説明

ガス燃料タンク搭載車両

【課題】 タンク収納空間に溜まったガス燃料を早期に排出することができる。
【解決手段】 水素ボンベ18から漏出した水素は、空気よりも比重が小さいため、ボンベ収納空間内を上昇していき、ルーフカバー30の上面に形成されたスリット群からなる換気口40に至る。このとき、換気口40は水素ボンベ18の上方に当たる位置に形成されているため、換気口が水素ボンベの上方から外れた位置に形成されている場合に比べて、漏出した水素は短い距離で換気口40に達することができる。また、換気口40は複数箇所に設けられているため、漏出した水素は最も距離的に近い換気口40に達する。そして、水素ガスは換気口40に達したあとこの換気口40を上向きに通過して外部へ流出していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料タンクを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高圧のガス燃料を充填したガス燃料タンクを搭載した低公害車両が知られている。例えば、特許文献1には、ガス燃料として圧縮天然ガス(CNG)を充填したCNGボンベを搭載したバスが開示されている。このバスは、ルーフを覆うルーフカバーによりCNGボンベを収納するボンベ収納空間を形成し、ルーフカバーの前面下縁部とルーフとの間に間隙が設けられたものである。このバスが走行すると、その間隙からボンベ収納空間に空気が流入し、ボンベ収納空間を通過した空気はルーフカバーの後面に設けられた空気流出部から外部へ流出する。
【特許文献1】特開2000−127860
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、何らかの事情によりガス燃料タンクからガス燃料が漏出した場合を想定すると、ボンベ収納空間に溜まったガス燃料を早期に排出することが好ましいが、上述した特許文献1ではバスが走行していない場合にはボンベ収納空間に溜まったガス燃料が流動しにくいため、ガス燃料を早期に排出することができなかった。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであり、タンク収納空間に溜まったガス燃料を早期に排出することができるガス燃料タンク搭載車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
すなわち、本発明のガス燃料タンク搭載車両は、
ガス燃料タンクを搭載した車両であって、
ルーフを覆うように設けられ1以上の前記ガス燃料タンクを収納可能なタンク収納空間を形成するルーフカバーと、
前記ルーフカバーの上面であって前記ガス燃料タンクの上方に当たる位置に設けられた換気口と、
を備えたものである。
【0007】
このガス燃料タンク搭載車両では、ガス燃料タンクに充填されるガス燃料は、CNG(メタンを主成分とする)や水素などのように空気よりも比重が小さいものである。このため、何らかの事情によりガス燃料タンクから燃料ガスが漏出した場合、その燃料ガスは空気より軽いのでタンク収納空間を上昇していき、ルーフカバーの上面のうちガス燃料タンクの上方に当たる位置に形成された換気口に速やかに至り、そこから外部へと効率よく流出していく。したがって、タンク収納空間に溜まった燃料ガスを早期に排出することができる。ここで、車両としては、バスや大型乗用車、小型乗用車などの自動車のほか、列車などをあげることができる。
【0008】
本発明のガス燃料タンク搭載車両において、前記換気口は、前記ルーフカバーの上面であって前記ガス燃料タンクの上方に当たる位置の複数箇所に設けられていてもよい。こうすれば、タンク収納空間内のガス燃料は、複数箇所に設けられた換気口のうち最も近い換気口から外部へと流出するため、一層効率よく流出することになる。
【0009】
本発明のガス燃料タンク搭載車両において、前記換気口は、前記ルーフカバーに設けられた開口に複数のルーバーを間隔をおいて架け渡すことにより形成されたスリット群からなるようにしてもよい。こうすれば、ルーバーがガス燃料タンクを飛石や太陽光線等から保護する役割を果たすため、換気口を単なる開口とした場合に比べてガス燃料タンクの耐久性が上がる。
【0010】
このとき、ルーバーは、水平面に対して傾斜している傾斜部と該傾斜部の少なくとも一端に連接され略水平に形成された水平部とを備えた部材としてもよい。こうすれば、ルーバーの水平部は飛石等がガス燃料タンクに直接当たるのを防止し、ルーバーの傾斜部は太陽光線がガス燃料タンクに直接当たるのを防止する。また、このルーバーは、傾斜部の両端に水平部が連接された断面略Z字状の部材としてもよい。こうすれば、ルーバーによるガス燃料タンクの保護機能が一層高まる。また、ルーバーの傾斜部は、水平面に対して10〜40°の角度で傾斜するようにしてもよい。こうすれば、日中の太陽光線がガス燃料タンクにほとんど当たらないようにすることができる。
【0011】
本発明のガス燃料タンク搭載車両において、前記換気口は、前記ルーフカバーのうち車両の左右両側にて前後方向に延びるように形成された隙間であってもよい。
【0012】
本発明のガス燃料タンク搭載車両において、前記換気口の総開口面積は、少なくとも前記タンク収納空間の容積に基づいて定められていてもよい。例えば、タンク収納空間の容積が大きいほど換気口の総開口面積が大きくなるようにしてもよい。こうすれば、タンク収納空間の圧力が換気口を介して抜けやすい。なお、換気口の総開口面積を決定するためのパラメータとして、タンク収納空間の容積に、ガス燃料タンクの本数、ガス燃料タンクの容量、ガス燃料タンクの内圧及びタンク収納空間の温度のうちの少なくとも1つのパラメータを加えてもよい。また、総開口面積は、ルーフカバーの上面であってガス燃料タンクの上方に当たる位置の複数箇所に設けられた換気口とその他の換気口(例えば上述したスリットなど)との総和としてもよい。
【0013】
本発明のガス燃料タンク搭載車両は、前記ルーフカバーに開閉可能に取り付けられ前記タンク収納空間が大気圧を超える所定圧に達したときに閉鎖状態から開放状態になる蓋部材を備えたものとしてもよい。ここで所定圧とは、大気圧を超える範囲で任意に決定される圧力であり、例えば、想定されるタンク収納空間内の最大圧力未満となるように決定してもよい。
【0014】
このガス燃料タンク搭載車両では、何らかの事情によりタンク収納空間が大気圧を超えて所定圧に達したとしても、蓋部材が閉鎖状態から開放状態になるため、タンク収納空間の圧力が低下する。したがって、タンク収納空間が所定圧を超えて高圧になるのを回避することができる。
【0015】
ここで、前記蓋部材は、歩道側の方が車道側に比べて弱い強度で取り付けられていてもよい。また、前記蓋部材は、閉鎖状態から開放状態になるときには、歩道側が開放するように取り付けられていてもよい。更に、前記蓋部材は、車道側の端部を軸として歩道側の端部が上がるように取り付けられていてもよい。これらの場合、開いた蓋部材が乗降口側に倒れ込むことがない。また、前記蓋部材は、閉鎖状態から開放状態になったときに車両から外れるのを防止する規制部材を介して前記車両又は前記ルーフカバーに取り付けられていてもよい。こうすれば、開いた蓋部材が車両から外れてしまうことがない。この規制部材は、閉鎖状態から開放状態になった蓋部材がルーフにとどまるように機能してもよい。こうすれば、開いた蓋部材が地面へ落下することがない。そしてまた、前記蓋部材は、前記タンク収納空間の内部圧力に応じて閉鎖状態から開放状態になるよう弾性支持されているか又は前記タンク収納空間の内部圧力に応じて開放状態になったあとの開口面積が変化するように弾性支持されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて以下に説明する。図1は燃料電池バス10の左側面図であり、図2は燃料電池バス10の上部の斜視図であり、図3は燃料電池バス10の背面図(破断面図)であり、図4はカバー中央上面部材34の斜視図である。
【0017】
本実施形態の燃料電池バス10は、図1に示すように、左側面の前方に設けられた前乗降口12と左側面の中央に設けられた中央乗降口14を介して乗客室16に乗客を乗降させる低床大型バスとして構成され、車両の右側面には乗降口を有していない。また、燃料電池バス10は、上部にガス燃料タンクとして水素ボンベ18を7本搭載し、後部に数百枚の燃料電池が積層された燃料電池スタック20や燃料電池に関連する各種補機類22などを搭載しており、燃料電池スタック20は、水素ボンベ18から水素(燃料ガス)がアノード側に供給され、補機類22の一つであるエアコンプレッサからエア(酸化ガス)がカソード側に供給され、水素とエアに含まれる酸素との電気化学反応により発電する。そして、燃料電池バス10は、通常の走行時にはこの発電電力により図示しないモータが車輪を回転駆動する。
【0018】
次に、燃料電池バス10の上部の構成について、以下に詳しく説明する。図2に示すように、燃料電池バス10は、上部のルーフ10aの上に、金属バンド26で締結固定された7本の水素ボンベ18と、この水素ボンベ18を収納するボンベ収納空間を形成するルーフカバー30と、このルーフカバー30の上面であって水素ボンベ18の上方に当たる位置に設けられた換気口40とを有している。
【0019】
水素ボンベ18は、例えば35MPaの高圧水素ガスを内蔵する円筒形容器であり、ルーフ10aの左右両側にて前後方向に延びる一対のレール24,24を架け渡すようにして載置された状態で各レール24に固着された金属バンド26により巻回され締結されている。これにより、水素ボンベ18は走行中に位置ズレを起こすことがない。この水素ボンベ18はガス配管によって燃料電池スタック20のアノード側に接続されている。また、ガス配管の途中には、図示しない開閉弁や減圧弁が配置されている。
【0020】
ルーフカバー30は、燃料電池バス10のルーフ全体を覆って上方空間を形成するものであり、この上方空間には7本の水素ボンベ18を収納するボンベ収納空間やその他の機器類の収納空間が含まれる。このルーフカバー30は、図1に示すように、エアコンユニット28が配置されたルーフ前方部分を覆う流線型状のカバー前方部31と、複数の水素ボンベが配置されたルーフ中央部分を覆うカバー中央部32と、燃料電池スタック20を冷却する冷却水を放熱するためのラジエータ21が配置されたルーフ後方部分を覆うカバー後方部39とから構成されている。
【0021】
ここで、ルーフカバー30のカバー中央部32は、図3に示すように、燃料電池バス10の左右両側に立設された一対のカバー中央側面部材33,33と、この一対のカバー中央側面部材33,33の上端に連結された4枚のカバー中央上面部材34,34,34,34とを備えている。各カバー中央側面部材33は、燃料電池バス10の側面と略面一に形成された立壁部33aと、この立壁部33aの上端から車両中心に向かって折り曲げられルーフ10aと略平行となるように形成された庇部33bとを備えている。また、立壁部33aは、図3に示すように下端近傍が燃料電池バス10のボディ側面から側方に突出した台座35に当接され、その状態でボルト36がこの下端近傍を挿通し台座35に形成された図示しないボルト穴にねじ込まれている。この結果、カバー中央側面部材33の立壁部33aは、台座35の高さH1(数mm)だけ燃料電池バス10のボディ側面から離間して隙間47を形成している。この隙間47は、車両の左右両側にて車両の前後方向に延びている。
【0022】
また、カバー中央上面部材34は、図3に示すように、左右両端が一対のカバー中央側面部材33,33の庇部33b,33bの下側に高さH2(数mm)の隙間48をもって潜り込んだ状態で連結されている。この隙間48は、車両の左右両側にて車両の前後方向に延びている。なお、隙間47,48も本発明の換気口をなす。このカバー中央上面部材34は、ボンベ収納空間が大気圧を超える所定圧(ここでは、想定されるボンベ収納空間の最大圧力未満に設定されている)に達したときに、車道側の端部34aつまり乗降口12,14とは反対側の端部を軸として歩道側の端部34bつまり乗降口側の端部が跳ね上がって閉鎖状態から開放状態になるように取り付けられている。具体的には、カバー中央上面部材34のうち車道側の端部34aとカバー中央側面部材33の庇部33bとの連結強度は、カバー中央上面部材34のうち歩道側の端部34bとカバー中央側面部材33の庇部33bとの連結強度よりも大きくなるように取り付けられている。なお、車道側の端部34aを軸として歩道側の端部34bが跳ね上がるようにする代わりに、カバー中央上面部材34に変形しやすい箇所を設けておき、ボンベ収納空間が所定圧に達したときにこの箇所で変形して歩道側の端部34bが開放するようにしてもよい。また、カバー中央上面部材34のうち車道側の端部34aの裏面とカバー中央側面部材33との間にはチェーン37が架け渡され、このチェーン37はカバー中央上面部材34が開放状態になったときに燃料電池バス10のルーフカバー30又は車両本体から外れるのを防止する役割を果たす。
【0023】
換気口40は、図4に示すように、カバー中央上面部材34に設けられた開口42に複数のルーバー44を間隔をおいて架け渡すことにより形成したスリット群からなる。具体的には、カバー中央上面部材34の車幅方向に設けられた4つの開口42,42,42,42のうち、右側の2つの開口42,42を車幅方向に架け渡すことが可能な長さのルーバー44を複数個所定の間隔をおいて配設することによりスリット群を形成すると共に、左側の2つの開口42,42にも同様のルーバー44を複数個所定の間隔をおいて配設することによりスリット群を形成している。ここで、ルーバー44は、水平面に対して傾斜している傾斜部44aとこの傾斜部44aの上端及び下端に連接された水平部44b,44bとからなり、断面が略Z字状となっている。そして、隣接する二つのルーバー44,44の水平部44b,44bが所定の間隔をもつように構成されている。
【0024】
本実施形態では、傾斜部44aの傾斜角θは水平面に対して10〜40°の範囲内で決定されている。ここで、1つの換気口40の開口面積は、図5に示すように隣り合うルーバー44同士の隙間面積s1の和Σs1である。また、本実施形態では、換気口40のほかに隙間47,48も本発明の換気口を構成することから、換気口の総開口面積Sは、各換気口40の隙間面積s1の和Σs1を合算した値Σ(Σs1)に、隙間47の開口面積s2や隙間48の開口面積s3を加えた値となる。この総開口面積Sは、ボンベ収納空間の容積Cに基づいて定められており、具体的には、ボンベ収納空間の圧力が各換気口40や隙間47,48を介して抜けやすいようにボンベ収納空間の容積Cが大きいほど総開口面積Sが大きくなるように設定されている。
【0025】
次に、本実施形態の燃料電池バス10におけるルーバー44の機能について説明する。ルーバー44の傾斜部44aは太陽光線が水素ボンベに直接当たるのを防止し、ルーバー44の水平部44bは、飛石等が水素ボンベ18に直接当たるのを防止する。例えば明け方と夕暮れを除く日中の太陽光線が換気口40を通過できないように傾斜部44aの傾斜角θを設定すれば、水素ボンベ18が太陽光線の影響を受けて劣化するのを効果的に抑制することができる。
【0026】
次に、本実施形態の燃料電池バス10において何らかの事情により水素ボンベ18から水素が漏出した場合について説明する。水素ボンベ18から漏出した水素は、空気よりも比重が小さいため、ボンベ収納空間内を上昇していき、ルーフカバー30の上面に形成されたスリット群からなる換気口40に至る。このとき、換気口40は水素ボンベ18の上方に当たる位置に形成されているため、換気口が水素ボンベの上方から外れた位置に形成されている場合に比べて、漏出した水素は短い距離で換気口40に達することができる。また、換気口40は複数箇所に設けられているため、漏出した水素は最も距離的に近い換気口40に達する。そして、水素ガスは換気口40に達したあとこの換気口40を上向きに通過して外部へ流出していく。また、換気口40の総開口面積が十分広いため、ボンベ収納空間内の圧力が高圧になりすぎることがない。また、ボンベ収納空間内の圧力が大気圧を超える所定圧に至ったとしても、図3の一点鎖線で示すように、カバー中央上面部材34が車道側の端部34aを軸として歩道側の端部34bが跳ね上がるため、開口面積が一気に大きくなり、ボンベ収納空間内の圧力が一気に抜ける。この点からも、ボンベ収納空間内の圧力が高圧になりすぎることがない。このようにして跳ね上がったカバー中央上面部材34は、チェーン37によってルーフ10a上にとどまるように構成されている。
【0027】
以上詳述した本実施形態の燃料電池バス10によれば、何らかの事情により水素ボンベ18から水素ガスが漏出したとしても、その水素ガスはボンベ収納空間を上昇して複数の換気口40のうち最も近い換気口40に速やかに至り、そこから外部へと効率よく流出していく。したがって、ボンベ収納空間に溜まった水素ガスを早期に排出することができる。また、換気口40の総開口面積を十分な大きさに設定しているため、ボンベ収納空間の圧力が換気口40を介して抜けやすい。
【0028】
また、換気口40は複数のルーバー44を間隔をおいて架け渡すことにより形成されたスリット群であり、ルーバー44が水素ボンベ18を飛石や太陽光線等から保護する役割を果たすため、換気口40を単なる開口とした場合に比べて水素ボンベの耐久性が上がる。
【0029】
更に、ルーフカバー30の構成部材であるカバー中央上面部材34は、ボンベ収納空間が大気圧を超える所定圧に達したときに閉鎖状態から開放状態になるため、開口面積が一気に大きくなり、ボンベ収納空間の圧力が急速に低下する。このとき、カバー中央上面部材34は、車道側の端部34aを軸として歩道側の端部34bが跳ね上がるため、乗降口側に倒れ込むことがない。また、開いたカバー中央上面部材34はチェーン37を介してルーフ10aにとどまるように取り付けられているため、燃料電池バス10から外れて落下してしまうことがない。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0031】
例えば、上述した実施形態では、開口に複数のルーバー44を間隔をおいて架け渡すことにより形成されるスリット群を換気口40としたが、ルーバー44のない開口(矩形穴、円形穴など)を換気口としてもよいし、開口にメッシュなどの格子部材を被せたものを換気口としてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、カバー中央上面部材34はカバー中央側面部材33の庇部33bの裏面と連結したが、その代わりに、図6に示すように、カバー中央上面部材34とカバー中央側面部材33の庇部33bとの隙間つまり開口面積が可変となるようにカバー中央上面部材34をルーフ10aにバネなどの弾性部材46を介して支持してもよい。すなわち、通常時にはカバー中央上面部材34とカバー中央側面部材33の庇部33bとの隙間がゼロ又は小さくなるよう弾性支持し、ボンベ収納空間の圧力が上昇したときにはその圧力が作用して弾性部材46の弾性力に抗してカバー中央上面部材34を持ち上げることによりカバー中央上面部材34とカバー中央側面部材33の庇部33bとの隙間が広がるようにしてもよい。こうすれば、ボンベ収納空間内の圧力が上昇したとしても、開口面積が大きくなるため圧力は急速に低下する。
【0033】
更に、上述した実施形態では、ルーバー44は傾斜部44aの下端から上端へ向かう方向が水平面に対して斜め後方となるようにしたが、傾斜部44aの下端から上端へ向かう方向が水平面に対して斜め前方となるようにしてもよい。
【0034】
更にまた、上述した実施形態では、換気口の総開口面積Sを決定するためのパラメータとして、ボンベ収納空間の容積Cを用いたが、水素ボンベ18の本数、水素ボンベ18の容量、水素ボンベ18の内圧及びボンベ収納空間の温度のうちの少なくとも1つを加えてもよい。
【0035】
そしてまた、上述した実施形態では、カバー中央上面部材34とその左右両端に隙間を持って取り付けたカバー中央側面部材33とによりルーフカバー30のカバー中央部32を構成したが、カバー中央上面部材34とカバー中央側面部材33とを隙間をあけずに連結してもよいし、両部材33,34を一体に成形してもよい。
【0036】
そして更に、上述した実施形態は、車両が道路の左側を通行するよう法律で定められている場合を例に挙げたため車両左側を歩道側、車両右側を車道側として説明したが、車両が道路の右側を通行するよう法律で定められている場合にも本発明は適用可能であり、上述した実施形態の車両の左右の構成が逆になり、車両右側が歩道側、車両左側が車道側になる。
【0037】
そして更にまた、上述した実施形態では、ガス燃料タンクとして水素ボンベ18を例に挙げて説明したが、空気より比重の小さいガス燃料を充填したタンクであればどのようなタンクであってもよく、例えばCNGエンジンを搭載した車両においてはCNGボンベとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ガス燃料タンクを搭載する車両の製造業、同車両を用いるサービス業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態の燃料電池バス10の左側面図である。
【図2】燃料電池バス10のルーフカバー30の中央付近の斜視図である。
【図3】燃料電池バス10の背面図(破断面図)である。
【図4】カバー中央上面部材34の斜視図である。
【図5】換気口40の開口面積の説明図である。
【図6】他の実施形態の燃料電池バスの背面図(破断面図)である。
【符号の説明】
【0040】
10 燃料電池バス、10a ルーフ、12 前乗降口、14 中央乗降口、16 乗客室、18 水素ボンベ、20 燃料電池スタック、21 ラジエータ、22 補機類、24 レール、26 金属バンド、28 エアコンユニット、30 ルーフカバー、31 カバー前方部、32 カバー中央部、33 カバー中央側面部材、33a 立壁部、33b 庇部、34 カバー中央上面部材、34a 車道側の端部、34b 歩道側の端部、35 台座、36 ボルト、37 チェーン、39 カバー後方部、40 換気口、42 開口、44 ルーバー、44a 傾斜部、44b 水平部、46 弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃料タンクを搭載した車両であって、
ルーフを覆うように設けられ1以上の前記ガス燃料タンクを収納可能なタンク収納空間を形成するルーフカバーと、
前記ルーフカバーの上面であって前記ガス燃料タンクの上方に当たる位置に設けられた換気口と、
を備えたガス燃料タンク搭載車両。
【請求項2】
前記換気口は、前記ルーフカバーの上面であって前記ガス燃料タンクの上方に当たる位置の複数箇所に設けられている、
請求項1に記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項3】
前記換気口は、前記ルーフカバーに設けられた開口に複数のルーバーを間隔をおいて架け渡すことにより形成されたスリット群からなる、
請求項1又は2に記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項4】
前記ルーバーは、水平面に対して傾斜している傾斜部と該傾斜部の少なくとも一端に連接され略水平に形成された水平部とを備えた部材である、
請求項3に記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項5】
前記傾斜部は、水平面に対して10〜40°の角度で傾斜している、
請求項4に記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項6】
前記換気口は、前記ルーフカバーのうち車両の左右両側にて前後方向に延びるように形成された隙間である、
請求項1に記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項7】
前記換気口の総開口面積は、少なくとも前記タンク収納空間の容積に基づいて定められている、
請求項1〜6のいずれかに記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のガス燃料タンク搭載車両であって、
前記ルーフカバーに開閉可能に取り付けられ前記タンク収納空間が大気圧を超える所定圧に達したときに閉鎖状態から開放状態になる蓋部材、
を備えたガス燃料タンク搭載車両。
【請求項9】
ガス燃料タンクを搭載した車両であって、
ルーフを覆うように設けられ1以上の前記ガス燃料タンクを収納可能なタンク収納空間を形成するルーフカバーと、
前記ルーフカバーに開閉可能に取り付けられ前記タンク収納空間が大気圧を超える所定圧に達したときに閉鎖状態から開放状態になる蓋部材、
を備えたガス燃料タンク搭載車両。
【請求項10】
前記蓋部材は、歩道側の方が車道側に比べて弱い強度で取り付けられている、
請求項8又は9に記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項11】
前記蓋部材は、閉鎖状態から開放状態になるときには、歩道側が開放するように取り付けられている、
請求項8〜10のいずれかに記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項12】
前記蓋部材は、閉鎖状態から開放状態になるときには、車道側の端部を軸として歩道側の端部が上がるように取り付けられている、
請求項8〜11のいずれかに記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項13】
前記蓋部材は、閉鎖状態から開放状態になったときに車両から外れるのを防止する規制部材を介して前記車両又は前記ルーフカバーに取り付けられている、
請求項8〜12のいずれかに記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項14】
前記規制部材は、閉鎖状態から開放状態になった前記蓋部材が前記車両屋根にとどまるように機能する、
請求項13に記載のガス燃料タンク搭載車両。
【請求項15】
前記蓋部材は、前記タンク収納空間の内部圧力に応じて閉鎖状態から開放状態になるよう弾性支持されているか又は前記タンク収納空間の内部圧力に応じて開放状態になったあとの開口面積が変化するように弾性支持されている、
請求項8〜14のいずれかに記載のガス燃料タンク搭載車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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