として、書換え手段(図示せず)によって必要に応じて適宜変更される。
(3)なお、本方法において、製品ガスの流量F4を基準した制御について述べたが、バイパスガスの流量Fbを含まない透過ガスの流量F2を基準にすることも可能である。
【0030】
〔計測制御方法4〕
図4は、第2構成例に示したガス製造プロセスに、式3演算器CU3およびデータメモリM3を加えた構成例を示している(第4構成例)。〔計測制御方法2〕に例示した制御機能に加え、ガス分離膜Sの1次圧力P1の制御機能を組合せた機能を有している。〔計測制御方法1〕および〔計測制御方法2〕と共通の部分の説明は省略する。
(1)原料ガスの流量発信器FToの計測値FoとデータメモリM3に格納された係数a3、b3の値を基に式3演算器CU3で1次圧力P1の値が演算され、その値を基に圧力調節計PC1の設定値が修正され、結果的にガス分離膜Sの1次圧力P1が式3を満たすよう制御される。
P1=a3×Fo+b3・・(式3)
(2)〔計測制御方法2〕の式1によるバイパスガスの流量Fbの調整と組合せて製品ガスの純度C4と回収率の制御がなされる。
(3)係数a3、b3の値は、回収率を指標として、必要に応じて書換え手段(図示せず)によって適宜変更される。
(4)なお、本方法の式3において、原料ガスの流量Foを基準した制御について述べたが、〔計測制御方法2〕同様原料供給ガスの流量F1を基準にすることも可能である。
【0031】
〔計測制御方法5〕
図面は省略するが、〔計測制御方法3〕に例示した制御機能に加え、ガス分離膜Sの1次圧力P1の制御機能を組合せた機能を有する計測制御方法の適用も可能である。〔計測制御方法1〕および〔計測制御方法3〕と共通の部分の説明は省略する。
(1)製品ガスの流量発信器FT4の計測値F4とデータメモリM4に格納された係数a4、b4の値を基に式4演算器CU4で1次圧力P1の値が演算され、その値を基に圧力調節計PC1の設定値が修正され、結果的にガス分離膜Sの1次圧力P1が式4を満たすよう制御される。
P1=a4×F4+b4・・(式4)
(2)〔計測制御方法3〕の式2によるバイパスガスの流量Fbの調整と組合せて製品ガスの純度C4と回収率の制御がなされる。
(3)係数a4、b4の値は、回収率を指標として、必要に応じて書換え手段(図示せず)によって適宜変更される。
(4)なお、本方法の式4において、製品ガスの流量F4を基準した制御について述べたが、〔計測制御方法3〕同様透過ガスの流量F2を基準にすることも可能である。
【0032】
〔計測制御方法6〕
図5は、第4構成例に示したガス製造プロセスにおいて、残留ガスの圧力調整手段に代え残留ガスの流量調整手段を設置した構成例を示している(第6構成例)。〔計測制御方法4〕との相違点を中心に説明する。
(1)原料ガスの流量発信器FToの計測値FoとデータメモリM5に格納された係数a5,b5の値を基に、式5演算器CU5で残留ガスの流量F3の値が演算され、その値を基に流量調節計FC3の設定値が修正され、結果的にガス分離膜Sの残留ガスの流量F3が下式5を満たすよう制御される。
F3=a5×Fo+b5・・(式5)
(2)〔計測制御方法2〕の式1によるバイパスガスの流量Fbの調整と組合せて製品ガスの純度C4と回収率の制御がなされる。
(3)係数a5,b5の値は、回収率を指標として、必要に応じて書換え手段(図示せず)によって適宜変更される。
(4)なお、本方法の式5において、原料ガスの流量Foを基準した制御について述べたが、〔計測制御方法2〕同様原料供給ガスの流量F1を基準にすることも可能である。
【0033】
〔計測制御方法7〕
図および詳細な説明は省略するが、第3構成例に示したガス製造プロセスの変形として、残留ガスの流量調整手段の設定値(残留ガスの流量F3に相当)を製品流量F4に応じて下式6により演算する構成例を示している(第7構成例)。
F3=a6×F4+b6・・(式6)
【0034】
〔その他の計測制御方法〕
同様に、以下のような計測制御方法も可能である。
(1)〔計測制御方法1〕に例示した制御機能に加え、〔計測制御方法4〕あるいは〔計測制御方法5〕に例示した原料ガスの流量Foあるいは製品ガスの流量F4を基に、式3あるいは式4による1次圧力P1の制御機能を組合せた機能を有する計測制御方法。
(2)〔計測制御方法1〕に例示した制御機能に加え、〔計測制御方法6〕あるいは〔計測制御方法7〕に例示した原料ガスの流量Foあるいは製品ガスの流量F4を基に、式5あるいは式6による残留ガス流量F3の制御機能を組合せた機能を有する計測制御方法。
(3)上記計測制御方法1〜7および上記(1)と(2)において、原料ガス流路1に昇圧手段を配設し、該昇圧手段の容量制御手段を併用する計測制御方法。具体的なガス製造プロセスとして、第2構成例において昇圧手段5を配設し、例えば、その吸入圧が一定となるようその容量手段を制御した場合を図6に例示する(第8構成例)。原料ガスの流量Foの変動に伴うバイパスガスの流量Fbおよびガス分離膜Sへ供給される原料ガスの供給条件の変動に対し、この変動に伴う影響を補完しガス分離膜Sを最適使用条件で機能させることを可能にする。と同時に、バイパスガスの流量Fbの制御における圧縮動力の低減を図ることができるというメリットを得ることができる。
【0035】
<実施例>
次に、上記の計測制御方法を用いた水素ガス製造プロセスを設定し、各計測制御方法における透過ガスの純度や回収率の数値解析を行った結果を以下に示す。
【0036】
(1)試験条件
(1−1)原料ガスの組成を表1に例示する。
【表1】

(1−2)実証試験に用いたガス分離膜は、素材をポリアラミド系膜とした。
(1−3)原料ガスの1次圧力の初期設定値は40bar(abs)とし、定格時の原料ガスの流量あるいは製品ガスの流量は10,000Nm/hとした。なお、以下の表2〜6においては、最大値を100%と表示し、以下減量に対応した数値(%)によって表示した。従って、モジュール数の絶対値は問題にする必要がない。
(1−4)定格時の透過ガスの圧力は、15bar(abs)とした。なお、製品水素ガスの純度は97mol%以上とし、水素の回収率は94%以上を基準と捉えた。
【0037】
(2)実証結果
〔実施例1〕
本ガス製造プロセスにおいて、図1に示した上記〔計測制御方法1〕に基づき、製品ガスの濃度計測手段の計測値によりバイパスガスの流量を制御し、原料ガスの流量を減量する方法を適用した。その結果、表2に示すように、約50%までの減量条件で透過ガスの純度に対する高い安定性と高い回収率を確保することができた。一方、バイパスを用いないガス製造プロセスにおいて、原料ガスの最大流量に対して同じ回収率94%を得るためには約1.31倍のモジュール数が必要であることが分かった。なお、下表2において、原料ガスの流量およびバイパスガスの流量は、原料ガスの最大流量との比率で示す。
【表2】

【0038】
〔実施例2〕
本ガス製造プロセスにおいて、図2に示した上記〔制御方法2〕に基づき、バイパスガスの流量を、原料ガスの流量の一次関数で制御し、原料ガスの流量を減量する方法を適用した。具体的には、原料ガスの流量を10%減量する毎に、バイパスガスの流量を1.765%減少させた。その結果、表3に示すように、約50%までの減量条件で、透過ガスの純度に対する高い安定性と高い回収率を確保することができた。一方、バイパスを用いないガス製造プロセスにおいて、原料ガスの最大流量に対して同じ回収率94%を得るためには約1.31倍のモジュール数が必要であることが分かった。なお、下表3において、原料ガスの流量およびバイパスガスの流量は、原料ガスの最大流量との比率で示す。
【表3】

【0039】
〔実施例3〕
本ガス製造プロセスにおいて、図3に示した上記〔制御方法3〕に基づき、バイパスガスの流量を、製品ガスの流量の一次関数で制御し、製品ガスの流量を減量する方法を適用した。具体的には、製品ガスの流量を10%減量する毎に、バイパスガスの流量を2.197%減少させた。その結果、表4に示すように、約50%までの減量条件で、透過ガスの純度に対する高い安定性と高い回収率を確保することができた。なお、下表4において、製品ガスの流量およびバイパスガスの流量は、製品ガスの最大流量との比率で示す。
【表4】

【0040】
〔実施例4〕
本ガス製造プロセスにおいて、図4に示した上記〔制御方法4〕に基づき、原料ガスの1次圧力(残留ガスの圧力)を原料ガスの流量の一次関数で制御するとともに、バイパスガスの流量を原料ガス流量の一次関数で制御し、原料ガスの流量を減量する方法を適用した。具体的には、原料ガスの流量を10%減量する毎に1次圧力を0.64bar減少させるとともに、原料ガスの流量を10%減量する毎にバイパスガスの流量を1.6%減少させた。その結果、表5に示すように、透過ガスの純度に対する高い安定性と高い回収率を確保することができた。また、〔実施例2〕と比較して、より広い減量率(約50%から約35%)まで制御が可能であることが判った。これは原料ガスの流量の減量に伴い残留ガスの圧力を下げることにより、回収率の余裕を減らす代わりに、透過ガスの純度低下の低減を行った結果である。なお、下表5において、原料ガスの流量およびバイパスガスの流量は、原料ガスの最大流量との比率で示す。
【表5】

【0041】
(3)まとめ
上記の結果に示すように、本装置における〔計測制御方法1〕〜〔計測制御方法4〕のいずれについても、透過ガスの純度に対する高い安定性と高い回収率を安定的に保することができた。
【0042】
<本発明に係るガス製造装置における基本構成要素>
本発明に係るガス製造装置は、以下の構成要素を含めて構成され、上記の計測制御方法が適用されることによって、原料ガスの流量が減少した場合もモジュール数を変更することなく、簡便な手法で所望の製品ガスの純度と回収率の安定性を確保することができる。
【0043】
原料ガスは、精製ガス、あるいは粗製ガスを精製処理されたガスを供給することが好ましい。具体的には、精製空気、精製ナフサ分解ガス、精製改質ガス、精製水性ガスなどが該当する。原料ガスの供給条件は、通常、環境温度とし、流量約100〜100,000[Nm/h]の上記各種ガスが使用される。また、圧力条件は、透過ガスの用途などによって異なるが、2〜150[bar(abs)]程度に加圧して使用する。
【0044】
ガス分離膜は、原料ガスあるいは透過ガスの種類によって、最適な素材や容量(表面積)あるいは形状などが選択される。ガス分離膜の素材として、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シリコーンゴム、ポリスルフォン、ポリアラミド、酢酸セルロースやポリイミドなどの有機系分離膜のみならず、セラミックス系薄膜などのような無機系の分離膜を挙げることができる。本装置においては、これらに限定されるものではない。
【0045】
ここで、ガス分離膜への原料ガスの供給流路に加熱手段を設けることが好ましい。ガス分離膜は、その特性と用途に応じて適切な温度でガス分離を行うことが必要である。従って、原料ガスの温度を適切な温度まで加熱するために、また、原料ガス中に液体のミストが含まれた場合には、膜自体の変質を齎すことがある。具体的には、原料ガス中に高沸点成分が含まれる場合には、常温で液化を起こす可能性があり、この高沸点成分が難透過性ガスである場合、残留ガス中に高沸点成分が濃縮し液化する恐れがある。そのため、例えば約40℃(夏季の外気条件)まで原料ガスを冷却し、凝縮液化成分を分離後、加熱手段にて加熱することにより、ガス分離膜での液体ミストの生成の恐れを回避することができる。
【0046】
昇圧手段(圧縮機)の具体例としては、回転式あるいは往復式の容積式圧縮機や軸流式あるいは遠心式のターボ式圧縮機を挙げることができる。このとき、昇圧手段の使用条件によって、その方式の選択において適否がある。特に、大型の装置では、減量運転時において圧縮動力の低減できるものが好適である。
【0047】
濃度計測手段は、所望の成分i、つまりガス分離膜における易透過性ガス成分に対して選択性の高い分析計が好ましく、連続分析で信頼できるものがあればそれによってバイパスガスの流量Fbを制御することができる。また、製品ガスに対して化学的な変化を生じさせない分析計が好ましい。例えば、成分iが水素の場合には熱伝導度式分析計や成分iがメタンの場合には赤外線吸光式分析計などを挙げることができる。なお、ガスクロマトグラフィーなどを使用してバッチ分析をする場合には、製品ガス流路にサンプリングポートを設けておき、定期的な分析結果から、演算式の係数を修正する方式を採ることができる。また、バッチ分析と連続分析を併用する方式も可能である。より信頼できるバッチ分析の結果から連続分析計の誤差を確認しつつ、微調整の判断に供することができる。
【0048】
さらに、濃度計測手段の誤差や時間遅れなどを考慮して、制御する純度の設定値は要求純度の条件より少し高い値とし余裕を持たせることが有効である。こうした、濃度計測手段を用いることによって、本装置に供給される原料ガスの純度変化やガス分離膜の経時的劣化に対しても自動的に追従するとのメリットをえることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上は、本発明に係るガス分離膜を用いたガス製造方法および製造装置単独の作用や機能などについて説明したが、かかる機能や技術思想は、ガスのみに限らず液体の選択的分離を行う場合においても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るガス製造プロセスの基本的な構成例を示す説明図
【図2】本発明に係るガス製造プロセスの第2の構成例を示す説明図
【図3】本発明に係るガス製造プロセスの第3の構成例を示す説明図
【図4】本発明に係るガス製造プロセスの第4の構成例を示す説明図
【図5】本発明に係るガス製造プロセスの第6の構成例を示す説明図
【図6】本発明に係るガス製造プロセスの第8の構成例を示す説明図
【図7】従来技術に係るガス製造装置の他の構成を例示する説明図
【図8】従来技術に係るガス製造装置の基本構成を例示する説明図
【符号の説明】
【0051】
1 原料ガス流路
2 透過ガス流路
3 残留ガス流路
4 製品ガス流路
5 昇圧手段
AC4 濃度調節計
AP1,AP2 分析ポート
AT4 濃度発信器(濃度計測手段)
B バイパス流路
CU1 式1演算器
CU2 式2演算器
CU3 式3演算器
CU5 式5演算器
FCb,FC3 流量調整計(流量調整弁と合せて流量調整手段)
FCVb,FCV3 流量調整弁
FIo,FI4 指示計
FTo,FTb,FT3,FT4 流量発信器(流量計測手段)
M1,M2,M3,M5 データメモリ
P1 1次圧力
PC1 圧力調整計(圧力調整弁と合せて圧力調整手段)
PCV1 圧力調整弁
PT1 圧力発信器(圧力計測手段)
S ガス分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的透過性を有するガス分離膜に対して透過性の異なる複数の成分ガスを含むガス混合物を原料ガスとして供給し、該ガス分離膜によって透過ガスと残留ガスに分離し、易透過性ガスに富んだ透過ガスあるいは該透過ガスと難透過性ガスに富んだ残留ガスを製品として製造する方法であって、
前記原料ガスの一部をバイパスガスとして前記透過ガスに添加するとともに、該バイパスガスの流量を制御して、易透過性ガスの所望の純度の製品ガスを作製するとともに、易透過性ガスについて所望の回収率を確保することを特徴とするガス分離膜を用いたガス製造方法。
【請求項2】
前記透過ガスとバイパスガスの合流後に、濃度計測手段を設け、製品ガスの純度が規定値以上となるようにバイパスガスの流量を制御することを特徴とする請求項1記載のガス分離膜を用いたガス製造方法。
【請求項3】
前記バイパスガスの流量Fbを、前記原料ガスの流量Foに対し、下式1によって演算された値で制御するとともに、a1,b1を、前記製品ガス中の所望の易透過性ガスの濃度計測値を指標として、微調整することを特徴とする請求項1記載のガス分離膜を用いたガス製造方法。
Fb=a1×Fo+b1・・(式1)
【請求項4】
前記バイパスガスの流量Fbを、前記製品ガスの流量F4に対し、下式2によって演算された値で制御するとともに、a2,b2を、前記製品ガス中の所望の易透過性ガスの濃度計測値を指標として、微調整することを特徴とする請求項1記載のガス分離膜を用いたガス製造方法。
Fb=a2×F4+b2・・(式2)
【請求項5】
前記ガス分離膜に対して、その1次圧力あるいは1次圧力と連動するプロセス値を、前記原料ガスの流量あるいは前記製品ガスの流量の関数として制御するとともに、該関数の係数を、製品ガス中の易透過性ガスの濃度計測値および/あるいは回収率を指標として、微調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガス分離膜を用いたガス製造方法。
【請求項6】
選択的透過性を有するガス分離膜、該ガス分離膜に対して透過性の異なる複数の成分ガスを含むガス混合物を供給する原料ガス流路、前記ガス分離膜を透過する透過ガスを取り出す透過ガス流路、前記ガス分離膜からの残留ガスを供出する残留ガス流路、前記原料ガス流路から分岐され、前記透過ガス流路と合流するバイパス流路、該合流点以降において作製された混合ガスを製品ガスとして供出する製品ガス流路、
前記流路のいずれかに設けられる圧力計測手段、濃度計測手段あるいは流量計測手段のいずれか、
前記バイパス流路に設けられた流量調整手段と原料ガス流路あるいは残留ガス流路に設けられた圧力調整手段あるいは流量調整手段と
を有するガス製造装置であって、
前記計測手段の計測値によって、前記流量調整手段または/および前記圧力調整手段を制御し、製品ガス中の易透過性ガスの純度および易透過性ガスについての回収率を所望の範囲内に制御操作を行う機能を有することを特徴とするガス分離膜を用いたガス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−104949(P2008−104949A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290169(P2006−290169)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】