説明

ガス抜き穴を有する容器

【課題】 ガス抜きのための別部品を必要とせず、ガスのみを通し内容物の漏洩を防止できる容器を提供する。
【解決手段】 樹脂壁面を有し、該樹脂壁面に複数のガス抜き穴を有する容器であって、該ガス抜き穴の径は内容物を漏洩しない大きさで、かつ、ガス抜き穴の1個当たりの面積(μm2/個)と、ガス抜き穴の数(個)との積として求められるガス抜き有効面積(μm2)が所定面積以上であり、この所定面積は、該容器の内圧を常圧から所定圧力に変化させた後、所定時間放置したときのガスの相対リーク量(%)を縦軸とし、ガス抜き有効面積(μm2)を横軸とした関係図において、相対リーク量とガス抜き有効面積との関係を、勾配の異なる連続した2つの近似直線で表わしたときに、該近似直線同士の交点での横軸で示されるガス抜き有効面積である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス抜き穴を有する樹脂製の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉性の高い樹脂製容器などにおいて、内部ガスの膨張などによる容器破損を防止するため、その内容物の漏洩を防止しつつガスのみを容器外部へ排出するガス抜き手段を有するものがある。従来このような容器として、樹脂製容器に可撓性の舌先を設けることにより、容器内圧の上昇時において該舌先が弾性変形し開放することで内部圧を逃がすようにした容器がある(特許文献1参照)。また、容器本体に小孔を貫通させ、その上に合成樹脂製微多孔質性シートなどを接着する方法が開示されている(特許文献2参照)。この微多孔質性シートの接着理由としては、小孔のみでは内容物が漏洩するため、その漏洩防止が役目となる。
また、複写機、ファクシミリ、プリンター等の現像装置に用いられるトナー容器も、微粉末であるトナーの飛散を防止するため密閉性が高い。このため、輸送、保管、または使用時における温度変化、航空輸送時の圧力変化などによって、容器内圧が変化して、トナー容器の封止部からのトナー漏れや、現像装置への装着時においてトナーが飛散する場合があった。これを防止するため、従来ガス抜き手段を備えたトナー容器として、トナー容器を封止する一部の部材を、通気性部材としたもの(特許文献3および特許文献4参照)、および部材の変形を利用したもの(特許文献5参照)などがある。
一方、ガス抜きのための小孔をレーザー加工により形成した樹脂成形品(特許文献6参照)などもある。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2の方法では樹脂製容器に別部品を組合わせる必要があり、別部品作製、接着工程などの工数の増加により、コストが高くなるという問題がある。また、容器を傾けたり、倒したりした場合に内容物が漏洩する可能性がある。また、特許文献3などでは、通気性部材としてトナーの平均粒子径より細かい孔径の不織布などが別途必要となる他、容器製造工程も複雑となるので、上記特許文献1などと同様に製造コストが高くなるなどの問題がある。
また、レーザー光による微細加工では、通常、深さ/穴径のアスペクト比は 10 程度が限界とされている。よって、容器の内容物が水などの液体である場合や、トナーのように粒子径が数μm〜十数μm のものである場合は、レーザー加工を用いて、容器壁面にこれら内容物が漏洩しないガス抜き穴を形成することは困難である。また、微細なガス抜き穴の形成が可能である場合でも、形成する微細穴の個数によっては十分なガス抜きができないという問題もある。
【特許文献1】特開2000−302156号公報(段落「0019」)
【特許文献2】実開平1−100775号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献3】特開平7−257625号公報(段落「0004」)
【特許文献4】特開2002−278246号公報(段落「0006」)
【特許文献5】特開平10−90987号公報(段落「0013」)
【特許文献6】特開2000−135581号公報(段落「0011」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、ガス抜きのための別部品を必要とせず、ガスのみを通し内容物の漏洩を防止できる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のガス抜き穴を有する容器は、樹脂壁面を有し、該樹脂壁面に複数のガス抜き穴を有する容器であって、上記ガス抜き穴の径は内容物を漏洩しない大きさで、かつ、上記ガス抜き穴の1個当たりの面積(μm2/個)と、上記ガス抜き穴の数(個)との積として求められるガス抜き有効面積(μm2)が所定面積以上であり、上記所定面積は、該容器の内圧を常圧から所定圧力に変化させた後、所定時間放置したとき、(上記所定時間放置後の上記容器の内圧 − 常圧)/(上記所定圧力 − 常圧) × 100 で求められる相対リーク量(%)を縦軸とし、上記ガス抜き有効面積(μm2)を横軸とした関係図において、相対リーク量とガス抜き有効面積との関係を、勾配の異なる連続した2つの近似直線で表わしたときに、該近似直線同士の交点での上記横軸で示されるガス抜き有効面積であることを特徴とする。
なお、上記近似直線は、散布図として表わされる上記関係図において、その散布状態から判断し、横軸に沿って該散布状態の略中央を通るように決定した直線であり、ガス抜き有効面積の増加に伴う相対リーク量の増減傾向を示すものである。
【0006】
また、上記所定面積は、1000 μm2であることを特徴とする。
また、上記ガス抜き穴はレーザー光照射により形成され、その形状はレーザー光照射面側が大径で、上記ガス抜き穴の径となるレーザー光貫通側が小径のテーパ形状であることを特徴とする。
【0007】
上記ガス抜き穴のレーザー光貫通側において、該穴の略中心を通る幅のうち、最小となる幅が 0.1 μm 〜 5 μm であることを特徴とする。
また、上記ガス抜き穴は、上記容器の該ガス抜き穴を形成する樹脂壁面部分を、その他の壁面部分よりも薄く加工した後に形成されることを特徴とする。
また、上記容器の該ガス抜き穴を形成する樹脂壁面部分の厚さが、 0.01 mm 〜 5 mm であることを特徴とする。
また、上記容器が、現像装置に用いられるトナー容器であることを特徴とする。
【0008】
上述のように、従来レーザー光による微細加工では、通常、深さ/穴径のアスペクト比は 10 程度が限界とされていた。これは、レーザー光が穴の側壁で反射されながら前進し、穴先端部でレーザー光による吸収溶解が起こり穴形成が進行するので、穴のアスペクト比が大きくなると、レーザー光が穴側壁で反射する回数およびそれに伴い減衰するエネルギーも多くなり、穴先端部で十分なエネルギーが得られず穴形成が進行しなくなるためであると考えられる。
また、トナー容器などの樹脂製容器に、ガス抜き穴を形成しようとする場合、トナーの平均粒子径が 10 μm 程度であることから、該ガス抜き穴は、これ以下の径の微細穴とする必要があり、トナー容器壁面厚さ(略 1.5 mm)を考慮すると、非常に大きなアスペクト比としなければならない。
これらの問題に対し本発明者らは、レーザー光照射による穴加工形状をテーパ形状とすることにより、貫通穴深さ/貫通穴径のアスペクト比を擬似的に大きくでき、貫通面に数μm の微細穴を形成できることを見出した。また種々の試験の結果、微細穴を複数個形成した場合において、各微細穴の面積と微細穴の個数との積で求められるガス抜き有効面積を一定以上確保することにより、十分なガス抜き効率を確保できることを見出した。
【0009】
以上の知見は、特に以下の試験より見出されたものである。樹脂製容器の内圧を常圧(101.325kPa)から所定圧力(例えば、81.325kPaなど)に減圧し、所定時間(例えば 30秒など)放置する試験で相対リーク量(%)(相対リーク量(%)=(所定時間放置後の容器の内圧 − 常圧)/(上記所定圧力 − 常圧) × 100 )を求め、ガス抜き有効面積(μm2)との関係を調べたところ、試験条件により若干の傾向の違いはあるものの、相対リーク量が、有効面積の増加に伴い、なだらかに減少する範囲と急激に減少する範囲とが存在することが分かった。上記それぞれの範囲で相対リーク量とガス抜き有効面積との関係を近似直線で表わすと、該関係全体を1つの折れ点を有する折線で表わすことができた。
ここで、相対リーク量(%)が減少するとは、容器内を減圧した場合では、ガスが容器内部に流入し、減圧されていた容器内圧が常圧に近づくことであり、容器内を加圧した場合では、ガスが容器外部に流出し、加圧されていた容器内圧が常圧に近づくことである。相対リーク量(%)が小さいほど、ガス抜き効率に優れるといえる。よって、上記関係図より折れ点がガス抜き効率の大幅に変化する点であり、該折れ点以上のガス抜き有効面積を有していれば十分なガス抜き効率を確保できることが分かる。
本発明は以上のような知見に基づくもので、ガス抜き有効面積を一定以上確保するようにガス抜き穴が形成された容器の発明であり、該ガス抜き有効面積の必要量を相対リーク量とガス抜き有効面積との関係図から規定するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガス抜き穴を有する容器は、上記構成とするので、該容器の内容物が水などの液体である場合や、トナーのように粒子径が十数μm のものである場合にも、該内容物を漏洩することがなく、かつ優れたガス抜き効果を有する。
よって、輸送、保管、または使用時における温度変化、航空輸送時の圧力変化などの環境変化により容器内部空気が膨張・減圧されることで容器が変形、破損することを防止できる。
さらに、上記ガス抜き穴は該レーザー加工方法を用いて容器に容易に形成できるので、ガス抜きのために別部品を設ける場合と比較して、該容器を低コストで製造・加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のガス抜き穴を有する樹脂製トナー容器を図1および図2を参照して説明する。図1は、トナー容器の斜視図を図2は図1におけるガス抜き穴周辺の部分拡大断面図である。
図1に示すように、トナー容器1は、レーザー加工により容器壁を貫通するガス抜き穴2が形成されている。図1で示すガス抜き穴2の部分には、微細なガス抜き穴2が数個〜数百個密集している。ガス抜き穴2は、トナー容器1の任意の箇所に、任意個数形成することができる。
ここで、ガス抜き穴の面積と、ガス抜き穴の数との積として求められるガス抜き有効面積が、後述の実施例で示す、該容器内圧を常圧から所定圧力に減圧した後、所定時間放置したときの次式で求められるガスの相対リーク量(%)(相対リーク量(%)=(上記所定時間放置後の容器の内圧 − 常圧)/(上記所定圧力 − 常圧) × 100 )を縦軸とし、上記ガス抜き有効面積(μm2)を横軸とした関係図において、相対リーク量とガス抜き有効面積との関係を、勾配の異なる連続した2つの近似直線で表わしたときに、該近似直線同士の交点での横軸で示されるガス抜き有効面積以上となるようにガス抜き穴を形成する。
好ましくは、ガス抜き有効面積が1000 μm2以上となるように形成する。ガス抜き有効面積が1000 μm2以上であると、ガスリーク特性に優れ、減圧時などにおいて十分なガス抜きができる。また、ガス抜き有効面積が1000 μm2より小さい場合では、十分なガス抜き効果が得られない。
【0012】
図2に示すように、ガス抜き穴2の加工形状は、レーザー光照射面側であるトナー容器1の照射面1aでの径r1が、貫通面1bでの径r2よりも大きくなるテーパ形状となっている。該形状にレーザー加工することにより、ガス抜き穴深さ(t)/ガス抜き穴径(r2)のアスペクト比は、従来限界とされる 10 をこえた値とできる。これは、通常のレーザー加工では、穴内部に進入するに従い穴の側壁で反射し減衰を起こす問題や、側壁が溶融して再び穴を塞いでしまう問題があるが、上記テーパ形状を作製することで表層部の樹脂壁の影響をできるかぎり受けないようにできるためである。
なお、レーザー加工条件により、ガス抜き穴の径形状は真円形状、楕円形状または任意の形状となる。また、ガス抜き穴径である貫通面1bでの径r2は、内容物を漏洩しない大きさであればよい。ここで、該径r2は、該穴の略中心を通る幅のうち、最小となる幅であり、0.1 μm 〜 5 μm であることが好ましい。例えば、ガス抜き穴が真円形状である場合には、その直径をガス抜き穴径とし、楕円形状である場合には、楕円の短い方の軸の直径をガス抜き穴径とする。楕円形状の場合、楕円の長い方の軸の直径が数mmであっても、楕円の短い方の軸の直径が0.1 μm 〜 5 μm であれば、トナー粒子などが漏れない。
トナー容器周囲の減圧時においては、トナー容器1内部の空気が、ガス抜き穴2からトナー容器1外部に排出されることにより、外部気圧と内部気圧との均衡がとれ、容器の破損を防止できる。また、トナー容器1の内部温度上昇による該内部空気の膨張時においても、同様にガス抜き穴2から内部の空気が排出される。これらの場合においても、ガス抜き穴径(r2)が 5 μm以下であるため、平均粒子径が略 7 μmであるトナー粒子が空気と共にトナー容器1の外部に漏れることはない。
【0013】
回折限界が d=2λf/D (d:最小集光径、λ:波長、f:レンズ焦点距離、D:レーザー入射径)で示されることから、例えば、f=10mm、D=30mmの波長193nmのレーザー光の場合、d=0.1μmとなる。よって、エキシマレーザー(193nm)を用いれば0.1μm程度のガス抜き穴の形成も可能である。
【0014】
テーパ形状を作製するために、例えばYAG 355 nm レーザーを使用した場合、エキスパンダーでφ30mm 程度に拡大した光を集光レンズで絞ることにより鈍角に集光する光(集光部のスポット径φ5μm 以下)を作製する。鈍角にすることで、テーパ角が大きくなる。通常のレーザー加工の場合、図2におけるθ= 0 〜 5 度 程度であるが、本発明では、θ= 5 〜 15 度 程度で加工を行なっている。
エキシマレーザーの場合、通常の半導体の露光技術を用いて、予めマスク板に希望貫通径になるように穴加工しておき、このマスク板を通して焦点を絞ることで、穴を通過した光が縮小され、加工することができる。
レーザー光を集光レンズで絞る角度が大きいほど、表面でのアブレーション範囲が大きくなり、熱影響は小さくなる。しかし、表面部の加工エネルギーが必要となるため、角度と出力のバランスが重要となる。
また、レーザー光は鈍角に集光されるため、貫通穴上部では集光がデフォーカスとなり、大きな範囲をアブレーションさせる。これを繰り返すことで、徐々に焦点径が小さくなるため、テーパ形状として 5 μm以下の貫通穴を作成することができた。ガス抜き穴を1つ形成するのに、レーザー光照射を略1000shot行なう。
【0015】
上記のように本発明ではテーパ加工により、高アスペクト比のガス抜き穴を形成することができるが、容器の該ガス抜き穴を形成する壁面部分が非常に厚い場合では、ガス抜き穴の形成が困難な場合がある。
よって、容器の該ガス抜き穴を形成する壁面部分が非常に厚い場合では、該部分をその他の壁面部分よりも薄く加工、具体的には0.01mm 〜5mm程度に加工した後に穴形成することが好ましい。より好ましくは、0.5mm 〜 2mm程度に加工する。ガス抜き穴形成部分を該範囲の厚さとすることにより、容易に 5 μm以下の貫通穴を形成することができる。
【0016】
使用するレーザー光源としては、加工する材料に対して吸収が起こり穴形成加工ができるものであればよい。例えば、半導体レーザー、YAGレーザー、エキシマレーザーなどを材料に応じて適宜用いることができる。具体的には、YAG 355 nm(210S−UV:日本カスタムデザイン(株)社製)、YAG 266 nm(UVTM−4200:タカノ(株)社製)、エキシマ 248 nm(COMPeX110:丸文(株)社製)などが挙げられる。
【0017】
本発明の容器の樹脂壁面の材料となる樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、シクロオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0018】
実施例1
PS樹脂容器表面(厚さ 1.5mm)にUV−YAGレーザー 355 nm を、1kHz 、70mW で、1000 shot照射することで照射面側径 100 μm、貫通側径 5 μm のガス抜き穴を形成することができた。これと同様の穴を 100 個作製した。ガス抜き有効面積は、1963μm2である。
実施例2
PET樹脂フィルム容器表面(厚さ 0.1mm)にエキシマレーザー 248 nm を 100 Hz 、1 W で7000shot照射することで照射面側径 80 μm 、貫通側径 5 μm のガス抜き穴をマスキングして 100 個作製した。ガス抜き有効面積は、1963 μm2である。
実施例3
PS樹脂容器表面(厚さ 1.5mm)にUV−YAGレーザー 355 nm を、1kHz 、70mW で、1000 shot照射することで照射面側径 100 μm、貫通側径 5 μm のガス抜き穴を形成することができた。これと同様の穴を 200 個作製した。ガス抜き有効面積は、3927μm2である。
【0019】
比較例1
PET樹脂フィルム容器表面(厚さ 0.1mm)にエキシマレーザー 248 nm を 100 Hz 、1 W で7000shot照射することで照射面側径 80 μm 、貫通側径 5 μm のガス抜き穴をマスキングして 25 個作製した。ガス抜き有効面積は、314 μm2である。
比較例2
PS樹脂容器表面(厚さ 1.5mm)にUV−YAGレーザー 355 nm を、1kHz 、90mW で、1000 shot照射することで照射面側径 100 μm、貫通側径 10 μm のガス抜き穴を形成することができた。これと同様の穴を 25 個作製した。ガス抜き有効面積は、1963μm2である。
【0020】
実施例1〜実施例3、および比較例1〜比較例2で得られた容器を、減圧試験(常圧(101.325kPa)から 71.325kPa まで減圧、該減圧下に 1 時間放置、常圧まで変化させる試験)、温度変化試験(常圧で、−10 ℃〜60 ℃までのヒートサイクルを2サイクル行なう試験)を行ないリーク判定を行なった。該判定において、ガスリークが十分でなく容器が破損あるいは変形したものはNG、破損あるいは変形しなかったものはOKとした。結果を表1に示す。
また、トナー(平均粒子径 7 μm)を各容器内に所定量充填後、攪拌して貫通穴周辺をマイクロスコープで観察するトナー漏洩判定を行なった。該判定において、容器外壁の貫通穴周辺にトナーの付着が確認されたものはNG、付着が確認されなかったものはOKとした。結果を表1に示す。
【表1】

【0021】
表1より、比較例1はリーク判定がNG、比較例2はトナー漏洩判定がNGであることから、5μm以下の穴径および 1000 μm2以上のガス抜き有効面積が必要であることが分かった。
また、実施例1で得られたサンプル部材について、マイクロスコープにより穴形状の観察を行なった。実施例1のガス抜き穴を図3にグレースケール写真図で示す。図3(a)はレーザー照射側からの写真図であり、図3(b)はレーザー貫通側からの写真図である。
【0022】
また、PS樹脂板(t=1.5mm)について、該樹脂板を挟んで一方を常圧(101.325kPa)、他方を常圧から所定圧力に変化させた条件下に所定時間(15、30、60、120秒)放置する試験で相対リーク量(%)(相対リーク量(%)=(所定時間放置後の上記他方側の圧力 − 常圧)/(上記所定圧力 − 常圧) × 100 )を求め、ガス抜き有効面積(μm2)との関係を調べた。横軸をガス抜き有効面積(μm2)、縦軸を相対リーク量(%)として結果を図4〜図6に示す。減圧条件として、図4は常圧から50kPa減圧(51.325kPa)、図5は常圧から30kPa減圧(71.325kPa)、図6は常圧から10kPa減圧(91.325kPa)した。
【0023】
図4〜図6より、相対リーク量が、有効面積の増加に伴い、なだらかに減少する範囲と急激に減少する範囲とが存在することが分かる。また、いずれの圧力条件においても、ガス抜き有効面積が1000μm2以上ではガス抜き特性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
現像装置用のトナー容器、PETボトルなどの容器として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のガス抜き穴を有する樹脂製トナー容器の斜視図である。
【図2】図1におけるガス抜き穴の部分拡大断面図である。
【図3】ガス抜き穴のグレースケール写真図である。
【図4】ガス抜き有効面積と相対リーク量との関係(50kPa)減圧を示す図である。
【図5】ガス抜き有効面積と相対リーク量との関係(30kPa)減圧を示す図である。
【図6】ガス抜き有効面積と相対リーク量との関係(10kPa)減圧を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 トナー容器
2 ガス抜き穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂壁面を有し、該樹脂壁面に複数のガス抜き穴を有する容器であって、
前記ガス抜き穴の径は内容物を漏洩しない大きさで、かつ、前記ガス抜き穴の1個当たりの面積(μm2/個)と、前記ガス抜き穴の数(個)との積として求められるガス抜き有効面積(μm2)が所定面積以上であり、
前記所定面積は、該容器の内圧を常圧から所定圧力に変化させた後、所定時間放置したとき、(前記所定時間放置後の前記容器の内圧 − 常圧)/(前記所定圧力 − 常圧) × 100 で求められる相対リーク量(%)を縦軸とし、前記ガス抜き有効面積(μm2)を横軸とした関係図において、相対リーク量とガス抜き有効面積との関係を、勾配の異なる連続した2つの近似直線で表わしたときに、該近似直線同士の交点での前記横軸で示されるガス抜き有効面積であることを特徴とするガス抜き穴を有する容器。
【請求項2】
前記所定面積は、1000 μm2であることを特徴とする請求項1記載のガス抜き穴を有する容器。
【請求項3】
前記ガス抜き穴はレーザー光照射により形成され、その形状はレーザー光照射面側が大径で、前記ガス抜き穴の径となるレーザー光貫通側が小径のテーパ形状であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のガス抜き穴を有する容器。
【請求項4】
前記ガス抜き穴のレーザー光貫通側において、該穴の略中心を通る幅のうち、最小となる幅が 0.1 μm 〜 5 μm であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のガス抜き穴を有する容器。
【請求項5】
前記ガス抜き穴は、前記容器の該ガス抜き穴を形成する樹脂壁面部分を、その他の壁面部分よりも薄く加工した後に形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載のガス抜き穴を有する容器。
【請求項6】
前記容器の該ガス抜き穴を形成する樹脂壁面部分の厚さが、 0.01 mm 〜 5 mm であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載のガス抜き穴を有する容器。
【請求項7】
前記容器が、現像装置に用いられるトナー容器であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載のガス抜き穴を有する容器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−71907(P2006−71907A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254450(P2004−254450)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(398031927)シーズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】