説明

ガス拡散層割断装置およびガス拡散層割断方法

【課題】膜電極構造体からガス拡散層を機械的に分離することができるガス拡散層割断装置を提供する。
【解決手段】固体高分子膜上にガス拡散層を積層した膜電極構造体10のガス拡散層15を砕くガス拡散層割断装置であって、円周方向に沿って連続する凹部を有する第1ローラ22と、第1ローラ22の凹部に入り込む凸部を有する第2ローラ25とを備え、第1、第2ローラ22,25を回転させた状態で、1、第2ローラ22,25の隙間に膜電極構造体10を挿入して送ることでガス拡散層15を砕く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子膜上にガス拡散層を積層した膜電極構造体のガス拡散層を砕くガス拡散層割断装置およびガス拡散層割断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池としては、平板状の膜電極構造体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の両側にセパレータが積層された積層体が単位セルとされ、複数の単位セルが積層されて燃料電池スタックとして構成された燃料電池が知られている。また、膜電極構造体としては、カソードおよびアノードを構成する一対の電極触媒層の間にイオン交換樹脂等からなる固体高分子膜を挟み、さらにこれらをガス拡散層で挟んだ構造のものが知られている。ここで、膜電極構造体は、発電に寄与する電極部の両端側または外周側に発電に寄与しない非発電部を設けて構成されている。そして、電極触媒層は発電部に設けられ、非発電部において固体高分子膜とガス拡散層とが接着されている。
【0003】
上記のような膜電極構造体では、ガス拡散層が例えばカーボンペーパで構成され、電極触媒層には触媒としてPt等の貴金属が含まれている。したがって、使用済みの膜電極構造体から貴金属を回収することがコスト低減の上で望ましい。たとえば、特許文献1には、両面に電極触媒層を塗工した固体高分子膜の両端部を引っ張って伸ばすとともに曲げ変形を与え、固体高分子膜と電極触媒層との界面に応力を与えながら電極触媒層を固化する技術が開示されている。特許文献1によれば、固体高分子膜と電極触媒層との界面に応力が残留するので、使用後に両者を剥離し易いという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−289001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、膜電極構造体からガス拡散層を剥離することは考慮されていない。ガス拡散層を構成するカーボンペーパは千数百度で焼成されたものであるため、ガス拡散層を加熱分解するためには、焼成温度を上回る温度で処理する必要があり、そのような処理を行うことは設備コストやエネルギーコストの面で現実的ではない。したがって、膜電極構造体からガス拡散層を機械的に剥離できる技術が要望されていたが、現在のところ、そのような技術は提供されていないのが実情である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、膜電極構造体からガス拡散層を機械的に分離することができるガス拡散層割断装置およびガス拡散層割断方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固体高分子膜上にガス拡散層を積層した膜電極構造体のガス拡散層を砕くガス拡散層割断装置であって、円周方向に沿って連続する凹部を有する第1ローラと、第1ローラの凹部に入り込む凸部を有する第2ローラとを備え、第1、第2ローラを回転させた状態で、該第1、第2ローラの隙間に膜電極構造体を挿入して送ることでガス拡散層を砕くことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、固体高分子膜上にガス拡散層を積層した膜電極構造体のガス拡散層を砕くガス拡散層割断方法であって、円周方向に沿って連続する凹部を有して回転する第1ローラと、第1ローラの凹部に入り込む凸部を有して回転する第2ローラとの隙間に膜電極構造体を挿入して送ることでガス拡散層を砕くことを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、第1、第2ローラの隙間に膜電極構造体が挿入され送られると、膜電極構造体が凹部と凸部の間で挟まれて曲げられる。そして、膜電極構造体のうち弾性体である固体高分子膜は弾性的に変形するが、例えばカーボンペーパなどで構成されて剛性体からなるガス拡散層は、曲げ変形に追従できずに砕かれ固体高分子膜から分離される。
【0010】
本発明では、第1ローラは1個の凹部を備え、第2ローラは1個の凸部を備えた構成とすることができるが、そのような第1ローラおよび第2ローラを膜電極構造体の進む方向と直交する軸線方向に複数設けたり、凹部と凸部を第1ローラと第2ローラのそれぞれに軸線方向へ向けて複数備えることもできる。この場合には、軸線方向において、膜電極構造体がより小さな曲率半径で曲げられるから、ガス拡散層に与える破壊が激しい。このため、固体高分子膜と接着されている部分においては、ガス拡散層の破片は固体高分子膜と効率良く剥離される。また、ガス拡散層の破片が小さくなるので、その運搬時や廃棄時の取扱いが容易となる。
【0011】
第1、第2ローラに複数の凹部と複数の凸部を備える場合において、複数の凹部を軸線方向に互いに間隔をもって配置し、凸部も互いに間隔をもって配置することができるが、第1ローラの凹部を連続して設け、第2ローラの凸部も連続して設けるのが好ましい。この場合には、軸線方向で膜電極構造体が波打つように曲げられるから、ガス拡散層に与える破壊がより激しくなる。このため、ガス拡散層の破片は固体高分子膜と効率的に分離される。
【0012】
第1ローラに凹部と凸部とを交互に設け、第2ローラに第1ローラの凹部に入り込む凸部と第1ローラの凸部が入り込む凹部とを交互に設けることができる。この場合において、凹部と凸部とを互いに間隔を持って配置することもできるが、凹部と凸部とを連続して設けるのが好ましい。たとえば、第1、第2ローラに複数の凸部を連続して設けて第1ローラの凸部と第2ローラの凸部とが互い違いとなるように配置し、第1、第2ローラの隣接する凸部の境界部を凹部とすることができる。あるいは、第1、第2ローラに複数の凹部を連続して設け、第1、第2ローラの隣接する凹部の境界部を凸部とすることができる。この場合にも、軸線方向で膜電極構造体が波打つように曲げられるから、ガス拡散層に与える破壊がより激しくなる。
【0013】
凹部および凸部の断面形状は任意である。たとえば、円弧や楕円などの曲線状や、矩形状、台形状、三角形状などにすることができる。また、凹部と凸部の断面形状は一致していなくてもよく、例えば凹部が円弧状で凸部が三角形状など組み合わせは任意である。
【0014】
凹部と凸部との隙間は、膜電極構造体の厚さと同等であることが望ましい。凹部と凸部との隙間が膜電極構造体の厚さよりも狭いと、第1、第2ローラの回転に過大な動力が必要となる。凹部と凸部との隙間が膜電極構造体の厚さよりも広いと、ガス拡散層の破片が大きくなり、取扱いに不便を来す。
【0015】
第1、第2ローラの対は1つであってもよいが、この場合には、膜電極構造体を軸線方向にのみ曲げてガス拡散層を砕くことになる。より効率的にガス拡散層を砕きたい場合には、第1、第2ローラの対を膜電極構造体が進む方向へ向け複数連設し、隣接する第1、第2ローラの対を膜電極構造体の厚さ方向に互いにずれて配置することが望ましい。このような態様では、膜電極構造体が第1、第2ローラの外周に沿っても曲げられるから、ガス拡散層を効率良く砕くことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、膜電極構造体を曲げてガス拡散層を砕くことにより、膜電極構造体からガス拡散層を分離することができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態のガス拡散層割断装置で処理する膜電極構造体を示す断面図である。
【図2】実施形態のガス拡散層割断装置を示す斜視図である。
【図3】実施形態のガス拡散層割断装置の正面図である。
【図4】実施形態のガス拡散層割断装置の第1変形例を示す正面図である。
【図5】実施形態のガス拡散層割断装置の第2変形例を示す正面図である。
【図6】実施形態のガス拡散層割断装置の第3変形例を示す正面図である。
【図7】実施形態のガス拡散層割断装置の第4変形例を示す側面図である。
【図8】実施形態において処理する膜電極構造体の第1変形例を示す斜視図である。
【図9】実施形態において処理する膜電極構造体の第1変形例を示す断面図である。
【図10】実施形態において処理する膜電極構造体の第2変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.膜電極構造体の構成
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1は実施形態のガス拡散層割断装置Sで処理する膜電極構造体10を示す断面図である。膜電極構造体10は、イオン交換樹脂等からなる固体高分子膜11の両面を、カソード12およびアノード13を構成する一対の電極触媒層で挟み、カソード12およびアノード13に下地層14を積層するとともに、下地層14にガス拡散層15を積層して構成されている。
【0019】
ここで、膜電極構造体10のうちカソード12およびアノード13の存在する部分が発電に寄与する電極部16とされ、電極部16の外側は発電に寄与しない非発電部17とされている。そして、ガス拡散層15は、非発電部17において固体高分子膜11と接着剤18によって接着されている。
【0020】
ガス拡散層15は剛性体であるカーボンペーパで構成されている。一方、下地層14は、例えばカーボンブラックなどのカーボン粒子とPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子などの混合物からなるスラリーをガス拡散層15に塗布し乾燥して構成されている。カソード12およびアノード13は、例えばカーボン粒子、PTFE粒子、およびカーボン粒子に担持されたPtなどの触媒粒子のスラリーを下地層14に塗布し乾燥して構成されている。そして、固体高分子膜11の両面に、ガス拡散層15と一体化された下地層14、カソード12およびアノード13をそれぞれ重ね合わせ、それらをホットプレスすることで一体化された膜電極構造体10が構成されている。この実施形態のガス拡散層割断装置Sは、膜電極構造体10のガス拡散層15を砕いて膜電極構造体10から分離することで、カソード12およびアノード13に含まれる触媒の回収を容易にするものである。
【0021】
2.ガス拡散層割断装置の構成
次に、図2および図3を参照して実施形態のガス拡散層割断装置Sの構成について説明する。これらの図に示すように、ガス拡散層割断装置Sは、互いに平行に配置された下部シャフト20と上部シャフト21を備えている。下部シャフト20は、図示しない駆動機構により図2中時計回りの方向へ回転させられ、上部シャフト21は反時計回りの方向へ回転させられる。
【0022】
下部シャフト20には、複数の第1ローラ22(この実施形態では6個)が固定されている。第1ローラ22は、円板状をなし、その外周面には断面半円状の凸部22aが形成されている。これにより、凸部22aの頂部から隣接する第1ローラ22の凸部22aの頂部までの部分が凹部22bとなっている。なお、第1ローラ22は全てを一体的に形成することもできる。
【0023】
上部シャフト21には、複数の第2ローラ25(この実施形態では5個)が固定されている。第2ローラ25は、第1ローラ22と同形同大とされ、その外周面には断面半円状の凸部25aが形成されている。これにより、凸部25aの頂部から隣接する第2ローラ25の凸部25aの頂部までの部分が凹部25bとなっている。なお、第2ローラ25は、全てを一体的に形成することもできる。
【0024】
図3に示すように、第2ローラ25は、第1ローラ22に対して互い違いとなるように配置されている。これにより、第2ローラ25の凸部25aは第1ローラ22の凹部22bに入り込み、第1ローラ22の凸部22aは第2ローラ25の凹部25bに入り込んでいる。
【0025】
第1ローラ22と第2ローラ25の最も近接した箇所における隙間Tは、膜電極構造体10の厚さと同等とされている。なお、図2において符号26は、砕かれて落下するガス拡散層15を受ける容器である。
【0026】
3.実施形態の動作
次に、上記構成のガス拡散層割断装置Sの動作について説明する。第1、第2ローラ22,25を図2において矢印方向に回転させ、第1、第2ローラ22,25の隙間に膜電極構造体10を挿入する。すると、膜電極構造体10が凸部22a,25aと凹部22b,25の間で挟まれて曲げられる。そして、膜電極構造体10のうち弾性体である固体高分子膜11、カソード12およびアノード13、並びに下地層14は弾性的に変形するが、剛性体からなるガス拡散層15は、曲げ変形に追従できずに砕かれる。砕かれたガス拡散層15は、下地層14の厚さ方向中間部が層間破壊を起こすことでカソード12およびアノード13から分離する。そして、分離したガス拡散層15は、破片15aとなって落下し、容器26に収容される。
【0027】
なお、ガス拡散層15のうちカソード12およびアノード13から完全に分離していない部分は、次工程において、ブラシやスクレーパ等で固体高分子膜10の表面に力を加えることによって完全に分離される。なお、ガス拡散層15が分離された固体高分子膜10には薬品などの化学的処理や熱処理などの物理的処理が施され、カソード12およびアノード13に含まれる貴金属が回収される。
【0028】
以上のように、上記構成のガス拡散層割断装置Sでは、膜電極構造体10を曲げてガス拡散層15を砕くことにより、膜電極構造体10からガス拡散層15を分離し易くすることができる。特に、上記実施形態では、凸部22a,25aと凹部22b,25bとが軸線方向において連続しており、膜電極構造体10がより小さな曲率半径で波打つように曲げられるから、ガス拡散層15に与える破壊が激しい。このため、固体高分子膜10と接着されている部分においては、ガス拡散層15の破片は固体高分子膜と効率良く剥離される。また、ガス拡散層15の破片15aが小さくなるので、その運搬時や廃棄時の取扱いが容易となる。
【0029】
4.変形例
(1)第1変形例
図4は上記実施形態の第1変形例であるガス拡散層割断装置Sの正面図である。図4において符号30は第1ローラであり、第1ローラ30は、下部シャフト20に大径ローラ31と小径ローラ32とを軸線方向に連続して固定して構成されている。大径ローラ31は、円板状をなし、その外周面には断面半円状の凸部31aが形成されている。小径ローラ32は、円板状をなし、その外周面は断面半円状とされている。そして、小径ローラ32の外周面と大径ローラ31の端面とで形成される空間が凹部31bとされている。なお、第1ローラ30は一体的に形成することもできる。
【0030】
また、図4において符号35は第2ローラであり、第2ローラ35は、上部シャフト21に大径ローラ36と小径ローラ37とを軸線方向に連続して固定して構成されている。大径ローラ36は大径ローラ31と同形同大であって、円板状をなし、その外周面には断面半円状の凸部36aが形成されている。小径ローラ37は小径ローラ32と同形同大であって、円板状をなし、その外周面は断面半円状とされている。そして、小径ローラ37の外周面と大径ローラ36の端面とで形成される空間が凹部36bとされている。なお、第2ローラ35は一体的に形成することもできる。
【0031】
上記のような第1ローラ30および第2ローラ35は、第1ローラ30の大径ローラ31の凸部31aが第2ローラ35の凹部36bに入り込み、かつ、第2ローラ35の大径ローラ36の凸部36aが第1ローラ30の凹部31bに入り込むように配置される。また、第1ローラ30と第2ローラ35の最も近接した箇所における隙間Tは、膜電極構造体10の厚さと同等とされている。
【0032】
上記構成のガス拡散層割断装置Sにあっても、膜電極構造体10がより小さな曲率半径で波打つように曲げられるから、ガス拡散層15に与える破壊が激しい。このため、固体高分子膜10と接着されている部分においては、ガス拡散層15の破片は固体高分子膜と効率良く剥離される。また、ガス拡散層15の破片が小さくなるので、その運搬時や廃棄時の取扱いが容易となる。特に、上記変形例では、大径ローラ31,36と小径ローラ32,37の直径の差を大きく設定することにより、膜電極構造体10を曲げるときの波打ちの程度を大きくしてより激しくガス拡散層15を破壊することができる。
【0033】
(2)第2変形例
図5は上記実施形態の第2変形例であるガス拡散層割断装置Sの正面図である。図5において符号40は第1ローラであり、複数の第1ローラ40が下部シャフト20に連続して固定されている。第1ローラ40は、円板状をなし、その外周面には断面半円状に窪んだ凹部40aが形成されている。また、図5において符号45は第2ローラであり、複数の第2ローラ45が上部シャフト21に連続して固定されている。第2ローラ45は、円板状をなし、その外周面には断面半円状の凸部45aが形成されている。
【0034】
上記のような第1ローラ40および第2ローラ45は、第1ローラ40の凹部40aにが第2ローラ45の凸部45aが入り込むように配置される。また、第1ローラ40と第2ローラ45の最も近接した箇所における隙間Tは、膜電極構造体10の厚さと同等とされている。
【0035】
上記構成のガス拡散層割断装置Sにあっても、膜電極構造体10がより小さな曲率半径で波打つように曲げられるから、ガス拡散層15に与える破壊が激しい。このため、固体高分子膜10と接着されている部分においては、ガス拡散層15の破片は固体高分子膜と効率良く剥離されるとともに、ガス拡散層15の破片が小さくなるので、その運搬時や廃棄時の取扱いが容易となる。特に、上記変形例では、凹部40aの深さと凸部45aの高さを大きく設定することにより、膜電極構造体10を曲げるときの波打ちの程度を大きくしてガス拡散層15をより激しく破壊することができる。
【0036】
(3)第3変形例
図6は上記実施形態の第3変形例であるガス拡散層割断装置Sの正面図である。図6において符号50は第1ローラであり、第1ローラ50は、凸状ローラ51と凹状ローラ52とを下部シャフト20に交互に複数固定して構成されている。凸状ローラ51は、円板状をなし、その外周面には断面半円状の凸部51aが形成されている。また、凹状ローラ52は、円板状をなし、その外周面には断面半円状に窪む凹部52aが形成されている。
【0037】
図6において符号55は第2ローラであり、第2ローラ55は、凸状ローラ56と凹状ローラ57とを上部シャフト21に交互に複数固定して構成されている。凸状ローラ56は、凸状ローラ51と同形同大であり、円板状をなし、その外周面には断面半円状の凸部56aが形成されている。また、凹状ローラ57は凹状ローラ52と同形同大であり、円板状をなし、その外周面には断面半円状に窪む凹部57aが形成されている。
【0038】
上記のような第1ローラ50および第2ローラ55は、凹状ローラ52,57の凹部52a,57aに、凸状ローラ51,56の凸部51a,56aが入り込むように配置される。また、第1ローラ50と第2ローラ55の最も近接した箇所における隙間Tは、膜電極構造体10の厚さと同等とされている。
【0039】
上記構成のガス拡散層割断装置Sにあっても、膜電極構造体10がより小さな曲率半径で波打つように曲げられるから、ガス拡散層15に与える破壊が激しく、ガス拡散層15の破片は固体高分子膜と効率良く剥離されるとともに、ガス拡散層15の破片が小さくなるので、その運搬時や廃棄時の取扱いが容易となる。
【0040】
(4)第4変形例
図7は上記実施形態の第7変形例であるガス拡散層割断装置Sの側面図である。図7において符号60は第1ローラ、符号65は第2ローラである。第1ローラ60および第2ローラ65としては、前述の実施形態および変形例のいずれの例も適用可能である。この変形例では、第1、第2ローラ60,65の対が膜電極構造体10の進行方向へ向け複数連設され、隣接する第1、第2ローラ60,65の対は、上下方向(膜電極構造体10の厚さ方向)に互いにずれて配置されている。
【0041】
上記構成のガス拡散層割断装置Sにあっても、膜電極構造体10がより小さな曲率半径で波打つように曲げられるから、ガス拡散層15に与える破壊が激しく、ガス拡散層15の破片は固体高分子膜と効率良く剥離されるとともに、ガス拡散層15の破片が小さくなるので、その運搬時や廃棄時の取扱いが容易となる。特に、上記変形例では、隣接する第1、第2ローラ60,65の対が上下方向に互いにずれて配置されているから、膜電極構造体10が第1、第2ローラ60,65の外周に沿っても曲げられる。したがって、ガス拡散層15をさらに効率良く砕くことができる。
【0042】
(5)その他の変形例
図8および図9は、前記実施形態および変形例のガス拡散層割断装置Sによって処理される膜電極構造体の変形例を示す斜視図である。図8において符号71は固体高分子膜であり、固体高分子膜71は、カーボンペーパからなるガス拡散層75,76によって挟まれている。一方のガス拡散層76は固体高分子膜71と同形同大であり、他方のガス拡散層75は、固体高分子膜71より小さい相似形をなしている。固体高分子膜71のガス拡散層75側を向く面には、ガス拡散層75よりも長手方向寸法が短いカソード72と下地層74とがこの順番で積層されている。膜電極構造体70のうちカソード72の存在する部分が発電に寄与する電極部16とされ、電極部16の両端側は発電に寄与しない非発電部17とされている。そして、ガス拡散層75は、非発電部17において固体高分子膜71と接着剤18によって接着されている。
【0043】
固体高分子膜71のガス拡散層76側を向く面には、ガス拡散層75よりも長手方向寸法が短くカソード72および下地層74と同形同大のアノード73と下地層74とがこの順番で積層されている。膜電極構造体70のうちアノード73の存在する部分が発電に寄与する電極部16とされ、電極部16の両端側は発電に寄与しない非発電部17とされている。そして、ガス拡散層76は、非発電部17において固体高分子膜71と接着剤18によって接着されている。
【0044】
たとえば、図2に示すガス拡散層割断装置Sの第1、第2ローラ22,25の隙間に、上記構成の膜電極構造体70を挿入すると(図8において矢印方向)、膜電極構造体70が凸部22a,25aと凹部22b,25の間で挟まれて曲げられる。そして、膜電極構造体70のうち弾性体である固体高分子膜71、カソード72およびアノード73、並びに下地層74は弾性的に変形するが、剛性体からなるガス拡散層75,76は、曲げ変形に追従できずに砕かれる。この場合において、膜電極構造体70の挿入方向両端部が薄くなっているから、第1、第2ローラ22,25への挿入を容易に行うことができる。また、膜電極構造体70が第1、第2ローラ22,25から排出される動作も円滑に行われる。
【0045】
図10は、膜電極構造体の他の変形例を示す斜視図である。この図に示す膜電極構造体80では、固体高分子膜81はカーボンペーパからなるガス拡散層85,86によって挟まれ、一方のガス拡散層86は固体高分子膜81と同形同大であり、他方のガス拡散層85は、固体高分子膜81よりも長手方向寸法が短い。なお、この膜電極構造体80も図9に示すものと同等のカソード、アノードおよび下地層を備え、ガス拡散層85,86は接着剤によって固体高分子膜81に接着されている。このような膜電極構造体80においても、膜電極構造体80の挿入方向両端部が薄くなっているから、第1、第2ローラ22,25への挿入を容易に行うことができる。また、膜電極構造体80が第1、第2ローラ22,25から排出される動作も円滑に行われる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、燃料電池の廃棄物処理の分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10,70,80 膜電極構造体
11,71,81 固体高分子膜
15,75,76,85,86 ガス拡散層
22 第1ローラ
25 第2ローラ
22a,25a 凸部
22b,25b 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子膜上にガス拡散層を積層した膜電極構造体の前記ガス拡散層を砕くガス拡散層割断装置であって、
円周方向に沿って連続する凹部を有する第1ローラと、
前記第1ローラの前記凹部に入り込む凸部を有する第2ローラとを備え、
前記第1、第2ローラを回転させた状態で、該第1、第2ローラの隙間に前記膜電極構造体を挿入して送ることで前記ガス拡散層を砕くことを特徴とするガス拡散層割断装置。
【請求項2】
前記第1ローラは複数の凹部を備え、前記第2ローラは前記複数の凹部に入り込む複数の凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層割断装置。
【請求項3】
前記第1ローラの凹部は連続して設けられ、前記第2ローラの凸部は連続して設けられていることを特徴とする請求項2に記載のガス拡散層割断装置。
【請求項4】
前記第1、第2ローラの対は前記膜電極構造体の進む方向へ向け複数連設され、隣接する前記第1、第2ローラの対は、前記膜電極構造体の厚さ方向に互いにずれて配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガス拡散層割断装置。
【請求項5】
固体高分子膜上にガス拡散層を積層した膜電極構造体の前記ガス拡散層を砕くガス拡散層割断方法であって、
円周方向に沿って連続する凹部を有して回転する第1ローラと、前記第1ローラの前記凹部に入り込む凸部を有して回転する第2ローラとの隙間に前記膜電極構造体を挿入して送ることで前記ガス拡散層を砕くことを特徴とするガス拡散層割断方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−257868(P2010−257868A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109053(P2009−109053)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】