説明

ガス回収再利用方法、及びガス回収再利用装置

【課題】洗浄装置等のガス溶解液を使用する装置から排出されたガス溶解液に含まれる溶存ガスを純水等のガスを溶解させる液に溶解させることによって、ガス溶解液に含まれるガスを回収し再利用することができるガス回収再利用方法、及びガス回収再利用装置を提供すること。
【解決手段】洗浄装置10から排出されるガス溶解液を回収する回収容器12と、該回収容器12内に設けたガス透過膜20と、該ガス透過膜20を通過する液をガス溶解水製造装置11を経由して洗浄装置10に供給するように構成し、回収容器12にガス溶解液を収容すると共に、ガス透過膜20に脱気手段からの超純水を通過させ、ガス溶解液中のガスをガス透過膜20を介して超純水に溶解させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機械、電子工業、医薬食品工業に用いられる装置から排出されるガス溶解水に含まれるガスを別な液に溶解させて回収し、該ガスが溶解した別の液を前記装置に利用することによりガスを再利用するガス回収再利用方法、及びガス回収再利用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイス工場、液晶などの電子部品製造工場における洗浄方法は製造プロセスの複雑化、回路パターンの微細化に伴ってますます高度化している。機能水と呼ばれる超純水に高純度のガス又は高純度ガスと薬品を溶解した特殊な液体(洗浄液)の使用によってシリコンウエハに付着した微粒子、金属汚染、有機汚染を除去している。
【0003】
一方、洗浄処理方式についても、複数のシリコンウエハを同時に浸漬及び洗浄操作を繰り返すバッチ処理方式から、多品種少量生産の製品に対応して1枚のウエハごとに薬品洗浄、超純水洗浄を行う枚葉処理方式が多く採用されている。枚葉処理方式はバッチ処理方式と比べて、ウエハ1枚当たりの洗浄工程時間(タクトタイム)が長く、洗浄液の使用量が多くなるためにタクトタイムの向上及び洗浄液使用量の低減を達成させる必要がある。また、短時間での効果的な洗浄及び洗浄液使用量を低減するために複数の機能水並びに薬品を単独又は同時に使用して、短時間で洗浄工程を切り替える高度な洗浄プロセスが行われている。また、ウエハダメージの少なさ、排水処理の容易さ、環境保全の観点からも薬品使用量が低減可能な機能水の使用が増加してきている。
【0004】
超純水にガスを溶解したガス溶解水は、一般的にガス溶解水製造装置で製造され、洗浄装置に供給されるのが代表的な機能水である。シリコンウエハの洗浄に使用されるガス溶解水は洗浄水として洗浄装置から排出されるが、洗浄装置から排出される排ガス溶解水を回収、溶存したガスを再利用することが可能となれば半導体デバイス工場、電子部品製造工場の使用ガス量の削減に寄与する。代表的なガス溶解水の回収、再利用技術は、特許文献1に示すように、洗浄装置等から排水されたガス溶解水を排水タンクに回収し、該排水タンクからガス溶解水をイオン除去手段、限外ろ過膜装置等を介し異物を除去し、原料水タンクに回収した後、脱気膜装置でガス溶解水中の全てのガスを除去した後、再度、必要なガスをガス溶解水製造装置で再溶解させ、洗浄液として洗浄装置等へ供給する洗浄液供給方法である。
【特許文献1】特開2003−340458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の洗浄液供給方法は、洗浄装置等から排出されるガス溶解水には微粒子、不純物等が含まれているため、排水タンクからイオン除去手段、限外ろ過膜装置等を介して、原水タンクへ回収され、脱気装置で全てのガスを除去した後、再度必要なガスをガス溶解水製造装置で新たに再溶解させなければならず排水中の溶存ガスが有効利用されていなかった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、洗浄装置等のガス溶解液を使用する装置から排出されたガス溶解液に含まれる溶存ガスを純水等のガスを溶解させる液に溶解させることによって、ガス溶解液に含まれるガスを回収し再利用することができるガス回収再利用方法、及びガス回収再利用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、装置から排出されるガスが溶解したガス溶解液から該ガスを回収して再利用するガス回収再利用方法において、前記ガス溶解液を回収容器に回収し、該回収容器内に備えたガス回収手段にて前記ガス溶解水中のガスを別の液中に溶解させて回収し、該ガスの溶解した別の液を前記装置に供給して該ガスを再利用することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガス回収再利用方法において、前記回収容器内に備えたガス回収手段は、ガス透過膜により、回収した前記ガス溶解液が通過する箇所と前記ガスを溶解させる別の液が通過する箇所が分離され、該ガス透過膜を通して前記ガス溶解中のガスを該別の液中に溶解させることを特徴とする。特に、ガス透過膜は、微粒子、イオン成分等の不純物は透過せず、ガスのみを透過させる膜を使用する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のガス回収再利用方法において、前記回収容器に回収されるガス溶解液の溶存ガス濃度が前記ガスを溶解させる別の液中の溶存ガス濃度より高いことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、装置から排出されるガスが溶解したガス溶解液から該ガスを回収して再利用するガス回収再利用装置において、前記ガス溶解液を回収する回収容器と、該回収容器内に設けたガス回収手段と、該ガス回収手段を通過する液を前記ガス溶解液を排出する装置に供給する液供給手段を備え、前記回収容器に前記ガス溶解液を収容すると共に、前記ガス回収手段にガスを溶解させる別の液を通過させ、前記ガス溶解液中のガスを該ガス回収手段を介して該通過する別の液に溶解させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のガス回収再利用装置において、前記回収容器内に備えたガス回収手段は、ガス透過膜により、前記回収容器内の前記ガス溶解液が通過する箇所と前記ガスを溶解させる別の液が通過する箇所が分離された構成であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のガス回収再利用装置において、前記液供給手段は、ガス溶解水製造装置を備え、前記ガス回収手段からのガスが溶解した超純水に該ガス溶解水製造装置で更にガスを溶解させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、ガス回収手段にてガス溶解液中のガスを別の液中に溶解させて回収し、該ガスの溶解した別の液を装置に供給するので、装置から排出されるガス溶解液に含まれるガスを回収して再利用できると共に、その分装置に供給される液中に溶解させるガス量を低減できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、ガス回収手段は、ガス透過膜により、回収したガス溶解液が通過する箇所とガスを溶解させる別の液が通過する箇所が分離されているので、ガス透過膜を通してガス溶解液中のガスを別の液中に溶解させて回収することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、回収容器に回収されるガス溶解液の溶存ガス濃度がガスを溶解させる別の液中の溶存ガス濃度より高いので、ガス溶解液中のガスを別の液中に溶解させて回収することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、回収容器にガス溶解液を収容すると共に、ガス回収手段にガスを溶解させる別の液を通過させることにより、ガス溶解液中のガスを別の液に溶解させて回収することが可能となり、さらに該別の液に溶解させるガス量を低減できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、回収容器内に備えたガス回収手段は、ガス透過膜により、回収容器内のガス溶解液が通過する箇所とガスを溶解させる別の液が通過する箇所が分離された構成であるので、ガス透過膜を通してガス溶解液中のガスを別の液中に溶解させて回収することが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、液供給手段は、ガス溶解水製造装置を備えたので、ガス回収手段からのガスが溶解した超純水に更にガスを溶解させることができ、所定の溶存ガス濃度のガス溶解液を装置に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るガス回収再利用装置のシステム構成を示す図である。図示するように、本ガス回収再利用装置は、ガス溶解水製造装置11と、洗浄装置10から排出されるガス溶解水を収容する回収容器12と、排水タンク13、ポンプ14と、イオン除去手段15と、微粒子除去手段16と、純水タンク17、ポンプ18と、脱気手段19とから構成されている。回収容器12内には筒状になったガス透過膜20が配置されている。
【0020】
上記構成のガス回収再利用装置において、ガス溶解水製造装置11は超純水中にガスGを溶解させてガス溶解水を製造する装置で、ガス溶解水としては、例えば純水中にオゾンガスを溶解させたオゾンガス溶解水、純水に水素ガスを溶解させた水素ガス溶解水、純水に窒素ガスを溶解させた窒素ガス溶解水、純水中に酸素ガスを溶解させた酸素ガス溶解水、純水中にアルゴンガスを溶解させたアルゴンガス溶解水等を挙げることができる。ガス溶解水製造装置11で製造されたガス溶解水は洗浄装置10に供給され、洗浄に供され、微粒子やイオン成分等の不純物が含まれたガス溶解液となる。
【0021】
上記微粒子やイオン成分等の不純物(汚染物質)が含まれたガス溶解液は、洗浄装置10から排水され回収容器12に収容される。該回収容器12内には筒状になったガス透過膜20が配置され、該ガス透過膜20の筒状内部には脱気手段19からの超純水が通過するようになっている。ガス透過膜20は微粒子やイオン成分等の不純物は透過せず、ガスのみを透過させるフッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン等の樹脂材料で構成されており、該ガス透過膜20の筒状内に脱気手段19からの超純水を通過させることにより、ガス溶存濃度の高い回収容器12内のガス溶解液中のガスは該ガス透過膜20を透過して、ガス溶存濃度の低い超純水中に溶解する。つまり、ガス透過膜20はガス溶解液が通過する箇所とガスを溶解させる別の超純水が通過する箇所とを分離させている。
【0022】
筒状のガス透過膜20を通過してガスが溶解した超純水はガス溶解水製造装置11に供給され、更にガスGが溶解され、所定のガス溶存濃度のガス溶解水となって洗浄装置10に供給される。回収容器12内で超純水にガスを溶解させる方法はガス透過膜20を用いた拡散溶解方法であるが、ガス溶解水製造装置11でのガス溶解方法は、回収容器12内のガス溶解方法と同様、透過膜を用いた拡散溶解方法、エジェクター、バブリング等、直接超純水に混合させる方法などがあげられる。本実施形態ではガス透過膜20として、ガス透過膜に微粒子、イオン成分等の不純物は透過しないガス透過膜を使用するため、回収したガス溶解液が通過する箇所とガスを溶解させる別の液が通過する箇所が分離されているので、ガス透過膜を通してガス溶解液中のガスのみを別の液中に溶解させて回収することが可能となる。
【0023】
洗浄装置10は、半導体デバイス、電子部品を製造するための複数の製造工程の中で、次工程の製造プロセスに影響を与えるウエハ表面の汚染物質を除去する装置である。除去対象物質の性状、洗浄後のウエハ表面の洗浄度に応じて定められた洗浄操作を自動で行う。洗浄に使用する液は、超純水、各種ガスが溶解している機能水並びに薬品類が溶解する薬液である。ウエハを洗浄するこれらの洗浄液の性状は常に一定に維持する必要があるため、洗浄液供給ラインはウエハに供給する配管とウエハに供給せず排出する配管に自動操作で切り替え可能な構造となっている。また、洗浄排液の性状によって排出配管を切り替えることが可能な構造となっている。
【0024】
回収容器12から排出された微粒子やイオン成分等の不純物を含むガス溶解液は排水タンク13内に収容され、ポンプ14でイオン除去手段15、及び微粒子除去手段16に順次供給され、イオン除去手段15でイオン成分が除去され、微粒子除去手段16で微粒子が除去され、純水となって純水タンク17に収容される。純水タンク17の純水はポンプ18により、脱気手段19に供給され、ここで純水中に溶解するガスは脱気され超純水となり、前記回収容器12内に配置された筒状のガス透過膜20内に送られ、ここで上記の回収容器12内のガス溶解水中のガスがガス透過膜20を透過して通過する超純水中に溶解する。このガスが溶解した超純水には更にガス溶解水製造装置11でガスGが溶解され、所定のガス溶存濃度となって洗浄装置10に供給される。
【0025】
上記のように、ポンプ14、イオン除去手段15、微粒子除去手段16、純水タンク17、ポンプ18、及び脱気手段19からなる汚染物質除去手段で、排水タンク13内の汚染物質を含むガス溶解水から異物を除去して、超純水を得、該超純水を回収容器12内のガス透過膜20に送り、拡散溶解方法によりガス溶解液中のガスを該超純水に溶解させて、低濃度のガス溶解水を製造する。この低濃度のガス溶解水をガス溶解水製造装置11の原料水とすることによってガス溶解水製造装置11での溶解されるガス量Gが低減可能となる。溶解ガスがオゾンガスの場合は、オゾン発生器で発生させるオゾンの量を低減できるため、オゾン発生のための電力を節約できる。
【0026】
なお、上記実施形態例ではガス回収手段として、回収容器12内にガス透過膜20を配置し、イオン除去手段15、微粒子除去手段16、及び脱気手段19で汚染物質を除去し、得られた超純水を回収容器12内のガス透過膜20を通過させるように構成しているが、これに限定されるものではなく、超純水に所定のガスを溶解して得られたガス溶解液を装置に供給し、該装置から排出されたガス溶解液を回収容器に回収し、該回収容器から排出されるガス溶解液を汚染物質除去手段を通して液中の微粒子や不純物等の汚染物質を除去して超純水とし、該超純水をガス回収手段に通過させ、前記ガス溶解液中のガスをこの超純水中に溶解させて回収させる構成であればよい。このように構成することにより、ガス溶解液中のガスを回収して再利用できると共に、超純水を循環して利用することが可能となる。
【0027】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るガス回収再利用装置のシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 洗浄装置
11 ガス溶解水製造装置
12 回収容器
13 排水タンク
14 ポンプ
15 イオン除去手段
16 微粒子除去手段
17 純水タンク
18 ポンプ
19 脱気手段
20 ガス透過膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置から排出されるガスが溶解したガス溶解液から該ガスを回収して再利用するガス回収再利用方法において、
前記ガス溶解液を回収容器に回収し、該回収容器内に備えたガス回収手段にて前記ガス溶解水中のガスを別の液中に溶解させて回収し、該ガスの溶解した別の液を前記装置に供給して該ガスを再利用することを特徴とするガス回収再利用方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガス回収再利用方法において、
前記回収容器内に備えたガス回収手段は、ガス透過膜により、回収した前記ガス溶解液が通過する箇所と前記ガスを溶解させる別の液が通過する箇所が分離され、該ガス透過膜を通して前記ガス溶解中のガスを該別の液中に溶解させることを特徴とするガス回収再利用方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス回収再利用方法において、
前記回収容器に回収されるガス溶解液の溶存ガス濃度が前記ガスを溶解させる別の液中の溶存ガス濃度より高いことを特徴とするガス回収再利用方法。
【請求項4】
装置から排出されるガスが溶解したガス溶解液から該ガスを回収して再利用するガス回収再利用装置において、
前記ガス溶解液を回収する回収容器と、該回収容器内に設けたガス回収手段と、該ガス回収手段を通過する液を前記ガス溶解液を排出する装置に供給する液供給手段を備え、
前記回収容器に前記ガス溶解液を収容すると共に、前記ガス回収手段にガスを溶解させる別の液を通過させ、前記ガス溶解液中のガスを該ガス回収手段を介して該通過する別の液に溶解させることを特徴とするガス回収再利用装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガス回収再利用装置において、
前記回収容器内に備えたガス回収手段は、ガス透過膜により、前記回収容器内の前記ガス溶解液が通過する箇所と前記ガスを溶解させる別の液が通過する箇所が分離された構成であることを特徴とするガス回収再利用装置。
【請求項6】
請求項4に記載のガス回収再利用装置において、
前記液供給手段は、ガス溶解水製造装置を備え、前記ガス回収手段からのガスが溶解した超純水に該ガス溶解水製造装置で更にガスを溶解させることを特徴とするガス回収再利用装置。

【図1】
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