説明

ガス化装置

【課題】植物性有機物からタールの少ない良質の生成ガスを得ることができ、かつ、タールの付着によるトラブルの恐れがないガス化装置を提供することである。
【解決手段】植物性有機物の被処理物Aを乾燥する乾燥室1の下方に絞り部2を介して熱分解室3を配設し、絞り部2に被処理物Aを熱分解室3へ落下させる流量を規制する昇降弁4を設けるとともに、絞り部2を冷却する冷却ジャケット6を設けることにより、乾燥した被処理物を少量ずつ熱分解室3へ落下させて、これを500℃以上で急速に熱分解させることができるようにするとともに、絞り部2を冷却して乾燥室1の下部が200℃以上のタール発生温度領域とならないようにし、植物性有機物からタールの少ない良質の生成ガスを得ることができ、かつ、タールの付着によるトラブルの恐れがないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性有機物を熱分解してガス化するガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機系廃棄物等を再生可能なエネルギ資源として活用するために、これらの被処理物を高温空気や高温水蒸気等のガス化剤で熱分解して生成ガスを得るガス化装置には、熱分解効率を高めるために、被処理物を予め乾燥するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたものでは、熱分解炉へ被処理物を投入するシュートに複数のダンパを設け、ダンパで仕切られたシュート内を乾燥ゾーンとして、過熱水蒸気を供給している。
【0003】
一方、バイオマス等の植物性有機物の主要成分は、セルロース(約35%)、ヘミセルロース(約30%)、およびリグニン(約8%)であり、これらの主要成分の活発な熱分解温度は以下の通りである。
・セルロース :240〜400℃
・ヘミセルロース:180〜300℃
・リグニン :280〜550℃
【0004】
これらの熱分解温度領域では、まず、熱分解により付着性のタールが発生し、これをさらに加熱することにより、発生したタールが低分子物質に熱分解されることが知られている。すなわち、植物性有機物は、200℃程度までは熱分解しないか、熱分解してもあまりタールは発生せず、500℃以上の高温で熱分解すれば、タールが生成されても速やかに低分子物質に分解されて、熱分解ガス中のタールが可及的に減少することが知られている。
【0005】
以上のことから、植物性有機物の被処理物をガス化装置で熱分解する場合は、被処理物を200℃以下で予熱、乾燥したのち、500℃以上で急速に熱分解させれば、タールの発生を抑制して、タールの少ない良質の生成ガスを得ることができ、かつ、タールの付着によるトラブルを防止してガス化装置を安定運転できることが期待できる。
【0006】
【特許文献1】実開平4−138529号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された有機系廃棄物のガス化装置は、植物性有機物を被処理物とした場合に、被処理物をシュート内の乾燥ゾーンで200℃以下で予熱できるが、ダンパを開けたときに多量の被処理物が熱分解炉内へ落下するので、これらの多量の被処理物を500℃以上で急速に熱分解させることができない。また、熱分解炉内は乾燥ゾーンよりも高温のため、熱伝導によって乾燥ゾーンの下部のダンパ付近が200℃以上のタール発生温度領域となり、発生したタールの付着によるダンパの作動不良等のトラブルが懸念される。
【0008】
そこで、本発明の課題は、植物性有機物からタールの少ない良質の生成ガスを得ることができ、かつ、タールの付着によるトラブルの恐れがないガス化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、植物性有機物の被処理物を乾燥する乾燥室と、乾燥された被処理物を熱分解してガス化する熱分解室とを備えたガス化装置において、前記乾燥室の下方に絞り部を介して前記熱分解室を配設し、前記絞り部に被処理物を前記熱分解室へ落下させる流量を規制する流量規制手段を設け、この絞り部の近傍を冷却する冷却手段を設けた構成を採用した。
【0010】
すなわち、植物性有機物の被処理物を乾燥する乾燥室の下方に絞り部を介して熱分解室を配設し、絞り部に被処理物を熱分解室へ落下させる流量を規制する流量規制手段を設けるとともに、この絞り部の近傍を冷却する冷却手段を設けることにより、乾燥した被処理物を少量ずつ熱分解室へ落下させて、これを500℃以上で急速に熱分解させることができるようにするとともに、絞り部の近傍を冷却して乾燥室の下部が200℃以上のタール発生温度領域とならないようにし、植物性有機物からタールの少ない良質の生成ガスを得ることができ、かつ、タールの付着によるトラブルの恐れがないようにした。
【0011】
前記流量規制手段を、前記熱分解室の上部空間から前記乾燥室への高温ガスの流量も規制するものとすることにより、熱分解室からの高温ガスをその流量を規制して乾燥室へ供給し、乾燥室での熱エネルギとして活用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス化装置は、植物性有機物の被処理物を乾燥する乾燥室の下方に絞り部を介して熱分解室を配設し、絞り部に被処理物を熱分解室へ落下させる流量を規制する流量規制手段を設けるとともに、この絞り部の近傍を冷却する冷却手段を設けたので、乾燥した被処理物を少量ずつ熱分解室へ落下させて、これを500℃以上で急速に熱分解させることができるとともに、絞り部の近傍を冷却して乾燥室の下部が200℃以上のタール発生温度領域とならないようにし、植物性有機物からタールの少ない良質の生成ガスを得ることができ、かつ、タールの付着によるトラブルの恐れもなくすことができる。
【0013】
前記流量規制手段を、熱分解室の上部空間から乾燥室への高温ガスの流量も規制するものとすることにより、熱分解室からの高温ガスをその流量を規制して乾燥室へ供給し、乾燥室での熱エネルギとして活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このガス化装置は植物性有機物の被処理物をガス化するものであり、図1に示すように、被処理物Aの投入口1aが設けられた乾燥室1の下方に、絞り部2を介して熱分解室3が配設され、絞り部2の出口に、被処理物Aの流量規制手段としての陣笠形状の昇降弁4が設けられている。昇降弁4は頂部の投入口1aから軸棒4aで昇降可能に吊り下げられ、絞り部2の出口の隙間を調節するようになっている。
【0015】
前記乾燥室1の外周と絞り部2の外周はそれぞれジャケット5、6で囲われており、絞り部2がジャケット6に供給される冷却ガスBで外部冷却されるとともに、絞り部2を冷却後の昇温した冷却ガスBがジャケット5に供給されて、乾燥室1が外部加熱されるようになっている。また、絞り部2からは、熱分解室3の上部空間の高温ガスDが昇降弁4で流量を調節されて流入し、乾燥室1はこの高温ガスDによっても内部加熱される。乾燥室1を内部加熱した高温ガスDは、その上部の排出口8から排出される。図示は省略するが、乾燥室1には温度計が設けられ、乾燥室1が200℃以上に温度上昇しないように、高温ガスDの流量が昇降弁4で調節されるようになっている。
【0016】
前記熱分解室3の上部には、高温のガス化剤Cの供給口7が設けられている。この供給口7には、絞り部2を冷却後の昇温した冷却ガスBの一部も供給されるようになっている。また、熱分解室3の下部には被処理物Aが堆積する火格子9が設けられ、その下方に、熱分解で生成される生成ガスEの取り出し口10と、灰分等の残渣Fの排出口11とが設けられている。
【0017】
前記投入口1aから乾燥室1に投入される被処理物Aは、ジャケット5からの外部加熱と熱分解室3の上部空間から上昇する高温ガスDによって200℃以下で予熱、乾燥され、昇降弁4で流量を調節されて、少量ずつ絞り部2から熱分解室3へ落下する。このとき、絞り部2はジャケット6で外部冷却されているので、絞り部2内の被処理物Aが200℃以上のタール発生温度領域に昇温することはない。
【0018】
前記熱分解室3へ少量ずつ落下した被処理物Aは、供給口7から供給される高温のガス化剤Cによって、500℃以上に急速に加熱される。500℃以上に急速加熱された被処理物Aは、熱分解しながら火格子9上に堆積し、さらに熱分解を続ける。したがって、この500℃以上の温度領域での熱分解では、ほとんどタールが発生することはなく、発生しても速やかに低分子物質に分解してガス化する。この熱分解で得られた生成ガスEは取り出し口10から取り出され、灰分等の残渣Fは排出口11に排出される。
【0019】
上述した実施形態では、絞り部での流量規制手段を陣笠形状の昇降弁としたが、この流量規制手段は、スライドダンパ、フラップゲート、プッシャ、ロータリバルブ等としてもよい。
【0020】
また、上述した実施形態では、絞り部を冷却する手段を、その外周の冷却ジャケットで外部冷却するものとしたが、昇降弁やスライドダンパ等の流量規制手段を中空構造とし、これらの中に冷却媒体を通すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ガス化装置の実施形態を示す縦断面図
【符号の説明】
【0022】
1 乾燥室
1a 投入口
2 絞り部
3 熱分解室
4 昇降弁
4a 軸棒
5、6 ジャケット
7 供給口
8 排出口
9 火格子
10 取り出し口
11 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性有機物の被処理物を乾燥する乾燥室と、乾燥された被処理物を熱分解してガス化する熱分解室とを備えたガス化装置において、前記乾燥室の下方に絞り部を介して前記熱分解室を配設し、前記絞り部に被処理物を前記熱分解室へ落下させる流量を規制する流量規制手段を設け、この絞り部の近傍を冷却する冷却手段を設けたことを特徴とするガス化装置。
【請求項2】
前記流量規制手段を、前記熱分解室の上部空間から前記乾燥室への高温ガスの流量も規制するものとした請求項1に記載のガス化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−84758(P2007−84758A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278019(P2005−278019)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】