説明

ガス浄化装置

【課題】浄化対象ガスの圧損の増加を抑制しつつ浄化対象ガス中の除去対象に対する光触媒とオゾンの作用による分解効果と吸着剤による吸着効果とを併用し、より効果的に浄化対象ガスを脱臭、清浄あるいは除菌することが可能なガス浄化装置である。
【解決手段】ガス浄化装置10は、浄化対象ガスXを通過させることが可能な三次元構造の基体に光触媒を担持させた光触媒モジュール20と、前記光触媒を活性化するための放電光を生成し、かつ放電により浄化対象ガスXからオゾンを発生させる放電電極19a,19bと、浄化対象ガスXを通過させることが可能な三次元構造の基体に吸着剤を担持させた吸着フィルタ18とを備え、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18とを浄化対象ガスXの進行方向に対して互いに並列配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電光を照射して活性化した光触媒とオゾンの作用により空気等のガスに含まれる除去対象を除去して清浄、脱臭あるいは除菌するガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の車室内、家屋や倉庫の内部、冷蔵庫等の機器の内部等の閉空間における空気を浄化するために、活性炭に代表される吸着剤が用いられる。例えば自動車の車室内の空気を浄化する場合には、カーエアコン装置等が設けられた空気循環用のダクト内に吸着剤を備えた吸着フィルタが設けられる。そして、ダクトを通過して車室内に導かれる空気は吸着フィルタを経由し、吸着フィルタにおいて空気中の臭気成分等の物質が吸着剤により吸着される。この結果、吸着剤の作用により脱臭された空気が車室内に導かれる。
【0003】
一方、従来、放電光を照射して活性化した光触媒とオゾンの作用により空気等のガスに含まれる除去対象を分解除去して脱臭、清浄あるいは除菌するガス浄化装置が提案される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
従来のガス浄化装置1は、図5に示すように光触媒を三次元網目状の構造体に担持させて構成される光触媒モジュール2を空気等の浄化対象ガスXが流れるガス流路3上に設け、光触媒モジュール2の近傍に一対の電極4、4を設置した構成である。そして、高圧電源部5から電極4,4間に高電圧が印加され、電極4、4間には放電光が生成される。生成された放電光は光触媒に照射され、光触媒は活性化せしめられる。
【0005】
空気等の浄化対象ガスXは、送風機6の駆動により処理空間からガス流路3内に導かれ、集塵フィルタ7において予め塵や埃が除去される。さらに、浄化対象ガスXは、光触媒モジュール2に導かれ、光触媒モジュール2を通過する際に活性化した光触媒の作用により浄化対象ガスXに含まれる有害物質、臭気物質や菌類等の除去対象が分解されて脱臭、清浄あるいは除菌される。また、放電により、浄化対象ガスXからオゾンがガス流路3内に生成され、オゾンの作用によっても浄化対象ガスXに含まれる除去対象が分解されて脱臭、清浄あるいは除菌される。
【0006】
さらに、浄化対象ガスXは残留したオゾンとともに、オゾン処理フィルタ8に導かれ、オゾン処理フィルタ8において浄化対象ガスX中のオゾンが分解される。そして、オゾンの濃度が十分に低減されて無害化された浄化対象ガスXがガス流路3から処理空間に放出される。
【特許文献1】特開2003−310731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の吸着剤を用いた脱臭技術では、空気中に含まれる臭気成分等の物質を吸着するのみであり、分解処理を行なわないため、除菌を行なうことが困難である。また、吸着剤が吸着する臭気成分等の物質の吸着量に限界があり、使用が長期間にわたる場合には吸着剤の吸着機能が減少するため吸着剤を交換する必要がある。さらに、吸着剤に吸着機能があり、寿命期間内であっても、寿命末期においては吸着機能が低下しているため、一旦吸着剤に吸着した臭気成分等の物質が空気中に再放出されてしまう恐れがある。
【0008】
一方、光触媒とオゾンを用いた従来のガス浄化装置1では、臭気成分等の物質や菌類を分解処理するため、脱臭のみならず除菌や浄化を行なうこともできる。さらに、ガス浄化装置1では、光触媒モジュール2において臭気成分等の物質や菌類が分解され、堆積することがないため、吸着剤に比べて交換等のメンテナンスの必要性が低い。逆に、吸着剤では交換等のメンテナンスを要するものの、光触媒とオゾンの作用により分解が困難な除去対象を吸着効果により容易に吸着して空気から除去することができる場合もありうる。
【0009】
そこで、このような吸着剤が有する除去対象の吸着効果とガス浄化装置1が有する除去対象の分解効果とを併用して双方の利点を活用すべく、ガス浄化装置1を吸着剤とともに家屋、車両、冷蔵庫等の機器内部に代表される閉空間内における空気等の浄化対象ガスが循環するダクト内に設置することが望まれる。
【0010】
ところが、空気等の浄化対象ガスが循環するダクト内において、吸着フィルタの上流側あるいは下流側のいずれにガス浄化装置1を設けた場合であっても、浄化対象ガスの圧損が増加してしまうという問題がある。特に既に吸着フィルタが設けられた既存のダクト内においては、一般に送風機等の機器は吸着フィルタや既設の機器の圧損に対して浄化対象ガスの流速が所要の流速となるように設計されているため、新たにガス浄化装置1を設置すると浄化対象ガスの圧損が過剰に増加して流速が低下し、十分に閉空間内を循環させることが困難となる恐れがある。このため、既に利用されているダクトにガス浄化装置1を設置することが困難となり、逆にガス浄化装置1を設置するためには送風機やエアコン等の空調機器の設計変更が必要となる場合もありうる。
【0011】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、浄化対象ガスの圧損の増加を抑制しつつ浄化対象ガス中の除去対象に対する光触媒とオゾンの作用による分解効果と吸着剤による吸着効果とを併用し、より効果的に浄化対象ガスを脱臭、清浄あるいは除菌することが可能なガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るガス浄化装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、浄化対象ガスを通過させることが可能な三次元構造の基体に光触媒を担持させた光触媒モジュールと、前記光触媒を活性化するための放電光を生成し、かつ放電により前記浄化対象ガスからオゾンを発生させる放電電極と、前記浄化対象ガスを通過させることが可能な三次元構造の基体に吸着剤を担持させた吸着フィルタとを備え、前記光触媒モジュールと前記吸着フィルタとを前記浄化対象ガスの進行方向に対して互いに並列配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るガス浄化装置においては、浄化対象ガスの圧損の増加を抑制しつつ浄化対象ガス中の除去対象に対する光触媒とオゾンの作用による分解効果と吸着剤による吸着効果とを併用し、より効果的に浄化対象ガスを脱臭、清浄あるいは除菌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るガス浄化装置およびガス浄化方法の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明に係るガス浄化装置の第1の実施形態を示す断面構成図であり、図2は、図1に示すガス浄化装置10の分解吸着部13におけるA−A断面の断面図である。
【0016】
ガス浄化装置10は、家屋、車両、冷蔵庫等の機器内部等の閉空間11内の任意の部位に設けられる。例えば、ガス浄化装置10は、空気等の浄化対象ガスXを閉空間11内に循環させるためのダクト内に設けられ、ガス浄化装置10内にはガス流路12が形成される。ガス浄化装置10は分解吸着部13を備え、浄化対象ガスXの流れを形成させる必要がある場合には送風機14(ファン)が備えられる。ただし、送風機14は既設のものを利用してもよい。
【0017】
また、ガス浄化装置10には必要に応じて、特に浄化対象ガスXの浄化対象となる閉空間11が有人の場合には、オゾン処理フィルタ15が設けられる。さらに、ガス浄化装置10には必要に応じて、特に浄化対象ガスXに比較的大きな塵や埃が含まれる場合には、集塵フィルタ16が設けられる。そして、例えばガス流路12の上流側からガス浄化装置10の集塵フィルタ16、送風機14、分解吸着部13、オゾン処理フィルタ15が順に設けられる。
【0018】
分解吸着部13は、光触媒反応部17と吸着フィルタ18とを有する。
【0019】
光触媒反応部17は、対向する放電電極19a,19bおよび光触媒モジュール20を備える。光触媒モジュール20は、例えば三次元網目状のセラミックス基体の表面に酸化チタン等の光触媒を担持させて構成される。このため、光触媒モジュール20内部を浄化対象ガスXが通過することができる。ただし、光触媒モジュール20は、三次元網目状のセラミックス基体に光触媒を担持させる構成のみならず、多孔状、ハニカム状のように浄化対象ガスXを通過させることが可能な三次元構造の所要の素材の基体に光触媒を担持させた構造であればよい。
【0020】
また、対向する放電電極19a,19bは例えば光触媒モジュール20を挟んでガス流路12の上流側と下流側とに設けられる。各放電電極19a,19bは、高圧電源部21と接続され、高電圧電部から電圧が印加されることにより放電光とともにオゾンを発生させ、発生させた放電光に含まれる紫外線を光触媒モジュール20が担持する光触媒に照射して活性化できるように構成される。また、例えば、一方の放電電極19aはハニカム構造とされ、他方の放電電極19bは網目状構造とされ、電気力線が密となりより低い電圧が印加することにより容易に放電することが可能な形状とされる。
【0021】
尚、紫外線を光触媒モジュール20の光触媒に照射可能であれば、放電電極19a,19bの形状および位置は任意である。
【0022】
吸着フィルタ18は、例えば多孔状、ハニカム状、三次元網目状の浄化対象ガスXを通過させることが可能な三次元構造の基体に吸着剤を担持させて構成される。そして、吸着フィルタ18は、その内部を通過する浄化対象ガスXに含まれる臭気成分等の物質を吸着する機能を有する。
【0023】
また、このように構成される分解吸着部13の光触媒モジュール20と吸着フィルタ18は浄化対象ガスXの進行方向に対して互いに並列に設けられ、必要に応じて光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の上流側および下流側の一方あるいは双方のガス流路12はある程度分割される。さらに、例えば、光触媒モジュール20は平板状に、吸着フィルタ18はコ字状の切欠を有する板状にそれぞれ形成され、吸着フィルタ18の切欠に光触媒モジュール20が勘合するように構成される。そして、高圧電源部21は、例えば光触媒モジュール20の吸着フィルタ18と勘合しない側面に設けられる。すなわち、光触媒モジュール20が吸着フィルタ18の支持体を兼ねる構造とされ、吸着フィルタ18を光触媒モジュール20に着脱して容易に交換できるように構成される。
【0024】
また、光触媒モジュール20を流れる浄化対象ガスXと吸着フィルタ18を流れる浄化対象ガスXの流量比が、所要の範囲内となるように、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の圧損および形状が設計される。つまり、光触媒モジュール20の浄化対象ガスXに対する圧損と吸着フィルタ18の浄化対象ガスXに対する圧損との相対差が大きい程、単位面積当たりでは光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の一方により多量の浄化対象ガスXが流れ、他方にはより小量の浄化対象ガスXが流れることとなる。
【0025】
そこで、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の双方に、十分な量の浄化対象ガスXを導いて光触媒モジュール20および吸着フィルタ18のそれぞれの機能が十分に発揮されるように、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の圧損および形状とが決定される。
【0026】
図3は、図1に示す光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の形状および浄化対象ガスXに対する圧損の設定方法の一例を説明するモデル図である。
【0027】
図3(a)は、圧損の定義を説明するモデル図である。図3(a)に示すように、圧損を単位時間に単位面積S[m]の開口部を持つ媒体Aを通して、単位流量Q[m]の浄化対象ガスXを流出させるための圧力差と定義する。すなわち、単位流量Qの浄化対象ガスXが単位面積Sの開口部を持つ媒体Aを通過する場合における媒体Aの入口における浄化対象ガスXの圧力をP+ΔP[Pa]とし、媒体Aの出口における浄化対象ガスXの圧力をP[Pa]とすると圧損はΔP[Pa]と定義することができる。
【0028】
ここで、面積Sの開口部を持つ媒体Aを通過する浄化対象ガスXの流量Qは、媒体Aの入口における浄化対象ガスXの圧力P+ΔP’と媒体Aの出口における浄化対象ガスXの圧力Pの圧力差ΔP’に比例し、かつ媒体Aの開口部の面積Sに比例すると仮定する。すなわち比例係数をαとして式(1)が成立すると仮定する。
【0029】
[数1]
Q=αΔP’・S ・・・(1)
【0030】
式(1)と圧損の定義より、式(2)が導かれる。
【0031】
[数2]
=αΔP・S ・・・(2)
【0032】
従って式(1)、式(2)より、面積Sの開口部を持つ媒体Aを通過する浄化対象ガスXの流量Qは、式(3)で示される。
【0033】
[数3]
Q=(Q)/(ΔP・S)・ΔP’・S ・・・(3)
【0034】
次に、この仮定に基づいて圧損の異なる二種類の媒体A1、A2が浄化対象ガスXの進行方向に対して並列配置された場合について考える。図3(b)は、それぞれ単位面積Sの開口部を持つ媒体A1、A2の入口における浄化対象ガスXのガス流路12が分割され、媒体A1、A2それぞれへの浄化対象ガスXの導入圧力が相異する一方、媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXのガス流路12が共通である場合のモデルを示す。
【0035】
媒体A1、A2の圧損をそれぞれΔP、ΔPとすると、媒体A1、A2の入口における浄化対象ガスXの圧力がそれぞれP+ΔP、P+ΔPであれば、媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの圧力は共にPであり、式(2)に示すように流量は共に単位流量Qとなる。このため、媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの総流量QTOTALは式(4)に示すように2Qとなる。
【0036】
[数4]
TOTAL=Q+Q=2Q・・・(4)
【0037】
従って、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の入口側における浄化対象ガスXのガス流路12が分割される一方、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の出口における浄化対象ガスXのガス流路12が共通である場合には、光触媒モジュール20の入口と出口における浄化対象ガスXの圧力差が光触媒モジュール20の圧損となるようにし、かつ吸着フィルタ18の入口と出口における浄化対象ガスXの圧力差が吸着フィルタ18の圧損となるようにすれば、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18を流れる浄化対象ガスXの流量は理想的には一致し均等に流すことができる。
【0038】
また、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18をそれぞれ流れる浄化対象ガスXの流量に重み付けを行う場合には、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18それぞれへの浄化対象ガスXの導入圧力および各圧損の一方あるいは双方を調整することにより光触媒モジュール20と吸着フィルタ18とを流れる浄化対象ガスXの流量比を変化させることができる。
【0039】
この際、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18のそれぞれの圧損は、それぞれの厚さや密度を変化させることにより調整することができる。
【0040】
図3(c)は、それぞれ単位面積Sの開口部を持つ媒体A1、A2の入口および出口の双方における浄化対象ガスXのガス流路12が共通であり、媒体A1、A2の入口および出口における浄化対象ガスXの圧力が同一である場合のモデルを示す。図3(c)に示すように媒体A1、A2の入口における浄化対象ガスXの圧力がP+ΔP’であり媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの圧力がPである場合には、媒体A1、A2の入口および出口における浄化対象ガスXの圧力差は共にΔP’である。
【0041】
従って、媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの流量Q、Qは、式(3)に示すように媒体A1、A2の入口および出口における浄化対象ガスXの圧力差ΔP’に比例するため、それぞれ式(5−1)、式(5−2)に示すように求めることができる。
【0042】
[数5]
=Q/(ΔP・S)・ΔP’・S=Q・(ΔP’/ΔP)・・・(5−1)
=Q/(ΔP・S)・ΔP’・S=Q・(ΔP’/ΔP)・・・(5−2)
【0043】
そして、媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの総流量QTOTALは式(6)で示される。
【0044】
[数6]
TOTAL=Q+Q=Q(ΔP’/ΔP+ΔP’/ΔP)・・・(6)
【0045】
従って、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の入口側および出口側の双方におけるガス流路12が共通であり、かつ光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の浄化対象ガスXの流れ方向に対する断面の面積が同程度である場合には、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18のそれぞれの圧損(ΔP、ΔP)を一致させれば、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18を流れる浄化対象ガスXの流量は理想的には一致し均等に流すことができる。
【0046】
従って、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18に均等に浄化対象ガスXを流すことが望まれる場合には、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の圧損(ΔP、ΔP)を互いに同等とみなせる範囲内とすること、すなわち光触媒モジュール20の圧損ΔPと吸着フィルタ18の圧損ΔPとの差あるいは比が所要の閾値内となるようにすることが効果的である。
【0047】
また、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18をそれぞれ流れる浄化対象ガスXの流量に重み付けを行なう場合には、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18のそれぞれの圧損比を増減して摂動させることにより光触媒モジュール20と吸着フィルタ18とを流れる浄化対象ガスXの割合、すなわち流量比を調整することができる。
【0048】
ところで、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の厚さを同程度とし、それぞれの機能が十分に発揮できる密度とした場合には、単位面積当たりでは光触媒モジュール20の圧損の方が吸着フィルタ18の圧損よりも大きくなる。また、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18全体の単位面積当たりの合成圧損、すなわち光触媒モジュール20および吸着フィルタ18を1つの媒体とみなした場合における圧損は、より小さい方が望ましい。
【0049】
従って、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の浄化対象ガスXの流れ方向に対する断面の面積を同程度とする場合には、光触媒モジュール20の圧損を小さくするために、厚さを極端に薄くするか密度を小さくして粗くする必要が生じる。しかし、このように極端に光触媒モジュール20の厚さが薄い場合や密度が粗い場合には、光触媒モジュール20に担持される光触媒の量が減少し、また浄化対象ガスXと光触媒との接触面積も減少することとなり、光触媒モジュール20の機能を十分に発揮さることが困難となる恐れがある。
【0050】
そこで、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の圧損が異なっていても、浄化対象ガスXの流れ方向に対するそれぞれの断面の面積を調整することにより、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18をそれぞれ流れる浄化対象ガスXの流量並びに光触媒モジュール20と吸着フィルタ18全体の合成圧損を設定することができる。
【0051】
図3(d)は、それぞれ異なる面積S、Sの開口部を持つ媒体A1、A2の入口および出口の双方における浄化対象ガスXのガス流路12が共通であり、媒体A1、A2の入口および出口における浄化対象ガスXの圧力が同一である場合のモデルを示す。図3(d)に示すように媒体A1、A2の入口における浄化対象ガスXの圧力がP+ΔP’であり媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの圧力がPである場合には、媒体A1、A2の入口および出口における浄化対象ガスXの圧力差は共にΔP’である。
【0052】
従って、媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの流量Q、Qは、式(3)に示すように媒体A1、A2の入口および出口における浄化対象ガスXの圧力差ΔP’に比例し、かつ媒体A1、A2の開口部の面積S、Sに比例するため、それぞれ式(7−1)、式(7−2)に示すように求めることができる。
【0053】
[数7]
=Q/(ΔP・S)・ΔP’・S
=Q・(ΔP’/ΔP)・(S/S)・・・(7−1)
=Q/(ΔP・S)・ΔP’・S
=Q・(ΔP’/ΔP)・(S/S)・・・(7−2)
【0054】
そして、媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの総流量QTOTALは式(8)で示される。
【0055】
[数8]
TOTAL=Q+Q
=Q{(ΔP’/ΔP)・(S/S)+(ΔP’/ΔP)・(S/S)}
=ΔP’・Q/S{(S・ΔP)+(S・ΔP)/(ΔP・ΔP)}
・・・(8)
【0056】
式(8)において、媒体A1、A2の出口における浄化対象ガスXの総流量QTOTALに対して媒体A2の出口における浄化対象ガスXの流量Qが占める割合Rは、式(9)で示される。
【0057】
[数9]
=Q/QTOTAL
={Q・(ΔP’/ΔP)・(S/S)}
/[ΔP’・Q/S{(S・ΔP)+(S・ΔP)/(ΔP・ΔP)}]
=S・ΔP/(S・ΔP+S・ΔP)・・・(9)
【0058】
式(9)において、流量Qが占める割合Rを仮に0.5(50%)とすると、媒体A1の圧損ΔPが、媒体A2の圧損ΔPの2倍である場合には、式(10)に示すように媒体A1、A2の開口部の面積S、Sの条件を求めることができる。
【0059】
[数10]
=0.5=S・ΔP/(S・ΔP+S・ΔP
=S/(2S+S)・・・(10)
∵ΔP=2ΔP
【0060】
すなわち、媒体A1の圧損ΔPが、媒体A2の圧損ΔPの2倍である場合に、式(10)に示すように媒体A1、A2の開口部の面積S、Sを設定すれば、媒体A1、A2の双方に均等に浄化対象ガスXを流すことができる。このため、媒体A1を光触媒モジュール20と、媒体A2を吸着フィルタ18として式(10)の条件を満たすように浄化対象ガスXの進行方向に対するそれぞれの断面積S、Sを設定すれば、単位面積当たりの光触媒モジュール20の圧損が吸着フィルタ18の圧損の2倍であったとしても、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の双方に均等に浄化対象ガスXを流すことができる。
【0061】
また、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18をそれぞれ流れる浄化対象ガスXの流量に重み付けを行なう場合には、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18のそれぞれの圧損比や浄化対象ガスXの進行方向に対するそれぞれの断面積比を増減して摂動させることにより光触媒モジュール20と吸着フィルタ18とを流れる浄化対象ガスXの流量比を調整することができる。特に、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の圧損を互いに同等とみなせる範囲内とすることが可能な場合には、浄化対象ガスXの進行方向に対するそれぞれの断面積比のみを考慮すれば、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18をそれぞれ通過する浄化対象ガスXの流量比を調整することができる。
【0062】
ここで、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18をそれぞれ流れる浄化対象ガスXの流量比の設定方法について検討する。一般に光触媒モジュール20や吸着フィルタ18において分解あるいは吸着の対象とされる臭気成分の臭気強度は対数的に感知される。このため、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の一方へ流入する浄化対象ガスXの流量が他方へ流入する浄化対象ガスXの流量の10%未満である場合には、浄化対象ガスXの流量が少ない側による効果は殆ど認識されないと考えられる。
【0063】
そこで、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の双方の効果を十分に併用させる場合には、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18を通過する浄化対象ガスXの総流量に対する光触媒モジュール20あるいは吸着フィルタ18を通過する浄化対象ガスXの流量の割合が少なくとも0.1未満とならないように、式(10)の例に示すように光触媒モジュール20および吸着フィルタ18のそれぞれの圧損や浄化対象ガスXの進行方向に対する断面積を設定する必要がある。つまり、実用的には、光触媒モジュール20を通過する浄化対象ガスXと吸着フィルタ18を通過する浄化対象ガスXの流量比は、0.1から0.9の範囲とすることが必要であると考えられ、このような流量比が得られるように式(10)により光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の形状を設計することができる。
【0064】
尚、光触媒モジュール20により多量の浄化対象ガスXを流すために、光触媒モジュール20の浄化対象ガスXの進行方向に対する断面積を大きくすると、光触媒モジュール20の圧損が吸着フィルタ18の圧損よりも大きい場合には、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18全体の合成圧損の増加に繋がる。そこで、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18全体の合成圧損が予め設定された閾値内となるように、光触媒モジュール20の圧損を設定することが重要となる。
【0065】
この結果、例えば、図2に示すように、光触媒モジュール20の浄化対象ガスXの進行方向に対する断面積に比べて、吸着フィルタ18の浄化対象ガスXの進行方向に対する断面積が大きくなるように設計される。そして、光触媒と浄化対象ガスXの接触面積を確保するために光触媒モジュール20の厚さを十分厚く、密度を十分大きく設定し、光触媒モジュール20の圧損を吸着フィルタ18の圧損よりも大きくせざるを得ないような場合であっても、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18全体の合成圧損の増加を抑制し、かつ光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の双方に要求される流量比の浄化対象ガスXを導くことができるように構成される。
【0066】
そして、このように圧損や面積が調整されて設計された光触媒モジュール20および吸着フィルタ18がガス流路12上に浄化対象ガスXの進行方向に対して並列配置される。
【0067】
一方、分解吸着部13の上流側に設けられる集塵フィルタ16は、浄化対象ガスXに含まれる塵や埃を除去することにより、分解吸着部13の光触媒モジュール20や吸着フィルタ18の目詰まりを防止する機能を有する。
【0068】
また、送風機14は、浄化対象ガスXの流れをガス流路12上に形成し、浄化対象ガスXを所要の流速で分解吸着部13に送り込む機能を有する。すなわち、送風機14を駆動させることにより、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の入口における浄化対象ガスXの圧力をそれぞれ所要の圧力とし、所要の流量の浄化対象ガスXを光触媒モジュール20および吸着フィルタ18を通過させる機能を有する。
【0069】
尚、分解吸着部13は、光触媒モジュール20や吸着フィルタ18を並列配置して構成されるため、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18全体の合成圧損に対して浄化対象ガスXの流速を所要の流速にできればよい。
【0070】
オゾン処理フィルタ15は例えば多孔状、ハニカム状、三次元網目状の構造体にオゾン分解触媒を担持させて構成され、オゾン処理フィルタ15の内部を浄化対象ガスXが通過できる構造とされる。ここで、光触媒反応部17では、オゾンが生成されるためオゾン処理フィルタ15の内部を通過する浄化対象ガスXにはオゾンは含まれることとなる。そこで、オゾン処理フィルタ15には、その内部を通過する浄化対象ガスXに含まれるオゾンを分解処理して除去することにより、閉空間11に放出される浄化対象ガスXを無害化あるいは浄化対象ガスXに含まれるオゾンの濃度を低減させる機能を有する。
【0071】
次にガス浄化装置10の作用について説明する。
【0072】
まず、送風機14が駆動し、家屋、車両、冷蔵庫等の機器内部等の閉空間11内からガス浄化装置10内に形成されたガス流路12に空気等の浄化対象ガスXが流入し、浄化対象ガスXの流れが形成される。すなわち、閉空間11内からガス浄化装置10内のガス流路12に流入した浄化対象ガスXは、ガス流路12を経由して閉空間11に放出され、閉空間11に放出された浄化対象ガスXが、再びガス浄化装置10内のガス流路12に流入する浄化対象ガスXの循環が形成される。
【0073】
ガス浄化装置10内のガス流路12に流入した浄化対象ガスXは、集塵フィルタ16に導かれる。集塵フィルタ16では、浄化対象ガスXに含まれる塵や埃が除去され、光触媒モジュール20や吸着フィルタ18の目詰まりが防止される。集塵フィルタ16を通過した浄化対象ガスXは、送風機14を通過して所要の流速となって、分解吸着部13に送り込まれる。そして、浄化対象ガスXが光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の入口に所要の圧力となって導かれる。
【0074】
ここで、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18とは浄化対象ガスXの進行方向に対して並列配置され、かつ浄化対象ガスXに対する合成圧損が予め設定された閾値内となるようにされているため、送風機14に消費されるエネルギの増加が抑制される。特に光触媒モジュール20の圧損と吸着フィルタ18の圧損とが同等とみなせる範囲内である場合には、送風機14において消費されるエネルギの消費量は、吸着フィルタ18のみがガス流路12上に設けられた場合と同等なエネルギの消費量となる。このため、送風機14が、吸着フィルタ18や既設の他の機器のみの圧損に対して設計された既設の送風機14であったとしても、そのまま用いることができる。
【0075】
さらに、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の入口に導かれた浄化対象ガスXは、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の双方に流れ込む。このとき、光触媒モジュール20を流れる浄化対象ガスXと吸着フィルタ18を流れる浄化対象ガスXとの流量比が共に少なくとも0.1から0.9の範囲となるように、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の圧損および浄化対象ガスXの進行方向に対する断面積が調整されているため、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18を流れる浄化対象ガスXは、十分に光触媒モジュール20および吸着フィルタ18による効果を得ることができる。
【0076】
すなわち、吸着フィルタ18の内部に導かれた浄化対象ガスXは、吸着フィルタ18の構造体に担持された吸着剤と接触し、浄化対象ガスXに含まれる臭気成分等の物質が吸着剤により吸着されて除去される。このため、浄化対象ガスXは脱臭され、あるいは清浄されて吸着フィルタ18の出口に放出される。
【0077】
一方、高圧電源部21から放電電極19a,19bに電圧が印加される。放電電極19a,19bでは放電が起こり、放電光に含まれる紫外線が光触媒モジュール20に担持された光触媒に照射される。このため、光触媒は活性化され、光触媒モジュール20内部に導かれた浄化対象ガスXは、活性化した光触媒と接触する。そして、浄化対象ガスXに含まれる臭い物質、有害物質、細菌等の物質が活性化した光触媒の表面に付着すると、光触媒からエネルギが供給され、光触媒の表面に付着した物質は酸化され、分解される。
【0078】
また、放電電極19a,19bからの放電に伴って放電プラズマが生成され、浄化対象ガスX中に含まれる酸素分子Oは励起および解離し、プラズマ反応の結果オゾンOが生成される。また、同時に放電により発生する紫外光の中で波長が300nm以下の短波長成分を酸素分子Oが吸収することにより励起され、酸素分子Oのプラズマ反応と同様に反応の結果オゾンO3が生成される。オゾンOは浄化対象ガスX中に含まれる臭い物質、有害物質、細菌等の物質と衝突し、酸化、分解反応を起こす。
【0079】
この結果、光触媒モジュール20内部に導かれた浄化対象ガスXは、活性化した光触媒とオゾンの酸化分解作用により除菌、脱臭あるいは清浄される。そして、浄化後の浄化対象ガスXは、オゾンとともに光触媒モジュール20の出口に放出される。
【0080】
さらに、吸着フィルタ18の出口に放出された浄化対象ガスXと、光触媒モジュール20の出口に放出された浄化対象ガスXとは合流し、さらに光触媒モジュール20および吸着フィルタ18の下流側においてオゾンの作用により除菌、脱臭あるいは清浄される。そして、浄化対象ガスXは残留するオゾンとともにオゾン処理フィルタ15に導かれる。
【0081】
オゾン処理フィルタ15内部では、浄化対象ガスXに含まれる残留オゾンが構造体に担持されたオゾン分解触媒と接触し、浄化対象ガスXから残留オゾンが分解処理される。そして、オゾン処理フィルタ15において残留オゾンが除去されて無害化あるいはオゾンの濃度が十分に低減した浄化対象ガスXは、ガス浄化装置10内のガス流路12を経由して閉空間11に放出される。
【0082】
さらに、閉空間11とガス浄化装置10内のガス流路12内との間には、浄化対象ガスXが循環する流れが形成されているため、ガス浄化装置10において、除菌、脱臭あるいは清浄されて閉空間11に放出された浄化対象ガスXは、再びガス浄化装置10内のガス流路12に導かれる。そして、同様な光触媒モジュール20および吸着フィルタ18による浄化対象ガスXの除菌、脱臭あるいは清浄等の浄化処理がガス浄化装置10内のガス流路12において繰返し施される。
【0083】
このため、ガス浄化装置10内のガス流路12に導かれた浄化対象ガスXは、光触媒モジュール20および吸着フィルタ18のいずれかのみを通過するものの、浄化対象ガスXの循環により繰返しガス浄化装置10内のガス流路12に導かれるため、閉空間11内の浄化対象ガスXは徐々に除菌、脱臭あるいは清浄される。つまり、活性化した光触媒とオゾンによる臭気成分や菌類等の除去対象に対する分解効果と、吸着剤による臭気成分等の物質の吸着効果の双方の効果を閉空間11内の浄化対象ガスXに対して得ることができる。
【0084】
以上のような、ガス浄化装置10によれば、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18とを浄化対象ガスXの進行方向に対して並列配置した構成であるため、浄化対象ガスXの圧損の増加を抑制することが可能となり、送風機14等のガス流路12上の他の機器に要求される設計性能の増加を抑えることができる。このため、送風機14等の機器が吸着フィルタ18の圧損のみを想定して設計された既設のものであっても、そのままあるいはより簡易な修正により用いることができる。
【0085】
また、この際、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の圧損および浄化対象ガスXの進行方向に対する断面積が調整されて、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の双方に十分な流量の浄化対象ガスXを導くことができるため、光触媒とオゾンの作用による浄化対象ガス中の除去対象に対する分解効果と吸着剤による吸着効果とを併用し、より効果的に浄化対象ガスを脱臭、清浄あるいは除菌することができる。
【0086】
このため、従来、吸着剤のみでは、行なえなかった除菌等の浄化処理を光触媒とオゾンの作用により行うことが可能となるのみならず、臭気成分等の物質の分解処理能力を向上させることができる。また、このような効果により、吸着フィルタ18に堆積する物質の量を低減させて吸着フィルタ18の交換等のメンテナンスの労力を低減させることが期待される。
【0087】
さらに、光触媒モジュール20は、吸着フィルタ18の支持体を兼ねているため、吸着フィルタ18の交換が容易となり、かつ支持体のスペースを浄化対象ガスXの浄化処理のために有効活用することもできる。また、光触媒モジュール20と吸着フィルタ18の勘合形状を従来用いられる既設の吸着フィルタ18と同等な形状とすれば、従来の吸着フィルタ18との互換性を持たせることもできる。
【0088】
他方、光触媒とオゾンの作用により分解が困難ではあるが、吸着剤の吸着効果により容易に吸着して空気から除去することが可能な除去対象が浄化対象ガスXに含まれる場合には、図5に示す従来のガス浄化装置1では浄化対象ガスXの浄化処理が不十分となる恐れがあるのに対し、図1に示す本発明のガス浄化装置10では、吸着剤の作用によりそのような除去対象が浄化対象ガスXに含まれていても吸着除去することができる。
【0089】
図4は本発明に係るガス浄化装置の第2の実施形態を示す断面構造図である。
【0090】
図4に示された、ガス浄化装置10Aでは、光触媒反応部17に誘電体30を設けた点が図1に示すガス浄化装置10と相違する。他の構成および作用については図1に示すガス浄化装置10と実質的に異ならないため分解吸着部13の断面構造図のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0091】
ガス浄化装置10Aの分解吸着部13は、光触媒反応部17と吸着フィルタ18とを有し、光触媒反応部17は、対向する放電電極19c,19dと光触媒モジュール20とを備える。
【0092】
対向する放電電極19c,19dは例えば光触媒モジュール20を挟んで浄化対象ガスXの進行方向に略並行な面に設けられる。一方の放電電極19cは例えば板状構造とされ、他方の放電電極19dは網目状構造とされる。そして、電気力線が密となりより低い電圧が印加されてもより容易に放電することが可能な形状とされる。さらに、放電電極19c,19d間の任意の部位、例えば板状構造の放電電極19cの他方の放電電極19d側に面した部位は誘電体30で覆われる。
【0093】
そして、ガス浄化装置10Aでは、誘電体30を介して放電が行なわれる。このため、放電は誘電体バリア放電となり安定したコロナ放電となる。これにより、より高電圧を放電電極19c,19d間に印加してもアーク放電に移行することなく、よりエネルギの大きい放電光を安定して発生させることができる。
【0094】
このため、ガス浄化装置10Aでは、図1に示すガス浄化装置10の効果に加え、より高エネルギの放電光を発生させて、光触媒モジュール20における浄化対象ガスXの浄化機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係るガス浄化装置の第1の実施形態を示す断面構成図。
【図2】図1に示すガス浄化装置の分解吸着部におけるA−A断面の断面図。
【図3】図1に示す光触媒モジュールおよび吸着フィルタの形状および浄化対象ガスに対する圧損の設定方法の一例を説明するモデル図。
【図4】本発明に係るガス浄化装置の第2の実施形態を示す断面構造図。
【図5】従来のガス浄化装置の断面構成図。
【符号の説明】
【0096】
10,10A ガス浄化装置
11 閉空間
12 ガス流路
13 分解吸着部
14 送風機
15 オゾン処理フィルタ
16 集塵フィルタ
17 光触媒反応部
18 吸着フィルタ
19a,19b,19c,19d 放電電極
20 光触媒モジュール
21 高圧電源部
30 誘電体
X 浄化対象ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化対象ガスを通過させることが可能な三次元構造の基体に光触媒を担持させた光触媒モジュールと、前記光触媒を活性化するための放電光を生成し、かつ放電により前記浄化対象ガスからオゾンを発生させる放電電極と、前記浄化対象ガスを通過させることが可能な三次元構造の基体に吸着剤を担持させた吸着フィルタとを備え、前記光触媒モジュールと前記吸着フィルタとを前記浄化対象ガスの進行方向に対して互いに並列配置したことを特徴とするガス浄化装置。
【請求項2】
前記光触媒モジュールの前記浄化対象ガスに対する圧損と、前記吸着フィルタの前記浄化対象ガスに対する圧損とを同等とみなせる範囲内としたことを特徴とする請求項1記載のガス浄化装置。
【請求項3】
前記光触媒モジュールの前記浄化対象ガスに対する圧損と前記吸着フィルタの前記浄化対象ガスに対する圧損との合成圧損が予め設定された閾値内となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のガス浄化装置。
【請求項4】
前記光触媒モジュールおよび前記吸着フィルタの入口における前記浄化対象ガスのガス流路を分割し、前記光触媒モジュールおよび前記吸着フィルタの入口における前記浄化対象ガスの各導入圧力並びに前記光触媒モジュールおよび前記吸着フィルタの前記浄化対象ガスに対する各圧損の少なくとも1つを調整することにより前記光触媒モジュールを通過する前記浄化対象ガスと前記吸着フィルタを通過する前記浄化対象ガスとの流量比が所要の範囲となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のガス浄化装置。
【請求項5】
前記光触媒モジュールおよび前記吸着フィルタの前記浄化対象ガスに対する圧損比を調整することにより前記光触媒モジュールを通過する前記浄化対象ガスと前記吸着フィルタを通過する前記浄化対象ガスとの流量比が所要の範囲となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のガス浄化装置。
【請求項6】
前記光触媒モジュールおよび前記吸着フィルタの前記浄化対象ガスの進行方向に対する断面積比を調整することにより前記光触媒モジュールを通過する前記浄化対象ガスと前記吸着フィルタを通過する前記浄化対象ガスとの流量比が所要の範囲となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のガス浄化装置。
【請求項7】
前記光触媒モジュールを通過する前記浄化対象ガスと前記吸着フィルタを通過する前記浄化対象ガスとの流量比が0.1から0.9の範囲となるようにしたことを特徴とするガス浄化装置。
【請求項8】
前記光触媒モジュールが前記吸着フィルタの支持体を兼ね、前記吸着フィルタを前記光触媒モジュールに着脱可能としたことを特徴とする請求項1記載のガス浄化装置。
【請求項9】
前記放電電極による放電を誘電体バリア放電とするための誘電体を設けたことを特徴とする請求項1記載のガス浄化装置。
【請求項10】
前記放電電極による放電により生成されたオゾンを分解するオゾン分解触媒を設けたことを特徴とする請求項1記載のガス浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−21082(P2006−21082A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199538(P2004−199538)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】