説明

ガス回収方法

【課題】キセノンを封入した使用済み機器から、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収するためものであり、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくともキセノンを封入した機器からキセノンを回収する方法であって、少なくとも4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライト1を用いてキセノンを吸着する工程を含むことを特徴とするものであり、機器3に封入されたキセノンは、回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、大気中に放出されることなく効率よく回収でき、また、機器3の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス回収方法に関し、詳しくは、少なくともキセノンを封入した使用済み機器から、常温・常圧、または常温・低キセノン分圧において優れたキセノン吸着特性を示有するゼオライトを用いて、高効率にキセノンを直接回収する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体を製造する工程や、プラズマディスプレイの発光ガス等としてキセノンは多く用いられている。
【0003】
一方で、キセノンは空気中に極微量しか含まれていないため、空気から分離生成する方法では、多量の空気を取り込み複雑な分離精製工程を経て製造されるため、精製された高純度のキセノンガスは非常に高価である。
【0004】
このため、使用済みのキセノンを回収、精製し、再使用するシステムの確立が非常に重要であると考えられている。
【0005】
例えば、X線検査装置の検出器内のキセノンガスを、ゼオライト吸着槽により水分と炭酸ガスとを除去し、ゲッター層によりその他の不純物ガスを除去することにより、精製して回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、低温空気分離プラントの液体酸素棟低液から得られる酸素含有ガスから、シリカゲルなどにて水分を吸着除去し、LiおよびAg交換したX型ゼオライトにて選択的にキセノンを吸着し、脱着することで回収する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、キセノンなどの希ガスを使用する各種プロセスの排ガスに含まれる不純物を効率よく除去する方法として、希ガスと窒素とを主成分とする混合ガスから水素、水蒸気、窒素酸化物などの微量不純物を効率良く分離除去する方法が提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【0008】
また、半導体プロセス排ガス中より水分、二酸化炭素などを機能的に排除して高純度なキセノンを回収する方法として、不純物をゼオライトや分離膜モジュールで除去した後、キセノンを細孔径5Å以上のゼオライトに吸着回収する方法が提案されている(特許文献5参照)。
【0009】
また、放射性クリプトンを微量含む排出キセノンを有効活用するため、PSA・パージ法を用いた回収キセノンの精製技術が提案されている(非特許文献1参照)。この技術では、キセノン−クリプトン混合ガスから、キセノン選択型吸着剤として、Na−X型あるいはCa−X型ゼオライトを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−145921号公報
【特許文献2】特開2003−221212号公報
【特許文献3】特開2003−342010号公報
【特許文献4】特開2004−161503号公報
【特許文献5】特開2008−137847号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】冨来 靖ら著 「サイクル機構技報」No.15、2002年6月、P113−129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在、キセノンを封入した機器は、廃棄後、リサイクル処分場で分解分別回収されたり、埋め立て処理をなされたりしているが、キセノンは分解工程で大気中に放出されるなどして、ほとんど回収されていないのが現状である。
【0013】
また、大気中に放出されたキセノンは基準濃度以下に管理されているが、分解作業者が微量吸入する可能性もあり、好ましくない。
【0014】
よって、機器を分解する、あるいは、埋め立てるまでの前工程で、機器内部から、特殊な環境や設備導入がなくても常温・常圧、または常温・低キセノン分圧でもキセノンを吸着できることが望ましく、かつ、吸着したキセノンを再度回収できる技術が必要である。
【0015】
しかしながら、特許文献1から5および非特許文献1の構成は、我々の求める用途である、キセノンを封入した機器から、加圧や低温を利用することのない簡便な回収に適用できるものではない。
【0016】
特許文献1記載の従来の構成では、不純物を除去し、高純度化したキセノンを融点以下で冷却固化し再度該装置で循環再利用することが可能であるが、キセノンを吸着する技術ではなく装置内高純度化にて完結するものであり、本発明の目的とは異なるものである。
【0017】
また、特許文献2に記載の構成は、プラントなどから排出される不純物を含むキセノンガスを高純度化するための技術ではあるが、キセノンを封入した機器からの直接回収を目的としたものではない。
【0018】
また、ゼオライトによるキセノンの吸着条件として、圧力0.03〜1MPa、温度マイナス183℃〜30℃が可能とされているが、望ましくは大気圧以上、室温未満の条件が記されており、我々の求める常温・常圧、または常温・低キセノン分圧でのキセノン吸着能力は比較的低いものである。
【0019】
また、特許文献3から5に記載の構成も、また、プラントなどから排出される不純物を含むキセノンガスを高純度化するための技術ではあり、キセノンを封入した機器からの直接回収を目的としたものではない。
【0020】
よって、キセノン吸着材として用いられている材料のキセノンの吸着条件は、圧力0.3〜0.4MPaと加圧条件であり、我々の求める常温・常圧、または常温・低キセノン分圧でのキセノン吸着能力は比較的低いものである。
【0021】
また、非特許文献1の構成も、また、プラントなどから排出される不純物を含むキセノンガスを高純度化するための技術ではあるが、キセノンを封入した機器からの回収を目的としたものではない。
【0022】
また、PSA・パージ法を用いた技術であるため、我々の求める常温・常圧、または常温・低キセノン分圧でのキセノン吸着能力は比較的低いものである。
【0023】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、キセノンを封入した使用済み機器から、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収するためものであり、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明のガス回収方法は、少なくとも4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライトを用いて、少なくともキセノンを封入した機器からキセノンを回収するのである。
【0025】
これによって、キセノンを封入した機器が廃棄された場合、機器に封入されたキセノンは、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収することができるため、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、機器に封入されたキセノンを、常温常圧下、または常圧・低キセノン分圧条件下で吸着し、大気中に放出することなく回収できるため、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することもなく、高効率で安全性の高いキセノン回収技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス回収方法の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1の発明は、少なくともキセノンを封入した機器からキセノンを回収する方法であって、少なくとも4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライトを用いてキセノンを吸着する工程を含むことを特徴とするガス回収方法であり、ガス吸着材として4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライトを用いることにより、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収することができ、一例として常圧のキセノンを30cc/g以上の大容量吸着することが可能である。
【0029】
そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することが可能となる。
【0030】
また、吸着されたキセノンは、次工程で吸引脱離、または、加熱により脱離が可能であり、簡便にキセノンを回収し、再利用することができる。
【0031】
第2の発明は、特に、第1の発明のゼオライトが、少なくともMFI型、BETA型、MOR型ゼオライトを含むことを特徴とするものであり、詳細は明らかではないが、おそらくは細孔径と細孔形状に起因するキセノンとの相互作用のし易さにより、これらのゼオライトを用いることによって、常圧のキセノンを40cc/g以上の大容量吸着することが可能となる。
【0032】
そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することが可能となる。
【0033】
第3の発明は、特に、第1の発明のゼオライトが、少なくともZSM−5型ゼオライトを含むことを特徴とするものであり、詳細は明らかではないが、おそらくは細孔径と細孔形状に起因するキセノンとの相互作用が最も強くなることによって、常圧のキセノンを55cc/g以上の大容量吸着することが可能となる。
【0034】
そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することが可能となる。
【0035】
第4の発明は、特に、第1の発明のゼオライトが、少なくとも銅交換したZSM−5型ゼオライトを含むことを特徴とするものであり、イオン交換により導入された銅イオンが化学吸着に類似する挙動を示し、より低分圧でのキセノン吸着量の増大が可能となる。
【0036】
そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することが可能となる。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス回収方法の一例の概略図を示すものである。
【0039】
図1に示すように、キセノンを吸着する、4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライト1を充填したカセット2A,2Bは、同じ構成であるが、一方が吸着を行っている際に他方が脱離を行えるよう2つ設置されている。これらのカセットは、使用済みのキセノンを封入した機器3が設置されているキセノン回収室4と、キセノン導入弁5を介して接続されている。
【0040】
キセノン導入弁5は、キセノン回収室4を、カセット2A、または、カセット2Bと接続することも、いずれのカセットとも接続させないこともできる。また、カセット2は、吸着したキセノンを精製するためのキセノン精製工程(図示せず)と、キセノン排出弁6を介して接続されている。
【0041】
キセノン回収室4は、使用済みのキセノンを封入した機器3を複数設置することができる。また、キセノン回収室4には、室内の圧力をモニターする圧力計7と、真空ポンプ8が接続されており、キセノン回収室4内の空気をキセノン回収前に吸引除去し、回収するキセノンに不純物として空気が混入することを抑制する。
【0042】
次に、本実施の形態1によるキセノン回収方法を以下に説明する。
【0043】
まず、キセノン回収室4へ使用済みのキセノンを封入した機器3を設置したのち、キセノン回収室4を密封する。
【0044】
続いて、真空ポンプ8によりキセノン回収室4内を減圧とする。減圧の条件は、特に指定するものではないが、空気の混入を防ぐためにはより低い圧力であることが望ましい。この真空引きの間、キセノン導入弁5は閉じた状態である。
【0045】
キセノン回収室4が、任意圧力まで真空引きされたことを圧力計7により確認し、使用済みのキセノンを封入した機器3からキセノンを開放するための操作を行う。この操作の手段は、特に指定するものではないが、機器が設置された環境が任意圧力まで減圧されると、封入したキセノンが自動開放される弁を設置する方法や、キセノン回収室4内部にキセノンを封入した機器3の一部を破壊してキセノンを開放する機構を備える方法などが利用できる。
【0046】
次にカセット2Aとキセノン回収室4が連通となるようキセノン導入弁5を開ける。このとき、カセット2A内のゼオライト1は、キセノン脱離処理を終え、キセノン吸着活性な状態である。キセノン導入弁5を開けることにより、4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライト1がキセノンを吸着する挙動が、圧力計7の値によりモニターでき、圧力計7の圧力値が一定になれば、吸着平衡に達し吸着が終了したと見なして、キセノン導入弁5を閉じる。
【0047】
このカセット2Aによるキセノン吸着が行われている間に、カセット2B内のゼオライト1は、吸着したキセノンの脱離操作を行っている。キセノンの脱離方法は、特に指定するものではないが、加熱や真空ポンプによる吸引などで脱離させることができる。
【0048】
例えば、カセット2Bの周囲にヒーター(図示せず)を設置しておき、キセノン吸着終了後にキセノン導入弁5を閉じ、キセノン排出弁6を開けて、ヒーターに通電することにより、吸着されていたキセノンは、ゼオライト1から脱離し、キセノン排出弁を介してキセノン精製工程へ排出される。
【0049】
カセット2Aと、カセット2Bとが交互にキセノンの吸着および脱離を繰り返し行うことにより、効率的なキセノンの回収を実現することができる。
【0050】
本構成により、ガス吸着材として4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライトを用いることにより、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収することができ、そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することが可能となる。
【0051】
本発明に利用できるゼオライトは、4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライトであり、その理由はキセノンを吸着する目的に対し、キセノンのファンデルワールス径が4.32Åであることから、キセノン分子との相互作用により吸着能を発現するためには4.5Å以上は必要であり、かつ、細孔径が大きすぎると細孔壁とキセノン分子との相互作用力が低下するため7.3Å以下が望ましいと考える。
【0052】
実際に、我々は、細孔径が7.1ÅのBETA型ゼオライトや、7.3ÅのAFI型ゼオライトでは、良好なキセノン吸着特性を示すのに対し、細孔径が7.4ÅのX型ゼオライトではキセノン吸着量が低いことを確認した。
【0053】
本発明に利用できるゼオライトは、望ましくは、MFI型、BETA型、MOR型ゼオライトを含み、より望ましくは、ZSM−5型ゼオライトを含むことを特徴とするものであり、さらに銅交換したZSM−5型ゼオライトであることが望ましい。また、これらの混合物であっても、他のキセノンを吸着可能なガス吸着材が含まれていても良い。また、ガス吸着材は、粉体であっても、ペレット化、成形などを施してあっても良い。
【0054】
また、本発明のゼオライトにより吸着回収されたキセノンは、次工程で吸引脱離または、加熱による脱離が可能であり、簡便にキセノンを回収し、再利用することができる。再利用時のプロセスについては、特に限定するものではないが、高純度キセノンを使用した機器から回収されたキセノンであるため、回収時に混入する可能性のある空気成分以外の不純物ガスが比較的少ないため、従来既存の不純物分離精製プロセスで簡易に高純度化可能である。
【0055】
以下、本発明の実施の形態1について、ガス吸着材として用いるゼオライトの種類を種々変えた場合のガス吸着デバイスのキセノン吸着評価結果を実施例1から5に示す。
【0056】
キセノン吸着特性は、大気圧でのゼオライト1gあたりのキセノン吸着量、および、キセノン回収室のキセノン分圧が30000Paの場合のゼオライト1gあたりのキセノン吸着量、および、特に低圧でのキセノン吸着を比較するために、10Pa下でのゼオライト1gあたりのキセノン吸着量の評価を行った。
【0057】
また、キセノン回収室に設置した圧力計による残留キセノン分圧(キセノンを吸着可能な限界圧力に相当)でも評価を行った。また、比較例として、従来例に用いられたゼオライトについての評価結果を示す。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
実施例1においては、細孔径7.3ÅのAFI型ゼオライト市販品を用いて評価を行ったところ、キセノン吸着量は、大気圧では30c/g、30000Paでは10cc/g、10Paではほぼ0cc/gであった。また、残留キセノン分圧は40Paであった。
【0059】
細孔径が4.5Å以上7.3Å以下の範囲にあるため、比較例1及び2と比較すると、大気圧でのキセノン吸着量に優位であり、残留キセノン分圧も比較例1より1オーダーの優位性が得られたことから、キセノン吸着量に優れ、残留キセノン分圧も低く、常温・常圧条件下で、高効率にキセノンを回収することができ、そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することができる。
【0060】
(実施例2)
実施例2においては、細孔径7.1ÅのBETA型ゼオライト市販品を用いて評価を行ったところ、キセノン吸着量は、大気圧では40c/g、30000Paでは18cc/g、10Paではほぼ0cc/gであった。また、残留キセノン分圧は20Paであった。
【0061】
細孔径が4.5Å以上7.3Å以下の範囲にあるため、かつ、BETA型ゼオライトをガス吸着材をして用いた結果、比較例1及び2と比較すると、大気圧および30000Paでのキセノン吸着量に優位であり、残留キセノン分圧も比較例1より1オーダーの優位性が得られたことから、キセノン吸着量に優れ、残留キセノン分圧も低く、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収することができ、そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することができる。
【0062】
(実施例3)
実施例3においては、細孔径6.8ÅのMOR型ゼオライト市販品を用いて評価を行ったところ、キセノン吸着量は、大気圧では50c/g、30000Paでは40cc/g、10Paではほぼ0cc/gであった。また、残留キセノン分圧は10Paであった。
【0063】
細孔径が4.5Å以上7.3Å以下の範囲にあり、かつ、MOR型ゼオライトをガス吸着材をして用いた結果、比較例1および2と比較すると、大気圧および30000Paでのキセノン吸着量に優位であり、残留キセノン分圧も比較例1より1オーダーの優位性が得られたことからキセノン吸着量に優れ、残留キセノン分圧も低く、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収することができ、そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することができる。
【0064】
(実施例4)
実施例4においては、5.5ÅのMFI型ゼオライトであるZSM−5市販品を用いて評価を行ったところ、キセノン吸着量は、大気圧では55c/g、30000Paでは35cc/g、10Paでは0.1cc/gであった。また、残留キセノン分圧は3Paであった。
【0065】
細孔径が4.5Å以上7.3Å以下の範囲にあり、かつ、MFI型ゼオライトであるZSM−5をガス吸着材をして用いた結果、比較例1および2と比較すると、大気圧および30000Pa、10Paでのキセノン吸着量に優位であり、残留キセノン分圧も比較例1より2オーダーの優位性が得られたことから、キセノン吸着量に優れ、残留キセノン分圧も低く、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収することができ、そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することができる。
【0066】
(実施例5)
実施例5においては、細孔径5.5ÅのMFI型ゼオライトであるZSM−5市販品を銅イオン交換したもの用いて評価を行ったところ、キセノン吸着量は、大気圧では55c/g、30000Paでは35cc/g、10Paでは3cc/gであった。また、残留キセノン分圧は0.005Paであった。
【0067】
細孔径が4.5Å以上7.3Å以下の範囲にあり、かつ、MFI型ゼオライトであるZSM−5を銅イオン交換したゼオライトを用いた結果、比較例1および2と比較すると、大気圧および30000Pa、10Paでのキセノン吸着量に優位であり、残留キセノン分圧も比較例1より5オーダーの優位性が得られたことから、キセノン吸着量に優れ、残留キセノン分圧も低く、常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率にキセノンを回収することができ、そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することができる。
【0068】
特に、低圧領域でのキセノン吸着特性が実施例1から4と比較しても優れ、残留キセノン分圧も非常に低いことから、効率的なキセノン回収が可能であるといえる。
【0069】
ここで、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの作製は、市販されているZSM−5型ゼオライトの銅イオン交換と、水洗と、乾燥、熱処理のプロセスを経て行う。
【0070】
銅イオン交換は、既知の方法にて行うことが出来るが、塩化銅水溶液やアンミン酸銅水溶液など銅の可溶性塩の水溶液に浸漬する方法が一般的であり、中でもプロピオン酸銅(II)や酢酸銅(II)などカルボキシラトを含むCu2+溶液を用いた方法で調整されたものは、化学吸着活性が高い。
【0071】
水洗は、イオン交換後に十分に行う。
【0072】
次いで、加熱乾燥または減圧下乾燥を行い、表面付着水を除去する。
【0073】
その後、低圧下にて適切な熱処理を行う。これは、イオン交換により導入されたCu2+をCu+へと還元し、化学吸着能を発現させるために必要である。熱処理時の圧力は、10mPa以下、好ましくは1mPa以下であり、温度はCu+への還元を進行させるため、300℃以上、好ましくは500℃〜600℃程度である。
【0074】
(比較例1)
比較例1においては、細孔径7.4ÅのNa−X型ゼオライト市販品を用いて評価を行ったところ、キセノン吸着量は、大気圧では18c/g、30000Paでは9cc/g、10Paでは0cc/gであった。また、残留キセノン分圧は800Paであった。
【0075】
これは、おそらくは細孔径がキセノンのファンデルワールス径よりも大きすぎるため、キセノン分子との相互作用力が、本発明が限定するゼオライトよりも小さいことに起因すると考える。
【0076】
その結果、残留キセノン分圧も比較的大きく、X型ゼオライトは特許文献2、および、非特許文献1にて、キセノン吸着剤として適用されているが、本発明への適用には不適当であると考える。なお、Na−X型以外にも、Li−X型、Ag−X型、Ca−X型の評価も実施したが、ほぼ同等の結果となった。
【0077】
(比較例2)
比較例2においては、細孔径4.1ÅのA型ゼオライト市販品を用いて評価を行ったところ、キセノン吸着量は、大気圧では3cc/g、30000Paではほぼ1cc/g、10Paでは0cc/gであった。また、残留キセノン分圧は28000Paであった。
【0078】
これは、細孔径がキセノンのファンデルワールス径よりも小さく、キセノン分子の吸着には適さないことに起因すると考える。その結果、残留キセノン分圧も大きく、A型ゼオライトは特許文献3および4にてキセノン吸着剤として適用されているが、本発明への適用には不適当であると考える。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明にかかるガス回収方法は、機器に封入されたキセノンを常温・常圧、または常圧・低キセノン分圧条件下で、高効率に回収することができ、そのため、キセノンの回収工程に加圧や冷却のための特殊な設備導入がなくても、キセノンを大気中に放出することなく効率よく回収でき、また、機器の分解分別作業者がキセノンを吸入することのない、ガス回収方法を提供することができるため、プラズマディスプレイなどのようなキセノンを封入した機器のリサイクル時や、メンテナンスのため一時的にキセノンを安全に除去したい用途などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライト
3 キセノンを封入した機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともキセノンを封入した機器からキセノンを回収する方法であって、少なくとも4.5Å以上7.3Å以下の細孔径を有するゼオライトを用いてキセノンを吸着する工程を含むことを特徴とするガス回収方法。
【請求項2】
ゼオライトが、少なくともMFI型、BETA型、MOR型ゼオライトを含むことを特徴とする請求項1記載のガス回収方法。
【請求項3】
ゼオライトが、少なくともZSM−5型ゼオライトを含むことを特徴とする請求項1記載のガス回収方法。
【請求項4】
ゼオライトが、少なくとも銅交換したZSM−5型ゼオライトを含むことを特徴とする請求項1記載のガス回収方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−57491(P2011−57491A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207719(P2009−207719)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】