説明

ガス圧接用リングバーナ

【課題】本発明は建築現場や土木現場等で2本の鉄筋を対向させた突合せ部分が熟練した技能がなくても容易に且つ均等に加熱されるガス圧接用リングバーナを提供することを目的とする。
【解決手段】鉄筋Wの外周を各ノズル2によって火炎が均等幅で当てられると共に、各ノズル2の先端とそのノズル2から放出する火炎が当る鉄筋Wまでの距離を一定とする構造と成す。また前記バーナ本体部Aが、内周面に複数のノズル2を配置した一対の略円弧状導管1であり、該略円弧状導管1の端部1aとU字状の導管4の端部とを連結させ、且つ、ノズル2の先端とそのノズル2から放出する火炎が当る鉄筋Wまでの距離を一定にするための段部1bが、略円弧状導管1の内周面に形成されると共にそこにノズル2を着脱可能に配置しておくのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築現場や土木現場等で2本の鉄筋を対向させて接合するために、その鉄筋の突合せ部分を均等に加熱するガス圧接用リングバーナ、特には鉄筋の出入自在な開口部を有したガス圧接用リングバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に2本の鉄筋を対向させ、該鉄筋の突合せ部分を均等に加熱するガス圧接用リングバーナとしては、鉄筋の中心に向って火炎が均等に当るように円形のガス圧接用リングバーナがあるが、これはガス圧接する際には両側から鉄筋を突合せて圧接作業が行えるが、ガス圧接後、円形のガス圧接用リングバーナを鉄筋から外す場合には、鉄筋の端まで移動してから抜かなければならず、手間が掛るものであった。
【0003】
このためガス圧接後、鉄筋から簡単に抜くための開口部を設けたガス圧接用リングバーナが多く使用されている。しかしながら、開口部を設けたガス圧接用リングバーナは、開口部にはノズル(火口)がないため、端部のノズルを鉄筋の中心からずらせて開口部分の鉄筋外周に火炎が当てられると共に他のノズルも鉄筋の中心からずらせて鉄筋の突合せ部分が加熱されるため、円形のガス圧接用リングバーナのように鉄筋の中心に向って火炎を当てることが出来ずに加熱しているのが現状である。このため、開口部を設けたガス圧接用リングバーナであっても鉄筋の突合せ部分を均等に加熱させるものとして、特開平6−313524号が提案されている。この構造は、相対する導管円弧部の中心に対し対称に配置された火口は、円筒状又は円柱状の工作物(鉄筋)の周面との交点が工作物の円周に沿って移動するように順次配置し、これらの火口は相対する導管円弧部を含む面に対し同じ方向へ傾斜したものである。この目的は、火炎を工作物の周面との交点が工作物の円周に沿って順次移動する箇所に与えることにより、火炎が工作物の周面に沿って順次放絡線を描いて工作物の周面全体を連続的に円形に包むようにして工作物の周面を均一に加熱すると共に同じ方向へ傾斜する火炎の放絡線は工作物の周面を螺旋状にうず巻く気流を生じさせて空気を吸い込んで完全燃焼が得られるようにしたものである。
【0004】
しかしながら特開平6−313524号は、工作物の外周(円周)に対して等間隔(均等幅)で火炎が当らず、且つ、各火口先端とその火口から放出する火炎が当る工作物までの距離が一定でないため、工作物の外周がより正確に均等な加熱を行うことは困難なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−313524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は建築現場や土木現場等で2本の鉄筋を対向させた突合せ部分が熟練した技能がなくても容易に且つ均等に加熱されるガス圧接用リングバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記現状に鑑み成されたものであり、つまり、鉄筋の外周を各ノズルによって火炎が均等幅で当てられると共に、各ノズルの先端とそのノズルから放出する火炎が当る鉄筋までの距離を一定とする構造と成す。また前記バーナ本体部が、内周面に複数のノズルを配置した一対の略円弧状導管であり、該略円弧状導管の端部とU字状の導管の端部とを連結させ、且つ、ノズルの先端とそのノズルから放出する火炎が当る鉄筋までの距離を一定にするための段部が、略円弧状導管の内周面に形成されると共にそこにノズルを着脱可能に配置しておくのが好ましい。又、前記略円弧状導管の両端部と中央部に、接合面の焼幅部分が加熱されるための補助ノズルを複数個配置すると共に、該補助ノズルの先端とその補助ノズルから焼幅部分に向って放出する火炎が当る鉄筋までの距離と、前記ノズルの先端とそのノズルから接合面の外周に向って放出する火炎が当る鉄筋までの距離とを同一にすると良い。尚、本発明で言う「火炎が均等幅で当てられる」とは、鉄筋の外周長さを図中に示す如くノズルの数量で割り出し、割り出した分配線の位置に各火炎を順次当てることにより、均等幅で火炎が当る結果となることを意味するものとする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のように少なくとも、鉄筋(W)の外周を各ノズル(2)によって火炎が均等幅で当てられると共に、各ノズル(2)の先端とそのノズル(2)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を一定とすることにより、鉄筋(W)の接合面の外周部が均等に加熱されるため、効率の良い温度上昇と加熱時間の短縮が可能となり、熟練した技能がなくても容易に、且つ、能率良くガス圧接作業が行えるものとなる。
【0009】
請求項2のようにバーナ本体部(A)が、内周面に複数のノズル(2)を配置した一対の略円弧状導管(1)であり、該略円弧状導管(1)の端部(1a)と前記U字状の導管(4)の端部とが連結されることにより、略円弧状導管(1)や導管(4)及びノズル(2)が別々に製作できるため、安定した品質が確保し易くなると共に部分毎の交換が可能となり、長期間に渡って使用できるものとなる。しかも、略円弧状導管(1)を鉄筋(W)の太さに応じた種類のものを複数用意しておけば、ノズル(2)或いは導管(4)も共通して使用でき、コストダウンに貢献できるものとなる。又、ノズル(2)の先端とそのノズル(2)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を一定にするための段部(1b)が、略円弧状導管(1)の内周面に形成されると共に、前記段部(1b)にノズル(2)が着脱可能に配置されることにより、ノズル(2)の交換を誰が行っても初期の条件が常に確保されるものとなる。つまり、ノズル(2)の先端とそのノズル(2)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離及び角度は、誰がノズル(2)を交換しても略一定となるのである。
【0010】
請求項3に示すように略円弧状導管(1)の両端部と中央部に、接合面の焼幅部分が加熱されるための補助ノズル(2’)を複数個配置すると共に、該補助ノズル(2’)の先端とその補助ノズル(2’)から焼幅部分に向って放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離と、前記ノズル(2)の先端とそのノズル(2)から接合面の外周に向って放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離とを同一にさせることにより、接合面及びその焼幅部が均等に加熱されて、効率の良い温度上昇と加熱時間の短縮が可能となり、且つ、熟練した技能がなくても容易に行えると共に能率良くガス圧接作業が行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の要部を示す説明図である。
【図2】本実施形態の要部断面を示す説明図である。
【図3】本実施形態の略円弧状導管を示す斜視図である。
【図4】本発明の作用を示す説明図である。
【図5】本実施形態のノズルから放出する火炎状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は建築現場や土木現場等で2本の鉄筋(W)を対向させた突合せ部分が、熟練した技能がなくても容易に且つ均等に加熱されるガス圧接作業が可能になるという目的を、鉄筋(W)の外周を各ノズル(2),(2’)によって火炎が均等幅で当てられると共に、各ノズル(2),(2’)の先端とそのノズル(2),(2’)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を一定とさせることにより実現した。
【実施例1】
【0013】
図1、図2は本発明の実施形態の要部を示す図であり、この図に基づいて説明する。(A)は鉄筋(W)の出入自在な開口部(3)を有すると共に複数のノズル(2)を着脱可能に配置したバーナ本体部であり、該バーナ本体部(A)は図3に示すような略円弧状導管(1)が対向して一対で設けられており、この材質としてはアルミニウムなどの軽金属で形成するのが好ましいが、この材質に限定されるものではない。また前記略円弧状導管(1)の開口部(3)側と反対側の端部(1a)は、後述するU字状の導管(4)の端部と連結されている。更に略円弧状導管(1)の内周面には、ノズル(2)の先端とそのノズル(2)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を一定にするための段部(1b)が形成されている。前記各段部(1b)にはノズル(2)が螺合して配置されている。
【0014】
(2’)は図3に示すような略円弧状導管(1)の両端部及び中央部に配置した複数個の補助ノズルであり、この補助ノズル(2’)は、ノズル(2)が接合面の外周を加熱するためのものであるのに対し、接合面の焼幅部分を加熱するためのものである。また前記補助ノズル(2’)の配置位置は、補助ノズル(2’)とその補助ノズル(2’)から焼幅部分に向って放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離と、前記ノズル(2)とそのノズル(2)から接合面の外周に向って放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離は同一になるようにする(図5参照)。尚、前記補助ノズル(2’)の構造や大きさは、ノズル(2)と同じである。(4)は略円弧状導管(1)に酸素と燃料ガスを供給するためのU字状の導管であり、該導管(4)は銅製パイプで形成されている。尚、前記導管(4)は銅製パイプに限定されるものではない。
【0015】
次に本発明の組立て方について説明する。先ず図3に示すように略円弧状導管(1)にノズル(2)と補助ノズル(2’)を螺合させて固定する。次に図3の状態のものを一対用意し、略円弧状導管(1)の端部(1a)にU字状の導管(4)の端部を螺合させて連結すると共にノズル(2)と補助ノズル(2’)が略円弧状導管(1)の内周側に来るように形を整える。この時、ノズル(2)は略円弧状導管(1)の段部(1b)にノズル(2)が螺合して配置されるため、ノズル(2)から放出する火炎は、鉄筋(W)の外周長さ(外径)をノズル(2)の個数で割った位置、つまり、図4に示す分配線と鉄筋(W)の外周の交点に各ノズル(2)の先端が向くようにセットされることにより、外周長さ分(所定幅)が均等に加熱されるものとなると共に、前記交点と各ノズル(2)の先端との距離が全て同じになるのである。
【0016】
図4は本発明の作用を示す図であり、これについて説明する。予め2本の鉄筋(W)を対向させて図示しない圧接器に取付けておく。先ず本発明品の開口部(3)を鉄筋(W)に向けて、バーナ本体部(A)の内部に鉄筋(W)を入れると共にバーナ本体部(A)の中心部に鉄筋(W)が来るようにセットする。次に前記圧接器によって鉄筋(W)が加圧された後、本発明品の各ノズル(2)に着火させると、火炎は各ノズル(2)から鉄筋(W)の所定位置に当る。この火炎が鉄筋(W)の所定位置に当って鉄筋(W)を均等に加熱する。この状態について更に詳細に説明する。予め鉄筋(W)の外周がノズル(2)の個数で割られた分配線によって均等に振り分けられると共に、段部(1b)にノズル(2)を配置させることにより、各ノズル(2)の先端とそこから放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離、つまり、点線矢印の長さが全て同じになる。従って、鉄筋(W)の接合面の外周部が均等に加熱されるため、効率の良い温度上昇と加熱時間の短縮が可能となり、能率良くガス圧接作業が行えるものとなるのである。
【符号の説明】
【0017】
W 鉄筋
A バーナ本体部
1 略円弧状導管
1a 端部
1b 段部
2 ノズル
2’ 補助ノズル
3 開口部
4 導管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋(W)の出入自在な開口部(3)を有すると共に複数のノズル(2)を配置したバーナ本体部(A)と、該バーナ本体部(A)に酸素と燃料ガスを供給するためのU字状の導管(4)とから少なくとも構成するリングバーナであって、鉄筋(W)の外周を各ノズル(2)によって火炎が均等幅で当てられると共に、各ノズル(2)の先端とそのノズル(2)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を一定としたことを特徴とするガス圧接用リングバーナ。
【請求項2】
前記バーナ本体部(A)が、内周面に複数のノズル(2)を配置した一対の略円弧状導管(1)であり、該略円弧状導管(1)の端部(1a)と前記U字状の導管(4)の端部とが連結され、且つ、前記ノズル(2)の先端とそのノズル(2)から放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離を一定にするための段部(1b)が、前記略円弧状導管(1)の内周面に形成されると共にそこに前記ノズル(2)が着脱可能に配置された請求項1記載のガス圧接用リングバーナ。
【請求項3】
前記略円弧状導管(1)の両端部と中央部に、接合面の焼幅部分を加熱するための補助ノズル(2’)を複数個配置すると共に、該補助ノズル(2’)の先端とその補助ノズル(2’)から焼幅部分に向って放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離と、前記ノズル(2)の先端とそのノズル(2)から前記接合面の外周に向って放出する火炎が当る鉄筋(W)までの距離とを同一にした請求項1又は2記載のガス圧接用リングバーナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242047(P2011−242047A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114192(P2010−114192)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(394024983)東海ガス圧接株式会社 (12)
【出願人】(596171384)株式会社 徳武製作所 (14)
【出願人】(390024914)東京ガスケミカル株式会社 (13)
【Fターム(参考)】