説明

ガス材料を酸化して得られる(メタ)アクリル酸を精製する方法

プロパンおよび/またはプロピレンおよび/またはアクロレインおよびイソブタンおよび/またはイソブテンおよび/またはt−ブチルアルコールおよび/またはメタクロレインのガス材料を酸化して(メタ)アクリル酸を精製する本発明の方法は、反応で生じるガス混合物(1)を吸収カラム(C1)の底部へ送り、この吸収カラム(C1)の頂部から少なくとも一種の型の疎水性重質吸収溶剤を向流方向で供給して、吸収カラム(C1)の底部から出る流体(2)を軽質成分分離カラム(C2)へ供給し、カラム(C2)の底部から出る流体(4)を分離装置へ送り、この分離装置には3つの分離部、すなわち、排気部(S1)、濃縮部(S2)、精留部(S3)が設けられ、純粋な所望の酸を抽出し、吸収カラム(C1)中の一種または複数の型の重質溶剤を抽出し、好ましくは、再循環し、且つ、所望の(メタ)アクリル酸から重質安定剤を含む中間成分を分離することにある。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(メタ)アクリル酸の製造方法に関するものである。
本発明方法では触媒またはレドックスを用いてガス材料(substrat gazeux)(アクリル酸製造の場合にはプロパンおよび/またはプロピレンおよび/またはアクロレイン、メタクリル酸製造の場合にはイソブタンおよび/またはイソブテンおよび/またはt−ブチルアルコールおよび/またはメタクロレイン)を酸化し、得られた加熱状態にあるガス状反応混合物を疎水性の重質溶剤と向流吸収(absorption a contre-courant)させて(メタ)アクリル酸を回収する。この吸収は少なくとも一つの重合抑制剤(安定剤ともよばれる)の存在下で行われる。
【0002】
本発明は特に、軽質化合物を予め除去した溶剤中のアクリル酸の粗混合物から、下記(a)〜(c)をほぼ定量的に回収するものである:
(a)アクリル酸(回収収率>98.5%)、精製後の流体に含まれる重質化合物は0.5%以下、
(b)疎水性の重質溶剤(回収収率>99.9%)、
(c)大気圧下での沸点が<260℃の安定剤(回収収率>50%)。
【背景技術】
【0003】
アクリル酸の合成方法の基本では、酸素を含む混合物を用いてプロピレンを触媒酸化する反応を利用する。この反応は一般に気相で、大抵の場合には、2つの異なる反応器中または単一反応器中で実施できる下記の2段階で実施される:
1)第1段階ではプロピレンをほぼ定量的に酸化して、アクロレインが豊富でアクリル酸が少ない混合物を作り、
2)第2段階でアクロレインのアクリル酸への変換を完成させる。
【0004】
上記の第2酸化段階で生じるガス混合物は下記から成る:
1)アクリル酸、
2)通常使用される温度および圧力の条件で非凝縮性の軽質化合物(未変換の窒素、酸素およびプロピレン、反応性プロピレン中に存在するプロパン、最終酸化によって少量生成する一酸化炭素および二酸化炭素)、
3)凝縮性軽質化合物、特に、プロピレン酸化反応で生じる水、未変換アクロレイン、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドのような軽質アルデヒド、および酢酸、反応部で生じる主たる不純物、
4)重質化合物:フルフルアルデヒド、ベンズアルデヒド、無水マレイン酸等。
【0005】
上記文献に十分に記載されている酸化によるメタクリル酸の合成方法は基本的にアクリル酸の合成方法と同じであるが、反応性材料(イソブテンまたはt−ブタノール)、中間酸化物(メタクロレイン)および凝縮性軽質副産物化合物の型(ガス反応混合物はアクリル酸合成方法の反応ガス中に存在する軽質化合物の他にアクリル酸も含む)。
【0006】
製造の第2段階は、予め150〜200℃の温度に冷却した高温ガス混合物を吸収カラムの底部に導入し、ここで、カラムの頂部に導入される向流の吸収溶剤(以降、「溶剤」と称する)と接触させ、冷却、凝縮、吸収および精留プロセスを同時に行うことによって、このガスからアクリル酸を回収することにある。
この方法の多くは、このカラム内に水または高沸点疎水性溶剤を用いている。
【0007】
フランス国特許第2,146,386号およびドイツ国特許第4,308,087号に記載のこの第1吸収部での疎水性重質溶剤の使用が水の使用よりも優れている点は、水溶液を用いる方法では除去の難しい軽質化合物、特に水および酢酸の分離がはるかに容易になる点にある。
【特許文献1】フランス国特許第2,146,386号
【特許文献2】ドイツ国特許第4,308,087号
【0008】
溶剤中のモノマー溶液から(メタ)アクリル酸を回収する周知な方法は、吸収段階の終了時に、ストリッピングカラムの頂部で軽質化合物を除去する段階を含み、このストリッピングカラムはこれらの軽質化合物の大部分を前の吸収カラムへ送るように設計されており、ここで、上記のフランス国およびドイツ国の2つの特許に記載されているように、軽質化合物はヘッド排液で除去される。軽質化合物を完全に除去するためには、蒸留カラムを用いてこれらの揮発性不純物の最終痕跡量を頂部で除去する必要がある。他の方法も提案されている。例えば、欧州特許第706,986号に記載の方法は、最終アクリル酸蒸留カラムの上側位置の頂部で軽質不純物の最終痕跡量を除去(タッピング)し、出てくる側流中に純粋なモノマーを回収することにある。
【特許文献3】欧州特許第706,986号
【0009】
表題が「ガス材料の酸化で得られる(メタ)アクリル酸の精製方法」である本出願人による本日出願のフランス国特許出願では、追加のカラムまたはタッピング部を用いずに、単一段階で、これらの軽質不純物の大部分を除去した粗(メタ)アクリル酸の流体が得られるように吸収部およびストリッピング部の条件を選択する方法を提案している。
【0010】
疎水性重質吸収溶剤を用いる場合には、精製方法の中の次の段階は、(メタ)アクリル酸を定量的に回収し、溶剤から重質不純物を分離し、吸収段階へ再循環するための溶剤を再生するようになっている。実際には、一種の「ループ」中で溶剤を回収および再循環する必要性が経済的理由から、および、汚染物質の放出を避けるためにあり、アクリル酸より重い化合物が溶剤ループ中に蓄積しないように、これらを分離および除去する必要がある。そのためには、これらの重質化合物を十分な量、少なくとも第1吸収部に供給される量と等しい量パージしなければならない。
【0011】
アクリル酸より重い化合物の中では、反応段階で生成される不純物、および、精製方法の各段階で導入される重合抑制剤が挙げられる。実際には、(メタ)アクリル酸は温度で良くなる重合プロセスに非常になりがちな敏感な生成物であるので、この重合プロセスを避けるために精製設備に重合抑制剤を導入する。
【0012】
(メタ)アクリル酸の精製方法では、従来、多数の重合抑制剤が挙げられている。これらの中では、フェノール化合物、例えばハイドロキノンまたはハイドロキノンのメチルエーテル、フェノチアジンおよびその誘導体、例えばメチレンブルー、キノン、例えばベンゾキノン、マンガン塩、例えば酢酸マンガン、金属チオカルバメート、例えばジチオカルバミン酸の銅塩、例えばジブチルジチオカルバメート、N−オキシル化合物、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル、アミン、例えばパラフェニレンジアミン誘導体、ニトロソ基含有化合物、例えばN−ニトロソ−フェニルヒドロキシルアミン、および、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩が挙げられる。
【0013】
重合抑制剤の大部分は(メタ)アクリル酸よりも重い化合物であるため、蒸留プロセス中に(メタ)アクリレートに随伴されない。従って、これらの抑制剤は一般に、(メタ)アクリル酸を豊富に含む流体の凝縮に至る液−蒸平衡の位置にすることができる設備(カラムヘッド、コンデンサなど)の全てのポイントで導入される。単独または混合物で用いるこれらの重合抑制剤の効率は、酸素と、または、カラムの底部に酸素を含むガス流と組み合わせた場合に、一般に増加する。
【0014】
重合抑制剤は純粋なまま(液体の場合)導入されるか、吸収溶剤または(メタ)アクリル酸から有利に選択される溶剤の溶液で導入される。
本発明方法で蓄積される重質化合物はさらに、プロピレンまたはプロパンの酸化によるアクリル酸合成段階、または、イソブテンまたはイソブタンの酸化によるメタクリル酸合成段階での副反応で生じる不純物から成る。重質不純物の別のカテゴリーは精製段階での分解反応で生じる重質不純物のカテゴリーである。(メタ)アクリル酸の沸点よりはるかに高い沸点を有する疎水性重質吸収溶剤を使用するには、特にカラム底部での高温レベルを利用する必要がある。これらの高温レベルは流体中に存在する成分、例えば溶剤および重合抑制剤の分解を促進し、従って、流体を沸騰状態にするために高エネルギー消費が要求される。軽質化合物中に少量しか含まれていないこれらの流体が達する温度レベルは、設備を減圧下に運転することによって、特定の範囲に限定することができるが、過剰な冷却コストを発生させる危険を冒してまで過度に低くすることができないカラム頂部の凝縮温度、真空レベルに比例して増大するカラムのサイズ、コンデンサおよび真空発生装置という必要条件は、設備の最高温度部分で一般に得られる温度が180℃以上であるということを意味する。従って、溶剤を豊富に含む流体の沸騰を含むユニット運転の数を制限するのが好ましい。
【0015】
疎水性重質吸収溶剤を使用する方法の場合には、重質化合物の中から下記のものを区別する必要がある:
a)(メタ)アクリル酸の沸点と溶剤の沸点との間の沸点を有する「中間」化合物。これらの化合物には、反応段階で発生した不純物、例えば無水マレイン酸、フルフルアルデヒド、ベンズアルデヒドまたは溶剤より揮発性の高い重合抑制剤がある。
b)溶剤の沸点よりも高い沸点を有する「重質」化合物。本発明方法で生成する不純物、例えばオリゴマー、(メタ)アクリル酸の二重結合付加誘導体、ポリマー、溶剤または抑制剤の分解産物、および、溶剤よりも揮発性が低い重合抑制剤が挙げられる。
【0016】
残留軽質化合物を除去する段階の終了時には、ほとんどの場合、(メタ)アクリル酸とより重い不純物を含む重質溶剤との混合物から、蒸留カラムの頂部で(メタ)アクリル酸が回収され、モノマーより揮発性の低い化合物はこのカラムの底部からの流体中に除去される。
【0017】
溶媒よりも重い化合物が本発明方法で蓄積しないように、これらの化合物の十分な量を除去することは、溶剤再生部の底部で得られるこれらの化合物を豊富に含む流体のパージの使用によって完了することができる。このパージは本発明方法のループに流れる溶剤の流体の全部または一部を蒸発または蒸留することにある。次に、溶剤より重い化合物を豊富に含む流体を蒸発または蒸留カラムの底部で除去する。
【0018】
しかし、溶剤より重い化合物の除去はエネルギーの点でコストがかかり、より重い化合物からの分離が不十分である溶剤、および、重合抑制剤のコストの同様の減少が付随するのは避けられない。従って、重質不純物のパージによって対象となる流体の量を制限するのが経済的に有利である。
【0019】
上記フランス国特許第2,146,386号に記載のように、水洗浄カラムの底部または蒸留カラムの頂部で中間化合物を分離することができる。
水を用いる抽出は、放出前の処理コストが高い汚染化合物を吸着した追加の水性流体を発生させるという欠点があり、さらに、この方法は重い不純物、特に比較的極性のないものを全て除去するのに適していない。その結果、これらの中間化合物が溶剤ループ中に徐々に蓄積し、蒸留(メタ)アクリル酸に随伴するのは避けられない。
【0020】
別の蒸留分離の場合では、上記方法はさらに、多くの欠点を有する。疎水性重質溶剤による吸収を用いる精製方法では、粗上澄み混合物中の(メタ)アクリル酸濃度は30%を超えず、残部の主成分は主として溶剤から成る。中間重質化合物の濃度は(メタ)アクリル酸の濃度よりも低いので、これらの化合物は、(メタ)アクリル酸蒸留カラムの底部で得られる溶剤を主成分とする流体に最高度希釈する。従って、前の蒸留カラムの底部からの流体が供給される蒸留カラム中の少量の中間化合物を分離するには、上記フランス国特許第2,146,386号に記載されているように、高度希釈された混合物から成る多量の流体を処理する必要がある。このような方法の欠点は、カラムの頂部に随伴する溶剤の大幅なロス、多量の重質溶剤を沸騰させるためのコストのかかるエネルギー消費、および、高い投資コストを意味するかなり大きな設備のサイズ、主としてカラム底部およびボイラである。さらに、このような方法では、この方法の蒸留に位置するカラムへ再循環するために、溶剤より重いまたは軽い安定剤を効率的に回収することができない。
【0021】
フランス国特許第2,736,912号には、重質中間不純物の除去方法の一つの改良例が記載されている。この特許の精製部は第1カラムの頂部で純粋なアクリル酸を蒸留することによって底部にモノマーをほとんど通さず、重質中間不純物を含むカラム底部の流体を別のカラムへ供給物として送り、中間化合物を豊富に含む側流を取り出し、そして、アクリル酸が豊富なカラムヘッド流を前のカラムへ再循環する。
【特許文献4】フランス国特許第2,736,912号
【0022】
この方法は溶剤および重合抑制剤の更なるロスが生じるという欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明者は研究を続け、従来技術の上記問題点を解決し、疎水性重質溶剤による吸収を用いる(メタ)アクリル酸精製方法を下記の点で大幅に改良することに成功した:
a)溶剤の回収、
b)安定剤の回収、
c)エネルギー消費および設備サイズの縮小、
d)特に効率的な(メタ)アクリル酸の回収を確実にしながら、熱分解による生成物のロスを制限すること。
【0024】
そのために、吸収カラムの底部で得られる流体を、軽質化合物を除去する分離カラムを備える分離装置へ送り、次に、3つの部分、それぞれストリッピング部、濃縮部、および、精留部へ送り、所望の純粋な酸を回収し、一種または複数の疎水性重質溶剤を回収し、好ましくは、これらを再循環し、そして、所望の(メタ)アクリル酸から、安定剤を含む中間重質化合物を分離し、所望の(メタ)アクリル酸の濃度が低いこの流体は下流の蒸留カラムで処理できるのが有利であることが提案されている。
【0025】
この小型のカラムでは下記の運転が実施できる:
a)十分な量の中間重質化合物をカラムの頂部で除去して、これらの化合物が溶剤および安定剤の濃度が低い流体中で溶剤ループ中に蓄積しないようにすること、および
b)回収方法の前のカラムの頂部へ安定剤の流体として再循環するために、カラムの供給物中に初期に存在する溶剤および安定剤の大部分をカラムの底部で回収すること。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の対象は、プロパンおよび/またはプロピレンおよび/またはアクロレイン(アクリル酸の製造の場合)、およびイソブタンおよび/またはイソブテンおよび/またはt−ブチルアルコールおよび/またはメタクロレイン(メタクリル酸の製造の場合)のガス材料の触媒またはレドックス酸化で得られる、(メタ)アクリル酸の精製方法であって、このガス混合物は主として下記:
a)ガス材料がこれらを予め含む場合に、プロパンおよび/またはプロピレンまたはイソブタンおよび/またはイソブテン、
b)最終酸化物、
c)所望の(メタ)アクリル酸、
d)(メタ)アクロレイン、
e)t−ブチルアルコール(メタクリル酸の製造の場合)、
f)水蒸気、
g)酢酸(メタクリル酸の製造の場合)および副産物としてのアクリル酸、および
h)副反応で生じる重質生成物、
から成り、
この方法に従って反応で生じるガス混合物を吸収カラム(C1)の底部へ送り、この吸収カラム(C1)の頂部から少なくとも一種の疎水性重質吸収溶剤を向流方向で供給して、
吸収カラム(C1)の頂部で、下記から成るガス流:
1)プロパンおよび/またはプロピレンまたはイソブタンおよび/またはイソブテン(アクリル酸とメタクリル酸のどちらを製造するかによる)および、混合物(1)の最終酸化物から成る非凝縮性軽質化合物、
2)水および酢酸(アクリル酸の製造の場合)、多量の水、酢酸およびアクリル酸(メタクリル酸の製造の場合)から成る多量の凝縮性軽質化合物、
3)(メタ)アクロレイン、
を回収し、
吸収カラム(C1)の底部で、下記から成る流体:
1)(メタ)アクリル酸、
2)一種または複数の重質吸収溶剤、
3)副反応で生じる重質生成物、
4)一種または複数の重合抑制剤および、
5)多量の上記凝縮性軽質化合物、
を回収し、
カラム(C1)から出る流体を次に分離カラム(C2)へ送り、分離を行って、
頂部で、軽質不純物から成る流体を回収し、この流体を吸収カラム(C1)の底部へ送り、
底部で、下記から成る流体:
1)一種または複数の吸収溶剤中の(メタ)アクリル酸溶液、
2)少量の上記凝縮性軽質化合物、
3)副反応で生じる重質生成物、および、
4)一種または複数の重合抑制剤、
を回収する方法において、
カラム(C2)の底部からの液体流を、下記を得るのに適した第1分離部(S1)の頂部へ供給物として送り、
a)頂部では、ガス流、および、
b)底部では、主として軽質化合物を除去した一種または複数の吸収溶剤を含む流体、この流体は直接、または、この流体中に含まれる重質化合物を除去した後に供給物としてカラム(C1)へ再循環される、
第1分離部(S1)の頂部で得られるこのガス流、または、このガスを凝縮して生成される液体流を、溶剤の沸点と(メタ)アクリル酸の沸点との間である沸点を有する中間重質化合物を濃縮するのに適し、且つ、下記:
a)頂部では、ガス流、および、
b)底部では、第1分離部(S1)の頂部へ送られる液体流、
を得るのに適した第2分離部(S2)の底部へ送り、
第2分離部(S2)の頂部で得られるこのガス流、または、このガスを凝縮して生成される液体流を、下記:
a)頂部では、凝縮されて一部が第3分離部(S3)の頂部へ再循環され、残部が重質不純物が除去された純粋な(メタ)アクリル酸として出るガス流、および、
b)底部では、第2分離部(S2)へ送られる液体流
を得るのに適した第3分離部(S3)の底部へ送ることを特徴とする方法にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
分離部(S1)、(S2)、(S3)は、それぞれ、下側ストリッピング部、中間重質化合物を濃縮するための中間部、上側精留部とみなすことができる。
従って、本発明による精製は3つの連続した分離部S1、S2、S3で行われる。これらの3つの分離部は、少なくとも一つの液−気分離段階を含むユニット運転の位置であるという共通の特徴を有している。これらの分離運転では、揮発性の異なる化合物を含む(蒸発)液体混合物および/または(凝縮)ガス混合物が、揮発性が最も高い化合物をより多く含む蒸気、および、揮発性が最も低い化合物をより多く含む液体を発生させる。これらの分離運転は、従来の蒸留設備を組み合わせた任意のユニット、すなわち、任意の型の蒸留カラムおよび任意の型の蒸発器、ボイラおよびコンデンサで実施することができる。
【0028】
本発明方法の第1実施例では、以下で図2を参照して詳細に説明するが、分離部(S1)、(S2)、(S3)が、それぞれ、同じカラム(C3)の底部、中間部、頂部であり、カラム(C2)の底部からの流体が分離部(S1)よりも上側のカラム(C3)へ送られる。
この場合は、カラム(C3)の理論段の数が8〜25、特に10〜20、カラム(C3)の各分離部(S1)、(S2)、(S3)の理論段の数がそれぞれ下記であるのが有利である:
1〜5、特に1〜3、
1〜10、特に1〜5、および
3〜20、特に5〜15。
【0029】
カラム(C3)の頂部の圧力は2.7〜27kPa(20〜202トル)、好ましくは6.7〜24kPa(50〜180トル)であるのが有利である。
カラム(C3)の底部の温度は150〜250℃、好ましくは180〜230℃であるのが有利であり、カラム(C3)の頂部の温度は40〜110℃、好ましくは65〜95℃であるのが有利である。
純度が十分な(メタ)アクリル酸を得るには多数の分離ステージが必要であるため、カラム(C3)は底部ボイラ、頂部コンデンサを備えた、頂部に課される還流比TRが0.5/1〜4/1、好ましくは0.5/1〜2/1である蒸留カラムであるのが好ましい。
【0030】
本発明方法の第2実施例では、以下で図3を参照して詳細に説明するが、分離部(S1)および(S2)がそれぞれ、同じカラム(C31)の下側および上側位置であり、カラム(C2)の底部からの流体が分離部(S1)より上側のカラム(C31)へ送られ、分離部(S3)がカラム(C32)の単一の部であり、この底部にはカラム(C31)の頂部からの流体が供給される。
カラム(C31)の頂部の圧力は2.7〜27kPa(20〜202トル)、好ましくは4〜15kPa(30〜112トル)であるのが有利であり、カラム(C32)の頂部の圧力は2.7〜27kPa(20〜202トル)、好ましくは6.7〜24kPa(50〜180トル)であるのが有利である。
各カラム(C31)および(C32)の底部の温度は150〜250℃、好ましくは170〜210℃であるのが有利であり、各カラム(C31)および(C32)の頂部の温度は40〜110℃、好ましくは65〜90℃であるのが有利である。
【0031】
本発明方法の第3実施例では、以下で図4を参照して詳細に説明するが、各分離部(S1)および(S2)が少なくとも一つの蒸発器から形成され、カラム(C2)の底部からの流体が供給物として蒸発器(E1)または分離部(S1)の系列に取り付けられた複数の蒸発器のうちの第1蒸発器(El1)へ送られ、軽質化合物を除去した一種または複数の吸収溶剤を含む流体が蒸発器(E1)または分離部(S1)の系列(El1;El2)の最後の蒸発器(El2)の底部で得られ、分離部(S3)がカラム(C33)の単一部であり、この底部には蒸発器(E2)または分離部(S2)の系列に取り付けられた複数の蒸発器の最後の蒸発器(E22)の頂部からの流体が供給される。
【0032】

カラム(C33)の頂部の圧力は2.7〜27kPa(20〜202トル)、特に6.7〜24kPa(50〜180トル)であるのが有利である。
カラム(C33)の底部の温度は150〜250℃、好ましくは170〜210℃であるのが有利であり、カラム(C33)の頂部の温度は40〜110℃、好ましくは60〜90℃であるのが有利である。
【0033】
本発明の方法の独特な特徴では、分離部(S1)へ供給される原料中の(メタ)アクリル酸濃度が5〜70重量%、特に10〜30重量%である。
本発明の方法のさらに独特な特徴では、分離部(S3)の底部からの中間重質化合物の流体がカラム(C4)へ送られ、このカラム(C4)は中間重質化合物の少なくとも一部(8)を頂部で除去し且つカラム(C4)に供給された流体中に初期に存在する一種または複数の重質溶剤および一種または複数の重合抑制剤を底部で回収するように適合され、この流体は上記のカラムまたは分離部(C1;C2;C3;C31;C32、C33)の頂部へ安定剤の流体として再循環されるのが有利である。
【0034】
カラム(C4)の頂部の圧力は2.7〜40kPa(20mmHg〜300mmHg)、特に9.3〜20kPa(70mmHg〜150mmHg)であるのが有利である。
分離部(S1)の底部からの流体は、溶剤の沸点より高いまたは沸点が最高の溶剤の沸点より高い沸点を有する重質不純物の流体を必要に応じて除去した後に、吸収カラム(C1)の頂部へ再循環されるのが有利である。
【0035】
精製段階で生じるロスを埋め合わせるために、溶剤を豊富に含むループ、特に、分離部(S1)およびカラム(C4)の底部の流体に一種または複数の新規な溶剤を導入し、カラム(C1)の頂部へ再循環する。この溶剤が(メタ)アクリル酸の沸点に近い沸点を有する軽質不純物を含む場合には、(メタ)アクリル酸から分離するのが難しいこれらの軽質不純物を除去するために、カラム(C4)に供給される流体に追加の溶剤を供給するのが特に有利である。
【0036】
本発明では、大気圧下での沸点が200℃以上である一種または複数の疎水性重質吸収溶剤を用いるのが有利であり、疎水性重質吸収溶剤としてジトリルエーテルを用いるのが好ましい。特許文献には疎水性重質吸収溶剤の多くの例が記載されている。
一種または複数の重合抑制剤の存在下で吸収カラム(C1)で吸収を実施し、カラム(C2)および分離部(S1)〜(S3)で分離を実施し、重合抑制剤を上記の重合抑制剤の中から選択する。
【0037】
添付図面の[図1]は上記の3つの分離部S1、S2、S3を含む本発明方法の(メタ)アクリル酸精製方法の概要流れ図を示し、[図2]〜[図4]はそれぞれ上記の3つの特定の実施例を示し、分離部S1、S2、S3の組立体をより詳細に示している。
【0038】
吸収カラム(C1)の底部へは、プロピレンおよびアクロレインの酸化(アクリル酸製造の場合)またはイソブテンおよびメタクロレインの酸化(メタクリル酸製造の場合)で得られた下記(A)と(B)を主成分とする反応ガス混合物(流体1)が送られる:
(A)カラムの運転圧力下で非凝縮性の化合物:プロピレン、最終酸化物(CO、CO2)、
(B)凝縮性化合物:アクリル酸、アクロレイン、水、酢酸(アクリル酸製造の場合)、または、メタクリル酸、メタクロレイン、水、アクリル酸および酢酸(メタクリル酸製造の場合)、副反応で生じる極く少量の重質生成物、
【0039】
吸収カラム(C1)の頂部からは本発明方法の最終段階で回収された疎水性重質溶剤(流体13)を向流で供給する。溶剤は大気圧での沸点が200℃以上の疎水性重質溶剤である。
【0040】
吸収カラム(C1)の底部で得られる流体(2)は主としてアクリル酸、溶剤、少量の酢酸および水とアクロレインから成る。この流体(2)は蒸留カラム(C2)へ送られる。軽質不純物はアクリル酸と痕跡量の溶剤との混合物中で濃縮されて蒸留カラム(C2)の頂部で除去される。このガス流(3)は熱交換器で凝縮され、吸収カラムへ送る。蒸留カラム(C2)の底部で得られる流体(4)は主として溶剤に溶けたアクリル酸と、反応ガス流中に少量存在する副反応で得られる重質不純物から成る。
【0041】
吸収カラム(C1)の頂部で随伴するガス流(14)は出発材料の反応ガス中に存在する下記の非吸収化合物から成る:カラムの運転圧力下で非凝縮性の化合物(プロピレン、CO、CO2)、水、アクロレイン、酢酸。この流体(14)の大部分(流体15)を反応段階へ再循環して反応材料を反応させるのが有利である。この流体(16)はパージして、プロピレンの最終酸化で生じる非凝縮性化合物(CO、CO2)と反応段階に導入された空気からの窒素が循環ループ中に蓄積しないようにすることができる。わずかに異なる実施例では、流体(14)に含まれる水の一部および不純物を蒸気の低温凝縮によって除去し、その後、この一部を反応段階へ再循環し、焼却除去する。
【0042】
流体(4)は吸収溶剤中の(メタ)アクリル酸溶液とアクリルモノマーよりも重い不純物とから成り、この流体を次に一組の3つの分離部へ送り、この組の各分離部(S1)、(S2)、(S3)は必要に応じて分離要素を形成する(カラム、蒸発器または一連の蒸発器):
a)流体(2)、(4)、(13)で形成されるループ中に(メタ)アクリル酸および中間重質化合物の群に属する多量の不純物および安定剤が蓄積しないようにこれらを十分に除去した、流体(4)中に存在する溶剤の大部分を回収するための下側ストリッピング部(S1)、この流体(4)はこの分離部(S1)より上側に位置するカラム(C1)に導入する、
b)(溶剤の沸点と(メタ)アクリル酸の沸点との間である沸点を有する)中間重質化合物の群に属する不純物および安定剤を濃縮し、分離部(S2)より上の高さから出てくる側流(5)で除去する中間濃縮部(S2)、
c)より重い不純物の大部分を除去した(メタ)アクリル酸(流体6)を頂部で得る上側精留部(S3)。
【0043】
分離部(S3)の底部から出る流体(5)をカラム(C4)へ送り、中間重質化合物の群に属する溶剤および安定剤の大部分を回収し(カラム(C4)の底部から出る流体(7))、且つ、カラムの頂部で中間重質化合物を除去する(流体8)。
特に有利な実施例では、精留系に沿って生じるわずかなロスを埋め合わせるために、カラム(C4)に供給物として新規な溶剤を導入し、この溶媒から、流体(8)中により軽い不純物が存在する可能性を排除し、この流体(8)をカラム(C4)の頂部で除去する。
【0044】
溶剤および安定剤を豊富に含む流体(7)は一種または複数のカラム(C1)(C2)および一組の分離部(S1)〜(S3)へ再循環できるのが有利である。
また、分離部(S1)の底部から出る流体(9)の一部(10)は、必要に応じて、流体(11)中の溶剤の沸点より高い沸点を有する重質不純物を除去するための装置へ送ることができ、再生された溶剤(流体12)は流体(9)の未処理部分と一緒に供給物として吸収カラムへ送ることができる(流体13)。重質不純物の分散段階は、溶剤の沸点よりはるかに高い沸点を有する化合物を大雑把に分離するための任意の装置、例えば蒸留カラム、特に好ましくは任意の型の蒸発器で実施できる。
【0045】
図2からはカラム(C3)自体が分離部(S1)、(S2)、(S3)を収容できることがわかる。
図3からはカラム(C31)が分離部(S1)、(S2)を収容し、カラム(C32)が分離部(S3)を収容していることがわかる。カラム(C31)のヘッド流はカラム(C32)の底部に供給される。
【0046】
図4から、分離部(S1)が直列の2つの蒸発器(El1、El2)を備え、流体(4)が第1蒸発器(El1)の頂部に供給され、第1蒸発器(El1)の底部からの流体が第2蒸発器(El2)の頂部に供給され、第2蒸発器(El2)の底部からの流体は流体(9)となることがわかり、また、分離部(S2)が直列の2つの蒸発器(E21、E22)を備え、第1蒸発器(El1)のヘッド流が第2蒸発器(E21)の頂部に供給され、第2蒸発器(E21)のヘッド流が第2蒸発器(E22)の頂部に供給されることがわかる。第2蒸発器(E22)のヘッド流は分離部(S3)を収容するカラム(C33)に供給される。
【0047】
カラム(El2)のヘッド流およびカラム(E21)の底部からの流体は蒸発器(El1)の供給物(4)へ再循環する。蒸発器(E22)の底部からの流体は蒸発器(E21)の供給部へ再循環する。
蒸留カラム(C1)、(C2)、(C3)、(C31)、(C32)、(C33)、(C4)は任意の型にすることができる(下降管を有してもよい多孔板、泡鐘、構造またはバルク充填)。これらの蒸留カラムには任意の型のボイラを設けることもできる(任意の型のサーモサイホンまたは強制循環、薄膜蒸発器などを備えた垂直または水平な熱交換器)。任意の型のコンデンサは垂直または水平にすることができる。
【0048】
蒸発器(El1)、(El2)、(E21)、(E22)は任意の型、すなわち、垂直または傾斜管、プレート、強制循環、回転フィルム、攪拌フィルム、スクレープドフィルムを備えた蒸発器にすることができる。
分離部(S3)(C3、C32、C33)を収容するカラムは、カラム上側部分と、ヘッドコンデンサのガス入口に安定剤供給を備えるのが好ましい。カラムC2のヘッドの蒸気の凝縮は、コンデンサ入口への安定剤の導入によって重合反応から保護することもできるのが有利である。カラム(C1)、(C2)と精留方法の一組の分離部(S1)〜(S3)とのループ中を流れる溶剤の流体中の安定剤濃度は、重合反応を防ぐために、必要に応じて、新規な安定剤を外部から追加することによって、十分な値に維持しなくてはならない。この追加は精留方法のどの時点でも行うことができる。ポリマーの発生を防ぐために、酸素を純粋なまたは希釈した(空気)形で、減圧下で運転する、(メタ)アクリル酸を含むカラムの底部に添加することができる。特に有利な方法では、酸素添加流体のカラム(C3)への導入をカラムの底部とサイドで抜き出すポイントとの間、好ましくはボイラとメイン供給との間に位置する高さで行う。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明する。比率は重量比である。
実施例では下記の略語を用いる:
AA: アクリル酸、
DTE: ジトリルエーテル、
EMHQ: ヒドロキノンメチルエーテル。
【0050】
実施例1:
この実施例は単一カラム(C3)の一つの可能性のある運転を説明している。実験器具は底部ボイラと、頂部コンデンサと、供給トレイとカラムヘッドとの間にあるトレイを通る液体の一部を取り出すためのサイドの出口とを備えた蒸留カラムから成る。
蒸留運転は13,300Pa(100mmHg)の減圧下で実施する。
カラムへ連続供給される液体流は、[図1]に示すような方法の吸収−タッピング段階(カラム(C2)の底部)の終了時に得られる粗アクリル酸流体の組成を正確に示す合成混合物である:
DTE: 81.74%、
AA: 18.1%、
無水マレイン酸: 0.266%、
フルフルアルデヒド:0.005%、
ベンズアルデヒド: 0.003%、
EMHQ: 0.127%。
【0051】
このカラムは130cmの高さであり、カラム底部には内径が35mmの4段の下降管型トレイを備え、カラム頂部には内径が25mmの16段の下降管型トレイを備える。このユニットは総合効率が15の理論段を有する。供給流体(500g/時)を熱交換器によって予め115℃に加熱しておく。カラムの供給はカラムの下側部分の(下から数えて)第2および第3のトレイの間で行い、下降液体流の一部を底部の頂部トレイのサイドから取り出す。重合反応を防ぐために、カラムの頂部にEMHQを導入し、供給物をうけるトレイの高さに空気を1リットル/時の流量で注入する。
蒸気はカラム頂部で凝縮され、凝縮された液体流(180g/時)の一部はカラムの頂部へ送られ、一方で蒸留物(96g/時)が取り出される。得られた純粋な生成物は主としてアクリル酸を含み、不純物は0.1%の無水マレイン酸、0.1%の酢酸、および、0.01%のフルフルアルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸に制限される。
【0052】
142℃の温度で取り出される液体側流(5.4g/時)は下記から成る:
DTE: 58.3%、
EMHQ: 7.8%、
無水マレイン酸: 20.5%、
アクリル酸: 11.4%、
安息香酸: 1.5%、
ベンズアルデヒド: 0.4%、
フルフルアルデヒド: 0.1%。
カラム底部の流体は210℃の温度で取り出す。この流体は0.01%のアクリル酸を含み、アクリル酸回収率は99%以上である。
【0053】
実施例2:
この実施例は[図1]に示すような回収カラム(C4)の運転を説明している。 このカラムはカラム底部およびヘッドコンデンサにサーモサイホンボイラを備え、内径が25mmの8段の下降管型多孔板から成る。カラム(C3)のサイドから抜き出される供給流体を125.5g/時の流量でカラムC4のボイラへ送る。この流体は下記から成る:
DTE: 65%、
無水マレイン酸: 17%、
AA: 12.4%、
EMHQ: 4.2%、
安息香酸: 1.1%、
フルフルアルデヒド:0.17%、
ベンズアルデヒド: 0.13%。
【0054】
運転圧力が13,300Pa(100mmHg)であるので、カラムヘッドで凝縮される液体流を還流/流量比を5/1にして、107℃の温度、37g/時で取り出す。カラム底部では、195℃の温度で、88.5g/時の液体流を回収する。
不活性生成物の回収率はDTEが97%、EMHQが78%、AAが6%に達する。不純物除去効率は無水マレイン酸が89%、フルフルアルデヒドが94%、ベンズアルデヒドが97%、安息香酸が27%である。
上記の2つの実施例で説明した各カラム(C3)および(C4)の性能を考慮することによって、[図1]に示す方法の精留部全体の全回収率を計算することができる。重質溶剤による吸収段階から出る粗AA流体、または、カラム(C3)の供給流体に関して、溶剤および安定剤の回収率はそれぞれ99.98%および85.6%であり、一方、カラム(C4)のヘッド流中のAAのロスは、初期粗AA中に存在するAAの0.6%に制限されたままである。
【0055】
実施例3:
この実施例は直列の2つのカラム(C31)および(C32)を含む分離ユニットのの一つの可能性のある運転を説明している(図3)。実験器具は11,700Pa(80mmHg)の圧力下で運転する第1カラム(C31)から成り、このカラムは各段が1つの下降管を有する4段の多孔板(または3の理論段)と、底部のサーモサイホンボイラと、頂部コンデンサとを備え、このカラムの第2および第3のトレイの間に、ポンプ(490/時)によって、前のカラム(C2)の底部で得られる媒体(粗アクリル酸)の特徴的組成を有する下記混合物が供給される:
DTE: 79.83%、
AA: 19.8%、
無水マレイン酸: 0.172%、
フルフルアルデヒド:0.022%、
EMHQ: 0.146%。
【0056】
カラム(C31)の頂部では、凝縮された流体が0.2/1の還流比で上側トレイへ送られる(還流された液体の流量/取り出される液体の流量)。ボイラで測定される温度は180℃で、ヘッド温度は119℃に達する。カラムの底部で得られる流体は0.082%のAAを含む。これはカラムの頂部でのモノマー回収率が99.7%であることを意味する。
カラム(C31)の頂部から出る流体(120.7g/時)は主として、19%のDTE、80.15%のAA、0.63%の無水マレイン酸、0.064%のフルフルアルデヒド、0.07%のEMHQを含み、この流体はポンプによってカラム(C32)の(下から数えて)第4のトレイへ送られ、この第4トレイは下降管を有する16段の多孔板(12の理論段)を備えている。このカラム(C32)は底部のサーモサイホンボイラと、頂部のコンデンサとを備え、22,600Pa(170mmHg)の圧力下で運転し、安定剤の混合物(5%濃度のAA中のEMHQ)を頂部で受ける。頂部に適用する還流比(還流された液体の流量/取り出される液体の流量)は1.5/1である。底部温度は187℃であり、頂部温度は93℃である。
カラムの頂部で得られる純粋なアクリル酸は99.87%のAAおよびわずか325ppmのフルフルアルデヒド、100ppmの無水マレイン酸を含み、DTEの痕跡量は検出されない。底部の流体は、DTEの他に、4.12%のAA(両カラムでの全AA回収率:98.7%)、2.62%の無水マレイン酸および0.17%のフルフルアルデヒドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】3つの分離部S1、S2、S3を含む本発明方法の(メタ)アクリル酸精製方法の概要流れ図。
【図2】第1実施例を示す図。
【図3】第2実施例を示す図。
【図4】第3実施例を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸製造の場合にはプロパンおよび/またはプロピレンおよび/またはアクロレインであり、メタクリル酸製造の場合にはイソブタンおよび/またはイソブテンおよび/またはt−ブチルアルコールおよび/またはメタクロレインであるガス材料を触媒またはレドックスで酸化で得られる(メタ)アクリル酸の精製方法であって、
上記の酸化で得られるガス混合物(1)が主として下記a)〜h)から成り:
a)プロパンおよび/またはプロピレンまたはイソブタンおよび/またはイソブテン(ガス材料の構成に依存)、
b)最終酸化物、
c)求める(メタ)アクリル酸、
d)(メタ)アクロレイン、
e)t−ブチルアルコール(メタクリル酸製造の場合)、
f)水蒸気、
g)酢酸およびメタクリル酸製造の場合の副産物としてのアクリル酸、
h)副反応で生じる重質生成物、
上記反応で生じるガス混合物(1)を吸収カラム(C1)の底部へ送り、少なくとも一種の疎水性の重質吸収溶剤をこの吸収カラム(C1)の頂部から向流方向に供給し、少なくとも一種の重合抑制剤の存在下で吸収を行なって、
吸収カラム(C1)の頂部で下記から成るガス流(7)を回収し:
1)プロパンおよび/またはプロピレンまたはイソブタンおよび/またはイソブテン(アクリル酸とメタクリル酸のどちらを製造するかによる)および上記混合物(1)の最終酸化物から成る非凝縮性軽質化合物、
2)水と酢酸(アクリル酸製造の場合)または多量の水と酢酸とアクリル酸(メタクリル酸製造の場合)から成る多量の凝縮性軽質化合物、
3)(メタ)アクロレイン、
吸収カラム(C1)の底部で、下記から成る流体を回収し:
1)(メタ)アクリル酸、
2)一種または複数の重質吸収溶剤、
3)副反応で生じる重質生成物、
4)一種または複数の重合抑制剤、
5)多量の上記凝縮性軽質化合物、
次に、カラム(C1)から出た流体を分離カラム(C2)へ送り、そこで分離を行って、
分離カラム(C2)の頂部で軽質不純物から成る流体を回収し、それを吸収カラム(C1)の底部へ送り、
分離カラム(C2)の底部で下記:
1)一種または複数の吸収溶剤中の(メタ)アクリル酸溶液、
2)少量の上記凝縮性軽質化合物、
3)副反応で生じる重質生成物、
4)一種または複数の重合抑制剤、
から成る流体を回収する方法において、
分離カラム(C2)の底部からの液体流(4)を第1分離部(S1)の頂部へ供給物として送って、
a)第1分離部(S1)の頂部ではガス流を得、
b)第1分離部(S1)の底部では軽質化合物を除去した一種または複数の吸収溶剤を主にした流体(9)を得た後、上記流体(9)はカラム(C1)へ供給物として直接再循環するか、上記流体(9)中に含まれる重質化合物を除去した後にカラム(C1)へ再循環し、
第1分離部(S1)の頂部で得られた上記ガス流か、このガス流を凝縮して得られる液体流を、沸点が溶剤の沸点と(メタ)アクリル酸の沸点との間に有る中間重質化合物を濃縮するための第2分離部(S2)の底部へ送って、
a)この第2分離部(S2)の頂部ではガス流を、
b)この第2分離部(S2)の底部では第1分離部(S1)の頂部へ送られる液体流をそれぞれ得、
第2分離部(S2)の頂部で得られた上記ガス流か、このガス流を凝縮して得られた液体流を第3分離部(S3)の底部へ送って、
a)第3分離部(S3)の頂部で得たガス流を凝縮し、その一部は第3分離部(S3)の頂部へ再循環し、残部は重質不純物が除去された純粋な(メタ)アクリル酸として回収し、
b)第3分離部(S3)の底部で得た液体流は第2分離部(S2)へ送る、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記の分離部(S1)、(S2)、(S3)が単一カラム(C3)の底部、中間部、頂部であり、分離カラム(C2)の底部からの流体(4)が上記単一カラム(C3)へ第1分離部(S1)より上側へ送られる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単一カラム(C3)の理論段数が8〜25、特に10〜20で、単一カラム(C3)の各分離部(S1)、(S2)、(S3)の理論段数がそれぞれ下記である請求項2に記載の方法:
各分離部(S1):1〜5、特に1〜3、
各分離部(S2):1〜10、特に1〜5、
各分離部(S3):3〜20、特に5〜15。
【請求項4】
単一カラム(C3)の頂部の圧力が2.7〜27kPa、特に6.7〜24kPaであり、単一カラム(C3)の底部の温度が150〜250℃、特に180〜230℃であり、単一カラム(C3)の頂部の温度が40〜110℃、特に65〜95℃である請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
単一カラム(C3)が底部ボイラと頂部コンデンサとを備えた蒸留カラムであり、頂部での還流比TRが0.5/1〜4/1、好ましくは0.5/1〜2/1である請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記の各分離部(S1)および(S2)が単一カラム(C31)の下側部分および上側部分であり、分離カラム(C2)の底部からの流体(4)がこの単一カラム(C31)の分離部(S1)より上側へ送られ、上記分離部(S3)は単一カラム(C32)の一つの部分で、この部分の底部へは上記単一カラム(C31)の頂部からの流体が供給される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記単一カラム(C31)の頂部の圧力が2.7〜27kPa、特に4〜15kPaであり、上記単一カラム(C32)の頂部の圧力が2.7〜27kPa、特に6.7〜24kPaであり、各上記単一カラム(C31)および(C32)の底部の温度が150〜250℃、好ましくは170〜210℃であり、各上記単一カラム(C31)および(C32)の頂部の温度が40〜110℃、特に65〜90℃である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各分離部(S1)と(S2)の各々が少なくとも一つの蒸発器から成り、カラム(C2)の底部からの流体(4)が蒸発器(E1)または分離部(S1)に直列に配置された複数の蒸発器の第1の蒸発器(El1)へ供給物として送られ、蒸発器(E1)または分離部(S1)に直列に配置された複数の蒸発器(El1;El2)の最後の蒸発器(El2)の底部で軽質化合物が除去された一種または複数の吸収溶剤を含む流体(9)を得、分離部(S3)は一つのカラム(C33)の単一部分であり、この底部には蒸発器(E2)または分離部(S2)に直列に配置された複数の蒸発器の最後の蒸発器(E22)の頂部からの流体が供給される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記カラム(C33)の頂部の圧力が2.7〜27kPa、特に6.7〜24kPaであり、上記カラム(C33)の底部の温度が150〜250℃、特に170〜210℃であり、上記カラム(C33)の頂部の温度が40〜110℃、特に60〜90℃である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分離部(S1)へ供給される原料中の(メタ)アクリル酸の濃度が5〜70重量%、特に10〜30重量%である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
分離部(S3)の底部からの中間重質化合物の流体(5)を一つのカラム(C4)へ送り、このカラム(C4)の頂部で中間重質化合物の少なくとも一部(8)を除去し、このカラム(C4)の底部では上記流体(5)中に初期から存在する一種または複数の重質溶剤と一種または複数の重合抑制剤との流体(7)を回収し、この流体(7)は上記の各カラムまたは分離部(C1;C2;C3;C31;C32、C33)の頂部へ安定剤流体として再循環する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
上記カラム(C4)の頂部の圧力が2.7〜40kPa、特に9.3〜20kPaである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
必要に応じて溶剤の沸点より高いまたは沸点が最高の溶剤の沸点より高い沸点を有する重質不純物の流体(11)を除去した後に、分離部(S1)の底部からの流体(9)を吸収カラム(C1)の頂部へ再循環する請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
精製段階で生じるロスを埋め合わせるために、溶剤を豊富に含むループ中に、特にカラム(C1)の頂部へ再循環される分離部(S1)およびカラム(C4)の底部の流体(13および7)の所で一種または複数の新規な溶剤を導入し、および/または、溶剤が(メタ)アクリル酸の沸点に近い沸点を有する軽質不純物を含む場合には、上記カラム(C4)に供給される流体(5)の所で追加の溶剤を供給する請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
大気圧下での沸点が200℃以上である一種または複数の疎水性の重質吸収溶剤を用いる請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
疎水性の重質吸収溶剤としてジトリルエーテルを用いる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
吸収カラム(C1)での吸収および上記カラム(C2)および上記分離部(S1)〜(S3)での分離を一種または複数の重合抑制剤の存在下で実施し、この重合抑制剤をフェノール化合物、例えばハイドロキノンまたはハイドロキノンメチルエーテル、キノン類、例えばベンゾキノン、フェノチアジンおよびその誘導体、例えばメチレンブルー、マンガン塩、例えば酢酸マンガン、金属チオカルバメート、例えばジチオカルバミン酸の銅塩、例えばジブチルジチオカルバメート、N−オキシル化合物、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル、アミン、例えばパラフェニレンジアミン誘導体、ニトロソ基含有化合物、例えばN−ニトロソ−フェニルヒドロキシルアミンおよびN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩の中から選択する請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−510637(P2007−510637A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537337(P2006−537337)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002482
【国際公開番号】WO2005/049541
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】