説明

ガス測定装置および方法

【課題】検知剤による着色が測定限界に達しても、引き続き測定ができるようにする。
【解決手段】測定対象のガスにより着色を発生させる検知剤を孔内に配置したガラスからなる透明な多孔体よりなる検知素子101を備える。また、検知剤による着色の吸収波長の光を検知素子101に向けて照射する光源102を備える。また、光源102により照射されて検知素子101を透過した光を検出する光検出部103を備える。また、光検出部103が検出した光の状態により光源102からの光の出力を制御する制御部104を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象のガスにより着色する検知剤を用いてガスの存在を測定するガス測定装置およびガス測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気中の微量な二酸化窒素ガスやホルムアルデヒドガスを測定する方法として、測定対象のガスにより着色する検知剤による比色センサ素子を用いる種々の方法が提案されている。例えば、非特許文献1によると、多孔質ガラス中にスルファニルアミドとジメチルナフチルアミンを含浸させ、これら検知剤が二酸化窒素とジアゾカップリング反応を起こして生じるアゾ色素の量を、吸光光度測定などの光測定で測定することで、二酸化窒素ガスの濃度を測定するようにしている。ここで、上記アゾ色素は、波長525nmに吸収を持つ。
【0003】
また、非特許文献2では、セルロースからなるろ紙にスルファニル酸とナフチルエチレンジアミン塩酸塩を含浸させ、二酸化窒素ガスとジアゾカップリング反応を起こさせ、これによりアゾ色素が生じた結果によるろ紙の着色状態を、色見本と比較するようにしている。
【0004】
また、非特許文献3には、アセチルアセトンもしくは1−フェニル−1,3−ブタンジオンとアンモニウム塩と酢酸とを含む検知剤を、多孔質ガラスに含浸させた検知素子により、ホルムアルデヒドの測定を行うことについて記載されている。上記検知剤は、ホルムアルデヒドと反応することで、ルチジン誘導体が生じる。従って、上記検知素子におけるルチジン誘導体の光吸収を測定することで、ホルムアルデヒドの測定が行える。
【0005】
また、非特許文献4には、4−アミノ−4−フェニル−3−エン−2−オンをろ紙に固定し、このろ紙の色の変化(着色)により、ホルムアルデヒドを測定することについて記載されている。4−アミノ−4−フェニル−3−エン−2−オンは、ホルムアルデヒドと反応し、ルチジン誘導体を生じてろ紙に着色を生じさせる。この着色の状態(濃度)により、ホルムアルデヒドの濃度が判定できる。
【0006】
また、非特許文献5には、4−アミノ−3−ヒドラジノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールをろ紙に固定し、このろ紙の色の変化(着色)により、ホルムアルデヒドを測定することについて記載されている。4−アミノ−3−ヒドラジノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールは、ホルムアルデヒドと反応し、ルチジン誘導体を生じてろ紙に着色を生じさせる。この着色の状態(濃度)により、ホルムアルデヒドの濃度が判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3639123号公報
【特許文献2】特開2008−232796号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Tanaka, et al. ,"A ppb-level NO2 gas sensor using coloration reactions in porous glass", Sensors and Actuators B, vol.56, pp.247-253, 1999.
【非特許文献2】http://www.godo−shuppan.co.jp/t02_main.html
【非特許文献3】Y.Y.Maruo, et al. ,"Development of formaldehyde sensing element using porous glass impregnated with β-diketone", ScienceDirect, Talanta, vol.74, pp.1141-1147, 2008.
【非特許文献4】Y.Suzuki, et al. ,"Portable Sick House Syndrome Gas Monitoring System Based on Novel Colorimetric Regents for the Highly Selective and Sensitive Detection of Formaldehyde", Environ. Sci. Technol. , vol.37, pp.5695-5700, 2003.
【非特許文献5】K.Kawamura, et al. ,"Development of a novel hand-held formaldehyde gas sensor for the rapid detection of sick building syndrome", Sensors and Actuators B, vol.105, pp.495-501, 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した方法では、簡便に測定ができるが、いずれも比色式の蓄積型センサ素子を用いているので、検知剤による着色が測定限界まで達すると、これ以上測定ができなくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、検知剤による着色が測定限界に達しても、引き続き測定ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るガス測定装置は、測定対象のガスにより着色を発生する検知剤を孔内に配置したガラスからなる透明な多孔体よりなる検知素子と、検知剤による着色の吸収波長の光を検知素子に向けて照射する光源と、この光源により照射されて検知素子を透過した光を検出する光検出手段と、例えば、検知剤による着色の状態を減少させるように、光検出手段が検出した光の状態により光源からの光の出力を制御する制御手段とを少なくとも備え、検知剤は、二酸化窒素イオンと反応してジアゾ化合物を生成するジアゾ化試薬およびジアゾ化合物とカップリングしてアゾ色素を生成するカップリング試薬とを含むもの、およびアセチルアセトンもしくはアセチルアセトンの誘導体を含むもののいずれかである。
【0012】
上記ガス測定装置において、制御手段は、光検出手段が、光源による検知素子への光照射により検知剤による着色が減少したことによる検知素子を透過した光の変化を検出するまで、検知素子に対する光の照射を継続するように光の出力を制御すればよい。なお、検知素子を検知剤による検知対象のガスを含む雰囲気に曝したことにより、検知剤の着色が発生する。
【0013】
上記ガス測定装置において、制御手段は、検知素子を透過した光が検知剤による着色が発生する前に等しい状態となったことを、光検出手段が検出するまで、検知素子に対する光の照射を継続するように光の出力を制御してもよい。
【0014】
また、本発明に係るガス測定方法は、測定対象のガスにより着色が発生する検知剤を孔内に配置したガラスからなる透明な多孔体よりなる検知素子に、検知剤による着色の吸収波長の光を照射して検知素子の初期光透過状態を測定するステップと、初期光透過状態を測定した後に、ガスを含む雰囲気に検知素子を曝して検知剤による着色を発生させるステップと、ガスを含む雰囲気に曝した後で、検知剤による着色の吸収波長の光を検知素子に照射して検知素子の曝露後光透過状態を測定するステップと、検知剤による着色の吸収波長の光を検知素子に照射し、検知剤による着色の状態を減少させるステップとを少なくとも備え、検知剤は、二酸化窒素イオンと反応してジアゾ化合物を生成するジアゾ化試薬およびジアゾ化合物とカップリングしてアゾ色素を生成するカップリング試薬とを含むもの、およびアセチルアセトンもしくはアセチルアセトンの誘導体を含むもののいずれかであるようにした方法である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、光源から検知素子に照射される検知剤による着色の吸収波長の光を、検知素子を透過した光の状態により制御し、例えば、検知剤による着色の状態を減少させるようにしたので、検知剤による着色が測定限界に達しても、引き続き測定ができるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス測定装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるガス測定方法を説明するフローチャートである。
【図3】実施例1における検知素子101によるガス測定装置を用いたホルムアルデヒドガスの測定を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるガス測定装置の構成を示す構成図である。このガス測定装置は、まず、測定対象のガスにより着色を発生させる検知剤を孔内に配置したガラスからなる透明な多孔体よりなる検知素子101を備える。また、検知剤による着色の吸収波長の光を検知素子101に向けて照射する光源102を備える。また、光源102により照射されて検知素子101を透過した光を検出する光検出部103を備える。また、光検出部103が検出した光の状態により光源102からの光の出力を制御する制御部104を備える。例えば、制御部104は、検知剤による着色の状態を減少させるように、光検出部103が検出した光の状態により光源102からの光の出力強度や照射時間などを制御する。
【0018】
ここで、検知素子101が備える検知剤は、二酸化窒素イオンと反応してジアゾ化合物を生成するジアゾ化試薬およびジアゾ化合物とカップリングしてアゾ色素を生成するカップリング試薬とを含む。この場合、検知素子101は、二酸化窒素ガスを検出するものとなる。検知剤は、二酸化窒素と反応して波長500〜550nmに吸収をもつ着色物質を生成する(着色を発生させる)。このため、検知素子101の波長500〜550nmにおける透過率(吸光度)が、曝された雰囲気に含まれる二酸化窒素ガスの濃度に対応して変化する(特許文献1参照)。波長500〜550nmは、上記検知剤による着色(着色物質)の吸収波長を含む波長帯となる。なお、ジアゾ化試薬としては、スルファニル酸、スルファニルアミドが挙げられ、カップリング試薬としては、ジメチルナフチルアミン,ナフチルエチレンジアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0019】
また、検知素子101が備える検知剤は、アセチルアセトンもしくはアセチルアセトンの誘導体を含む。この場合、検知素子101は、ホルムアルデヒドガスを検出するものとなる。検知剤は、ホルムアルデヒドと反応して波長400〜450nmに吸収を持つ着色物質を生成する(着色を発生させる)。このため、検知素子101の波長400〜450nmにおける透過率(吸光度)が、曝された雰囲気に含まれるホルムアルデヒドガスの濃度に対応して変化する(特許文献2参照)。波長400〜450nmは、上記検知剤による着色(着色物質)の吸収波長を含む波長帯となる。なお、アセチルアセトンの誘導体としては、1−フェニル−1,3−ブタンジオン,1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン,4−アミノ−4−フェニル−3−エン−2−オンなどが挙げられる。
【0020】
次に、本実施の形態におけるガス測定方法について、図2のフローチャートを用いて説明する。まず、検知素子101を作製する。検知素子101は、検知剤が溶解している溶液をガラスからなる透明な多孔体(多孔質ガラス)に含浸させることで作製できる。なお、この作製は、測定対象のガスがない雰囲気で行う。
【0021】
次に、作製した検知素子101の吸光度を測定する(ステップS201)。例えば、制御部104の制御により、光源102より検知剤による着色の吸収波長を含む波長帯の光を、より短い波長から一定の波長間隔(例えば1nm)ごとに、検知素子101に向けて照射する。これにより検知素子101を透過した透過光を、光検出部103で検出し、波長ごとの吸光度の推移を示す初期光透過状態を得る。また、検知剤による着色の吸収波長の光を照射し、検知素子101を透過した透過光を光検出部103で検出し、吸収波長の吸光度を初期光透過状態としてもよい。得られた初期光透過状態は、例えば制御部104に記憶する。
【0022】
次に、検知素子101を、測定対象のガスが含まれている雰囲気に曝露する(ステップS202)。この曝露により、検知素子101の検知剤による着色が発生し、検知剤による着色の吸収波長の吸光度が変化する。この後、曝露した検知素子101の吸光度を前述同様に測定し、曝露後光透過状態を得る(ステップS203)。このようにして測定して得られた曝露後光透過状態と初期光透過状態とを比較することで、測定対象のガスの測定が行える。例えば、制御部104により、曝露後光透過状態の吸光度と、初期光透過状態の吸光度との差により、測定対象ガスの濃度を算出する。
【0023】
次に、検知素子101に検知剤による着色の吸収波長の光を照射し、検知剤による着色の状態を減少させ、検知素子101を初期化する(ステップS204)。例えば、制御部104の制御により、光源102より検知剤による着色の吸収波長の光を検知素子101に照射し、また、検知素子101を透過した透過光を、光検出部103で検出する。制御部104は、以上のようにして光検出部103の検出により算出される吸光度の減少を検出するまで、光源102による光照射を継続させる。また、制御部104は、光検出部103が検出により算出される吸光度が、初期光透過状態の吸光度に等しくなるまで、光源102による光照射を継続させる。
【0024】
以上のステップS201からステップS204の動作を、測定を終了するまで行う(ステップS205)。
【0025】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、測定により検知剤による着色が発生しても、検知剤による着色の吸収波長の光を照射することで、例えば、検知素子101を初期光透過状態に等しくするなど、検知剤による着色の状態を減少させるようにした。例えば、検知剤による着色が測定限界に達した後でも、検知剤による着色の状態を減少させれば、再び、測定対象ガスによる検知剤による着色を起こせるようになり、測定対象のガスの測定が繰り返してできるようになる。
【0026】
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
始めに、実施例1について説明する。まず、検知素子101の作製について説明する。1−フェニル−1,3−ブタンジオン0.157gをエタノール50mlに溶解し、この溶液に、酢酸アンモニウム7.5g,酢酸0.15ml,および水を加え、全量を60mlとした検知剤溶液を作製する。次に、作製した検知剤溶液に、平均孔径4nmの多孔質ガラス(コーニング社製バイコール#3970)を浸漬し(24時間)、検知剤溶液を多孔質ガラスに含浸させる。この含浸させた多孔質ガラスを、乾燥窒素中で乾燥させる(24時間)。
【0028】
以上のようにして作製した検知素子101によるガス測定装置を用いたホルムアルデヒドガスの測定について、図3の説明図を用いて説明する。まず、検知素子101に対し、制御部104の制御により、光源102より本実施例における検知剤による着色の吸収波長である415nmの光を、30分ごとに照射する。光源102を30分間隔で点滅させればよい。このとき、光源102より照射する光の強度を、最大光強度の1/10としておく。また、光検出部103による光強度測定値と、予め測定しておいた多孔質ガラスの透過光による光強度測定値との比により、検知素子101の吸光度を、光源102の点灯ごとに算出する。この算出は、制御部104により行う。初期の吸光度は、0.12程度である。
【0029】
上述した30分間隔の光源102の点滅および吸光度の算出を17時間継続し(図3中範囲A1)、この後、検知素子101を含むガス測定装置の雰囲気を、10〜40ppbのホルムアルデヒドが含まれる状態とする。例えば、本ガス測定装置を、ホルムアルデヒドの濃度が調整可能なチャンバー内に配置し、上述した測定を行えばよい。このようにして、ガス測定装置の雰囲気をホルムアルデヒドが含まれる状態としてから、30分ごとの光源102の点灯および吸光度の算出を2回行う(図3中範囲B1)。この2回目の吸光度の算出では、吸光度が0.15となる。目視では、検知素子101に発生した着色が、黄色であることが確認できる。
【0030】
次に、チャンバー内にホルムアルデヒドを含まない空気を供給することにより、ガス測定装置の雰囲気を、ホルムアルデヒドが含まれない状態とし、光検出部103の光出力(強度)を最大として検知素子101に光を3分照射する初期化を、30分ごとに5回繰り返す(図3中範囲C1)。この初期化においても、上述同様に、光検出部103により検出される光強度測定値から吸光度を算出すると、5回目において、吸光度が0.12となり、初期の状態に戻る。目視では、検知素子101が無色であることが確認できる。
【0031】
次に、光検出部103の光出力を1/10とし、30分ごとの光源102の点灯および吸光度の算出を所定時間継続する(図3中範囲A2)。
【0032】
次に、再度、チャンバー内にホルムアルデヒドを含む空気を供給することにより、ガス測定装置の雰囲気を、10〜40ppbのホルムアルデヒドが含まれる状態とし、30分ごとの光源102の点灯および吸光度の算出を19回行う(図3中範囲B2)。この19回目の吸光度の算出では、吸光度が0.24となる。目視では、検知素子101に発生する着色が黄色であることが確認できる。
【0033】
次に、チャンバー内にホルムアルデヒドを含まない空気を供給することにより、ガス測定装置の雰囲気を、ホルムアルデヒドが含まれない状態とし、光検出部103の光出力を最大として検知素子101に光を3分照射する初期化を、30分ごとに20回繰り返す(図3中範囲C2)。この初期化においても、上述同様に、光検出部103により検出される光強度測定値から吸光度を算出すると、20回目において、吸光度が0.12となり、初期の状態に戻る。目視では、検知素子101が無色であることが確認できる。
【0034】
次に、光検出部103の光出力を1/10とし、30分ごとの光源102の点灯および吸光度の算出を所定時間継続する(図3中範囲A3)。
【0035】
次に、再度、チャンバー内にホルムアルデヒドを含む空気を供給することにより、ガス測定装置の雰囲気を、10〜40ppbのホルムアルデヒドが含まれる状態とし、30分ごとの光源102の点灯および吸光度の算出を15回行う(図3中範囲B3)。この15回目の吸光度の算出では、吸光度が0.20となる。目視では、検知素子101に発生する着色が黄色であることが確認できる。
【0036】
次に、チャンバー内にホルムアルデヒドを含まない空気を供給することにより、ガス測定装置の雰囲気を、ホルムアルデヒドが含まれない状態とし、光検出部103の光出力を最大として検知素子101に光を3分照射する初期化を、30分ごとに回繰り返す(図3中範囲C3)。この初期化においても、上述同様に、光検出部103により検出される光強度測定値から吸光度を算出すると、吸光度が徐々に減衰していくことが確認できる。
【0037】
以上に示したように、本実施例における検知素子101は、ホルムアルデヒドと検知剤の反応により着色が起こった後、検知剤の吸収波長の光を検知素子101に照射することで、検知剤による着色の状態を減少させて初期の状態に戻すことができる。このため、本実施の形態における検知素子101を用いたガス測定装置によれば、上述したように、繰り返して測定をすることができる。
【0038】
ところで、ホルムアルデヒドを含む雰囲気に曝して黄色の着色を発生した検知素子101に対し、波長611nmの光を照射しても、着色の減少がほとんど観察されない。これに対し、上述したように、検知剤の吸収波長の光を照射することで検知剤による着色を減少させることができる。これは、測定対象のガス(ホルムアルデヒドガス)と検知剤との反応により生成される着色に関与する物質(着色物質:ルチジン誘導体)が、この着色物質の吸収波長の光を照射することで分解されるためであると考えられる。ここで、測定対象ガスとの反応で着色物質が生成されることにより、検知剤は消費されて減少する。従って、測定により消費される検知剤がなくなるまで、測定を繰り返す(継続する)ことができる。
【0039】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。まず、検知素子101の作製について説明する。スルファニルアミド0.172g,ジメチルナフチルアミン0.021gをエタノール50mlに溶解して検知剤溶液を作製する。次に、作製した検知剤溶液に、平均孔径4nmの多孔質ガラス(コーニング社製バイコール#3970)を浸漬し(24時間)、検知剤溶液を多孔質ガラスに含浸させる。この含浸させた多孔質ガラスを、乾燥窒素中で乾燥させる(24時間)。
【0040】
以上のようにして作製した検知素子101によるガス測定装置を用い、二酸化窒素ガスの測定を行う。まず、検知素子101に対し、制御部104の制御により、光源102より本実施例における検知剤による着色の吸収波長である525nmの光を照射する。光源102を30分間隔で点滅させればよい。このとき、光源102より照射する光の強度を、最大光強度の1/10としておく。また、光検出部103による光強度測定値と、予め測定しておいた多孔質ガラスの透過光による光強度測定値との比により、検知素子101の吸光度を算出する。初期の吸光度は、0.12程度である。
【0041】
次に、検知素子101を含むガス測定装置の雰囲気を、10〜40ppbの二酸化窒素が含まれる状態とする。例えば、本ガス測定装置を、二酸化窒素の濃度が調整可能なチャンバー内に配置し、上述した測定を行えばよい。このようにして、ガス測定装置の雰囲気を二酸化窒素が含まれる状態としてから、30分ごとの光源102の点灯および吸光度の算出を10回行う。この10回目の吸光度の算出では、吸光度が0.70となる。目視では、検知素子101に赤紫色の着色が発生していることが確認できる。
【0042】
次に、チャンバー内に二酸化窒素を含まない空気を供給することにより、ガス測定装置の雰囲気を、二酸化窒素が含まれない状態とし、光検出部103の光出力を最大として検知素子101に光を120分照射する初期化を行う。この初期化の後に、上述同様に、光検出部103により検出される光強度測定値から吸光度を算出すると、吸光度が0.65と減少する。
【0043】
上述したように、本実施例においても、検知剤による着色の吸収波長の光を照射することで検知剤による着色を減少させることができる。これは、測定対象のガス(二酸化窒素ガス)と検知剤との反応により生成される着色に関与する着色物質(アゾ色素)が、この着色物質の吸収波長の光を照射することで分解されるためであると考えられる。ここで、測定対象ガスとの反応で着色物質が生成されることにより、検知剤は消費されて減少する。従って、本実施例においても、測定により消費される検知剤がなくなるまで、測定を繰り返す(継続する)ことができる。
【符号の説明】
【0044】
101…検知素子、102…光源、103…光検出部、104…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象のガスにより着色を発生する検知剤を孔内に配置したガラスからなる透明な多孔体よりなる検知素子と、
前記検知剤による着色の吸収波長の光を前記検知素子に向けて照射する光源と、
この光源により照射されて前記検知素子を透過した光を検出する光検出手段と、
この光検出手段が検出した光の状態により前記光源からの前記光の出力を制御する制御手段と
を少なくとも備え、
前記検知剤は、
二酸化窒素イオンと反応してジアゾ化合物を生成するジアゾ化試薬および前記ジアゾ化合物とカップリングしてアゾ色素を生成するカップリング試薬とを含むもの、
および
アセチルアセトンもしくはアセチルアセトンの誘導体を含むもの
のいずれかであることを特徴とするよりなるガス測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス測定装置において、
前記制御手段は、
前記光検出手段が、前記検知剤の着色が前記光源による前記検知素子への光照射により減少したことによる前記検知素子を透過した光の変化を検出するまで、前記検知素子に対する光の照射を継続するように前記光の出力を制御する
ことを特徴とするガス測定装置。
【請求項3】
請求項2記載のガス測定装置において、
前記制御手段は、前記検知素子を透過した光が前記検知剤による着色が発生する前に等しい状態となったことを、前記光検出手段が検出するまで、前記検知素子に対する光の照射を継続するように前記光の出力を制御することを特徴とするガス測定装置。
【請求項4】
測定対象のガスにより着色を発生する検知剤を孔内に配置したガラスからなる透明な多孔体よりなる検知素子に、前記検知剤による着色の吸収波長の光を照射して前記検知素子の初期光透過状態を測定するステップと、
前記初期光透過状態を測定した後に、前記ガスを含む雰囲気に前記検知素子を曝して前記検知剤による着色を発生させるステップと、
前記ガスを含む雰囲気に曝した後で、前記検知剤による着色の吸収波長の光を前記検知素子に照射して前記検知素子の曝露後光透過状態を測定するステップと、
前記検知剤による着色の吸収波長の光を前記検知素子に照射して前記検知剤による着色の状態を減少させるステップと
を少なくとも備え、
前記検知剤は、
二酸化窒素イオンと反応してジアゾ化合物を生成するジアゾ化試薬および前記ジアゾ化合物とカップリングしてアゾ色素を生成するカップリング試薬とを含むもの、
および
アセチルアセトンもしくはアセチルアセトンの誘導体を含むもの
のいずれかであることを特徴とするよりなるガス測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−175268(P2010−175268A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15256(P2009−15256)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】